(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734041
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】歯科インプラント用印象キャップ
(51)【国際特許分類】
A61C 8/00 20060101AFI20150521BHJP
A61C 9/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
A61C8/00 Z
A61C9/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-62898(P2011-62898)
(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公開番号】特開2011-200647(P2011-200647A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2014年1月24日
(31)【優先権主張番号】10003184.8
(32)【優先日】2010年3月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506415207
【氏名又は名称】ストラウマン ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ストレフ、パトリック
【審査官】
寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−526530(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0121416(US,A1)
【文献】
特表2000−512884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 8/00
A61C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印象キャップの両端部領域(4,6)の間を長手方向に貫通する孔(8)を備え、該孔は、締結要素を受け入れることができるような形状に形成され、
締結要素は、前記両端部領域の内の第1の端部領域(4)を介して印象キャップを歯科インプラントに結合することを目的としている歯科インプラント用の印象キャップであって、
該印象キャップは、第1の端部領域の反対側の第2の端部領域(6)に、印象キャップと歯科インプラントとの間で解除可能なスナップ式結合を提供するような形状に形成された結合要素を有し、
前記両端部領域は、歯科インプラントの嵌め合い形状の嵌め合い接触表面に嵌り合うように形成された支持表面を有することを特徴とする歯科インプラント用の印象キャップ。
【請求項2】
第1の端部領域は、オープントレー式印象用の歯科インプラントに結合することができる形状に定められており、また、第2の端部領域は、クローズドトレー式印象用の歯科インプラントに結合することができる形状に定められていることを特徴とする請求項1に記載の印象キャップ。
【請求項3】
両方の端部領域は、歯科インプラントに直接結合される形状に定められていることを特徴とする請求項1から2のいずれか1項に記載の印象キャップ。
【請求項4】
結合要素は、弾性変形可能なスナップ式リップ(52)を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の印象キャップ。
【請求項5】
スナップ式リップ(52)は、歯科インプラントの外側のスナップ式エッジの背後に係合するような形状に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の印象キャップ。
【請求項6】
スナップ式リップ(52)は、放射状に取り囲む形状であることを特徴とする請求項4または5に記載の印象キャップ。
【請求項7】
印象キャップは、締結要素の嵌め合い接触表面と共同するような形状の接触表面を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の印象キャップ。
【請求項8】
接触表面は、孔(8)の内側に半径方向に突出する円錐形状の肩部表面(38)によって形成されていることを特徴とする請求項7に記載の印象キャップ。
【請求項9】
印象キャップは、その外側に形状部を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の印象キャップ。
【請求項10】
二つの端部領域(4,6)の少なくとも一つは、歯科インプラントの嵌め合い形状の嵌め合い支持表面に支持されるような形状に形成された少なくとも部分的に円錐形状の支持表面(40,46)を有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の印象キャップ。
【請求項11】
支持表面(40,46)は、内側に形成されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の印象キャップ。
【請求項12】
孔(8)を通って少なくとも部分的に係合する締結要素を特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の印象キャップ。
【請求項13】
締結要素は、ネジであることを特徴とする請求項12に記載の印象キャップ。
【請求項14】
印象キャップは、参照インプラント用であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の印象キャップ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の印象キャップを使用して、参照インプラントのオープントレー式印象及び/またはクローズドトレー式印象を採得することを特徴とする印象キャップの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に従う歯科インプラント用の印象キャップに関するものであり、また、請求項13に従う、参照インプラントのオープントレー式印象及び/またはクローズドトレー式印象を採得するための印象キャップの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔インプラント学において、患者の顎骨に歯科インプラントを正確に位置決めすることは、処置を成功するために非常に重要なことである。これは、特に、歯科インプラントを固定するために有効な骨の量が制限される場合である。
【0003】
正確な位置決めの問題は、例えば、少なくとも一つの開口がドリルのガイドとして機能すると共に、各歯科インプラントの位置と歯科インプラント用に穴あけされた穴の位置を正確に決定するドリル治具を使用することによって対処することができる。適切な技術は、例えば、歯の補綴による上部構造の製作に関する特許文献1に開示されている。特に、問題の方法は、参照要素(以下、「参照インプラント」ともいう)を顎骨に固定して、その後、顎骨に固定された参照要素で顎骨の印象を採得するステップを含んでいる。次に、上部構造の仮のモデル(暫定模型)が印象に基づいて準備される。それから、このモデルは参照要素の上に設置され、その後、顎骨とモデルのコンピュータ断層撮影像が準備される。顎骨の解剖構造に関するコンピュータ断面撮影像から得られる情報、例えば、上部構造に空間的に関連する神経線維と血管の位置により、インプラント用に穴あけされる穴の位置について適切な選択がなされる。続いて、選択された位置に基づいて、参照要素に固定するための手段を有するドリル治具が準備され、ドリル治具の開口により、穴あけされる穴の位置が予め正確に決められる。
【0004】
決定的に重要なステップは、参照要素を用いて顎骨の印象を採得するステップを含んでおり、印象は、第一に、仮のモデルの準備のための基礎として機能すると共に、第二に、ドリル治具の準備のための基礎として機能する。
【0005】
歯科インプラントの印象を採得する方法は、従来技術において、例えば、非特許文献1において説明されている。また、例として、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9及び特許文献10が参照される。基本的な類似の方法は、顎骨に固定される参照要素の印象採得に有利である。
【0006】
慣習的方法では、印象は、一般的に、印象キャップと、この印象キャップに結合され、印象キャップを歯科インプラントに締結する適切な締結要素を有する印象コーピングを使用して採得される。印象トレーを使用することによって、印象コーピング及び隣接する患者の組織構造の周囲の空間が、最初は塑性的に変形可能で硬化することができるインプレッションコンパウンド(印象材)で充填される。インプレッションコンパウンドは、硬化した後、患者の口から取り外され、ネガティブモデル(反転模型)を形成して、このネガティブモデルに基づいて、仮のモデルを準備することができる。
【0007】
印象採得の慣習的方法では、オープントレー式印象と呼ばれるものと、クローズドトレー式印象と呼ばれるものに区別される。これらの二つの印象採得方法は、例えば、特許文献11に開示されている。
【0008】
オープントレー式印象採得の場合、印象キャップと歯科インプラントとの間で締結要素手段によって達成される結合は、インプレッションコンパウンドが患者の口から取り外される前に積極的に元に戻される(結合が解除される)。締結要素は、一般に、ネジの形態であり、印象トレーは、対応する領域に、例えば、スクリュードライバー使用してネジをしっかりとつかむことができる開口部を有しているため、ネジ結合は積極的に元に戻すことができる。
【0009】
印象トレーが取り外された場合、印象キャップは、オープントレー法ではインプレッションコンパウンドに留まる。これは、患者の口の空間的状態に関する限り、歯科インプラントの位置が、ネガティブモデル(反転模型)に正確に転写(トランスファー)することができることを意味している。オープントレー式印象を採得するために使用することができる印象コーピングは、例えば、特許文献12及び特許文献13に開示されている。
【0010】
対照的に、クローズドトレー式印象採得の場合、印象キャップと歯科インプラントとの間の結合は、インプレッションコンパウンドの取り外しの前に、積極的に元に戻されない。その結果、対応する開口部は、印象トレーに準備する必要はない。例えば、特許文献14に開示されているように、印象キャップは、歯科インプラントに残ることが考えられる。この場合、印象キャップは、一般に、次のステップで、硬化したインプレッションコンパウンド、すなわち、ネガティブモデルの中に挿入される。これは、特に、ネガティブモデルの中に印象キャップを再挿入する際に必要な措置が取られなかった場合に不正確さの原因となる。その代わりに、印象キャップは、印象キャップと歯科インプラントとの間の結合が取り外し中に元に戻されるように設計することができる。対応する印象キャップは、例えば、特許文献15に開示されている。
【0011】
オープントレー式印象またはクローズドトレー式印象は、患者の口の症状の状態によって示唆されるかもしれない。したがって、選択される印象の形式によって異なる印象キャップが使用される。
【0012】
このような背景において、例えば、特許文献14及び特許文献16は、オープントレー法及びクローズドトレー法の両方に使用することができる印象システムを提供する問題に関連している。しかしながら、これらの文献に開示されたシステムによれば、オープントレー法の印象キャップは、顎骨から取り外されたインプレッションコンパウンドではなく、歯科インプラント上に残ったままであり、また、このことは、転写の正確性に関連する上述した問題を引き起こすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開2003/003933号
【特許文献2】欧州特許公開第1274365号
【特許文献3】欧州特許公開第1274366号
【特許文献4】国際公開2007/093648号
【特許文献5】米国特許第6213773号
【特許文献6】米国特許第6379148号
【特許文献7】米国特許第6524106号
【特許文献8】米国特許第6508650号
【特許文献9】欧州特許公開第0747017号
【特許文献10】米国特許第6045361号
【特許文献11】米国特許第7066736号
【特許文献12】米国特許第5213502号
【特許文献13】米国特許公開第2006/0121416号
【特許文献14】国際公開2004/039280号
【特許文献15】米国特許第6382977号
【特許文献16】国際公開2000/002497号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】シュローダ、エー(Schroeder,A)他の「口腔インプラント学(Orale Implantologie)」第2版、ゲオルク ティエメ フェアラーク シュトゥットガルト(Georg Thieme Verlag Stuttgart),1994年、202頁以下
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、歯科インプラント用の印象キャップを提供することにあり、特に、クローズドトレー法及びオープントレー法の両方の方法において、歯科インプラントの位置の正確な転写を保証する参照インプラント用の印象キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、独立請求項1の発明の内容によって達成される。好適な実施の形態は、従属請求項に定義されている。
【0017】
本発明に従うと、印象キャップは、この印象キャップの二つの端部領域の間で長手方向に延びる孔を有しており、実質的にスリーブ形状である。孔は、二つの端部領域の内の第1の端部領域を介して、印象キャップを歯科インプラントに結合するための締結要素を受け入れることができるように形状が定められている。
【0018】
本発明に従うと、第1の端部領域から離れている第2の端部領域は、印象キャップと歯科インプラントの間で解除可能なスナップ式結合を提供するように形状が定められた結合要素を含んでいる。
【0019】
本発明に従うと、印象キャップは、第1の端部領域を有しており、この第1の端部領域を介して、印象キャップは、オープントレー式印象用の歯科インプラントに結合することができ、また、印象キャップは、第2の端部領域を有しており、この第2の端部領域を介して、印象キャップは、クローズドトレー式印象用の歯科インプラントに結合することができる。
【0020】
好適な実施の形態に従うと、両方の端部領域は、歯科インプラントに直接結合される形状に定められている。
【0021】
本発明に従うクローズドトレー式印象用の結合要素の形状のおかげで、所定の張力を超えた場合には、結合は元に戻される。このように、本発明に従う印象キャップは、クローズドトレー法においても、歯科インプラントと印象キャップとの間の結合は、インプレッションコンパウンドを取り外す際に印象キャップに作用する張力によって元に戻され、また、印象キャップはインプレッションコンパウンドに残されることを意味している。このように、本発明は、印象を採得する両方の方法において、歯科インプラントの位置の非常に正確な転写を許容する。
【0022】
好適な実施の形態に従うと、結合要素は、弾性的に変形可能なスナップ式リップの形態であり、このリップは、通常、印象キャップの外周上で、第2の端部領域に形成されている。スナップ式リップは、好適には、歯科インプラントの外側のスナップ式エッジの背後に係合するような形状である。このスナップ式リップは、好適には、放射状に取り囲む形状を有している。
【0023】
クローズドトレー法において、印象キャップを歯科インプラントに結合する場合、スナップ式リップは、スナップ式エッジに押し込まれ、かつ、歯科インプラントの背後に係止できるまで、弾性的に広げられる。この結合は、インプレッションコンパウンドに埋め込まれた印象キャップが顎骨から取り外される場合のクローズドトレー法と同様に、スナップ式リップを、スナップ式エッジを越えて反対側に押し込むことによって元に戻される。
【0024】
上述したスナップ式リップに代わるものとして、結合要素が、歯科インプラントの対応する開口部に係合すると共に、内側のスナップ式エッジの背後に係合する、弾性的に変形可能なフィンガー(指状の物)を有することが考えられる。また、結合要素は、スナップ式結合手段としてスプリングを有することが考えられる。
【0025】
上述したクローズドトレー法による印象採得に代わるものとして、同様に、オープントレー法が本発明に従って可能であり、追加の締結要素手段によって実施される。一般に、印象キャップは、締結要素の対応するような形状の嵌め合い接触表面と共同するように設計された接触表面を有している。これにより、印象を採得する際に、印象キャップと歯科インプラントとの間のしっかりした結合を保証することができる。締結要素は、通常、印象キャップの孔を少なくとも部分的に通って係合するネジの形態である。このネジは、通常、ヘッド部と、雄ネジ部を備えたシャンク部を有しており、ネジの雄ネジ部は、歯科インプラントの歯冠部の開口部に形成された雌ネジに対応している。この実施の形態では、接触表面は、ネジのヘッド部に形成されている。
【0026】
通常、孔は、少なくともある部分では実質的に円筒形状である。特に、孔にくびれ部が形成されることが考えられ、このくびれ部は、孔の内側に半径方向に突出する肩部表面を形成して、締結要素の接触表面として機能する。
【0027】
孔の内側に半径方向に突出するくびれ部の肩部表面は、好適には、円錐形状である。この実施の形態によれば、締結部材と歯科インプラントとの間に、極めて正確な印象を採得するために重要な最小限の遊びを保証することができる。さらに、この実施の形態では、印象キャップに作用する力は、大きな表面領域にわたって分布する。
【0028】
上述したように、締結要素がネジの形態の場合、くびれ部は、印象キャップとネジとのアンカップリングに対して効果的な保護を保証することができる。これは、例えば、ネジのヘッド部の外径に加えて、雄ねじ部の外径が、くびれ部の内径よりも大きい場合である。
【0029】
オープントレー法の印象に関しては、本発明の印象キャップは、上述した印象技術において独立している第2の端部領域の結合要素は、アタッチメント部のドッキング部として使用することができるという、さらなる利点を有する。例えば、このようなアタッチメント部は、その自由端部で孔を塞ぐことができ、また、印象が採得される間に、インプレッションコンパウンドが孔の中に侵入することを阻止することができる。
【0030】
印象キャップの両端部領域は、通常、歯科インプラントの嵌め合い形状の嵌め合い接触表面に支持されるような形状に定められた支持表面を有している。これにより、組み立てられた状態で、印象が採得される間に、空洞の中にインプレッションコンパウンドが侵入するかもしれない状況を回避する。
【0031】
歯科インプラントの支持表面、特に、本発明が主として目的とする参照インプラントの支持表面は、通常、嵌め込み支持表面としての円錐形状の肩部表面を有しているため、印象キャップの対応する支持表面は、好適には、同様に、少なくとも部分的に円錐形状である。
【0032】
印象キャップと硬化したインプレッションコンパウンドとの間を最接近可能にフィットさせることを保証するために、印象キャップは、好適には、外側に形状部を有している。この形状部は、例えば、半径方向の凹部または隆起部の形状で備えることができる。
【0033】
冒頭で述べたように、印象キャップは、特に、参照インプラントの印象を採得するオープントレー法及び/またはクローズドトレー法に適しており、例えば、ドリル治具の準備に使用される。しかしながら、原理上は、他の任意の歯科インプラントに使用されることが考えられる。
【0034】
本発明の印象キャップが、一時的に取り付けられる参照インプラントの印象採得に使用される場合、印象キャップと歯科インプラントとの間のアンチツイスト安全機能を省略することができる。この機能は、永久に(取り外せないように)取り付けられる従来の歯科インプラントには、ほとんどの場合に必要である。このように、印象キャップと歯科インプラントとの間の静止摩擦を回避することが可能となる。静止摩擦は、アンチツイスト安全機能が原因である。また、ネガティブモデル(反転模型)に転写する際の不正確さ、これは、インプレッションコンパウンドの塑性変形が原因であるが、この不正確さを回避することが可能となる。しかしながら、その代わりに、特別な目的のために要望された場合には、アンチツイスト安全機能を提供することができる。したがって、印象キャップの二つの端部領域の少なくとも一つは、多角形のベースまたは多角形の開口部を有することができ、これらのベースや開口部は、歯科インプラントの歯冠の端部領域に開口部またはベースを正確に適合させるように設計される。
本発明は、添付した図面を参照してさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】本発明に従う他の印象キャップの側面図である。
【
図3】
図2に示す印象キャップのIII−III’線に沿った縦断面図である。
【
図4】
図2に示す印象キャップのIV−IV’線に沿った横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1及び
図2に示すように、本発明に従う印象キャップ2は、第1の端部領域4と、第2の端部領域6を有している。孔8は、端部領域の間を長手方向に延びている。
【0037】
特に、
図2を見て分かるように、第1の端部領域4は、第1の端部10の方向に傾斜する円錐12の形状に形成されており、この円錐12の円錐角は、図に示すように約10°である。第2の端部領域6は、第2の端部14の方向に傾斜する円錐16の形状に形成されており、この円錐16は、円形のシリンダー領域18に隣接している。この円錐16の円錐角は、同様に、図に示すように約10°である。
【0038】
第1の端部領域4と第2の端部領域6との間には中間領域20があり、この中間領域20は、端部領域4及び6にそれぞれ隣接する円形のシリンダーエッジ部22及び24を備えており、また、この中間領域20は、エッジ部22,24の間に配置され、半径方向の凹部28a、28b、28c、28d及び28eによって、長手方向に均等に離されると共に互いに分離され、かつ、エッジ部22,24から分離されている4つの形状部26a、26b、26c及び26dを備えている。
図1に示す印象キャップは、第1の端部10に向かう方向の形状部26aが、他の形状部26b、26c及び26dよりも長手方向に広い(長い)点で主に相違している。
図2に示す実施の形態では、全ての形状部は、基本的に同一の形状である。
【0039】
特に、
図3を見て分かるように、孔8に形成されたくびれ部30は、第1の端部10に向けて延びる第1孔部分32と第2の端部20に向けて延びる第2孔部分34との間に配設されている。これらの孔部分32,34は、実質的に、円形のシリンダーの形状であり、同様に円形のシリンダー形状のくびれ部30に向けて円錐形状に傾斜している。このように形成された円錐形状の肩部表面36、38は、図に示すように,約45°の円錐角を有している。
【0040】
第1の端部領域4は、その内側に、第1の端部10の方向に支持表面40を有しており、この支持表面40は、第1の円錐形状に延びる表面部42と、この表面部42に隣接して、印象キャップ2の長手方向に対して直角に延びる第2の表面部44を含んでいる。
【0041】
類似の方法で、第2の端部領域6も同様に、その内側に、第2の端部14の方向に支持表面46を有しており、この支持表面46は、第1の円錐形状に延びる表面部48と、印象キャップ2の長手方向に対して直角に延びる第2の表面部50を含んでいる。放射状に取り囲むスナップ式リップ52は、第2の端部領域6の支持表面46の周囲に一体に形成されており、その断面は、内側に突出するビードの形状を有している。スナップ式リップ52と支持表面46との間の境界に内側のエッジ54が形成されており、この内側のエッジ54の内径は、歯科インプラントのスナップ式エッジの外径と実質的に一致している。
【0042】
特に、
図4を見て分かるように、図示した実施の形態の形状部26a、26b、26c及び26dは、3つの凹部5
4a,5
4b及び5
4cを有しており、これらの凹部は、長手方向に延びると共に、約120°の角度で互いに離れて周方向に均一に配置されている。
【0043】
図示した印象キャップは、オープントレー式印象及びクローズドトレー式印象の両方を採得することができる。オープントレー式印象を採得する場合、印象キャップ2は、第1の端部領域4を介して、孔8を通って少なくとも部分的に係合する締結要素手段(図示しない)によって、歯科インプラント(図示しない)に結合される。第1の端部領域の支持表面40は、歯科インプラントの嵌め合い形状の嵌め合い支持表面に支持される。締結要素は、通常、ネジの形態であり、雄ネジ部を備えたシャンク部と、スクリュードライバー用のノッチを備えたヘッド部を有している。シャンク部に隣接する領域において、ヘッド部は円錐形状であり、
印象キャップ2の円錐形状の内側表面38で形成された嵌め合い形状の接触表面に嵌め合う接触表面に形成されている。これにより、印象キャップ2を、歯科インプラントに最小の遊びで締結することができ、また、印象キャップに作用する力は、大きな表面領域の全体に分散される。
【0044】
印象を採得する場合、インプレッションコンパウンドは、形状部26a−dの間の半径方向の凹部28a−eの中に侵入すると共に、形状部26a−dの凹部56a−cに侵入して、インプレッションコンパウンドと印象キャップとの間に最接近可能にフィットさせることを保証する。形状部は、達成される結果によって異なる形状とすることができる。例えば、特に、狭い形状の形状部26a−dに対応させて、図示するように半径方向の凹部28a−eが広くされることが考えられる。凹部の形状を広くすることは、インプレッションコンパウンドの粘性が比較的高い場合でも、インプレッションコンパウンドは、凹部の中に侵入することができ、それによって、硬化後の最適な形状が保証される。
【0045】
印象が採得された後は、ネジ結合は、例えば、スクリュードライバー手段によって孔8を通るネジを緩めることによって元に戻される。
【0046】
クローズドトレー式印象の採得の場合には、印象キャップ2は、歯科インプラントのスナップ式エッジに押し付けることができるように広げられたスナップ式リップ52手段によって歯科インプラントの上に配置される。インプレッションコンパウンドが硬化した後、印象キャップ2が埋め込まれたインプレッションコンパウンドは、歯科インプラントから持ち上げられる。このようにすることによって、スナップ式リップ52は、再び広げられて、スナップ式エッジを越えて押されて、その結果、スナップ式結合は解除される。印象キャップ2は、硬化した印象に残される。
【符号の説明】
【0047】
2 印象キャップ、4 第1の端部領域、6 第2の端部領域、8 孔、10 第1端部、14 第2端部、26a〜26e 形状部、30 くびれ部、38 肩部表面、40、46 支持表面、52 スナップ式リップ