特許第5734223号(P5734223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734223
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】排ガス浄化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/72 20060101AFI20150528BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20150528BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20150528BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20150528BHJP
   F01N 3/10 20060101ALN20150528BHJP
【FI】
   B01J23/72 AZAB
   B01J37/18
   B01D53/36 102C
   B01D53/36 102D
   B01J37/02 301K
   !F01N3/10 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-41907(P2012-41907)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-176728(P2013-176728A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2014年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 健師
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 みほ
(72)【発明者】
【氏名】世登 裕明
(72)【発明者】
【氏名】蔡 安邦
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 聡
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−070835(JP,A)
【文献】 特開昭59−097505(JP,A)
【文献】 特開昭59−012115(JP,A)
【文献】 特開2012−143732(JP,A)
【文献】 特開2010−88957(JP,A)
【文献】 特表2012−529986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの浄化に用いられる排ガス浄化触媒(1)であって、
表面に複数の開気孔(21)を有する多孔質金属粒子(2)と、該多孔質金属粒子(2)に担持されていると共に該多孔質金属粒子(2)よりも粒径の小さな微細金属粒子(3)とを有し、
上記多孔質金属粒子(2)はCoを主成分とし、上記微細金属粒子(3)はFeを主成分とし、
CoとFeの配合割合がモル比でCo:Fe=5:1〜1:5であることを特徴とする排ガス浄化触媒(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化触媒(1)において、上記多孔質金属粒子(2)と上記微細金属粒子(3)との少なくとも境界部にはCoFe合金が形成されていることを特徴とする排ガス浄化触媒(1)。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒(1)において、上記多孔質金属粒子(2)の平均粒径は1〜50μmであり、上記微細金属粒子(3)の平均粒径は2〜100nmであることを特徴とする排ガス浄化触媒(1)。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒(1)において、比表面積40〜100m2/gであることを特徴とする排ガス浄化触媒(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスを浄化するために用いられる排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンなどの内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素等の有害ガスが含まれる。そのため、排ガスを大気中に放出する前に、排ガス中に含まれる有害ガスを浄化する排ガス浄化触媒が用いられている。排ガス浄化触媒としては、例えば貴金属である白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の三元触媒が広く用いられている。
【0003】
ところが、貴金属は高価であり、価格安定性にも乏しいことから、貴金属に代わる金属触媒の開発が求められている。このような金属触媒としては、合金触媒が検討されている。また、排ガス浄化触媒においては、高比表面積であることが望まれている。
そこで、貴金属とFe、Co、Cu、又はNiの等の非貴金属とを含有する多孔性金属を排ガス浄化用触媒として利用することが検討されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−88957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の多孔性金属からなる排ガス浄化用触媒は、依然として貴金属を含有している。そのため、製造コストが高くなるという問題を解消することができなかった。一方、Ni、又はCu等の非貴金属の多孔性金属は、それ自体では排ガス中の浄化性能が不十分であるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、貴金属を含有しなくとも優れた排ガス浄化性能を示すことができる排ガス浄化触媒を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、排ガスの浄化に用いられる排ガス浄化触媒であって、
表面に複数の開気孔を有する多孔質金属粒子と、該多孔質金属粒子に担持されていると共に該多孔質金属粒子よりも粒径の小さな微細金属粒子とを有し、
上記多孔質金属粒子はCoを主成分とし、上記微細金属粒子はFeを主成分とし、
CoとFeの配合割合がモル比でCo:Fe=5:1〜1:5であることを特徴とする排ガス浄化触媒にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記排ガス浄化触媒においては、Coを主成分とする多孔質金属粒子に、Feを主成分とする微細金属粒子が担持されており、CoとFeとの配合割合がモル比でCo:Fe=5:1〜1:5という範囲に調整されている。そして、上記排ガス浄化触媒においては、上記多孔質金属粒子と上記微細金属粒子とがいずれも、移動し易い3d軌道の電子を有する。そのため、上記排ガス浄化触媒においては、3d軌道の電子と排ガス中の炭化水素等の有害成分との吸着、反応、及び解離がスムーズに進行する。
また、上記排ガス浄化触媒は、表面に複数の開気孔を有する多孔質金属粒子に、粒径の小さな上記微細金属粒子が担持されているため、表面積が大きい。そのため、排ガスとの接触面積が大きくなり反応性が高い。
したがって、上記排ガス浄化触媒は、貴金属を含有しなくとも優れた浄化性能で排ガス中の炭化水素等を浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例における、多孔質金属粒子と微細金属粒子とからなる排ガス浄化触媒の表面における部分断面構造を示す説明図。
図2】実施例における、排ガス浄化触媒における多孔質金属粒子と微細金属粒子との境界部分の部分拡大断面を示す説明図。
図3】実施例における、排ガス浄化触媒をハニカム構造体に担持した触媒担持体の外観を示す説明図。
図4】実施例における、触媒担持体の軸方向の断面を示す説明図。
図5】実施例における、排ガス浄化触媒におけるCoとFeの配合割合(モル比)と、排ガス浄化触媒の比表面積との関係を示す説明図。
図6】実施例における、排ガス浄化触媒におけるCoとFeの配合割合(モル比)と、THC浄化温度との関係を示す説明図。
図7】比較例における、多孔質合金粒子の表面における部分断面構造を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、上記排ガス浄化触媒の好ましい実施形態について説明する。
上記排ガス浄化触媒は、排ガス中の炭化水素等の有害成分を除去するために用いることができる。上記排ガス浄化触媒を用いることにより、上記有害成分の浄化温度を下げることができ、低温での浄化が可能になる。
上記排ガス浄化触媒は、例えば多孔質のハニカム構造体に担持して用いることができる。
【0011】
上記排ガス浄化触媒は、Coを主成分とする上記多孔質金属粒子と、Feを主成分とする上記微細金属粒子とを有する。
上記排ガス浄化触媒において、CoとFeの配合割合が、モル比で、Co:Fe=5:1〜1:5、即ち、Co/Fe=5〜0.2であることが好ましい。
CoとFeとの配合割合がCo:Fe=5:1〜1:5という範囲から外れる場合には、排ガス浄化性能が低下するおそれがある。
上記排ガス浄化触媒におけるCoとFeとの配合割合は、蛍光X線分析(XRF)により測定することができる。
【0012】
また、上記微細金属粒子は、上記多孔質金属粒子に担持されている。該多孔質金属粒子は、表面に複数の開気孔を有しており、上記微細金属粒子は、上記多孔質金属粒子の表面だけでなく、開気孔内に担持されていてもよい。
【0013】
好ましくは、上記多孔質金属粒子の平均粒径は1〜50μmであり、上記微細金属粒子の平均粒径は2〜100nmであることがよい(請求項3)。
上記多孔質金属粒子の平均粒径が小さすぎる場合には、微細金属粒子を十分に担持させることが困難になるおそれがある。より好ましくは、上記多孔質金属粒子の平均粒径は10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。また、多孔質金属粒子の平均粒径が大きすぎる場合には、上記排ガス浄化触媒を例えばハニカム構造体に担持して用いるときに、担持された触媒の表面積を十分大きくすることが困難になるおそれがある。上記多孔質金属粒子の平均粒径は40μm以下であることがより好ましく、35μm以下であることがさらに好ましい。
また、上記微細金属粒子の平均粒径が小さすぎる場合には、Feを主成分とする微細金属粒子が上記多孔質金属粒子に担持した上記排ガス浄化触媒の製造が困難になる。また、微細金属粒子の平均粒径が大きすぎる場合には、上記微細金属粒子が上記多孔質金属粒子の気孔を塞いでしまうおそれがある。そのため、上記排ガス浄化触媒の排ガスに対する反応性が低下するおそれがある。
【0014】
上記多孔質金属粒子及び上記微細金属粒子の平均粒径は、電子顕微鏡観察により100個以上の粒子の粒径を測定し、その平均値を求めることにより得ることができる。
上記多孔質金属粒子及び上記微細金属粒子の粒径は、粒子の最大幅(外接長方形の長径)とすることができる。
【0015】
また、上記排ガス浄化触媒は、比表面積40〜100m2/gであることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記排ガス浄化触媒の排ガスとの反応性をより向上させることができる。比表面積が小さすぎる場合には、排ガスとの反応性が低下し、高すぎる場合には、作製が困難になるおそれがある。より好ましくは、上記排ガス浄化触媒の比表面積は50〜90m2/gがよい。比表面積は、ガス吸着法により測定することができる。
【0016】
上記多孔質金属粒子と上記微細金属粒子との少なくとも境界部にはCoFe合金が形成されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記排ガス浄化触媒の排ガスに対する浄化性能をより一層向上させることができる。すなわち、CoとFeは共に3d軌道の電子を有し、周期律表の隣り同士にあり、原子半径がほぼ同じであるため、比較的低温で合金化して安定化し易い。そして、これらの合金の存在によって、反応性が高まり、排ガス中の炭化水素等の有害成分との吸着・反応・解離がより一層スムーズに進行する。
【0017】
上記排ガス浄化触媒は、次のようにして作製することができる。
まず、Coを主成分とする金属AとAl等のアルカリに可溶な金属Bとを溶解炉中に入れて、金属Aと金属Bとの合金を作製する(合金調製工程)。合金調製工程後には、必要に応じて合金を粉砕して例えば平均粒径1〜100μmの粒子に調整することができる。 次いで、アルカリ処理を行い合金から金属Bを除去し、Coを主成分とする多孔質金属粒子を得る(アルカリ処理工程)。次に、多孔質金属粒子を水等の液体で洗浄する(水洗工程)。次いで、少なくともFeイオンを金属イオンの主成分として含有する液体を多孔質金属粒子に付着させる(Fe付着工程)。次いで、還元雰囲気にて加熱する(加熱工程)。これにより、Coを主成分とする多孔質金属粒子と、該多孔質金属粒子に担持されたFeを主成分とする微細金属粒子とを有する排ガス浄化触媒を得ることができる。
【0018】
上記排ガス浄化触媒においては、上述の製造工程上、上記多孔質金属粒子にAlなどの金属Bが残留していても良い。
上記アルカリ処理工程におけるアルカリ処理は、例えば合金をアルカリ性の水溶液に浸漬したり、合金にアルカリ性の水溶液を塗布したりすることにより行うことができる。このとき、アルカリ性水溶液の濃度、浸漬時間、塗布後の放置時間、温度条件等を変更することにより、多孔質金属粒子の気孔率及び比表面積を調整することができる。
また、上記水洗工程においては、粉砕を行って上記多孔質金属粒子の平均粒径を調整することができる。
【0019】
また、上記Fe付着工程において、Feイオンを含有する液体としては、例えばFe塩の水溶液などがある。Fe付着工程においては、Feイオンを含有する液体中のFeイオンの量を調整することにより、CoとFeの配合割合、微細金属粒子の平均粒径、排ガス浄化触媒の比表面積などを調整することができる。また、上記加熱工程における加熱温度、加熱時間などを調整することによっても、微細金属粒子の平均粒径を調整することができる。加熱工程における加熱は、例えば300℃以上で行うことができる。
【実施例】
【0020】
(実施例1)
次に、排ガス浄化触媒の実施例について説明する。
図1に示すごとく、本例の実施例にかかる排ガス浄化触媒1は、表面に多数の開気孔21を有する多孔質金属粒子2と、この多孔質金属粒子2に担持されていると共に多孔質金属粒子2よりも粒径の小さな微細金属粒子3とを有する。微細金属粒子3は、多孔質金属粒子2の表面に担持されており、多孔質金属粒子2の開気孔21内にも担持されている。担持多孔質金属粒子2はCoを主成分とし、微細金属粒子3はFeを主成分とする。
本例の排ガス浄化触媒1においては、図2に示すごとく、多孔質金属粒子2と微細金属粒子3との少なくとも境界部にはCoFe合金を主成分とする合金領域15が形成されている。
【0021】
本例においては、CoとFeの配合割合が異なる8種類の排ガス浄化触媒(試料1〜8)を作製し、その特性を評価する。
具体的には、まず、金属Co(純度99.9質量%)2.01gと、金属Al(純度99.9質量%)2.99gとを秤量し、これらをアーク溶解炉装置((株)テクノサーチ製のTMA 1−6V)の溶解用チャンバー内に導入した。そして、溶解用チャンバー内のAr圧:4.0×10-3Pa、アーク溶解電流:150Aという条件で金属Co及び金属Alを溶解させた後、自然放冷により固化させ、CoとAlとの合金(金属間化合物)からなるインゴットを得た。
【0022】
次いで、インゴットを粉砕し、金属間化合物(Co4Al3)からなる平均粒径30μmの合金粉末を得た。ここで、得られた合金粉末をX線回折装置(XRD)により分析し、合金粉末は、CoとAlとが原子レベルで混合したCoでもAlでもない合金状態になっていることを確認した。
【0023】
次に、合金粉末5gを濃度20wt%の水酸化ナトリウム水溶液300gに投入し、温度50℃で12時間撹拌した。これにより、合金粉末からAlが溶出し、金属Coを主成分とする多孔質金属粒子が得られる。そして、水溶液中から多孔質金属粒子を取り出し、水洗し、室温(25℃)で24時間乾燥させた。
【0024】
次に、多孔質金属粒子をFe(NO3)2水溶液に浸漬した後、温度150℃で24時間乾燥させた。次いで、乾燥後の多孔質金属粒子を水素雰囲気中で温度500℃で4時間加熱し、多孔質金属粒子の表面にFeを生成させた。
このようにして、図1に示すごとく、表面に複数の開気孔21を有し、Coを主成分とする多孔質金属粒子2と、この多孔質金属粒子2に担持されていると共にFeを主成分とする微細金属粒子3とからなる排ガス浄化触媒1を得た。
【0025】
本例においては、多孔質金属粒子とFe(NO3)2の配合割合を調整し、CoとFeとの配合割合が異なる8種類の排ガス浄化触媒(試料1〜8)を得た。各試料におけるCoとFeのモル比を後述の表1に示す。
本例において作製した排ガス浄化触媒1(試料1〜8)においては、図2に示すごとく、多孔質金属粒子2と微細金属粒子3との境界にCoFe合金を主成分とする合金領域15が形成されている。合金領域の形成は、X線回折(XRD)により確認することができる。
【0026】
また、上述の配合割合を調整することにより、微細金属粒子の平均粒径を調整することができる。
各試料1〜8について、多孔質金属粒子及び微細金属粒子の平均粒径を測定した。その結果を後述の表1に示す。なお、多孔質金属粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により、各粒子150個の粒径を測定し、その平均を算出することにより得た。また、微細金属粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により、各粒子150個の粒径を測定し、その平均を算出することにより得た。本例において、粒径は、各粒子の最大幅(外接長方形の長径)とした。
【0027】
次に、各試料について、比表面積を測定した。
具体的には、スペクトリス株式会社製の窒素ガス吸着測定装置「Autosorb−iQ」により測定した。測定にあたっては、サンプル管に試料を入れ、窒素ガス中で150℃で1時間の前処理を行った後、窒素ガスを充填し、圧力を変化させ試料の窒素吸着量を測定して比表面積を算出した。その結果を後述の表1に示す。また、各試料の排ガス浄化触媒におけるCoとFeとの配合割合(Co:Feモル比)と、比表面積との関係を図5に示す。
【0028】
次に、各試料の排ガス浄化触媒を多孔質のハニカム構造体に担持して触媒担持体を作製し、排ガス浄化性能の評価を行った。
具体的には、まず、図3及び図4に示すごとく、ハニカム構造体5として、円筒形状の外周壁50と、この外周壁50の内側において、四角形格子状に配された隔壁51と、隔壁51に囲まれて形成された、ハニカム構造体5の軸方向に伸びる多数のセル52とを有する多孔質体を準備した。ハニカム構造体5は、直径φ:30mm×長さL:50mmの円柱形状である。隔壁51は、多数の細孔(図示略)を有する多孔質体である。円柱形状のハニカム構造体5の軸方向に伸びるセル52は、塞がれておらず、軸方向の両端面58、59に開口している。
【0029】
次いで、各試料の排ガス浄化触媒(試料1〜試料8)をそれぞれ水に分散させてスラリーとした。そして、各スラリー中にハニカム構造体をそれぞれ浸漬し、スラリー中の各排ガス浄化触媒(試料1〜試料8)をそれぞれハニカム構造体に均一にコートした。
次に、排ガス浄化触媒をコートした各ハニカム構造体を温度500℃で2時間焼成することにより、排ガス浄化触媒をハニカム構造体に焼き付けた。このようにして、排ガス浄化触媒を、ハニカム構造体5の多孔質の隔壁51等に担持させて触媒担持体4を得た(図4及び図5参照)。図4及び図5においては、図示を省略するが、排ガス浄化触媒は、隔壁51の表面だけでなく、細孔内にまで担持されている。
【0030】
次に、触媒担持体4に、排気ガスのモデルガスを流速35000kL/秒で流通させた。モデルガスの成分は、THC(炭化水素ガスの総称):1300ppm、CO:5500ppm、NO:2500ppm、CO2、O2:0.5vol%、H2O、N2、H2:残部である。そして、触媒担持体4に流入する排ガスの温度を室温から一定の割合で上昇させ、触媒担持体4を通過した排ガス中に含まれるTHCの濃度をモニタリングした。そして、触媒担持体4への流入時における排ガス中に含まれるTHCの濃度に比べて、触媒担持体4を通過した排ガス中に含まれるTHCの濃度が50%になったときの温度を測定し、これをTHC浄化温度とした。その結果を後述の表1に示す。また、各試料の排ガス浄化触媒におけるCoとFeとの配合割合(Co:Feモル比)と、をTHC浄化温度との関係を図6に示す。
【0031】
また、本例においては、試料1〜8の排ガス浄化触媒の比較用として、CoFe合金からなる多孔質合金粒子(試料9)を作製した。
図7に示すごとく、試料9の多孔質合金粒子9は、CoFe合金を主成分とし、表面に多数の開気孔91が形成されている。
【0032】
試料9の多孔質合金粒子の作製にあたっては、具体的には、まず、Co、Fe、及びAlを質量比で50:50:100(Co:Fe:Al)となる配合割合でアーク溶解炉に投入し、溶解後凝固させた。次いで、濃度20wt%の水酸化ナトリウム水溶液中で凝固物中のAlを溶解除去させ、多孔質化させた。次に、Alが除去されてCo及びFeを含む多孔質化した凝固物と、水をボールミルに投入して粉砕することにより、水洗及び粉砕を行った。
次いで、水洗された粉砕粉を温度150℃で3時間乾燥した後、温度500℃で3時間加熱して焼成した。次に、焼成粉をガス管中に配置し、水素2vol%と窒素98vol%とを含んだ還元ガスをガス管に流して、焼成粉を還元させた。これにより、Co−Fe合金からなる多孔質合金粒子(試料9)を得た。
この試料9についても、CoとFeとの配合割合(モル比)、平均粒径(μm)、比表面積、及びTHC浄化温度を試料1〜8と同様にして測定し、その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1及び図6より知られるごとく、Coを主成分とする多孔質金属粒子と、この多孔質金属粒子に担持されたFeを主成分とする微細金属粒子とを有し、CoとFeの配合割合がモル比でCo:Fe=5:1〜1:5である試料2〜試料7の排ガス浄化触媒は、CoFe合金からなる試料9の多孔質合金粒子に比べて、十分に低温でTHCを浄化できることがわかる。
また、図7より知られるごとく、排ガス浄化触媒におけるCoとFeの配合割合を調整することにより、比表面積を調整できることがわかる。
【符号の説明】
【0035】
1 排ガス浄化触媒
2 多孔質金属粒子
21 開気孔
3 微細金属粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7