【実施例2】
【0039】
次に、管路の部分補修構造の第2実施例について
図2により説明する。図に於いて、管路Aを構成する管10どうしの継ぎ目Cに、抜け等によるずれによって生じた間隙11が形成されている。このため、間隙11に対応する管路Aの内周面に、継ぎ目Cを管路Aの長手方向に充分に被覆し得る長さを持った筒状弾性材1が配置されており、この筒状弾性材1の内周面側であって長手方向の両端部に夫々硬化した二つの補修材2が配置され、この硬化した補修材2によって筒状弾性材1は管10の内周面側に押圧されて圧縮した状態を保持している。
【0040】
筒状弾性材1の長手方向の両端部覆うために夫々配置された補修材2は、互いに独立した補修材2として構成されており、これらの補修材2の間には隙間3が形成されている。隙間3の寸法は一義的に設定されるべきものではなく、筒状弾性材1の長さや管路Aの姿勢等の条件に応じて適宜設定される。従って、筒状弾性材1の両端部を覆うように、二つの独立した補修材2を配置したとき、これら二つの補修材2が長手方向の端部で互いに接触していても良く、互いに離隔して隙間3が形成され、この隙間3に筒状弾性材1が露出していても良い。
【0041】
上記の如く、管路Aに於ける継ぎ目Cに生じた間隙11を管路Aの内周面側に筒状弾性材1を配置すると共に、筒状弾性材1の内周面側に配置した二つの補修材2によって該筒状弾性材1の長手方向の端部を覆うことで、筒状弾性材1を管路Aの内周面側に圧接して支持することが可能である。
【0042】
このため、筒状弾性材1が圧接した状態を保持しているとき、管路Aの継ぎ目Cに於ける管10どうしに更なるずれが生じて間隙11が成長した場合、長手方向に接続された管10の内周面と、これらの内周面に接触している補修材2の間にずれが生じることがある。この場合であっても、筒状弾性材1の接続された管10の内周面に対する圧接状態は保持されるため、管10に生じた更なるずれに対応して筒状弾性材1が伸長し、これにより、筒状弾性材1、補修材2による継ぎ目Cに於ける間隙11に対する部分補修はその補修状態を保持することが可能である。
【0043】
上記各実施例に於いて、筒状弾性材1は硬化した補修材2によって、該補修材2と管路Aを構成する管10の内周面との間に挟まれて圧縮した状態を保持している。そして、ひび割れBの更なる成長、継ぎ目Cに於ける間隙11の成長に伴い管10にずれが生じたとき、このずれに応じて筒状弾性材1が伸長することで追従し、部分補修状態を保持する。このため、筒状弾性材1は充分な伸縮性を確保し得るように構成されている。
【0044】
筒状弾性材1の伸縮性は、材料自体が有する伸縮性能と、特殊な断面形状とすることによる伸縮性能とがある。特に、本実施例では、筒状弾性材1の厚さを1.5mm〜5mmの範囲で適宜設定することによって、材料自体の有する伸縮性能を充分に発揮させることが可能である。
【0045】
また、筒状弾性材1を特殊な断面形状として伸縮性能を発揮させる場合、例えば、
図3(a)に示すように、筒状弾性材1の長手方向(管路Aの延長方向)の略中央に大波状の屈曲部1aを形成し、この屈曲部1aによって充分な伸縮性能を発揮させることが可能である。
【0046】
また、同図(b)に示すように、筒状弾性材1の長手方向の略中央に小波状の屈曲部1bを形成し、この屈曲部1bによって充分な伸縮性能を発揮させることが可能である。
【0047】
更に、同図(c)に示すように、筒状弾性材1の長手方向の略中央にめがね状のブリッジ1cを形成し、このブリッジ1cによって充分な伸縮性能を発揮させることも可能である。
【0048】
上記の如く構成された筒状弾性材1の補修材2と対向する面(内周側の面、図に於ける下側の面)には適度な凹凸或いは溝、突起が形成されていることが好ましい。このような凹凸や溝等を形成することによって、内周面側に配置した補修材2を膨張させたとき、可撓性を有する補修材2が凹凸や溝等に入り込んで係合し、補修材2の硬化に伴って強固な一体化をはかることが可能となる。
【0049】
また、筒状弾性材1の内周面側に配置した補修材2によって、該筒状弾性材1を管路Aの内周面に押圧して圧縮する際に、筒状弾性材1と補修材2の位置がずれると、補修材2による筒状弾性材1の押圧、支持が安定して行えない虞がある。このため、
図4に示すように、補修材2の略中央に筒状弾性材1の厚さよりも小さい寸法を持った溝2aを形成しておくことが好ましい。このような溝2aを形成することによって、管路Aを部分的に補修する際に、補修材2によって筒状弾性材1を管路Aの内周面に押圧するとき、両者の位置がずれることが無く、安定した支持を実現することが可能となる。
【0050】
次に、
上記実施例に係る管路の部分補修構造を実現するための補修工法について
図5により説明する。
本補修工法に於いて、管路Aを構成する管10にひび割れBが生じているものとする。即ち、予め管路A内に探査ロボットを導入して内部探査を実施し、この探査結果から管路Aに於けるひび割れBを認識すると共に、マンホールDから該ひび割れBまでの距離を認識しておく。
【0051】
先ず、
図5(a)に示すように、予めマンホールDに可撓性を持った例えばゴムによって形成され、両端が封鎖された円筒状の膨張部材(風船)15を設置する。この膨張部材15には前後にローラー16が設けられており、該ローラー16を取り付けたフレームにロープ17を接続して牽引することで、管路A内の所望の位置に移動させることが可能なように構成されている。
【0052】
また膨張部材15には地上に設置したエアコンプレッサーから延長されたホース18が接続されており、該ホース18を介して圧縮空気を供給することで、膨張部材15を膨張させることが可能である。また、膨張部材15の内部には、同図(c)に示すように、光照射装置20が配置されており、この光照射装置20に電源ケーブル19が接続されている。
【0053】
尚、
本補修工法では、補修材2として光硬化性樹脂を含浸したものを用いているため、膨張部材15の内部に光照射装置20が配置されているが、補修材2が熱硬化性樹脂を含浸したものである場合、膨張部材15の内部を約60℃〜約80℃に昇温させる必要があり、この場合、膨張部材15の内部にヒーターを配置するか、地上にボイラを設置して発生した蒸気を膨張部材15の内部に導入し得るように構成されている。
【0054】
上記の如く構成された膨張部材15の外周面に補修材2を取り付ける。
本補修工法では、補修材2は長尺状の繊維基材に光硬化性樹脂を含浸させたシート状に構成されている。このため、シート状の補修材2を膨張部材15の外周面に対し、外径が管路Aの内周面の径と対応する寸法となるようにスパイラル状に巻き付ける。このとき、膨張部材15に巻きつけられることで重ね合わさった補修材2の重なり部分を縫製して一体化しても良く、そのままの状態で放置しておいても良い。
【0055】
膨張部材15に補修材2を巻きつけるに際し、例えば、膨張部材15に圧縮空気を供給して管路Aの内径と略等しいか或いは僅かに大きい程度まで膨張させ、この状態で膨張部材15の外周面に捕集材2を巻きつけることが可能である。
【0056】
尚、補修材2が管路Aの内周面の径に応じた外径を有するスリーブ状に形成されている場合には、補修材2の内周側に膨張部材15を挿通させることで、補修材2を膨張部材15に取り付けることが可能である。
【0057】
膨張部材15の外周面に補修材2を巻きつけた後、巻きつけられた補修材2に筒状弾性材1を取り付ける。この場合、筒状弾性材1の内周側に補修材2を巻きつけた膨張部材15を挿通することで、筒状弾性材1を補修材2に取り付けることが可能である。
【0058】
次に、同図(b)に示すように、上記の如くして膨張部材15に補修材2、筒状弾性材1を取り付けた後、ロープ17によって膨張部材15を牽引して補修すべき目的のひび割れBまで移動させ、筒状弾性材1がひび割れBに対向した位置で停止させる。
【0059】
次いで、同図(c)に示すように、ホース18を介して弾性部材15に圧縮空気を供給し、該膨張部材17を膨張させる。この膨張部材15の膨張に伴って、筒状弾性材1、補修材2は管路Aの内周面に押圧され、筒状弾性材1は管路Aの内周面と補修材1に挟まれて圧縮される。補修材2は筒状弾性材1に沿って変形し、該筒状弾性材1の長手方向の端部を覆って管路Aの内周面に接触する。
【0060】
ホース18から供給される圧縮空気の圧力を予め設定された値に保持することによって、補修材2による筒状弾性材1の管路Aの内周面への圧接力、圧縮率等の条件を保持しておき、この状態で、膨張部材15の内部に配置した光照射装置20を作動させて補修材2に光を照射する。光照射装置20からの光の照射に伴って、補修材2に含浸された光硬化性樹脂が硬化し、該補修材2による筒状弾性材1の管路Aの内周面に対する圧接状態を保持して支持することが可能となる。
【0061】
補修材2に対する光の照射が終了し、該補修材2が十分に硬化した後、同図(d)に示すように、ホース18を介して膨張部材15の内部にある圧縮空気を外部に排除する。この排除に伴って膨張部材15が収縮し、初期の状態に戻る。その後、ロープ17によって膨張部材15を牽引して隣設するマンホールに移動させる。
【0062】
上記の如き一連の作業を行うことで、管路Aに生じたひび割れBや、継ぎ目Cに於ける嵌10どうしの間に生じた間隙11を部分的に補修することが可能である。