特許第5734237号(P5734237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734237
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】マグネットセパレータ
(51)【国際特許分類】
   B03C 1/12 20060101AFI20150528BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20150528BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20150528BHJP
   B24B 55/12 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B03C1/12
   B03C1/00 A
   B23Q11/00 U
   B24B55/12
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-99267(P2012-99267)
(22)【出願日】2012年4月24日
(65)【公開番号】特開2013-226492(P2013-226492A)
(43)【公開日】2013年11月7日
【審査請求日】2013年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】酒井 誠
(72)【発明者】
【氏名】勝木 広志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 幸也
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−000978(JP,A)
【文献】 特開2010−064164(JP,A)
【文献】 特開2000−254546(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/099188(WO,A1)
【文献】 特開2001−029838(JP,A)
【文献】 特開2009−183923(JP,A)
【文献】 米国特許第03094486(US,A)
【文献】 特開平08−155331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 1/12
B03C 1/00
B23Q 11/00
B24B 55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削液を貯留する濾過槽と、該濾過槽内で回転可能に水平に支持された円筒状外周面を有するドラムと、該ドラムの円筒状表面に磁力を発生させるようにそのドラム内に配置された永久磁石と、該ドラムの円筒状表面に吸着された磁性粉体を掻き取るように濾過槽に固定された掻取板と、濾過槽内を仕切る堰板の下流側に固定され、該ドラムの円筒状外周面のうちの下側の表面に所定の間隔を隔てて対向する部分円筒板と、前記濾過槽の内側において前記円筒状のドラムの端部に固定された被駆動回転体に動力伝達する駆動回転体を有するドラム駆動装置とを備え、前記研削液が前記堰板を乗り越えた後に前記ドラムの円筒状外周面のうちの下側の表面と前記部分円筒板との間に形成される吸着用流路を通過する過程で、前記研削液中の磁性粉体がドラムの円筒状外周面に吸着される形式のマグネッ
トセパレータであって、
前記部分円筒板のうち前記ドラムの円筒状外周面の端から前記濾過槽の側壁側に位置する非対向部分であって、その非対向部分の最低部位よりも下流側に貫通して形成されてその非対向部分へ流れ出た研削液を落下させる液落下用貫通穴を含むことを特徴とするマグネットセパレータ。
【請求項2】
前記被駆動回転体は、前記ドラムの端面にそのドラムの回転中心を中心とする円に沿って固設された環状のローラェーンから構成され、
前記駆動回転体は、そのローラチェーンと噛み合うスプロケットホイールから構成されることを特徴とする請求項1のマグネットセパレータ。
【請求項3】
前記吸着用流路を形成している、前記ドラムの円筒状外周面のうちの下側の表面と前記堰板の下流側に固定された部分円筒板との間の間隔は、その堰板に近づくほど増加するように形成され、
前記ドラムは、その間隔が増加する方向へ回転駆動されることを特徴とする請求項1または2のマグネットセパレータ。
【請求項4】
前記部分円筒板のうち前記ドラムの円筒状外周面に対向する対向部分と前記非対向部分との境界線から、該ドラムの円筒状外周面に向かって立設され、前記堰板を乗り越えた前記研削液が該部分円筒板の前記非対向部分側へ流出することを抑制する流路規制板を、含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1のマグネットセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削液中からそれに含まれる磁性粉体を除去するためのマグネットセパレータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば自動車部品、ベアリングなどの製造に際して用いられる研削装置では、研削液(クーラント)中からそれに含まれる磁性粉体を除去するために、研削液の循環経路中にマグネットセパレータが設けられている。たとえば、特許文献1に記載されたマグネットセパレータがそれである。
【0003】
この特許文献1および特許文献2に示されるマグネットセパレータは、研削液を貯留する濾過槽と、その濾過槽内の研削液に一部が浸漬する状態で回転可能に水平に支持された円筒状外周面を有するドラムと、そのドラムの円筒状外周面に磁力を発生させるようにドラム内に位置固定に配置された永久磁石と、そのドラムの円筒状外周面に吸着された磁性粉体を掻き取るように濾過槽に固定された掻取板とを備えている。そして、このように構成されたマグネットセパレータの濾過槽では、ドラムの円筒状外周面のうちの下側の表面に所定の間隔を隔てて対向する部分円筒板が堰板の下流側に固定され、研削液が濾過槽内を仕切る堰板を乗り越えた後にドラムの円筒状外周面のうちの下側の表面と部分円筒板との間に形成される吸着用流路を通過する過程で、研削液中の磁性粉体がドラムの外周面に吸着されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−029838号公報
【特許文献2】特開2007−000978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記マグネットセパレータにおいて、前記ドラムは、濾過槽に固定された非回転の軸により軸受を介して回転可能に支持されるとともに、そのドラムの端部に固定された被駆動回転体に動力伝達する駆動回転体を有するドラム駆動装置によって回転駆動されるようになっている。
【0006】
しかしながら、上記被駆動回転体およびそれに動力を伝達する駆動回転体は、濾過槽の側壁よりも内側に位置しており、被駆動回転体の外周部は濾過槽内を仕切る堰板の高さよりも低い位置を通過する機構となっていて被駆動回転体が研削液により濡れるため、研削液中に含まれる砥粒により被駆動回転体や駆動回転体の磨耗が促進されて、耐久性が得られないという問題があった。
【0007】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、ドラムを回転駆動するために動力を伝達する被駆動回転体や駆動回転体の磨耗が少なく、耐久性の高いマグネットセパレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a)研削液を貯留する濾過槽と、その濾過槽内に回転可能に水平に支持された円筒状外周面を有するドラムと、そのドラムの円筒状表面に磁力を発生させるようにそのドラム内に配置された永久磁石と、そのドラムの円筒状表面に吸着された磁性粉体を掻き取るように濾過槽に固定された掻取板と、濾過槽内を仕切る堰板の下流側に固定され、ドラムの円筒状外周面のうちの下側の表面に所定の間隔を隔てて対向する部分円筒板と、濾過槽の内側において前記円筒状のドラムの端部に固定された被駆動回転体に動力を伝達する駆動回転体を有するドラム駆動装置とを備え、研削液が堰板を乗り越えた後にドラムの円筒状外周面のうちの下側の表面と部分円筒板との間に形成される吸着用流路を通過する過程で、研削液中の磁性粉体がドラムの円筒状外周面に吸着される形式のマグネットセパレータであって、(b)前記部分円筒板のうち前記ドラムの円筒状外周面の端から前記濾過槽の側壁側に位置する非対向部分であって、その非対向部分の最低部位よりも下流側に貫通して形成されてその非対向部分へ流れ出た研削液を落下させる液落下用貫通穴を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマグネットセパレータによれば、ドラムの外周面のうちの下側の表面と部分円筒板との間に形成される吸着用流路を通過する研削液が、前記部分円筒板のうち前記ドラムの円筒状外周面の端から前記濾過槽の側壁側に位置する非対向部分へ流れ出ると、その非対向部分の最低部位よりも下流側に貫通して形成された液落下用貫通穴から落下させられるので、ドラムの端面に固定された被駆動回転体が研削液に接触することが抑制される。このため、被駆動回転体およびそれに噛み合う駆動回転体は、研削液に含まれる砥粒によって磨耗が促進されることが抑制されるので、マグネットセパレータの耐久性が高められる。
【0010】
ここで、好適には、前記被駆動回転体は、前記ドラムの端面にそのドラムの回転中心を中心とする円に沿って固設された環状のローラェーンから構成されるとともに、前記駆動回転体は、そのローラチェーンと噛み合うスプロケットホイールから構成される。このようにすれば、比較的クリアランスの大きい状態で噛み合うことができるので、砥粒の存在下でも磨耗の進行が抑制されるとともに、駆動回転体の磨耗が進行しても動力伝達可能な状態を長く維持できる利点がある。
【0011】
また、好適には、前記吸着用流路を形成している、前記ドラムの円筒状外周面のうちの下側の表面と前記堰板の下流側に固定された部分円筒板との間の間隔は、その堰板に近づくほど増加するように形成され、前記ドラムは、その間隔が増加する方向へ回転駆動される。このようにすれば、吸着用流路内を流通する過程で研削液に含まれる磁性粉体が順次少なくされるとき、その吸着用流路の下流側ほどその吸着用流路の間隔が狭くされ且つ磁性粉体が吸着されていない新たな表面で吸着されるので、研削液に含まれる磁性粉体の回収に関して高い回収率が得られる。
【0012】
また、好適には、前記部分円筒板のうち前記ドラムの円筒状外周面に対向する対向部分と前記非対向部分との境界線から、該ドラムの円筒状外周面に向かって立設され、前記堰板を乗り越えた前記研削液が該部分円筒板の前記非対向部分側へ流出することを抑制する流路規制板を、含む。このようにすれば、研削液の部分円筒板とドラムの円筒状外周面との間を流れる割合が高められるので、研削液に含まれる磁性粉体の除去率が好適に高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例のマグネットセパレータを示す斜視図である。
図2図1の実施例において、ドラムの一端部を回転駆動する駆動部を一部を切り欠いて説明する要部平面図である。
図3図1の実施例において、ドラムの他端面部を、濾過槽を切り欠いて示す要部側面図である。
図4図1の実施例の濾過槽の構成を説明するために、幅方向の中央で切断して示す濾過槽の縦断面である。
図5図1の実施例の濾過槽の要部構成を説明するために、幅方向においてドラムの円筒状外周面の端と側壁との間で切断して拡大示す濾過槽の要部縦断面である。
図6図1の実施例の濾過層の要部構成を説明するために、堰板の端部付近を説明する斜視図である。
図7図1の実施例のマグネットセパレータにおいて、3ケ月の運転後のスプロケットホイールの磨耗状態を説明する正面図である。
図8】切欠きが設けられていない以外は図1の実施例と同様のマグネットセパレータにおいて、2ケ月の運転後のスプロケットホイールの磨耗状態を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
マグネットセパレータ10は、図1乃至図5に示すように構成され、たとえば、自動車部品、ベアリングなどの製造に際して用いられる研削装置に設けられた研削液循環装置を循環する研削液(クーラント)K中からそれに含まれる磁性粉体を除去するために、その研削液循環装置内の循環経路内に配置して用いられる。マグネットセパレータ10は、図1および図4に詳しく示すように、濾過前の研削液Kを流入させるさせる流入口12および濾過後の研削液を流出させる流出口14を有し、上方へ開口する長手箱型の濾過槽16を備えている。この濾過槽16は、長方形の底壁16aと、底壁16aの長辺から立ち上がる一対の側壁16bおよび16cと、底壁16aの短辺から立ち上がる前壁16dおよび後壁16eとから構成され、側壁16bおよび16cには、流出口14を形成する接続管16fが、後壁16eには流入口12を形成する接続管16gがそれぞれ固設されている。
【0016】
濾過槽16では、濾過槽16内を、流入口12から流入する研削液Kを貯留する貯留室S1と流出口14に接続されて研削液Kを排出する排出空間S2とに仕切る堰板20が底壁16aおよび側壁16bおよび16cに固設されており、貯留室S1内の研削液Kが堰板20の幅方向中央部の上端を越えた分が、排出空間S2および流出口14へ排出されるようになっている。堰板20はその上端部が斜めに曲げられた斜板部20aを備えており、その斜板部20aの幅方向中央部には、研削液Kを排出空間S2側へ超えさせるための広幅のU字状あるいは長手矩形状の開口20bが形成されている。
【0017】
図1乃至図3に詳しく示すように、外周面に複数個の永久磁石24が一面に固定された円筒状の円筒軸部26と、その円筒軸部26の両端から突き出す一対の支持軸部28とを有する長手状の支持部材30が、それら一対の支持軸部28が一対の側壁16bおよび16cに形成された取付穴32を貫通した状態で一対の側壁16bおよび16cに水平に固定されている。そして、円筒状外周面34を有する円筒部材36と、その円筒部材36の端部に固定され、軸受38を介して支持軸部28により支持された環状部材40とを有するドラム42が、支持部材30の軸心Cと同心に回転可能に支持されている。上記円筒部材36は、ステンレスチール、銅合金などの非磁性体金属により構成され、永久磁石24による磁界が円筒部材36の円筒状外周面34に形成されて、磁性粉体がドラム42の外周面34に吸着されるようになっている。上記環状部材40は、それから軸心C方向へ突き出して支持軸部28の外周に位置する円筒部40aと、その円筒部40の外周面に沿ってボルト41により固定されて、回転軸心Cを中心とする円に沿って固設された環状に接続されて被駆動歯車として機能する環状ローラチェーン40bとを備えている。このローラチェンは、たとえばJIS0148に規定されるものと同様に、スプロケットホイール間に捲き掛けられる動力伝達部材として良く知られたものであり、回転軸心Cを中心とする円に沿って固設された環状のローラェーンから構成される
【0018】
側壁16bには、電動機44および減速機46から成る電動式のドラム駆動装置48が図示しないボルトなどにより固定されており、その駆動モータ48の出力軸50には、環状ローラチェーン40bと噛み合い、駆動歯車として機能するスプロケットホイール52が固定されている。スプロケットホイールは、たとえばJISB0109、JISB0141、0148に示される良く知られたものである。このドラム駆動装置46により、ドラム42が一転の回転数で軸心Cまわりに回転駆動される。また、一対の側壁16bおよび16cには、支持ロッド54により軸受56を介して回転可能に支持された絞りローラ58が、その外周面がドラム42の円筒状外周面34に押圧された状態で、軸心Cに平行に設けられている。この絞りローラ58の外周部は、たとえばゴム、スポンジなどの軟質弾性体から構成されており、ドラム42の円筒状外周面34に吸着された磁性粉体が、剥離される前に絞られるようになっている。支持ロッド54の両端部は、基端部が側壁16bおよび16cに固定された一対の案内ロッド60bおよび60cが摺動可能に貫通することでそれにより案内される可動ブロック62bおよび62cに支持されており、案内ロッド60bおよび60cの先端部に螺合されたナット64bおよび64cとの間に与圧状態で介挿されたスプリング66bおよび66cにより、付勢されている。なお、この絞りローラ58は、図1に示すように、カバー68で覆われている。
【0019】
また、一対の側壁16bおよび16cの前方側且つ上側の角は、斜めに切り落とされているとともに、前壁16dの上部は斜め方向に曲げられており、その斜め方向に曲げられた前壁16dの上部には、ドラム42の円筒状外周面34に上端縁が接触してその円筒状外周面34に吸着された磁性粉体を掻き取って図示しない容器内へ落下させる掻取板70が固設されている。
【0020】
図4は、マグネットセパレータ10の幅方向の中央で長手方向に沿って切断して示す濾過槽16の縦断面であり、図5は、マグネットセパレータ10の幅方向においてドラム42の円筒状外周面34の端と側壁16bとの間で長手方向に沿って切断して拡大して示す濾過槽16の要部縦断面である。図6は、堰板20の側壁16b側の端部付近を説明する斜視図である。
【0021】
図4図5図6に示すように、ドラム42の円筒状外周面34のうちの下側の表面に所定の間隔を隔てて内周面が対向する部分円筒板72が、堰板20の下流側において側壁16bおよび16c間に固設されている。この部分円筒板72の上流側の端縁は、広幅のU字状開口20bと面一となる高さ位置で堰板20の下流側の壁面に接している。一対の凹面板74bおよび74cは、ドラム42の円筒状外周面34から1mm乃至1.5mm程度の僅かな間隙を隔てて軸心Cと同心に側壁16bおよび16cに固定され、その両端部と同様の軸心C方向の寸法を有している。堰板20のU字状開口20bが形成されていない水平方向(長手方向)の両端部は、それら一対の凹面板74bおよび74cの外周面に接している。そして、上記部分円筒板72の軸心C方向の両端部であって少なくとも凹面板74bに対応する位置には、その部分円筒板72の最低位置から下流側すなわち前壁16d側に、液落下用貫通穴として機能する矩形の切欠き76が厚み方向に貫通して形成されている。なお、部分円筒板72の下部(最低位置下部)に位置する矩形の切欠き76の底縁と凹面板74bの下部(最低位置下部)との間を連結する縦方向の連結板78が設けられ、それらの間が塞がれている。
【0022】
上記凹面板74bの幅方向中央側の側縁75bと、部分円筒板72の内周面上の軸心方向Cにおけるその側縁75bと同じ曲線72bすなわちU字状開口20bの軸心方向Cにおける端と同じ曲線72bとの間に、研削液Kの流れが側壁16b側へ向かうのを防止する流路規制板80が固定されている。側壁16c側も同様である。すなわち、流路規制板80は、上記の曲線72bで示される、部分円筒板72上のドラム42の円筒状外周面34に対向する対向部分とドラム42の円筒状外周面34に対向しない非対向部分との境界線である曲線72b上にドラム42の円筒状外周面34に向かってそれと1mm乃至1.5mm程度の僅かな間隙を隔てる高さで立設されている。凹面板74bの濾過槽16の幅方向中央側の側縁部は、ドラム42の円筒状外周面34に僅かな間隙を隔てて対向しているため、堰板20を超えてそのU字状開口20bから流入した研削液Kは、大部分がドラム42の円筒状外周面34とそれに対向する部分円筒板72の内表面(対向部分)との間の吸着用流路Rを経て排出空間S2へ流入させられる。
【0023】
本実施例と同様に構成されて流路規制板80が配設された株式会社ノリタケカンパニーリミテド製のマグネットセパレータMSO−6型(60L)を用いて、水溶性研削液中の5μmおよび10μmの鉄粉除去を行なった本発明者等の実験によれば、流路規制板80が配設されていない場合に比較して、5μmの鉄粉においては、鉄粉除去率が4重量%向上し、10μmの鉄粉においては、鉄粉除去率が5重量%向上した。この鉄粉除去率は、マグネットセパレータの入口および出口における鉄粉のSS濃度をそれぞれ測定して算出したものである。
【0024】
堰板20を超えてそのU字状開口20bから流入した研削液Kの一部が、流路規制板80とドラム42の円筒状外周面34との間の僅かな間隙を通して、すなわち凹面板74bの濾過槽16の幅方向中央側の側縁部と僅かな間隙をへだててそれに対向するドラム42の円筒状外周面34との間を通して、側壁16b側へ漏れ出て部分円筒板72の側壁16b側の端部である部分円筒板72のうちドラム42の円筒状外周面34に対向しない非対向部分、すなわち凹面板74bの下流側に位置する部分により受けられるが、そこに形成された液落下用貫通穴として機能する矩形の切欠き76を通して排出空間S2へ落下させられるようになっている。
【0025】
上記部分円筒板72の側壁16b側の端部である部分円筒板72のうちドラム42の円筒状外周面34に対向しない非対向部分に切欠き76が形成されない場合は、その部分円筒板72の非対向部分に研削液Kが受けられてそこに溜まるので、環状ローラチェーン40bとその研削液Kの液面との間が接近して研削液により環状ローラチェーン40bが濡れるので、研削液K中の砥粒により磨耗を受けて耐久性が損なわれる。図8は、そのように構成されたマグネットセパレータ10が2ケ月稼働した場合のスプロケットホイール52を示している。これに対して、本実施例のように、上記部分円筒板72の側壁16b側の端部である部分円筒板72のうちドラム42の円筒状外周面34に対向しない非対向部分に切欠き76が形成された場合は、その部分円筒板72の非対向部分に研削液Kが受けられても切欠き76を通して落下させられるので、たとえば3ケ月稼働後のものでは、図7に示すように、スプロケットホイール52の磨耗が大幅に抑制される。
【0026】
また、ドラム42の円筒状外周面34とそれに対向する部分円筒板72の内表面(対向部分)との間の吸着用流路Rにおいて、その流通断面積は、堰板20に近づくほど増加するように構成されている。すなわち、吸着用流路Rを構成する、ドラム42の円筒状外周面34とそれに対向する部分円筒板72の内表面(対向部分)との間の軸心Cを通る径方向の厚み寸法Dが、堰板20に近づくほど増加するように構成されている。また、ドラム42は、その円筒状外周面34が研削液Kの流れと反対側へ移動するように、すなわち、図3において左まわりに回転駆動される。一般に、吸着用流路R内を流通する過程で研削液Kに含まれる磁性粉体が順次少なくされる傾向となり、その吸着用流路Rの終端側ほどその吸着用流路Rの厚み方向の間隔Dが狭くされ且つ磁性粉体が吸着されていない新たなドラム42の円筒状外周面34で吸着されるので、研削液Kに含まれる磁性粉体の回収率が高くされるようになっている。
【0027】
上述のように、本実施例のマグネットセパレータ10によれば、ドラム42の円筒状外周面34のうちの下側の表面と部分円筒板72との間に形成される吸着用流路Rを通過する研削液Kが、部分円筒板72のうちドラム42の円筒状外周面34の端から濾過槽16の側壁16b側に位置する非対向部分へ流れ出ると、その非対向部分の最低部位よりも下流側に形成された切欠き76から落下させられるので、ドラム42の端面に固定された環状ローラチェーン40bが研削液Kに接触することが抑制される。このため、環状ローラチェーン40bおよびそれに噛み合うスプロケットホイール52は、研削液Kに含まれる砥粒によって磨耗が促進されることが抑制されるので、マグネットセパレータ10の耐久性が高められる。
【0028】
また、本実施例のマグネットセパレータ10によれば、被駆動回転体が、ドラム42の端面にそのドラム42の回転軸心Cを中心とする円に沿って固設された環状ローラチェーン40bから構成されるとともに、駆動回転体が、その環状ローラチェーン40bと噛み合うスプロケットホイール52から構成される。このため、環状ローラチェーン40bとスプロケットホイール52とは比較的クリアランスの大きい状態で噛み合うことができるので、砥粒の存在下でも磨耗の進行が抑制されるとともに、スプロケットホイール52の磨耗が進行しても動力伝達可能な状態を長く維持できる利点がある。
【0029】
また、本実施例のマグネットセパレータ10によれば、吸着用流路Rを形成している、ドラム42の円筒状外周面34のうちの下側の表面と堰板20の下流側に固定された部分円筒板72との間の間隔Dは、その堰板20に近づくほど増加するように形成され、ドラム42は、その間隔Dが増加する方向へ回転駆動される。このため、吸着用流路R内を流通する過程で研削液Kに含まれる磁性粉体が順次少なくされるとき、その吸着用流路Rの下流側ほどその吸着用流路Rの間隔が狭くされ且つ磁性粉体が吸着されていない新たな表面で吸着されるので、研削液Kに含まれる磁性粉体の回収に関して高い回収率が得られる。
【0030】
また、本実施例のマグネットセパレータ10によれば、部分円筒板72のうちドラム42の円筒状外周面34に対向する対向部分とその円筒状外周面34に対向しない非対向部分との間の境界線である曲線72bから、ドラム42の円筒状外周面34に向かって立設されて、堰板20を乗り越えて吸着用流路R内を流れる研削液Kがその部分円筒板72の非対向部分側へ流出することを抑制する流路規制板80が、設けられている。このため、研削液Kの部分円筒板72とドラム42の円筒状外周面34との間を流れる割合が高められるので、研削液Kに含まれる磁性粉体の除去率が好適に高められる。
【0031】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0032】
たとえば、前述の実施例のマグネットセパレータ10においては、部分円筒板72の軸心C方向の両端部であって少なくとも凹面板74bに対応する位置には、その部分円筒板72の最低位置から下流側すなわち前壁16d側に、液落下用貫通穴として機能する矩形の切欠き76が厚み方向に貫通して形成されていたが、その切欠き76に替えて、貫通穴が形成されていてもよい。
【0033】
また、前述の実施例のマグネットセパレータ10において、被駆動回転体は、ドラム42の端面にそのドラム42の回転軸心Cを中心とする円に沿って固設された環状ローラチェーン40bから構成されるとともに、駆動回転体は、その環状ローラチェーン40bと噛み合うスプロケットホイール52から構成されていたが、被駆動回転体および駆動回転体は、平歯車、ベルトプーリなどの他の形式の動力伝達歯車或いはホイールであってもよい。
【0034】
また、前述の実施例のマグネットセパレータ10において、ドラム42は、永久磁石24が一面に固定された円筒状の円筒軸部26と、その円筒軸部26の両端から突き出す一対の支持軸部28とを有する非回転の支持部材30と別に、それら一対の支持軸部28により軸受38を介して回転可能に支持されていたが、永久磁石24と一体的に回転可能に設けられていてもよい。
【0035】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
10:マグネットセパレータ
16:濾過槽
16b:側壁
20:堰板
24:永久磁石
34:円筒状外周面
40b:環状ローラチェーン(被駆動回転体)
42:ドラム
48:ドラム駆動装置
52:スプロケットホイール(駆動回転体)
70:掻取板
72:部分円筒板
76:切欠き(液落下用貫通穴)
80:流路規制板
R:吸着用流路
K:研削液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8