(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733968
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ロボットを使用した、航空機構造のための自動位置付け及びアライメント方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20150521BHJP
B64F 5/00 20060101ALI20150521BHJP
B23P 21/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B64F5/00 D
B23P21/00 303Z
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-278205(P2010-278205)
(22)【出願日】2010年12月14日
(65)【公開番号】特開2011-136416(P2011-136416A)
(43)【公開日】2011年7月14日
【審査請求日】2013年11月15日
(31)【優先権主張番号】61/286,295
(32)【優先日】2009年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/944,953
(32)【優先日】2010年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507038308
【氏名又は名称】エンブラエル ソシエダージ アノーニマ
(73)【特許権者】
【識別番号】510329268
【氏名又は名称】イーテーアー − インスティトゥート テクノロジコ デ アエロナウティカ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(72)【発明者】
【氏名】マルコス レアンドロ シモネッティ
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ゴンザーガ トラバッソ
【審査官】
佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−051557(JP,A)
【文献】
特開2007−185723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
B23P 19/00−21/00
B64F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの使用を介して、構造組み立ての間、航空機胴体、又はその他の航空機部品を、相互の関連で位置付け及びアライメントする方法であって、前記航空機部品は支持体によって支持され、
前記方法は、
前記支持体、及び前記航空機部品を、前記ロボットのツールとして構成し、
前記支持体上の、及び前記支持体によって支持される前記航空機部品上の、1つ以上の点を測定し、
前記測定することに応えて、測定された前記点、及び前記航空機部品に関する既知の仕様情報に基づいて、前記支持体、及び前記航空機部品のための、座標系と地理的中心点とを確立し、
前記地理的中心点をロボットツール中心点(TCP)に変換し、
駆動される前記航空機部品の前記ロボットTCPと、前記ロボットによって駆動されない更なる航空機部品の地理的中心点とを、最良適合状態に到達するように一致させるよう、前記ロボットを制御することで、前記ロボットTCPをツーリングアライメント点として使用して、前記航空機部品を自動的にアライメントするよう前記ロボットを制御する、
ことを含む方法。
【請求項2】
閉ループ制御を使用して前記ロボットを6DOFで動くように制御する、ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ロボットによって駆動されない更なる静止した部品の形状を計測学的に測定し、閉ループ制御を使用して、前記ロボットを、前記部品を前記更なる部品にアライメントするよう制御する、ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
光学装置、レーザ投影、レーザトラッカ、及び、無線又はレーザによるインドアGPS、及び/又は、写真測量からなる群から選択された少なくとも1つの項目を使用して、前記支持体、及び/又は部品の形状を測定する、ことを更に含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持体は、前記支持体によって支持される前記航空機部品と共に、前記ロボットのための一意のツールとして構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ロボットの使用を介して、構造組み立ての間、航空機胴体、及びその他の航空機部品を、相互の関連で位置付け及びアライメントすることにおいて使用するための、非一時的記憶媒体であって、前記航空機部品は支持体によって支持され、少なくとも前記航空機部品、及び前記支持体は前記ロボットのツールとして構成され、前記非一時的記憶媒体は、コンピュータ実行可能な命令を記憶し、
前記命令は、実行された場合、
前記支持体上の、及び前記支持体によって支持される前記航空機部品上の、点(1つ又は複数)を測定し、
前記測定することに応えて、前記支持体、及び前記航空機部品のための、座標系と地理的中心点とを確立し、
前記地理的中心点をロボットツール中心点(TCP)に変換し、
前記ロボットTCPをツーリングアライメント点として使用して、最良適合状態に到達するよう、前記ロボットによって駆動される前記航空機部品と前記ロボットによって駆動されない更なる航空機部品の地理的中心点とを自動的にアライメントするよう前記ロボットを制御する、
ことの命令を実行する、非一時的記憶媒体。
【請求項7】
実行された場合、閉ループ制御を使用して前記ロボットを6DOFで動くよう自動的に制御する命令を、前記記憶媒体は更に記憶する、請求項6に記載の記憶媒体。
【請求項8】
更なる静止した部品の計測学的に測定した形状を受信し、閉ループ制御を使用して、前記ロボットを、前記航空機部品を前記更なる航空機部品にアライメントするよう制御する命令を、前記記憶媒体は更に記憶する、請求項6に記載の記憶媒体。
【請求項9】
光学、レーザ投影、レーザトラッキング、及び/又は、無線又はレーザによるインドアGPS、及び/又は、写真測量に基づいた、前記支持体、及び航空機部品の、測定された形状を受信する更なる命令を、前記記憶媒体は記憶する、請求項6に記載の記憶媒体。
【請求項10】
ロボットの使用を介して、構造組み立ての間、航空機胴体、及び/又はその他の航空機部品を、相互の関連で位置付け及びアライメントするシステムであって、前記航空機部品は支持体によって支持され、
前記システムは、
前記支持体及び前記航空機部品を、前記ロボットのツールとして構成する手段と、
前記支持体上の、及び前記支持体によって支持される前記航空機部品上の、点(1つ又は複数)を測定する手段と、
前記測定する手段に応答して、前記支持体、及び/又は前記航空機部品のための、座標系と地理的中心点とを確立する手段と、
前記地理的中心点をロボットツール中心点(TCP)に変換する手段と、
前記ロボットTCPをツーリングアライメント点として使用して、最良適合状態に到達するよう、前記ロボットによって駆動される前記航空機部品と前記ロボットによって駆動されない更なる航空機部品の地理的中心点とを自動的にアライメントするよう、前記ロボットを制御する手段と
を備える、システム。
【請求項11】
構造組み立ての間、航空機胴体、及びその他の航空機部品を、相互の関連で位置付け及びアライメントするシステムであって、
前記システムは、
6DOFロボット多関節アームと、
ツールの代わりに前記多関節アームに取り付けられた支持体であって、前記支持体は、前記航空機部品を係合するように構成された、前記支持体と、
前記支持体上、及びは前記航空機部品上の、点(1つ又は複数)を測定する、測定装置と、
前記測定装置に結合されたコンピュータ設備と
を備え、前記コンピュータ設備は、前記測定された点(1つ又は複数)に応えて、少なくとも部分的に、前記支持体、及び前記航空機部品のための、座標系と地理的中心点とを確立し、そして、前記地理的中心点をロボットツール中心点(TCP)に変換し、
ここで、ロボットは、前記ロボットTCPをツーリングアライメント点として使用して、最良適合状態に到達するよう、前記ロボットによって駆動される前記航空機部品と前記ロボットによって駆動されない更なる航空機部品の地理的中心点とを自動的にアライメントするように構成される、
システム。
【請求項12】
前記コンピュータ設備は、閉ループ制御を使用して前記ロボットを制御するよう、更に構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記測定装置は、更なる静止した航空機部品の形状を計測学的に測定し、そして、前記コンピュータ設備は、閉ループ制御を使用して、前記ロボットを、前記航空機部品を前記更なる航空機部品にアライメントするよう制御するよう、更に構成される、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記測定装置は、光学装置、レーザ投影、レーザトラッカ、及び、無線又はレーザによるインドアGPS、及び/又は、写真測量からなる群から選択される、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月14日に出願された仮出願第61/286,295号の利益を主張するものであり、当該出願は、その全体が参照によって本明細書中に援用される。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究又は開発の記載
該当せず
【0003】
本明細書中の技術は、ロボティクスに関し、特に、多関節アーム(articulated arms)を有するロボットを位置付け手段又は構造として使用し、例えば、構造組み立ての間、航空機又はその他の部品を相互の関連で位置付け及びアライメントする(positioning and aligning)、方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
航空機胴体は、注意深く共に組み立てる必要がある多くの個別部品を含む可能性がある。
図1を参照されたい。航空機が大きい場合、胴体部品のいくつかは、一人の作業員によって、又は作業員のグループによってさえ、持ち上げられて位置付けされるには重すぎる、又は大きすぎるであろう。従って、航空機胴体部品を位置付け及びアライメントするための例示的な手動プロセスは、従来、多くの場合、胴体部品を支持体、又はドリー(dolly)上に載せることからなっている。支持体又はドリーは、胴体部品を組み立てのための所定の位置に移動させるために使用される。
【0005】
一般に、組み立ては、予め作成された、又は規定された、基準点(1つ又は複数)(reference point(s))又はその他の基準(1つ又は複数)(fiducial(s))を見つけることを含む(例えば、
図1A内の、基準点であるアライメント穴H1、H2を参照されたい)。胴体部品は、機械的装置を使用して、又は手動で、ツーリング基準計画に基づいて、所望のアライメント許容範囲に従った最良適合状態まで移動させられてもよい。胴体部品が適切に位置付けされたら、それらは、リベット締め(riveting)などの適切な固着技術(fastening techniques)によって結合されてもよい。
【0006】
従来の手動プロセスを使用する場合、胴体部品は、それらの胴体部品をアライメント、位置付け、結合し、従って組み立てるために、手廻しクランク又は空気モーターなどの手段によって、駆動、移動、又は位置付けされてもよい−
図1Aを参照。それらの手段(例えば、手廻しクランク、又は空気モーター)は、胴体部品に、又は胴体部品を支持する、ドリーのようなある種の支持体に、直接取り付けられてもよい。
【0007】
従来のジグに基づいた組み立てプロセスである、位置付け、及びアライメントの手動の従来プロセスの1つの例によれば、半組立品が、ハード装置にインデックスされてもよい。ハード装置の1つの例は、各胴体部品の外周(outer perimeter)を、それらの端のうちの1つにおいて取り囲む、対応する穴を有する環である。2つの胴体部品をアライメントするために、第1の環の穴が、第2の環の対応する穴と結合されてもよい。ハード装置を使用して半組立品をインデックスする別の例は、次の通りである。第1の装置(ジグ)の先端が、第1の胴体部品における第1のアライメント穴に挿入され、第2の装置(ジグ)の先端が、第2の胴体部品における第2のアライメント穴に挿入される(例えば、
図1Aは、2つのアライメント穴H1、H2を示している)。この例では、2つの装置は、同等であり、各装置は、その外側部分において穴を有し、2つの胴体部品をアライメントするために、第1の装置の穴が、第2の装置の穴と、ピンを介して結合されてもよい。そのようなハード装置は、一般に、組立品形状の特定の様相のために設計及び構築される。
【0008】
全ての胴体組み立てが手動であるとは限らない。例えば、航空機胴体をアライメントするために、カルテシアンメカトロニックアクチュエータを使用する、航空機構造のための従来の自動位置付け及びアライメントシステムが存在する(
図2を参照)。これらのシステムによって適用される、1つの例示的方法は、以下からなる。
【0009】
・胴体部品を支持体(又はドリー)上に載せる。
【0010】
・(支持体上にある)胴体部品を、支持体、及び胴体部品の両方を移動させるメカトロニックアクチュエータMA上に配置する。
図2は、4つの従来のカルテシアンメカトロニックアクチュエータMA1〜MA4と、1つの胴体部品FPと、アクチュエータを制御する、1つの従来のCNC−コンピュータ数値制御−コントローラと、を含む例示的システムを示す。
【0011】
・
図2に示されていない、計測学的システム(metrological system)MSを使用することによって、胴体部品FPにおけるいくつかの基準を測定する(例:レーザトラッカ又はレーザレーダの使用を介して、胴体部品の形状の曲率を測定する)。
【0012】
・カルテシアンメカトロニックアクチュエータを使用して、胴体部品FPを、アライメント許容範囲に従った最良適合状態まで移動させ、1つの胴体部品を別の胴体部品とアライメントする。
【0013】
・その後、固着、リベット締めなどによって、胴体部品を結合する。
【0014】
この例示的な従来のプロセスのいくつかの詳細は、以下の通りである。
【0015】
・全ての胴体部品における基準の測定を実行するための、特定の測定(例えば、計測学的)システムMSの使用。
【0016】
・測定されたデータは、測定システムMSによって提供される解析ソフトウェアによって、又は別の方法で、解析される。
【0017】
通常、解析のために使用されるソフトウェア(例えば、CNC−コンピュータ数値制御、PLC−プログラマブルロジックコントローラ上で、又は別のコンピュータ上で実行される)は、胴体部品の3D図面(例えば、データベース内に記憶されている)と、胴体部品の幾何公差要件とを使用して動作する。このソフトウェアは、メカトロニックアクチュエータMAによって移動させられる部品の位置を決定する(注:いくつかの部品は静止したままであり、その他の部品は移動させられる)。ソフトウェアは、そのデカルト座標[x,y,z]及び姿勢角[R,P,Y]を、アライメントの前に決定し、更に、正しいアライメントを達成するために必要なそれらの部品の位置を、すなわち、最良適合を表す所望のデカルト座標[x’,y’,z’]及び姿勢角[R’,P’,Y’]を、決定する。測定解析ソフトウェアは、移動させられる各部品について、2つの位置の間の差を決定し、この情報を、メカトロニックアクチュエータMAの制御のために、コンピュータ数値制御(CNC)に送信する(
図2を参照)。
【0018】
次に、位置ドライバ(CNCによって制御されるカルテシアンメカトロニックアクチュエータMA)が、X、Y、及びZにおいて直線的に、部品を滑らかに移動させ、加えて、ロール、ピッチ、及びヨー(R、P、及びY)において部品を回転させ、それにより、6自由度を使用して位置付け、及びアライメントを実行する。位置付け、及びアライメント動作が実行されている間、計測学的システムMSは、部品の位置及び姿勢を、継続的に、又は段階的に監視していてもよく、そして、この情報を、コンピュータ上で実行されている測定解析ソフトウェアにフィードバックしていてもよい。
【0019】
一般的に言えば、それぞれの位置ドライバは、事実上、3軸機械(その精密運動は、レゾルバフィードバックを有するサーボモータ制御を介して達成される)である。移動させられている各胴体部品について、他の位置ドライバと同期して動作する位置ドライバが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
いくらかの自動化が過去において使用されてきたが、航空機胴体及びその他の部品を位置付けるための、より自動化された、かつ、それにもかかわらず依然として非常に正確な技術を提供するために、ロボティクスを使用することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本明細書における例示的説明的非限定的な技術は、光学装置、レーザ投影、レーザトラッカ、無線又はレーザによるインドアGPS、写真測量などの、測定システムによって支援される、6自由度(6DOF)ロボットの使用を介して、構造組み立ての間、航空機胴体及びその他の部品(例えば、翼、尾部など)を相互の関連で位置付け及びアライメントする、プロセス、システム、技術、及び記憶媒体を提供する。1つの例示的非限定的実装においては、6DOFロボットは、そのアームに、エフェクタとしての従来のツールが取り付けられるのではなく、支持体を含む非従来的なツールがアームに取り付けられ、支持体は、胴体のセグメントを支持する。ロボットによって運ばれる胴体部品は、ロボットのツールを含む。例示的非限定的な計測学的システムの使用を介して、ロボットによって駆動される胴体部品の点(1つ又は複数)又は構造が測定され、システムは、胴体部品のための座標系を確立し、そして、地理的中心点(geographical center point)−GCP−を確立する。この地理的中心点は、次に、6DOFロボットのコントローラ内で一般に利用可能な従来の関数を介して、ロボットの従来のツール中心点(tool center point)(TCP)に変換される。ロボットTCPに変換されたGCPは、6DOFロボットが胴体部品を位置付け及びアライメントするために使用する、ツーリングアライメント点とみなされてもよい。閉ループ制御システムを使用して、6DOFロボットは、最良適合状態に到達するように、ロボットによって駆動される部品のTCPと、ロボットによって駆動されない部品のGPCとを一致させてもよい。
【0022】
いくつかの例示的非限定的実装では、擬人化ロボット(anthropomorphic robot)を使用する。
【0023】
これらの、及びその他の特徴及び利点は、以下の、例示的非限定的説明的実施形態の詳細な説明を、図面と組み合わせて参照することによって、より良く、かつより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】共に組み立てられる必要がある複数の部品からなる、例示的な従来の航空機胴体を示す。
【
図1A】航空機胴体部品をアライメントするための、例示的な従来の手動プロセスを示す。
【
図2】航空機胴体部品をアライメントするための、例示的な従来のカルテシアンメカトロニックアクチュエータを示す。
【
図3】航空機胴体及びその他の部品をアライメントするための、例示的説明的非限定的な自動擬人化ロボットアーム位置付け及びアライメントシステムを示す。
【
図3-1】航空機胴体及びその他の部品をアライメントするための、例示的説明的非限定的な自動擬人化ロボットアーム位置付け及びアライメントシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例示的説明的非限定的実装において、航空機構造のための自動位置付け及びアライメント方法及びシステムは、6自由度を有する擬人化ロボットを使用して、位置付け及びアライメントの間、航空機構造部品を運ぶ。
図3及び
図3−1は、1つのそのような例示的非限定的システムを示す。例えば
図3は、擬人化ロボット100を使用した自動位置付け及びアライメントシステム50における、航空機胴体FP1、FP2の概念図である。図に示すように、胴体前方部分FP1は、擬人化ロボット100によって支持されている。
【0026】
図3及び
図3−1によれば、移動させられている胴体部品FP1は、支持体(例えば、ドリー)D上に配置されており、支持体Dは、更には、ロボット100のロボットアーム102に取り付けられ、かつ、係合されている。ロボットアーム102は、従来の設計のロボットアームコントローラ150によって、6DOFで自動的に制御される。ロボットアームコントローラ150は、(同じ又は異なるコンピュータ上で実行されてもよい)解析ソフトウェア152からの入力を受信し、解析ソフトウェア152は、更には、計測学的測定システム156からの入力を受信してもよい。解析ソフトウェア152は、データベース154内のデータにアクセスしてもよく、そして、コントローラ150にロボットアーム102を制御させるために、プログラム制御されたステップを実行してもよい。この例示的説明的非限定的なシステムによれば、各胴体部品FP1を移動させるために、1つのみのロボット100が必要とされる。
【0027】
示された例において、従来のロボット100は、例えばヨー運動を提供するために、回転することができ、更に、並進することも可能であってもよい、基部(base)106を含む。基部106に取り付けられているのは、アーム102の更なる自由度での回転を可能にする肩部(shoulder)108であり、追加の関節継手(articulated joints)が、ロボットアーム102の第3の自由度での回転を可能にする。従って、アーム102の十分な関節接合(articulations)が、アームが3つの直交する軸の周りを回転させられることを可能にし、そして、ロボットアームは、更に、3自由度での並進運動を提供するように装備されている。アーム102は、従って、6自由度で移動及び位置付けするように自動的に制御されることが可能である。この例示的実装において、アーム102は、ドリーD、及び/又は胴体部品FP1を支持及び保持するために使用され、それにより、ロボットアーム102が胴体部品FP1を6DOFで移動及び正確に位置付けすることが可能になる。
【0028】
航空機胴体部品(又は、翼、尾部、フェアリングの部品などの、その他の航空機構造部品)のための1つの例示的非限定的な自動位置付け及びアライメントプロセスは、以下からなる。
【0029】
1)ロボットアーム102に取り付けられた支持体又はドリー上に、胴体部品FP1を載せること−
図3A(ブロック202)を参照。
【0030】
2)1つ以上の計測学的システム156によって、胴体部品(ロボットによって移動させられている部品「FP1」、及びロボットによって移動させられていない部品「FP2」を含む−
図3A(ブロック204)を参照)におけるいくつかのの基準を測定すること(例:各部品の、主要な幾何学的基準などの、いくつかの主要な特徴(1つ又は複数)を、レーザレーダによって測定すること)。
【0031】
3)擬人化ロボット100を使用して、胴体部品FP1を、アライメント許容範囲に従った最良適合状態まで移動させること(
図3A、ブロック206を参照)。
【0032】
その後、胴体部品の結合が、固着又はリベット締めによって行われてもよい(
図3A、ブロック208を参照)。
【0033】
位置付け及びアライメント動作が実行されている間、計測学的システムは、ロボット100によって変化させられるにつれての、部品FP1の位置及び姿勢を、継続的に、又は段階的に監視してもよい。そのような位置及び姿勢情報は、閉ループフィードバック制御を提供するために、解析ソフトウェア152及び/又はロボットアームコントローラ150にフィードバックされる。
【0034】
図3−1は、2つの胴体部品を示している。部品「FP1」は、ロボットアーム102によって移動させられており、部品「FP2」は、ロボットアームによって移動させられていない。通常、部品「FP2」は、前述のカルテシアンメカトロニックアクチュエータMAを介して移動させられてもよい、支持体上に取り付けられる。あるいは、部品「FP2」は、手動手段を介して、又は別のロボットアーム102によって移動させられてもよい、ドリーDなどの支持体上に取り付けられる。例えば2つ以上のロボットが使用可能である場合、同時に3つ以上の胴体部品を、自動的に位置付け及びアライメントすることが可能である。
【0035】
一例示的説明的非限定的実装においては、位置付け及びアライメントのプロセスを達成するために、前後軸を除く全ての軸に関して固定された胴体部品(胴体セグメント)が存在する−
図3−1における胴体部品「FP2」を参照。次に、必要に応じて、6つの全ての軸に関して、ロボット100によって移動させられる、別の胴体セグメントが存在する−
図3−1における胴体部品「FP1」を参照。次に、部品FP1は、部品FP2に位置付け及びアライメントされる。
【0036】
図4に示すように、従来のロボット100が溶接などの製造プロセスのために使用される場合、ロボットは、溶接ツール162の端160を、「ツール基準点」すなわちツール中心点(TCP)として使用してもよい。この場合、溶接ツール162は、ロボットアーム102に取り付けられる−
図4を参照。TCPすなわち「ツール中心点」は、通常、所与のプロセスの間、ロボット100が位置付ける必要がある点である。
【0037】
一例示的説明的非限定的実装においては、ロボット100は、そのアーム102に取り付けられる通常のツール(溶接ツール、配線ツール、又はその他のツールなど)を有さず、適合される特定の胴体部品FPの形状に適合するように設計された、カスタマイズされたツールを有する。例示的実装における、カスタマイズされたツールは、ロボットアーム102に取り付けられた支持体又はクレードルによって構成される。この支持体上に、胴体のセグメント(又は、翼部品などの、その他の部品)が配置される−
図3、
図3−1を参照。例示的説明的非限定的実装の一態様は、ロボット100の「ツール基準点」すなわちTCPを規定するプロセスを確立することである。
【0038】
例示的説明的非限定的実施形態では、ロボット100によって運ばれる/載せられる胴体部品を、ロボットのエンドエフェクタ、又はツーリングとして(
図4を
図3−1と比較して参照)、従って、ロボットのツール基準点(TCP)として扱う。1つの例示的非限定的実装においては、計測学的測定システム156が、ロボットアーム102が運んでいる特定の部品FPの寸法及び形状に関する情報を収集し、この情報と、データベース154内に記憶された、部品に関する既知の仕様情報とを組み合わせたものは、実行されている特定の結合又は位置付け動作に関して重要な、航空機部品FPの構造の上の点によって規定される、ロボットツール中心点を生成するために、システムが適用する空間的変換を決定するために使用される。1つの例示的非限定的実装においては、航空機部品FPの構造の上の様々な点が、様々な結合又は位置付け動作のためのロボットツール中心点として使用されることが可能である。高精度なロボットアームコントローラ150は、従って、航空機部品の構造内に、又は航空機部品の構造に関して規定された、ツール中心点に基づいて、航空機部品FPを正確に位置付けするために使用されることが可能である。
【0039】
より詳細には、
最初に、胴体部品がロボット100上に載せられ、ロボット100は、胴体部品を掴持、係合、及び/又は支持してもよい(
図4A、ブロック402)。
次に、従来の計測学的システム156(光学装置、レーザ投影、レーザトラッカ、レーザレーダ、無線又はレーザによるインドアGPS、及び/又は写真測量など)の使用を介して、胴体部品「FP1」の何らかの主要な特徴(1つ又は複数)が測定される(
図4A、ブロック404)。1つの例示的非限定的実装においては、従来の計測学的システム156は、10
−2〜10
−3mmの範囲の精度で測定する。
【0040】
計測学的システム156によって測定されてもよい例示的非限定的な特徴は、例えば、胴体円周(fuselage circumference)、胴体厚さ(fuselage loft)、胴体外周(fuselage perimeter)、及び/又は、その他の意味のある幾何学的特性(1つ又は複数)を含んでもよい。
【0041】
1つの非限定的な例においては、胴体円周が考慮される。次に、胴体円周の点の組(例えば、10〜50個の点)が、計測学的システム156を使用して測定される。測定手順は、あらゆる最終的な構造的沈下(structural settlement)を考慮に入れるために、胴体部品がロボット100上に載せられた後で実行される。従って、1つの例示的非限定的実装においては、測定プロセス内で、構造的沈下が考慮される。
【0042】
計測学的システム156によって生成された幾何学的情報は、解析ソフトウェア152によって解析される(
図4A、ブロック406)。通常、このソフトウェアは、データベース154内に記憶された、それらの胴体部品の3D図面と、それらの胴体部品の幾何公差要件とを使用して動作する。次に、三角法関係を介して、この測定解析ソフトウェア152は、この胴体部品「FP1」のための座標系を確立し、そして、そのGCP−幾何学的中心点−を確立する。この情報は、ロボットアームコントローラ150に送信される。
【0043】
胴体部品FP2上の点に対応するこのGCPは、次に、産業用ロボットのコントローラ150内で通常は利用可能な、しかし、ロボットアーム102のエフェクタエンドに配置された交換可能なツール(例えば、溶接ツール、回転ツール、グリッピングツールなど)の既知の所定の幾何学的配置に関して一般に使用される、従来の変換関数を介して、通常のツール中心点(TCP)に変換される(
図4A、ブロック408)。ロボットTCPに変換されたGCPは、組み立てプロセスにおいて、胴体部品FP1を位置付け及びアライメントするために、擬人化ロボット100が使用できる、ツーリングアライメント点とみなされてもよい−
図3、
図3−1を参照。
【0044】
同じ、又は異なる計測学的システム156が、更に、他の(例えば、移動していない)胴体部品「FP2」の特定の主要な特徴を測定してもよい(
図4A、ブロック410)。1つの非限定的な例においては、胴体円周が測定される。計測学的システムのソフトウェアは、部品「FP2」の座標系を確立し、GCP−幾何学的中心点−を決定する。形状解析ソフトウェア152は、同様に、この情報をロボットコントローラ150に送信する。
【0045】
ロボット100は、胴体部品「FP1」の決定されたTCP(ツーリング中心点)を使用して制御フィードバックを確立し、閉ループに基づいて、胴体部品「FP1」のTCPから、その対応する、胴体部品「FP2」内の点(この例では、胴体部品「FP2」のGCP)への、位置付け及びアライメントを、最良適合状態に到達するように実行する(
図4A、ブロック412)。
【0046】
その後、胴体部品の結合が、固着又はリベット締めによって行われてもよい(
図4A、ブロック414)。
【0047】
位置付け及びアライメント動作が実行されている間、
図3に示すような計測学的システム156は、ロボット100によって移動させられている部品の位置及び姿勢を、継続的に、又は段階的に監視していてもよく、そして、この情報を、解析ソフトウェア152にフィードバックしてもよい。例えば、測定システム156が、アライメント許容範囲(例えば、1つの例示的実装においては、約0.5mm)からの偏差が発生したことを識別した場合、回復動作を開始することが可能なオペレータに信号が指示される。
【0048】
あるいは、主要な特徴の測定は、支持体(ドリー−D)と胴体部品FP1とに基づいて達成されてもよい。この場合、例えば、支持体Dの、及び胴体部品FP1の、点の組が、計測学的システム156を使用して測定される。次に、ソフトウェア152が、1つの一意の部品としての支持体D及び胴体部品FP1のための座標系を確立し、そして、GCPを確立する。ロボットのコントローラ150は、このCGPを、組み立てプロセスにおいて胴体部品FP1を位置付け及びアライメントするためにロボット100が使用可能なツーリングアライメント点とみなされる、通常のツール中心点(TCP)に変換する。次に、1つの一意の部品としての支持体D及び胴体部品FP1のTCPを使用して、上記で説明したようにプロセスのシーケンスが行われる。
【0049】
あるいは、又は加えて、1つの例示的実装においては、移動中の、あるいは、起こりうる熱膨張の間の、又は寸法変化をもたらす可能性があるその他の現象の間の、衝突と、部品への応力緊張の導入とを回避するために、胴体支持体又はクレードルは、力を測定するためのロードセルを使用してもよい。この目的のために、胴体部品と支持クレードルとの間に位置する各アンカーポイント内に、ロードセルを設置することが可能である。これが行われると、力の分布がソフトウェア152によって監視されることが可能となり、従って、応力分布が4つのアンカーポイントの間で均一であるかどうかの確認が行われる。応力分布が均一でない場合、回復動作を開始するオペレータに信号が指示されてもよい。
【0050】
更に、あるいは、又は加えて、上記のシーケンス内に追加のステップを含めることが可能である。例えば、最良適合状態に到達した場合は必ずロボット100を除去する、ということが可能であろう。従って、ロボット100は、胴体部品FP1、FP2の結合(これは、固着又はリベット締めによって行われてもよい)の前に除去されてもよい。従って、ロボット100は、他の動作を実行するために解放されることが可能である。しかし、これは、ロボット100の解放を可能にし、かつ、2つの部品の間のアライメントを依然として維持する手段を有する支持体(その上に胴体部品(1つ又は複数)が取り付けられる)を提供することを含む可能性がある。更に、胴体部品をロボット手首から解放するために、ロボットツールチェンジャが使用されてもよい。この分離動作は、手動で行われてもよい。その後、胴体部品の結合が行われることが可能である。
【0051】
胴体部品がより大きな直径を有する場合、更なる例示的説明的非限定的実装が適用されてもよい。そのような場合、以下に述べるような手順に従ってもよい。例えば、以前の構成で考慮された部分(これは、胴体の円周、又は厚さ、又は外周であった)より強固な部分の点の組を測定することが可能である。この「より強固な部分」は、例えば、胴体セグメントの内部に位置する、シートレール、又はその他の構造要素であってもよい。それらの点は、製造現場上に、又はその他の場所に位置する、固定された基準に相対的に測定される(
図4B、ブロック502)。
【0052】
ロボットベース内の点の組を、製造現場上に、又はその他の場所に位置する、固定された基準に相対的に測定するために(
図4B、ブロック504)、以下を行ってもよい。
【0053】
−胴体部品をロボット100上に載せること(
図4B、ブロック506)。
【0054】
−胴体円周内の点の組を測定すること。この場合、点の数は、以前の手順より少なくてもよい(アライメント動作の開始以来、胴体部品がすでにロボット上に載せられていた場合)(
図4B、ブロック508)。
【0055】
次に、以下の間の三角法関係を確立することが可能である(
図4B、ブロック510を参照)。
【0056】
・胴体円周内の測定された点と、シートレール上の測定された点との間。
【0057】
・シートレール上の測定された点と、製造現場上の固定された基準の、測定された点との間。
【0058】
・製造現場上の固定された基準の、測定された点と、ロボットベース上の測定された点との間。
【0059】
上述の三角法関係は、例えば以下のために、胴体円周の点とロボットベースの点との間の関係を−間接的に−もたらす。
【0060】
−胴体円周のCGPを計算し、このCGPをロボットTCPに変換するため(
図4B、ブロック512)。
【0061】
−ロボット上に載せられた胴体部品と、他の胴体部品との間の、レバーリング及びアライメント(levering and alignment)手順を実行するため(
図4B、ブロック514)。
【0062】
擬人化ロボットを使用した、自動位置付け及びアライメントシステムを使用することの、例示的非限定的な利点は、以下の通りである。
【0063】
・ツーリング及びジグのコストを大幅に減少させる。
【0064】
・より再現性のある(more repeatable)組立品結合を生成する。
【0065】
・結合許容範囲の達成を、従って、全体的な製品品質を向上させる。
【0066】
・構成要素(胴体部品)の持ち上げプロセスのために要する時間を減少させる。この減少は、ツールのセットアップ、構成要素の位置付けのための時間、及び、構成要素を位置付けるための移動反復の節約を含む。
【0068】
・制御及びプログラムの開発作業を減少させる。
【0069】
・同じロボットを使用して、他の航空機部品をアライメントすること、及び他の動作を実行することができる。
【0070】
・ロボットは、プロセスの要求に応じて、胴体部品を依然として持ち上げたままであってもよく、又は、カスタマイズされた装置に置き換えられてもよい。
【0071】
本明細書中の技術について、例示的説明的非限定的実施形態に関連して説明してきたが、本発明は、本開示によって限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲によって規定されることを意図するものであり、かつ、本明細書中で具体的に開示されているかどうかに関係なく、全ての対応する、及び均等な構成を包含することを意図するものである。