(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(本実施形態)を適宜図面を参照しながら説明するが、本実施形態は以下の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を損なわない範囲で任意に変更して実施可能である。
【0012】
[1.電気掃除機の全体構造]
図1に示すように、電気掃除機1は、掃除機本体2と、ホース部3と、手元操作スイッチSW等が設けられた操作管4と、伸縮自在に設けられた延長管5と、吸込具として第2の吸込具6および第1の吸込具7とを備えて構成されている。このうち、本実施形態では、延長管5が外管10と内管20とから構成され、外管10をなす外管本体11(
図3(b)参照)と、内管20をなす内管本体21(
図3(b)参照)とが、炭素繊維を含有する(含む)熱可塑性樹脂(例えば、汎用樹脂であるポリプロピレン、ABS樹脂)で成形されている。
なお、以下の説明で各部の方向を言うときには、第1の吸込具7から掃除機本体2への図示しない通風路に沿って、掃除機本体2に近い側を一端(一端側)とし、これとは反対となる側を他端(他端側)として説明する。
【0013】
掃除機本体2の外殻は、上ケースと下ケースとによって覆われている。上ケースは上下方向の略中央より上側に位置し、下ケースは上下方向の略中央より下側に位置する。掃除機本体2の内部には、吸引力を発生させる電動送風機2bや、この電動送風機2bの吸引力で集塵した塵埃を収容する集塵部等が内蔵されており、操作管4の手元操作スイッチSWを操作すること等によって電動送風機2bの運転の強弱切り替えや、第1の吸込具7に設けられた図示しないパワーブラシの入り切り等が行えるようになっている。集塵部は、掃除機本体2の前側(接続口2aが形成される側)に位置する。上ケースの前側に、開閉可能な蓋が形成される。よって、蓋は集塵部の上部を開閉可能に塞ぐ。
【0014】
操作管4は、
図2に示すように、延長管5に接続される他端部4aからホース部3(
図1参照)に接続される一端4a1にかけては円筒状に形成され、さらに、円筒状の部分に対して延長管5に接続される他端部4aから分岐して延びたグリップGを有する。
他端部4aには、延長管5の外管10の一端部11bが直接挿入されて連結される連結口4gが開口形成されている。ここで、連結口4gに連結される、延長管5の外管10の一端部11bは、後記するように、炭素繊維を含む熱可塑性樹脂で外管本体11に一体的に形成されている。つまり、連結口4gには、外管本体11の導電性を有する部分が直接連結されることとなり、下部材4bは、一端部11bを介して外管本体11と導通する状態とされる。
【0015】
グリップGは、他端部4aと一体に設けられた下部材4bと、この下部材4bに上方から装着される上部材4cとからなる。下部材4bと上部材4cとの間には、空間部Sが形成されており、この空間部Sには、手元操作スイッチSWのための電装部品や、掃除機本体2から給電される給電端子4d,4dが配置される。この給電端子4d,4dには、延長管5の外管10の一端に設けられた導電部材としての通電端子17(
図3(a)参照)が接続される。なお、下部材4bと上部材4cとは、下部材4bの縁部4fに上部材4cに設けられたリブ4eを係合することにより組み付けられ、上下方向から図示しないねじを締め付けることによって固定される。
【0016】
下部材4bは、帯電防止剤を含む熱可塑性樹脂(例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン)で形成されている。つまり、操作管4のベース部分となる下部材4bは、帯電防止剤を含んで形成されているので、必要な帯電防止効果を備えたものとなっている。これにより、操作管4に帯電する静電気を好適に空気中(大気中)に放出することができる。
ここで、下部材4bの連結口4gには、前記したように、外管本体11の一端部11bが直接連結されるので、外管10(延長管5)に帯電した静電気を下部材4bを通じて好適に放電することができる。
【0017】
ここで、帯電防止剤の例としては、発生した静電気を散逸することが可能な静電性樹脂として、下部材4bをABS樹脂で成形するときには市販のトヨラックTP10(商品名;東レ製)を用いることが挙げられる。また、下部材4bをポリプロピレンで成形するときには、市販のペレスタット300(商品名;三洋化成工業製)をポリプロピレンに含有することが挙げられるが、これに限定されるものではない。ちなみに、トヨラックTP10を用いて形成した下部材4bでは、下部材4bの表面固有抵抗値が1×10
11Ωとなっており、また、ペレスタット300を含有して形成した下部材4bでは、下部材4bの表面固有抵抗値が1×10
12Ωとなり、一般的なABS樹脂の表面固有抵抗値(1×10
14Ω)に比べていずれも低いものとなった。これにより、下部材4b(操作管4)の静電気の電位を好適に下げることができる。
【0018】
上部材4cは、熱可塑性樹脂(例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン)で形成されている。
なお、上部材4cを前記した帯電防止剤を含む熱可塑性樹脂(例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン)で形成してもよいし、また、下部材4bの連結口4gに連結された外管本体11の一端部11bに電気的に接触するようにして、上部材4cのみを前記した帯電防止剤を含む熱可塑性樹脂(例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン)で形成してもよい。
【0019】
ホース部3の一端は、掃除機本体2の集塵部と連通するように掃除機本体2の接続口2aに接続されている。また、ホース部3の他端は、操作管4の一端に接続されている。
【0020】
延長管5は、前記したように、外管10と内管20とを備え、
図3(b)に示すように、外管10の他端部11cに内管20の一端部が挿入されて外管10と内管20との通風路T1,T2が連通するように連結されている。
延長管5は、
図3(a)(b)に示すように、伸縮自在であり、外管10と内管20との間は、弾性および導電性を有するシール部材15d,15e(
図4,
図5(a)参照)で気密状態にシールされている。なお、延長管5についての詳細は、後記する。
【0021】
第2の吸込具6は、
図1に示すように、延長管5の内管20の他端20aに着脱可能に接続された吸込具であり、その他端6aには第1の吸込具7が着脱可能に接続される。第2の吸込具6は、その他端6aから第1の吸込具7を取り外すことにより、単独で塵埃を吸い込む吸込具として機能させることができる。第2の吸込具6は、延長管5の外管10と操作管4の他端部4aとの間に着脱可能に接続されてもよい。ただし、第2の吸込具6は、必須の構成ではない。
【0022】
第1の吸込具7は、第2の吸込具6の他端6aに接続された吸込具であり、下面(清掃面に対峙する面)に図示しない吸込口が開口されている。なお、第1の吸込具7は、延長管5の内管20の他端20aや、操作管4の他端部4aに対して接続して使用することも可能である。
【0023】
第1の吸込具7は、第2の吸込具6の他端6aに接続された吸込具であり、下面(清掃面に対峙する面)には、
図13に示すように、開口部を有する吸込室40が形成されている。吸込室40には、パワーブラシを構成する回転清掃体30が組み込まれる。パワーブラシは、回転清掃体30と、この回転清掃体30を駆動する図示しない電動機とを含んで構成され、清掃面となる床面等の塵埃を回転清掃体30で掻き込むように作用する。
なお、本実施形態の電気掃除機1では、この第1の吸込具7の電動機に給電する電力を、掃除機本体2からホース部3、操作管4、延長管5、第2の吸込具6を通じて供給するように構成している。第1の吸込具7の構成の詳細や延長管5に設けられた給電手段等の構成の詳細については後記する。
【0024】
延長管5は、前記したように、外管10をなす外管本体11(
図3(b)参照)と、内管20をなす内管本体21(
図3(b)参照)とが、炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂で成形されている。つまり、延長管5の主たる構成部材である外管本体11と内管本体21とが、前記した操作管4(
図2参照)に接続される部分(一端部11b)を含めて全長に亘って、軽量で高強度の炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂で形成されている。
また、延長管5は、第1の吸込具7に給電を行うための給電手段(後記する外管10のフラットケーブルC(
図12(b)参照))、金属製の通電端子27(導電部材、
図6,7参照)等を内部に有している。
なお、延長管5と第1の吸込具7との間に第2の吸込具6が介在されている場合には、掃除機本体2から供給される電力は、延長管5から第2の吸込具6に備わる図示しない導電部材を通じて第1の吸込具7に供給される。延長管5と第1の吸込具7とが直接的に電気的に接続可能な場合は、第2の吸込具6の導電部材は不要である。
【0025】
外管10は、
図4に示すように、主として、円筒状の外管本体11と、外管本体11の胴部11aの上部11a2に装着される絶縁性の樹脂部材としての下カバー12と、下カバー12を覆うようにして胴部11aに装着されるカバー部材としての上カバー13と、を備えて構成されている。
外管本体11は、後記する射出成形またはブロー成形によって一体的に形成されており、内側には内管20(
図6参照)を摺動可能に収容しつつ内管20に連通する通風路T1が形成されている。
外管本体11は、胴部11aと、この胴部11aよりも小径とされた一端部11bと、胴部11aよりも大径とされた他端部11cとを有している。
【0026】
胴部11aは、一端部11bおよび他端部11cに比べて薄肉とされた薄肉部を有している。本実施形態では、胴部11aの側部11a1(長手方向中間部)が薄肉部とされており、外管本体11の軽量化が図られている。本実施形態においては、薄肉部における厚み(外径と内径との差)を1.2mm±0.2mmとしてあり、ポリプロピレン100%で成形された従来の延長管の厚み(約2mm)よりも薄くなっている。
なお、薄肉部は、胴部11aの側部11a1に形成することに限られず、例えば、胴部11aの他の部分を薄肉として形成してもよく、また、一端部11bや他端部11cを部分的に薄肉として形成してもよい。
【0027】
胴部11aの上部11a2には、下カバー12が載置される平らな面S1が形成されている。上部11a2には、この平らな面S1を両側から挟むようにして、リブ11dが突設されている。リブ11dには、上カバー13の下縁13dが係合可能であり、上カバー13を装着する際には、リブ11dの延設方向に所定の間隔を置いて突設された係止部11eを、上カバー13の切り込み部13eに係止して、上部11a2に上カバー13を位置決めする。
【0028】
外管本体11の一端部11bは、
図9(a)に示すように、略円筒状に形成されており、操作管4(
図1参照、以下同じ)の他端4aに設けられた連結口4g(
図2参照)に挿入されて操作管4と接続可能である。
一端部11bの上部外周面には、
図4に示すように、凹部11b1が形成されている。この凹部11b1には、操作管4に設けられた図示しない接続用フックが係合するようになっている。
また、一端部11bの上方には、
図3(a)(b)に示すように、通電端子17,17(ピン状のオス部材、図では一方のみ図示)が配置されている。この通電端子17,17は、操作管4の開口部に設けられた給電端子4d,4d(
図2参照)に接続される。これにより、操作管4から延長管5の外管10に電力が供給される。
【0029】
外管本体11の他端部11cには、内管20を摺動自在に支持する支持部材15が配設されている。支持部材15は、環状の枠部15aと、この枠部15aに保持される環状の係合部材15bと、枠部15aの一端側に配置されるシール支持部15cと、シール部材15d,15eと、を備えて構成されている。
環状の枠部15aは、
図5(a)に示すように、装着部151と、保持部152とを備えている。装着部151は、外管本体11の他端部11cの開口11c2の内面に対応する外形状を有しており、開口11c2の内面に固定されるようになっている。
装着部151の内面には、内管20の摺動を円滑に行うための案内リブ151aが形成されている。
また、装着部151の上端部には、内管20の後記するスライド部25およびスライドカバー28(
図6,
図10(a)(b)参照)が挿通される挿通部151bが形成されている。
【0030】
保持部152は、円環枠状を呈しており、装着部151の一端に一体的に形成されている。この保持部152には、係合部材15bが上下方向に移動可能に外嵌されて保持される。保持部152の下部には、係合部材15bに形成された係合突部153aが挿通される挿通孔152aが開口形成されている。保持部152の上端部には、内管20の後記するスライド部25(
図6、
図12(a)参照)が挿通される枠状部152bが形成されている。
【0031】
係合部材15bは、縦長円環状を呈しており、環状の枠部15aの保持部152の上下端との間に図示しない間隙を有して保持部152に外嵌されるようになっている。これにより、係合部材15bは、この間隙を利用して上下方向に移動可能となっている。係合部材15bの下部には、保持部152の挿通孔152aに挿通される係合突部153aが設けられている。この係合突部153aは、係合部材15bが保持部152に対して上方向へ付勢された状態で、前記挿通孔152aを通じて保持部152の内側に突出する大きさを有しており、このように突出することによって係合突部153aは保持部152の内側に位置する図示しない内管20の凹溝21d(
図3(c)参照、以下同じ)に係合可能となっている。
係合突部153aの内側には、
図10(b)に示すように、ばね支持部153cが形成されており、このばね支持部153cに、図示しない渦巻きばねが外管10(外管本体)の内面との間に縮設されるようになっている。
【0032】
また、係合部材15bの上端には、
図5(a)に示すように、係合部材15bを上方向に付勢する板状のバネ部153bが形成されている。したがって、係合部材15bは、通常、これらの渦巻きばねおよびバネ部153bによって、上方向に付勢されており、係合突部153aが前記挿通孔152aを通じて保持部152の内側に突出する状態に保持されるようになっている。
【0033】
このような係合部材15bの上方には、
図4、
図10(b)に示すように、上カバー13の他端部13cとの間にスライド部材14が配設されるようになっている。スライド部材14は、上カバー13の開口13fを通じて人の操作により外管10の軸方向に沿って移動可能であり、スライド部材14が他端側に向けてスライド操作されることによって、係合部材15bの上方に端部14cが進入し、前記渦巻きばねおよびバネ部153bによる付勢力に抗して係合部材15bを下方向に押し下げるようになっている。つまり、スライド部材14を他端側にスライド操作することによって、内管20の凹溝21dに係合していた係合突部153aが凹溝21dから脱し、凹溝21dに対する係合突部153aの係合を解除することができる。これにより、外管10に対する内管20の固定が解除され、外管10に対して内管20がスライド移動可能となる。
【0034】
シール支持部15cは、円環状の部材であり、後記する静電気の効果的な除電を行うために、導電性を有する材料、例えば、金属や炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂で成形されて、外管本体11の他端部11cにおいて内面に接触して固定されている。シール支持部15cの一端には、シール部材15dが装着される凹部154が形成され、他端には、シール部材15eが装着される凹部155が形成されている。
【0035】
シール部材15d,15eは、弾性、および後記する静電気の効果的な除電を行うために導電性を有する材料、例えば、弾性を有する材料に金属繊維や導電性粒子等を含ませた材料からなる。シール部材15d,15eの内側には、内管20の胴部21a(
図6参照)が挿通される。これにより、外管10と内管20との通風路T1,T2間がシール部材15d,15eによってシールされるようになっている。
ここで、シール支持部15cおよびシール部材15d,15eは、いずれも導電性を有しているので、これらのシール支持部15cおよびシール部材15d,15eを介して外管10の外管本体11と内管20の内管本体21とが電気的に導通する状態に接続されている。
【0036】
図4に示すように、下カバー12は、絶縁性を有する材料、例えば、ポリプロピレン等の樹脂により形成された細長の上面凹状の部材であり、胴部11aの上部11a2のリブ11dの内側に嵌り込むようにして平らな面S1に載置されて胴部11aに被着される。つまり、下カバー12は、延長管5の他端部における外周面の全周に満たない範囲である胴部11aの上部11a2に被着されている。
下カバー12の凹部内における長手方向略中央部には、給電手段を構成するフラットケーブルCの他端部C1が取り付けられている。
フラットケーブルCは、可撓性を有しており、その一端部C2は、凹部に沿って一端側へ延ばされた後、他端側へU字状に折り返されるようにして配置されている。
【0037】
このような下カバー12と上カバー13との間には(下カバー12の上には)、
図11(b)、
図12(a)〜(c)に示すように、下カバー12の長手方向に沿って、内管20に設けられたスライド部25が移動可能に配置される。スライド部25の一端部には、
図12(b)(c)に示すように、フラットケーブルCの折り返された一端部C2が導電線W2を介して電気的に接続されている。これにより、延長管5の伸縮時には、
図12(c)(d)に示すように、外管10に対する内管20の摺動移動にフラットケーブルCが変形追従するようになっている。
【0038】
下カバー12の一端12bには、端子台16が設けられており、この端子台16には、金属製の通電端子17が取り付けられるようになっている。通電端子17は、
図4中一点鎖線で模式的に示すように、導電線W1を介してフラットケーブルCの他端部C1に電気的に接続されている。
すなわち、通電端子17は、絶縁性の下カバー12を介して外管本体11に支持され、外管本体11と電気的に導通することのない状態に配置されている。
【0039】
上カバー13は、絶縁性を有する材料、例えば、ポリプロピレン等により形成されている。上カバー13は、外管本体11の上部11a2に設けられたリブ11dに、下縁13dを嵌合させることで、外管本体11の上部11a2に一体的に装着され、下カバー12との間に絶縁された空間を形成している。この絶縁された空間には、給電手段を構成しているフラットケーブルCと、下カバー12上に移動可能に配置されたスライド部25とが収容されるようになっている。
本実施形態では、超音波溶着による固着手法によって上カバー13が外管本体11に固着されている。なお、上カバー13の固着は、その他の溶着や接着材等を用いて行ってもよいし、ねじ等の締結部材を用いて行ってもよい。
なお、外管本体11に対する下カバー12の固定は、外管本体11に上カバー13を固着することによる上カバー13の押え付けによって行ってもよいし、下カバー12を外管本体11に直接固定するようにしてもよい。下カバー12の固定は、超音波溶着によって行ってもよいし、また、その他の溶着や接着材等を用いて、あるいは、ねじ等の締結部材を用いて行ってもよい。
【0040】
内管20は、
図6に示すように、主として、円筒状の内管本体21と、絶縁性の樹脂部材としてのベース部材22と、カバー部材23(延長管カバー)と、を備えて構成されている。
内管本体21は、射出成形またはブロー成形によって一体的に形成されており、内側には外管10の通風路T1(
図4参照)に連通する通風路T2が形成されている。
内管本体21は、胴部21aと、この胴部21aよりも大径とされた他端部21cとを有している。
胴部21aの上面には、ベース部材22に設けられたスライド部25を支持するための支柱21a1が設けられている。胴部21aの一端部21a2には、円筒状の摺動部材26が装着される。この摺動部材26は、胴部21aの一端部21a2に装着されることで、外管10と内管20との間の円滑な摺動に寄与する。
他端部21cには、第2の吸込具6や第1の吸込具7が取り付け可能であり、他端部21cの上部21c1には、ベース部材22が載置されて取り付けられるようになっている。
【0041】
ベース部材22は、
図6に示すように、内管本体21の他端部21cの上部21c1に被着される。つまり、ベース部材22は、内管本体21の他端部21cにおいて、外周面の全周に満たない範囲である他端部21cの上部21c1に被着されている。ベース部材22は、帯電防止剤を含む熱可塑性樹脂(例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン)で形成されている。つまり、内管本体21に被着されるベース部材22は、帯電防止剤を含んで形成されているので、必要な帯電防止効果を備えたものとなっている。これにより、内管本体21に帯電する静電気を、ベース部材22に装着される金属製の通電端子27を介して好適に給電手段(導電線W2やフラットケーブルC)に放電(帯電を防止)することができる。
【0042】
ここで、帯電防止剤の例としては、発生した静電気を散逸することが可能な静電性樹脂として前記と同様に、ベース部材22をABS樹脂で成形するときにはトヨラックTP10(商品名;東レ製)を用いることが挙げられる。また、ベース部材22をポリプロピレンで成形するときには、ペレスタット300(商品名;三洋化成工業製)をポリプロピレンに含有することが挙げられる。なお、これらに限定されるものではない。ちなみに、トヨラックTP10を用いて形成したベース部材22では、ベース部材22の表面固有抵抗値が1×10
11Ωとなっており、また、ペレスタット300を含有して形成したベース部材22では、ベース部材22の表面固有抵抗値が1×10
12Ωとなり、例えば、ベース部材22に被せられるカバー部材23(スライドカバー28)に用いられる一般的なABS樹脂(汎用樹脂)の表面固有抵抗値(1×10
14Ω)に比べて、いずれも低いものとなった。これにより、内管20(延長管5全体)の静電気の電位を好適に下げることができる。
【0043】
ベース部材22の上面には、揺動支持部22aおよび通電端子支持部22bが形成されている。
また、ベース部材22の一端部には、内管本体21の胴部21aに沿うようにして一端部へ向けて延設された細長板状のスライド部25が一体的に設けられている。
【0044】
揺動支持部22aには、操作ボタン24が揺動可能に支持される。操作ボタン24は、第2の吸込具6や第1の吸込具7との取り付け取り外しを行うためのボタンであり、他端下部に係止用のフック部24aを有している。このフック部24aは、ベース部材22に設けられた図示しない孔部から他端部21cの上部21c1に形成された開口21c2を通じて他端部21cの内空に出没可能である。
このような操作ボタン24は、図示しないばね部材によりフック部24aが他端部21cの内空に突出する状態に付勢されている。これにより、他端部21cの内空から第2の吸込具6や第1の吸込具7の取付部を挿入すると、フック部24aが第2の吸込具6や第1の吸込具7の図示しない係止部に係止され、延長管5の内管20に第2の吸込具6や第1の吸込具7が固定されるようになっている。なお、取り外す際には、操作ボタン24のボタン部24bを押圧操作してフック部24aの係止を解除する。
【0045】
ベース部材22の通電端子支持部22bには、
図7にも示すように、金属製の通電端子27(導電部材)が取り付けられる。通電端子27は、操作管4に配置された給電端子4d(
図2参照)と同様の形状とされており、端子部27aと接続部27bとを有している。端子部27aは、平板状の部材を折曲形成してなり、対向する一対の挟持片27a1,27a1を有している。挟持片27a1,27a1には、吸込具7(
図1参照)に設けられた図示しないピン状のオス部材(通電端子)等が挿入されて電気的に接続される。一方の挟持片27a1の外側面27a2は、ベース部材22の上面の通電端子支持部22bの内面22cに対向しており、内面22cに対して面接触するようになっている。
これにより、内管本体21に帯電する静電気が、ベース部材22の通電端子支持部22bを通じて通電端子27に好適に流れることとなる。
なお、ベース部材22の表面固有抵抗値は前記したように例えば1×10
11Ωであるので、静電気の放電が可能である一方、内管本体21と通電端子27との絶縁性は依然として良好に確保されている。
【0046】
スライド部25の一端部には、
図12(b)(c)に示すように、フラットケーブルCの一端部C2が接続されており(
図12(b)(c)参照)、このフラットケーブルCの一端部C2と通電端子27との間が、導電線W2で電気的に接続されている。
【0047】
カバー部材23は、絶縁性を有する材料、例えば、ポリプロピレン等により形成されている。カバー部材23は、
図6に示すように、内管本体21の他端部21cの上部21c1に設けられた溝部21c3,21c3に、下縁23c,23cを係合させることで、他端部21cに一体的に装着され、ベース部材22との間に絶縁された空間を形成している。
本実施形態では、超音波溶着による固着手法によってカバー部材23が内管本体21の他端部21cに固着されている。なお、カバー部材23の固着は、その他の溶着や接着材等を用いて行ってもよいし、ねじ等の締結部材を用いて行ってもよい。
また、内管本体21に対するベース部材22の固定は、内管本体21にカバー部材23を固定することによるカバー部材23の押え付けによって行ってもよいし、ベース部材22を内管本体21に直接固定するようにしてもよい。ベース部材22の固定は、超音波溶着によって行ってもよいし、また、その他の溶着や接着材等を用いて、あるいは、ねじ等の締結部材を用いて行ってもよい。
【0048】
カバー部材23の他端には、ベース部材22のスライド部25に装着されるスライドカバー28が一体的に形成されている。スライドカバー28は、スライド部25との間に導電線W2を収容する空間を形成している。
また、カバー部材23の上面には、操作ボタン24のボタン部24bが挿通配置される開口部23aが形成されている。
このようなスライド部25およびスライドカバー28は、一体となって、
図11(a)に示すように、外管10の他端部11cに固定された支持部材15の挿通部151bを通じて、外管本体11とは絶縁された下カバー12と上カバー13との間に挿入される。
そして、前記したように、スライド部25上に配置された導電線W2を介して、フラットケーブルCの一端部C2(
図12(b)参照)と通電端子27(
図6参照)との間が電気的に接続される。これにより、外管10の一端部に設けられた通電端子17,17(
図4参照)と通電端子27(
図6参照)との間が外管本体11および内管本体21から絶縁された状態で電気的に接続されることとなる。
【0049】
図8(a)に示すように、内管本体21の他端部21cの一端部21c5には、枠カバー29に覆われるようにして、除電部材(放電部材)29a(
図8(b)(c)参照)が設けられている。除電部材29aとしては、
図8(b)に示すように、軸方向から見て略C形状を呈しており、例えば、コロナ放電をさせながら空気中に除電することができる除電フェルトや金属繊維等から形成されている。
【0050】
枠カバー29は、内管本体21の外周面およびスライドカバー28の外周面に対応した環状を呈しており、他端部21cの一端部21c5に取り付けられる。枠カバー29の円環部29bには、周方向に所定の間隔を置いて、3つのフック29dが設けられており、これらのフック29dは、一端部21c5に設けられた受部21c6に係合可能である。
また、円環部29bには、周方向に所定の間隔を置いて、複数の切欠き29eが形成されている。この切欠き29eを介して除電部材29aは、外部に通じており、切欠き29eを通じて放電を好適に行うことができる。
【0051】
第1の吸込具7は、
図13に示すように、回転清掃体30を覆うように下部分を形成する下カバー51、および下カバー51の上部に被着された上カバー52を備える吸口本体50と、吸口本体50の後方に取り付けられ、内部に空気の通路R1が形成された吸口継手55とを備える。
これらの下カバー51および吸口継手55の主たる部品は、軽量で硬質の材料、例えば、ABS樹脂等の合成樹脂材料で形成されている。また、上カバー52は、後記するように2色成形により形成されているが、部品を組み合わせることにより形成したものでもよい。
【0052】
第1の吸込具7(以下単に吸込具7と称する)は、左右(幅)方向の中央部の位置に吸口継手55が設けられている。この吸口継手55は、下カバー51と上カバー52との間に図示しない一端が挟み込まれて吸口本体50に回動可能に接続されている。吸口継手55は、掃除面に対して略水平な状態から略垂直な状態まで(上下方向に)回動可能な第1の接続管55aと、一端が第1の接続管55aの他端に回動可能に接続され、吸口本体50に対し左右方向に回動可能な第2の接続管55bとを有する。第2の接続管55bの他端には、延長管5や第2の吸込具6が接続される。この吸口継手55は、例えば延長管5を掃除面に対して略垂直とした状態において、その延長管5を吸口本体50の左右方向に向かって倒すことができる機能を有している。これにより、操作管4を左右方向のいずれかにねじることで、吸口本体50を左右方向の何れかに略90度回転させ、吸口本体50の左右方向を前後の移動方向にした掃除が可能である。したがって、壁際に沿って吸込具7を移動させて掃除したり、狭い隙間に吸込具7を挿入したりして掃除することが可能である。
【0053】
また、吸口本体50には、前部から左右側方にかけて、下カバー51と上カバー52との間にバンパー53が介設されている。バンパー53は、ゴムやエラストマー等の弾性材料から形成されており、使用時に吸口本体50内の気密を保持するとともに、電気掃除機1(
図1参照、以下同じ)の使用時に吸口本体50が家具等に衝突した際に、当該家具等への傷付きと吸口本体50への衝撃を吸収する緩衝材の役割を果たす。
【0054】
下カバー51の下面に開口する吸込室40は、断面が略湾曲凹状(
図14(b)参照)を呈している。吸込室40の後方には、吸込通路41が開口形成されている。この吸込通路41は、吸口継手55の前記した通路R1に連通している。
【0055】
吸込室40の内面には、リブ43が形成されている。リブ43は、左右にそれぞれ4個ずつ、両側で計8個形成されている。各リブ43は、回転清掃体30の回転方向(
図11中矢印X1参照)の下流側となる部位43aが回転方向上流側となる部位43bよりも吸込通路41側に向かって傾斜する状態に突出形成されている。
リブ43には、吸込室40に回転清掃体30が固定されると、回転清掃体30の刷毛33の先端部が接触するようになっている。
【0056】
吸込室40の両端部には、回転清掃体30の両端の軸を支持する軸受44、45が形成されており、この軸受44、45に軸受カバー44a(一方のみ図示)が装着されて、回転清掃体30の両端が支えられるようになっている。
【0057】
本実施形態では、上カバー52が2色成形により形成されている。上カバー52は、
図14(b)に示すように、上カバー52の後側部位である1次成形部52a(第1の部材)が前記と同様の帯電防止剤を含むABS樹脂で成形され、上カバー52の前側部位である2次成形部52b(第2の部材)が炭素繊維を含有する(含む)熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂)で、一体成形されている。よって、1次成形部52aと2次成形部52bとは、同じ樹脂製であるが、2次成形部122は炭素繊維を含んでいるため、2次成形部52bは、1次成形部52aに対して強度を有するとともに、導電性を備えている。
また、1次成形部52aは、帯電防止剤を含んでいるので、通常のABS樹脂で成形されたものよりも、表面固有抵抗値が低くなっている。したがって、2次成形部52bに帯電した静電気を1次成形部52aを通じて好適に放電(帯電を防止)することができる。
【0058】
なお、吸口継手55から1次成形部52aに至る部分が電気的に接続されるように、あるいは、吸口継手55から1次成形部52aに至る部分を帯電防止剤を含むABS樹脂で成形することによって、延長管5の内管20を通じて、延長管5に帯電した静電気を1次成形部52a通じて好適に放電することができる。
【0059】
本実施形態では、1次成形部52aと2次成形部52bの切替え部52cの近傍部分を、吸込具7の上下方向に、1次成形部52aと2次成形部52bとが重なるように構成し、これよりも前方側を2次成形部52bのみで構成している。つまり、切替え部52cでは、強度を有する2次成形部52bと1次成形部52aとが一体に形成されている。
成形時には、例えば、型に1次成形品用の材料を流し込んで1次成形部52aを形成し、その後、2次成形用の型に、1次成形部52aをセットして、切替え部52cにおいて1次成形部52aに重なるように2次成形品用の材料を流し込む。これにより、2次成形部52bが1次成形部52aと一体に成形される。
なお、2次成形部52bには、
図14(a)(b)に示すように、吸込室40の負圧の大きさによって開口する吸気口52eが設けられている。
【0060】
なお、1次成形部52aと2次成形部52bとを重ねて設ける範囲は、軽量化を図るために極力小さくすることが望ましいが、これらの密着性を考慮して、吸込具7の前後方向に、2次成形部52bの長さの3〜5割程度の重なり代を設けている。
ここで、
図14(b)に示すように、吸込具7の前後方向において、切替え部52cの前端は、回転清掃体30の軸心と回転清掃体30の後端との間にあり、切替え部52cの後端は、湾曲凹状の吸込室40の後端と上カバー52の後端との間にある。
【0061】
このような構成により、前方側を2次成形部52bのみで構成しているため、肉厚を薄くすることができ、吸込具7の軽量化が図られる。これにより、吸込具7の操作性が向上する。また、吸込具7に帯電する静電気を2次成形部52bを通じて1次成形部52aで好適に除電することができる。
【0062】
なお、回転清掃体30は、
図14(b)に示すように、略円筒状のコア31と、このコア31の外周部に形成された溝部32と、この溝部32に取り付けられた刷毛33と、刷毛33と刷毛33との間に配置された軟質材からなるブレード34とを含んで構成されている。
図13に示すように、矢印X1で示す方向に回転清掃体30が回転すると、刷毛33の先端部がリブ43に接触しているので(
図14(b)参照)、下カバー51の下面開口から吸い込まれた塵埃や糸屑等は、回転清掃体30の回転方向に沿って、矢印X1方向に搬送される。この状態において、吸い込まれた塵埃や糸屑等は、回転清掃体30に巻き付く前にリブ43の側面に当たり、リブ43の傾斜に対応して吸込通路41に向けて搬送される。そして、吸込通路41から吸口継手55の通路R1を通じて掃除機本体2側へ搬送され、掃除機本体2の図示しない集塵部へと搬送される。
【0063】
以下では、前記構成によって得られる効果を説明する。
(1)内管本体21に被着されるベース部材22は、帯電防止剤を含んで形成されており、その表面固有抵抗値が帯電防止剤を含まない汎用樹脂にて形成された部材(例えば、カバー部材23)の表面固有抵抗値よりも小さいので、内管本体21に帯電する静電気(外管本体11を含めて延長管5で生じる静電気)をベース部材22に装着される金属製の通電端子27を介して好適に給電手段(導電線W2やフラットケーブルC)に放電することができる。これにより、延長管5を持った際に、静電気による電気的ショックを受け難く、除電性に優れた電気掃除機1が得られる。
(2)延長管5の外管本体11および内管本体21が炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂で構成されているので、延長管5全体として軽量化を図りつつ剛性を確保することができる。なお、掃除機本体2の一部(例えば、下ケース)を炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂で成形して、掃除機本体2の軽量化を図りつつ剛性を確保してもよい。
(3)給電手段の通電端子27は、ベース部材22の通電端子支持部22bに直接接触して支持されているので、内管本体21に帯電する静電気が、ベース部材22の通電端子支持部22bを通じて通電端子27に好適に流れることとなる。これにより静電気を給電手段(導電線W2やフラットケーブルC)に好適に放電することができる。これにより、延長管5を持った際に、静電気による電気的ショックを受け難く、除電性に優れた電気掃除機1が得られる。
(4)通電端子27の端子部27aの一方の外側面27a2は、ベース部材22の上面の通電端子支持部22bの内面22cに対向しており、内面22cに対して面接触するようになっているので、ピン等を介して接触する場合に比べて接触面積が大きくなり、静電気を給電手段(導電線W2やフラットケーブルC)に好適に放電することができる。これにより、延長管5を持った際に、静電気による電気的ショックを受け難く、除電性に優れた電気掃除機1が得られる。
(5)操作管4の一部または全部が、帯電防止剤を含むABS樹脂(またはポリプロピレン)で形成されているので、操作管4に帯電する静電気を好適に空気中(大気中)に放出することができるとともに、延長管5に帯電した静電気を好適に空気中に放出することができる。したがって、延長管5に帯電した静電気を、給電手段と操作管4との両方で放電することができ、より迅速に延長管5に帯電した静電気を放電することができる。したがって、操作管4を持った際に、電気的ショックを受け難く、より一層除電性に優れた電気掃除機1が得られる。
(6)下部材4bの連結口4gには、外管本体11の一端部11bが直接連結されるので、外管10(延長管5)に帯電した静電気を下部材4bを通じて操作管4に好適に放電することができる。したがって、静電気の除電性に優れた電気掃除機1が得られる。
(7)内管本体21の他端部21cの一端部21c5には、枠カバー29に覆われるようにして、除電部材29aが設けられているので、この除電部材29aを通じて延長管5に帯電する静電気を好適に放電することができる。これにより、除電性に優れた電気掃除機1が得られる。
(8)吸込具7の1次成形部52aは、帯電防止剤を含んでいるので、通常のABS樹脂で成形されたものよりも、表面固有抵抗値が低くなり、これにより、2次成形部52bに帯電した静電気を1次成形部52aを通じて好適に放電することができる。これにより除電性に優れた電気掃除機1が得られる。
【0064】
なお、外管本体11と内管本体21とをアルミニウム合金等の金属材料(導電性を有する材料)で形成した場合にも、カバー部材22を介して給電手段により、また、操作管4等を通じて、外管本体11および内管本体21に発生した静電気を好適に放電することができる。
また、射出成形によって、外管本体11および内管本体21を成形することによって、これらの内面を平滑化することができるので、塵埃の衝突により発生する静電気を抑制することができる。
また、前記実施形態において延長管5は、外管10と内管20とを連結したものを例示したが、これに限られることはなく、一つの管体で構成されたものであってもよい。
【0065】
なお、本実施形態では、ベース部材22を帯電防止剤を含む熱可塑性樹脂(例えば、ABS樹脂、ポリプロピレン)で形成したが、これに限られることはなく、外管10の下カバー12を帯電防止剤を含む熱可塑性樹脂で形成してもよい。
この場合にも、下カバー12の表面固有抵抗値が帯電防止剤を含まない汎用樹脂にて形成された部材(例えば、上カバー13)の表面固有抵抗値よりも小さくなるので、外管本体11に帯電する静電気(延長管5で生じる静電気)を下カバー12に装着される金属製の通電端子17を介して好適に給電手段に放電することができる。これにより、除電性に優れた電気掃除機1が得られる。
【0066】
また、内管20のカバー23やスライドカバー28を、帯電防止剤を含む樹脂で構成してもよい。
この場合にも、カバー23やスライドカバー28の表面固有抵抗値は、例えば1×10
11Ωであるので、静電気の放電が可能である一方、通電端子27との絶縁性は依然として良好に確保されている。
【0067】
[2.延長管]
次に、電気掃除機1に備えられる延長管5を構成する、外管本体11および内管本体21を成形する材料について説明する。前記のように、延長管5を構成する外管本体11と内管本体21とが、炭素繊維を所定の割合で含有する熱可塑性樹脂(以下、適宜「炭素繊維含有樹脂」と言う。)からなる。以下、この炭素繊維含有樹脂について説明する。
【0068】
(炭素繊維)
炭素繊維含有樹脂に含まれる炭素繊維は、繊維状の例えばポリアクリロニトリル(PAN)樹脂、ピッチ等を高温で炭化することにより得られるものであり(短繊維)、通常はその90%以上が炭素によって構成される。このような炭素繊維の具体的な種類は特に限定されず、後記する炭素繊維の物性に応じて任意の条件で製造してもよく、また、市販品を用いてもよい。炭素繊維を製造する場合、その製造条件、原料等は特に制限されず、公知の任意の製造条件および原料を適用して製造すればよい。また、炭素繊維は必ずしも1種を単独で用いる必要は無く、2種以上を任意の比率および組み合わせで用いてもよい。
【0069】
炭素繊維含有樹脂に含まれる炭素繊維の長さは特に制限されないが、好ましくは1mm以下である。このような長さの炭素繊維を用いることで、外管本体11および内管本体21に含有させる炭素繊維をより容易に準備することができるため、延長管5の製造コストを削減することができる。また、このような長さの炭素繊維を外管本体11および内管本体21に含有させることにより、外管本体11および内管本体21を構成する炭素繊維含有樹脂中で炭素繊維同士が適度に絡み合い、その結果、良好な剛性を奏することができる。
【0070】
炭素繊維含有樹脂に含まれる炭素繊維の量は、炭素繊維含有樹脂中、5質量%以上、15質量%以下、好ましくは10質量%以下である。炭素繊維の含有量がこの範囲に含まれることにより、延長管5の製造コストを抑制しつつも、延長管5の軽量化および高剛性化をバランスよく向上させることができる。また、前記した上カバー13(
図4参照)およびカバー部材23(
図6参照)を、それぞれ外管本体11および内管本体21に超音波溶着させ易くなるという利点もある。この点に関して、
図15を参照しながら詳細に説明する。
【0071】
図15は本発明者らの検討によって得られたグラフであり、炭素繊維の含有量を変化させた場合の、板状の炭素繊維含有樹脂の厚み(延長管を成形した際の外径と内径との長さの差に対応する。)および当該厚みを板状の炭素繊維含有樹脂の曲げ強度の関係を概念的に示すグラフである。
図15中、各グラフ近傍の記載は炭素繊維(CF)の含有量(質量%)であり、「PP」は炭素繊維を含まない熱可塑性樹脂としてのポリプロピレン(CF含有量0質量%)を表している。
【0072】
また、縦軸の「86MPa」は、従来の電気掃除機に用いられている厚みが2mmのポリプロピレンの曲げ強度を表している。すなわち、従来の厚み2mmのポリプロピレンからなる延長管においては、当該延長管を板状に成形した際の板状ポリプロピレンの曲げ強度が86MPaである。したがって、板状樹脂の曲げ強度が86MPa以上であれば、当該板状樹脂を用いて従来と少なくとも同等以上の強度(剛性)を有する延長管を成形できる。
【0073】
さらに、横軸の「0.9mm」は、射出成形またはブロー成形が可能な最低限の厚みである。したがって、射出成形もしくはブロー成形を行って延長管を成形する場合には、延長管の厚みが最低でも0.9mmとなるように板状樹脂を用いて成形することが極めて重要となる。
【0074】
図15に示すように、同じ厚みを有する場合には、炭素繊維含有樹脂中の炭素繊維含有量が増加すればするほど、炭素繊維含有樹脂の強度(必要強度)が増加する。しかしながら、炭素繊維は通常は高価なものであり、炭素繊維の含有量を増加させた場合には炭素繊維含有樹脂中の製造コストが増加する(価格上昇)。さらに、延長管の厚みを増加させれば、その分延長管の質量も上昇する(質量上昇)。また、本発明者らの検討によると、ポリプロピレンの比重は0.92g/cm
3であり、炭素繊維を例えば10質量%の割合で含むポリプロピレンの比重は0.95g/cm
3である。したがって、炭素繊維を含まないポリプロピレンよりも炭素繊維を含むポリプロピレンの比重が大きいため、単に炭素繊維の含有量を増加させた場合は、同じ厚みでも重量が増加する。
【0075】
すなわち、延長管5(より具体的には外管本体11および内管本体21)の剛性を向上させるために単に炭素繊維の含有量を増加させても、延長管5を安価に製造することができず、また、重量も増加する。そして、重量が過度に重くなり過ぎた場合に延長管5の厚みを減少させると、後記する成形が困難になったり、延長管5に通常要求される剛性を確保することができなくなったりすることがある。また、厚みを同じにしつつ、延長管5を安価に製造するために炭素繊維の含有量を減少させても、延長管5に通常要求される強度を確保することができないことがある。さらに、このような剛性を確保するために延長管5の厚みを増加させれば、延長管5の重量が重くなる可能性がある(質量増加)。
【0076】
図15に示すグラフは、前記課題に鑑みて本発明者らが検討し、得たものである。すなわち、製造する際の製造コストの削減(安価化)と、通常要求される強度の確保と、軽量化と、を全て兼ね備える延長管5が、本発明者らの鋭意検討によって想到されたのである。つまり、例えばポリプロピレンと10質量%の割合で炭素繊維を含む炭素繊維含有樹脂においては、従来の延長管を構成する樹脂強度(板状の樹脂強度として86MPa)と同程度の強度を維持しようとする場合、厚みが約2mmを超えると従来の延長管を構成する樹脂よりも重くなる。
【0077】
そのため、炭素繊維の含有割合を5質量%以上15質量%以下とすれば、従来の延長管を構成する樹脂と同程度の強度としつつも厚みを従来(約2mm)よりも薄くすることができ、ひいては延長管を従来よりも軽量なものとすることができる。特に、延長管は筒状であるため、電気掃除機を構成する他の部材と比べて破損し易いことがあり、軽量(つまり厚みが薄い)でありつつも高剛性を有するということはとりわけ優れた効果である。このような炭素繊維含有量を有する炭素含有樹脂を延長管に適用することにより、外管本体11および内管本体21の長手方向中間部においてそれぞれ、外径と内径との差を1mm以上1.4mm以下、また、長手方向全域においては当該差が2mm以下という、従来よりも薄くて軽量、しかも高剛性な延長管を製造することができる。
【0078】
また、炭素繊維を5質量%以上15質量%以下の割合で含有する炭素繊維含有樹脂からなる延長管5に拠れば、前記した上カバー13およびカバー部材23を超音波溶着によって、より確実に固定することができる。より具体的には、炭素繊維の含有量が増加すればするほど、通常は超音波溶着することが困難になる傾向がある。しかしながら、炭素繊維を前記割合で含む延長管5に拠れば、前記の安価、軽量、高剛性を維持しつつも上カバー13およびカバー部材23の固定をより確実に行うことができるという効果も奏する。さらに、炭素繊維を前記の割合で熱可塑性樹脂に含有させることにより、後記する射出成形またはブロー成形によって延長管を特に成形し易いという利点もある。
【0079】
(熱可塑性樹脂)
延長管5は、前記の炭素繊維を含む熱可塑性樹脂により構成される。前記の炭素繊維の説明においては、熱可塑性樹脂としてポリプロピレンを具体例に挙げたが、延長管5に含まれる熱可塑性樹脂は、ポリプロピレンに何ら限定されるものではない。すなわち、延長管5を成形する熱可塑性樹脂としては、公知の任意の熱可塑性樹脂(例えば前記のようにABS(Acrylonitrile−Butadiene−Styrene)樹脂等)を用いることができ、その物性も、延長管としての機能を備えることができる限り任意である。ただし、延長管5を成形する熱可塑性樹脂としては、軽量および安価であり、製造および取扱いが容易であるという観点から、前記具体例で挙げたように、ポリプロピレンを用いることが好ましい。また、熱可塑性樹脂は必ずしも1種を単独で用いる必要は無く、2種以上を任意の比率および組み合わせで用いてもよい。
【0080】
また、延長管5には、前記の炭素繊維および熱可塑性樹脂以外の任意の成分が含まれていてもよい。
【0081】
次に、延長管5を構成する、炭素繊維含有樹脂からなる外管本体11および内管本体21の製造方法について説明する。本実施形態においては、外管本体11および内管本体21はそれぞれ、炭素繊維含有樹脂を射出成形もしくはブロー成形して成形される。以下、射出成形を行う場合と、ブロー成形を行う場合と、の2つに分けて、外管本体11および内管本体21の製造方法を説明する。ただし、外管本体11と内管本体21とは形状が若干異なるものの基本的には同様に製造することができるため、以下においては内管本体21の製造方法を例に説明する。また、図示の簡略化のために、
図16および
図17における内管本体21の形状を単純な筒形状のものとしている。
【0082】
(射出成形を行う場合)
炭素繊維含有樹脂を用いて射出成形を行う場合、その具体的な方法に特に制限は無い。以下、射出成形の方法を具体的に説明するが、射出成形の方法は以下の内容に限定されない。例えば、
図16に示すように、筒形状の外形(つまり円柱形状の外観)を成形可能な金型(上型100および下型101)と、円筒形状の内径を成形可能な中子102と、を組み合わせて一体のものとする。そして、これらを組み合わせた際に生じる隙間に、中子102と一体となって形成されているフランジ102aを貫通する貫通孔102bを通じて、加熱された溶融した炭素繊維含有樹脂を射出する(つまり押し出す)。その後冷却、ならびに金型100,101および中子102を取り外して必要に応じてバリを切断することで、内管本体21を成形することができる。
【0083】
溶融した炭素繊維含有樹脂を射出する際の金型100,101および中子102の温度は任意であるが、炭素繊維含有樹脂の融点以下の温度の場合には炭素繊維含有樹脂が固化するため、当該融点温度よりも高い温度に設定する。また、射出する際の射出荷重は、炭素繊維含有樹脂の温度や組成によっても異なるため一概には言えないが、例えば200MPa程度とすることができる。なお、射出成形を行う際の具体的な装置としては、例えば、特開2010−131966号公報や特開2006−110905号公報などに記載された射出成型機を用いることができる。
【0084】
内管本体21を射出成形によって成形することにより、内管本体21の外形状に加えて内形状も精度良く構成することができ、内管本体21の内壁を平滑なものとすることができる。したがって、電気掃除機使用時の内管本体21内部に空気が流通する際に、空気の内部抵抗を減らすことができ、電気掃除機に備えられている電動送風機の運転効率をより向上させることができる。また、内壁の凹凸による空気の乱流を抑制することができ、乱流に伴う騒音をより抑制することができる。さらには、延長管の全体を一度の工程で一体的に成形することができるため、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0085】
(ブロー成形を行う場合)
炭素繊維含有樹脂を用いてブロー成形を行う場合、その具体的な方法に特に制限は無い。以下、
図17を参照しながら、ブロー成形の方法を具体的に説明するが、ブロー成形の方法は以下の内容に限定されない。
【0086】
例えば、
図17に示す筒形状の外形を成形可能な金型200,201を組み合わせ、これらの金型200,201の内部に炭素繊維含有樹脂からなるパリソン202を押し出す。その後、パリソン202内部に高圧空気を噴き入れ、金型200,201内表面にパリソン202を押し付ける。そして、金型200,201を冷却することによりパリソン202を固化させ、金型200,201を取り外した後必要に応じてバリを切断することで、内管本体21を成形することできる。
【0087】
パリソン201を構成する炭素繊維含有樹脂の温度、金型200,201内表面にパリソン201を押し出す際の荷重、高圧空気の具体的な圧力等は特に制限されず、公知の任意のブロー成形法を適用すればよい。なお、ブロー成形を行う際の具体的な装置としては、例えば特開平11−277617号公報などに記載されたブロー成型機を用いることができる。
【0088】
内管本体21をブロー成形によって成形することにより、中子を用いずに内管本体21を成形することができるため、中子の引き抜き等の製造工程の簡素化を図ることができる。また、内管本体21の全体を一度の工程で一体的に成形することができるため、この観点からも製造工程の簡素化を図ることができる。
【0089】
前記のように、外管本体11および内管本体21は安価に製造でき、しかも軽量かつ高剛性である。つまり、電気掃除機に通常は付属品として付随する延長管5についても性能の向上を図ることができ、ひいては電気掃除機全体としての性能が高められた電気掃除機を提供することができる。
【0090】
また、前記のように、炭素繊維含有樹脂を用いても、射出成形もしくはブロー成形を容易に行うことができる。したがって、延長管5(より具体的には、外管本体11および内管本体21)の成形が容易であるという利点を有する。また、上カバー13およびカバー部材23を超音波溶着によって、炭素繊維を含む熱可塑性樹脂に対しても容易かつ強固に固定することができる。
【0091】
なお、電気掃除機1においては炭素繊維含有樹脂を外管本体11および内管本体21に適用しているが、このような炭素繊維含有樹脂は、外管本体11および内管本体21の他にも、例えば車輪等の電気掃除機1を構成する各部材に適用可能である。さらには、前記したように、炭素繊維含有樹脂を、掃除機本体2を構成する少なくとも一部(即ち、全部または一部)の部材に適用してもよい。