【実施例】
【0041】
本発明の実施例を図面に沿って説明する。
図1は本発明の手書文字入力装置の機能ブロック図であり、本発明を各種の態様で実施することができるようにした例を示しており、したがって本発明はこれらの機能ブロックの内任意のものを選択して種々の態様で実施することができる。なお、同図において各機能を行う機能部は、それぞれ各機能を行う手段ということができる。
【0042】
図1に示す手書文字入力装置は、手書入力部1を備えている。この手書入力部1は、抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネルを備え利用者がその表面に指先或いはペン先等によって手書入力を行ったときにこの手書入力操作を検出する手書入力検出部2と、手書入力検出部2で検出した手書入力パターンを表示する液晶パネル等からなる手書入力表示部3とで構成されている。
【0043】
手書入力表示部3で表示される手書入力パターンは、記憶部23の手書入力文字パターン記憶部24において記憶可能とし、記憶した手書入力パターンを後述するように再度読み出して利用可能としている。
図1に示す手書入力表示部3は、前記のような手書入力検出部2で検出した手書入力パターンを表示する手書入力検出表示部4と、後述するように、文字表示出力部28から出力される文字パターンを表示する手書入力データ読込表示部5とを備えている。
【0044】
図1の右下に画面表示例37として示すように、本実施例の手書文字入力装置は前記手書入力部1(手書入力表示部3)に隣接して複数の候補文字を表示可能な候補文字表示部6を備え、更にその上部に確定文字表示部7を備えている。これらの表示部は、前記
図11及び
図12の従来例と同様であり、選択指示検出部8も、従来例と同様に候補文字表示部6に表示した候補文字のいずれかを選択指示したことを検出して、これを確定文字とすることができる。なお、手書入力部1、候補文字表示部6、確定文字表示部7を含む画面全体に上記タッチパネルが配置されており、各表示領域においてタッチ操作やなぞり操作が可能となっている。
【0045】
本発明においては特に、前記選択指示検出部8では確定文字表示部7に対する選択指示操作も検出することができるようにしており、後述するようにこの確定文字表示部7に表示した文字を利用者が選択指示したとき、次の文字入力に際して選択指示した確定文字の情報を利用する命令として認識し、その時には表示文字選択部31にその選択指示を出力して、記憶部23から選択指示した文字の入力時等の文字パターンを読み出し、文字表示出力部28および手書入力データ読込表示部5を介して手書入力部1(手書入力表示部3)に文字パターンを表示できるようにしている。この処理の詳細は後述する。
【0046】
選択指示検出部8で、確定文字表示部7に表示している文字の内任意の文字が選択指示されたことを検出する際には、その表示文字にワンタッチする選択指示操作を検出する以外に、例えば表示文字に指で触って、そのままドラッグ操作で手書入力部1(手書入力表示部3)へ引き込む操作を行ったとき、この操作を選択指示として検出しても良い。また、例えば候補文字表示部6等に表示されている戻しキー6aを任意回数操作することによって、確定文字表示部7に表示している文字を新しく確定した順に、つまり
図1における右から左に向かって1文字毎に送り操作して選択し、確定文字表示部7で所望の文字が選択されている状態で図示しない確定キーを操作したとき、この操作を選択指示として検出することもできる。
【0047】
手書入力検出部2で検出した手書入力パターンについて、その手書入力パターンには直線や曲線についても細かな凹凸が存在し、入力角度も本来垂直或いは水平であるところ、傾斜して入力することが多いので、そのままの手書入力パターンでは文字認識率が低下する。そのため、認識用文字パターン形成部9では、前記
図11(b)に示すように、同図(a)のような手書入力パターン102を処理して、文字認識処理しやすい認識用文字パターン103を形成する。
【0048】
本実施例では、この認識用文字パターン形成部9で形成した文字パターンを、記憶部23の認識用文字パターン記憶部25に記憶可能とした例を示している。但し、前記手書入力文字パターンと認識用文字パターンについては、いずれか一方を記憶するだけでも本発明を実施することができる。
【0049】
手書入力文字認識部10では、認識用文字パターン形成部9で形成した認識用文字パターンと、手書入力文字認識用データベース11に予め記憶されている各文字毎の標準文字パターンとを比較し、手書入力した文字の認識処理を行う。認識結果判別部12では、手書入力文字認識部10による認識処理によって、適切な候補文字が存在しなかったときこれを検出し、認識不能表示部13に「手書入力文字は認識できなかった」旨の表示を行う。
【0050】
選択指示部14では、利用者が
図1に示す各種機能部に対して種々の選択指示を行う。その中の候補文字選択部15では、画面表示例37の候補文字表示部6に複数表示される候補文字について、利用者が意図するものを選択指示する。この選択指示は、前記候補文字表示部6の候補文字に対する利用者のタッチ操作等により実施することができる。
【0051】
確定文字選択指示部16では、画面表示例37の確定文字表示部7に確定した文字が表示されているとき、その中からいずれかの文字をタッチする操作等により選択指示する。
【0052】
既にいくつかの文字が入力され確定している状態で、次の文字を入力する際に、先に確定した文字を利用したいと思ったとき、前記のように確定文字選択指示部16によりタッチ操作を行う以外に、手書入力戻し指示部17では、画面表示例37に符合6aで示す戻しキーを任意の回数操作することによって、その回数分だけ前に確定した確定文字を選択指示することができる。したがって、確定文字選択指示部16と、手書入力戻し指示部17は少なくともいずれか一方が存在すれば本発明を実施することができる。
【0053】
手書入力パターンの文字認識処理を行った結果として候補文字が表示されるとき、前記のように候補文字選択指示部15でいずれかの文字を選択して手書入力文字の確定指示を行うことができるが、それ以外に、手書入力確定指示部18では、候補文字の中からタッチ操作やカーソル送りキー等で選択した文字について別途確定キー等を操作することによって確定指示を行うことができる。
【0054】
候補文字表示処理部19では、手書入力文字認識部10で文字認識した結果得られる候補文字を、前記候補文字表示部6に表示する処理を行う。この時表示される候補文字は、記憶部23の候補文字記憶部26に記憶され、後述するように必要に応じてこれを再利用することができるようにする。
【0055】
また、確定文字表示処理部20では、前記のように候補文字の中から利用者が任意の文字を選択指示したとき、これを確定文字として、画面表示例37の確定文字表示部7に表示する処理を行う。この確定文字についても、記憶部23の確定文字記憶部27に確定文字列として記憶する。
【0056】
手書入力消去部22では、例えば一つの文字の手書入力処理が終了し、入力文字が確定したとき、手書入力部1(手書入力表示部3)に表示している先の手書入力パターンを消去する。そのほか、手書入力パターンが文字認識されないとき、或いは認識されても所望の候補文字が表示されないとき等において、再入力を促したり認識処理を終了するために、表示されている手書入力パターンを消去する。
【0057】
記憶部23は、前記のように各種のデータを記憶するものであり、手書入力文字パターン記憶部24では手書入力検出部2で検出され手書入力表示部3で表示した手書入力パターンを記憶する。また、認識用文字パターン記憶部25においては、認識用文字パターン形成部9で形成した認識用文字パターンを記憶する。また、候補文字記憶部26では、候補文字表示処理部19で表示処理される候補文字を前記手書入力文字パターン記憶部24に記憶される手書入力文字パターンおよび/または前記認識用文字パターン記憶部25に記憶される認識用文字パターンと対応付けて記憶する。また、確定文字記憶部27では、確定文字表示処理部20で表示処理される文字を、一連の確定文字として記憶する。
【0058】
表示文字選択部31では、次の文字入力に際して既に確定した文字の文字パターンを利用したいときに、記憶部23または手書入力文字認識用データベース11に記憶されている文字パターンの内、どの文字パターンを利用するかが利用者によって選択指示される。その中の手書入力文字パターン32が選択された場合は、確定文字表示部7に表示した文字のいずれかを選択指示したとき、その文字について手書入力文字パターン記憶部24に記憶している手書入力パターンを読み出して使用可能とする。
【0059】
また、認識用文字パターン33が選択された場合は、確定文字表示部7に表示した文字のいずれかを選択指示したとき、その文字について認識用文字パターン記憶部25に記憶している認識用文字パターンのデータを読み出して使用可能とする。
【0060】
また、標準文字パターン36が選択された場合は、確定文字表示部7に表示した文字のいずれかを選択指示したとき、その文字について手書入力文字認識用データベース11に蓄積されている標準文字パターンを読み込んで、前記手書入力パターン及び認識用文字パターンに替えて、これを使用可能とする。
なお、表示文字選択部31は本発明において必須ではなく、手書入力文字パターン32と認識用文字パターン33、及び標準文字パターン36のいずれか一つを用いることにより本発明を実施することができる。
【0061】
また、本実施例では、表示文字選択部31で標準文字パターン36が選択された場合に、確定文字表示部7に表示した文字以外に、候補文字表示部6に表示した候補文字も選択可能としており、候補文字表示部6に表示しているいずれかの候補文字に対する長押し(数秒間のタッチ操作)やダブルタッチ(2回連続でのタッチ操作)、手書入力表示部へのドラッグ操作等の選択指示を検出したときに、その候補文字について手書入力文字認識用データベース11に蓄積されている標準文字パターンを読み込んで、これを使用可能とする。
【0062】
文字表示出力部28では、前記表示文字選択部31で選択した文字パターンについて手書入力表示部3に表示出力を行うものであり、その中の表示位置調節部29では、記憶部23等に記憶している文字パターンを手書入力部1(手書入力表示部3)に表示するとき、その表示位置を調節できるようにしている。それにより、前に確定した文字の文字パターンを手書入力表示部3に表示するとき、以降の加筆入力を考慮して、その文字パターンの特性により偏、旁、冠、脚のいずれになるかを判別して、その判別結果に応じて、偏になる確率が高いときには左側に移動し、旁になる確率が高いときには右側に移動し、冠になる確率が高いときには上方に移動し、脚になる確率が高いときには下方に移動する。そのほか、例えば上下左右4方向のキー操作によって、最初中央に表示した文字パターンを任意の方向に移動することもでき、或いは表示された当該文字パターンを指等でタッチしたまま所望の方向に移動するドラッグ操作によっても表示位置を調節することができる。
【0063】
表示大きさ調節部30では、表示文字選択部31で選択した文字パターンについて、手書入力表示部3に表示する時の大きさを調節する。それにより小さめに文字パターンを表示する等によって、前記表示位置調節部29で位置調節をし易くすることができる。また、前記のように表示位置調節部29で表示位置を調節するために文字パターンの移動操作をした時点で該文字パターンの大きさを小さくすることもできる。この文字表示出力部28から出力される文字パターンは、手書入力表示部3の手書入力データ読込表示部5で読み込まれ適切に表示される。
その文字パターン表示後は、後述するように、表示した文字パターンをそのまま手書入力文字認識部10で文字認識しても良く、或いは、手書入力表示部3に表示された文字パターンに対して手書入力部1から加筆して、新たな文字として手書入力し、加筆後の文字パターンを手書入力文字認識部10で文字認識することもできる。
【0064】
図2には本発明による手書入力認識処理の作動フローを示しており、
図2に示す手書入力認識処理においては最初手書入力部1に手書入力を行うことから開始し(ステップS1)、その後認識用文字パターンを形成している(ステップS2)。この処理は
図1の認識用文字パターン形成部9において、
図11(a)のような手書入力パターン102に対して、同図(b)のように文字認識し易いように認識用文字パターン103を形成する処理を行う。
【0065】
次いで手書入力文字認識処理を行い(ステップS3)、ステップS4では、ステップS2で形成された認識用文字パターン103と手書入力文字認識用データベース11に記憶されている各文字毎の標準文字パターンとを比較して、これら両パターンが一致している度合いによって、手書入力パターンと類似した文字が存在するか否かを判別する。ここで手書入力文字認識用データベース11に、手書入力パターンと類似した文字が存在しないと判別したときには、ステップS13に進んで、後述するように
図3に示すような入力手書文字認識不能時処理を行う。ステップS4において手書入力文字認識用データベース11に、手書入力パターンと類似した文字が存在すると判別したときには、認識処理結果で認識率(パターンの一致度合い)の高い順に候補文字表示部6に候補文字を表示する(ステップS5)。
【0066】
このようにして候補文字が得られたとき、本発明においては、後の処理のためにこれらの候補文字を
図1の記憶部23における候補文字記憶部26に一時的に記憶する。
【0067】
その後候補文字表示部6に表示された候補文字の中から利用者が所望の文字を選択指示したか否かを判別し(ステップS6)、選択指示したと判別したとき、即ち利用者が
図1に示す候補文字選択指示部15により候補文字の中から任意の文字をタッチする等して選択指示したときに、確定文字表示処理部20がこの文字を確定文字表示部7に確定順に(画面表示例37における左側から順に)表示する(ステップS7)。即ち、
図11(c)のように候補文字表示部104に表示された候補文字の中から、利用者が所望する「金」という文字を選択指示すると、同図(d)に示すように確定文字表示部105に「金」という確定文字を表示する。
図11(d)では一番最初に確定した文字として示している。
【0068】
図2に示す作動例においては、ステップS7の確定文字表示処理に引き続き、或いはステップS7の処理と並行して、ステップS1で入力した手書入力パターン等を確定文字と対応付けて記憶する(ステップS8)。ここで手書入力パターンに替えて、ステップS2で形成した認識用文字パターンを確定文字と対応付けて記憶しても良い。または、手書入力パターンと認識用文字パターンの両方を記憶しても良い。このステップS8の処理は、
図1の記憶部23における手書入力文字パターン記憶部24が、手書入力表示部3に表示された手書入力パターンについて、その各線の座標を記憶することにより行い、或いは認識用文字パターン記憶部25が、認識用文字パターン形成部9で形成した文字パターンの各線の座標を記憶することにより行う。
【0069】
ステップS8の手書入力パターン等の記憶処理に引き続き、或いはステップS8の処理と並行して、確定した文字を手書認識文字として確定順に記憶する(ステップS9)。即ち、前記のように確定文字表示部7に表示された確定文字について、またそれ以降も順に確定していく確定文字も全て、
図1の確定文字記憶部27に記憶し、後にこのデータを例えばナビゲーション装置の施設検索等に利用する。
【0070】
ステップS7〜ステップS8の処理と並行して、手書入力表示部3に表示された手書入力パターン、及び候補文字表示部6に表示された候補文字を消去する(ステップS10)。それにより
図11(c)に示す手書入力パターン102、及び候補文字表示部104に表示していた候補文字を、同図(d)に示すように全て消去する。次いで手書入力終了指示を行ったか否かを判別し(ステップS11)、利用者がこの手書入力を終了する旨の入力を行ったときには、ステップS19に進んでこの手書入力を終了する。それに対してステップS11で未だ手書入力の終了指示を行っていないと判別したときには、ステップS12に進み、
図4に示すような第2文字以降の手書入力処理を行う。
【0071】
一方、前記ステップS6において候補文字表示部6の中から利用者が所望の文字を選択指示していないと判別したときには、ステップS14において利用者が手書入力に戻る指示をしたか否かを判別し、利用者が候補文字の中に所望の文字が存在しない等の理由で再度手書入力ステップに戻る指示を行ったとき、ステップS1に戻って前記手書入力から処理を再開する。
【0072】
ステップS14において利用者が手書入力に戻る指示をしていないと判別したときには、利用者が文字入力方法の変更を指示したか否かを判別し、例えば手書入力から中国語のピンイン入力に変更する等の指示を行ったときにはステップS16に進み、指示した他の入力方法の処理に変更する。それに対してステップS15で利用者が文字入力方法の変更を指示していないと判別したときには、ステップS17に進んで所定時間が経過したか否かを判別し、未だ所定時間が経過していないと判別したときにはステップS6に戻って、例えば7秒等の所定時間が経過するまで、候補文字表示部6の中から利用者が所望の文字を選択したか否かの判別を継続する。
【0073】
ステップS17において所定時間が経過したと判別したとき、即ちステップS6で候補文字表示部6の中から利用者が所望の文字を選択指示せず、ステップS14で利用者が手書入力に戻る指示も行わず、ステップS15で利用者が文字入力方法の変更も指示せず、ステップS17で所定の時間が経過したときには、利用者は今回の手書入力は適切ではなく、操作もとまどっているものと見なしてステップS18で、入力済みの手書入力表示部3に表示されている手書入力パターンおよび候補文字表示部6に表示されている候補文字を消去し、ステップS1に戻って、手書入力の再開状態とする。
【0074】
図2では、従来例として示している
図11に示す作動と同等の作動を行うため、従来技術の処理も含めて作動フローを示しているが、表面上は従来技術と同じように見えても、ステップS8で手書入力パターンや認識用文字パターンを記憶し、そのデータを利用することができるようにする点、また、
図4に示す第2文字以降の手書入力処理については、従来技術と相違している。
【0075】
図2のステップS13における入力手書文字認識不能時処理においては、
図3に示すように、最初に、入力した手書入力パターンに対応する文字が手書入力文字認識用データベース11に存在しないので再入力することを指示表示する(ステップS21)。この処理は
図1の認識不能表示部13において、手書入力文字認識部10の認識結果を認識結果判別部12で判別し、文字認識できなかったと判別したときに前記のような表示を行うことにより実施している。
【0076】
次いで、ステップS21による再入力指示表示終了後、例えば4秒等の所定時間が経過したか否かを判別し(ステップS22)、経過していないときには利用者が手書入力に戻る指示をしたか否かを判別する(ステップS23)。ここで利用者が手書入力に戻る指示をしていないと判別したときには、ステップS26において利用者が文字入力方法の変更を指示したか否かを判別し、文字入力方法の変更を指示したと判別したときには、例えばピンイン入力等の、利用者が指示した他の入力方法の処理に変更する。
【0077】
また、ステップS26で利用者が文字入力方法の変更を指示していないと判別したときにはステップS22に戻り、再入力指示表示終了後所定時間が経過したか否かの判別を継続する。また、ステップS23で利用者が手書入力に戻る指示をしたと判別したときには、ステップS22で再入力指示表示終了後所定時間が経過したと判別したときと共にステップS24に進み、入力済みの手書入力表示部3に表示されている手書入力パターンを消去し、
図2のステップS1に戻って新たな手書入力処理を行う(ステップS25)。
【0078】
一方、
図2に示す作動フローにおけるステップS12の第2文字以降の手書入力処理に際しては、
図4に示すように、最初に、前に確定した文字を利用するか否かの判別を行う(ステップS31)。この判別は、前記のように、前に入力した文字を確定した後、新たに手書入力部1に手書入力を開始したとき、前に確定した文字を利用せずに通常の手書入力を行うものと判別する。一方、
図1に示す確定文字選択指示部16により、確定文字表示部7に表示されているいずれかの文字がワンタッチ操作された場合、または、確定文字表示部7に表示されているいずれかの文字にタッチしてそのままドラッグ操作により手書入力表示部3へ引き込む操作等がなされた場合に、選択指示検出部8がこれらの操作を検出し、前に確定した文字を利用して文字入力を行うものと判別する。或いは、
図1に示す手書入力戻し指示部17により、戻しキー(
図1の符号6a参照)を任意の回数操作することによって、その回数分だけ前に確定した確定文字を選択する指示がなされた場合、選択指示検出部8がこの選択指示を検出し、前に確定した文字を利用して文字入力を行うものと判別する。
ステップS31で、前に確定した文字を利用する処理を行わないと判別したときには、従来と同様にステップS39において
図2のステップS1に進み、通常の手書入力処理を行う。但し、
図2のステップS8において、手書入力パターンまたは認識用文字パターンを記憶する作動を行う点で従来技術とは異なる処理を行うことは前記のとおりである。
【0079】
ステップS31において、前に確定した文字を利用すると判別するときの具体例を
図6に基づいて説明する。先ず、
図6(a)に示すように、利用者が第1文字として指先或いはペン先等によって「金」という手書入力パターンを手書入力部41に入力すると、これを手書入力文字認識部10が文字認識処理し、その結果、候補文字表示部42に図示するように候補文字が表示され、その中の「金」を利用者の意図する文字であるとして選択指示するという一連の処理が行われる。
【0080】
その結果、
図6(b)に示すように確定文字表示部43にこの「金」の文字が表示され、同時に、手書入力部41に表示されていた手書入力パターン及び候補文字表示部42に表示されていた候補文字が消去される。次に、利用者が第2文字として第1文字と同一の「金」の文字を入力しようと思ったときに、本実施例では、前に確定した文字を利用するために、確定文字表示部43に表示されている「金」の文字を
図6(b)に示すようにワンタッチ操作により選択指示する。この選択指示を
図1に示す選択指示検出部8が検出したときに、ステップS31において、前に確定した文字を利用して文字入力を行うものと判別し、ステップS33へ進む。
【0081】
ステップS33では、上記のように確定文字表示部43から選択指示した文字の文字パターンを読み込む。この処理は、
図1の手書入力文字パターン32、認識用文字パターン33、または標準文字パターン36の中から表示文字選択部31で選択された文字パターンについて、記憶部23の手書入力文字パターン記憶部24、または認識用文字パターン記憶部25に記憶している文字パターン、或いは手書入力文字認識用データベース11に蓄積されている標準文字パターンのいずれかを読み込むことにより行う。
【0082】
次いで、ステップS33で読み込んだ文字パターンを手書入力部1へ表示する(ステップS34)。この処理は、
図1の文字表示出力部28が、前記のように表示文字選択部31で選択した文字パターンを読み込み、その文字パターンを適宜表示位置調節部29によって表示位置を調節しながら、また表示大きさ調節部30で表示する大きさを縮小する等により調節しながら、手書入力表示部3の手書入力読込データ表示部5で表示することにより行う。
【0083】
この処理の結果、例えば
図6(b)に示すように確定文字表示部43に表示されている「金」の文字を選択指示することにより、同図(c)のように手書入力部41に、先に同図(a)に示すように手書入力した「金」の手書入力パターンが表示される。同図(c)の例では、この「金」の文字パターンを、その後の加筆入力を考慮して同図(a)のように文字入力したときよりも小さく、且つ手書入力部41の上方に移動させて表示した例を示している。また、
図1の表示文字選択部31で認識用文字パターン33が選択されている場合には、
図6(c)の手書入力部41に、
図11(b)に破線で示す認識用文字パターン103が実線で表示される。さらに、
図1の表示文字選択部31で標準文字パターン36が選択されている場合には、手書入力文字認識用データベース11に蓄積されている多数の標準文字パターンの中から、
図6(b)で選択された「金」の文字に対応する標準文字パターンが読み出されて
図6(c)の手書入力部41に表示される。
【0084】
その後、手書入力部41に表示した文字パターンについて、認識率の高い順に候補文字表示部に候補文字を表示する(ステップS35)。それにより
図6(c)の例では、前記のようにして手書入力部41に「金」の文字パターンを表示したとき、該文字パターンに対して同図(a)において手書入力したときと同様に手書入力文字認識部10で文字認識処理を行い、その結果を候補文字表示部42に表示する。それにより、同図(a)と同じ候補文字が表示されることとなる。
【0085】
ステップS35で候補文字表示部42に候補文字を表示する処理は、前記のように手書入力文字認識部10で再度文字認識処理を行うことなく、
図1の記憶部23の候補文字記憶部26に先に記憶している「金」の手書入力パターンに対応する候補文字を読み込んで、そのまま
図6(c)の候補文字表示部42に表示することによっても行うことができる。
【0086】
次いで、候補文字表示部42に表示された候補文字の中から任意の候補文字を選択指示したか否かを判別する(ステップS36)。ここで例えば
図6(c)のように、候補文字表示部42に表示されている候補文字の内「金」の候補文字を選択指示したとき、
図4の例においてはステップS40に進み、選択指示した文字を手書入力文字として確定し、その後
図2のステップS7に進んで、以降前記と同様の処理を行う。
【0087】
ステップS36で候補文字の中から任意の候補文字を選択指示しなかったと判別したときは、手書入力部41に表示した再表示文字パターンに加筆入力を行うものと認識する。即ち、
図6(c)に示すように、先に確定した文字と同じ文字を入力するときには、候補文字表示部42に表示された当該文字を選択指示することにより、当該文字をそのまま確定することとなるのに対して、候補文字表示部42に表示された候補文字を選択指示しないということは、後述するように
図8、
図9に示すような加筆入力を行うものと推定し、ステップS37においてそのような加筆入力が行われるのを待つ。ステップ37において加筆入力が行われた以降は
図2のステップS2に進み、新しい手書文字入力がなされたものとして、前記と同様の処理を繰り返す。
【0088】
図4に示すような処理を行うことにより、
図6に示すように、前に確定した文字を用いて同一の文字を連続して入力し確定する操作を容易に行うことができる。但し、本発明では
図6に示すような連続して同一の文字を入力する場合に限らず、例えば
図7に示すような処理も行うことができる。
図7(a)に示す例においては、
図6(a)のようにして「金」の文字を入力し確定した後、更に「外」という文字を手書入力し、これを文字認識処理した結果として候補文字表示部42に候補文字を表示し、その中の「外」の候補文字を選択指示した状態を示している。
【0089】
この選択指示により、
図7(b)に示すように、確定文字表示部43に先に確定して表示されている「金」に続いて「外」の文字が表示される。続いて利用者が入力しようとする文字が最初に入力して確定している「金」と同一の文字である場合、同図(b)に示すように、利用者が確定文字表示部43に表示されている「金」の文字を選択指示する。
【0090】
それにより同図(c)に示すように、先にこの「金」を手書入力したときの文字パターンが読み出され、手書入力部41に表示される。また、この文字パターンを文字認識した結果得られる候補文字を候補文字表示部42に表示する。ここで利用者が同図(c)に示すように複数の候補文字の中から「金」の候補文字を選択指示することにより入力文字を確定する。その結果、同図(d)に示すように、「金」「外」に続いて「金」の文字を、先に確定した文字の文字パターンを用いて手書入力することなく容易に入力することができる。
【0091】
図8及び
図9には、
図4のステップS37の処理によって、先に確定した文字の文字パターンを用いて該文字パターンに加筆入力し、先に確定した文字とは別の文字を手書入力する例を示している。最初に、
図8(a),(b)に示すように、「金」の文字を手書入力し、この手書入力パターンを文字認識した結果を候補文字表示部42に表示し、その中の「金」の文字を選択指示してこの文字の入力を確定する。ここまでの操作と処理内容は
図6(a),(b)に示す例と同様である。
【0092】
上記処理により
図8(b)に示すように、確定文字表示部43に「金」が表示される。その後利用者が続いて前記
図12(a)のような、「金」が下に2個、上に1個重なって構成される「?」の文字を入力しようとするとき、
図8(b)に示すように確定文字表示部43の「金」の文字を選択指示すると、同図(c)の手書入力部41に、同図(a)で手書入力した「金」の文字の文字パターン(
図8の例では手書入力文字パターン)を記憶部23から読み出して表示する。
【0093】
但し、
図8(c)の状態では表示した「金」の文字パターンの下に更に「金」を2個加筆することがスペース的に困難なため、
図8(c)に示すように手書入力部41(タッチパネル)を指で下方から上方になぞり、表示した「金」の文字パターンの上方への移動を指示する。このとき、
図1の表示大きさ調節部30は文字パターンを例えば60%程度の所定の割合で縮小表示する。このように、先に確定した文字の文字パターンの表示位置を調節する操作がなされたときに、表示大きさ調節部30が該文字パターンを所定の割合で、或いは該文字パターンが所定の大きさ以下となるように自動的に拡大・縮小処理を行うようにすることで、その後の利用者の加筆入力がし易くなる。なお、表示大きさ調節部30による文字パターンの拡大・縮小率または該文字パターンの表示の大きさを利用者が適宜設定できるようにしても良い。ここで、先に確定した文字の文字パターンの表示位置を調節する手法としては、上記のなぞり操作以外に、例えば4方向キーやジョイスティックを利用して、文字パターンを任意の方向に移動させることもできる。更には
図8(c)において文字パターンを表示するとき、その文字パターン(
図8の例では「金」の文字パターン)の使用される態様が、偏、旁、冠、脚のいずれである可能性が高いかを手書入力文字認識用データベース11に蓄積されている各標準文字パターンを検索することにより判別して、文字パターンを自動的に手書入力部41の左右上下のいずれかの方向に移動させて表示させても良い。
【0094】
上記操作の結果、
図8(d)に示すように「金」の文字パターンが手書入力部41の上方へ移動し、且つ縮小表示される。これにより、「金」の文字パターンの下側に加筆入力のためのスペースが形成される。その後、
図9(a)に示すように、利用者が前記のように表示処理した「金」の文字パターンの下に同様に「金」の文字を2個手書入力する。同図(a)にはその入力途中の状態を示している。加筆後の文字パターンを文字認識処理した結果として、同図(b)に示すように候補文字表示部42に複数の候補文字を表示する。利用者はこの候補文字を見て、所望の「?」の文字を選択指示する。その結果この文字の入力が確定し、同図(c)に示すように、確定文字表示部43に先に確定した「金」の文字に続いて「?」の文字を表示する。
【0095】
なお、
図9(d)には、先に確定して確定文字表示部43に表示されている文字を選択指示して手書入力部41に表示する際の選択指示手法を示している。例えば前記
図9(b)のような「?」の文字を入力するにあたって、確定文字表示部43に表示している「金」の文字の文字パターンを利用する場合、確定文字表示部43の「金」の文字を指でタッチし、そのまま手書入力部41の上部にドラッグして指を離すことにより、手書入力部41の上部に「金」の文字の文字パターンを表示させることができる。即ち、確定文字表示部43に表示されている文字の選択指示と該文字の文字パターンの表示位置調節を一連の操作で行うことができる。
更に、
図9(d)の例では、上記と同様のドラッグ操作を繰返し、確定文字表示部43の「金」の文字を手書入力部41の下部左側と下部右側にもそれぞれドラッグして「金」の文字パターンを3箇所に表示させることにより、手書による加筆を行うことなく「?」の文字パターンを表示させて、これを文字認識処理させることができる。「?」に限らず「森」「磊」など同じ文字パターンの組み合わせからなる文字の入力時は、
図9(d)に示す選択指示手法が有効である。
【0096】
本発明は前記のような各処理によって、種々の態様で実施することができるものであるが、
図5に示すような作動フローによって更に別の態様で実施することができる。即ち、
図5に示す例においては、
図2のステップS12における第2文字以降の手書入力処理として、前記
図4に示す例と同様に、最初に、前に確定した文字を利用するか否か判別し(ステップS51)、利用しないときには
図2のステップS1へ進んで新たな手書文字入力を行う(ステップS62)。
【0097】
ステップS51で前に確定した文字を利用すると判別したときには、ステップS53に進んで前に確定した文字と同じ文字を直接入力確定する指示操作を行ったか否かを判別し、そのような指示操作を行ったと判別したときには、ステップS63に進み、選択指示した文字を入力文字として確定して、その後
図2のステップS7に進む。
【0098】
即ち、前記
図4の例においては、前に確定した文字を利用して同一の文字を再度入力するときでも、一度手書入力部にその文字パターンを表示させ、該文字パターンを文字認識して候補文字を表示させて、その中から前に確定した文字と同じ文字を選択指示して確定していたが、
図5のステップS53においては、例えば確定文字表示部に表示している文字を再入力するために選択指示する際、所望の文字を指等によって例えば3秒等の時間押し続ける(タッチし続ける)長押し操作を行い、或いは所望の文字をダブルクリックのように2回連続して押す(タッチする)ことによってその選択した文字と同一の文字をもう一度入力確定するための指示指令とし、そのような操作が行われたときには確定文字表示部から選択指示した文字を、一旦手書入力部に表示させることなく次の入力文字として確定する。
【0099】
ステップS53で前に確定した文字と同じ文字を入力確定する指示操作を行っていないと判別したとき、即ち、ステップS51において、
図6乃至
図9の例で説明したように、確定文字表示部に表示されている文字のワンタッチ操作やドラッグ操作のみが行われた場合には、ステップS54に進んで選択した文字の文字パターンを手書入力部の所定位置に所定大きさで表示する。この時も表示される文字パターンについて、上記と同様の手法で手書入力部の画面の片側に移動させ、また縮小表示させることができる。そして、ステップS55において、選択した文字の文字パターンに対応して
図1の記憶部23の候補文字記憶部26に先に記憶している候補文字を読み込んで、該候補文字をそのまま候補文字表示部に再表示する。なお、ステップS55において、
図4のステップS35と同様に、手書入力部に表示された文字パターンを手書入力文字認識部10で再度文字認識処理し、その結果を候補文字表示部に表示しても良い。
その後、手書入力部に表示した文字パターンに所定時間内に加筆入力をしたか否かを判別する(ステップS56)。ここで加筆入力したと判別したときにはステップS65において、
図2のステップS2に進み、以降は前記
図2と同様の作動を行う。
【0100】
ステップS56で手書入力部に表示した文字パターンに加筆入力をしていないと判別したときには、ステップS57において候補文字表示部に表示されている候補文字の中から所定時間内に任意の文字を選択指示したか否かを判別する。ここで候補文字の中から任意の文字を選択しないと判別したときにはステップS66に進み、利用者がステップS52で確定文字表示部の文字を選択指示したものの、その文字パターンに対応する候補文字には所望の文字が存在しなかったものと判断し、
図2のステップS1に戻って新たな手書入力処理を行う。
【0101】
それに対してステップS57で候補文字の中から任意の文字を選択指示したと判別したときには、指示した文字を入力確定する指示操作を所定時間内に行ったか否かを判別し、例えば図示しない確定ボタンをタッチする等の確定指示操作を行ったときは、ステップS67に進んで選択指示した文字を手書入力文字として確定し、その後ステップS68で
図2のステップS7に戻って以降の処理を行う。
【0102】
ステップS58で選択指示した文字を入力確定する指示操作を所定時間行っていないと判別したときには、ステップS59において、候補文字表示部から選択した文字の文字パターンを手書入力部の所定位置に所定大きさで表示する。このとき表示する文字パターンは、手書入力文字認識用データベース11に記憶されている標準文字パターンである。その後ステップS60において、手書入力部に表示した文字パターンに利用者が加筆入力を行い、ステップS61で
図2のステップS2に戻って、以降は前記と同様の手書入力文字認識処理を行う。
【0103】
図5に示すような処理を行うことにより、例えば
図10に示すような作動が可能となる。即ち、
図10(a)では第1文字として「金」の文字が既に確定している状態であるが、利用者が第1文字である「金」の文字を手書入力したときに、その文字認識結果として候補文字表示部42に、これから入力しようとしている「粉」の文字の文字パターンの一部と共通する「分」の文字が存在していたことを思い出し、これを利用しようとして確定文字表示部43の「金」の文字を選択指示した状態を示している。
図10(a)の選択指示によって、手書入力部41には先に手書入力したときの手書入力文字パターンである「金」の文字パターンが表示されると共に、候補文字表示部42に、先の手書入力時に表示したものと同じ候補文字が表示される。
【0104】
ここで利用者が候補文字表示部42の候補文字の中から「分」の文字を選択指示し、且つ、
図5のステップS58で示す入力確定の指示操作を所定時間(例えば3秒間)行わなずに放置すると、
図10(b)に示すように、候補文字表示部42から選択指示された「分」の文字に対応する標準文字パターンが手書入力文字認識用データベース11から読み出され、先に表示していた「金」の文字パターンに代わって手書入力部41に表示される。なお、第1文字として確定している「金」の後に利用者が第2文字として「分」の文字を入力したいと思っていた場合には、
図10(a)の状態で候補文字表示部42に表示されている「分」の文字の表示部分を前記のような長押しやダブルタッチの操作によって直接確定入力させることも可能である。
【0105】
その後、前記
図8(c)の例と同様に、「分」の文字パターンの移動処理および大きさの調節処理を行い、
図10(c)に示すように該文字パターンを右側に小さく表示する。なお、手書文字入力装置自身で、「分」の文字パターンの使用される態様が、手書入力文字認識用データベース11に蓄積されている各標準文字パターンから検索した結果として旁である可能性が高いと判断した場合には、
図10(b)の状態を経ずに「分」の文字パターンを最初から右側に小さく表示させても良い。この状態から利用者が「分」の文字パターンの左側に「米」の文字を加筆入力する。そして、加筆後の全体の文字パターンについて再度文字認識処理を行い、その結果として候補文字表示部42に候補文字が表示される。利用者が候補文字の中から「粉」の文字を選択指示すると、この「粉」の文字入力が確定し、同図(d)に示すように確定文字表示部43には「金」に続いて「粉」の文字が表示される。このように、本発明では確定文字表示部の文字を有効に利用できるのに加えて、候補文字表示部から選択指示した候補文字をも有効利用することができる。