特許第5733991号(P5733991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5733991遮水シートの接合部構造及び遮水シートの接合方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733991
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】遮水シートの接合部構造及び遮水シートの接合方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 1/00 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   B09B1/00 FZAB
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-5925(P2011-5925)
(22)【出願日】2011年1月14日
(65)【公開番号】特開2012-143733(P2012-143733A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2012年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】井川 幸一
(72)【発明者】
【氏名】大槻 貴志
(72)【発明者】
【氏名】山崎 智弘
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−023487(JP,A)
【文献】 特開2004−160267(JP,A)
【文献】 特開2009−179990(JP,A)
【文献】 特開平08−333737(JP,A)
【文献】 特開2008−107338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00
E02B 3/04−3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面素材が合成樹脂からなる被接合側の遮水シートの端縁から平面視中央部に向けて一定深さの切欠きが形成され、少なくとも前記切欠きの縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、少なくとも表面素材が合成樹脂からなる接合側の遮水シートが、前記被接合側の遮水シートの端縁からはみ出すように配置され、
前記被接合側の遮水シート、又は、前記接合側の遮水シートの一方の縁部に沿って、他方の遮水シートの縁部を覆う帯状袋部が形成され、
該帯状袋部は、前記遮水シートと同一素材からなる所定幅の帯状シートが、その一側端を、前記被接合側の遮水シート、又は、前記接合側の遮水シートの一方の、縁部から平面視中央部寄りの位置に密着固定してなり、かつ、前記接合側の遮水シート及び前記帯状シートの、所定幅の密着固定部が溶着され、前記被接合側の遮水シートの、前記切欠きの縁部に沿って延び連続的に前記端縁にも回りこむ態様で、前記密着固定部を囲む押出溶着部が形成され、
少なくとも前記帯状袋部とそれによって覆われる前記他方の遮水シートとの間にシール材が介在され、かつ、前記帯状袋部に空間が残された状態で、前記帯状袋部と前記他方の遮水シートとが密着固定されて、前記帯状袋部と前記シール材と前記他方の遮水シートとにより、密閉室が形成されていることを特徴とする遮水シートの接合部構造。
【請求項2】
前記帯状袋部は、前記一方の遮水シートの縁部に沿って、前記他方の遮水シートを受け入れるための開放端部を備え、該開放端部に前記シール材が介在されて、前記他方の遮水シートと密着固定されていることを特徴とする請求項1記載の遮水シートの接合部構造。
【請求項3】
前記帯状袋部を挟み込むように押え板が配置され、該押え板、前記被接合側の遮水シート、前記接合側の遮水シート、前記帯状袋部、及び、前記シール材の各部材を貫通する穴に挿通される締結部材により、前記各部材が密着固定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の遮水シートの接合部構造。
【請求項4】
前記被接合側の遮水シートは既設の遮水シートであり、その一部を除去して新たに形成された縁部に沿って、所定幅以上の重ね合わせ部を確保して、前記接合側の遮水シートが配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の遮水シートの接合部構造。
【請求項5】
少なくとも表面素材が合成樹脂からなる被接合側の遮水シートの端縁から平面視中央部に向けて一定深さの切欠きを形成し、少なくとも前記切欠きの縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、少なくとも表面素材が合成樹脂からなる接合側の遮水シートを、前記被接合側の遮水シートの端縁からはみ出すように配置し、
該遮水シートと同一素材からなる所定幅の帯状シートの一側端を、前記被接合側の遮水シート、又は、前記接合側の遮水シートの一方の、縁部から平面視中央部寄りの位置に密着固定し、かつ、前記接合側の遮水シート及び前記帯状シートの、所定幅の密着固定部を溶着し、前記被接合側の遮水シートの、前記切欠きの縁部に沿って延び連続的に前記端縁にも回りこむ態様で、該密着固定部を囲むようにして、押出溶着部を形成して、前記被接合側の遮水シート、又は、前記接合側の遮水シートの一方の縁部に沿って、他方の遮水シートの縁部を覆う帯状袋部を形成し、
少なくとも前記帯状袋部とそれによって覆われる前記他方の遮水シートとの間にシール材を介在させ、かつ、前記帯状袋部に空間を残した状態で、前記帯状袋部と前記他方の遮水シートとを密着固定して、前記帯状袋部と前記シール材と前記他方の遮水シートとにより、密閉室を形成することを特徴とする遮水シートの接合方法。
【請求項6】
前記帯状袋部に、前記一方の遮水シートの縁部に沿って、前記他方の遮水シートを受け入れるための開放端部を設け、該開放端部に前記シール材を介在させて、前記他方の遮水シートと密着固定することを特徴とする請求項5記載の遮水シートの接合方法。
【請求項7】
前記帯状袋部を挟み込むように押え板を配置し、該押え板、前記被接合側の遮水シート、前記接合側の遮水シート、前記帯状袋部、及び、前記シール材の各部材を貫通する穴を形成し、該穴に締結部材を挿通して、前記各部材を密着固定することを特徴とする請求項5又は6記載の遮水シートの接合方法。
【請求項8】
既設の遮水シートである、前記被接合側の遮水シートの一部を除去し、それによって新たに形成された縁部に沿って、所定幅以上の重ね合わせ部を確保して、前記接合側の遮水シートを配置することを特徴とする請求項から7のいずれか1項記載の遮水シートの接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水シートの接合部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水域における管理型廃棄物処分場等の造成には、堤内から堤外への有害物質の漏出を防ぐための高い遮水性が要求されることから、一般に、遮水型護岸が用いられる。この遮水型護岸は、鋼製の矢板や、ケーソン等のコンクリート製の構造物を並べて築造するものや、自然石等を用いた傾斜堤にて築造するもの等、その構造は必要に応じて適宜選択されている。ここで、自然石等を用いた傾斜堤にて築造される遮水型護岸の場合には、その遮水性を確保するために、遮水シートが用いられる。遮水シートは一定幅に製造されたものを施工現場に搬入し、設置面積に応じて遮水シートを多数接合して用いられ、築堤表面に設置、又は、更に砕石で覆い隠して堤体の内部構造として設置されるものである。なお、この遮水シートは、遮水性が要求される様々な場所においても用いられている。この遮水シートの接合方法は、一般的には熱溶着が用いられるが、熱溶着できない箇所については特別な方法が用いられている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−179990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、上記遮水シートの接合作業は、新規に敷設する場合のみならず、部分的に補修が必要となる場合もある。又、その設置の態様如何により、適宜更新が必要な場合も想定される。このような様々なケースにおいて、遮水シートの接合部における遮水性を容易にかつ十分に確保することが求められている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、遮水シートの接合部の接合作業を確実に行い、遮水性を十分に確保することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)少なくとも表面素材が合成樹脂からなる被接合側の遮水シートの縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、少なくとも表面素材が合成樹脂からなる接合側の遮水シートが配置され、前記被接合側の遮水シート、又は、前記接合側の遮水シートの一方の縁部に沿って、他方の遮水シートの縁部を覆う帯状袋部が形成され、該帯状袋部は、前記遮水シートと同一素材からなる所定幅の帯状シートが、その一側端を、前記被接合側の遮水シート、又は、前記接合側の遮水シートの一方の、縁部から平面視中央部寄りの位置に密着固定してなり、かつ、前記接合側の遮水シート及び前記帯状シートの、所定幅の密着固定部が溶着され、該密着固定部を囲むようにして、押出溶着部が形成され、少なくとも前記帯状袋部とそれによって覆われる前記他方の遮水シートとの間にシール材が介在され、かつ、前記帯状袋部に空間が残された状態で、前記帯状袋部と前記他方の遮水シートとが密着固定されて、前記帯状袋部と前記シール材と前記他方の遮水シートとにより、密閉室が形成されている遮水シートの接合部構造。
【0007】
本項に記載の遮水シートの接合部構造は、被接合側の遮水シート、又は、接合側の遮水シートの一方の縁部に沿って形成された帯状袋部によって、他方の遮水シートの縁部が覆われるものである。
又、少なくとも帯状袋部とそれによって覆われる他方の遮水シートとの間にシール材が介在され、かつ、帯状袋部に空間が残された状態で、帯状袋部と他方の遮水シートとが密着固定されて、帯状袋部とシール材と他方の遮水シートとにより、密閉室が形成されているものである。そして、この密閉室の密閉性を確認することで、被接合側の遮水シートの縁部と、接合側の遮水シートの縁部との、接合部における遮水性の確認が可能なものとなる。
【0008】
しかも、帯状袋部が、遮水シートと同一素材からなる所定幅の帯状シートの一側端を、被接合側の遮水シート、又は、接合側の遮水シートの一方の、縁部から平面視中央部寄りの位置に密着固定してなり、かつ、前記接合側の遮水シート及び前記帯状シートの、所定幅の密着固定部が溶着され、該密着固定部を囲むようにして、押出溶着部が形成されることにより、十分な密閉性が確保されるものである。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記被接合側の遮水シートの端縁から平面視中央部に向けて一定深さの切欠きが形成され、少なくとも前記切欠きの縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、前記接合側の遮水シートが、前記被接合側の遮水シートの端縁からはみ出すように配置され、前記押出溶着部が、前記被接合側の遮水シートの、前記切欠きの縁部に沿って延び連続的に前記端縁にも回りこむ態様で、形成されている遮水シートの接合部構造(請求項1)。
本項に記載の遮水シートの接合部構造は、接合側の遮水シートの縁部から平面視中央部に向けて一定深さの切欠きが形成され、少なくとも前記切欠きの縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、前記接合側の遮水シートが配置されてなるものであり、被接合側の遮水シートの縁部と、接合側の遮水シートの縁部との接合部が、直線状である場合のみならず、その他の態様であっても、上記(1)項と同様の作用効果を奏するものである。しかも、接合側の遮水シートが、被接合側の遮水シートの端縁からはみ出すように配置され、押出溶着部が、被接合側の遮水シートの、切欠きの縁部に沿って延び連続的に端縁にも回りこむ態様で、形成されていることにより、押出溶着部が被接合側の遮水シートの端縁にも回りこみ、十分な密閉性が確保されるものとなる。
【0010】
(3)上記(1)(2)項において、前記帯状袋部は、前記一方の遮水シートの縁部に沿って、前記他方の遮水シートを受け入れるための開放端部を備え、該開放端部に前記シール材が介在されて、前記他方の遮水シートと密着固定されている遮水シートの接合部構造(請求項2)。
本項に記載の遮水シートの接合部構造は、帯状袋部が形成された一方の遮水シートの縁部に沿って、他方の遮水シートを受け入れるための開放端部を備えることで、被接合側の遮水シートと接合側の遮水シートとの重ね合わせ部が容易に確保できると共に、この開放端部にシール材を介して、他方の遮水シートの縁部が挟持されることで、被接合側の遮水シートの縁部と、接合側の遮水シートの縁部との接合部における遮水性が確保されるものである。
【0011】
(4)上記(1)から(3)項において、前記帯状袋部を挟み込むように押え板が配置され、該押え板、前記被接合側の遮水シート、前記接合側の遮水シート、前記帯状袋部、及び、前記シール材の各部材を貫通する穴に挿通される締結部材により、前記各部材が密着固定されている遮水シートの接合部構造(請求項3)。
本項に記載の遮水シートの接合部構造は、帯状袋部を挟み込むように押え板が配置され、この押え板と、被接合側の遮水シートと、接合側の遮水シートと、これら一方の遮水シートに設けられた帯状袋部と、シール材の各部材とを貫通する穴に挿通される締結部材(例えばボルト等)により、各部材が密着固定される。そして、被接合側の遮水シートの縁部と、接合側の遮水シートの縁部との接合部における遮水性が確保されるものである。
【0012】
(5)上記(1)から(4)項において、前記被接合側の遮水シートは既設の遮水シートであり、その一部を除去して新たに形成された縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、前記接合側の遮水シートが配置されている遮水シートの接合部構造(請求項4)。
本項に記載の遮水シートの接合部構造は、被接合側の遮水シートが既設の遮水シートであり、その一部を除去して新たに形成された縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、接合側の遮水シートが配置されているものであり、遮水シートを部分的に補修や更新する必要が生じた場合に、上記(1)から(4)項のいずれかの作用効果を奏するものである。
【0013】
(6)上記(1)から(5)項記載の遮水シートの接合部において、前記密閉室にエアポンプを接続し、前記密閉室内を加圧して、この密閉室の密閉性を確認する、遮水シートの接合部構造の遮水性試験方法。
本項に記載の、遮水シートの接合部構造は、被接合側の遮水シートの縁部と、接合側の遮水シートの縁部との接合部に形成された密閉室の密閉性を確認することで、被接合側の遮水シートの縁部と、接合側の遮水シートの縁部との接合部における遮水性の確認を行なうものである。
【0014】
(7)少なくとも表面素材が合成樹脂からなる被接合側の遮水シートの縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、少なくとも表面素材が合成樹脂からなる接合側の遮水シートを配置し、該遮水シートと同一素材からなる所定幅の帯状シートの一側端を、前記被接合側の遮水シート、又は、前記接合側の遮水シートの一方の、縁部から平面視中央部寄りの位置に密着固定し、かつ、前記接合側の遮水シート及び前記帯状シートの、所定幅の密着固定部を溶着し、該密着固定部を囲むようにして、押出溶着部を形成して、前記被接合側の遮水シート、又は、前記接合側の遮水シートの一方の縁部に沿って、他方の遮水シートの縁部を覆う帯状袋部を形成し、少なくとも前記帯状袋部とそれによって覆われる前記他方の遮水シートとの間にシール材を介在させ、かつ、前記帯状袋部に空間を残した状態で、前記帯状袋部と前記他方の遮水シートとを密着固定して、前記帯状袋部と前記シール材と前記他方の遮水シートとにより、密閉室を形成する遮水シートの接合方法。
【0015】
本項に記載の遮水シートの接合方法は、被接合側の遮水シート、又は、接合側の遮水シートの一方の縁部に沿って形成する帯状袋部によって、他方の遮水シートの縁部を覆うものである。
又、帯状袋部と他方の遮水シートとの間にシール材を介在させ、かつ、帯状袋部に空間を残した状態で、帯状袋部と他方の遮水シートとを密着固定して、帯状袋部とシール材と他方の遮水シートとにより、密閉室を形成し、この密閉室の密閉性を確認することで、被接合側の遮水シートの縁部と、接合側の遮水シートの縁部との、接合部における遮水性の確認が可能なものとなる。
【0016】
しかも、帯状袋部を、遮水シートと同一素材からなる所定幅の帯状シートの一側端を、被接合側の遮水シート、又は、接合側の遮水シートの一方の、縁部から平面視中央部寄りの位置に密着するよう固定し、かつ、前記接合側の遮水シート及び前記帯状シートの、所定幅の密着固定部を溶着し、該密着固定部を囲むようにして、押出溶着部を形成することにより、十分な密閉性を確保するものである。
【0017】
(8)上記(7)項において、前記被接合側の遮水シートの端縁から平面視中央部に向けて一定深さの切欠きを形成し、少なくとも前記切欠きの縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、前記接合側の遮水シートを、前記被接合側の遮水シートの端縁からはみ出すように配置し、前記押出溶着部を、前記被接合側の遮水シートの、前記切欠きの縁部に沿って延び連続的に前記端縁にも回りこむ態様で形成する遮水シートの接合方法(請求項5)。
本項に記載の遮水シートの接合方法は、接合側の遮水シートの縁部から平面視中央部に向けて一定深さの切欠きを形成し、少なくとも前記切欠きの縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、前記接合側の遮水シートを配置するものであり、被接合側の遮水シートの縁部と、接合側の遮水シートの縁部との接合部が、直線状である場合のみならず、その他の態様であっても、上記(7)項と同様の作用効果を奏するものである。
【0018】
(9)上記(8)項において、前記帯状袋部に、前記一方の遮水シートの縁部に沿って、前記他方の遮水シートを受け入れるための開放端部を設け、該開放端部に前記シール材を介在させて、前記他方の遮水シートと密着固定する遮水シートの接合方法(請求項6)。
本項に記載の遮水シートの接合方法は、帯状袋部が形成された一方の遮水シートの縁部に沿って、他方の遮水シートを受け入れるための開放端部を設けることで、被接合側の遮水シートと接合側の遮水シートとの重ね合わせ部を容易に確保すると共に、この開放端部にシール材を介して、他方の遮水シートの縁部を挟持することで、被接合側の遮水シートの縁部と、接合側の遮水シートの縁部との接合部における遮水性を確保するものである。
【0019】
(10)上記(8)(9)項において、前記帯状袋部を挟み込むように押え板を配置し、該押え板、前記被接合側の遮水シート、前記接合側の遮水シート、前記帯状袋部、及び、前記シール材の各部材を貫通する穴を形成し、該穴に締結部材を挿通して、前記各部材を密着固定する遮水シートの接合方法(請求項7)。
本項に記載の遮水シートの接合構造は、帯状袋部を挟み込むように押え板を配置し、この押え板と、被接合側の遮水シートと、接合側の遮水シートと、これら一方の遮水シートに設けられた帯状袋部と、シール材との各部材を貫通する穴に挿通される締結部材(例えばボルト等)により、各部材を密着固定する。そして、被接合側の遮水シートの縁部と、接合側の遮水シートの縁部との接合部における遮水性を確保するものである。
【0020】
(11)上記()から(10)項において、既設の遮水シートである、前記被接合側の遮水シートの一部を除去し、それによって新たに形成された縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、前記接合側の遮水シートを配置する遮水シートの接合方法(請求項8)。
本項に記載の遮水シートの接合方法は、被接合側の遮水シートが既設の遮水シートであり、その一部を除去して新たに形成された縁部に沿って、所定幅の重ね合わせ部を確保して、接合側の遮水シートを配置することで、遮水シートを部分的に補修や更新する必要が生じた場合に、上記()から(10)項のいずれかの作用効果を奏するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明はこのように構成したので、遮水シートの接合部の接合作業を確実に行い、遮水性を十分に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る遮水シートの接合部構造を、部分的に透視図で示した平面図である。
図2図1のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る遮水シートの接合部構造10は、既設の遮水シートの端辺から裂け目が生じ、その破損部分に補修を行った場合を例示したものである。そして、図1図2に示されるように、既存の、被接合側の遮水シート12の縁部から平面視中央部に向けて一定深さの切欠き14を形成して、亀裂が生じた部分を除去し、この切欠き14を、接合側の遮水シート16で塞いだものである。なお、図示の例では、切欠き14及び接合側の遮水シート16は、最も単純な形状として平面視長方形に形成されているが、適宜形状を選択、変更して実施することが可能である。
【0024】
より具体的には、被接合側の遮水シート12の縁部12aに沿って、所定幅Wst(図2)以上の重ね合わせ部(図1に斜線部でも表示)を確保して、接合側の遮水シート16が配置され、接合側の遮水シート16の縁部16aに沿って、被接合側の遮水シート12の縁部12aを覆う帯状袋部18が形成されている。帯状袋部18は、双方の遮水シート12、16と同一素材からなる所定幅の帯状シート20の一側端の、所定幅Wi(図2)の部分が、接合側の遮水シート16の、縁部16aから所定幅Wo(図2)だけ平面視中央部寄りの位置に密着するよう固定され、接合側の遮水シート16の縁部16aに沿って、被接合側の遮水シート12を受け入れるための開放端部22が形成されたものである。
【0025】
図示の例では、長方形の切欠き14が形成された結果、コ字状をなす被接合側の遮水シート12の縁部12aに沿って帯状シート20もコ字状に配置されることで、コ字状の帯状袋部18が形成されている。なお、被接合側の遮水シート12、接合側の遮水シート16及び帯状シート20は、少なくとも表面素材がポリ塩化ビニル、ポリエチレン、合成ゴム等の合成樹脂からなる、遮水性を有する柔軟なシート材である。そして、接合側の遮水シート16及び帯状シート20の、所定幅Wiの密着固定部24は溶着され、この密着固定部24を囲むようにして、前記合成樹脂が溶け出した押出溶着部26が形成されている。よって、開放端部22は、図1の左右方向及び下方向の三方に開放する態様をなしている。
なお、図1に示される例では、押出溶着部26は太線で示されるように、切欠き14の縁部に沿って延び、連続的に被接合側の遮水シート12の端縁にも回りこむ態様で形成されることで、十分な密閉性が確保されるように、接合側の遮水シート16は、被接合側の遮水シート12の端縁(図1の上端辺)から、若干はみ出すように配置されている。
【0026】
そして、開放端部22にシール材28と、必要に応じ緩衝材30が介在されて、被接合側の遮水シート12と密着固定するため、帯状袋部18を挟み込むように、シール材28を介して押え板32が配置される。更に、被接合側の遮水シート12、接合側の遮水シート16、帯状袋部18(帯状シート20)、シール材28、緩衝材30、押え板32の各部材を貫通する穴を形成して、この貫通穴に締結部材であるボルト36を挿通し、ナット38と共に締め付けることで、前記各部材が密着固定されている。
【0027】
この際、帯状袋部18に空間が残された状態で、帯状袋部18と被接合側の遮水シート12とが密着固定されることで、帯状袋部18と、シール材28と、緩衝材30と、被接合側の遮水シート12とにより、密閉室40が形成される。本実施の形態では、密閉室40は、図1に示されるように、平面視コ字状をなす被接合側の遮水シート12の縁部12aに沿って、平面視コ字状に連続する管状室となる。なお、図2中の符号34は、角ワッシャーであり、ボルト36及びナット38による軸力を、押え板32に対して適切に分散付与するものである。
【0028】
本実施の形態では、シール材28にはアスファルト系ブチルテープが、緩衝材30にはラバースポンジ(EPDM)が用いられる。又、耐腐食性等を考慮して、押え板32にはポリ塩化ビニル(PVC)板が用いられ、角ワッシャー34、ボルト36及びナット38はステンレス合金(SUS304)製である。そして、シール材28は、ボルト36及びナット38を締め付けることによって、被接合側の遮水シート12、接合側の遮水シート16、帯状袋部18(帯状シート20)に圧着して、厚みが減少してその減少分がはみだすように変形し、十分な止水性を発揮するものである。また、緩衝材30は、ボルト36及びナット38の締め込み時に、シール材28に付与する荷重が大きすぎて、シール材28のはみだしが過大となることを、ほど良く抑制するための、止水性クッションとして機能するものである。
【0029】
なお、図2の例における各部の具体的寸法は、シール材28、緩衝材30、押え板32、角ワッシャー34の幅Wは65mm、被接合側の遮水シート12、接合側の遮水シート16及び帯状シート20の厚みは3mm、シール材28の単体での厚みは4mm、緩衝材30の単体での厚みは5mm、押え板32及び角ワッシャー34の厚みは5mmであり、ボルト16の呼び径は16mm(M16)である。更に、重ね合わせ部の幅Wstは200〜300mm、帯状袋部18の設置幅(Wo+Wi)は300〜400mm、密閉室40の幅W40(図2)は50〜200mmであり、被接合側の遮水シート12の縁部12aと、帯状シート20の縁部20aとの位置は、平面視で一致している。しかしながら、これらの値は、適宜、変更して実施されるものであることは理解されるであろう。
【0030】
さて、上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。
まず、遮水シートの接合部構造10は、接合側の遮水シート16の縁部16aに沿って形成された帯状袋部18によって、被接合側の遮水シート12の縁部12aが覆われるものである。しかも、少なくとも帯状袋部18とそれによって覆われる被接合側の遮水シート12との間にシール材28が介在され、かつ、帯状袋部18に空間が残された状態で、帯状袋部18と被接合側の遮水シート12とが密着固定されて、帯状袋部18とシール材28と被接合側の遮水シート12とにより、密閉室40が形成される。
【0031】
そして、この密閉室40の密閉性を確認することで、被接合側の遮水シート12の縁部12aと、接合側の遮水シート16の縁部16aとの、接合部における遮水性の確認が可能となり、接合部の遮水性が確実に確保されるものである。
例えば、接合側の遮水シート16及び帯状シート20の、任意の一部箇所にエアホースを挿通して、密閉室40にエアポンプを接続する。そして、エアポンプで密閉室40内を加圧すると共に、被接合側の遮水シート12、接合側の遮水シート16、帯状袋部18の表面に水を散布して水跳ねや泡立ちの有無を確認する等により、密閉室40の密閉性を確認することができる。又、一定空気量を送気した上で減圧しなければ遮水性が確保されていると評価できる。なお、密閉室40の密閉性が確認された後に、上記任意の一部箇所についても溶着、封止することで、遮水シートの接合部の遮水性を確実に確保することができる。
【0032】
又、帯状袋部18は、被接合側の遮水シート12及び接合側の遮水シート16と同一素材からなる、所定幅の帯状シート20の一側端を、接合側の遮水シート16の、縁部16aから平面視中央部寄りの位置にて、密着固定部24及び押出溶着部26で密着、固定することで、形成されるものである。
そして、帯状袋部18が形成された接合側の遮水シート16の縁部16aに沿って、被接合側の遮水シート12を受け入れるための開放端部22(図2)を備えることで、被接合側の遮水シート12と接合側の遮水シート16との、所定幅Wstの重ね合わせ部(図1の斜線部)が容易に確保できると共に、この開放端部22にシール材28を介して、被接合側の遮水シート12の縁部12aが挟持されることで、被接合側の遮水シート12の縁部12aと、接合側の遮水シート16の縁部16aとの、接合部における遮水性が確保されるものである。
【0033】
なお、本発明の実施の形態では、接合側の遮水シート16の縁部16aに沿って、被接合側の遮水シート12の縁部12aを覆う帯状袋部18を形成した場合を例示して説明したが、必要に応じ、被接合側の遮水シート12の縁部12aに沿って、接合側の遮水シート16の縁部16aを覆う帯状袋部18を形成しても、同様の作用効果が得られるものである。
又、上記説明では、既設の遮水シートの端辺から裂け目が生じ、その破損部分に補修を行った場合を例示したものであるが、新規に遮水シートを敷設すべく、一定幅に製造された遮水シートを施工現場に搬入し、設置面積に応じて多数接合する際の、平面視直線状の接合部構造にも、同様に採用可能であることは、理解されるであろう。
【符号の説明】
【0034】
10:接合部構造、12:被接合側の遮水シート、12a:縁部、14:切欠き、16:接合側の遮水シート、16a:縁部、18:帯状袋部、20:帯状シート、22:開放端部、24:密着固定部、26:押出溶着部、28:シール材、32:押え板、36:ボルト、38:ナット、40:密閉室
図1
図2