特許第5734295号(P5734295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ クリーブランド クリニック ファウンデーションの特許一覧

特許5734295組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法
<>
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000011
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000012
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000013
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000014
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000015
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000016
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000017
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000018
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000019
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000020
  • 特許5734295-組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法 図000021
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734295
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   A61N1/36
【請求項の数】22
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-526974(P2012-526974)
(86)(22)【出願日】2010年8月26日
(65)【公表番号】特表2013-502999(P2013-502999A)
(43)【公表日】2013年1月31日
(86)【国際出願番号】US2010046772
(87)【国際公開番号】WO2011025865
(87)【国際公開日】20110303
【審査請求日】2013年6月27日
(31)【優先権主張番号】61/237,375
(32)【優先日】2009年8月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500064708
【氏名又は名称】ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ルハン、ジェイ.ルイス
(72)【発明者】
【氏名】チャタルベディ、アッシュ
(72)【発明者】
【氏名】マッキンタイア、キャメロン
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0083104(US,A1)
【文献】 特開平06−205843(JP,A)
【文献】 特表2007−505698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36 − A61N 1/378
A61N 1/04 − A61N 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって実行される、神経組織の活性の容積を決定するための方法であって、
刺激パラメータのための値を有する入力データを受取る工程と;
数に前記刺激パラメータのための値を有する入力ベクトルを、入力として適用する工程であって、前記関数は、
a)計算学習アルゴリズムから生成された関数であり、前記計算学習アルゴリズムは、刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値の領域を、前記刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値の前記領域によって生成される活性の容積に、マッピングし、
b)1つまたは複数のパラメータ方程式のパラメータの値を出力する関数であり、前記1つまたは複数のパラメータ方程式は3次元幾何形状で表現される、工程と
前記関数により出力された前記パラメータの値を用いて前記1つまたは複数のパラメータ方程式を解くことによって、前記活性の容積を算出する工程と;
算出された前記活性の容積を表示器スクリーン上に表示する工程と
を有する方法。
【請求項2】
前記電極構成パラメータは、
(i)前記電極の高さと直径との少なくとも1つと;
(ii)前記電極の1以上の電極コンタクトの分布と
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つまたは複数のパラメータ方程式の前記パラメータの値は、前記入力ベクトルの線形関数として与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記入力ベクトルはさらに、電極構成パラメータを含み、
前記入力データはさらに、前記電極構成パラメータのための値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
電極の電場モデルを神経組織モデルに結合し、複数の異なるセットの刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値に対する複数の活性の容積を得る、結合工程と;
1つの3次元幾何形状を前記複数の活性の容積に適合させる工程であって、同3次元幾何形状は前記1つまたは複数のパラメータ方程式により定義される、適合工程と;
前記計算学習アルゴリズムを使用し、前記関数を設計する工程であって、前記関数は、入力として、刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値を組み入れる、使用工程とを含む、方法。
【請求項6】
前記適合工程は最適化アルゴリズムを用いて実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記3次元幾何形状は楕円体である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記計算学習アルゴリズムは1つまたは複数の人工ニューラルネットワークを用いる、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記3次元幾何形状は楕円体形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値の前記領域によって生成される前記活性の容積は、前記1または複数のパラメータ方程式によって画定される3次元幾何形状として表される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記活性の容積は、神経組織中に挿入される電極の電場モデルを、神経組織モデルに結合することにより取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記計算学習アルゴリズムは、1または複数の人工ニューラルネットワークを生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
新しい学習データに基づき、前記1つまたは複数の人工ニューラルネットワークを、現在の学習させた状態から再学習させた状態へと再学習させ、同1つまたは複数の人工ニューラルネットワークの領域を拡大する工程を更に有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
算出された前記活性の容積と目標の活性の容積とを相関させ、所与の患者のための理論的に最適な刺激パラメータ設定の指示を提供する工程を更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記入力ベクトルは、パルス幅と、電極コンタクトインピーダンスと、カプセル化組織伝導率と、電圧と、電極コンタクト構成とのうちの1または複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
算出された前記活性の容積は、前記1つまたは複数のパラメータ方程式の解から直接取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記1つまたは複数のパラメータ方程式は次式であって、
【数1】
x,y,zは3次元系のそれぞれの軸方向の長さを表し、
a,bはそれぞれ赤道方向半径を表し、
cはz軸に沿った極方向半径を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記1つまたは複数のパラメータ方程式は次式であって、
【数2】
x,y,zは3次元系のそれぞれの軸方向の長さを表し、
A,Bはそれぞれ赤道方向半径を表し、
Cはz軸に沿った極方向半径を表し、
t,rはそれぞれ赤道上の先端における平坦化の量を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記1つまたは複数のパラメータ方程式は次式であって、
【数3】
x,yは座標系におけるそれぞれの軸方向の長さを表し、
a,bはそれぞれ赤道方向半径を表し、
cは極方向半径を表し、
t,rはそれぞれ赤道上の先端における平坦化の量を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
工程を実施するようにプログラムされるコンピュータシステムであって、前記工程は、
刺激パラメータのための値を含む入力データを受け取る工程と;
数に前記刺激パラメータのための値を有する入力ベクトルを適用する工程であって、前記関数は、
a)計算学習アルゴリズムから生成された関数であり、前記計算学習アルゴリズムは、刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値の領域を、前記刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値の前記領域によって生成される活性の容積に、マッピングすることと;
b)1つまたは複数のパラメータ方程式のパラメータの値を出力する関数であり、前記1つまたは複数のパラメータ方程式は3次元幾何形状で表現される、工程と
前記関数により出力された前記パラメータの値を用いて前記1つまたは複数のパラメータ方程式を解くことによって、前記活性の容積を算出する工程と
を有する、コンピュータシステム。
【請求項21】
コンピュータに手順を実行させるためのコンピュータ読取可能なプログラムを記録する持続性コンピュータ可読媒体であって、前記手順は、
刺激パラメータのための値を含む入力データを受け取る手順と;
数に前記刺激パラメータのための値を有する入力ベクトルを適用する手順であって、前記関数は、
a)計算学習アルゴリズムから生成された関数であり、前記計算学習アルゴリズムは、刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値の領域を、前記刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値の前記領域によって生成される活性の容積に、マッピングすることと;
b)1つまたは複数のパラメータ方程式のパラメータの値を出力する関数であり、前記1つまたは複数のパラメータ方程式は3次元幾何形状で表現される、手順と
前記関数により出力された前記パラメータの値を用いて前記1つまたは複数のパラメータ方程式を解くことによって、前記活性の容積を算出する手順と
を有する、持続性コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項22】
請求項21に記載の持続性コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記関数は、
電極の電場モデルを神経組織モデルに結合し、複数の異なるセットの刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値に対する複数の活性の容積を得る、手順と;
3次元幾何形状を前記複数の活性の容積に適合させる工程であって、同3次元幾何形状は前記1つまたは複数のパラメータ方程式により定義される、手順と;
前記計算学習アルゴリズムを使用し、前記関数を設計する工程であって、前記関数は、入力として、刺激パラメータの値および電極構成パラメータの値を組み入れる、手順とにより取得される、持続性コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、患者の脳または脊髄中を刺激するなどのための組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、認可番号NIHR01 NS059736に基づき政府支援によってなされた。米国政府は、本発明に関して一定の権利を有する。
神経系の電気刺激は、様々な疾患の治療処置をもたらしてきた。たとえば、電気刺激は、脊髄を刺激することなどによって、疼痛処理のために施されてきた。また、電気刺激は、人工内耳の状況下で聴力を補強するために実施されてきた。脳深部刺激(DBS:deep brain stimulation)は、たとえば、パーキンソン病および筋失調症を含む、様々な症状を処置するための確立された治療法になっている。また、脳深部刺激は、数例をあげると、臨床的鬱病、強迫性障害、てんかんなど、他のいくつかの症状を処置するために用いられてきた。
【0003】
さらなる例として、高周波脳深部刺激が、外科的病変によって得られる臨床的効果に類似する効果を生み出すという発見によって、運動障害を処置するための機能的脳神経外科の使用が変形された。先進国では、難治性ふるえのための視床脳深部刺激が、視床の切断病変、および視床下核または内部淡青球(GPi:globus pallidus internus)の脳深部刺激に取って代わっている。GPiは、パーキンソン病の主要運動特性(たとえば、ふるえ、硬直、動作緩慢)の処置で淡蒼球切除術に取って代わっている。さらに、GPi 脳深部刺激は、筋失調症の有効な治療法として現れており、脳深部刺激の有用性は、てんかん、強迫性障害、トゥレット・シンドロームおよび大うつ病に対する処置のために試験されている。
【0004】
神経刺激の臨床的な成功が文書で証明されているにもかかわらず、ニューロン・レベルでの神経刺激のメカニズムおよび効果は、予測困難な状態のままになっている。その結果、モデル化およびシミュレーションは、神経刺激の工学的設計および科学的解析において、ますます重要な役割を果たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/083104号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、概して、患者の神経組織(たとえば、脳または脊髄)中の刺激に関連するなどの組織活性の部位を推定するためのシステムおよび方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1実施形態では、人工ニューラルネットワーク(ANN:artificial neural network)は、入力パラメータ(電極構成、刺激パラメータ)のセットに対して推定される組織活性の容積(VTA:volume of tissue activation)に対応する数式のパラメータを出力するように、プログラムされる。所与の人工ニューラルネットワークは、シミュレーションまたは臨床研究が、そのために全く実施されていない、異なる電極構成および刺激パラメータに対して、VTAを推定して決定することができる。さらに人工ニューラルネットワークは、複数の異なるタイプの
電極に関して、その異なるタイプの電極について人工ニューラルネットワークに再学習させる必要なしに、VTAを推定するように、学習させることができる。
【0008】
別の実施形態では、本発明によって、神経組織の活性の容積を決定するためのコンピュータ実施の方法が提供され、その方法は、
(a)活性の容積を画定する1または複数のパラメータ方程式を備える工程であって、1または複数のパラメータ方程式のためのパラメータは、刺激パラメータを含む入力ベクトルの関数として与えられる工程と;(b)刺激パラメータのための値を含む入力データを受け取り、そして入力データを使用して入力ベクトルを定義する工程と;(c)前記関数に前記入力ベクトルを適用し、そして前記1または複数のパラメータ方程式のための前記パラメータを取得する工程と;(d)活性の容積を算出するために、パラメータ方程式を解く工程と、を含む。算出された活性の容積は、表示器スクリーン上に表示することができる。
【0009】
別の実施形態では、本発明によって、活性の容積を画定する、1または複数のパラメータ方程式のパラメータを出力する関数を決定するための方法が提供され、その方法は、
(a)電極の電場モデルおよび神経組織モデルを備える工程と;(b)前記電場モデルを前記神経組織モデルに結合することによって、刺激パラメータおよび電極構成パラメータの多くの異なるセットについて、活性の容積を取得する工程と;(c)前記活性の容積に幾何形状を適合させる工程であって、前記幾何形状は、1または複数のパラメータ方程式によって画定され、そして算出学習アルゴリズムを使用して、刺激パラメータおよび電極構成パラメータの前記異なるセットを、前記活性の容積に適合される幾何形状を表す、前記1または複数のパラメータ方程式のための前記パラメータに、相関させる関数を設計する工程と、を含む。別の実施形態では、本発明によって、持続性コンピュータ可読記憶媒体が提供され、その媒体は、そのパラメータが、刺激パラメータおよび電極構成パラメータを含む入力ベクトルの関数として与えられる、1または複数のパラメータ方程式を使用して、活性の容積を決定するためのインストラクションを含み、その関数は、この方法によって取得される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の態様による、組織活性の容積を決定するために用いることができる例のアプローチを示す機能ブロック図。
図2】活性化される組織の部位を記述するために利用することができるモデルの例を示す図。
図3】実現することができる人工ニューラルネットワークの例を示す図。
図4】活性化される組織の部位を識別するために利用することができる、軸索モデルおよび電極構造の例を示す図。
図5】刺激パラメータおよび構成パラメータの第1のセットに対して活性化される組織の部位の例を示す図。
図6】刺激パラメータおよび構成パラメータの第2のセットに対して活性化される組織の部位の例を示す図。
図7】本発明の態様による方法および工程を実施するために使用することができる、例のコンピュータ環境を示す図。
図8】計算試行で使用される3つのメドトロニック(Medtronic)社製電極に関する電極構成を示す図。
図9】軸索線維が電極シャフトに対して垂直に方向付けられる、軸対称の有限要素モデルでメドトロニック(Medtronic)社3387電極を示す図。
図10】本発明において使用することができる、人工ニューラルネットワークの別の例を示す図。
図11】電極コンタクトによる活性化のための異なる構成によって活性化される組織の部位の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、概して、電気刺激によって活性化される(たとえば、脳または脊髄中の)神経組織の容積を推定する、または予測するためのシステムおよび方法に関する。図1に、活性化される神経組織の容積を推定するように実装することができるシステム10の例を示し、その容積は、出力される組織活性の容積(VTA)12として示される。システム10は、入力データ16のセットに対してVTAを出力するように、プログラムされるVTA推定器14を含む。VTA推定器14は、人工知能および/または機械学習技術(たとえば、人工ニューラルネットワーク、関数予測器、エキスパートシステムなど)を用いることができる。
【0012】
図1の例では、VTA推定器14の人工知能構成要素が、人工ニューラルネットワーク(ANN)として示されているとはいえ、本明細書の教示に基づき、他の技術および方法論を利用することができるであろうことが理解し認められるであろう。人工ニューラルネットワーク18は、人工ニューラルネットワーク18によって記述される、またはモデル化される入力データ16間の複雑な関係に従って、入力データ16に応答してVTA12を出力するように、学習させる。
【0013】
入力データ16は、刺激パラメータ20および構成パラメータ22を含む。刺激パラメータ20および構成パラメータ22は、共同で、どのVTA12を計算して出力すべきであるのかに基づき、入力ベクトルを定義することができる。入力ベクトルの次元についての特定の数が、応用要件および対応する人工ニューラルネットワーク18の能力によって変化することができることを理解し認められるであろう。入力刺激パラメータ20は、たとえば、刺激が電圧制御装置によって、または電流制御装置によって駆動されるのかを示す指示を含むことができる。また入力データ16は、電圧または電流の振幅、周波数、パルス幅およびパルス形状などの刺激パラメータ20を含むことができる。
【0014】
電極構成パラメータ22は、電極設計のための寸法、構成および相互関係などの構造特性を定義することができる。構成は、市販の電極設計に利用可能なように、またはカスタム設計に設定されうる。複数の円筒形電極コンタクトを有する電極の例として、電極構成パラメータ22は、電極シャフトに沿った電極コンタクトの、高さ、直径、および間隔(または分布)を含むことができる。またパラメータ間の関係は、アスペクト比(d/h)などのように、入力データ16中に示されうる。アスペクト比はさらに、探査スペースをアスペクト比の所定の範囲(たとえば、d/h<ある所定の値)に限定することなどによって、最適化手法を制約するために、利用することができる。
【0015】
さらに刺激パラメータ20および構成パラメータ22は、相関させることができる。たとえば電極の所与の構成は、1または複数の電極コンタクトのうちのいずれもの数だけ有することができ、それゆえ対応する刺激パラメータ20は、1または複数の電極コンタクトによる刺激をもたらすように設けることができる。さらに刺激パラメータは、所与のコンタクトがアノードであるのか、カソードであるのかを定義することができる。所与の入力データのセット(たとえば、刺激および構成パラメータ)が、所与の出力VTA12に対応することを理解されるであろう。それゆえ本明細書に述べるように、入力データ16をいずれもの数だけとすることができ、その数を、対応する出力VTAをもたらすように、変化させることができる。
【0016】
人工ニューラルネットワーク18は、VTAモデル24を用いて、部位を数学的に表す、または記述することができ、それは、出力されるVTA12中に示される組織の活性化される部位に関する領域(たとえば、2次元で)または容積(たとえば、3次元で)とす
ることができる。それゆえ、VTAモデル24は、1または複数のパラメータ方程式26のセットを含むことができ、それは、入力データ16に基づき、出力されるVTA12を計算する上で使用するために、個別に、またはそのいずれもの組み合わせで、人工ニューラルネットワーク18中で利用することができる。
【0017】
図2に、VTA推定器14によって利用することができる、いくつかのパラメータ方程式26の例を示す。図2の例では、パラメータ方程式は、楕円体、超楕円体として、ならびに、より高次の多項式として示されている。他の形状、パラメータ方程式およびその組み合わせを、VTAモデル24として、利用することができることを理解し認識されるであろう。図2の例の方程式では、AおよびBは、赤道半径(それぞれxおよびy軸に沿った)であり、Cは、Z軸に沿った極半径である。パラメータ方程式に関するパラメータrおよびtは、赤道上の先端上における平坦化の量を制御する。
【0018】
パラメータ方程式26によって記述される幾何容積それぞれの中心が活性部位を示すことができ、その部位が、これによってモデル化されている電極中のアクティブコンタクトの中心にある場合もあり、またはそうでないこともあることを理解し認識されるであろう。コンタクトの具体的な中心およびアクティブ部位の中心は、たとえば、刺激および構成パラメータ20および22(たとえば、電圧、電極タイプのパルス幅、インピーダンスに関するコンタクト構成、あるいは他の刺激または構成パラメータ)に依存して、それぞれ異なってもよい。
【0019】
VTA推定器14は、1または複数の人工ニューラルネットワーク(ANN)18のうちの任意の数だけ利用することができる。さらなる例として、VTA推定器14は、活性化される神経組織の容積を画定するパラメータ方程式26のための数学的パラメータのパラメータを、ニューロンモデルのシミュレーションを実施することも、所与の活性化広がりに対して方程式を再適合させることも必要無しに、推定することができる。
【0020】
さらなる例として、VTA推定器14は、図3に示された2層のニューラルネットワーク(たとえば、Mathworks Neural Network Toolbox,www.mathworks.com/access/helpdesk/help/pdf_doc/nnet/nnet.pdf参照)など、1または複数の人工ニューラルネットワークを用いることによって、活性化される神経組織の容積を画定する数式(複数可)26のパラメータを推定するようにプログラムされるVTA予測因子を生成することができる。有利にも、推定は、ニューロンモデルのシミュレーションを実施することも、活性化広がりに対して方程式を再適合させることも必要無しに、実施することができる。VTAが楕円体を用いてモデル化される1つの例の場合として、VTA推定器14は、隠れ層および出力層中のシグモイドおよび線形の伝達関数をそれぞれ備える、1対の2層のニューラルネットワークを用いて実現することができる。
【0021】
人工ニューラルネットワーク18の層中で利用することができるシグモイド伝達関数の例は、ナレンドラ ケー エス(Narendra K.S),パーザサラジ ケー(Parthasarathy K.)(March 1991)”Gradient methods for the optimization of dynamical systems containing neural networks”,IEEE
Transaction on Neural Networks,Vol.2,No.2,252−262に述べられている。人工ニューラルネットワーク18の層中で利用することができる線形伝達関数の例は、ジョニック エス(Jonic S.),ヤンコビック ティ(Jankovic T.),ガジック ブイ(Gajic V.),ポポビック ディ(Popovic D.)(March 1999)”Three machine learning techniques for automatic d
etermination of rules to control locomotion”,IEEE Trans.On Biomedical Engineering,Vol.46,No.3,300−310に述べられている。
【0022】
2つの人工ニューラルネットワーク18の例について続けると、第1の人工ニューラルネットワークは、12個の入力(たとえば、パルス幅、インピーダンス、構成数、電圧振幅、コンタクト構成、アクティブ楕円体を表す)と、20個の隠れニューロンと、楕円体パラメータを定義する8つの出力ニューロン(a0、c0、a1、c1、a2、c2、a3、c3)(モデルの軸対称特性によってb=a)と、を含むことができる。第2の人工ニューラルネットワーク18のアーキテクチャは、第1のものと同じとすることができるが、しかし出力は、電極シャフトの垂直軸に沿った4つまでのVTAまたはアクティブ部位の中心(z0、z1、z2、z3)であった。当業者は、様々なタイプの伝達関数(上記に述べたシグモイドおよび線形の関数以外)があり、ならびに人工ニューラルネットワーク18を実現するために利用することができる層が、いずれの数でもよいことを理解し、認識するであろう。
【0023】
人工ニューラルネットワーク18は、人工ニューラルネットワークが入力パラメータ16の全範囲にわたって出力VTA12を生成するのに有効であるように、学習データのセット30などを用いてシステム10上で予め学習させることができる。またシステム10は、所与の応用のために学習させられうる、またはユーザが、VTA推定器の領域を拡大することによって人工ニューラルネットワーク18の元の学習の範囲外である追加の入力データを引き受けることを望んだ場合、システム10は、再学習させられることができる。
【0024】
システム10は、学習データのセット30に基づき人工ニューラルネットワーク18に再学習させることができる学習アルゴリズム28を、含みうる。学習データ30は、予め処理され、または正規化されることによって、人工ニューラルネットワーク18の要件に従って学習データの正規化セット32を提供できる。たとえば学習データ30は、軸索ケーブルモデルのコンピュータシミュレーションを使用して、取得されうる。
【0025】
学習アルゴリズム28は、人工ニューラルネットワーク18を使用して学習データ30を所望の出力データに適用することに基づき、誤差のバックプロパゲーションまたはプロパゲーションを実施できる。1例として、各人工ニューラルネットワーク18は、レーベンバーグ・マルカルト(Levenberg−Marquardt)と、モーメンタムアルゴリズムによる勾配降下とを使用して、学習させる(または再学習させる)ことができる。これらの方法による可能な学習アルゴリズムの例は、次の文献、ジル ピー アール(Gill P.R.),マリー ダブル(Murray W.),ライト エム エイチ(Wright M.H.)(1981)”Levenberg−Marquardt
Method”in Practical Optimization,London:Academic Press,136 −137、レーベンバーグ ケー(Levenberg K.)(1944)”A Method for the Solution of Certain Problems in Least Squares”,Quart.Appl.Math.Vol.2,164−168、マルカルト ディ(Marquardt D.)(1963)”An Algorithm for Least−Squares Estimation of Nonlinear Parameters”,SIAMJ.Appl.Math.Vol.11,431−441に開示されている。
【0026】
初期学習のための例として、実際のシミュレーションケースに対応する利用できる入力/出力データのいくつかまたはすべては、VTAを決定するために使用されたが、VTA
推定器14を学習させるために利用することができる。利用できるケースのサブセットは、過剰な適合化を避けるために検証データとして使用されることができ、さらに別のサブセットまたは残されたケースは、一般化誤差を推定するために利用されることができる。ニューラルネットワークの重みおよびバイアスは、ランダムに初期化されることができる。各人工ニューラルネットワーク18は、正規化適合平均二乗誤差(MSE:mean squared error)が、所定の値(たとえば、10−5より小さい)に達するまで、検証誤差が、適合化誤差に対して増加するまで、またはエポックの最大数(たとえば、1000)の間、学習させられうる。
【0027】
VTA推定器14が、人工ニューラルネットワーク18に学習させることなどによって、プログラムされた後、次いでシステム10は、入力データのセット16に対して出力VTA12を生成するために、利用されることができる。そのような工程を容易にするために、システム10は、ユーザインタフェース32を含むことができ、それは、当技術で知られているように、様々な押しボタン、ドロップダウンメニュー、または他のグラフィックおよびテキストベースのユーザインタフェース要素を含むことができる。ユーザインタフェース32は、たとえば、それを利用して、入力データのセット16を設ける、またはそれにアクセスする、あるいは、そうでなければ、システム10によって実施される動作の方法、または動作のモードを定義することができる。
【0028】
入力データベクトル16および出力VTA12の間の一般化される関係は、学習させた人工ニューラルネットワークによって得られる。VTAを定義する数式(複数可)のパラメータを算出するために、一連の簡単な方程式を解くことができる。1例として、方程式は、次の形式を有することができる。
【0029】
【数1】
【0030】
ここでnは、隠れニューロンの数であり、mは、ネットワーク出力の数であり、Iは、そのためのVTAを算出したい、12×1の入力ベクトルであり、max(I)およびmin(I)は、入力が達成することができる、それぞれ、最大値および最小値を規定し、IWは、n×12の入力重みであり、b1は、n×1の入力バイアスベクトルであり、o1は、入力層からの出力を含む、n×1のベクトルであり、LWおよびb2は、隠れ層のための、それぞれ、重みのm×nのマトリックスと、バイアスのm×1のベクトルであり、o2は、m×1の正規化出力ベクトルであり、max(T)およびmin(T)は、出力が達成することができる、それぞれ最大値および最小値を定義するm×1のベクトルであり、出力は、VTAを定義するパラメータのm×1のベクトルである。
【0031】
図1に戻ると、また、システム10は、1または複数のVTAモデル24を選択するよ
うに動作するモデルセレクタ46を含むことができる。モデルセレクタ46は、たとえばユーザインタフェース32を介して受け取ったユーザ入力に応答して、マニュアルで実行されうる。あるいは、モデルセレクタ46は、入力データの基づき、パラメータ方程式の適切な1または複数を選択するようにプログラムされる自動的な工程として、実行されうる。たとえばモデルセレクタ46は、制約付き最適化アルゴリズムを用いて、多くの(たとえば、3つの)構成要素から形成される費用関数を最小化し、かつパラメータ方程式26とVTAに対応する線維活性の広がりの間の最大限の適合化を保証することができる。さらなる例として、第1の費用関数の構成要素は、我々のパラメータ方程式の最先端縁部(水平面と垂直面の両方上)と2D等高線の間の差に対応することができる。第2の構成要素は、パラメータ方程式によってカバーされる領域と2D等高線の間の周辺長さの差に対応することができる。第3の構成要素は、パラメータ方程式によってカバーされる領域と2Dアクティブ線維等高線によってカバーされる領域の差に対応することができる。
【0032】
1つの例の実施形態では、データに対する制約付き最適化は、Matlab(登録商標)最適化ツールボックスfminconファンクション(Optimization Toolbox’s fmincon function)(マスワークス社(The MathWorks Inc.),米国マサチューセッツ州ナティック(Natick,MA)所在)を使用して実施することができるが、ここで、他の市販の、または私有の方法を利用することができる。この最適化方法は、逐次二次計画法(SQP:Sequential Quadratic Programming)「コールマンおよびチャン(Coleman and Zhang)、2006年)」を使用して、制約付き非線形多変数関数の最小値を見出す。SQPは、次の文献、すなわち、パウエル エム ジェイ ディ(Powell M.J.D.),(1983年)”Variable Metric
Methods for Constrained Optimization,”Mathematical Programming:The State of the
Art,(エー バッケン(A.Bachem),エム グロシュル(M.Grotschel)およびビー コルト(B.Korte)編)Springer Verlag.288−311、フレチャ アール(Fletcher R.),(1987)”Practical Methods of Optimization,”John Wiley and Sons、ジル ピー アール(Gill P.R.),マリー ダブル(Murray W.),ライト エム エイチ(Wright M.H.)(1981)”Levenberg−Marquardt Method”in Practical Optimization,London:Academic Press,136 −137、ホック ダブル(Hock W.),シュトコウスキー ケー(Schittkowski K.),(1983年)”A Comparative Performance Evaluation of 27 Nonlinear Programming Codes”、Computing,Vol.30,335に詳細に述べられている。当業者は、適切なパラメータ方程式26の選択のために利用することができる、他の市販の、および所有権のあるツールおよびソフトウェアを理解し認識されるであろう。
【0033】
それゆえ各アクティブ領域は、図2に示すように、パラメータ方程式(たとえば、楕円体、超楕円体、二次またはより高次の多項式など)の1つ、または2つ以上のいずれものパラメータ方程式の組み合わせによって、記述されうる。3つのパラメータ方程式が図2に示されているが、当業者は、他の数および形状をパラメータ方程式として利用することができることを認識するであろう。
【0034】
さらなる例として、ユーザインタフェースは、入力セレクタ34を呼び出すことによって、刺激パラメータおよび/または構成パラメータ20および22などを含む、入力データの1または複数のセット16を定義することができる。あるいは入力セレクタ34は、
たとえば入力データのセットを決定するようにシステムを設定するための入力モードを選択するために使用されうる。入力データのセットは、所望の目標VTAを提供するために利用されうる。またシステム10は、目標セレクタ36を含むことができる。目標セレクタ36は、活性化されるべき組織の所望の目標容積38を、画定するおよび/または設定するために利用されうる目標容積38は、2−Dおよび/または3−D表示に対応するなどのユーザインタフェースを介して選択されることができ、2−Dおよび/または3−D表示は、対応する表示器40上に表示されうる。たとえば表示器40は、目標容積がその中に存在する、脳などの解剖部位を、3次元または2次元で表示できる。表示器上に表示される3−Dモデルは、脳構造の一般モデルに対応することができる。あるいは表示器40上に表示されるモデルは、対応する画像診断法(たとえば、CTスキャン、またはMRIなど)を使用して生成することができるような、患者特定モデルに対応することができる。
【0035】
目標容積38が目標セレクタ36を介して選択された場合、システム10は、目標容積と出力VTA12の間を数学的に相関させるようにプログラムされる相関器42を用いることができる。相関器42は、出力VTA12と目標容積38の間を相互に関係付けることによって、出力VTAと目標VTAによって示されるモデル容積の間の重複する容積または領域を算出できる。1例として相関器42は、制約付き最適化アルゴリズムを実行するように、プログラムされうる。対応する結果は、表示発生器44に送られ、次いで、表示器40上での視覚的表現(および比較)のために、再生されうる。
【0036】
システム10が、選択された目標容積に対応する目標容積38を達成するように、入力データのセット16を決定するために利用されている場合、入力セレクタ34は、刺激および/または構成パラメータ20および22を、利用できる設定の全範囲にわたって変更できる。各対応する出力VTAは、相関器42によって、目標容積38に対して相互に関係付けられ、重複量を示すスコアを提供できる。VTA12および38、およびそれらのスコアは、対応するデータを表示器40に、または他の出力装置(たとえば、プリンタ)に提供することなどによって、ユーザに表示されうる。目標容積に対する重複量が最大である出力VTAは、決定されることができ、対応する入力データは、表示器上への、または別の出力装置(図示せず)への出力として提供されうる。
【0037】
それゆえ入力データの所与のセットは、電極に関する具体的な構造ならびに刺激パラメータを表すことができる。刺激パラメータは、所望の目標VTAを達成するために利用されうる。またシステム10は、表示器40上に、出力VTAに関する構成パラメータ22に対応する電極設計をグラフィックで表示することができる。電極設計は、市販の設計またはカスタム設計とすることができる。2つ以上の目標VTAが存在することができ、それゆえ所与の患者に対する入力データのセットが2つ以上存在することができることは、認識されるであろう。
【0038】
入力データ(たとえば、刺激パラメータおよび構成パラメータを含む)の異なるセットのそれぞれに対して学習させた人工ニューラルネットワーク18が、個々の設計を迅速に評価して、再学習させる、または臨床的測定のために追加のシミュレーションを実施することが必要でなく、設計および刺激パラメータを確認するために、利用されうることは、さらに認識されるであろう。したがって当業者は、システム10およびVTA推定器14が、電極追跡または脳深部刺激(DBS)または他の定位手術の相互運用計画を支援するために、脳深部刺激電極についての移植位置を識別するように役立てることによって、利用されうることを理解し認識するであろう。これは、最良の一致が見つかるまで、ユーザの認可システムに対して目標容積を調節することと、各個別の位置で異なる刺激パラメータに対して出力VTA12を決定することとによって、利用されうる。
【0039】
またシステム10は、1または複数の他の入力または出力の装置(図示せず)を含むことができる。かかる装置は、ユーザが、それを介して、データを入力し、さらに方法を制御することができるインターフェースを備えることができる。たとえばユーザは、電極設計手続きを起動するまたは修正するためのインストラクションなどのデータを入力するために、I/O装置を用いることができる。あるいは、I/O装置は、ローカルメモリ中のロケーション、別の記憶ロケーションなどから学習データ30を取得するために、または別のコンピュータ上で実行している別の工程にアクセスするために、利用されうる。
【0040】
実験
次の議論は、本明細書に述べる概念のための基盤となる実験および処置を含む、発明者らの活動に関するものであり、人工ニューラルネットワーク中での使用に適した学習データのためにパラメータ方程式およびVTAを決定するために使用される処置を含む。
【0041】
脳深部刺激の計算モデルは、脳内の神経活性の空間的広がりを推定し、かつ活性化される組織の容積を特徴付けるために、生成された。この脳深部刺激の計算モデルは、解剖学的と電気的な構成要素の両方を有していた。電気的な構成要素は、図8に示すように、メドトロニック(Medtronic)社製の脳深部刺激電極(モデル番号3389、3387および3391、メドトロニック社(Medtronic),米国ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN)所在)の幾何表現から生成された、3つのバーチャルな電極を含んでいた。
【0042】
電場モデル
計算モデル化研究は、脳組織中に挿入されたバーチャル電極モデルを含んでいた。バーチャル電極は、メドトロニック(Medtronic)3389、3387および3391の脳深部刺激電極(図8を参照)を表すように、モデル化された。各バーチャル電極について、150を超える軸対称多重解像度有限要素モデル(FEM:finite element models)が、脳組織内の電場をモデル化するために、生成された。FEMは、コムソル(COMSOL)、(コムソル社(Comsol Inc.),米国マサチューセッツ州バーリントン(Burlington,MA)所在)およびSCIRun3.3(サイエンティフィック コンピューティング アンド イメージング インスティチュート(Scientific Computing and Imaging Institute),米国ユタ州ソルトレイクシティ(Salt Lake City,UT)所在)を使用して生成され、バーチャル電極の表現、電極を囲繞する脳組織の導電率、電極・組織界面でのキャパシタンス、電極まわりのカプセル化組織の薄層、および臨床用途で通常使用される刺激設定を含んでいた。
【0043】
電極は、コンタクトのサイズを反映するように、3.3μFの容量(メドトロニック3387および3389電極に対して)、または6.6μFの容量(メドトロニック3391電極に対して)を有する、容量性要素として純粋に表された。脳組織は、バルク伝導率が0.3S/mである均質で等方性の媒体として、表された。またモデルは、電荷変換反応および電極・組織界面における42%の電圧降下を説明するために、電極を囲繞する、0.5mm厚さのカプセル化層を組み込んだ。各モデルにおけるカプセル化層の伝導率は、目標インピーダンスに一致するように、調節された。刺激設定および電極構成の範囲(以下の表1参照)が、電場モデルに適用され、フーリエFEM解法が、ディリクレイ型境界条件およびノイマン型境界条件を用いてポアソン方程式を解くために、使用された。電場モデルの接地条件は、刺激中アノードが全く存在しない場合、FEMメッシュの境界であり、アノードが存在する場合、アノード(複数可)である。
【0044】
【表1】
【0045】
神経組織モデル
電場モデルは、ニューロン活性を決定するために、神経組織モデルに結合された。図9に示すように、神経組織モデルは、2,500を超える白質軸索線維の軌跡を有する。白質軸索線維は、電極シャフトに対して垂直に母材中で分布され、線維間分離は、垂直(背腹)および水平(内側横)軸に沿って0.2mmであった。軸索集団は、電極シャフトに対して横方向に約0.7〜11.0mmで、電極の先端の上に−7.0〜+32.0mmで位置付けられた。図4は、電極シャフトに隣接する母材中にどのように軸索が配列されうるかを示す別の図である。有髄軸索の多重区画モデルは、これら軸索のそれぞれを表すために、生成された。これらモデルのための軸索パラメータは、5.7μmに軸索についてMclntyreら(マッキンタイヤ(Mclntyre)ら、J Neurophysiol,2002,Feb;87(2):995−1006参照)に従って定義された。各軸索の軌跡を明確に画定するために求められる幾何形状は、Matlab(マスワークス社(MathWorks Inc.),米国マサチューセッツ州ナティック(Natick,MA)所在)を使用して決定された。軸索の垂直の方向付けのため、電極シャフトに対する活性の広がりを決定することができた。
【0046】
各軸索モデルに沿った細胞外の電圧は、各軸索区画に対して各電場を補間することによって、決定された。細胞外の刺激に応答する軸索の挙動は、NEURONシミュレータを使用して、すべての軸索モデルおよび電場FEMのそれぞれについてシミュレートされた。このシミュレーションで、軸索は、軸索が印加された電場シミュレーションに応答して活動電位を放った場合、活性化されたとみなされた。
【0047】
活性化された線維は、アクティブ部位中に分類された。簡単化のため、バーチャル電極上のアクティブ電極コンタクト(カソードまたはアノード)それぞれについて、アクティブ部位は、画定された。アクティブ線維はそれぞれ、各線維の中心から各電極コンタクトの中心までのその距離に従って最も近いアクティブ部位に、割り当てられた。アクティブ部位はそれぞれ、2以上のコンタクトを有することができたが、所与のコンタクトのみが、単一のアクティブ部位に属することができた。そのように、各アクティブ部位は、その対応する電極コンタクトの性質に依存して、陰極性または陽極性のいずれかとして定義された。活性化された線維がカソードおよびアノードに対して等距離にある場合、その線維は、カソードによって活性化されたと見なされた。或る場合には、隣接するアクティブ部位は、電極の構成および対称性に依存して、単一のアクティブ部位中に統合された。
【0048】
各アクティブ部位の2次元境界は、その水平および垂直の平面内で活性化された線維の広がりを最良に包含する楕円のためのパラメータ方程式によって、画定された。制約付き最適化アルゴリズムは、このパラメータ方程式のパラメータを見出すために、使用された。最適化アルゴリズムは、アクティブ部位の実際の境界とパラメータ方程式によって画定される幾何的外形との間の二乗平均平方根(RMS)誤差を最小化する。上方および下方の境界は、各アクティブ線維からアクティブ部位の中心までの最大の横方向および垂直方
向の距離を取得することによって、画定された。これは、軸対称のシミュレーションモデルであるので、パラメータ方程式によって生成される2D楕円形の外形を電極シャフト(z軸)のまわりで回転させることによって、3次元VTAを生成できた。図5および図6は、各アクティブ部位60中の線維64の広がりを測定することによって、決定されうるアクティブ部位60の例を示す。各アクティブ部位60の楕円形外形66は、電極コンタクト62に平行な平面上で、電極シャフト上に中心を置く2D等高線である。縁部66は、そのそれぞれのアクティブ部位60に最適に適合された楕円を画定する。図11は、電極コンタクト活性のための異なる構成下でのアクティブ部位60の別の例を示す。アクティブ部位60に適合される、パラメータ方程式の楕円形外形66は、アクティブ部位60のまわりの白線として示される。電極68上に、カソードであるアクティブコンタクト62を、空白の円として示し、アノードであるアクティブコンタクト62を、斜交平行線の円として示す。
【0049】
一度、活性の空間的広がりが、各2D外形/形状を記述するパラメータのセットによるすべての刺激設定について定量化されると、人工ニューラルネットワークは、電極パラメータ(刺激設定および構成)と最適に適合された楕円体形状との間の複雑な関係をモデル化するために使用された。電極パラメータ(刺激設定および構成)と最適に適合された楕円体形状とは、活性の容積を表す。2つのフィードフォワードの人工ニューラルネットワーク(ANN)に、学習データとして活性広がりおよび付随する電極パラメータのセットを使用して、学習させた。
【0050】
人工ニューラルネットワークは、形がP=wI+bである予測関数を設計するために使用され、その形は、刺激設定(I)と3D組織活性を記述する方程式パラメータ(P)との間の複雑な非線形の関係を線形化する。ここで、wおよびbはそれぞれ、重みおよびバイアスを表す。人工ニューラルネットワークは、これらの入力をそれらの対応する出力にマッピングする重みおよびバイアスのセットを見出す。第1の人工ニューラルネットワークは、各アクティブ部位について、活性の垂直および横方向の広がりを算出するために使用された。第2の人工ニューラルネットワークは、各アクティブ部位の垂直方向の中心を算出するために使用された。モデルが軸対称であるので、活性の2D境界をバーチャル電極の主軸に沿ってスイープすることによって、活性化された組織の3D容積を生成できた。人工ニューラルネットワークを使用することによって、FEM解およびNEURONシミュレーションによって明確には解析されなかった刺激設定間の補間が可能になった。これによって、パラメータ空間内の任意の刺激設定を選択することによって、脳内の3D VTAを生成するのが可能になった。
【0051】
人工ニューラルネットワークはそれぞれ、MATRLABのニューラル・ネットワーク・ツールボックス(マスワークス社(MathWorks Inc.),米国マサチューセッツ州ナティック(Natick,Massachusetts)所在)を使用して、生成された。各ネットワークは、12個の入力、すなわち刺激パラメータセット、パルス幅、カプセル伝導率、コンタクト構成、電圧振幅、および電極構成(すなわちアクティブコンタクト)を記述するブーリアンフラグ(1=アクティブ、0=インアクティブ)を受け取った。また人工ニューラルネットワークそれぞれは、20個のニューロンを有し且つシグモイド伝達関数を使用する1つの隠れ層と、線形出力層とを含んでいた。第1のニューラルネットワークは、8個の出力(各アクティブ部位について、シミュレーションの半径方向および垂直方向の広がり)を有し、第2のニューラルネットワークは、4つの出力(各アクティブ部位について、電極シャフトに沿った楕円体中心)を有した。
【0052】
両方のニューラルネットワークは、刺激設定およびそれらの対応する楕円体パラメータの70%のランダムサンプリングに基づき、レーベンバーグ・マルカルト(Levenberg−Marquardt)アルゴリズムを使用して、学習させた。データの残された
30%は、検証およびニューラルネットワークの性能の査定のために使用された。人工ニューラルネットワークそれぞれの初期重みは、ランダムに初期化され、学習を終了させるために使用される停止基準は、10−5より小さい二乗平均誤差を含み、または500エポックまでとした。
【0053】
予測関数を用いると、広い範囲の多極電極構成および刺激設定について、組織活性の容積を画定した楕円方程式のパラメータを算出することが可能である。12個の値から成る入力(I)は、
【0054】
【数2】
【0055】
であり、ここで、PWは、パルス幅、σencapは、電極を囲繞する組織カプセル化層の伝導率(ダイナミックに患者特定のインピーダンス値に依存する)、nは、特定の刺激設定に関する構成数、Vは、電圧振幅、C0−3は、陽関数表示のコンタクト構成(休止状態の場合、0、カソードの場合、−1、およびアノードの場合、+1)、およびe0−3は、アクティブコンタクト構成に基づき、次のような疑似アルゴリズムを使用して生成されるアクティブ楕円体である。その疑似アルゴリズムは、
*対応するC0−3コンタクトがアクティブである場合、e0−3を1に設定する、
*コンタクトC0−3中にアノードが存在しない場合、隣接するカソードがあるか否か決定する、
*隣接するカソードがある場合、最も低い隣接するカソードのコンタクト(複数可)に対応するアクティブe0−3に1を設定し、より高い隣接するカソードのコンタクト(複数可)に対応するアクティブe0−3に0を設定する。この疑似アルゴリズムは、何らかの重複が存在する場合、隣接するアクティブ部位が、どのようにして結合されうるのかの例を明示する。
【0056】
人工ニューラルネットワークによって各電極タイプについて算出される重みおよびバイアスを使用して、楕円パラメータを解いた。人工ニューラルネットワークの入力は、出力の算出に先立ち、±1の範囲に正規化された。正規化された入力(Inorm)が、
【0057】
【数3】
【0058】
によって定義される。ここでImaxおよびIminはそれぞれ、各入力パラメータの極大および極小の値を含むマトリックスである。
正規化出力(Onorm)の算出が、一般化シグモンドベースの方程式
【0059】
【数4】
【0060】
を使用して実施された。ここで、WlayerおよびWinputはそれぞれ、層および入力の重みであり、blayerおよびbinputはそれぞれ、層および入力のバイアスである。最終出力(O)は、
【0061】
【数5】
【0062】
として定義された。ここで、TmaxおよびTminはそれぞれ、各出力パラメータの極大および極小の値を含むマトリックスである。出力は、パラメータ方程式のためのパラメータを含む8×1(ネットワーク1)または4×1(ネットワーク2)のマトリックスとした。たとえば、形がx/a+y/b+z/c=1である楕円体に関する方程式の場合、aおよびcはそれぞれ、各アクティブ楕円のためのパラメータであり、およびzは、各アクティブ楕円の中心である。VTAは、それらの適切なバーチャル電極と共に、SCIRun/BioPSE視覚化環境を使用して、3Dで視覚化された。
【0063】
或る実施形態では、本発明は、神経組織の活性の容積を決定するためのコンピュータ実施の方法を提供する。この方法は、活性の容積を画定する、1または複数のパラメータ方程式を使用する。パラメータ方程式のパラメータは、入力ベクトルの関数として与えられる。上記に説明したように、入力ベクトルは、刺激パラメータおよび/または電極構成パラメータを含むことができる。また上記に説明したように、かかる刺激パラメータの例は、電圧または電流の振幅、周波数、パルス幅、およびパルス形状を含む。また上記に説明したように、電極構成パラメータは、電極の寸法(たとえば、電極コンタクトの高さおよび直径)などの電極の構造特性、または電極コンタクトの間隔または分布を定義することができる。また上記に説明したように、パラメータ方程式は、楕円体形状(超楕円体形状を含む)など、様々な幾何形状を表すことができる。いくつかの場合、パラメータ方程式のパラメータを定義する関数は、入力ベクトルの線形関数であってもよい。他の場合、パラメータ方程式のパラメータを定義する関数は、入力ベクトルの非線形関数であってもよい。
【0064】
所望の刺激パラメータおよび/または電極構成パラメータは、入力データとして受け取られる。入力データ中の値は、関数のための入力ベクトルを定義するために、使用される。たとえば入力データは、パルス幅、カプセル化組織伝導率、電圧、および電極コンタクト構成についての値を含むことができ、これらの値は、入力ベクトル中の対応する変数を定義するために使用される。次いで、関数の出力を算出することができ、次いで、関数の出力は、パラメータ方程式のパラメータを定義するために使用される。たとえば、楕円(x/a+y/b+z/c=1)のためのパラメータ方程式の場合、関数の出力は、楕円のパラメータを定義することができる。次いで、このパラメータ方程式は、楕円体形状として、活性の容積を求めて解くことができる。それゆえ、この方法によって、パラメータ方程式に対する解から直接活性の容積を算出することが可能になる。
【0065】
上記に説明したように、活性の容積を算出するために使用されるパラメータ方程式は、人工ニューラルネットワークなどの計算学習アルゴリズムを使用して取得されうる。具体的には、計算学習アルゴリズムは、異なる刺激パラメータおよび/または電極構成パラメータを、異なる刺激パラメータおよび/または電極構成パラメータによって生成される活性の容積(すなわち、学習データセット)に、相関させる関数を設計するために、使用されうる。
【0066】
この学習データセットは、刺激パラメータおよび/または構成の多くの異なるセットについて活性の容積を取得するために、電場モデルを神経組織モデルに結合することによって、取得されうる。活性の容積を算出するために、電場モデルが神経組織モデルにどのようにして結合されうるかの例は、米国特許第7,346,382号(マッキンタイヤ(Mclntyre)他)、米国特許出願公開第2007/0288064号(ブソン(Butson)他)、米国特許出願公開第2009/0287271号(ブルーム(Blum)他)に述べられており、これらは、すべて、本明細書に援用する。
【0067】
上記に説明したように、いくつかの場合、これらの活性の容積は、パラメータ方程式によって画定される幾何形状に適合されうる。また上記に説明したように、活性の容積のこの適合化は、最適化アルゴリズムを使用して、実施されうる。それゆえ、この情報を用いると、学習セットは、電極パラメータ(刺激設定および構成)の多くの異なるセットと、パラメータ方程式(複数可)のためのパラメータとを含むことができる。前記パラメータ方程式のパラメータは、電極パラメータのセットと相互に関係付けられる活性の容積に適合された幾何形状を表す
上記に説明したように、いくつかの場合、計算学習アルゴリズムは、人工ニューラルネットワークを使用する。人工ニューラルネットワークは、電極パラメータと、幾何形状に関するパラメータ方程式のパラメータの間のマッピングを推論するために、使用されうる。その幾何形状は、電極パラメータのセットと相互に関係付けられる活性の容積に適合される。入力としてこの学習データセットを使用すると、人工ニューラルネットワークの出力は、この関係をマッピングする関数を設計するために使用されうる。図10は、本発明において使用することができる人工ニューラルネットワークの例を示す。この人工ニューラルネットワークは、3つの層、すなわち入力層(左側のノード)、出力層(右側のノード)、および中間の隠れニューロン層(中間のノード)を有する。差し込み図は、スループットのパラメータを変更し且つニューラルネットワーク中のニューラル接続を変えるために、重み(Wn,h)およびバイアスが、どのように使用されるのか示す。
【0068】
或る実施形態では、本発明は、活性の容積を画定する、1または複数のパラメータ方程式のパラメータを出力する関数を決定するための方法を提供する。この方法は、電極の電場モデルと神経組織モデルとを備える工程を含む。上記に説明したように、電場モデルを神経組織モデルに結合することによって、刺激パラメータおよび電極構成パラメータの多くの異なるセットについて、活性の容積を取得することができる。幾何形状(たとえば、楕円体)は、1または複数のパラメータ方程式によって画定され、活性の容積に適合される。上記に説明したように、これは、最適化アルゴリズムを使用して実施することができる。
【0069】
また上記に説明したように、計算学習アルゴリズムは、刺激パラメータおよび電極構成パラメータの異なるセットを、1または複数のパラメータ方程式のためのパラメータに、相関させる関数を設計するために、使用されうる。1または複数のパラメータ方程式のためのパラメータは、活性の容積に適合される幾何形状を表す。かかる関数を設計すると、この関数は、コンピュータソフトウェア(持続性コンピュータ可読記憶媒体として具体化される)に組み込まれることができる。コンピュータソフトウェアは、そのパラメータが
入力ベクトルの関数として与えられる、1または複数のパラメータ方程式を使用して、活性の容積を決定するためのインストラクションを含む。その入力ベクトルは、刺激パラメータおよび/または電極構成パラメータを含む。
【0070】
計算環境
また本発明の或る実施形態は、方法、システムおよびコンピュータプログラム製品のブロック図を参照して、本明細書で説明された。図のブロックおよび図中のブロックの組み合わせを、コンピュータ実行可能なインストラクションによって実施することができることは、理解されるであろう。これらのコンピュータ実行可能なインストラクションは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、または他のプログラマブルデータ処理装置(または、装置および回路の組み合わせ)の1または複数のプロセッサに提供される。プロセッサを介して実行するインストラクションがブロックまたは複数のブロック中に規定された機能を実現するような機械は、製造されうる。
【0071】
また、これらのコンピュータ実行可能なインストラクションは、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置に指示して具体的な形で機能させることができるコンピュータ可読メモリ中に格納することができる。したがって、コンピュータ可読メモリ中に格納されるインストラクションは、フローチャートのブロックまたは複数のブロック中に規定された機能を実現するインストラクションを含む製造品目をもたらす。またコンピュータプログラムインストラクションは、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置にロードされ、コンピュータまたは他のプログラマブルデータ処理装置上で一連の動作工程は、実施させられる。それによって、コンピュータまたは他のプロセッサベースの装置上で実行されるインストラクションは、コンピュータ実施の工程を作り出し、それゆえ、ブロックまたは複数のブロック中に規定された機能を実現するための工程を提供する。
【0072】
この点について、図7は、コンピュータ実行可能なインストラクションを格納する、および/または実行することによって、本発明の1または複数の実施形態を実行するために用いることができるコンピュータシステム500の1例を示す。コンピュータシステム500は、1または複数の汎用ネットワークコンピュータシステム、組み込みコンピュータシステム、ルータ、スイッチ、サーバ装置、クライアント装置、様々な媒介装置/ノード、または独立型コンピュータシステムに基づき、実現されうる。さらにコンピュータシステム500は、たとえば、十分な処理能力を有するとすれば、携帯情報端末(PDA)、ノートパソコン、ポケットベルなど、様々な携帯型クライアントに基づき、実現されうる。
【0073】
コンピュータシステム500は、処理ユニット501、システムメモリ502、およびシステムバス503を含む。システムバス503は、システムメモリを処理ユニット501に結合することを含め、様々なシステム構成要素を結合する。また二重マイクロプロセッサおよび他の多重プロセッサアーキテクチャは、処理ユニット501として使用されうる。システムバス503は、メモリバスまたはメモリコントローラと、ペリフェラルバスと、様々なバスアーキテクチャのいずれをも使用するローカルバスとを含む、任意のタイプのバス構造されてもよい。システムメモリ502は、リードオンリーメモリ(ROM)504およびランダムアクセスメモリ(RAM)505を含む。基本入出力システム(BIOS)506が、コンピュータシステム500内の要素間で情報を転送するように支援する基本ルーチンを含むROM504中に、存在することができる。
【0074】
コンピュータシステム500は、たとえばリムーバブルディスク509および光ディスクドライブ510から読み出し、またはそれに書き込むために、たとえば、CD−ROMディスク511から読み出すために、または他の光媒体から読み出す、またはそれに書き
込むために、ハードディスクドライブ507、磁気ディスクドライブ508を含んでもよい。ハードディスクドライブ507、磁気ディスクドライブ508および光ディスクドライブ510はそれぞれ、ハードディスクドライブインタフェース512、磁気ディスクドライブインタフェース513および光ディスクドライブインタフェース514それぞれによって、システムバス503に接続される。これらのドライブおよびそれらの付随するコンピュータ可読媒体は、コンピュータシステム500のために、データ、データ構造、およびコンピュータ実行可能なインストラクションを不揮発性で格納する。上記のコンピュータ可読媒体の記述がハードディスク、リムーバブル磁気ディスクおよびCDを参照しているとはいえ、磁気カセット、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスクなど、コンピュータが可読の他のタイプの持続性コンピュータ可読媒体も、様々な形式で、動作環境中に使用されることができる。さらに、かかる媒体は、いずれも、本発明の1または複数の部分を実施するためのコンピュータ実行可能なインストラクションを含むことができる。用語「持続性コンピュータ可読記憶媒体」は、すべてのコンピュータ可読記憶媒体を包含し、唯一の例外が、一時的な伝播信号である。
【0075】
多くのプログラムモジュールは、オペレーティングシステム515、1または複数のアプリケーションプログラム516、他のプログラムモジュール517およびプログラムデータ518を含むドライブおよびRAM505中に格納されうる。アプリケーションプログラムおよびプログラムデータは、本明細書に示し説明するように、ニューラルネットワークを学習させる、ニューラルネットワークをもたらす、または、そうでなければ、ユーザが、ユーザインタフェースを介して、ネットワークと対話する、またはネットワークとインターフェースするのを可能にするように、プログラムされる関数および方法を含むことができる。
【0076】
ユーザは、ポインティングデバイス(たとえば、マウス、タッチスクリーン)、キーボード、マイクロフォン、ジョイスティック、ゲームパッド、スキャナなど、1または複数の入力装置520を介して、コマンドおよび情報をコンピュータシステム500に入力することができる。たとえばユーザは、入力装置520を用いて、ドメインモデルを編集または修正できる。さらに、または代替として、ユーザは、本明細書に述べるように、入力装置を介してユーザインタフェースにアクセスすることによって、所与のドメインモデルの1または複数の事例および付随するデータマネージメントツールを生成することができる。これらおよび他の入力装置520は、しばしば、システムバスに結合された対応するポートインターフェース522を通じて、処理ユニット501に接続される。しかしこれらおよび他の入力装置520は、パラレルポート、シリアルポート、またはユニバーサルシリアルバス(USB)など、他のインターフェースによって接続されてもよい。また1または複数の出力装置524(たとえば、表示器、モニタ、プリンタ、プロジェクタ、または他のタイプの表示装置)は、ビデオアダプタなどのインターフェース526を介して、システムバス503に接続される。
【0077】
コンピュータシステム500は、遠隔コンピュータ528など、1または複数の遠隔コンピュータへの論理結合を使用するネットワーク環境下で、動作することができる。遠隔コンピュータ528は、ワークステーション、コンピュータシステム、ルータ、ピアデバイス、または他の共通のネットワークノードとすることができ、通常、コンピュータシステム500に関して述べた多くの、またはすべての要素を含む。論理結合は、530で概略的に示され、ローカルエリアネットワーク(LAN)およびワイドエリアネットワーク(WAN)を含むことができる。
【0078】
コンピュータシステム500は、LANネットワーク環境下で使用されるとき、ネットワークインターフェースまたはアダプタ532を通じて、ローカルネットワークに接続されうる。コンピュータシステム500は、WANネットワーク環境下で使用されるとき、
モデムを含むことができ、またはLAN上の通信サーバに接続されうる。モデムは、内部に有する、または外付けとすることができ、適切なポートインターフェースを介して、システムバス503に接続することができる。ネットワーク環境下では、コンピュータシステム500に関連して示したアプリケーションプログラム516またはプログラムデータ518、またはその一部分は、遠隔メモリ記憶装置540中に格納することができる。
【0079】
上記に述べた事柄は、本発明の例および実施形態である。もちろん、本発明を述べる目的で、構成要素または方法論のあらゆる考えられる組み合わせを述べることは、不可能であるが、しかし、当業者のある者は、本発明の、多くのさらなる組み合わせおよび置き換えが可能であることを認められるであろう。したがって、本発明は、添付のクレームの範囲内に含まれる、そのようなすべての変更、修正および変形を包含するものと意図される。クレームでは、他に特段の規定がない限り、冠詞「1つの(a)」は、「1つまたは2つ以上の(one or more than one)」とみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11