【実施例】
【0020】
(実施例1)
次に、排ガス浄化触媒の実施例について説明する。
図1に示すごとく、本例の実施例にかかる排ガス浄化触媒1は、表面に多数の開気孔21を有する多孔質金属粒子2と、この多孔質金属粒子2に担持されていると共に多孔質金属粒子2よりも粒径の小さな微細金属粒子3とを有する。微細金属粒子3は、多孔質金属粒子2の表面に担持されており、多孔質金属粒子2の開気孔21内にも担持されている。担持多孔質金属粒子2はCoを主成分とし、微細金属粒子3はFeを主成分とする。
本例の排ガス浄化触媒1においては、
図2に示すごとく、多孔質金属粒子2と微細金属粒子3との少なくとも境界部にはCoFe合金を主成分とする合金領域15が形成されている。
【0021】
本例においては、CoとFeの配合割合が異なる8種類の排ガス浄化触媒(試料1〜8)を作製し、その特性を評価する。
具体的には、まず、金属Co(純度99.9質量%)2.01gと、金属Al(純度99.9質量%)2.99gとを秤量し、これらをアーク溶解炉装置((株)テクノサーチ製のTMA 1−6V)の溶解用チャンバー内に導入した。そして、溶解用チャンバー内のAr圧:4.0×10
-3Pa、アーク溶解電流:150Aという条件で金属Co及び金属Alを溶解させた後、自然放冷により固化させ、CoとAlとの合金(金属間化合物)からなるインゴットを得た。
【0022】
次いで、インゴットを粉砕し、金属間化合物(Co
4Al
3)からなる平均粒径30μmの合金粉末を得た。ここで、得られた合金粉末をX線回折装置(XRD)により分析し、合金粉末は、CoとAlとが原子レベルで混合したCoでもAlでもない合金状態になっていることを確認した。
【0023】
次に、合金粉末5gを濃度20wt%の水酸化ナトリウム水溶液300gに投入し、温度50℃で12時間撹拌した。これにより、合金粉末からAlが溶出し、金属Coを主成分とする多孔質金属粒子が得られる。そして、水溶液中から多孔質金属粒子を取り出し、水洗し、室温(25℃)で24時間乾燥させた。
【0024】
次に、多孔質金属粒子をFe(NO
3)
2水溶液に浸漬した後、温度150℃で24時間乾燥させた。次いで、乾燥後の多孔質金属粒子を水素雰囲気中で温度500℃で4時間加熱し、多孔質金属粒子の表面にFeを生成させた。
このようにして、
図1に示すごとく、表面に複数の開気孔21を有し、Coを主成分とする多孔質金属粒子2と、この多孔質金属粒子2に担持されていると共にFeを主成分とする微細金属粒子3とからなる排ガス浄化触媒1を得た。
【0025】
本例においては、多孔質金属粒子とFe(NO
3)
2の配合割合を調整し、CoとFeとの配合割合が異なる8種類の排ガス浄化触媒(試料1〜8)を得た。各試料におけるCoとFeのモル比を後述の表1に示す。
本例において作製した排ガス浄化触媒1(試料1〜8)においては、
図2に示すごとく、多孔質金属粒子2と微細金属粒子3との境界にCoFe合金を主成分とする合金領域15が形成されている。合金領域の形成は、X線回折(XRD)により確認することができる。
【0026】
また、上述の配合割合を調整することにより、微細金属粒子の平均粒径を調整することができる。
各試料1〜8について、多孔質金属粒子及び微細金属粒子の平均粒径を測定した。その結果を後述の表1に示す。なお、多孔質金属粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により、各粒子150個の粒径を測定し、その平均を算出することにより得た。また、微細金属粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)により、各粒子150個の粒径を測定し、その平均を算出することにより得た。本例において、粒径は、各粒子の最大幅(外接長方形の長径)とした。
【0027】
次に、各試料について、比表面積を測定した。
具体的には、スペクトリス株式会社製の窒素ガス吸着測定装置「Autosorb−iQ」により測定した。測定にあたっては、サンプル管に試料を入れ、窒素ガス中で150℃で1時間の前処理を行った後、窒素ガスを充填し、圧力を変化させ試料の窒素吸着量を測定して比表面積を算出した。その結果を後述の表1に示す。また、各試料の排ガス浄化触媒におけるCoとFeとの配合割合(Co:Feモル比)と、比表面積との関係を
図5に示す。
【0028】
次に、各試料の排ガス浄化触媒を多孔質のハニカム構造体に担持して触媒担持体を作製し、排ガス浄化性能の評価を行った。
具体的には、まず、
図3及び
図4に示すごとく、ハニカム構造体5として、円筒形状の外周壁50と、この外周壁50の内側において、四角形格子状に配された隔壁51と、隔壁51に囲まれて形成された、ハニカム構造体5の軸方向に伸びる多数のセル52とを有する多孔質体を準備した。ハニカム構造体5は、直径φ:30mm×長さL:50mmの円柱形状である。隔壁51は、多数の細孔(図示略)を有する多孔質体である。円柱形状のハニカム構造体5の軸方向に伸びるセル52は、塞がれておらず、軸方向の両端面58、59に開口している。
【0029】
次いで、各試料の排ガス浄化触媒(試料1〜試料8)をそれぞれ水に分散させてスラリーとした。そして、各スラリー中にハニカム構造体をそれぞれ浸漬し、スラリー中の各排ガス浄化触媒(試料1〜試料8)をそれぞれハニカム構造体に均一にコートした。
次に、排ガス浄化触媒をコートした各ハニカム構造体を温度500℃で2時間焼成することにより、排ガス浄化触媒をハニカム構造体に焼き付けた。このようにして、排ガス浄化触媒を、ハニカム構造体5の多孔質の隔壁51等に担持させて触媒担持体4を得た(
図4及び
図5参照)。
図4及び
図5においては、図示を省略するが、排ガス浄化触媒は、隔壁51の表面だけでなく、細孔内にまで担持されている。
【0030】
次に、触媒担持体4に、排気ガスのモデルガスを流速35000kL/秒で流通させた。モデルガスの成分は、THC(炭化水素ガスの総称):1300ppm、CO:5500ppm、NO:2500ppm、CO
2、O
2:0.5vol%、H
2O、N
2、H
2:残部である。そして、触媒担持体4に流入する排ガスの温度を室温から一定の割合で上昇させ、触媒担持体4を通過した排ガス中に含まれるTHCの濃度をモニタリングした。そして、触媒担持体4への流入時における排ガス中に含まれるTHCの濃度に比べて、触媒担持体4を通過した排ガス中に含まれるTHCの濃度が50%になったときの温度を測定し、これをTHC浄化温度とした。その結果を後述の表1に示す。また、各試料の排ガス浄化触媒におけるCoとFeとの配合割合(Co:Feモル比)と、をTHC浄化温度との関係を
図6に示す。
【0031】
また、本例においては、試料1〜8の排ガス浄化触媒の比較用として、CoFe合金からなる多孔質合金粒子(試料9)を作製した。
図7に示すごとく、試料9の多孔質合金粒子9は、CoFe合金を主成分とし、表面に多数の開気孔91が形成されている。
【0032】
試料9の多孔質合金粒子の作製にあたっては、具体的には、まず、Co、Fe、及びAlを質量比で50:50:100(Co:Fe:Al)となる配合割合でアーク溶解炉に投入し、溶解後凝固させた。次いで、濃度20wt%の水酸化ナトリウム水溶液中で凝固物中のAlを溶解除去させ、多孔質化させた。次に、Alが除去されてCo及びFeを含む多孔質化した凝固物と、水をボールミルに投入して粉砕することにより、水洗及び粉砕を行った。
次いで、水洗された粉砕粉を温度150℃で3時間乾燥した後、温度500℃で3時間加熱して焼成した。次に、焼成粉をガス管中に配置し、水素2vol%と窒素98vol%とを含んだ還元ガスをガス管に流して、焼成粉を還元させた。これにより、Co−Fe合金からなる多孔質合金粒子(試料9)を得た。
この試料9についても、CoとFeとの配合割合(モル比)、平均粒径(μm)、比表面積、及びTHC浄化温度を試料1〜8と同様にして測定し、その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1及び
図6より知られるごとく、Coを主成分とする多孔質金属粒子と、この多孔質金属粒子に担持されたFeを主成分とする微細金属粒子とを有し、CoとFeの配合割合がモル比でCo:Fe=5:1〜1:5である試料2〜試料7の排ガス浄化触媒は、CoFe合金からなる試料9の多孔質合金粒子に比べて、十分に低温でTHCを浄化できることがわかる。
また、
図7より知られるごとく、排ガス浄化触媒におけるCoとFeの配合割合を調整することにより、比表面積を調整できることがわかる。