(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734387
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】カバーを持つ工具交換装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/155 20060101AFI20150528BHJP
B23Q 3/157 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
B23Q3/155 G
B23Q3/157 C
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-217756(P2013-217756)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-77671(P2015-77671A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2014年11月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】室田 真弘
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−305663(JP,A)
【文献】
特開2010−99766(JP,A)
【文献】
特開2011−173197(JP,A)
【文献】
特開2008−229770(JP,A)
【文献】
実開平4−86137(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155−3/157
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持するためのグリップが複数設けられ、工作機械の固定部に設けられた所定の揺動中心を中心として、工作機械の主軸の上下動に伴って、工具交換位置と工具非交換位置との間を揺動動作可能なタレットを備え、
前記タレットを旋回させて、所望の工具を割り出して前記工作機械の主軸に装着された工具の交換を行う工作機械の工具交換装置であって、
前記タレットの、前記工作機械の主軸と対向しない側の面を覆う主軸反対側カバーと、
前記タレットの、前記工作機械の主軸と対向する側の面を覆う主軸側カバーと、を備え、
前記工具非交換位置において、前記主軸反対側カバーと前記主軸側カバーは隙間を空けて構成されており、
前記主軸反対側カバー及び前記主軸側カバーは、前記工具非交換位置におけるそれぞれのカバーの上端部側の上面部が、水平面に対して前記隙間から離れる方向に下がる傾斜面のみで形成されていることを特徴とする工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関し、特にタレット内部への異物の侵入を防ぐカバーを持つ工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸に取り付けられる工具を自動的に交換する工具交換装置が従来から用いられている。この工具交換装置には、作業に必要な複数の工具が予めセットされており、工作機械の主軸に取り付ける工具を、加工状態に応じて指定された工具に自動的に交換するように構成されている。
このような、工具を自動的に交換する自動工具交換装置を備えた工作機械として、特許文献1に開示されているような、工具を把持する複数のグリップを有するタレットを具備するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−99766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術は、複数の工具が装着されたタレットを有し、該タレットを割り出して主軸に装着された工具を交換するため、高速かつ的確に工具の交換を行うことができる。しかしながら、タレットにおいて、タレット前面側とタレットベースとの間は単に間を開けて結合しているのみであるため、加工中に発生する切粉や切削液が、タレットの内部に侵入するおそれがあった。
【0005】
ワークを加工する際に、切粉や切削液がタレットの内部に侵入することを防止するため、タレットにカバーを設けることがある。
図2は、従来技術のカバーを持つ工作機械の概略側面図であり、1は工作機械、2は自動工具交換装置である。自動工具交換装置2は、主軸3と、主軸3を駆動する主軸モータ5を備えており、主軸3の先端部に工具4が取り付けられている。また、主軸3にはZ軸ボールネジ10を介してZ軸モータ11が接続されており、Z軸モータ11により主軸3は上下に駆動可能とされている。さらに、工具4を交換するための部材としてタレット6を具備している。
【0006】
タレット6は、タレット6の内部の図示しない構造部に影響を及ぼさないように、正面カバー61と背面カバー62を設けており、正面カバー61は、タレット6の正面からの切粉や切削液の侵入を防ぐ役割を果たしており、背面カバー62は、背面からの切粉や切削液の侵入を防ぐ役割を果たしている。
【0007】
ここで、背面カバー62の形状によっては、その円筒状部64の上側(部位A)に切粉や切削液がたまりやすくなってしまうことがある。そして、工具4の交換をする際には、Z軸モータ11によって主軸3を上下に駆動することになるが、その際に主軸3にはカム7が設けられているため、主軸3を上下に移動する際に、カム7に従うカムフォロア8によりタレット6は揺動動作が行われ、この揺動動作の際に、背面カバー62の円筒状部64の上側(部位A)にたまった切粉や切削液が、経路Bとして示されたように、正面カバー61と背面カバー62との間の隙間65からタレット6の内部に侵入してしまい、タレット6の内部の構造部に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、工作機械の工具交換装置において、タレット内部への切粉や切削液の侵入を防ぐカバーを持つ工具交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明では、工具を保持するためのグリップが複数設けられ、
工作機械の固定部に設けられた所定の揺動中心を中心として
、工作機械の主軸の上下動に伴って、工具交換位置と工具非交換位置との間を揺動動作可能なタレットを備え、前記タレットを旋回させて、所望の工具を割り出して
前記工作機械の主軸に装着された工具の交換を行う工作機械の工具交換装置であって、前記タレットの、前記工作機械の主軸と対向しない側の面を覆う主軸反対側カバーと、前記タレットの、前記工作機械の主軸と対向する側の面を覆う主軸側カバーと、を備え、
前記工具非交換位置において、前記主軸反対側カバーと前記主軸側カバーは隙間を空けて構成されており、前記主軸反対側カバー及び前記主軸側カバーは、
前記工具非交換位置におけるそれぞれのカバーの
上端部側の上面
部が、水平面に対して前記隙間から離れる方向に下がる傾斜面のみで形成されていることを特徴とする工具交換装置が提供される。
【0010】
請求項1に係る発明では、ワークを加工する際に発生する切粉や、加工時に用いる切削液が、正面カバーと背面カバーに設けられた傾斜に沿って隙間から離れる方向に落下するため、
揺動動作時に正面カバーと背面カバーとの間の隙間からタレットの内部に侵入することを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、工作機械の工具交換装置において、タレット内部への切粉や切削液の侵入を防ぐカバーを持つ工具交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態のカバーを持つ工作機械の概略側面図である。
【
図2】従来技術のカバーを持つ工作機械の概略側面図である。
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の工作機械の概略側面図である。
図2に示された従来技術との相違点は、背面カバー62の上面部の形状であり、背面カバー62の上面部である傾斜面66が、隙間65から離れる方向に下がる傾斜を有し、背面カバー62が円錐台形状とされている。背面カバー62の上面部の形状をこのように構成することにより、ワークを加工する際に発生する切粉や、ワークを加工する際に用いる切削液は、傾斜面66に沿って正面カバー61と背面カバー62との間の隙間65とは反対側に誘導される。これにより、切粉や切削液は、正面カバー61と背面カバー62との間の隙間65に侵入することがなく、タレット6の内部に侵入してタレット6内部の図示しない構造部へ影響を与えることを防止できる。
【0014】
本実施形態においては、背面カバー62の形状として円錐台形状としたが、円錐台形状に限らず、多角錐台形状であってもよい。また、本実施形態においては、錐形状の稜線である傾斜面66は直線状としたが、直線状に限ったものではなく、曲線状であってもよく、その場合には傾斜面66の一部に隙間65から離れる方向に下がる傾斜を有していればよい。さらに、正面カバー61についても、本実施形態においては円錐台形状としているが、背面カバー62と同様に、多角錐台形状としたり、錐形状の稜線である傾斜面を曲線状としたりすることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 工作機械
2 自動工具交換装置
3 主軸
4 工具
5 主軸モータ
6 タレット
61 正面カバー
62 背面カバー
63 工具交換位置
64 (背面カバーの)円筒状部
65 隙間
66 傾斜面
7 カム
8 カムフォロア
9 タレットアーム
10 Z軸ボールネジ
11 Z軸モータ