【実施例1】
【0177】
方法及び材料
【0178】
変調示差走査熱量測定(MDSC)及び示差走査熱量測定(DSC)
【0179】
化合物のアモルファス形態及びスプレードライ分散体のガラス遷移温度の試験に変調示差走査熱量測定(MDSC)を用いた。示差走査熱量測定(DSC)を、結晶物質の融点を決定するため及び異なる多形を区別するために用いた。データは、TA DSC Q2000 示差走査熱量測定計(TA Instruments、New Castle、DE)を用いて収集した。装置はインジウムで較正した。約1−5mgの試料をアルミニウム製気密性パンに秤量し、1個の孔を有する蓋を圧着した。MDSCについては、60秒ごとに+/−1℃で調節しながら2℃/分での加熱速度で、−20℃ないし220℃で試料を走査した。DSCについては、10℃/分の加熱速度で、25℃ないし220℃で試料を走査した。データをThermal Advantage Q Series(登録商標)ソフトウェア(version:2.7.0.380)で収集し、Universal Analysisソフトウェア(version:4.4A、build:4.4.0.5)(TA Instruments、New Castle、DE)で分析した。
【0180】
XRPD(粉末X線回折)
【0181】
粉末X線回折を用いて、これまで製造したロットの物理的形態を特徴づけ、同定された多形を特徴付けた。化合物のXRPDデータは、PANalytical X’pert Pro粉末X線回折計(Almelo、the Netherlands)で収集した。XRPDパターンは、室温で銅照射を用いて記録した(1.54060Å)。X線を45kV、40mAにおいてニッケルKβ減縮フィルタを有するCu封入管を用いて発生させた。入射ビーム光学は、試料及び分散光側への一定照射波長を確実にするため、種々の発散スリットを含む;走査モードで測定する2.12°2シータの有効長で、高速直線固相検出器を用いた。粉末試料をゼロバックグラウンドシリコンホルダの意図した領
域に充填し、良好な統計値を達成するためにスピニングを行った。刻み幅0.017°及び走査のステップ時間15.5秒で対称的走査を4−40°2シータで行った。データ収集ソフトは、X’pert Data Collector(version 2.2e)である。データ分析ソフトは、X’pert Data Viewer(version 1.2d)又はX’pert Highscore(version:2.2c)である。
【0182】
熱重量分析(TGA)
【0183】
特徴付けしたロットの残存溶媒を調べるためにTGAを用い、試料の分解が起こった温度を同定した。TGAデータはTA Q500 Thermogravimetric Analyzer(TA Instruments、New Castle、DE)によって収集した。約2−5mgの重量の試料を、加熱速度10℃/分で25℃ないし300℃でスキャンした。データはThermal Advantage Q Series(登録商標)ソフトウェア(version 2.5.0.255)で収集し、Universal Analysisソフトウェア(version 4.4A、build 4.4.0.5)(TA Instruments、New Castle、DE)で分析した。
【0184】
化合物1のフォームA単結晶構造決定
【0185】
回折データを封入管Cu Kα線源及びApexII CCD検出器を備えたBruker ApexII回折計で得た。構造をSHELXプログラム(Sheldrick,G.M.,Acta Cryst.、(2008)A64、112-122)を用いて解析し、精密化した。強度統計及び消滅則から、構造を解析し、C2空間群に精密化した。絶対配置を異常回折を用いて決定した。0.00(18)に精密化されたフラックのパラメータは、本モデルが正しいエナンチオマー[(R)]を表すことを示唆する。
【0186】
固相NMR
【0187】
固相NMRは、Bruker−Biospin 4mM HFXプローブを備えたBruker−Biospin 400 MHz広口径スペクトロメータで行った。試料を4mm ZrO
2ロータに充填し、12.5kHzの回転速度において、マジック角スピニング(MAS)条件で回転させた。
13C交差分極(CP)MAS試験において適切なリサイクル遅延を設定するために、最初にプロトン緩和時間を
1H MAS T
1飽和回復緩和試験を用いて行った。炭素CPMAS試験のCP接触時間を2秒とした。直線的傾斜(50%ないし100%)のCPプロトンパルスを用いた。ハルトマン−ハーン・マッチを外部標準試料(グリシン)で最適化した。フッ素MASスペクトルをプロトンデカップリングで記録した。TPPM15デカップリング配列を、
13C及び
19Fの両方の収集において磁場強度約100kHzで行った。
【0188】
ビトライド(登録商標)(水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム[又はNaAlH
2(OCH
2CH
2OCH
3)
2]、65wgt%トルエン溶液)をAldrich Chemicalsから購入した。
【0189】
2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボン酸Saltigo(Lanxess Corporationの関連会社)から購入した。
【0190】
化合物の構造を正確に表現していない可能性のある化合物の名前が本明細書のどこかにあった場合、構造が名前よりも優先的であり、支配的である。
【0191】
化合物1の合成
【0192】
酸部分
【0193】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−メタノールの合成
【化7】
【0194】
市販の2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボン酸(1.0当量)をトルエン(10体積)中でスラリー化する。温度を15−25℃に保ち、ビトライド(登録商標)(2当量)を滴下漏斗で滴下する。添加終了後、40℃に昇温して2時間攪拌し、続いて10%(w/w)NaOH水溶液(4.0当量)を、温度を40−50℃に保ち、滴下漏斗で注意深く加える。さらに30分攪拌後、40℃で層を分離させる。有機相を20℃に冷却し、水(2x1.5体積)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮し、粗(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−メタノールを得て、それを直接次工程に用いる。
【0195】
5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソールの合成
【化8】
【0196】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−メタノール(1.0当量)をMTBE(5体積)に溶解させる。触媒量のDMAP(1mol%)を加え、SOCl
2(1.2当量)を滴下漏斗で加える。SOCl
2は、反応容器中の温度が15−25℃に維持される速度で加える。温度を1時間かけて30℃に上げ、続いて20℃に冷やし、温度を30℃未満に維持しながら水(4体積)を滴下漏斗で加える。さらに30分攪拌した後、層を分離させる。有機層を攪拌し、10%(w/v)NaOH水溶液(4.4体積)を加える。15ないし20分攪拌後、層を分離させる。続いて有機相を乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮し、粗5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソールを得て、それを直接次工程に用いる。
【0197】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリル
【化9】
【0198】
5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール(1当量)のDMSO(1.25体積)溶液に、温度を30−40℃に維持しながら、NaCN(1.4当量)のDMSO(3体積)中のスラリーを加える。混合物を1時間攪拌し、続いて水(6体積)に続き、MTBE(4体積)を加える。30分間攪拌後、層を分離させる。水層をMTBE(1.8体積)で抽出する。合わせた有機層を水(1.8体積)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、濃縮し、粗(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリル(95%)を得て、それを直接次の工程に用いる。
1H NMR(500MHz、DMSO)δ 7.44(br s、1H)、7.43(d、J=8.4Hz、1H)、7.22(dd、J=8.2、1.8Hz、1H)、4.07(s、2H).
【0199】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−1−エチルアセテート−アセトニトリルの合成
【化10】
【0200】
反応容器に窒素気流を通し、900mLのトルエンを加えた。窒素散布を16時間以上行い、溶媒を脱気した。続いて反応容器に、Na
3PO
4(155.7g、949.5mmol)、続いてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(7.28 g、12.66mmol)を加えた。10%w/w tert−ブチルホスフィン(51.23g、25.32mmol)のヘキサン溶液を、23℃において窒素で浄化した添加漏斗で10分かけて加えた。混合物を50分攪拌し、5−ブロモ−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール(75 g、316.5mmol)を1分かけて加えた。さらに50分攪拌した後、混合物にシアノ酢酸エチル(71.6 g、633.0mmol)を5分かけて加え、続いて水(4.5 mL)を一度に加えた。混合物を70℃に40分かけて加熱し、HPLCで1−2時間ごとに反応物から生成物への変換率を分析した。完全な変換が観測された後(典型的には5−8時間後に100%変換)、混合物を20−25℃に冷却し、セライトパッドで濾過した。セライトパッドをトルエン(2x450mL)で濯ぎ、合わせた有機層を真空下、60−65℃で300mLまで濃縮した。濃縮液に225mLのDMSOを加え、70−80℃で溶媒の活発な蒸発が止むまで減圧濃縮した。溶液を20−25℃に冷却し、工程2の準備のため900mLまでDMSOで希釈した。
1H NMR(500MHz、CDCl
3)δ 7.16−7.10(m、2H)、7.03(d、J=8.2Hz、1H)、4.63(s、1H)、4.19(m、2H)、1.23(t、J=7.1Hz、3H).
【0201】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリルの合成
【化11】
【0202】
上の(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−1−エチルアセテート−アセトニトリルのDMSO溶液に、<40℃の内部温度を維持しながら3N HCl(617.3mL、1.85mol)を20分かけて加えた。続いて、混合物を1時間かけて75℃まで加熱し、HPLCで1−2時間ごとに変換%を分析した。>99%の変換が観測された後(典型的には5−6時間後)、反応液を20−25℃に冷却し、MTBE(2x525mL)で抽出し、抽出においては完全に相を分離させるために十分な時間をとった。合わせた有機抽出物を5% NaCl(2x375mL)で洗浄した。続いて溶液を、冷却したレシーバーフラスコを備えた1.5−2.5Torrの真空蒸留を行うのに適切な容器に移した。溶液を<60℃で減圧濃縮し、溶媒を除去した。続いて、生成した油状物から(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリルを125−130℃(オーブン温度)で1.5−2.0Torrで得た。(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリルを、5−ブロモ−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール(2工程)から66%収率で透明な油状物として、HPLC純度91.5%AUC(w/wアッセイで95%に相当する)で得た。
1H NMR(500MHz、DMSO)δ 7.44(br s、1H)、7.43(d、J=8.4Hz、1H)、7.22(dd、J=8.2、1.8Hz、1H)、4.07(s、2H).
【0203】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルの合成
【化12】
【0204】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリル(1.0当量)、50重量% KOH水溶液(5.0当量)、1−ブロモ−2−クロロエタン(1.5当量)及びOct
4NBr(0.02当量)を70℃で1時間攪拌した。反応混合物を冷却し、続いてMTBE及び水で後処理した。有機相を水及び食塩水で洗浄し、続いて溶媒を除去して(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルを得た。
1H NMR(500MHz、DMSO)δ 7.43(d、J=8.4Hz、1H)、7.40(d、J=1.9Hz、1H)、7.30(dd、J=8.4、1.9Hz、1H)、1.75(m、2H)、1.53(m、2H).
【0205】
1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸の合成
【化13】
【0206】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルを6M NaOH(8当量)のエタノール(5体積)溶液を用いて80℃で終夜、加水分解した。混合物を室温に冷却し、エタノールを減圧下蒸発させた。残渣を水及びMTBEに取り込み、1M HClを加えて層を分離させた。続いてMTBE層をジシクロヘキシルアミン(0.97当量)で処置した。スラリーを0℃に冷却し、濾過し、ヘプタンで洗浄し、対応するDCHA塩を得た。塩をMTBE及び10%クエン酸に取り込み、すべての固体が溶解するまで攪拌した。層を分離し、MTBE層を水及び食塩水で洗浄した。溶媒をヘプタンに交換し、続いて濾過し、50℃で終夜真空オーブンで乾燥させ、1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸を得た。
ESI−MS m/z 計算値242.04、実測値241.58(M+1)+;
1H NMR(500MHz、DMSO)δ 12.40(s、1H)、7.40(d、J=1.6Hz、1H)、7.30(d、J=8.3Hz、1H)、7.17(dd、J=8.3、1.7Hz、1H)、1.46(m、2H)、1.17(m、2H).
【0207】
アミン部分
【0208】
2−ブロモ−5−フルオロ−4−ニトロアニリンの合成
【化14】
フラスコに3−フルオロ−4−ニトロアニリン(1.0当量)を加え、続いて酢酸エチル(10体積)を加え、攪拌してすべての固体を溶解させた。N−ブロモコハク酸イミド(1.0当量)を内部温度が22℃を維持するよう、少しずつ加えた。反応終了後、反応混合物を真空でロータリーエバポレータによって濃縮した。残渣を蒸留水(5体積)にスラリー化してコハク酸イミドを溶解し、除去した(コハク酸イミドは、水による後処理工程でも除去できる)。水をデカントし、固体を2−プロパノール(5体積)で終夜スラリー化した。生成したスラリーを濾過し、湿潤したケーキを2−プロパノールで洗浄し、N
2を通気させて、重量が一定になるまで、真空下50℃で終夜乾燥した。黄色がかった褐色の固体を単離した(50%収率、97.5%AUC)。他の不純物は、ブロモ−位置異性体(1.4%AUC)及びジ−ブロモ付加体(1.1%AUC)であった。
1H NMR(500MHz、DMSO)δ8.19(1 H、d、J=8.1Hz)、7.06(br. s、2 H)、6.64(d、1 H、J=14.3Hz).
【0209】
ベンジルグリコール化−4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩の合成
【化15】
【0210】
N
2下、完全に乾燥させたフラスコに以下を添加した:活性化粉末4Åモレキュラー・シーブス(2−ブロモ−5−フルオロ−4−ニトロアニリンに対して50重量%)、2−ブロモ−5−フルオロ−4−ニトロアニリン(1.0当量)、過塩素酸亜鉛二水和物(20mol%)及びトルエン(8体積)。混合物を室温で、で30分以下で攪拌した。最後に、(R)−ベンジルグリシジルエーテル(2.0当量)のトルエン(2体積)溶液を安定した気流の中で加えた。反応混合物は、80℃(内部温度)に加熱し、約7時間又は2−ブロモ−5−フルオロ−4−ニトロアニリン<5%AUCとなるまで攪拌した。
【0211】
反応液を室温に冷まし、セライト(50重量%)を加え、続いて酢酸エチル(10体積)を加えた。生じた混合物を濾過してセライトを除去し、シーブスを酢酸エチル(2体積)で洗浄した。濾液を塩化アンモニウム溶液(4体積、20%w/v)で洗浄した。有機層を炭酸水素ナトリウム溶液(4体積x2.5%w/v)で洗浄した。有機層を真空下ロータリーエバポレータで濃縮した。生成したスラリーを酢酸イソプロピル(10体積)に溶解させ、この溶液をブチハイドロゲネータ(Buchi hydrogenator)に移した。
【0212】
ハイドロゲネータに5重量% Pt(S)/C(1.5mol%)を加え、N
2下30℃(内部温度)で混合物を攪拌した。反応混合物に、N
2、続いて水素を通気した。ハイドロゲネータの圧力を1Barの水素に調節し、混合物を急速に攪拌した(>1200rpm)。反応終了後、触媒をセライトパッドでろ過し、ジクロロメタン(10体積)で洗浄した。濾液を真空下濃縮した。残った酢酸イソプロピルをジクロロメタン(2体積)で回収し、ロータリーエバポレータで濃縮し乾燥した。
【0213】
生じた残渣をジクロロメタン(10体積)に溶解させた。p−トルエンスルホン酸一水和物(1.2当量)を加え終夜攪拌した。生成物を濾過し、ジクロロメタン(2体積)で洗浄し、吸引乾燥した。湿潤したケーキを乾燥トレイに移し、真空オーブンに移し、45℃のN
2気流で定常質量となるまで乾燥した。ベンジルグリコール化−4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩は、オフホワイトの固体として単離された。
【0214】
キラル純度は、>97%eeであると決定された。
【0215】
(3−クロロ−3−メチルブチ−1−イニル)トリメチルシランの合成
【化16】
【0216】
プロパルギルアルコール(1.0当量)を容器に加えた。塩酸水溶液(37%、3.75体積)を加え、攪拌を開始した。固体のアルコールの溶解中、緩やかな吸熱(5−6℃)が見られる。生じた混合物を終夜(1時間)攪拌したところ、ゆっくりと濃赤色となった。30Lのジャケット付き容器に水(5体積)を加え、続いて10℃に冷却する。反応混合物の内部温度を25℃未満に維持しながら、吸引によりゆっくりと水の中に移す。ヘキサン(3体積)を加え、生じた混合物を0.5時間攪拌する。相を安定させ、水相(pH<1)を排水し、廃棄した。有機相をロータリーエバポレータを用いて真空下濃縮し、生成物を赤色の油状物として得た。
【0217】
(4−(ベンジルオキシ)−3,3−ジメチルブチ−1−イニル)トリメチルシランの合成
【化17】
【0218】
方法A
【0219】
この章におけるすべての当量及び容量の記載は、250g反応に基づく。削り屑状マグネシウム(69.5g、2.86mol、2.0当量)を3Lの4首反応容器に加え、窒素下、マグネティックスターラで0.5時間攪拌した。反応容器を氷水浴に浸した。塩化プロパルギル(250g、1.43mol、1.0当量)のTHF(1.8L、7.2体積)溶液を、攪拌しながら、最初の発熱(〜10℃)が見られるまでゆっくりと反応容器に加えた。グリニャール試薬形成を、
1H NMR分光法を用いてIPCにより確認した。発熱が弱まると、残りの溶液をバッチ温度を<15℃に維持しながらゆっくりと加えた。添加に〜3.5時間要した。生成した暗緑色の混合物を2Lのキャップ付きのボトルにデカントした。
【0220】
この章におけるすべての当量及び容量の記載は、500g反応に基づく。22L反応容器に、ベンジルクロロメチルエーテル(95%、375 g、2.31mol、0.8当量)のTHF(1.5L、3体積)溶液を加えた。反応容器を氷水浴で冷却した。先に調製した4つのうち2つのグリニャール試薬バッチを合わせ、続いて、バッチ温度を25℃未満に維持しながら、ゆっくりとベンジルクロロメチルエーテル溶液に滴下漏斗を用いて加えた。反応混合物を終夜攪拌した(16時間)。
【0221】
この章におけるすべての当量及び容量の記載は、1kg反応に基づく。15%塩化アンモニウム溶液を30Lジャケット付き反応容器で調製した(8.5kg水中、1.5kg、10体積)。溶液を5℃に冷却した。上述の2つのグリニヤール反応混合物を合わせ、続いて排気管(header vessel)を用いて塩化アンモニウム溶液中に移した。このクエンチにおいて発熱が見られたので、25℃未満の内部温度を維持する速さで行った。添加が終わると、容器のジャケット温度を25℃に設定した。ヘキサン(8L、8体積)を加え、混合物を0.5時間攪拌した。相が安定した後、水相(pH9)を排水し、廃棄した。残った有機相を水(2L、2体積)で洗浄した。有機相を22Lロータリーエバポレータを用いて真空下濃縮し、オレンジ色の油状物として粗生成物を得た。
【0222】
方法B
【0223】
削り屑状マグネシウム(106g、4.35mol、1.0当量)を22L反応容器に加え、続いてTHF(760mL、1体積)に懸濁させた。容器を氷水浴で冷却し、バッチ温度が2℃になるようにした。塩化プロパルギル(760g、4.35mol、1.0当量)のTHF(4.5L、6体積)溶液をゆっくりと容器に加えた。
100mLを加えた後、添加をやめ、グリニャール反応が開始したことを示す、13℃の発熱が観察されるまで混合物を攪拌した。発熱が弱まると、<20℃のバッチ温度を維持しながらさらに塩化プロパルギル溶液500mLをゆっくり加えた。グリニャール試薬の形成を
1H NMR分光法を用いてIPCにより確認した。残りの塩化プロパルギル溶液を<20℃のバッチ温度を維持するようにゆっくりと加えた。添加は、〜1.5時間要した。生成した濃緑色の溶液を0.5時間攪拌した。グリニャール試薬形成を
1H NMR分光法を用いてIPCにより確認した。非希釈のベンジルクロロメチルエーテルを反応容器の滴下漏斗に加え、続いて25℃未満のバッチ温度を維持しながら、反応容器に滴下した。添加に1.0時間要した。反応混合物を終夜攪拌した。方法Aにおけるのと同じ方法および物質の相対量を用いて、水による後処理及び濃縮を行うことにより、オレンジの油状物として生成物を得た。
【0224】
4−ベンジルオキシ−3,3−ジメチルブチ−1−インの合成
【化18】
【0225】
30Lジャケット付き反応容器にメタノール(6体積)を加え、続いて5℃に冷却した。水酸化カリウム(85%、1.3当量)を反応容器に加えた。水酸化カリウムが溶解すると15−20℃の発熱が見られた。ジャケット温度を25℃に設定した。4−ベンジルオキシ−3,3−ジメチル−1−トリメチルシリルブチ−1−イン(1.0当量)のメタノール(2体積)溶液を加え、生じた混合物を、HPLCでモニターして反応が終了するまで攪拌した。25℃での典型的な反応時間は3−4時間である。反応混合物を水(8体積)で希釈し、続いて0.5時間攪拌した。ヘキサン(6体積)を加え、生じた混合物を0.5時間攪拌した。相を安定させ、続いて水層(pH10−11)を排水し、棄てた廃棄した。有機相をKOH(85%、0.4当量)の水溶液(8体積)、続いて水(8体積)で洗浄した。続いて有機相をロータリーエバポレータを用いて濃縮し、表題物質を黄−橙色の油状物として得た。この物質の典型的な純度は、当初は単一の不純物が存在して80%の範囲にある。
1H NMR(400MHz、C
6D
6)δ7.28(d、2 H、J=7.4Hz)、7.18(t、2 H、J=7.2Hz)、7.10(d、1H、J=7.2Hz)、4.35(s、2 H)、3.24(s、2 H)、1.91(s、1 H)、1.25(s、6 H).
【0226】
ベンジルグリコール化4−アミノ−2−(4−ベンジルオキシ−3,3−ジメチルブチ−1−イニル)−5−フルオロアニリンの合成
【化19】
【0227】
ベンジルグリコール化4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩の固体をEtOAc(5体積)及び飽和NaHCO
3溶液(5体積)中で透明な有機層が得られるまで攪拌し、遊離塩基にした。生成した層を分離し、有機層を飽和NaHCO3溶液(5体積)に続き食塩水で洗浄し、真空下濃縮し、ベンジルグリコール化4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩を油状物として得た。
【0228】
続いて、フラスコにベンジルグリコール化4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩(遊離塩基、1.0当量)、Pd(OAc)(4.0mol%)、dppb(6.0mol%)及び粉末状K
2CO
3(3.0当量)を加え、アセトニトリル(6体積)と共に室温で攪拌した。生成した反応混合物を、約30分N
2で排気しながらバブリングして脱気した。続いて、アセトニトリル(2体積)に溶解させた4−ベンジルオキシ−3,3−ジメチルブチ−1−イン(1.1当量)を速い気流で加え、80℃に加熱し、4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩が完全に消失するまで攪拌した。反応スラリーを室温に冷却し、セライトパッドで濾過しアセトニトリル(2体積)で洗浄した。濾液を真空下濃縮し、残渣を再度EtOAc(6体積)に溶解した。有機層をNH
4Cl溶液(20% w/v、4体積)で2回及び食塩水(6体積)で洗浄した。生成した有機層を濃縮し、褐色の油状物を得て、それをそのまま次の反応に用いた。
【0229】
N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドールの合成
【化20】
【0230】
油状の粗ベンジルグリコール化4−アミノ−2−(4−ベンジルオキシ−3,3−ジメチルブチ−1−イニル)−5−フルオロアニリンをアセトニトリル(6体積)に溶解し、(MeCN)
2PdCl
2(15mol%)を室温で加えた。生じた混合物を、約30分N
2で排気しながら脱気した。続いて反応混合物をN
2雰囲気下、80℃で終夜攪拌した。反応混合物を室温に冷まし、セライトパッドで濾過し、ケーキをアセトニトリル(1体積)で洗浄した。生成した濾液を真空下濃縮し、再度EtOAc(5体積)に溶解させた。Deloxane−II THP(N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドールの理論上の収量に基づき5重量%)を加え、室温で終夜攪拌した。続いて混合物をシリカのパッドで濾過し(2.5インチの深さ、6インチの直径のフィルタ)、EtOAc(4体積)で洗浄した。濾液を濃縮し、暗褐色残渣を得て、それをそのまま次の反応に用いた。
【0231】
粗N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドールの再精製:
【0232】
粗N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドールをジクロロメタン(〜1.5体積)に溶解し、シリカパッドで最初30%EtOAc/ヘプタンで濾過し、不純物を棄てた。続いてシリカパッドを50%EtOAc/ヘプタンで、濾液に薄い色が付くまで洗浄し、N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドールを単離した。この濾液を真空下濃縮し、褐色の油状物を得て、それを真空下室温で静置して結晶化させた。
1H NMR (400MHz、DMSO)δ 7.38−7.34(m、4 H)、7.32−7.23(m、6 H)、7.21(d、1 H、J=12.8Hz)、6.77(d、1H、J=9.0Hz)、6.06(s、1 H)、5.13(d、1H、J=4.9Hz)、4.54(s、2 H)、4.46(br. s、2 H)、4.45(s、2 H)、4.33(d、1 H、J=12.4Hz)、4.09−4.04(m、2 H)、3.63(d、1H、J=9.2Hz)、3.56(d、1H、J=9.2Hz)、3.49(dd、1H、J=9.8、4.4Hz)、3.43(dd、1H、J=9.8、5.7Hz)、1.40(s、6 H).
【0233】
化合物1の合成
【0234】
ベンジル保護された化合物1の合成
【化21】
【0235】
1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸(1.3当量)をトルエン(1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸に基づき2.5体積)にスラリー化し、混合物を60℃に加熱した。SOCl
2(1.7当量)を滴下漏斗で加えた。生じた混合物を2時間攪拌した。トルエン及び過量のSOCl
2をロータリーエバポレータで留去した。さらにトルエン(1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸に基づき2.5体積)を加え、再度留去した。粗酸塩化物をジクロロメタン(2体積)に溶解させ、0−3℃(内部温度)に保ち、滴下漏斗で、N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドール(1.0当量)及びトリエチルアミン(2.0当量)のジクロロメタン(7体積)中の混合物に滴下した。生じた混合物を0℃で4時間攪拌し、続いて終夜室温に戻した。反応混合物に蒸留水(5体積)を加えて30分以上攪拌し、層を分離した。有機相を20重量% K
2CO
3(4体積x2)、続いて食塩水(4体積)で洗浄し、濃縮し、粗ベンジル保護化合物1を濃い褐色の油状物として得て、シリカパッド濾過を使用して
更に精製した。
【0236】
シリカゲルパッド濾過:活性炭Darco−G(ベンジル保護化合物1の理論上の収量に基づき10重量%)の存在下、粗ベンジル保護化合物1を酢酸エチル(3体積)に溶解し、室温で終夜攪拌した。この混合物にヘプタン(3体積)を加え、シリカゲルパッド(粗ベンジル保護化合物1の2x重量)で濾過した。シリカゲルパッドを酢酸エチル/ヘプタン(1:1、6体積)で濾液にほとんど色がつかなくなるまで洗浄した。濾液を真空下濃縮し、ベンジル保護化合物1を粘性のある赤褐色の油状物として得て、直接次の反応に用いた。
【0237】
再精製:ベンジル保護化合物1を再度ジクロロメタン(ベンジル保護化合物1の理論上の収量に基づき1体積)に溶解し、シリカゲルパッド(粗ベンジル保護化合物1の2x重量)に載せた。シリカパッドをジクロロメタン(ベンジル保護化合物1の理論上の収量に基づき2体積)で洗浄し、濾液を棄てた。シリカパッドを30% 酢酸エチル/ヘプタン(5体積)で洗浄し、濾液を真空で濃縮し、ベンジル保護化合物1を粘性のある赤橙油状物として得て、次の工程に直接用いた。
【0238】
化合物1の合成
【化22】
【0239】
方法A
【0240】
20L オートクレーブに3回、窒素ガスを通気し、続いて、パラジウム炭素(Evonik E 101 NN/W、5% Pd、60% wet、200 g、0.075mol、0.04当量)を加えた。オートクレーブに窒素を3回通気した。粗ベンジル保護化合物1(1.3kg、〜1.9mol)のTHF(8L、6体積)溶液をオートクレーブに、吸引によって加えた。容器に蓋をし、続いて、3回窒素ガスを通気した。穏やかな攪拌下、容器に3回水素ガスを通気し、窒素で希釈することにより大気中に排気した。オートクレーブを水素で加圧して3Barとし、攪拌速度を800rpmとした。急速な水素取り込みが観測された(溶解)。取り込みが弱まると、容器を50℃に加熱した。
【0241】
安全性のため、温度調節器は実働日ごとの終わりには切った。容器を水素で4Barとし、続いて水素タンクから離した。
【0242】
丸2日間の反応後、さらなるPd/C(60g、0.023mol、0.01当量)を反応混合物に加えた。これは窒素ガスを3回通気し、続いて触媒を、固体添加口を通じて加えることにより行った。前のとおりの反応を再開した。丸4日後、反応は、HPLCにより出発物質だけでなく、モノベンジル中間体に対応するピークもが消失したため完了したとみなした。
【0243】
反応混合物をセライトパッドにより濾過した。容器及びフィルタケーキをTHF(2L、1.5体積)で洗浄した。続いてセライトパッドを水で湿らせ、ケーキを適宜棄てた。合わせた濾液及びTHF洗浄液を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮し、粗生成物を黒色油状物1kgとして得た。
【0244】
以下の精製におけるすべての当量および体積の記載は、粗生成物1kgに基づく。粗黒色油状物を1:1 酢酸エチル−ヘプタンに溶解した。混合物を酢酸エチル−ヘプタンで飽和させたシリカゲル(1.5kg、1.5重量.当量)を加えた焼結漏斗に載せた。シリカパッドを、まず1:1 酢酸エチル−ヘプタン(6L、6体積)、続いて純酢酸エチル(14L、14体積)で流した。溶出液は4フラクション集め、HPLCで分析した。
【0245】
以下の精製におけるすべての当量および体積の記載は、粗生成物0.6kgに基づく。フラクション3をロータリーエバポレーションで濃縮し、褐色泡状物質(600g)を得て、続いてMTBE(1.8L、3体積)に再度溶解させた。暗褐色の溶液を終夜、周囲温度で攪拌し、その間に結晶化が起こった。ヘプタン(55mL、0.1体積)を加え、混合物を終夜攪拌した。混合物をブフナー漏斗を用いて濾過し、フィルタケーキを3:1 MTBE−ヘプタン(900mL、1.5体積)で洗浄した。フィルタケーキは1時間空気乾燥し、続いて周囲温度で16時間真空乾燥させ、VXc−661 253gをオフホワイトの固体として得た。
【0246】
以下の精製におけるすべての当量および体積の記載は、粗生成物1.4kgに基づく。上記のシリカゲル濾過したフラクション2及び3及び前述の反応により得られた物質を合わせて濃縮し、1.4kgの黒色の油状物を得た。混合物を上述したとおり再度シリカゲル濾過し(シリカゲル1.5 kg、3.5L、2.3体積の1:1 酢酸エチル−ヘプタン、続いて9L、6体積の純酢酸エチルで溶出)、濃縮して、淡褐色の泡状固体を得た(390g)。
【0247】
以下の精製におけるすべての当量および体積の記載は、粗生成物390gに基づく。淡褐色の固体はMTBEに不溶であったため、メタノールに溶解させた(1.2L、3体積)。長距離蒸留塔(distillation head)を備えた4L Morton反応器を用いて混合物を2体積に蒸留し、戻した。MTBE(1.2L、3体積)を加え、混合物を蒸留して2体積に戻した。2回目のMTBE(1.6L、4体積)を加え、蒸留して2体積に戻した。3回目のMTBE(1.2L、3体積)を加え、蒸留して3体積に戻した。蒸留物をGCで分析したところ、〜6%のメタノールを含むことを示した。温度調節器を48℃に設定した(MTBE−メタノール共沸化合物の沸点である52℃よりも低い)。混合物を20℃に2時間以上かけて冷却し、その間に比較的速い結晶化が起こった。混合物を2時間攪拌した後、ヘプタン(20mL、0.05体積)を加え、混合物を終夜(16時間)攪拌した。混合物をブフナー漏斗を用いて濾過し、フィルタケーキを3:1 MTBE−ヘプタン(800mL、2体積)で洗浄した。フィルタケーキを1時間空気乾燥し、続いて真空下周囲温度で16時間乾燥し、化合物1 130gをオフホワイトの固体として得た。
【0248】
方法B
【0249】
ベンジル保護化合物1をTHF(3体積)に溶解させ、残存溶媒を除去した。ベンジル保護化合物1を再びTHF(4体積)に溶解させ、5 重量% Pd/C(2.5mol%、60%wet、Degussa E5 E101 NN/W)を含有するハイドロゲネータに加えた。反応の内部温度を50℃とし、N
2(x5)に続き水素(x3)気流を通気した。ハイドロゲネータの圧力を水素で3Barに調節し、混合物を急速に攪拌した(>1100rpm)。反応終了時、触媒をセライトパッドで濾過し、THF(1体積)で洗浄した。濾液を真空下濃縮し、褐色の泡状残渣を得た。生じた残渣をMTBE(5体積)に溶解させ、0.5N HCl溶液(2体積)および蒸留水(1体積)を加えた。混合物を30分以上攪拌し、生成した層を分離した。有機相10重量%K
2CO
3溶液(2体積x2)、続いて食塩水で洗浄した。有機層をシリカゲル(25重量%)、DELOXAN−THP II(5重量%、75%wet)、及びNa
2SO
4を含有するフラスコに加え、終夜攪拌した。生じた混合物をセライトパッドで濾過し、10%THF/MTBE(3体積)で洗浄した。濾液を真空下濃縮し、粗化合物1を薄い褐色の泡状物質として得た。
【0250】
母液からの化合物1の回収:オプションA
【0251】
シリカゲルパッド濾過:母液を真空下濃縮して褐色泡状物質を得て、ジクロロメタン(2体積)に溶解させ、シリカのパッド(粗化合物1の3x重量)で濾過した。シリカパッドを酢酸エチル/ヘプタン(1:1、13体積)で洗浄し、濾液を棄てた。シリカパッドを10%THF/酢酸エチル(10体積)で洗浄し、濾液を真空下濃縮し、化合物1を薄い褐色の泡状物質として得た。引き続き上述の結晶化工程を行い、残存化合物1を単離した。
【0252】
母液からの化合物1の回収:オプションB
【0253】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー:シリカゲルクロマトグラフィー(50% 酢酸エチル/ヘキサンないし100%酢酸エチル)の後、所望の化合物を薄い褐色の泡状物質として単離した。引き続き上述の結晶化工程を行い、残存化合物1を単離した。
【0254】
図1は化合物1のX線結晶回折パターンを示す。化合物1のDSCトレースを
図2に示す。
図2のDSCトレースは、化合物1が純粋な固相でないことを示す。化合物1のフォームAと比較して、余分なピークが119℃に存在する化合物1のフォームA(
図6参照)。化合物1のTGAトレースを
図3に示す。
【0255】
化合物1はまた、ここに参照として引用する米国特許出願公開第20090131492号に開示されたいくつかの合成経路の1つを用いて調製することもできる。
【0256】
化合物1のフォームAの合成
【0257】
スラリー法
【0258】
EtOAc、MTBE、酢酸イソプロピル、又はDCMについては、化合物1約40mgを、上述のいずれかの溶媒1−2mLに加えた。スラリーを室温で24時間ないし2週間攪拌し、化合物1のフォームAを懸濁液の遠心分離(フィルタ付き)によって得た。
図5は、溶媒としてDCMを用いて、この方法により得た化合物1のフォームAのXRPDパターンを記載する。
【0259】
EtOH/水溶液については、化合物1約40mgを3個のバイアルに加えた。第1のバイアルにはEtOH 1.35mL及び水0.15mLを加えた。第2のバイアルにはEtOH 0.75mL及び水0.75mLを加えた。第3のバイアルにはEtOH 0.15mL及び水1.35mLを加えた。3個のすべてのバイアルを室温で24時間攪拌した。続いて各懸濁液を別々に遠心分離し(フィルタ付き)、化合物1のフォームAを得た。
【0260】
イソプロピルアルコール/水溶液については、化合物1約40mgを3個のバイアルに加えた。第1のバイアルには、イソプロピルアルコール1.35mL及び水0.15mLを加えた。第2のバイアルには、イソプロピルアルコール0.75mL及び水0.75mLを加えた。第3のバイアルには、イソプロピルアルコール0.15mL及び水1.35mLを加えた。3個のすべてのバイアルを室温で24時間攪拌した。続いて各懸濁液を別々に遠心分離し(フィルタ付き)、化合物1のフォームAを得た。
【0261】
メタノール/水溶液については、化合物1約40mgをバイアルに加えた。メタノール0.5mL及び水1mLを加え、懸濁液を室温で24時間攪拌した。懸濁液を遠心分離し(フィルタ付き)、化合物1のフォームAを得た。
【0262】
アセトニトリルについては、化合物1約50mgをアセトニトリル2.0mLの入ったバイアルに加えた。懸濁液を、室温で24時間攪拌し、化合物1のフォームAを遠心分離(フィルタ付き)により得た。
【0263】
アセトニトリル/水溶液については、化合物1約50mgをアセトニトリル2.5mLに加え、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、バイアルに1mL残した。水2.25mLを加えて懸濁液とした。懸濁液を室温で24時間攪拌し、化合物1のフォームAを遠心分離(フィルタ付き)により得た。
【0264】
低速蒸発法
【0265】
化合物1約55mgをアセトン0.5mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、0.2mLをバイアルに取った。バイアルを1個の穴を開けたパラフィルムでカバーし、静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
【0266】
高速蒸発法
【0267】
イソプロピルアルコールについては、化合物1約43mgをイソプロピルアルコール2.1mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液をバイアルに濾過して入れ、カバーなしに静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過により集めた。
【0268】
メタノールについては、化合物1約58mgをメタノール0.5mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、0.2mLをカバーしないバイアルに取り、静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
【0269】
アセトニトリルについては、化合物1約51mgをアセトニトリル2.5mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、溶液の半分をカバーしないバイアルに取り、静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
図7は、この方法によって調製した化合物1のフォームAのXRPDパターンを示す。
【0270】
貧溶媒法
【0271】
EtOAc/ヘプタンについては、化合物1約30mgをEtOAc1.5mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、濾液に、ゆっくり攪拌しながらヘプタン2.0mLを加えた。溶液をさらに10分間攪拌し、静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
図8は、この方法によって調製した化合物1のフォームAのXRPDパターンを示す。
【0272】
イソプロピルアルコール/水については、化合物1約21mgをイソプロピルアルコール1.0mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、溶液0.8mLを得た。ゆっくりと攪拌しながら水1.8mLを加えた。さらに水0.2mLを加えて、曇った懸濁液を得た。5分間攪拌を止めて透明な溶液を得た。溶液をさらに2分間攪拌し、静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
【0273】
エタノール/水については、化合物1約40mgをエタノール1.0mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、水1.0mLを加えた。溶液を1日室温で攪拌した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
【0274】
アセトン/水については、化合物1約55mgをアセトン0.5mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、0.2mLをバイアルに取った。水1.5mLを加え、続いてさらに水0.5mLを加えて曇った懸濁液を得た。懸濁液を1日室温で攪拌した。化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
【0275】
以下の表2は、化合物1のフォームAを形成させる種々の技術をまとめたものである。
【表3】
【0276】
化合物1のフォームAの単結晶構造から計算したX−線回折パターンを
図4に示す。表3は
図1に示すピークを計算したリストである。
【表4】
【0277】
図5に化合物1のフォームAの実際のX線結晶回折パターンを示す。表4は
図5の実際のピークをリストする。
【表5】
【0278】
図6に化合物1のフォームAのDSCトレースを示す。化合物1のフォームAの融点は約172−178℃である。
【0279】
格子の大きさ及び充填を含む結晶構造関するさらなる詳細を提供する、化合物1のフォームAについての単結晶データを得た。
【0280】
結晶調製
【0281】
メタノールの濃縮溶液(10mg/ml)からの低速蒸発により、化合物1のフォームAを得た。0.20×0.05×0.05mmの寸法の化合物1のフォームAの無色の結晶を選択し、鉱油を用いて浄化し、MicroMountに乗せ、Bruker APEXII回折装置の中心に置いた。方位行列及び初期セルパラメータを提供するために、逆格子空間において別れた40フレームの3つのバッチを得た。最終セルパラメーラを完全なデータセットに基づいて得て、精密化した。
【0282】
実験項
【0283】
逆格子空間の回折データセットを、各フレームについて0.83Åの分解能まで0.5°刻みの30秒暴露により得た。データを室温[295(2)K]で収集した。強度の積分及びセルパラメーラの精密化をAPEXIIソフトウェアを用いて行った。データ収集後の結晶の観察で分解の兆候は示されなかった。
【表6】
【0284】
幾何:すべてのエネルギースペクトル密度(esd)(2個の最小二乗(l.s.)平面の間の二面対角におけるesdを除く)を全共分散行列を用いて見積もった。セルのesdは、距離、角度及びひずみ角のesdの見積もりにそれぞれ考慮される;セルパラメーラにおけるesd間の相関は、結晶対象により定義される場合にのみ用いる。l.s.平面の関わるesdの見積もりには近似値(等方晶系)処理を行う。
【表7】
【0285】
データ収集:Apex II;セルの精密化:Apex II;データ整理:Apex II;構造解析に用いたプログラム:SHELXS97(Sheldrick、1990);構造の精密化に用いたプログラム:SHELXL97(Sheldrick、1997);分子グラフィックス:Mercury;出版のための材料を調製するために用いたソフトウェア:publCIF。
【表8】
【0286】
精密化:ALL反射に対するF2の精密化。荷重R因子wR及び適合度SはF
2に基づき、通常のR計数RはFに基づくが、負F
2の場合Fはゼロとする。F
2>2シグマ(F
2)の閾値表現は、R係数(gt)等を計算するためだけに用いられ、精密化のための反射の選択には関連がない。F
2に基づくR係数は統計的にはFに対して約2倍であり、ALLデータに基づくR係数は更に大きい。
【0287】
単結晶X線分析に基づく化合物1のフォームAの立体配座図を
図9及び10に示す。4つの隣接する分子と4量体クラスタを形成する水素結合ネットワークを介して末端−OH基が結合している(
図10)。もう一方のヒドロキシル基は、隣接する分子からのカルボニル基と水素結合を形成するための水素結合ドナーとして作用する。結晶構造は、本分子の稠密充填結晶構造を示す。化合物1のフォームAは単斜晶系、C2空間群で、以下の単位胞寸法:a=21.0952(16)Å、b=6.6287(5)Å、c=17.7917(15)Å、β=95.867(6)°、γ=90°を有する。
【0288】
化合物1のフォームAの固体状態
13C NMRスペクトルを
図11に示す。表8は関連するピークの化学シフトを表す。
【表9】
【0289】
化合物1のフォームAの固体状態
19F NMRスペクトルを
図12に示す。アスタリスクの付いたピークはスピニングサイドバンドを示す。表9は関連するピークの化学シフトを示す。
【表10】
【0290】
化合物1のアモルファス形態の合成
【0291】
ロータリーエバポレーション法
【0292】
化合物1のアモルファス形態は、またロータリーエバポレーションによっても得られる。化合物1(約10g)をMeOH180mLに溶解させ、50℃浴で泡状物質を形成するまでロータリーエバポレーションを行った。DSC(
図14)及びXRPD(
図13)で化合物1のアモルファス形態を確認した。
図15は、この方法により調製した化合物1のアモルファス形態のTGAトレースである。
【0293】
スプレードライ法
【0294】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート HGグレード(HPMCAS−HG)9.95gをラウリル硫酸ナトリウム(SLS)50mgと共に500mLビーカーに測り取った。MeOH(200 ml)を固体と混合した。物質を4時間攪拌した。最大限の溶解を確実にするために、2時間攪拌後溶液を5分間超音波にかけ、続いてさらに2時間攪拌した。非常に細かいHPMCASの懸濁液が溶液中に残った。しかし、視覚的な観察によっては、ガム状部分は容器を傾けても容器の壁面に残っておらず、又は底に固まっていなかった。
【0295】
化合物1のフォームA(10g)を500mLビーカーに注ぎ、系を継続して攪拌した。溶液を以下のパラメータを用いてスプレードライした:
製剤明細:化合物1のフォームA/HPMCAS/SLS(50/49.5/0.5)
ブチミニスプレードライヤー
T入力口(設定値) 145℃
T出力口(開始時) 75℃
T出力口(終了時) 55℃
窒素圧 75psi
アスピレータ 100%
ポンプ 35%
ロタメータ(Rotometer) 40mM
フィルタ圧 65mbar
コンデンサ温度 −3℃
実行時間 1時間
【0296】
化合物1のアモルファス形態約16g(80%収率)を回収した。化合物1のアモルファス形態をXRPD(
図16)及びDSC(
図17)によって確認した。
【0297】
化合物1のアモルファス形態の固体状体
13C NMRスペクトルを
図18に示す。表10は関連するピークの化学シフトを示す。
【表11】
【0298】
化合物1のアモルファス形態の固体状態
19F NMRスペクトルを
図19に示す。アスタリスクの付いたピークはスピニングサイドバンドを示す。表11は関連するピークの化学シフトを示す。
【表12】
【0299】
以下の表12は、化合物1の追加の分析データを示す。
【表13】
【0300】
アッセイ
【0301】
化合物によるΔF508−CFTR矯正特性の検出及び測定のためのアッセイ
【0302】
化合物によるΔF508−CFTR調節特性のアッセイのための膜電位光学法
【0303】
電位感受性FRETセンサーを利用する光学膜電位アッセイは、GonzalezおよびTsienにより(Gonzalez, J. E. and R. Y. Tsien (1995) ”Voltage sensing by fluorescence resonance energy transfer in single cells” Biophys J 69(4):1272−80, and Gonzalez, J. E. and R. Y. Tsien (1997) ”Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescence resonance energy transfer” Chem Biol 4(4):269−77参照)、蛍光変化を測定するための機器、例えば電位/イオンプローブリーダー(VIPR)(See, Gonzalez, J. E., K. Oades, et al. (1999) ”Cell−based assays and instrumentation for screening ion−channel targets” Drug Discov Today 4(9):431−439参照)と組み合わせて記載されている。
【0304】
これらの電位感受性アッセイは、膜可溶性、電位感受性色素であるDiSBAC
2(3)と、原形質膜の外側のリーフレットに結合し、FRETドナーとして働く蛍光リン脂質であるCC2−DMPEの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)における変化に基づく。膜電位(V
m)の変化は、負に帯電したDiSBAC
2(3)の原形質膜を通す再分配およびそれに応じたCC2−DMPEからのエネルギー伝達量の変化をもたらす。蛍光放出の変化は、96または384ウェルマイクロタイタープレート中の細胞をベースにしたスクリーニングを行うために設計された統合された液体ハンドラーおよび蛍光ディテクターであるVIPR
(登録商標)IIを使用してモニターできる。
【0305】
1. 矯正化合物の同定
【0306】
ΔF508−CFTRに関連する輸送欠損を矯正する小分子を同定するために、シングル・アディションHTSアッセイ形態を開発した。細胞を、無血清培地中、16時間、37℃で、試験化合物の存在下または非存在下(陰性対照)インキュベートした。陽性対照として、384ウェルプレートに播種した細胞を、16時間、27℃でインキュベートして、ΔF508−CFTRを「温度補正」した。細胞をその後3回クレブス・リンゲル液で濯ぎ、電位感受性色素を負荷した。ΔF508−CFTRを活性化するために、10μM フォルスコリン、CFTRポテンシエータ、ゲニステイン(20μM)を無Cl
−培地と共に各ウエルに添加した。無Cl
−培地の添加は、ΔF508−CFTR活性化に応答したCl
−流出を促進し、得られた膜脱分極をFRETベースの電位センサー色素を使用して光学的にモニターした。
【0307】
2.ポテンシエータ化合物の同定
【0308】
ΔF508−CFTRポテンシエータ化合物を同定するため、二重付加(double-addition)HTSアッセイ形式を開発した。最初の付加においては、無Cl
−培地を試験化合物あり又はなしで加えた。22秒後、ΔF508−CFTRを活性化するため、2回目の2−10μMフォルスコリン含有無Cl
−培地を加えた。両添加後の細胞外Cl
−濃度は28mMであり、それがΔF508−CFTR活性化に応答してCl
−流出が促進され、得られた膜脱分極を光学的にFRET−ベース電位センサー色素でモニターした。
【0309】
3.溶液
浴溶液#1:(mM) NaOH中、NaCl 160、KCl 4.5、CaCl
2 2、MgCl
2 1、HEPES 10、pH7.4
無塩化物浴溶液:浴溶液#1における塩化物塩をグルコン酸塩に置き換える
CC2−DMPE:DMSO中で10mMストック溶液を調製し、−20℃で保存した
DiSBAC
2(3):DMSO中で10mMストック溶液を調製し、−20℃で保存した
【0310】
4.細胞培養
【0311】
ΔF508−CFTRを安定的に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を膜電位の光学的な測定において用いる。細胞を175cm
2培養フラスコで、2mMグルタミン、10 %ウシ胎児血清、1xNEAA、β−ME、1xペニシリン/ストレプトマイシン、及び25mM HEPESを添加した、ダルベッコ変法イーグル培地に37℃、5%CO
2及び湿度90%で維持した。すべての光学的アッセイにおいて、細胞を、384−ウエルマトリゲル−コーティングプレートに30,000/ウエルを播種し、37℃で2時間培養し、続いて24時間27℃でポテンシエーターアッセイのために培養した。矯正アッセイについては、細胞は、27℃又は37℃で、化合物あり又はなしで16−24時間時間培養した。
【0312】
ΔF508−CFTR調節特性を有する化合物の電気生理学的アッセイ
【0313】
1.ウッシングチャンバーアッセイ
【0314】
ウッシングチャンバー実験をΔF508−CFTRを発現する分極上皮性細胞で行い、光学アッセイで同定されたΔF508−CFTRモジュレーターをさらに特徴付けした。Costar Snapwell細胞培養インサート上で増殖させたFRT
ΔF508−CFTR上皮性細胞をウッシングチャンバー(Physiologic Instruments, Inc., San Diego, CA)にマウントし、単層
を電圧固定法システムを使用して連続的に短絡(short−cicuited)させた(Department of Bioengineering, University of Iowa, IA及びPhysiologic Instruments, Inc., San Diego, CA)。経上皮性抵抗を2mVパルスの適用により測定した。これらの条件下、FRT上皮は4KΩ/cm
2またはそれ以上の抵抗を証明した。溶液を27℃に維持し、空気でバブリングした。電極オフセット電位および流体抵抗性を、無細胞インサートを使用して補正した。これらの条件下、電流は、頂端膜に発現されるΔF508−CFTRを通るCl
−の流れを反映する。I
SCをMP100A−CEインターフェース及びAcqKnowledgeソフトウェア(v3.2.6;BIOPAC Systems, Santa Barbara, CA)を使用してデジタルで獲得した。
【0315】
2.矯正化合物の同定
【0316】
典型的プロトコルは側底から頂端膜Cl
−濃度勾配を使用した。この勾配を設定するために、通常のリンゲルを側底膜に使用し、一方頂端NaClを等モル量グルコン酸ナトリウムで置き換えて(NaOHでpH7.4に滴定)、上皮を通して大きなCl
−濃度勾配を得た。全実験を無傷の単層で行った。ΔF508−CFTRを完全に活性化するために、フォルスコリン(10μm)、PDE阻害剤、IBMX(100μm)を適用し、続いてCFTRポテンシエータ、ゲニステイン(50μm)を添加した。
【0317】
他の細胞型でも観察される通り、ΔF508−CFTRを安定に発現するFRT細胞の低温でのインキュベーションは、原形質膜のCFTRの機能的密度を増加させる。矯正化合物の活性を決定するために、細胞を10μMの試験化合物と24時間、37℃でインキュベートし、その後3回洗浄して、その後記録した。化合物処理細胞のcAMP−およびゲニステイン仲介I
SCを27℃および37℃対照で標準化し、活性パーセントとして示す。細胞の矯正化合物との前インキュベーションは、37℃対照と比較して、cAMP−およびゲニステイン仲介I
SCを顕著に増加させた。
【0318】
3.ポテンシエータ化合物の同定
【0319】
典型的プロトコルは側底から頂端膜Cl
−濃度勾配を使用した。この勾配を設定するために、通常のリンゲルを側底膜に使用し、ニスタチン(360μg/ml)で透過処理し、一方頂端NaCl
を等モル量グルコン酸ナトリウムで置き換えて(NaOHでpH7.4に滴定)、上皮を通して大きなCl
−濃度勾配を得た。全実験をニスタチン透過処理30分後に行った。フォルスコリン(10μm)及び全試験化合物を細胞培養インサートの両側に添加した。推定ΔF508−CFTRポテンシエータの効果を、既知ポテンシエータ、ゲニステインと比較した。
【0320】
4.溶液
基底外側溶液(mM):NaCl(135)、CaCl
2(1.2)、MgCl
2(1.2)、K
2HPO
4(2.4)、KHPO
4(0.6)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N'−2−エタンスルホン酸(HEPES)(10)、およびデキストロース(10)。溶液をNaOHでpH7.4に滴定。
頂端溶液(mM):NaClをグルコン酸Na(135)で置き換えた以外側底溶液と同一。
【0321】
5.細胞培養
【0322】
ΔF508−CFTRを発現するフィッシャーラット上皮性(FRT)細胞(FRT
ΔF508−CFTR)を、我々の光学アッセイで同定した推定ΔF508−CFTRモジュレーターのウッシングチャンバー実験に使用した。細胞をCostar Snapwell細胞培養インサートで培養し、5日間、37℃および5%CO
2で5%ウシ胎児血清、100U/ml ペニシリン、および100μg/ml ストレプトマイシン添加クーン変法ハムF−12培地で培養した。化合物のポテンシエータ活性の特徴付けに使用する前に、細胞を27℃で16−48時間培養して、ΔF508−CFTRを補正した。矯正化合物の活性を決定するために、細胞を27℃又は37℃で、化合物有りまたは無しで24時間インキュベートした。
【0323】
6.全細胞記録
ΔF508−CFTRを安定に発現する、温度および試験化合物補正したNIH3T3細胞における巨視的ΔF508−CFTR電流(I
ΔF508)を、有孔パッチ、全細胞記録を使用してモニターした。簡単に言うと、I
ΔF508の電位固定記録を、室温で、Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments Inc., Foster City, CA)を使用して行った。全記録を10kHzのサンプリング周波数で獲得し、1kHzで低域フィルタ処理した。ピペットは、細胞内溶液で満たしたとき5−6MΩの抵抗性を有した。これらの記録条件下、計算したCl
−(ECl)の逆転電位は室温で−28mVであった。全記録は、シール抵抗性>20GΩおよびシリーズ抵抗性<15MΩを有した。パルス発生、データ獲得、および分析を、Clampex 8(Axon Instruments Inc.)と関連したDigidata 1320 A/Dインターフェースを備えたPCを使用して行った。浴は<250μlの食塩水を含み、無重力駆動灌流系を使用して2ml/分の速度で連続的に灌流した。
【0324】
7.矯正化合物の同定
【0325】
原形質膜における機能的ΔF508−CFTRの密度を増加させる矯正化合物の活性を決定するために、我々は、上記の有孔パッチ記録技術を使用して、矯正化合物で24時間処理後の電流密度を測定した。ΔF508−CFTRを完全に活性化するために、10μM フォルスコリンおよび20μM ゲニステインを細胞に添加した。我々の記録条件下で、27℃で24時間インキュベーション後の電流密度は、37℃で24時間インキュベーション後に見られるより高かった。これらの結果は、低温インキュベーションの原形質膜におけるΔF508−CFTRの密度に対する既知の効果と一致する。矯正化合物のCFTR電流密度に対する効果を決定するために、細胞を10μMの試験化合物と24時間、37℃でインキュベートし、電流密度を27℃および37℃対照(%活性)と比較した。記録の前に、細胞を3回細胞外記録培地で洗浄し、何らかの残った試験化合物を除いた。10μMの矯正化合物とのプレインキュベーションは、37℃対照と比較して、顕著にcAMP−およびゲニステイン依存性電流を増加させた。
【0326】
8.ポテンシエータ化合物の同定
【0327】
ΔF508−CFTRポテンシエータが、ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3細胞における巨視的ΔF508−CFTR Cl
−電流(I
ΔF508)を増加させる能力を、有孔−パッチ−記録技術を使用して試験した。光学アッセイにより同定されたポテンシエータは、光学アッセイにおいて見られたのと同様の強度および効果で、I
ΔF508の増加を用量依存性に惹起した。試験した全細胞において、ポテンシエータ適用前および適用中の逆転電位は約−30mVであり、それは計算したE
Cl(−28mV)である。
【0328】
9.溶液
細胞内溶液(mM):Cs−アスパルテート(90)、CsCl(50)、MgCl2(1)、HEPES(10)、及び240μg/ml アンホテリシン−B(CsOHで7.35にpH調節)。
細胞外溶液(mM):N−メチル−D−グルカミン(NMDG)−Cl(150)、MgCl
2(2)、CaCl
2(2)、HEPES(10)(HClで7.35にpH調節)。
【0329】
10.細胞培養
【0330】
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を全細胞記録に使用する。細胞を37℃で5%CO
2および90%湿度に、2mM グルタミン、10%ウシ胎児血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep、及び25mM HEPESを補ったダルベッコ改変イーグル培地中、175cm
2培養フラスコで維持する。全細胞記録のために、2,500−5,000細胞をポリ−L−リシン被覆ガラスカバースリップに播種し、24−48時間、27℃で培養し、その後ポテンシエータの活性の試験に使用し;そして矯正化合物有りまたは無しで37℃でコレクターの活性を測定する。
【0331】
11.単一チャネル記録
【0332】
NIH3T3細胞において安定に発現される温度補正ΔF508−CFTRの一チャネル活性およびポテンシエータ化合物の活性を、切断した裏返し膜パッチを使用して観察した。簡単に言うと、一チャネル活性の電位固定記録を、室温で、Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments Inc.)を使用して行った。全記録を10kHzのサンプリング周波数で獲得し、400Hzで低域フィルタ処理した。パッチピペットをCorning Kovar Sealing #7052グラス(World Precision Instruments, Inc., Sarasota, FL)から製造し、細胞外溶液で満たしたとき5−8MΩの抵抗性を有した。ΔF508−CFTRを切除後、1mM Mg−ATP、および75nMのcAMP依存性タンパク質キナーゼ、触媒サブユニット(PKA;Promega Corp. Madison, WI)の添加により活性化した。チャネル活性が安定した後、パッチを無重力駆動微小灌流系を使用して灌流した。流入をパッチに隣接して置き、1−2秒以内での完全な溶液交換をもたらした。急速な灌流中ΔF508−CFTR活性を維持するために、非特異的ホスファターゼ阻害剤F
−(10mM NaF)を浴溶液に添加した。これらの記録条件下、チャネル活性は、パッチ記録の間(60分まで)一定のままであった。細胞内から細胞外溶液への正電荷の移動により生じた電流(アニオンは逆方向に移動)を正電流として示す。ピペット電位(V
p)は80mVに維持した。
【0333】
チャネル活性を、≦2活性チャネルを含む膜パッチから分析した。同時開放する最大数が、実験中のチャネルの活性の数を決定した。一チャネル電流振幅を決定するために、120秒のΔF508−CFTR活性を記録したデータを「オフライン」で100Hzでフィルタし、次いでBio−Patch分析ソフトウェア(Bio−Logic Comp. France)を使用してマルチガウス関数で適合させた全点振幅ヒストグラムの構築に使用した。全顕微鏡的電流および開放可能性(P
o)を120秒のチャネル活性から計算した。P
oをBio−Patchソフトウェアを使用して、またはP
o=I/i(N)(ここで、I=平均電流、i=一チャネル電流振幅、およびN=パッチ中の活性チャネル数)の相関から決定した。
【0334】
12.溶液
細胞外溶液(mM):NMDG(150)、アスパラギン酸(150)、CaCl2(5)、MgCl2(2)、及びHEPES(10)(トリス塩基でpH7.35に調整)。細胞内溶液(mM):NMDG−Cl(150)、MgCl2(2)、EGTA(5)、TES(10)、及びトリス塩基(14)(HClでpH7.35に調整)。
【0335】
13.細胞培養
【0336】
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を、切除−膜パッチ−クランプ記録に使用する。細胞を37℃で、5%CO
2および90%湿度に、2mM グルタミン、10%ウシ胎児血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep、および25mM HEPESを補ったダルベッコ改変イーグル培地で175cm
2培養フラスコ中維持する。一チャネル記録のために、2,500−5,000細胞をポリ−L−リシン被覆カバーガラスに播種し、24−48時間、27℃培養して、その後使用する。
【0337】
上述の方法を用い、化合物1の活性、すなわち、EC50を測定し表13に示す。
【表14】