(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記可動部材(M)と前記遊動スリーブ(72)との間に、その遊動スリーブ(72)を半径方向の内方へ押し戻す復帰用弾性体(74)を装着した、ことを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタのテーブルのクランプパレットにワークパレットを位置決めして固定する場合、一般的に、基準となる1個の基準クランプ装置と、ワークの加工時にこの基準クランプ装置の回りに上記ワークパレットが旋回するのを阻止する従クランプ装置とが使用される。上記の基準及び従クランプ装置は概略以下のように構成されている。
【0003】
上記の基準クランプ装置は、例えば特許文献1に示すように、次のように構成される。
ワークパレットのソケット穴に挿入されるプラグ部分をクランプパレットから上方へ突出させる。上記プラグ部分に設けた筒部材の周壁の上部に複数の貫通孔が周方向へ所定の間隔を明けて設けられ、各貫通孔に係合ボールを水平方向に移動可能に挿入する。上記筒部材の外周に、直径方向に拡大及び縮小される環状シャトル部材を上下方向へ移動可能に支持し、その環状シャトル部材をバネによって上方に付勢する。上記のシャトル部材は、上方へすぼまるテーパー外周面を有する。上記ワークパレットのソケット穴の下部に、上記シャトル部材の上記テーパー外周面に嵌合するテーパー位置決め孔を形成する。
【0004】
上記構成の基準クランプ装置では、駆動手段によるクランプ駆動時に、上記テーパー位置決め孔がシャトル部材に緊密にテーパー係合してワークパレットをクランプパレットに対して水平方向に位置決めした後、係合ボールがソケット穴の被係合部を介してワークパレットを下方へ、即ちクランプパレットの方向に引っ張り、そのワークパレットを上下方向に固定する。
【0005】
また、前記の従クランプ装置は、上記の基準クランプ装置の構成を、例えば次のように変更したものである。
ワークパレットの上記ソケット穴の内周から一対の突起部が半径方向の内方へ突出される。これらの突起部が水平方向で向かい合うように配置されると共に、各突起部の内周に前記テーパー位置決め孔が形成される。また、従クランプ装置において、上記一対の突起部が向かい合う方向は、基準クランプ装置の軸心と従クランプ装置の軸心とを結ぶ仮想直線に対してほぼ直交するように配置される。これにより、基準クランプ装置の軸心の周りにワークパレットが旋回するのを阻止すると共に、上記ワークパレットが上記仮想直線の方向へ僅かに移動するのを許容している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワークパレットが小型の場合、基準及び従の二つのクランプ装置により円滑な位置決め固定が可能であったが、マシニングセンターで加工されるワークが次第に大型化すると、使用されるワークパレットも当然大型化することになり、次の問題が生じる。例えば3m×8m以上というような横長の大型のワークパレットの場合、基準及び従クランプ装置による2点のみの固定では、基準及び従クランプ装置から離れた部分のクランプ力が不足して、ワークパレットがクランプパレットから浮き上がることになる。
【0008】
そこで、大型ワークパレットの交換作業あるいは設置作業において、基準及び従クランプ装置から離れた部分の第3のクランプ装置として従クランプ装置と同様の構造のクランプ装置を用いることが出来ないかと考えた。しかし、大型ワークパレットをクランプパレットにセットするためには、クランプパレットに装備された全てのプラグ部分をワークパレットのソケット穴係合部に同時に無理なく挿入する必要がある。このような条件に対して、工場内で稼働しているマシニングセンターのクランプパレットと他所から運ばれてきた大型ワークパレットとの間に温度差があるため、その熱膨張差によりクランプパレットに装着されているプラグ部分の中心軸とワークパレットのソケット穴係合部の中心軸との間に寸法差による大きなズレが生じた場合や、上記中心軸同士の間の寸法加工誤差が大きい場合には、プラグ部分のソケット穴係合部への円滑な同時挿入を阻害する。この状態で無理にセットしようとすればいずれかのクランプ装置の破損に繋がり、大型ワークパレットの着脱を円滑に行えないという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、大型のワークパレット等の可動部材をクランプパレットのような基準部材に円滑に着脱できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、例えば、
図1〜
図6(及び
図9)又は
図8に示すように、基準部材Rに可動部材Mを着脱可能に固定するクランプ装置Cを次のように構成した。
即ち、プラグ部分4Cを、上記可動部材Mのソケット穴71に挿入されるように、上記基準部材Rから先端方向へ突出させる。上記プラグ部分4Cに設けた係合具42が、当該プラグ部分4Cの半径方向の外方の係合位置Xと半径方向の内方の係合解除位置Yとの間を移動する。遊動スリーブ72は、上記係合位置Xの係合具42が係合する被係合部73bを有し、上記プラグ部分4Cと上記係合具42のうちの少なくとも一方によって半径方向へ押動されるように上記可動部材Mに支持されている。クランプ駆動時には、上記基準部材Rに設けた駆動手段Dが、上記係合具42と上記遊動スリーブ72とを介して上記可動部材Mを基準部材R方向へ引っ張る。
【0011】
本発明は、次の作用効果を示す。
基準部材Rに可動部材Mを固定する際に、可動部材Mに設けられたソケット穴71にプラグ部分4Cを挿入した時、ソケット穴71の中心軸に対してプラグ部分4Cの中心軸がΔt(デルタ・ティー)だけずれている場合でもプラグ部分4Cの挿入や駆動手段Dの作動による係合具42の係合方向への突出に合わせて遊動スリーブ72だけがプラグ部分4Cの中心軸に一致するように移動して自動調心し、この状態で該係合具42が遊動スリーブ72の被係合部73bに係合して可動部材Mを基準部材Rに固定することになる。
【0012】
本発明においては、前記可動部材Mと前記遊動スリーブ72との間に、その遊動スリーブ72を半径方向の内方(例えば、移動前のホームポジション)へ押し戻す復帰用弾性体74を装着することが好ましい。
【0013】
これによれば、前述のように遊動スリーブ72がプラグ部分4Cの挿入や駆動手段Dの作動による係合具42の突出により自動調心してソケット穴71の中心軸からズレたとしても、アンクランプ時にプラグ部分4Cをソケット穴71から抜けば、遊動スリーブ72の偏心移動により押圧されて歪んでいた復帰用弾性体74の弾性回復力により、遊動スリーブ72はホームポジションにまで押し戻される。このため、次の可動部材Mの使用時に遊動スリーブ72がズレたままで使用されるというようなことがなく、可動部材Mの繰り返し使用が円滑に行える。
【0014】
本発明のプラグ部分4Cは、次のように構成することが好ましい。
即ち、前記係合具42を複数の係合ボールによって構成する。前記プラグ部分4Cは、前記基準部材Rに固定された筒部材41を有する。上記筒部材41の筒孔57に出力ロッド45を軸方向へ移動可能に挿入すると共に、上記筒部材41の周壁に、周方向へ所定の間隔をあけて上記係合ボール42を半径方向へ移動可能に挿入する。前記駆動手段Dが上記出力ロッド45をクランプ方向へ駆動することにより、その出力ロッド45が上記係合ボール42を前記係合位置Xへ移動させる。
【発明の効果】
【0015】
以上から、本発明では大型のワークプレート等の可動部材であっても円滑に着脱できるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1実施形態を
図1〜
図6(及び
図9)によって説明する。
図1及び
図2に示すように、マシニングセンタのテーブル1の上面に、基準部材Rであるクランプパレット2が固定されている。そのクランプパレット2には、可動部材Mである大型のワークパレット3を受けてその撓みを防止するプレート撓み防止用受け座(図示せず)と、上記のワークパレット3を固定する際に、基準部材Rに対する可動部材Mの取付位置の基準となる基準クランプ装置Aのプラグ部分4Aと、この基準クランプ装置Aのプラグ部分4Aに対して所定間隔を以って配置された従クランプ装置Bのプラグ部分4Bと、これら基準及び従クランプ装置A,Bのプラグ部分4A,4Bから離れた可動部材Mの離間部位の固定を行う離隔位置クランプ装置Cのプラグ部分4C(本実施例では8箇所)とが取り付けられている。これらクランプ装置A〜Cのプラグ部分4A,4B,4Cが挿入固定されるソケット穴係合部7A,7B,7Cがワークパレット3の下面に所定間隔で設けられており、これらによって大型ワークパレット3の全面がクランプパレット2に強力に固定されるようになっている。前記クランプ装置A〜Cのプラグ部分4A,4B,4Cは、クランプパレット2に穿設された凹穴21(基準及び従クランプ装置A,Bの凹穴は図示せず。)にそれぞれ嵌め込まれ、ボルト固定されている。
【0018】
離隔位置クランプ装置Cは、前述のようにプラグ部分4Cとソケット穴係合部7Cとで構成されており、上記ソケット穴係合部7Cは、遊動スリーブ72と、その遊動スリーブ72を下側から支持するリング75とで構成されている。
【0019】
遊動スリーブ72が収納されているソケット穴71は、奥側の小径穴部71aと開口側の大径穴部71bとが同心状に形成された凹穴であり、本実施形態では大径穴部71b内に遊動スリーブ72が開口に沿って移動可能に収納されている。ここで、ソケット穴71の小径穴部71aと大径穴部71bとの境には段状の段部面71cが形成されている。なお、大径穴部71bは、ソケット穴71に設ける代わりにリング75側に設けることも可能である。
【0020】
遊動スリーブ72の外径は、大径穴部71bの内径より小さく形成され、且つ上記遊動スリーブ72の高さ(換言すれば、厚み)は、大径穴部71bの深さ(開口端から段部面71cまでの深さ)よりもわずかに小さくなっている。遊動スリーブ72の内周面73は上下方向の中央部分が内側に膨出しており、上側に向かって次第に拡径する上側のテーパー面が係合具42との一方の被係合面73bとなる。下側に向かって次第に拡径する下側のテーパー面73cは、プラグ部分4Cの筒部材41を小径穴部71aに案内するためのガイド面となる。大径穴部71bの段部面71cと対面する遊動スリーブ72の上面又は外周縁には段状又は溝状に切欠76が形成されており、この切欠76にOリング77が嵌め込まれている。なお、
図3〜
図6中の遊動スリーブ72において、左半図は切欠76を段状に形成した場合を示し、右半図は上記切欠76を溝状に形成した場合を示している。そのOリング77は、大径穴部71bの段部面71cと切欠76とで挟み込まれ、後述するリング75を装着した時に遊動スリーブ72の自由なスライド移動に対して軽い抵抗を付与している。そして、遊動スリーブ72の外周の下部には回り止めピン78が固定され、その回り止めピン78が、リング75の対向面に設けられたガイド溝79に遊嵌されている。なお、その回り止めピン78は省略可能である。
【0021】
リング75の外径は大径穴部71bの内径より大であり、上記リング75の内径は、遊動スリーブ72の下側のテーパー面73cの開口の内径と同等或いは図のようにやや大きい。やや大きい場合は、ガイド面であるテーパー面73cに連続するように開口奥部に向かって縮径するガイド用のテーパー面80が形成されている。上記リング75は、上下方向へ貫通する複数のボルト挿入孔81に挿通したボルト82でワークパレット3の下面に固定される。更に、ワークパレット3とリング75との間に位置決めピン84が埋設されている。
【0022】
プラグ部分4Cは、大略、カバーブロック4Caと係合ボール(係合具)42とピストン43とクランプバネ44と出力ロッド45及び押具46とを備える。
【0023】
カバーブロック4Caは、角ブロック状の本体部分の下面からリング状の凹穴挿入部47が突設され、この凹穴挿入部47がクランプパレット2の凹穴21に挿入されてボルト固定され、更にその上面中央から上方に円筒状の筒部材41が突出され、その底面から筒部材41の先端まで筒孔57が穿設されており、この筒孔57に出力ロッド45が軸方向にスライド可能に挿入されている。そして、筒部材41の先端角部は大きく面取りされてテーパー面41mとなっており、その側壁には周方向に所定角度で複数の貫通孔48が穿設されている。
【0024】
前記筒孔57の先端部分を縮径させた内鍔部57aに、前記押具46の外鍔部46aが係合される。また、カバーブロック4Caの上面において、上記筒部材41の下部を囲繞する環状部分が全周にわたって少し上向きに突設され、その環状突設部16cの上面が支持面Sである。
【0025】
上記筒部材41の下半部は大径に形成されており、該大径挿入部54の先端から外径の細い小径挿入部55が突出しており、大径挿入部54と小径挿入部55の境界部分56は小径挿入部55に向かって次第に縮径するテーパー面となっている。小径挿入部55の外径は遊動スリーブ72の内径とほぼ等しく形成され、挿脱可能となっている。一方、大径挿入部54の外径はリング75の内径より小さく、大径挿入部54とリング75との間には、筒部材41の挿入時にプラグ部分4Cの中心軸に対するワークパレット3のソケット穴71の小径穴部71aの中心軸のずれ量Δt(デルタ・ティー)「好ましくは最大ずれ量」を十分吸収できるだけのギャップが設けられている。
【0026】
そして、カバーブロック4Caの下部には、筒孔57の回りを囲繞するように上部バネ収納溝53aが凹設され、さらに筒孔57の内周面に連通する加圧エア供給路60aが穿設されている。
【0027】
係合ボール42は、貫通孔48内を挿脱方向に移動して遊動スリーブ72の被係合面73bに係合してワークパレット3をクランプパレット2に固定するもので、通常、鋼球が使用される。勿論、これは鋼球に限定されるものでなく、コロ状のものでもよい。なお、その係合ボール42の飛び出しによる脱落は、上記の貫通孔48の外端の縮径部(図示せず)によって阻止されるようになっている。
【0028】
ピストン43は、クランプパレット2に設けられた凹穴21に油密状にて往復スライド可能に嵌め込まれている。そのピストン43の下側に形成した油圧室50に連通する圧油給排口51がクランプパレット2に設けられている。そしてその上面の中央には出力ロッド螺着用の雌ねじ穴52が刻設されており、さらにその周囲にリング状の下部バネ収納溝53bが上部バネ収納溝53aに合わせて凹設され、上下のバネ収納溝53a,53bが、後述するクランプバネ44が収納されるバネ収納溝53となる。そして上記ピストン43と油圧室50とクランプバネ44によって駆動手段Dが構成される。
【0029】
出力ロッド45は略円柱状の部材で、下端部に雄ネジ部45aが螺設されていて、前述の雌ネジ穴52に螺着されている。一方、前記出力ロッド45の外周面の上部側面には、上記の各係合ボール42に対応させて、クランプ用の出力面(出力部)58と、その下側で出力面58に連ねて形成されている退避溝59が上下に連ねて凹設されている。上記出力ロッド45の中心部分にはL形の加圧エア供給路60bが穿設されており、さらにその先端上面には浅い掘り込み溝61が形成されている。前記加圧エア供給路60bの左下部の入口には、上下方向に長い供給路60cが形成されている。そして、その上下にはOリング63及び64が配設されている。なお、上記出力ロッド45と上記ピストン43との両部材は、図示のように個別に形成して螺着するようにしているが、このように別体で形成することに代えて一体に形成してもよい。
【0030】
クランプバネ44は、上下方向に積層された複数枚の皿バネによって構成され、バネ収納溝53内に圧縮状態で収納されている。クランプバネ44は、ここでは複数枚の皿バネを利用しているが、これに代えて圧縮コイルバネ等の他の種類のバネまたはゴムによって代替可能である。
【0031】
上記筒部材41の筒孔57の先端の縮径部分には押具46が上下方向へ所定範囲内で保密移動自在に収納される。そして、上記の押具46の下面にはバネ収容穴46bが形成され、そのバネ収容穴46bの頂壁と上記出力ロッド45の上端面の掘り込み溝61との間には、圧縮バネ65が装着される。その圧縮バネ65は、押具46を出力ロッド45の上端面から離間方向、即ち上向きに押圧付勢し、その押具46の所定以上の上向き移動が外鍔部46aによって阻止されている。ここでは押具46は出力ロッド45と別体の例を示したが、必ずしもその必要はなく、一体としてもよい。
【0032】
更に、上記クランプ装置Cには筒部材41とソケット穴係合部7Cの嵌合面同士をクリーニングする手段が設けられる。即ち、前記のクランプパレット2に加圧エア(クリーニング流体)の供給口60dが設けられると共にカバーブロック4Ca及び出力ロッド45内を通る加圧エア供給路60a〜60cが押具46のバネ収容穴46bに連通している。そして前記の押具46の上部角部に噴出口46cが斜め上向きに設けられ、供給された加圧エアが噴出口46cから噴出するようになっている。上記の噴出口46cは、周方向へ所定の間隔をあけて複数箇所設けることが好ましいが、1箇所だけでも差し支えない。
【0033】
上記離隔位置クランプ装置Cは、単独使用も可能であるが、主として
図1と
図9に示すように基準クランプ装置A及び従クランプ装置Bと共同して次のように作動する。
図9の概念図に示すように、基準クランプ装置Aは、プラグ部分4Aに支持したシャトル部材4aを介してワークパレット3の位置決めの基準点を決定するものである。また、従クランプ装置Bは、プラグ部分4Bに支持したシャトル部材4bを介してワークパレット3が基準クランプ装置の軸心回りに、旋回するのを阻止するように作用する。この点は、前述した先行技術と同様である。より詳しくいえば、
図1と
図2に示すように、長方形のクランプパレット2の両端にピン状のラフガイド5が突設されており、その1辺の中央には1個の基準クランプ装置Aのプラグ部分4Aが設置され、該プラグ部分4Aからその他辺側に向かって所定間隔をあけて従クランプ装置Bのプラグ部分4Bが設置されている。そして、該プラグ部分4A,4Bから所定間隔をあけてクランプパレット2の長手方向に複数(
図1では左右に4個)の離隔位置クランプ装置Cのプラグ部分4Cが配置されている。なお、前述したようにクランプパレット2の下面には所定間隔で撓み防止用受け座(図示せず)が配置されている。
【0034】
一方、ワークパレット3側にはラフガイド5に合わせてガイド孔6が穿設されており、更にワークパレット3の下面には該プラグ部分4A,4B,4Cに合わせてソケット穴係合部7A,7B,7Cが装着されている。また、図示していないがワークパレット3の上面には加工前のワークがセットされている。
【0035】
ワークパレット3の交換作業あるいは設置作業において、このようにセットされた大型のワークパレット3をクランプパレット2に対して下降させて行くと、ラフガイド5がガイド孔6に挿入されてクランプパレット2に対するワークパレット3のラフな位置決めがなされ、更に下降させるとプラグ部分4A,4B,4Cがソケット穴係合部7A,7B,7Cに挿入される。
【0036】
この時、例えば工場内稼働しているマシニングセンターのクランプパレット2の温度と他所から運ばれてきたワークパレット3との温度差がある場合には、大型のワークパレット3にあってはその熱膨張差によりクランプパレット2に装着されているプラグ部分4A,4B,4Cの中心軸とワークパレット3のソケット穴係合部7A,7B,7Cの中心軸との間に大きな差が生じている。ワークパレット3のクランプパレット2に対する位置決めは基準クランプ装置Aと従クランプ装置Bを基準に行われるため、これらから大きく離れている部位ではクランプパレット2のプラグ部分4Cの中心軸に対するワークパレット3のソケット穴係合部7Cの中心軸は大きくずれることになる。(勿論、クランプパレット2に対してワークパレット3の位置決めがラフでよい場合は、全て本発明に係るクランプ装置Cだけでクランプしてもよい。ここでは基準クランプ装置Aと従クランプ装置Bを使用するものを代表例として記載している。)
【0037】
このような状態で基準クランプ装置Aと従クランプ装置Bのプラグ部分4A,4Bを基準にしてワークパレット3をクランプパレット2にセットして行くと、基準クランプ装置Aと従クランプ装置Bのプラグ部分4A,4Bはソケット穴係合部7A,7Bに一致してスムーズに挿入されるが、これらプラグ部分4A,4Bから離れるに従って離隔位置クランプ装置Cのプラグ部分4Cの中心軸に対するソケット穴係合部7Cの中心軸は大きくずれていて、円滑な挿入を阻害する事がある。本発明は、上記問題を解決するため、
図3〜
図6に示すように、次のように作動する。
【0038】
なお、
図3〜
図5の状態では、離隔位置クランプ装置Cにおいて、プラグ部分4Cがソケット穴係合部7Cに挿入される前から挿入された状態までを示し、この状態では圧油が圧油給排口51を経て前記の油圧室50へ供給されている。これにより、その油圧室50の油圧力によって、上記ピストン43が、前記クランプバネ44に抗して上昇し、カバーブロック4Caの当接面Fに当接している。また、各係合ボール42は前記の退避溝59内の係合解除位置Yへ移動可能となっている。
【0039】
上記の
図3は、離隔位置クランプ装置Cのプラグ部分4Cの中心軸に対するソケット穴係合部7Cの中心軸が大きくずれた状態を示す断面図で、そのズレ量をΔt(デルタ・ティー)で示す。ズレ量を持ったままワークパレット3を下降させると、
図4に示すように、筒部材41が偏心状態でリング75に挿入され、その筒部材41の先端のテーパー面41mが遊動スリーブ72の下側のテーパー面73cに片当たりする。その片当たり部分をPで示す。
【0040】
引き続いてワークパレット3を下降させると、
図5に示すように、上記テーパー面41mに沿って遊動スリーブ72が矢印の水平方向に押し出され、遊動スリーブ72の内周面73の先端が筒部材41の小径挿入部55の外周面に接触するまで移動する。ワークパレット3を更に下降させると、ソケット穴71の天井面が押具46に当接し、その押具46が出力ロッド45を介してワークパレット3を支持する。この時点ではリング75の下面に設けた被支持面75aがカバーブロック4Caの支持面Sから僅かに離間している。この点は、基準、及び従クランプ装置A,Bでも基本的には同様である。この状態で、基準クランプ装置A,従クランプ装置B及び離隔位置クランプ装置Cのプラグ部分4A,4B,4Cがそれぞれ対応するソケット穴係合部7A,7B,7Cに挿入されている。
【0041】
その後、各離隔位置クランプ装置Cの供給口60dへクリーニング用の加圧エアを供給し、その加圧エアが、前記の噴出口46cから勢い良く吐出され、前記ソケット穴71の頂面および周面をクリーニングして、その後、下向きに排出される。この点は、基準,従クランプ装置A,Bでも同様である。
【0042】
この状態で、
図9に示すようにまず基準クランプ装置Aが作動して前記シャトル部材4aのテーパー外周面にソケット穴係合部7Aのテーパー内周面が嵌り込んで両者をその全周にて係合すると共に係合ボールがソケット穴係合部7Aの係合面に係合して基準クランプ装置Aのロックがなされる。これとほぼ同時に従クランプ装置Bが作動し、前記基準クランプ装置Aの軸心の回りにワークパレット3が旋回するのを阻止する。
【0043】
上記各クランプ装置A,Bの作動とほぼ同時に、又は、その動作から所定の時間をあけて、離隔位置クランプ装置Cを作動させてワークパレット3の離隔位置をクランプパレット2に固定させることになる。その離隔位置クランプ装置Cの動作は以下のとおりである。
【0044】
図6に示すように、油圧室50の圧油を圧油給排口51から排出すると、クランプバネ44がピストン43及び出力ロッド45を強力に下降させて行く。すると、出力ロッド45の各出力面58が前記の各係合ボール42を半径方向の外方の係合位置Xへ押し出す。このため、上記出力面58が、上記の係合ボール42と遊動スリーブ72の被係合面73bとを介してリング75の下面の被支持面75aを支持面Sに押圧し、ワークパレット3をクランプパレット2に強固に固定する。この時の係合点をQ1,Q2で示す。
【0045】
図6のクランプ状態から
図3のアンクランプ状態へ切換えるときには、前記の逆で、まず、油圧室50へ圧油を供給し、前記ピストン43を上昇させる。すると、
図5に示すように出力ロッド45が押具46を介してワークパレット3を押し上げると共に係合ボール42が退避溝59内へ移動可能となる。
【0046】
この状態でワークパレット3を吊り上げると、
図4に示すようにワークパレット3の下面に装着されている遊動スリーブ72も引き上げられ、係合ボール42は、遊動スリーブ72の上側の被係合面73bによって半径方向の内方へ押され、退避溝59内の係合解除位置Yに切換えられる。従って、ワークパレット3をそのまま吊り上げることができる。この点は、基準クランプ装置A及び従クランプ装置Bにおいても同様である。
【0047】
図7は第1実施形態の変形例で、遊動スリーブ72の外周面に凹設されたリング溝73dにリング状の復帰用弾性体74が配設される。その弾性体74の弾性力が、プラグ部分4Cの筒部材41の挿入により移動した遊動スリーブ72を、移動前のホームポジションに戻すようになっている。復帰用弾性体74の配設位置は上記の例示に限られるものでなく、可動部材Mに配設されて前記復帰動作が可能であればよい。例えば、上記弾性体74を、前記の大径穴部71bの内周面に凹設することが考えられる。また、復帰用弾性体74も図示のものに限られず、前記復帰動作を可能にする形状であればよい。
【0048】
図8は本発明の第2実施形態を示しており、前述の第1実施形態と相違する部分を中心に説明し、第1実施形態と一致する部分はその説明を第2実施形態の説明に援用する。第2実施形態では、ワークパレット3を支持する支持台8がクランプパレット2に設けられ、この支持台8の上端面が、第1実施形態のカバーブロック4Caの支持面Sに代わる支持面Sとなる。
【0049】
また、遊動スリーブ72から下方へ一体に突出させた環状部72aの内径は、プラグ部分4Cの大径挿入部54の外径よりやや大きい。上記の遊動スリーブ72をワークパレット3の下面に取り付けるためのリング75は、上記環状部72aが挿入される内径を持つ。リング75の内周面に取り付けたシールリング75bが、環状部72aの外周面に弾接している。シールリング75bは、その弾発力を十分に設定することにより、シール機能の他に第1実施形態の復帰用弾性体74と同じ働きをする。
【0050】
この第2実施形態では、第1実施形態と同様にワークパレット3を下降させた時には、まず、
図8に示すように押具46によってワークパレット3が支持され、次いで係合ボール42が遊動スリーブ72の被係合部73bに係合して、上記ワークパレット3を支持台8の支持面Sに、強力に押圧することになる。この場合、リング75の環状部72aの下面の下側には所定の隙間が形成されている。
上記以外の動作は第1実施形態と同じである。
【0051】
なお、以上の説明では、本発明のクランプ装置Cは、基準クランプ装置Aおよび従クランプ装置Bとの協働で用いられる場合を示したが、単独で使用できることはいうまでもない。なお、前記駆動手段Dの圧力流体としては、例示の圧油に代えて、加圧エアなどの他の流体を採用できる。
【0052】
以上のように、基準及び従クランプ装置A、Bから離れた可動部材Mの部位の固定を本発明の第3の離隔位置クランプ装置Cで容易且つ確実に行うことが出来る。