特許第5733983号(P5733983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イートン コーポレーションの特許一覧

特許5733983低い排気ガス温度で燃料改質装置を動作させるための予備燃焼器および大流路燃焼システム
<>
  • 特許5733983-低い排気ガス温度で燃料改質装置を動作させるための予備燃焼器および大流路燃焼システム 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733983
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】低い排気ガス温度で燃料改質装置を動作させるための予備燃焼器および大流路燃焼システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20150521BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20150521BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20150521BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20150521BHJP
   F01N 3/36 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   F01N3/08 B
   F01N3/20 H
   F01N3/20 K
   F01N3/24 D
   F01N3/24 E
   F01N3/28 J
   F01N3/28 301C
   F01N3/28 301P
   F01N3/36 D
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2010-533675(P2010-533675)
(86)(22)【出願日】2008年11月13日
(65)【公表番号】特表2011-503435(P2011-503435A)
(43)【公表日】2011年1月27日
(86)【国際出願番号】IB2008003049
(87)【国際公開番号】WO2009063297
(87)【国際公開日】20090522
【審査請求日】2011年11月14日
【審判番号】不服2014-1999(P2014-1999/J1)
【審判請求日】2014年2月3日
(31)【優先権主張番号】11/983,909
(32)【優先日】2007年11月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390033020
【氏名又は名称】イートン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ダラ ベタ,ラルフ,エー
(72)【発明者】
【氏名】シゼロン,ジョエル,エム
(72)【発明者】
【氏名】シェリダン,デイヴィッド,アール
【合議体】
【審判長】 加藤 友也
【審判官】 林 茂樹
【審判官】 金澤 俊郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/088732(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N3/02-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを生じるディーゼルエンジン(101)と、
前記排気ガス中に燃料を噴射するように構成される燃料噴射装置(115)と、
酸化触媒を含むとともに前記燃料噴射装置(115)によって噴射される燃料と一緒に排気ガス流れを受け入れるように構成される予備燃焼器(106)と、
酸化触媒ウォッシュコートを含むとともに前記予備燃焼器(106)からの前記排気ガス流れを受け入れるように構成される大流路燃焼器(107)と、
燃料改質触媒を含むとともに前記大流路燃焼器(107)からの前記排気ガス流れを受け入れるように構成される燃料改質装置(108)と、
前記燃料改質装置(108)からの前記排気ガス流れを受け入れるように構成されるリーンNOxトラップ(109)と、を備えた動力発生システムであって、
前記予備燃焼器(106)は、前記燃料噴射装置からの噴射燃料の一部を燃焼させるとともに前記噴射燃料の残りの部分を気化させ、
前記予備燃焼器(106)と前記大流路燃焼器(107)との間で、前記排気ガスと前記予備燃焼器(106)によって気化された燃料とを混合し、
前記大流路燃焼器(107)は、前記燃料改質装置(108)の平均流路面積よりも大きい平均流路面積および前記燃料改質装置(108)の熱質量の約20%以下の熱質量を有し、
前記燃料改質装置(108)は、前記大流路燃焼器(107)からの排気ガス−燃料流れが全体的にリッチである時に前記リーンNOxトラップを脱硝するのに有効な量のH2およびCOを生成し、
前記燃料改質装置(108)は、少なくとも約500℃まで加熱されて前記リーンNOxトラップ(109)の脱硝のための水蒸気改質反応に触媒作用を及ぼすように、小さい熱質量を有し、
前記リーンNOxトラップ(109)は、前記排気ガス流れが全体的にリーンである時に前記排気ガス流れからNOxを吸着および蓄積するとともに前記排気ガス流れが全体的にリッチである時に蓄積されたNOxを還元して放出するように機能し、
前記燃料改質装置(108)は、酸化触媒を含み、
前記大流路燃焼器(107)は、前記燃料改質装置(108)に対して、単位表面積当たりの酸化触媒の密度がより高い、ことを特徴とする動力発生システム(100)。
【請求項2】
前記大流路燃焼器(107)は、前記燃料改質装置(108)の熱質量の約10%以下の熱質量を有することを特徴とする請求項1に記載の動力発生システム(100)。
【請求項3】
前記大流路燃焼器(107)は、前記燃料改質装置(108)中の酸化触媒を含んでいるウォッシュコートに対して、少なくとも約50%厚い触媒ウォッシュコートを有することを特徴とする請求項1に記載の動力発生システム(100)。
【請求項4】
前記大流路燃焼器(107)は、電熱器を用いて構成されることを特徴とする請求項1に記載の動力発生システム(100)。
【請求項5】
前記燃料改質装置(108)は、酸化触媒部分と改質触媒部分とが区別されていることを特徴とする請求項1に記載の動力発生システム(100)。
【請求項6】
前記大流路燃焼器(107)は、前記燃料改質装置(108)の前面面積の約1/2以下の前面面積を有することを特徴とする請求項1に記載の動力発生システム(100)。
【請求項7】
前記大流路燃焼器(107)は、前記ディーゼルエンジンの排気量1リットル当たり約25cm2以下の前面面積を有することを特徴とする請求項1に記載の動力発生システム(100)。
【請求項8】
前記システム(100)は、前記予備燃焼器(106)に入る排気ガスが約215℃になるように作動し、
前記予備燃焼器(106)は、この状態下で、前記噴射燃料の一部分を燃焼させるとともに前記噴射燃料の残りの部分を気化させるように作動するが、排気ガス燃料混合気を約315℃を超えて加熱せず、
前記大流路燃焼器(107)は、この状態下で、前記予備燃焼器(106)からの前記排気ガス燃料混合気が燃焼することにより急速に加熱され、加熱された後、燃料を充分に燃焼させて排気ガス燃料混合気を前記燃料改質装置(108)に入る前に少なくとも約400℃まで加熱するように作動することを特徴とする請求項1に記載の動力発生システム(100)。
【請求項9】
ディーゼルエンジン(101)を運転してNOxを含むリーン排気ガスを生成し、
リーン排気ガスを大流路燃焼器(107)に通過させる前に予備燃焼器(106)に通過させ、
排気ガス中に燃料を導入して前記予備燃焼器(106)内で燃料を気化させることにより、前記大流路燃焼器(107)に気化された燃料を供給し、
リーン排気ガスを前記大流路燃焼器(107)、燃料改質装置(108)、更に、排気ガスのNOxの一部分を吸着するリーンNOxトラップ(109)に順次通過させる動力発生システム(100)の運転方法であって、
前記リーンNOxトラップ(109)を時々、脱硝するステップは、
リーン暖機段階において、気化された燃料を前記大流路燃焼器(107)へ導入して、気化された燃料の一部分を前記大流路燃焼器(107)内で燃焼させることにより、前記燃料改質装置(108)を水蒸気改質温度まで加熱するステップと、
前記燃料改質装置(108)が水蒸気改質温度まで加熱された後、燃料の導入率を増加及び/又は排気ガス中の酸素の流量を減少させて排気ガス−噴射燃料混合気を全体的にリッチにし、これにより、前記燃料改質装置(108)が前記リーンNOxトラップ(109)を脱硝する合成ガスを生成するステップと、を含み、
前記大流路燃焼器(107)は、前記燃料改質装置(108)の平均流路面積よりも大きい平均流路面積および前記燃料改質装置(108)の熱質量の約20%以下の熱質量を有し、
前記燃料改質装置(108)は、少なくとも約500℃まで加熱されて前記リーンNOxトラップ(109)の脱硝のための水蒸気改質反応に触媒作用を及ぼすように、小さい熱質量を有し、
前記リーンNOxトラップ(109)は、前記排気ガス流れが全体的にリーンである時に前記排気ガス流れからNOxを吸着及び蓄積するとともに前記排気ガス流れが全体的にリッチである時に蓄積されたNOxを還元して放出するように機能し、
前記大流量燃焼器(107)は、前記リーン暖機段階中に前記燃料改質装置(108)の少なくとも2倍速く加熱され、加熱された後、前記燃料改質装置(108)への排気ガス流れを少なくとも約400℃に加熱する、ことを特徴とする動力発生システム(100)の運転方法。
【請求項10】
前記大流路燃焼器(107)は、前記リーン暖機段階中に加熱され、加熱された後、受け入れた燃料の少なくとも約30%を酸化させる機能を有していることを特徴とする請求項9に記載の動力発生システム(100)の運転方法。
【請求項11】
マストランスファーの制限により、前記大流路燃焼器(107)が受け入れた燃料の約90%を超えて燃焼するのを防止することを特徴とする請求項10に記載の動力発生システム(100)の運転方法。
【請求項12】
リーン状態の暖段階の間、排気ガスは、約215℃以下の温度で前記予備燃焼器(106)に入り、
前記予備燃焼器(106)は、この温度で、前記噴射燃料の一部分を燃焼させるとともに前記噴射燃料の残りの部分を気化させるように作動するが、排気ガス燃料混合気を約315℃を超えて加熱せず、
前記大流路燃焼器(107)は、排気ガスがこの温度で前記予備燃焼器(106)に入るとき、前記予備燃焼器(106)からの前記排気ガス燃料混合気が燃焼することにより急速に加熱され、加熱された後、燃料を充分に燃焼させて排気ガス燃料混合気を前記燃料改質装置(108)に入る前に少なくとも約400℃まで加熱するように作動することを特徴とする請求項9に記載の動力発生システム(100)の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス後処理を伴うディーゼル動力発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるNOxは環境問題である。米国を含む数カ国では、トラックおよび他のディーゼル車から排出されるNOxを制限する規制が長い間未決定のままである。製造者および研究者らは、それら規制の対処に多大な努力を注いだ。
【0003】
理論混合気の燃焼を利用するガソリン車において、三元触媒によりNOx排出を制御することが知られている。圧縮による発火を利用するディーゼル車において、排気ガスは、概して、三元触媒を有効に作用させるには酸素を多く含み過ぎている。
【0004】
ディーゼル車から排出されるNOxを制御するために、いくつかの解決策が提案されている。ある取り組みはエンジンに集中している。例えば、排気ガスの再循環および空燃混合物の部分的均一化等の技術は有用であるが、これらの技術だけではNOx排出を削減することはできない。他の取り組みでは、車両の排気ガスからNOxを除去する。これらは、希薄燃焼NOx触媒、選択的接触還元(SRC)触媒、およびリーンNOxトラップ(LNTs)を含む。
【0005】
希薄燃焼NOx触媒は、酸素を多く含む状況下でNOxの還元を促進する。酸化雰囲気中におけるNOxの還元は困難である。希薄燃焼NOx触媒に要求される活性、耐久性および作用する温度領域を特定する挑戦への試みがなされてきた。希薄燃焼NOx還元のために排気ガスへ例えばディーゼル燃料等の還元剤を絶え間なく供給する必要があり、これは3%以上の燃料の浪費を招く。一般に、希薄燃焼NOx触媒のピークNOx転化効率は非常に低い。
【0006】
概して、SCRはアンモニアによるNOxの選択還元触媒に言及する。その化学反応は酸化雰囲気中でさえ発生する。NOxは一時的に吸着剤に蓄積することができ、アンモニアは連続的に排気ガス中に供給することができる。SCRはハイレベルのNOx還元を成し遂げることができるが、アンモニアあるいは適当な先駆物質を分配するためのインフラの不足という不利がある。他の懸念は、雰囲気中へのアンモニアの放出の可能性に関わる。
【0007】
LNTsは、リーン状態下でNOxを吸着すると共にその吸着されたNOxをリッチ状態下で還元して放出する素子である。概して、LNTは、NOx吸着剤および触媒を含む。概して、吸着剤は、例えばBaCO3等の塩基性物質あるいはアルカリ土類化合物であり、概して、触媒は、PtおよびRhを含む貴金属の化合物である。リーン排出においては、触媒は、NOx吸着作用を引き起こす酸化反応を促進する。還元環境において、触媒は、炭化水素還元剤をより活性種に変化させる反応、不活性COからより多くの活性水素を生成する水性ガスシフト反応および吸着されたNOxを還元および吸着する反応を活性化させる。典型的な作用プロトコルにおける還元環境は、LNTの再生(脱硝)のため時々排気ガス中に作り出される。
【0008】
蓄積されたNOxを除去するための再生は、脱硫酸化と区別するために脱硝作用と呼ばれており、頻繁には発生しない。脱硝作用のための還元環境は、いくつかの方法で作り出すことができる。1つの方法は、リッチの排出還元剤混合比を作り出すためのエンジンを使用する。例えば、エンジンは、排気ガスを排気する前の1つ以上のシリンダ中の排気ガスに追加の燃料を噴射することができる。還元環境は、エンジンの下流に向けてリーン排気ガス中へ還元剤を噴射することによっても作り出すことができる。いずれの場合も、バルブが使用されていない時に、還元剤の一部分は、通常、排気ガス中の過剰な酸素を消滅させるために消費される。還元剤は、酸素に反応を起こさせるとともに実質的にそれを消費する。還元剤と酸素との反応はLNT内で起こすことができるが、それは、通常、LNTの上流の触媒内で起きる反応であることが望ましく、それによって、反応熱が、再生の度にLNT内で大きい温度上昇を引き起こすことがない。過剰な酸素量を減少させるとともに消滅された消費過剰酸素の還元量を削減するため、エンジンを絞ることができるが、このようにエンジンを絞ることは、いくつかのエンジンの性能に悪影響を及ぼすことがある。
【0009】
特許文献1には、LNTおよびSCR触媒の上流の排気ガスライン内部に形成された燃料改質装置を備えるディーゼル自動車の排気ガス処理システムが開示されている。当該改質装置は、高熱質量を有する。改質装置は、排気ガス温度でディーゼル燃料から合成ガスを生成するためにPtおよびRhを使用する。排気ガス温度で改質装置を効果的に作用させるためには、十分に触媒を活性化させるための比較的多量の触媒を使用することが必要である。改質装置は、過剰な酸素を除去するだけでなく、ディーゼル燃料還元剤をより反応性の高い改質油に転化する。
【0010】
特許文献2には、LNTの上流の排気ガスラインに配置された異なるタイプの燃料改質装置が開示されている。当該改質装置は、酸化触媒と水蒸気触媒との両方を含む。Ptおよび/またはPdは、酸化触媒として作用する。Rhは、改質触媒として作用する。特許文献2のインライン改質装置は、急速に加熱されて水蒸気改質に触媒作用を引き起こすように設計されている。この改質装置による効果的な改質油生成には、約500〜約700℃の温度が要求される。これらの温度は、典型的なディーゼル排気ガス温度よりも実質的に高い。改質装置は、排気ガスをリーンにする噴射率で燃料を噴射することにより加熱され、その結果、噴射燃料は熱を発生するために燃焼する。暖機動作後、燃料噴射率が増加され、およびまたは、リッチ排気ガスをもたらすために酸素流量が低減される。
【0011】
水蒸気改質反応中を通して少なくとも一部分で加熱および作用するように燃料改質装置を設計することは、排気水蒸気温度での動作とは対照的に、触媒要求を低減させ、改質油収率を増加させ、さらに発熱量を減少させる。主に、反応式(1)にあるような一部分の酸化改質を通して改質油生成が行われる場合、
CH1.85+0.5 O2 → CO +0.925 H2 (1)
改質油の1.925モル(COのモル数+H2のモル数)は、燃料中の炭素原子の各モル数から得ることが可能である。CH1.85は、水素比に対する典型的な炭素を有するディーゼル燃料を示す。反応式(2)にあるような水蒸気改質を通して改質油生成が行われる場合、
CH1.85+ H2O → CO +1.925 H2 (2)
改質油の2.925モル(COのモル数+H2のモル数)は、主に、燃料中の炭素原子の各モル数から得ることが可能である。主に、収率は、燃料の限られた転化効率、完全燃焼反応中の改質反応のための限られた選択性、水蒸気改質状態をもたらすための発熱の必要性、および排気ガスを加熱するために要求されるエネルギ損失等に起因して理論量よりも低くなる。それにもかかわらず、効率的に作用させるために予備加熱する必要がある低熱質量改質装置が、予備加熱を要求しない高熱質量改質装置よりもむしろ好まれることは、利益として十分である。
【0012】
低排気ガス温度から特許文献2のインライン改質装置を始動させるのは難しいことがある。改質装置が温められるとともに排気ガスライン燃料噴射を利用して脱硝が起きてからの最低排気ガス温度は、多くの場合、重要な設計要件である。最低始動温度は、適当な触媒を選択することによって確実な範囲にまで低下させることができるが、その手法を使って成し遂げるには限界がある。
【0013】
特許文献3には、特許文献2および着火温度がやや低いインライン改質装置の性能を向上させるために使用される予備燃焼触媒(PCC)が開示されている。PCCは、酸化触媒を含む小さいモノリスであり、燃料改質装置の上流の排気ガスライン内部に形成される。酸化触媒は、モノリス通路の小片のみをコートすることができる。PCCは、機能上、噴射燃料の一部分を酸化させるとともに残留する燃料の殆どを気化させる。気化燃料と排気ガスとは、燃料改質装置に導入される前に高度に混合される。
【0014】
PCCは、排気ガスを大いに加熱することはなく、主とする機能は燃料と排気ガスとを完全に混合させることである。この混合は改質装置着火温度を低下させるが、排気ガス温度が240℃よりも低い場合、PCC改質装置システムを始動させることは、未だに困難であることが立証されている。システムが着火する時でさえも、暖機段階は進行がゆっくりであり、エミッションコントロール性能と燃料損失との両方に悪影響を与える。
【0015】
進歩性があるにせよ、実施可能で且つ信頼性が高い耐久性を有するディーゼル排気ガス後処理システムの長期に亘る切実な必要性が継続している点は、処理可能な動作コスト(燃料損失を含む)を有するとともに、米国環境保護庁(EPA)会議における2010年規制およびトラックおよび他のディーゼル動力車両からのNOx排出を制限するその他の規制に適合するようにNOx排出を低減する。製造者および研究者は、それらの会議に精力を注いできた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2004/090296号公報
【特許文献2】米国特許2004/0050037号公報
【特許文献3】米国特許第7,240,483号
【発明の概要】
【0017】
発明者らのコンセプトの1つは、排気ガスの流れに対して、ディーゼルエンジン、予備燃焼器、主燃焼器(大流路燃焼器)、燃料改質装置、およびリーンNOxトラップの順に含む動力発生システムに関する。リーンNOxトラップの脱硝のために、予備燃焼器は、噴射された燃料の最初の部分を燃焼させるとともに噴射された燃料の残りの部分を気化させるように動作する。気化燃料は、予備燃焼器と主燃焼器との間で排気ガスに混合される。主燃焼器は、燃料の一部分を燃焼させ、排気ガスを加熱するとともに燃料改質装置を加熱するように設計されている。主燃焼器は、主燃焼器を持たないシステムと比較して、主燃焼器が燃料改質装置加熱速度を加速させることができる手段によって、燃料改質装置よりも大きい平均流路サイズ(平均流路面積)および燃料改質装置の約20%以下の熱質量を有する。燃料改質装置は、小さい熱質量を有して、それによって、少なくとも約500℃まで加熱されるとともにリーンNOxトラップの相互脱硝作用を用いて水蒸気改質反応に触媒作用を及ぼす。主燃焼器は、燃料改質装置加熱速度を唯一加速させることができないが、与えられた排気ガス温度から暖機までの間、不焼成の炭化水素の活性を低下させることができるとともに、燃料改質装置が暖機され易い最低排気ガス温度を低くすることができる。
なお、大流路燃焼器は、電熱器を用いて構成してもよい。
【0018】
発明者らの他のコンセプトは、排気ガスの流れに対して、ディーゼルエンジン、燃焼器、燃料改質装置、およびリーンNOxトラップの順に含む動力発生システムに関する。燃焼器は、燃料改質装置よりも大きい平均流路サイズ、燃料改質装置の約20%以下の熱質量、および、燃料改質装置のウォッシュコートを含む酸化触媒に対して少なくとも50%厚く且つ単位面積当たりで少なくとも50%厚い触媒が設けられる酸化触媒ウォッシュコート、を有する。燃焼器は、燃焼器を持たないシステムと比較して、燃料改質装置加熱速度を加速させることができる。
【0019】
さらなる発明者らのコンセプトは、NOxを含むリーン排気ガスを生じるためのディーゼルエンジン動作、燃焼器、燃料改質装置、それから排気ガスからNOxの一部分を吸着するリーンNOxトラップを通して排気ガスを連続して通過させること、を含む動力発生システムの運転方法に関する。時々、リーンNOxトラップは、リーン暖機段階において、燃焼器へ気化燃料を導入するとともに燃焼器中の気化燃料の一部分を燃焼させることにより、水蒸気改質温度まで燃料改質装置を加熱させるステップと、燃料改質装置が水蒸気改質温度まで加熱された後、燃料導入率を増加させるおよび/または燃料が噴射された排気ガス混合気を全体的にリッチ化させるために排気ガス酸素流量を減少させて、これによって、燃料改質装置がリーンNOxトラップを脱硝する合成ガスを生じるステップと、を含むステップによって脱硝される。燃料改質装置は、小さい熱質量を有し、これにより、少なくとも約500℃まで加熱されるとともにリーンNOxトラップの相互脱硝を用いて水蒸気改質反応に触媒作用を及ぼすように設計されている。燃焼器は、燃料改質装置の平均流路サイズよりも大きい平均流路サイズおよび燃料改質装置の約20%以下の熱質量を有し、これにより、燃焼器は、燃料改質装置の低温度始動を容易にする。
【0020】
この要約の第1の目的は、以下のより詳細な説明を容易に理解するための簡略化された形態中の発明者の概念において現在確定されたものである。この要約は、発明者の概念の全ての包括的説明あるいは発明者の考えられる発明の概念のあらゆる組合せではない。発明者の他の概念は、図と共に以下の詳細な説明により一当業者に示唆されるであろう。ここで開示された明細書の記載は、一般化、限定化および以下の請求項のために確保されたそれら発明としての発明者の請求項の最終的な明細書を伴う様々な方法の複合化となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】発明者のコンセプトに関連する例示的な動力発生システムの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図は、発明者らのコンセプトのいくつかを具現化する動力発生システム100の概略図である。該動力発生システム100は、発明者らのコンセプトが適用可能な動力発生システムの唯一ものではないが、ここで説明されるいくつかのコンセプトは、本来、システム100のようなシステムのために開発され、且つ、システム100の個々の構成は、望ましい実施形態に属する。動力発生システム100は、排気マニホールド102によってエンジン101に連結される排気ガス後処理システム103を含む。該排気ガス後処理システム103は、コントローラ111、相対的に太い排気ガスライン105に続く相対的に細い排気ガスライン104を含む。排気ガスライン104内部には、エンジン101から排気ガス流れ方向へ予備燃焼触媒106(PCCあるいは予備燃焼器)および大流路燃焼器107(LCCあるいは主燃焼器)の順に構成されている。相対的に細い排気ガスライン104は、相対的に太い排気ガスライン105に接続されている。排気ガスライン105には、エンジン101から排気ガス流れ方向へ、燃料改質装置108、リーンNOxトラップ109、およびアンモニアSCR触媒110の順に構成されている。燃料噴射装置115は、予備燃焼触媒106の上流の排気ガスライン104へ燃料を噴射するように構成されている。
【0023】
制御装置111は、燃料噴射を制御する。リーンNOxトラップ109の下流の排気ガスライン105には、例えば脱硝等の、燃料噴射を含む動作を開始するための決定を制御装置111に対してアシストするNOxセンサ114が設けられる。燃料噴射の制御をアシストするため、1つ以上の温度センサ112が設けられる。燃料噴射率は、エンジン101に関する情報に基づいて、また、PCC116、LCC107あるいは燃料改質装置108の温度を判定あるいは測定することによって制御することができる。温度センサ113は、脱硫酸化中に特に重要なリーンNOxトラップ109の温度を測定するように構成される。制御装置111は、エンジン制御ユニット(ECU)あるいは切り離された装置とすることができる。
【0024】
例えば燃料改質装置108等の装置内部に耐久性を有する温度センサを配置することは難しく、また、装置から直上流あるいは下流の排気ガスライン中の温度が制御アルゴリズムに利用され、例えば温度センサ112等の温度センサを配置することは有利である。上流の温度はモデルベース制御に有用である。下流の温度は、モデルを使用するあるいは装置と排気ガスとの間の熱的平衡を仮定することで、上流の装置温度を推定するために利用される。
【0025】
エンジン101は、望ましくは、圧縮着火ディーゼルエンジンである。通常、圧縮着火ディーゼルエンジンは、約4〜約21%O2を含む排気ガスを生じる。一般に、エンジン101には、排気ガス再循環(EGR)システムが設けられるとともに吸気スロットルが構成され、排気ガス酸素濃度を低下させるため、あるいは、全てのリッチ排気ガス還元剤混合物を生じるために要求される還元剤の量を減少させるために利用される。エンジン101として、希薄燃焼ガソリンエンジンあるいは予混合圧縮着火エンジンを使用することができる。エンジン101は、NOxおよびNOによって構成されることが考慮されたNOxを含む排気ガスが生じるように動作する。
【0026】
エンジン101からの排気ガスは、マニホールド102によって排気ガスライン104へ導入される。排気ガスライン104および排気ガスライン105は、本質的に、変断面を有する1つの排気ガスラインである。排気ガスライン104および105は、別々の平行な導管によって構成することができるが、単一の導管によって構成することが望ましい。排気ガスライン、すなわちPCC106およびLCC107は、それらが通常の排気ガスラインに設定されるスペース内に収まる断面積を有することが望ましい。この断面積は、エンジン排気量の1リッター当たりで約50cm2以下、より望ましくは約25cm2以下、さらにより望ましくは約15cm2以下である。
【0027】
排気ガスライン104および105は、バルブあるいはダンパーを用いずに構成することが望ましい。特に、排気ガスライン104および105は、LNT109への排気ガス流れを変化させるために使用されるバルブあるいはダンパーを用いずに構成することが望ましい。発明者のコンセプトは、排気バルブあるいはダンパーを有する後処理システムにも適用することができるが、本発明は、好ましくない排気ガス状態から燃料改質装置を保護するとともに加熱作用を促進するために使用されるバルブおよびダンパーを用いないシステムにより広く適用可能である。いずれにせよ、排気ガスライン104および105は、これらの移動可能な部品が、破損の対象になるとともに排気ガス後処理システムの耐久性および信頼性の重大な低下を招くことから、バルブあるいはダンパーを用いずに構成することが望ましい。
【0028】
排気ガスライン104および105に排気バルブあるいはダンパーが存在しない時でさえ、エンジン101の上流の排気ガスラインは、EGRライン内部に排気ガス再循環(EGR)バルブをなお有する。主排気ガスラインから分岐させた側管によって流れを制御するように構成された排気バルブと比較した場合、排気ガス流れの大部分を迂回させるために主排気ガスライン内部に排気バルブを構成する場合、特に、排気バルブは問題がある。より太い導管用の排気バルブは、より細い導管用の排気バルブに対してより破損の対象となる。
【0029】
排気ガスライン104には、LNT109を再生するためのリッチ状態を作り出す排気ガスライン燃料噴射装置115が設けられる。発明者のコンセプトは、LNT109再生のための還元環境を生じさせる他の方法に適用が可能であり、還元剤のエンジン燃料噴射およびディーゼル燃料以外の還元剤の噴射を含む。それにもかかわらず、還元剤は、エンジン101を動作させるために使用されるのと同じディーゼル燃料であることが望ましい。ピストンリングの周囲を通過する燃料およびオイル通路へ入る燃料に起因するオイル希釈を避けるため、還元剤は、エンジン101のシリンダ内部へ噴射するよりも、排気ガスライン104内部へ噴射する方が望ましい。シリンダ内還元剤噴射の更なる不利益は、LNT再生を存続させるためにエンジン101の動作を変更する必要があること、還元剤の噴射パルスの過度なばらつき、エンジン101と排気ガスライン104との間に配置されたターボチャージャおよびEGRバルブにデポジットを形成することを含む。
【0030】
燃料噴射装置115は、還元剤を予備燃焼器106の上流の排気ガスライン104内部へ噴射する。燃料噴射装置115は、予備燃焼器106における着火温度より低い着火温度をもたらすように、予備燃焼器106の前面上に直接燃料を噴霧することが望ましい。予備燃焼器106の機能は、噴射燃料を気化させることであり、噴射されたディーゼル燃料のごく一部分を燃焼させることで生じるエネルギーが利用される。気化燃料は、未気化燃料よりも排気ガスにとても親密に混合され易い。バッフルあるいはそのようなものを選択的に含む短い長さのパイプである混合ゾーンは、予備燃焼器106の下流であって大流路燃焼器107の上流であることが望ましい。
【0031】
予備燃焼器106は、酸化触媒ウォッシュコートを有するモノリス基体を含むことが望ましい。予備燃焼器106のための適当な酸化触媒の例として、PtおよびPdがある。予備燃焼器流路の一部分、例えば20〜80%のみを酸化触媒で被うことが望ましい。予備燃焼器106は、低い排気ガス温度で着火することが望ましい。予備燃焼器106が着火することが可能な低い排気ガス温度の例は、約215℃、約200℃、および約190℃と同程度の低い温度を含む。
【0032】
着火温度及び着火の定義は、技術分野によって異なる。排気ガス後処理において、着火温度は、その装置に供給される排気ガス温度について定義される。着火温度は、適当な組成を含む排ガス流が供給された装置が、その排気ガスシステムの構成における燃焼によってそれ自体を加熱する最低排気ガス温度である。その装置は、着火温度で、その装置自体を転化に十分な程度にまで加熱する。
【0033】
大流路燃焼器107は、混合ゾーンに続く予備燃焼器106の下流の排気ガスライン104内部に構成される。大流路燃焼器は、酸化触媒ウォッシュコートを有するモノリス基体をも含む。いくつかの適当な触媒を利用することができるが、アルミナ−ランタンウォッシュコートが担持されたPdが望ましい。La2O3は、少なくとも単層周辺に供給するために十分な量、例えば、約5〜約20重量%アルミナ量のアルミナの表面上に供給されることが望ましい。Pdは、約10〜約20重量%アルミナ量が供給されることが望ましい。Pdは、Laと相互蒸着あるいはLa被膜として蒸着させることができる。
【0034】
予備燃焼器106は、噴射燃料のごく少量を燃焼させるとともに比較的狭い範囲に対して排気ガスを加熱させるように設計されているのに対し、大流路燃焼器107は、燃料を燃焼させるとともに実質的により広範囲に対して排気ガスを加熱させるように設計され、これにより、着火後、大流路燃焼器107は、燃料改質装置108の下流の暖機動作を十分に促進する程度まで排気ガスを加熱させる。大流路燃焼器107は、後述する典型的な動力発生システム100の概要が今まで以上に詳しく説明されるとともにその動作モードが完了する。
【0035】
燃料改質装置108は、600℃で酸化および水蒸気改質反応に触媒作用を及ぼすための通常でロジウムを含む、効果的な量の貴金属を含む。燃料改質装置108は、小さい熱質量に設計され、これにより、各LNT再生のための水蒸気改質温度まで容易に加熱させることができる。典型的に、小さい熱質量は、薄い金属基板の周囲に燃料改質装置108を構成することにより成し遂げられる。薄い金属基板は、約100μm以下、望ましくは約50μm以下、より望ましくは30μm以下の厚さを有する。
【0036】
水蒸気改質温度は、少なくとも約500℃であり、これは、概して、ディーゼル排気ガス温度を超える。ターボチャージャの下流のディーゼル排気ガス温度は、約110℃〜約550℃まで変化する。望ましくは、燃料改質装置108は、600℃で、排気ガス酸素濃度8モル%のエンジン101からの排気ガスおよび全体的に1.2:1の空撚比を有し、水蒸気改質によって少なくとも約2モル%、より望ましくは少なくとも約4モル%、さらにより望ましくは少なくとも6モル%の改質油が生成される十分な水蒸気改質触媒を含む。この明細書の目的のため、機能的記述は、典型的なディーゼルオイルである米国国内で販売されている2級オイルに基づいてディーゼル燃料がテストされることを含む。
【0037】
燃料改質装置108は、非接触酸化および水蒸気改質触媒の部分を含むことが望ましい。それは、燃料改質装置108の上流部分に酸化触媒ウォッシュコートを設けるとともに燃料改質装置108の下流部分に水蒸気改質触媒ウォッシュコートを設けることが、最も効果的であることがわかる。酸化触媒ウォッシュコートは、大流路燃焼器に関して上述したものと同一とすることができる。望ましい改質触媒は、ジルコニウム−ランタンウォッシュコートが担持されたRhである。La2O3は、少なくとも単層周辺に供給するために十分な量、例えば、約2.5〜約10重量%ジルコニウム量のジルコニウムの表面上に供給されることが望ましい。Rhは、約0.1〜約1.0重量%ジルコニウムの量が供給されることが望ましい。望ましくは、より高濃度が供給される場合に、焼結によってRhの効力を実質的に低下させることができるように、改質ウォッシュコートは、約0.5重量%ジルコニウム以下の貴金属を含む。酸化および触媒ウォッシュコートは、分離あるいは部分的に重複させることができる。
【0038】
改質装置108は、第1に、燃料改質装置108の下流に構成されるLNT109の再生を補助する目的がある。それには、燃料改質装置108がLNT109を脱硝する度に、温度が大きく逸脱することからLNT109を保護するための、燃料改質装置108とLNT109との間の、例えば、ディーゼル微粒子フィルタ(DPF)あるいは不活性モノリス基体等、比較的大きい熱質量を与えることが望ましい。
【0039】
LNTは、リーン状態下でNOxを吸着するとともにリッチ状態下でNOxを還元および放出する装置である。一般に、LNTは、NOx吸着剤および不活性担体と密接に接触する貴金属触媒を含む。NOx吸着剤の例としては、一定の酸化物、炭酸塩、ならびに、例えばMg、Ca、SrおよびBa等のアルカリ土類金属の水酸化物、または例えばKあるいはCs等のアルカリ金属を含む。典型的には、貴金属は、Pt、PdおよびRhの1つ以上からなる。担体は、典型的にモノリスであるが、他の担体組成物を使用することもできる。モノリス担体は、典型的にセラミックスであるが、例えば金属およびSiC等の他の材料をLNT担体として適用することもできる。LNT109は、2つ以上の隔離されたブリックスとして与えられてもよい。
【0040】
アンモニアSCR触媒110は、リーン排気ガス中でNOxをN2へ還元するためのNOxとNH3との間の触媒反応に対して機能的である。アンモニアSCR触媒110は、脱硝中LNT109から放出されるNH3を吸着し、その後、リーン状態下でLNT109から放出されたNOxを還元するために使用される。アンモニアSCR触媒の例として、CU, Zn, V, Cr, Al,Ti, Mn, Co, Fe, Ni, Mo, WおよびCe等の金属酸化物、およびZSM-5あるいはZSM-11等のゼオライト、Cu, Co, Ag, ZnあるいはPtのカチオンのような金属イオンへの置き換えがある。アンモニアSCRは、貴金属を使用して完成させることができるが、SCR触媒110は、実質上、貴金属を使用しないことが望ましい。望ましくは、アンモニアSCR触媒110は、LNT109を脱硫酸化するために要求される温度に耐えられるように設計される。
【0041】
排気ガス後処理システム100は、例えばディーゼル微粒子フィルタ(DPF)および浄化酸化触媒等の他の構成要素を含むことができる。例えばDPFあるいは不活性モノリス等の熱質量は、燃料改質装置108が動作する度にLNT109が過熱するのを防止するため、燃料改質装置108とLNT109との間に配置することができる。
【0042】
通常動作中(リーン状態)、エンジン101は、NOxおよび過剰な酸素を含む排気ガスを生じる。NOxの一部分は、LNT109によって吸着される。アンモニアSCR触媒110は、LNT109の前の脱硝から蓄積されたアンモニアを有する。アンモニアSCR触媒110が蓄積されたアンモニアを含む場合、NOxの付加的な部分は、蓄積されたアンモニアとの反応によってアンモニアSCR触媒110中で減少される。通常、燃料噴射装置115は、この期間中、作動しない
【0043】
時々、LNT109は、リッチ状態において、蓄積されたNOxを除去(脱硝)するために再生する必要がある。通常、脱硝は、動作温度まで加熱されること、そして、改質油を生成するために改質装置108を使用することを含む。通常、改質装置108は、理論比よりも少ない比率で予備燃焼器106の上流の排気ガス中へ燃料を噴射することで加熱され、これにより、排気ガス還元剤混合比は全体的にリーンを維持する。これは、リーン暖機段階と呼ぶことができる。燃焼によって改質装置108が加熱されるとすぐに、燃料噴射率を減少させることができ、および/または、全体的にリッチな排気ガス還元剤を生じるために排気ガス酸素流量が減少され、その結果、予備燃焼器106、大流路燃焼器107、および燃料改質装置108は、排気ガス中の酸素の大部分を消費し、また、燃料改質装置108は、局部的な酸化を生じ、および/または、改質反応が続く。このようにして生成された改質油は、LNT109内部で吸着されたNOxを還元する。NOxのいくらかは、アンモニアSCR触媒110によって吸着されて蓄積されたNH3還元される。
【0044】
制御装置111は、状態に関する基準およびまたは排気ガス後処理システム103の能力あるいはLNT109を構成しているそのものの構成要素に基づいて、LNT109の脱硝をスケジュールする。LNT109脱硝の脱硝スケジュールのための基準は、LNT109のNOx負荷に基づいてもよい。加LNT109のNOx負荷は、NOxが蓄積された期間、NOx蓄積能力を存続すること、飽和度百分率、あるいはこの種の他のパラメータによって特徴付けられる。NOx負荷を推定すること、および/または、NOx蓄積能力を存続させるための多くの方法が提案されている。これらの方法は、一般に、NOx蓄積率の推定値を統合すること、および、結果を推定されたNOx蓄積能力と比較することを含む。
【0045】
NOx蓄積率は、エンジン101から排出されるNOx流量とLNT109から排出されるNOx流量との差異から、あるいは、エンジン101外へのNOx流量とLNT109のNOxトラッピング効率の推定値とを掛け合わせることで、推定することができる。エンジンから排出されるNOx流量は、エンジン動作マップあるいはLNT109の上流の排気ガス中にNOxセンサを使用することで、推定することができる。センサを使用する場合、LNT109外へのNOx流量は、通常、例えばセンサ114等のNOx濃度センサを使用することが予測される。
【0046】
スケジュール脱硝使用することができる他の基準は、後処理システム103の現状の動作に関する基準、あるいは、LNT109の下流で得られたNOx濃度測定値から決定される場合、LNT109を含むそのシステムに関する基準を含む。これらの測定値は、独立した基準、下流の濃度が臨界値を上回る時の再生、あるいは、LNT109の上流のNOx濃度の推定値との組み合わせ、において使用することができ、これにより、LNT作動効率は、決定されるとともに基準として使用することができる。LNT109の動作は、個々に、あるいは、測定することが可能な、例えばSCR触媒110等の、他の装置と組み合わせたLNT109の動作によって、決定することができる。
【0047】
時々、LNT109また、蓄積された硫黄混合物を除去(脱硫酸)するために再生させる必要がある。脱硫酸は、動作温度まで燃料改質装置108を加熱させること、脱硫酸化温度までLNT109を加熱させること、およびリッチ雰囲気を用いて加熱されたLNT109を提供すること、を含む。脱硫酸化温度は、変化するが、典型的に、約500〜約800℃の範囲、典型的に、最適な温度は約650〜約750℃である。下限温度よりも低い温度では、脱硫酸化はとても遅い。上限温度よりも高い温度では、LNT109は損傷する。
【0048】
LNT109は、改質装置108からの熱伝導によって暖められる。この熱を発生させるため、燃料は、排気ガスが全体的にリーンを維持する比率で排気ガスライン4中へ噴射され、これにより、燃料は、予備燃焼器106、大流路燃焼器107および燃料改質装置108中で燃焼する。改質装置108が加熱されると、燃焼噴射率は、LNT109が加熱されている間、改質装置108の温度を維持するように制御される。LNT109の加熱は、LNT109中の燃焼に起因する燃料噴射脈動によって増大される。LNT109が十分に加熱された後、燃料噴射率は、リッチ雰囲気を生じるために増加される。
【0049】
発明者のコンセプトは、第1に、低い排気ガス温度における排気ガス後処理システム103の性能に関して、ここで説明される。予備燃焼器106が十分に低い温度で着火するにしても、大流路燃焼器107がない場合、いくつかの点で性能が不十分となる。1つの潜在的問題は、燃料改質装置108を着火させるのに十分に、予備燃焼器106が排気ガス燃料混合気を加熱することができない点である。もうひとつの問題は、燃料改質装置108が過度に遅く着火し、脱硝開始の決定の応答時間が延びるとともにリーン暖機段階中に多くの燃料を浪費する結果となる点である。さらなる潜在的問題は、リーン暖機段階中に発生する過度の炭化水素である。
【0050】
一般に、燃料改質装置108は、予備燃焼器106よりも高い着火温度を有する。排気ガスが燃料改質装置108の着火温度よりも低い場合、燃料改質装置108を着火させるためには、燃料改質装置108の上流で一定量の燃料を燃焼させる必要がある。予備燃焼器106の着火温度よりも高い温度は、排気ガスが供給された予備燃焼器106でいくらかの燃料の燃焼を引き起こす。この燃焼により発生する熱は、予備燃焼器106を通過する未燃焼燃料の全てあるいは大部分を気化させるのに少なくとも十分であることを意図しているが、排気ガス燃料混合気の温度も燃料改質装置108の着火温度まで上昇させるのに十分である必要はない。
【0051】
原則として、予備燃焼器106は、例えばその全長を延長することにより、触媒を追加する修正を行いって、必要とする付加的な燃焼を達成することが可能であるが、この付加的な燃焼は、予備燃焼器の下流で起こさせることが望ましい。予備燃焼器内部における付加的な燃焼は、燃料の混合不足および予備燃焼器106へ供給される排気ガスに起因して有害なホットスポットが発生する点で望ましくない。このようなホットスポットを防止するため、予備燃焼器106は、排気ガスを約100℃以上加熱しないことが望ましい。より望ましくは、予備燃焼器106は、排気ガスを約75℃以上加熱しない、さらにより望ましくは、排気ガスを約50℃以上加熱しない。
【0052】
付加的な燃焼が予備燃焼器106の下流の装置内で起きる場合、ホットスポットはそれほど存在しない。気化燃料および排気ガスは、予備燃焼器106の下流で混合させることができる。よく混合された混合気は、より均一な燃焼をもたらす。加えて、気化および混合は、燃焼の望ましい程度を成し遂げるために要求される触媒量を減らす。
【0053】
予備燃焼器が燃料改質装置108を着火させるのに十分な燃焼を提供する時でさえ、着火が過度に遅くなることがあり、リーン暖機段階中に多くの燃料を浪費する結果となる。遅い着火段階は、約5秒以上、約10秒以上、それとも約20秒以上を必要とすることがある。着火段階にわたって、大量の排気ガスを加熱する必要がある。燃料改質装置108を通過した熱は、通常、浪費される。加えて、かなりの量の炭化水素の留分は、改質装置を着火温度まで加熱している間、燃料改質装置108あるいはその上流で燃焼されない。この炭化水素は、浪費されるとともに燃料損失に加算される。
【0054】
リーン暖機段階中の燃料改質装置108からスリップした(放出された)炭化水素は、燃料損失への影響とは無関係に、それだけで問題を含む。汚染物質である不完全燃焼の炭化水素は、環境中へ放出される。燃料改質装置108から放出された炭化水素はまた、リーンNOxトラップ109から放出された未還元のNOxと組み合わされる。最終的に、SCR触媒110は、炭化水素によってしばしば触媒作用を阻害する。
【0055】
予備燃焼器106と燃料改質装置108との間に追加の酸化触媒をどのようにして挿入するかという直ちに明確でないこれらの問題を解決する必要がある。燃料改質装置108が酸化触媒をすでに有するとともに混合気およびウォシュコート厚を含むこの触媒の特性がすでに最適化されていると仮定することができる。さらに、燃料改質装置108の上流の付加的な触媒を追加することは、燃料改質装置108の着火を成し遂げるために加熱されなければならないマス量(熱質量)を増加させる。付加的な触媒が望ましいのであれば、燃料改質装置108を大きくすることにより追加すればよい。
【0056】
大流路燃焼器107が燃料改質装置108の前部に配置される付加的な触媒部分を通して改善される1つの方法は、燃料改質装置108のマスから熱的に隔離された比較的小さいマスの触媒を提供することによる。望ましくは、大流路燃焼器107のマスは、燃料改質装置108のマスの約20%未満、より望ましくは燃料改質装置108のマスの約10%未満である。そのマスは、典型的に、燃料改質装置108のマスから隔離されたモノリス構造物である隔離基体上に設けることにより、燃料改質装置108のマスから効果的に熱的に隔離される。
【0057】
モノリス基体は、最初に前端で着火する。排気ガスがモノリスよりも熱い時、排気ガスは、モノリスを加熱させる。排気ガスは、ガス状であるとともに僅かな熱容量を含む。その結果、排気ガスからのエネルギーは、モノリスの前端付近の排気ガスから急速に低下する。モノリスの下流部分が排気ガスから多量のエネルギーを受け取ることができず、前端までは、少なくとも排気ガス温度まで加熱される。
【0058】
排気ガスによって不均一に加熱されることによる温度差は、燃焼反応の効果によって激化される。燃焼反応率は、温度とともに急速に増加する。前端が最初に加熱するので、モノリスの全長に沿って濃度が著しく減少するのとは対照的に、モノリスのいたるところで燃焼反応物が過度である時でさえ、燃焼は、初めのうち、前端部でより急速である。
【0059】
上述したタイプの不均一な加熱は、始動段階において有益である。前端で熱が集中することは、モノリスを縦断して熱が均一に分配されるよりも、より多くの反応がもたらされる。より多くの反応は、始動時間を早め、始動のための燃料の浪費を減少し、且つ始動中の炭化水素の放出を低減させる。
【0060】
モノリス基体を通る熱伝導は、上述した効果に反して、より均一に熱を再分配する軸方向の熱伝導は、モノリス反応モデリングにおいて無視できるとみなされることが多いが、始動時間が長いと、軸方向の熱伝導が重要になる。大流路燃焼器107および燃料改質装置108は、一般的に、できるだけ小さい熱質量を維持するのに役立つ最も薄い壁を有するが、この薄さは、一般的に、金属壁を使用することにより達成され、金属壁は、高い熱伝導率を有している。
【0061】
大流路燃焼器107に酸化触媒を設けることは、2通りの軸方向熱伝導の効果を低減させる。第1に、それは、基体、一般的にはモノリス「ブリック」を有し、物理的に分離され、これにより燃料改質装置108の熱から遮断される。第2に、大流路燃焼器107は、燃料改質装置108よりも著しく低い軸方向熱伝導率を有する。一般に、軸方向熱伝導率は、主として、熱伝導が生じる基体金属を通して断面積が異なることでより低くなる。一般的に流路壁厚が同じであると、流路密度がより低いと、断面積はより小さくなる。さらに、大流路燃焼器107のアスペクト比は、燃料改質装置108に対してより小さい前面面積を提供するように選択されることが望ましい。大流路燃焼器107の前面面積は、燃料改質装置108の前面面積の約1/2よりも小さいことが望ましく、1/4以下であることがより望ましい。都合がよいことに、大流路燃焼器107の前面面積を充分小さくして、通常の排気管に与えられる断面に収めることができる。縮小された前面面積および低減された流路密度の双方は、軸方向熱伝導が生じる金属の断面積を小さくすることになる。
【0062】
大流路燃焼器107が燃料改質装置108の前部に取り付けられる付加的な触媒部分を通して改善することができるもうひとつの方法は、伝達係数における流路サイズ(流路面積)の効果である。モノリス流路を通過する流体流れとモノリス流路壁を被っている触媒との間の熱およびマス伝達係数は、流路サイズに反比例する。それらの高いマス伝達係数を有する細い流路は、一般に、燃料改質装置108にとって望ましい。燃料改質装置108がその動作温度である時、反応率は壁で非常に高くなり、それによって、転化は壁に対するマス伝達の比率によって限定される。マス伝達率が高いほど、触媒容積要求がより小さくなる。より小さい触媒容積は、言い換えると、より安価な触媒であり、且つ、暖機動作を減らす。
【0063】
高い熱伝達係数はまた、燃料改質装置108にとって有益な効果を有する。発熱を伴う燃焼反応は、吸熱を伴う気化改質反応と比較して、燃料改質装置108のより入口側で発生する傾向がある。燃料改質装置108が全体的に自己熱的に動作している時でさえ、熱を燃料改質装置108の前部から燃料改質装置108の後部の方へ連続的に伝達させる必要がある。温度差は、この熱の伝達を促進することが可能である。伝達係数が大きいほど、この差がより小さくなる。均一な改質装置温度は、触媒を保護する点および触媒をピークの効率で使用する点において望ましい。
【0064】
燃料改質装置108にとって高い伝達係数が望ましいのに対して、燃料改質装置108の前の大流路燃焼器107によって提供される比較的少量の酸化触媒には、比較的低い伝達係数が望ましい。大流路燃焼器107が排気ガスの温度まで加熱されると、低い熱伝達係数はいくらか不利になることがあるが、排気ガスからの熱の大部分が大流路燃焼器107によってまだ取り出されているのであれば、それほど重大なことではない。大流路燃焼器107が排気ガス温度を超え始めると、低い熱伝達係数は有利になる。壁での反応に起因して壁が排気ガス温度を超えて加熱されると、反応率はまだ比較的低く、且つ、還元剤は過度に利用可能である。加熱率は、排気ガスに対する熱損失によって減少される。排気ガスに対する熱損失率の減少は、壁加熱率を増加させる。結局、壁は、減少したマス伝達係数による悪影響が著しくなるのに十分に加熱されるが、そのような局面において、転化率は、大流路燃焼器107の目的のために十分に高くなる。全体的に、減少した伝達係数は、伝達係数が燃料改質装置108のものと同じくらい高いのであれば、より早く、大流路燃焼器が高い転化率に到達することを可能にする。
【0065】
比較的低い伝達係数が大流路燃焼器107にとって望ましい、それらを過度に低くするべきではない。とりわけ、燃料改質装置108の伝達係数は、約1/2〜1/4が望ましい。熱伝達係数は、相似の断面を有する通路に対する水力直径に比例する。燃料改質装置108にとって典型的な流路水力直径は約1.0〜約1.5mmであるのに対して、大流路燃焼器107にとって望ましい流路水力直径は、典型的に約3〜約12mm、より望ましくは約3.5〜約6mmである。
【0066】
大流路燃焼器107が燃料改質装置108の前に設けられる付加的な触媒部分を通して改善されるもうひとつの方法は、燃料改質装置で使用されるよりも高い単位表面積当たりの活性酸化触媒濃度を提供することによる。その濃度は、より厚いウォッシュコートを提供することにより増加させることが望ましい。主に、ウォッシュコート中の濃度をより高くすることにより活性触媒の濃度を高めることができるが、実際には、ウォッシュコート中の濃度は典型的にすでに極限まで増加しているので、通常、それは不可能である。表面原子のみが触媒に対して活性である。触媒濃度が増加すると、触媒は、焼結の影響をより受け易くなる。焼結は、触媒分子が成長したものであり、表面部分における還元をもたらす。高温でのリーンリッチとの間のサイクルは、排気ガス後処理システム103の触媒が焼結の影響を著しく受け易くする。
【0067】
燃料改質装置108中のウォッシュコートは、通常、実質的に減少される時点あるいは酸性の戻り体が到着するまで増厚されていく。ウォッシュコートが累進的に増厚されると、モノリス通路面積がウォッシュコート層によって縮小されるのに起因して、付加的な表面積の利点は、さらに累進的に大きくなるために相殺される。より重要なのは、ウォッシュコートを通じた拡散が律速段階となり、これにより、著しくコストが増加する一方で、付加的な厚さが僅かな利益がもたらす点である。
【0068】
厚いウォッシュコートが燃料改質装置108として使用される場合、より厚いウォッシュコートがコストに対して利益が僅かであるのであれば、より厚いウォッシュコートは、実質的な利益をもたらすことができ、また、大流路燃焼器107として使用されるのであれば、コスト効率がよい。加熱の初期段階の間、燃焼率は低く、且つ、拡散限界は著しく少ない。それにより、付加的なウォッシュコート厚は、大流路燃焼器107の機能の重要なものの1つである暖機段階の初期段階を効果的に加速させる。より大きい流路直径により、より厚いウォッシュコートの影響を低下させる通路は重要ではない。大流路燃焼器107の総表面積は燃料改質装置108の総表面積よりも小さいので、そのウォッシュコートを厚くするコストは、さほどかからない。望ましくは、大流路燃焼器107の酸化触媒ウォッシュコートは、その後の燃料改質装置108の酸化触媒ウォッシュコートの少なくとも約50%厚く、より望ましくは少なくとも約2倍厚く、また随意には少なくとも約4倍の厚みである。
【0069】
リーン暖機段階を含む、脱硝の経過を通じて、約10gの炭化水素が排気ガスライン104中へ噴射される。望ましくは、システム100は、未燃焼炭化水素(UHC)のようなLNT109をいつのまにか通過するこの噴射された炭化水素の量を、排気ガス温度が比較的低い時に噴射された量の約25%あるいはそれよりも少ない量に制限する。システム100は、250℃の排気ガス温度に低下するまで、このUHC制限に対処するように適応させることが望ましく、より望ましくは約210℃、さらには約190℃に至るまで適応させることがより望ましい。UHCの排気管末端部排出は、浄化酸化触媒によってさらに制限することができる。UHCスリップの量は、排気ガス流量に依存される。一般に、排気ガス流量は、排気ガス温度が低い場合に低く、これらの目標を達成することを容易にする。システム100における低級な排気ガス流量は、これらの目標を達成したか否かを判断するのに利用される。
【0070】
噴射燃料は、400℃で低流リーン状態下で大流路燃焼器107において約90%程度の転化を受けることが望ましく、より望ましくは約70%程度であることが望ましい。アイドル時の排気ガス流量は、低流れの典型的な特徴である。転化は、マス伝達率を制限することによって制限することができるマス伝達係数と大流路燃焼器107の表面積との間の関数である。転化率がマス伝達限界である場合、転化率は僅かに温度依存であるが、それにもかかわらず排気ガス流量の関数である。転化は、高い流量で、低い流量よりもより均一である。大流路燃焼器107内で生じる燃焼量を制限することは望ましく、何故なら、燃料による熱のいくらかは、水蒸気改質反応を活性化させるために改質装置108で利用されるからである。燃焼と水蒸気改質とが極めて接近して行われることは、1つのプロセスが他で発生する熱を利用すること、ピーク温度を低下させること、および、行われる水蒸気改質の量を増加させること、を容易にする。一度加熱されると、LCC107は典型的に、少なくとも受け入れた燃料の約30%を燃焼する。
【0071】
上述したように、その解決が、例えばLNT109を脱硝する等、排気ガスへ燃料を添加することである場合、改質装置108は、リーン暖機段階で加熱される。改質装置108の温度がその着火温度よりも低い間は、燃料噴射は、PCC106およびLCC107の動作に基づいて制御されることが望ましい。
【0072】
具体例としての制御システムにおいて、目標燃料噴射率は、温度と排気ガス流量との関数として設定される。目標燃料噴射率は、排気ガス空撚比、排気ガス燃料混合気の断熱燃焼温度、あるいは排気ガス処理装置温度が上昇する目標温度上昇率に関連して表すことができる。目標は、許容される炭化水素スリップの量における限度に制約されて最大暖機率を提供するために設定される。その温度は、PCC106、LCC107、あるいはこれらの装置の1つの上流または下流の排気ガス温度を測定あるいは推定することが可能である。望ましい実施形態において、その温度は、PCC106およびLCC107を単一の熱質量として扱うとともにそのマスの温度と排気ガスとの間が平衡であると仮定するモデルによって決定される。そのモデルは、排気ガス流量と温度との関数である燃料転化率を含む。一度マスが燃料改質装置108の着火温度まで加熱されると、燃料噴射制御は、燃料改質装置108の暖機および燃料の進歩的特性に基づく制御に移行する。一度燃料改質装置108が水蒸気改質温度まで加熱されると、燃料噴射制御は、全体的なリッチ状態下における合成ガスの生成に移行する。
【0073】
以下の請求項により描写された本発明は、いくつかの概念、構成要素および特徴的事項に関連して示されるおよび/または説明される。特定構成要素あるいは特徴が、いくつかの概念のうちの1つだけあるいは実例あるいは広いおよび狭い用語のいずれかについてここに開示されると同時に、それらの広いおよび狭い概念における構成要素あるいは特徴的事項は、それらの広いあるいは狭い概念における他の構成要素あるいは特徴的事項の1つ以上と組み合わせることができ、そのような組み合わせは、当業者により必然的に理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、ディーゼルおよび希薄燃焼ガソリンエンジンからのNOx放出制御に有用である。
図1