特許第5734410号(P5734410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5734410(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドの固体形態
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734410
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドの固体形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/12 20060101AFI20150528BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 5/18 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 3/08 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 31/404 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 5/10 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   C07D405/12CSP
   A61P11/00
   A61P11/06
   A61P11/02
   A61P1/10
   A61P1/18
   A61P15/08
   A61P1/16
   A61P7/04
   A61P7/10
   A61P3/06
   A61P3/10
   A61P5/18
   A61P3/08
   A61P5/14
   A61P19/00
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61P25/00
   A61P25/14
   A61P21/02
   A61P27/02
   A61P19/10
   A61P25/08
   A61K31/404
   A61P5/10
   A61K45/00
   A61K9/19
   A61K47/20
   A61K47/38
【請求項の数】41
【全頁数】65
(21)【出願番号】特願2013-501522(P2013-501522)
(86)(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公表番号】特表2013-523655(P2013-523655A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011030032
(87)【国際公開番号】WO2011119984
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年3月18日
(31)【優先権主張番号】61/321,636
(32)【優先日】2010年4月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/321,561
(32)【優先日】2010年4月7日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/319,953
(32)【優先日】2010年4月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/317,376
(32)【優先日】2010年3月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598032106
【氏名又は名称】バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100067035
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 光隆
(72)【発明者】
【氏名】アリ・ケシャバルツ−ショクリ
(72)【発明者】
【氏名】ベイリ・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ティム・エドワード・アルカシオ
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ・チュンミン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ユエガン
(72)【発明者】
【氏名】マリウス・クラヴィエツ
【審査官】 太田 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0131492(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu Kα照射を用いて得られる粉末X線回折において19.3から19.7°、21.5から21.9°及び16.9から17.3°の1つ以上のピークにより特徴付けられる、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶フォームA
【請求項2】
フォームAが19.5、21.7、及び17.1°の1つ以上のピークにより特徴付けられる請求項に記載のフォームA。
【請求項3】
フォームAがさらに20.2から20.6°におけるピークにより特徴付けられる請求項又はに記載フォームA。
【請求項4】
フォームAがさらに20.4°におけるピークにより特徴付けられる請求項からのいずれかに記載のフォームA。
【請求項5】
フォームAがさらに18.6から19.0°におけるピークにより特徴付けられる請求項からのいずれかに記載のフォームA。
【請求項6】
フォームAがさらに18.8°におけるピークにより特徴付けられる請求項からのいずれかに記載のフォームA。
【請求項7】
フォームAがさらに24.5から24.9°におけるピークにより特徴付けられる請求項からのいずれかに記載のフォームA。
【請求項8】
フォームAがさらに24.7°におけるピークにより特徴付けられる請求項からのいずれかに記載のフォームA。
【請求項9】
フォームAがさらに9.8から10.2°におけるピークにより特徴付けられる請求項からのいずれかに記載のフォームA。
【請求項10】
フォームAがさらに10.0°におけるピークにより特徴付けられる請求項からのいずれかに記載のフォームA。
【請求項11】
フォームAがさらに4.8から5.2°におけるピークにより特徴付けられる請求項から10のいずれかに記載のフォームA。
【請求項12】
フォームAがさらに5.0°におけるピークにより特徴付けられる請求項から11のいずれかに記載のフォームA。
【請求項13】
フォームAがさらに24.0から24.4°におけるピークにより特徴付けられる請求項から12のいずれかに記載のフォームA。
【請求項14】
フォームAがさらに24.2°におけるピークにより特徴付けられる請求項から13のいずれかに記載のフォームA。
【請求項15】
フォームAがさらに18.3から18.7°におけるピークにより特徴付けられる請求項から14のいずれかに記載のフォームA。
【請求項16】
フォームAがさらに18.5°におけるピークにより特徴付けられる請求項から15のいずれかに記載のフォームA。
【請求項17】
フォームAが図4の単結晶構造のX線回折パターンにより特徴付けられる請求項1から16のいずれかに記載のフォームA。
【請求項18】
フォームAが図5のX線回折パターンにより特徴付けられる請求項1から16のいずれかに記載のフォームA。
【請求項19】
単斜晶系、C2空間群及び以下の単位胞寸法:
a=21.0952(16)Å α=90°
b=6.6287(5)Å β=95.867(6)°
c=17.7917(15)Å γ=90°
を有する、請求項1に記載のフォームA
【請求項20】
請求項1から19のいずれかに記載のフォームA及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項21】
さらに追加の治療剤を含む請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
追加の治療剤が粘液溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染症剤、抗炎症剤、CFTR賦活剤及び栄養剤から選択される請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドを溶媒中、有効な時間スラリー化することを含む請求項1から19のいずれかに記載のフォームAの製造方法。
【請求項24】
溶媒が酢酸エチル、ジクロロメタン、MTBE、酢酸イソプロピル、水/エタノール、水/アセトニトリル、水/メタノール又は水/イソプロピルアルコールである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
有効な時間が24時間から2週間である請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドを溶媒に溶解させること及び溶媒を蒸発させることを含む請求項1から19のいずれかに記載のフォームAの製造方法。
【請求項27】
溶媒がアセトン、アセトニトリル、メタノール、又はイソプロピルアルコールである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドを第1溶媒に溶解させ、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドが溶解しない第2溶媒を加えることを含む請求項1から19のいずれかに記載のフォームAの製造方法。
【請求項29】
第1溶媒が酢酸エチル、エタノール、イソプロピルアルコール、又はアセトンである請求項28に記載の方法。
【請求項30】
第2溶媒がヘプタン又は水である請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
第1溶媒と(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドの溶液の攪拌中に第2溶媒が追加される請求項28から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
請求項1から19のいずれかに記載のフォームAを含むCFTR介在性疾患の処置用医薬
【請求項33】
CFTR介在性疾患が嚢胞性線維症、喘息、喫煙誘発性COPD、慢性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、膵炎、膵機能不全、先天性両側精管欠損症(CBAVD)に起因する男性不妊、軽度肺疾患、突発性膵炎、アレルギー性気管支肺アルペルギルス症(ABPA)、肝疾患、遺伝性肺気腫、遺伝性血色素症、血液凝固−線維素溶解欠乏症、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質プロセシング欠損症、家族性高コレステロール血症、1型乳糜血症、無βリポタンパク血症、リソソーム性蓄積症、I細胞病/偽ハーラー症、ムコ多糖症、サンドホフ病/テイ−サックス病、クリグラー・ナジャー症候群II型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、糖尿病、ラロン小人症、ミエロオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能亢進症、メラノーマ、グリカノーシス(glycanosis)CDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠損症、糖尿病性尿崩症(DI)、骨端軟骨性DI、腎性DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェーウス・メルバッハー病(Perlizaeus-Merzbacher disease)、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺(progressive supranuclear plasy)、ピック病、数種のポリグルタミン神経障害、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調症I型(spinocerebullar ataxia type I)、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubal pallidoluysian)、筋緊張性ジストロフィ、海綿状脳症、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損による)、ファブリー病、シュトロイスラー・シャインカー症候群、COPD、眼乾燥疾患、シェーグレン病、骨粗鬆症、骨減少症、ゴーラム症候群、塩素チャネル病、先天性筋強直症(トムソン型およびベッカー型)、バーター症候群III型、デント病、驚愕過剰症、てんかん、驚愕過剰症、リソソーム蓄積症、アンジェルマン症候群、原発性線毛ジスキネジア(PCD)、線毛の構造および/または機能の遺伝性障害、内蔵逆位を伴うPCD(カルタゲナー症候群としても公知)、内蔵逆位を伴わないPCD及び線毛体無形成から選択される請求項32に記載の医薬
【請求項34】
CFTR介在性疾患が、嚢胞性線維症、COPD、骨粗鬆症及び肺気腫から選択される請求項32に記載の医薬
【請求項35】
CFTR介在性疾患が嚢胞性線維症である請求項32に記載の医薬
【請求項36】
患者がΔF508変異を有する嚢胞性線維症膜貫通型受容体(CFTR)を有する請求項32から35のいずれかに記載の医薬
【請求項37】
患者がR117H変異を有する嚢胞性線維症膜貫通型受容体(CFTR)を有する請求項の32から35いずれかに記載の医薬
【請求項38】
患者がG551D変異を有する嚢胞性線維症膜貫通型受容体(CFTR)を有する請求項32から35のいずれかに記載の医薬
【請求項39】
該方法が追加の治療剤を投与することを含む請求項32から38のいずれかに記載の医薬
【請求項40】
治療剤が粘液溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染症剤、抗炎症剤、CFTR賦活剤、又は栄養剤である請求項39に記載の医薬
【請求項41】
請求項1から19のいずれかに記載のフォームA及その使用説明書を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固相形態、例えば結晶及びアモルファス形態である(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド、それらの医薬組成物、及びそれらを用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CFTRは、吸収性及び分泌性上皮細胞を含む種々の細胞型に発現されるcAMP/ATP−介在性アニオンチャネルであり、当該上皮細胞でそれは膜を通過するアニオンの流れ、並びに他のイオンチャネル及びタンパク質の活性を制御する。上皮細胞においては、CFTRの正常機能は呼吸器及び消化器組織を含む体中の電解質輸送の維持に不可欠である。CFTRは、それぞれ6つの膜貫通へリックス及びヌクレオチド結合ドメインを含有する、膜貫通ドメインのタンデムリピートからなるタンパク質をコードする約1480アミノ酸から構成される。2つの膜貫通ドメインは、チャネル活性及び細胞輸送を制御する、複数のリン酸化部位を有する、大きい、極性の、制御(R)−ドメインにより結合される。
【0003】
CFTRをコードする遺伝子が同定され、配列が決定されている(Gregory、R. J. et al.(1990)Nature 347:382−386;Rich、D. P. et al.(1990)Nature 347:358−362参照)、(Riordan、J. R. et al.(1989)Science 245:1066−1073)。この遺伝子の欠損はCFTRの変異を生じさせ、ヒトにおいて、最も一般的な致命的遺伝子疾患である嚢胞性線維症(「CF」)を引き起こす。嚢胞性線維症は、米国において、乳児約2,500名に1名が発症する。米国の一般集団内で、最大1000万人が、明らかな病気の影響がなく欠損遺伝子の1コピーを有する。対照的に、CF関連遺伝子の2コピーを有する個体は、慢性肺疾患を含む、CFの、衰弱性で致死的な病態を発症する。
【0004】
嚢胞性線維症の患者において、呼吸器上皮に内因性に発現しているCFTRの変異が頂端アニオン分泌の減少を導き、イオンおよび流体輸送のアンバランスの原因となる。結果として生じるアニオン輸送の低下は、肺における粘液蓄積増加及びこれに伴う微生物感染に関与し、最終的にCF患者を死亡させる。呼吸器疾患に加えて、CF患者は、典型的には、胃腸障害および膵臓不全を患い、処置せず放置すれば、死亡する。さらに、嚢胞性線維症を有する男性の大部分は生殖能力がなく、嚢胞性線維症を有する女性の間では生殖能力が低下する。2コピーのCF関連遺伝子の重篤な影響とは対照的に、1コピーのCF関連遺伝子を有する個体は、コレラおよび下痢が原因の脱水に対する耐性増強を示し、その集団内でのCF遺伝子の相対的に高い頻度を説明するようである。
【0005】
CF染色体のCFTR遺伝子の配列分析は、種々の疾患原因変異を明らかにしている(Cutting、G. R. et al.(1990)Nature 346:366−369;Dean、M. et al.(1990)Cell 61:863:870;and Kerem、B−S. et al.(1989)Science 245:1073−1080;Kerem、B−S et al.(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8447−8451)。科学及び医学文献によって報告されているとおり、今日までに、CF遺伝子における1000を超える病因性変異が同定されている。最も優勢な変異はCFTRアミノ酸配列の508位のフェニルアラニンの欠失であり、一般にΔF508‐CFTRと呼ばれる。この変異は、嚢胞性線維症の症例の約70%において生じ、重篤な疾患と関連する。他の変異には、R117H及びG551Dが含まれる。
【0006】
ΔF508‐CFTRにおける残基508の欠失は、発生期タンパク質の正しい折りたたみを妨げる。これにより、変異タンパク質がERを出られず、形質膜へ輸送されない。結果として、膜に存在するチャネル数は、野生型CFTRを発現する細胞において認められるものより遙かに少なくなる。輸送障害に加えて、この変異は、不完全なチャネル開閉を生じる。合わせて、膜におけるチャネル数の減少および不完全開閉が上皮を横断するアニオン輸送の低下をもたらし、イオンおよび体液の不完全輸送に至る(Quinton,P.M.(1990),FASEB J.4:2709−2727)。しかし、膜におけるΔF508‐CFTRの数の減少が、たとえ野生型CFTRより低くても、機能していることを示した研究がある(Dalemansら(1991),Nature Lond.354:526−528;Denningら,前出;Pasyk and Foskett(1995),J.Cell.Biochem.270:12347−50)。ΔF508‐CFTRに加えて、不完全な輸送、合成及び/又はチャネル開閉を生じるCFTRにおける他の疾患原因となる変異は、アップレギュレートもしくはダウンレギュレートされて、アニオン分泌を変化させ得、疾患の進行及び/又は重症度を変化させることがある。
【0007】
CFTRは、アニオンに加えて種々の分子を輸送するが、この役割(アニオンの輸送)が、上皮を通過するイオンおよび水を輸送するという重要な機構における1つの要素を表すことは明らかである。他の要素としては、細胞への塩化物イオンの取り込みを担う上皮Naチャネル、ENaC、Na/2Cl/K共輸送体、Na−K−ATPaseポンプおよび側底膜K+チャネルが挙げられる。
【0008】
これらの要素は、共同して働き、それらの細胞内での選択的発現および局在化を介して上皮を通過する指向性輸送を達成する。塩化物吸収は、頂端膜上に存在するENaCおよびCFTRおよび細胞の側底表面に発現されるNa−K−ATPaseポンプおよびCl−チャネルの協調した活性により行われる。管腔側からの塩化物の二次的な能動的輸送が細胞内塩化物の蓄積をもたらし、次いで、それはClチャネルを介して細胞から受動的に離れて、方向性の輸送をもたらすことができる。側底表面上のNa/2Cl/K共輸送体、Na−K−ATPaseポンプおよび側底膜Kチャネルおよび管腔側のCFTRの配置が、管腔側のCFTRを介した塩化物の分泌を調整する。恐らく水それ自体が能動的に輸送されないため、上皮を通過するその流れは、ナトリウムおよび塩化物の大きな流れにより生じるわずかな経上皮浸透圧勾配に依存する。
【0009】
上記のとおり、ΔF508−CFTRにおける残基508の欠失が発生期タンパク質の正しい折りたたみを妨げ、その結果、この変異タンパク質がERから出られず、形質膜に移動できないと考えられている。結果として、成熟タンパク質が不十分な量しか形質膜に存在せず、上皮組織内の塩化物イオン輸送は顕著に低下する。実際に、小胞体(ER)機構によるATP結合カセット(ABC)トランスポーターの不完全なERプロセシングというこの細胞現象は、CF疾患についてのみならず、他の広い範囲の孤立性疾患および遺伝性疾患についても、基礎であることが示された。ER機構が機能不全となりうる2通りの機構は、分解に至るタンパク質がER排出されるためのカップリングの喪失、またはこれら不完全/ミスフォールドタンパク質のER蓄積のいずれかによるものである[Aridor Mら,Nature Med.,5(7),pp745−751(1999);Shastry,B.S.ら,Neurochem.International,43,pp1−7(2003);Rutishauser,J.ら,Swiss Med Wkly,132,pp211−222(2002);Morello,JPら,TIPS,21,pp.466−469(2000);Bross P.,ら,Human Mut.,14,pp.186−198(1999)]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドは、米国特許出願公開20090131492号(該公報は、そのすべてが引用によりここに組み込まれる)にCFTR活性の調節剤、それゆえCFTR介在性疾患、例えば嚢胞性線維症の処置に有用であるとして開示されている。しかし、治療剤として使用するために適切な医薬組成物に容易に用いられる、該化合物の安定な固体形態が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の構造:
【化1】

を有する(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド(ここでは以降「化合物1」と言う)の固体形態に関する。
【0012】
化合物1及びそれらの薬学的に許容される組成物は、例えば、嚢胞性線維症のようなCFTR介在性疾患の処置に又は重症度を軽減させるのに有用である。1つの態様としては、化合物1は、本明細書に記載され且つ特徴付けられるフォームAと呼ばれる実質的に結晶性で塩のない形態であるものである。他の態様としては、化合物1は、本明細書に記載され且つ特徴付けられるアモルファス形態にあるものである。薬物としてのその有効性に関連する固体の性質は、固体の形態に依存しうる。例えば、薬物物質において、固体形態の種類は、例えば、融点、溶解速度、経口吸収性、バイオアベイラビリティ、毒性結果、及び更には臨床試験結果に違いを生じさせうる。
【0013】
本明細書において記載される方法は、化合物1のフォームA又はアモルファス形態又は両方を含む本発明の組成物の調製に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は化合物1の粉末X線回折パターンを示す。
【0015】
図2図2は化合物1の示差走査熱量測定(DSC)トレースを示す。
【0016】
図3図3は化合物1の熱重量分析(TGA)プロットを示す。
【0017】
図4図4は化合物1のフォームAの単結晶から計算したX線結晶回折パターンを示す。
【0018】
図5図5はDCMを溶媒として用いるスラリー技術(2週間)により調製した化合物1のフォームAの実際の粉末X線回折パターンを示す。
【0019】
図6図6は化合物1のフォームAの示差走査熱量測定(DSC)トレースを示す。
【0020】
図7図7はアセトニトリルからの高速蒸発法により調製した化合物1のフォームAの実際の粉末X線回折パターンを示す。
【0021】
図8図8はEtOAc及びヘプタンを用いた貧溶媒法により調製した化合物1のフォームAの実際の粉末X線回折パターンを示す。
【0022】
図9図9は単結晶X線分析に基づく化合物1のフォームAの立体配座図を示す。
【0023】
図10図10は化合物1のフォームAの積層順序を示す立体配座図を示す。
【0024】
図11図11は化合物1のフォームAの固体状態13C NMRスペクトル(15.0kHzスピン)を示す。
【0025】
図12図12は化合物1のフォームAの固体状態19F NMRスペクトル(12.5kHzスピン)を示す。
【0026】
図13図13は高速蒸発ロータリーエバポレーション法からの化合物1のアモルファス形態の粉末X線回折パターンを示す。
【0027】
図14図14は高速蒸発ロータリーエバポレーション法により調製した化合物1のアモルファス形態の変調示差走査熱量測定(MDSC)トレースを示す。
【0028】
図15図15は高速蒸発ロータリーエバポレーション法により調製した化合物1のアモルファス形態の熱重量分析(TGA)プロットを示す。
【0029】
図16図16はスプレードライ法により調製した化合物1のアモルファス形態の粉末X線回折パターンを示す。
【0030】
図17図17はスプレードライ法により調製した化合物1のアモルファス形態の変調示差走査熱量測定(MDSC)トレースを示す。
【0031】
図18図18は化合物1のアモルファス形態の固体状態13C NMRスペクトル(15.0kHzスピン)を示す。
【0032】
図19図19は化合物1のアモルファス形態の固体状態19F NMRスペクトル(12.5kHzスピン)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
【0034】
ここで使用される場合、他に示さない限り以下の定義を適用すべきである。
【0035】
用語「CFTR」とは、ここで使用される場合、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子又は制御因子活性の能力のあるその変異体を意味し、ΔF508 CFTRおよびG551D CFTRが含まれるが、これらに限定されない(CFTR変異体については、例えば、http://www.genet.sickkids.on.ca/CFTR/を参照のこと))。
【0036】
ここで使用される場合、用語「アモルファス」とは、無秩序な配列の分子からなり、明確な結晶格子を有しない固体の形態を意味する。
【0037】
ここで使用される場合、「結晶」とは、構造ユニットが固定された幾何学的パターン又は格子に配列され、それにより結晶固体が強固な長距離秩序を有する化合物または組成物を意味する。結晶構造を構成する構造ユニットは、原子、分子又はイオンでありうる。結晶固体は、明確な融点を有する。
【0038】
用語「調節」とは、ここで使用される場合、例えば活性を測定可能な量で増加または減少させることを意味する。
【0039】
用語「化学的に安定な」とは、ここで使用される場合、化合物1の固体形態が、例えば40℃/相対湿度75%の特定の条件に、1日、2日、3日、1週間、2週間又はそれ以上の一定期間付したときに1種以上の異なる化合物に分解しないことを意味する。ある態様においては、25%未満の化合物1の固体形態が分解し、ある態様においては、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約3%未満、約1%未満、約0.5%未満の化合物1が特定の条件下で分解する。ある態様においては、検出可能な量の固体形態の化合物1は分解しない。
【0040】
用語「物理的に安定な」とは、本明細書において使用される場合、例えば40℃/相対湿度75%の特定の条件に、例えば1日、2日、3日、1週間、2週間又はそれ以上の一定期間付したときに、化合物1の固体形態が、化合物1の1種以上の異なる物理的形態(例えば、XRPD、DSC等により測定して異なる固体形態)に変化しないことを意味する。ある態様においては、特定の条件に付したときに、25%未満の化合物1の固体形態が1種以上の異なる物理的形態に変化する。ある態様においては、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約3%未満、約1%未満、約0.5%未満の化合物1の固体形態は、特定の条件に付したときに、1種以上の異なる物理的形態に変化する。ある態様においては、検出可能な量の固体形態の化合物1は1種以上の物理的に異なる固体形態の化合物1に変化しない。
【0041】
語句「実質的にアモルファスの化合物1」は、ここで使用される場合、「アモルファス化合物1」、「実質的に結晶性の化合物1を含まないアモルファス化合物1」及び「実質的にアモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド」は同義的に使用される。ある態様においては、実質的にアモルファスの化合物1とは、約30%未満の結晶性化合物1、例えば、約30%未満の結晶性化合物1、例えば、約25%未満の結晶性化合物1、約20%未満の結晶性化合物1、約15%未満の結晶性化合物1、約10%未満の結晶性化合物1、約5%未満の結晶性化合物1、約2%未満の結晶性化合物1を含む。
【0042】
ここで使用される場合、語句「実質的に結晶性の化合物1のフォームA」とは「化合物1のフォームA」及び「実質的にアモルファス化合物1を含まない結晶性化合物1のフォームA」と同義的に使用される。ある態様においては、実質的に結晶性の化合物1のフォームAは、約30%未満のアモルファス化合物1又は他の固体形態、例えば、約30%未満のアモルファス化合物1又は他の固体形態、例えば、約25%未満のアモルファス化合物1又は他の固体形態、約20%未満のアモルファス化合物1又は他の固体形態、約15%未満のアモルファス化合物1又は他の固体形態、約10%未満のアモルファス化合物1又は他の固体形態、約5%未満のアモルファス化合物1又は他の固体形態、約2%未満のアモルファス化合物1又は他の固体形態を有する。ある態様においては、実質的に結晶性の化合物1のフォームAは約1%未満のアモルファス化合物1又は他の固体形態を有する。
【0043】
用語「実質的に含まない」(句「実質的に形態Xを含まない」におけるような)とは、指定した化合物1の固体形態(例えば、本明細書においてアモルファス又は結晶固体形態と記載される)を言うとき、20%(重量)未満の示した形態又は共形態(co−form)(例えば、化合物1の結晶又はアモルファス形態)が存在することを意味し、より好ましくは、10%(重量)未満の示した形態が存在すること、より好ましくは5%(重量)未満の示した形態が存在すること、最も好ましくは1%(重量)未満の示した形態が存在することを意味する。
【0044】
用語「実質的に純粋な」とは、指定した化合物1の固体の形態(例えば、本明細書に記載のアモルファス又は結晶性固体形態)を言うとき、指定した固体形態が、20%(重量)未満の残りの成分、例えば化合物1の別の多形又は同形結晶形態又は共形態を含有することを意味する。実質的に純粋な化合物1の固体形態は、10%(重量)未満の化合物1の別の多形又は同形の結晶形態、より好ましくは5%(重量)未満の化合物1の別の多形又は同形の結晶形態、及び最も好ましくは1%(重量)未満の別の化合物1の多形又は同形の結晶形態を含有することが好ましい。
【0045】
ここで使用される場合、「分散体」は、分散相である1種の物質が、第2の物質(連続相又は媒体)中に、区別されたユニットとして分散している分散系を言う。分散相の大きさは、大幅に異なりうる(例えば、ナノメートル容積のコロイド粒子から、数ミクロンサイズまで)。一般には、分散相は、固体、液体又は気体でありうる。固体分散体である場合には、分散相及び連続相はいずれも固体である。薬学的な適用においては、固体分散体はアモルファスポリマー(連続相)中の結晶性の薬物(分散相)、あるいはアモルファスポリマー(連続相)中のアモルファスの薬物(分散相)を含むことができる。ある態様としては、アモルファス固体分散体は、分散相を構成するポリマー及び連続層を構成する薬物を含む。ある態様においては、分散体はアモルファス化合物1又は実質的にアモルファスの化合物1を含む。
【0046】
用語「固体アモルファス分散体」は、一般に2以上の成分、通常薬物及びポリマーの固体分散体のことを言うが、化合物1がアモルファス又は実質的にアモルファス(例えば、実質的に結晶化合物1を含まない)であり、アモルファスの薬物の物理的安定性及び/又は溶解及び/又は溶解性が他の成分、例えば、界面活性剤又は他の薬学的賦形剤により促進されるならば、該他の成分も含むことが可能である。
【0047】
ここで使用される場合、用語「約」及び「大凡」が組成物の内容又は組成物の投与形態の用量、量、又は重量割合に関連して用いられる場合、用量、量、又は重量割合は、特定の用量、量、又は重量割合により得られるのと同等の薬理学効果を提供することを当業者により認識されるものを意味する。特に用語「約」又は「大凡」は、当業者が特定の値における許容できる誤差を意味し、それはある程度どのようにその値が測定又は決定されたかによる。特定の態様としては、用語「約」又は「大凡」は、標準偏差1、2、3又は4の範囲内であることを意味する。特定の態様としては、用語「約」又は「大凡」は、ある数値又は範囲の30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%又は0.05%以内を意味する。
【0048】
略語「MTBE」及び「DCM」は、それぞれメチルt−ブチルエーテルおよびジクロロメタンを意味する。
【0049】
略語「XRPD」は粉末X線回折を意味する。
【0050】
略語「DSC」は示差走査熱量測定を意味する。
【0051】
略語「TGA」は熱重量分析を意味する。
【0052】
他に示さない限り、本明細書に記載された構造は、また構造のすべての異性体(例えば、エナンチオマー的、ジアステレオマー的、及び幾何学的(又は配座的)形態を含むこと意味する;例えば、各不斉中心におけるR及びS配置、(Z)及び(E)二重結合異性体、及び(Z)及び(E)配座異性体がある。それゆえ、本化合物の単一の立体異性体並びに、エナンチオマー的、ジアステレオマー的、及び幾何学的(又は配座的)混合物は本発明の範囲内である。化合物1の全ての互変異性形態が本明細書に含まれる。例えば、化合物1は互変異性体として存在してもよく、ここで、いずれも本明細書に含まれる:
【化2】
【0053】
加えて、他に示さない限り、本明細書に示した構造は、また1種以上の同位体濃縮原子の存在によってのみ異なる化合物を含む。例えば、1個以上の水素原子が、重水素又はトリチウムで置き換えられた、又は1個以上の炭素原子が13C−又は14C−濃縮原子によって置き換えられた化合物1は本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、分析ツール、生物学的アッセイにおけるプローブ、又は改善された治療プロファイルを有する化合物として有用である。
【0054】
1つの態様としては、本発明は、結晶フォームAとして特徴付けられる(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドであることを特徴とする。
【0055】
異なる態様としては、フォームAは、Cu Kα照射を用いて得られた粉末X線回折において、19.3ないし19.7°、21.5ないし21.9°及び16.9ないし17.3°における1個以上のピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、約19.5、21.7及び17.1°における1個以上のピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、20.2ないし20.6°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、約20.4°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、18.6ないし19.0°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、約18.8°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、24.5ないし24.9°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、約24.7°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、9.8ないし10.2°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、約10.0°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、4.8ないし5.2°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、約5.0°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、24.0ないし24.4°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、約24.2°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、18.3ないし18.7°におけるピークにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、約18.5°におけるピークにより特徴付けられる。
【0056】
異なる態様としては、フォームAは、実質的に図4に類似する回折パターンにより特徴付けられる。異なる態様としては、フォームAは、実質的に図5に類似する回折パターンにより特徴付けられる。
【0057】
他の態様としては、本発明は、単斜晶系、C2空間群、及び以下の単位胞寸法:a=21.0952(16)Å、α=90°、b=6.6287(5)Å、β=95.867(6)°、c=17.7917(15)Å、及びγ=90°を有する(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドの結晶形態であることを特徴とする。
【0058】
他の態様としては、本発明は、フォームA及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であることを特徴とする。異なる態様としては、医薬組成物はさらに追加の治療剤を含む。異なる態様としては、追加の治療剤は、粘液溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染症剤、抗炎症剤、CFTR賦活剤又は栄養剤から選択される。
【0059】
他の態様としては、本発明は、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドを溶媒中で有効な時間スラリー化することを含むフォームAを調製する方法を特徴とする。異なる態様としては、溶媒は、酢酸エチル、ジクロロメタン、MTBE、酢酸イソプロピル、水/エタノール、水/アセトニトリル、水/メタノール、又は水/イソプロピルアルコールである。異なる態様としては、有効な時間は、24時間ないし2週間である。異なる態様としては、有効な時間は、24時間ないし1週間である。異なる態様としては、有効な時間は24時間ないし72時間である。
【0060】
他の態様としては、本発明は、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドを溶媒に溶解させ、溶媒を蒸発させることを含む、フォームAの調製方法を特徴とする。異なる態様としては、溶媒は、アセトン、アセトニトリル、メタノール又はイソプロピルアルコールである。
【0061】
他の態様としては、本発明は、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドを第1溶媒に溶解させ、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドが溶解しない第2溶媒を加えることを含む、フォームAの調製方法を特徴とする。異なる態様としては、第1溶媒は、酢酸エチル、エタノール、イソプロピルアルコール又はアセトンである。異なる態様としては、第2溶媒はヘプタン又は水である。異なる態様としては、第2溶媒の添加は、第1溶媒及び(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドの溶液の攪拌中に行われる。
【0062】
他の態様としては、本発明は、実質的にアモルファスである(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド固体であることを特徴とする。異なる態様としては、アモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドは、約5%未満の結晶性(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドを含む。
【0063】
他の態様としては、本発明は、アモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であることを特徴とする。異なる態様としては、医薬組成物は、さらに、追加の治療剤を含む。異なる態様としては、追加の治療剤は、粘液溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染症剤、抗炎症剤、CFTR賦活剤又は栄養剤から選択される。
【0064】
他の態様としては、本発明は、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドを適切な溶媒に溶解させ、ロータリーエバポレーションにより溶媒を除去することを含む、アモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドの調製方法を特徴とする。異なる態様としては、溶媒はメタノールである。
【0065】
他の態様としては、本発明は、アモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド及びポリマーを含む固体分散体を特徴とする。異なる態様としては、ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。異なる態様としては、ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である。
【0066】
異なる態様としては、ポリマーは10重量%ないし80重量%の量で存在する。異なる態様としては、ポリマーは30重量%ないし60重量%の量で存在する。異なる態様としては、ポリマーは約49.5重量%の量で存在する。
【0067】
異なる態様としては、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドは10重量%ないし80重量%の量で存在する。異なる態様としては、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドは30重量%ないし60重量%の量で存在する。異なる態様としては、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドは約50重量%の量で存在する。
【0068】
異なる態様としては、固体分散体は、さらに界面活性剤を含む。異なる態様としては、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムである。異なる態様としては、界面活性剤は、0.1重量%ないし5重量%の量で存在する。異なる態様としては、界面活性剤は、約0.5重量%の量で存在する。
【0069】
異なる態様としては、ポリマーが49.5重量%の量のヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)であり、界面活性剤が0.5重量%の量のラウリル硫酸ナトリウムであり、そして(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドが50重量%の量で存在する。
【0070】
他の態様としては、本発明は、固体分散体及び医薬的に許容される担体を含む医薬組成物を特徴とする。異なる態様としては、医薬組成物はさらに追加の治療剤を含む。異なる態様としては、追加の治療剤は、粘液溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染症剤、抗炎症剤、CFTR賦活剤又は栄養剤から選択される。
【0071】
他の態様としては、本発明は、(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドをスプレードライすることを含む、アモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドの製造方法を特徴とする。
【0072】
異なる態様としては、本方法は(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド及び適切な溶媒を組合わせ、続いて混合物をスプレードライしてアモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドを得ることを含む。
異なる態様としては、溶媒はアルコールである。
異なる態様としては、溶媒はメタノールである。
【0073】
異なる態様としては、以下の方法を含む:a)(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド、ポリマー、及び溶媒の混合物を形成すること;そしてb)混合物をスプレードライして固体分散体を形成すること。
【0074】
異なる態様としては、ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)である。異なる態様としては、ポリマーが固体分散体の10重量%ないし80重量%の量である。異なる態様としては、ポリマーが固体分散体の約49.5重量%の量である。異なる態様としては、溶媒はメタノールである。異なる態様としては、混合物は更に界面活性剤を含む。異なる態様としては、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム(SLS)である。異なる態様としては、界面活性剤は固体分散体の0.1%重量ないし5重量%の量である。異なる態様としては、界面活性剤は固体分散体の約0.5重量%の量である。
【0075】
異なる態様としては、ポリマーが、固体分散体の約49.5重量%の量であるヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)であり、溶媒はメタノールであり、混合物がさらに固体分散体の約0.5重量%の量であるラウリル硫酸ナトリウムを含む。
【0076】
他の態様としては、本発明は、フォームA、アモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド、又はアモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドの固体分散体の有効量を対象に投与することを含む、対象におけるCFTR介在性疾患の処置方法を特徴とする。
【0077】
異なる態様としては、CFTR介在性疾患は嚢胞性線維症、喘息、喫煙誘発性COPD、慢性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、膵炎、膵機能不全、先天性両側精管欠損症(CBAVD)に起因する男性不妊、軽度肺疾患、突発性膵炎、アレルギー性気管支肺アルペルギルス症(ABPA)、肝疾患、遺伝性肺気腫、遺伝性血色素症、血液凝固−線維素溶解欠乏症、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質プロセシング欠損症、家族性高コレステロール血症、1型乳糜血症、無βリポタンパク血症、リソソーム性蓄積症、I細胞病/偽ハーラー症、ムコ多糖症、サンドホフ病/テイ−サックス病、クリグラー・ナジャー症候群II型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、糖尿病、ラロン小人症、ミエロオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能亢進症、メラノーマ、グリカノーシス(glycanosis)CDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠損症、糖尿病性尿崩症(DI)、骨端軟骨性DI、腎性DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェーウス・メルバッハー病(Perlizaeus-Merzbacher disease)、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺(progressive supranuclear plasy)、ピック病、数種のポリグルタミン神経障害、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調症I型(spinocerebullar ataxia type I)、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubal pallidoluysian)、筋緊張性ジストロフィ、海綿状脳症、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損による)、ファブリー病、シュトロイスラー・シャインカー症候群、COPD、眼乾燥疾患、シェーグレン病、骨粗鬆症、骨減少症、ゴーラム症候群、塩素チャネル病、先天性筋強直症(トムソン型およびベッカー型)、バーター症候群III型、デント病、驚愕過剰症、てんかん、驚愕過剰症、リソソーム蓄積症、アンジェルマン症候群、原発性線毛ジスキネジア(PCD)、線毛の構造および/または機能の遺伝性障害、内蔵逆位を伴うPCD(カルタゲナー症候群としても公知)、内蔵逆位を伴わないPCD又は線毛体無形成から選択される。異なる態様としては、CFTR介在性疾患は、嚢胞性線維症である。異なる態様としては、対象は、ΔF508変異を有する嚢胞性線維症膜貫通型受容体(CFTR)を有する。異なる態様としては、対象は、R117H変異を有する嚢胞性線維症膜貫通型受容体(CFTR)を有する。異なる態様としては、対象は、G551D変異を有する嚢胞性線維症膜貫通型受容体(CFTR)を有する。
【0078】
異なる態様としては、方法は、追加の治療剤を投与することを含む。異なる態様としては、治療剤は、粘液溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染症剤、抗炎症剤、CFTR賦活剤又は栄養剤から選択される。
【0079】
異なる態様としては、本発明は、フォームA、アモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド、又はアモルファスの(R)−1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−(1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−6−フルオロ−2−(1−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル)−1H−インドール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミドを含む固体分散体及びそれらの使用説明書を含むキットを特徴とする。
【0080】
化合物1のフォームA及びアモルファス形態の調製方法
【0081】
化合物1は出発点であり、ある態様としては、スキーム1−4に従い酸塩化物をアミン部分とカップリングさせることにより調製できる。
【0082】
スキーム1 酸塩化物部分の合成
【化3】
【0083】
スキーム2 酸塩化物部分の合成の別法
【化4】
【0084】
スキーム3 アミン部分の合成
【化5】
【0085】
スキーム4 化合物1の形成
【化6】
【0086】
化合物1のフォームAの形成の方法
【0087】
ある態様としては、フォームAを、化合物1を適切な溶媒において、有効な時間スラリー化することにより調製する。異なる態様としては、適切な溶媒は、酢酸エチル、ジクロロメタン、MTBE、酢酸イソプロピル、種々の割合の水/エタノール溶液、種々の割合の水/アセトニトリル溶液、種々の割合の水/メタノール溶液、又は種々の割合の水/イソプロピルアルコール溶液である。例えば、種々の割合の水/エタノール溶液には、水/エタノール 1:9(体積/体積)、水/エタノール 1:1(体積/体積)及び水/エタノール 9:1(体積/体積)を含む。種々の割合の水/アセトニトリル溶液には、水/アセトニトリル 1:9(体積/体積)、水/アセトニトリル 1:1(体積/体積)及び水/アセトニトリル 9:1(体積/体積)を含む。種々の割合の水/メタノール溶液には、水/メタノール 1:9(体積/体積)、水/メタノール 1:1(体積/体積)及び水/メタノール 9:1(体積/体積)を含む。種々の割合の水/イソプロピルアルコール溶液は、水/イソプロピルアルコール 1:9(体積/体積)、水/イソプロピルアルコール 1:1(体積/体積)および水/イソプロピルアルコール 9:1(体積/体積)を含む。
【0088】
一般に、化合物1約40mgを、適切な溶媒約1.5mL(目標濃度26.7mg/ml)中、室温で有効な時間スラリー化する。ある態様においては、有効な時間は、約24時間ないし2週間である。ある態様においては、有効な時間は、約24時間ないし約1週間である。ある態様においては、有効な時間は、約24時間ないし約72時間である。続いて固体を集める。
【0089】
異なる態様としては、フォームAを、化合物1を適切な溶媒に溶解させ、続いて溶媒を蒸発させることにより調製する。ある態様としては、適切な溶媒は化合物1の溶解性が20mg/mlよりも大きいものである。例えば、溶媒は、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン等を含む。
【0090】
一般に、化合物1を適切な溶媒に溶解させ、濾過し、続いて低速蒸発又は高速蒸発させる。低速蒸発の例は、1個の穿刺孔を有するパラフィルムで、化合物1溶液を含むコンテナ、例えばバイアルをカバーすることである。高速蒸発の例は、化合物1溶液を含むコンテナ、例えばバイアルを覆わないで放置することである。続いて固体を集める。
【0091】
他の態様としては、本発明は、化合物1を第1溶媒に溶解させ、化合物1が難溶性である第2溶媒(溶解性<1mg/ml)を加えることを含むフォームAの調製方法を特徴とする。例えば、第1溶媒は、化合物1が20mg/mlより大きい溶解性を有し、例えば、酢酸エチル、エタノール、イソプロピルアルコール又はアセトンがある。第2溶媒は、例えばヘプタン又は水である。
【0092】
一般に、化合物1を第1溶媒に溶解させ、いかなる種結晶をも濾過して除去する。第2溶媒を、攪拌しながらゆっくり加える。固体を沈殿させ、濾過により集める。
【0093】
アモルファス化合物1の調製方法
【0094】
化合物1又は化合物1のフォームAから出発し、化合物1のアモルファス形態をロータリーエバポレーション又はスプレードライ法により調製する。
【0095】
化合物1をメタノールのような適切な溶媒に溶解させ、ロータリーエバポレーションによりメタノールを除去し、泡状生成物を残すことにより化合物1のアモルファス形態を製造する。ある態様においては、蒸発を促進するために温水浴を用いる。
【0096】
化合物1のアモルファス形態はまたスプレードライ法を用いて化合物1のフォームAから調製されうる。スプレードライは、液体試料を乾燥粒子形態に変換する方法である。場合により、例えば流動床乾燥又は真空乾燥のような第二の乾燥方法を用いて、残留溶媒を薬学的に許容されるレベルに減少させてもよい。典型的には、スプレードライは、高度に分散した液体懸濁液又は溶液と液滴の蒸発及び乾燥に十分な用量の熱気を接触させることを含む。スプレードライされる調製物は、選択されたスプレードライ装置を用いて微粒子化されうるあらゆる溶液、粗懸濁液、スラリー、コロイド分散液又はペーストであってもよい。標準的な方法においては、調製物は、溶媒を蒸発させ、乾燥した生成物を収集器(例えば、サイクロン)に運ぶ、フィルタを通した温気流にスプレーされる。続いて、用いた空気を溶媒と共に排出させるか、又は用いた空気をコンデンサに送り、溶媒を捕捉し、可能であれば再利用する。スプレードライを行うために市販の型の装置を用いてもよい。例えば、市販のスプレードライヤーはブチ社(Buchi Ltd)及びニロ社(Niro)(例えば、ニロ社により製造されたスプレードライヤーのPSDライン)により製造される(米国特許出願2004/0105820号;米国特許出願2003/0144257号参照)。
【0097】
スプレードライは典型的には、約3%ないし約30重量%、例えば、約4%ないし約20重量%、好ましくは約10%の固体物質負荷(すなわち、薬物及び賦形剤)を用いる。一般には、固体負荷の上限は、生成する溶液の粘度(例えば、ポンプで押し出すことのできる能力)及び溶液中の成分の溶解性に支配される。一般には、溶液の粘度は、生成する粉末生成物の粒子の大きさを決定しうる。
【0098】
スプレードライの技術及び方法は、Perry’s Chemical Engineering Handbook、6th Ed.、R. H. Perry、D. W. Green & J. O. Maloney、eds.)、McGraw−Hill book co.(1984);及びMarshall「Atomization and Spray−Drying」 50、Chem. Eng. Prog. Monogr. Series 2(1954)に記載されている。一般に、スプレードライは、入力口の温度が約60℃ないし約200℃、例えば約95℃ないし約185℃、約110℃ないし約182℃、約96℃ないし約180℃、例えば、約145℃である。スプレードライは一般に、出力口の温度が約30℃ないし約90℃、例えば約40℃ないし約80℃、約45℃ないし約80℃、例えば、約75℃で実施される。微粒子化流速は、一般に約4kg/時ないし約12kg/時、例えば約4.3kg/時ないし約10.5kg/時、例えば、約6kg/時又は約10.5kg/時である。流加速度は、一般に約3kg/時ないし約10kg/時、例えば、約3.5kg/時ないし約9.0kg/時、例えば、約8kg/時又は約7.1kg/時である。微粒子化比率は、一般に約0.3ないし1.7、例えば約0.5ないし1.5、例えば、約0.8又は約1.5である。
【0099】
溶媒の除去は、続く乾燥工程、例えば、トレードライ、流動床乾燥(例えば室温付近ないし約100℃)、真空乾燥、電磁波乾燥、ロータリードラム乾燥又はバイコニカル真空乾燥(例えば室温付近ないし約200℃)を要しうる。
【0100】
ある態様としては、固体分散体を流動床乾燥させる。
【0101】
ある方法としては、溶媒は揮発性溶媒、例えば約100℃未満の沸点を有する溶媒である。ある態様においては、溶媒は溶媒の混合物を含み、例えば揮発性溶媒又は揮発物及び不揮発性溶媒の混合物を含む。溶媒の混合物が用いられる場合には例えば約15%未満の、例えば約12%未満の、約10%未満の、約8%未満の、約5%未満の、約3%未満の又は約2%未満の不揮発性溶媒が存在するならば、混合物は1種以上の不揮発性溶媒を含むことができる。
【0102】
好ましい溶媒は、化合物1が少なくとも約10mg/ml、(例えば、少なくとも約15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg/ml、45mg/ml、50mg/ml又はそれより高い)の溶解性を有する溶媒である。より好ましくは、溶媒は、化合物1が少なくとも約20mg/mlの溶解性を有するものを含む。
【0103】
試験しうる溶媒の例としては、アセトン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、酢酸エチル、エチルエーテル、氷酢酸(HAc)、メチルエチルケトン(MEK)、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、tert−ブチルメチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、ペンタン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸イソプロピル及びトルエンを含む。共溶媒の例としては、アセトン/DMSO、アセトン/DMF、アセトン/水、MEK/水、THF/水、ジオキサン/水を含む。2溶媒系においては、溶媒は約0.1%ないし約99.9%で存在しうる。好ましい態様としては、水を共溶媒としてアセトンと併用し、ここで水は約0.1%ないし約15%、例えば約9%ないし約11%、例えば、約10%で存在する。好ましい態様としては、水を共溶媒としてMEKと併用し、ここで水は約0.1%ないし約15%、例えば約9%ないし約11%、例えば、約10%で存在する。ある態様としては、溶媒溶液は3種の溶媒を含む。例えば、アセトン及び水を第3の溶媒、例えばDMA、DMF、DMI、DMSO又はHAcと混合できる。アモルファス化合物1が固体アモルファス分散体の成分である場合、好ましい溶媒は、化合物1とポリマーの両方を溶解する。適切な溶媒は上述したものを含み、例えば、MEK、アセトン、水、メタノール、及びそれらの混合物がある。
【0104】
粒子径及び乾燥温度範囲は、最適な固体分散体を調製するために変更されうる。当業者には理解されているであろうが、小粒子径では、溶媒の除去を改善しうる。しかし、出願人は、より小さな粒子は綿毛状粒子となり得て、それはある条件下では、下流のプロセシング、例えば錠剤化において最適な固体分散体を提供しないことを見出した。より高温では、化合物1の結晶化又は化学分解が起こりうる。より低温では、十分な量の溶媒を除去できない。本明細書の方法は、最適な粒子径及び最適な乾燥温度を提供する。
【0105】
一般に、粒子径は、例えばD10(μm)が約5未満、例えば、約4.5未満、約4.0未満又は約3.5未満、D50(μm)は一般に約17未満、例えば約16未満、約15未満、約14未満、約13未満であり、そしてD90(μm)が一般に約175未満、例えば約170未満、約170未満、約150未満、約125未満、約100未満、約90未満、約80未満、約70未満、約60未満、又は約50未満である。一般に、スプレードライした粒子のかさ密度は約0.08g/ccないし約0.20g/cc、例えば約0.10ないし約0.15g/cc、例えば、約0.11g/cc又は約0.14g/ccである。スプレードライした粒子のタップ密度は、一般に10タップで、約0.08g/ccないし約0.20g/cc、例えば約0.10ないし約0.15g/cc、例えば約0.11g/cc又は約0.14g/ccの範囲である;500タップにつき、0.10g/ccないし約0.25g/cc、例えば約0.11ないし約0.21g/cc、例えば、約0.15g/cc、約0.19g/cc又は約0.21g/ccである;1250タップにつき、0.15g/ccないし約0.27g/cc、例えば約0.18ないし約0.24g/cc、例えば、約0.18g/cc、約0.19g/cc、約0.20g/cc又は約0.24g/ccである;及び2500タップで、0.15g/ccないし約0.27g/cc、例えば約0.18ないし約0.24g/cc、例えば、約0.18g/cc、約0.21g/cc、約0.23g/cc又は約0.24g/ccである。
【0106】
ポリマー
【0107】
アモルファス化合物1及びポリマー(又は固体状態担体)を含む固体分散体もまたここに含まれる。例えば、化合物1は固体アモルファス分散体の成分としてのアモルファス化合物として存在する。固体アモルファス分散体は、一般に化合物1及びポリマーを含む。ポリマーの例は、セルロースポリマー、例えば、HPMC又はHPMCAS及びPVP/VAのようなポリマーを含有するピロリドンを含む。ある態様においては、固体アモルファス分散体は、1種以上の追加の賦形剤、例えば界面活性剤を含む。
【0108】
ある態様としては、ポリマーは、水性の媒体に溶解させることができる。ポリマーの溶解性は、pH−非依存性又はpH−依存性でありうる。後者は、1種以上の腸溶性ポリマーを含みうる。用語「腸溶性ポリマー」は、胃の酸性環境下と比較して、酸性度の低い腸の環境において優先的に溶解するポリマー、例えば、酸性水性媒体には不溶だがpH5−6より高い場合に溶解するポリマーを言う。適切なポリマーは化学的及び生物学的に不活性でなければならない。固体分散体の物理的安定性を改善するため、ポリマーのガラス遷移温度(Tg)はできるだけ高いべきである。例えば、好ましいポリマーは、薬物(すなわち、化合物1)と少なくとも等しいか又は高いガラス遷移温度を有する。他の好ましいポリマーは、薬物(すなわち、化合物1)の約10ないし約15℃の範囲内のガラス遷移温度を有する。ポリマーの適切なガラス遷移温度の例は、少なくとも約90℃、少なくとも約95℃、少なくとも約100℃、少なくとも約105℃、少なくとも約110℃、少なくとも約115℃、少なくとも約120℃、少なくとも約125℃、少なくとも約130℃、少なくとも約135℃、少なくとも約140℃、少なくとも約145℃、少なくとも約150℃、少なくとも約155℃、少なくとも約160℃、少なくとも約165℃、少なくとも約170℃又は少なくとも約175℃(乾燥条件下で測定)を含む。理論に束縛されるわけではないが、根底のメカニズムは、Tの高いポリマーは一般に、アモルファス固体分散体の物理的安定性に重要な因子である室温での分子運動性が低いと考えられる。
【0109】
加えて、ポリマーの吸湿性はできるだけ低い、例えば約10%未満でなければならない。この出願における比較のため、ポリマー又は組成物の吸湿性は相対湿度約60%において特徴付けられる。好ましい態様としては、ポリマーは約10%未満の吸水性であり、例えば約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満又は約2%未満の吸水性である。吸湿性は、また固体分散体の物理的安定性にも影響しうる。一般に、ポリマーに吸収される湿気は、ポリマー並びに生成した固体分散体のTgを大きく低下させ得て、それはさらに上述のとおり固体分散体の物理的安定性を減少させる。
【0110】
ある態様としては、ポリマーは1種以上の水溶性ポリマー又は部分的に水溶性であるポリマーである。水溶性又は部分的に水溶性であるポリマーは、セルロース誘導体(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))又はエチルセルロース;ポリビニルピロリドン(PVP);ポリエチレングリコール(PEG);ポリビニルアルコール(PVA);アクリル酸、例えば、ポリメタクリレート(例えばオイドラジット(登録商標)E);シクロデキストリン(例えばβ−シクロデキストリン)及びそれらの共重合体及び誘導体を含み、例えば、PVP−VA(ポリビニルピロリドン−ビニルアセテート)を含むが、これらに限定されない。
【0111】
ある態様においては、ポリマーはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、例えば、HPMC E50、HPMCE15又はHPMC60SH50)である。
【0112】
ここに記載するとおり、ポリマーは、pH−依存性腸溶性ポリマーでありうる。そのようなpH−依存性腸溶性ポリマーは、セルロース誘導体(例えばセルロースアセテートフタレート(CAP))、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HPMCP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はそれらの塩(例えばナトリウム塩(CMC−Na));セルロースアセテートトリメリテート(CAT)、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート(HPCAP)、ヒドロキシプロピルメチル−セルロースアセテートフタレート(HPMCAP)及びメチルセルロースアセテートフタレート(MCAP)、又はポリメタクリレート(例えばオイドラジット(登録商標)S)を含むが、これらに限定されない。ある態様においては、ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)。ある態様においては、ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートHGグレード(HPMCAS−HG)である。
【0113】
更に別の態様としては、ポリマーはポリビニルピロリドン共重合体、例えば、ビニルピロリドン/ビニルアセテート共重合体(PVP/VA)である。
【0114】
化合物1が例えば、HPMC、HPMCAS又はPVP/VAポリマーのようなポリマーと固体分散体を形成する場合の態様においては、例えば、固体分散体の総重量に対するポリマーの相対的な量は約0.1〜99重量%の範囲である。他に特定しない限り、本明細書中に記載した分散体における薬物、ポリマー及び他の賦形剤のパーセンテージは、重量パーセントである。ポリマーの量は、典型的には、少なくとも約20%であり、好ましくは少なくとも約30%、例えば少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%又は約50%(例えば49.5%)である。量は、典型的には約99%以下であり、好ましくは約80%以下、例えば、約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下又は約55%以下である。ある態様としては、ポリマーは分散体の総重量の約50%までの量である(及び更に具体的には、約40%と50%の間、例えば約49%、約49.5%又は約50%)。HPMC及びHPMCASは、信越化学から種々のグレードで入手でき、例えば、HPMCASは、AS−LF、AS−MF、AS−HF、AS−LG、AS−MG、AS−HGを含み、多種を入手できる。これらの各グレードはアセテート及びスクシネートの置換パーセントにより変化する。
【0115】
ある態様においては、化合物1とポリマーはほぼ等量で存在し、例えば、ポリマー及び薬物は、それぞれ分散体の約半分の重量パーセントを構成する。例えば、ポリマーは、約49.5%で存在し、薬物は約50%で存在する。
【0116】
ある態様においては、化合物1及びポリマーは合わせて、スプレードライ前の非固体分散体において、総固体成分の1%ないし20%w/w存在する。ある態様においては、化合物1及びポリマーは合わせて、スプレードライ前の非固体分散体において、総固体成分の5%ないし15%w/w存在する。ある態様においては、化合物1及びポリマーは合わせて、スプレードライ前の非固体分散体において、総固体成分の約11%w/w存在する。
【0117】
ある態様においては、分散体は更に、他の少量の成分、例えば界面活性剤(例えばSLS)を含む。ある態様においては、界面活性剤は、分散体の約10%未満、例えば、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%又は約0.5%で存在する。
【0118】
ポリマーを含む態様において、ポリマーは固体分散体の安定化に有効な量存在しなければならない。安定化は、化合物1の結晶化の阻害又は防止を含む。そのような安定化は、化合物1のアモルファスから結晶形態への変換を阻害する。例えば、ポリマーは、化合物1がアモルファスから結晶形態へ変換することを少なくとも一部(例えば、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%又はそれより多く)防ぐ。安定化は、例えば、固体分散体ガラス遷移温度の測定、アモルファス物質の緩和速度の測定、又は化合物1の溶解性又はバイオアベイラビリティの測定により測定できる。
【0119】
例えば、固体分散体、例えば、アモルファス固体分散体を形成するために化合物1と組み合わせて用いられる適切なポリマーは以下の性質の1つ以上を有するべきである:
【0120】
ポリマーのガラス遷移温度は、化合物1のガラス遷移温度より約10−15℃以上低くない。好ましくは、ポリマーのガラス遷移温度は化合物1のガラス遷移温度より高く、一般に所望の医薬品の貯蔵温度よりも少なくとも50℃高い。例えば、少なくとも約100℃、少なくとも約105℃、少なくとも約105℃、少なくとも約110℃、少なくとも約120℃、少なくとも約130℃、少なくとも約140℃、少なくとも約150℃、少なくとも約160℃、少なくとも約160℃、又はそれより高い。
【0121】
ポリマーは比較的非吸湿性でなければならない。例えば、ポリマーは、標準的な条件下で貯蔵した場合に、約10%未満の水、例えば約9%未満の、約8%未満の、約7%未満の、約6%未満の、又は約5%未満の、約4%未満の、又は約3%未満の水しか吸収してはならない。好ましくは、標準的な条件下で貯蔵したとき、実質的に吸収水を含まない。
【0122】
ポリマーは、スプレードライ工程に適切な溶媒に、化合物1と比較して、同様の又はより良好な溶解性を有しなければならない。好ましい態様としては、ポリマーは、化合物1と同じ1種以上の溶媒又は溶媒系に溶解する。ポリマーは、少なくとも1種の非ヒドロキシ含有溶媒、例えば塩化メチレン、アセトン、又はそれらの混合物に溶解することが好ましい。
【0123】
ポリマーは、例えば、固体分散体又は液体懸濁液で化合物1と組み合わせたとき、ポリマー非存在下の化合物1又は参照ポリマーと組合わせたときの化合物1と比較して、水性及び生理学的に関連する媒体において、化合物1の溶解性を増加させなければならない。例えば、ポリマーは、固体アモルファス分散体又は懸濁液から結晶化合物1に変換するアモルファス化合物1の量を減らすことにより、アモルファス化合物1の溶解性を増加させうる。
【0124】
ポリマーは、アモルファス物質の緩和速度を減少させなければらない。
【0125】
ポリマーは、化合物1の物理的及び/又は化学的安定性を増加させなければならない。
【0126】
ポリマーは、化合物1の製造性を改善しなければならない。
【0127】
ポリマーは、化合物1の取り扱い、投与又は貯蔵性の1つ以上を改善しなければならない。
【0128】
ポリマーは、例えば、賦形剤である他の薬学的成分と好ましくない相互作用をしてはならない。
【0129】
候補ポリマー(又は他の成分)の適切さは、本明細書に記載したスプレードライ法(又は他の方法)を用いてアモルファス組成物を形成することにより試験できる。候補組成物は、安定性、結晶形成に対する耐性、又は他の性質の点で比較し、及び例えば、そのままの(neat)アモルファス化合物1又は結晶性の化合物1の参照化合物の調製物に対して比較できる。例えば、候補組成物は、溶媒媒介性結晶化の開始時間を遅らせるか、又は制御された条件下で一定時間内の変換率が、参照物質と比較して少なくとも50%、75%、100%又は110%良いかどうかを決定するために試験でき、又は候補組成物が結晶化合物1と比較して改善されたバイオアベイラビリティ又は溶解性を有するかどうかを決定するために試験できる。
【0130】
界面活性剤
【0131】
固体分散体または他の組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤又は界面活性剤混合物は、固体分散体と水性媒体の間の界面張力を一般に低下させる。適切な界面活性剤又は界面活性剤混合物は、また、固体分散体の化合物1の溶解性及びバイオアベイラビリティを促進しうる。本発明に関連して使用するための界面活性剤は、脂肪酸エステル(例えばスパン(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばツイン(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム(SDBS)、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(Docusate)、ジオキシコール酸ナトリウム(DOSS)、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HTAB)、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ミニステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ゲルシール44/14、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ビタミン E d−アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000サクシネート(TPGS)、レシチン、MW 677−692、グルタミン酸一ナトリウム一水和物、ラブラゾール、PEG 8(カプリル/カプリン酸)グリセリル、トランスクトール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ソルトールHS−15、ポリエチレングリコール/ヒドロキシステアレート、タウロコール酸、プルロニックF68、プルロニックF108、及びプルロニックF127(又は他のポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体(プルロニック(登録商標))又は飽和ポリグリコール化グリセリド(ゲルシール(登録商標)))を含むが、これらに限定されない。本発明と関連して用いられるそのような界面活性剤の具体例としては、スパン65、スパン25、ツイン20、カプロイル90、プルロニックF108、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ビタミン E TPGS、プルロニック類及び共重合体を含むが、これらに限定されない。SLSが一般に好ましい。
【0132】
固体分散体の総重量に対する界面活性剤(例えばSLS)の量は、0.1−15%でありうる。好ましくは約0.5%ないし約10%であり、より好ましくは約0.5ないし約5%であり、例えば約0.5ないし4%、約0.5ないし3%、約0.5ないし2%、約0.5ないし1%又は約0.5%である。
【0133】
特定の態様としては、固体分散体の総重量に対する界面活性剤の量は、少なくとも約0.1%であり、好ましくは約0.5%である。これらの態様において、界面活性剤は約15%以下で存在し、好ましくは約12%、約11%、約10%、約9%、約8%、約7%、約6%、約5%、約4%、約3%、約2%又は約1%以下である。界面活性剤が約0.5重量%の量で存在する場合が好ましい。
【0134】
候補界面活性剤(又は他の成分)は、発明で使用する適切さについてポリマーの試験において述べたのと類似の方法で試験できる。
【0135】
用途、製剤及び投与
【0136】
薬学的に許容される組成物
【0137】
本発明の他の態様としては、本明細書中に記載の化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1を含み、場合により医薬的に許容される担体、補助剤又は媒体を含む薬学的に許容される組成物を提供する。特定の態様としては、これらの組成物は、場合により1つ以上の追加の治療剤を含む。
【0138】
上述したとおり、本発明の薬学的に許容される組成物は、追加的に医薬的に許容される担体、補助剤又は媒体を含み、これは、ここで使用される場合、所望の特定の投与形態に適した、溶媒、希釈剤、又は他の液体担体、分散体又は懸濁液剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤、固形結合剤、滑沢剤等のいずれかおよび全てを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences、Sixteenth Edition、E. W. Martin(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1980)は、薬学的に許容される組成物の製剤化に用る種々の担体及びそれらの製剤の公知の技術を開示する。従来の担体媒体が本発明の化合物と不適合である、例えば、望ましくない生物学的効果を生じるか、あるいは他の薬学的に許容される組成物のいずれかの成分と有害な方法で相互作用する場合を除いて、その使用は本発明の範囲に含まれる。医薬的に許容される担体として作用できる物質のいくつかの例としては、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、又はソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素ジナトリウム、リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三珪酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖、例えば乳糖、グルコース及びショ糖;デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバター及び坐剤ろう;油脂、例えば落花生油、綿実油;サフラワー油;ゴマ油;オリーブ油;コーン油及び大豆油;グリコール;例えば、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリル酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱性物質除去蒸留水;等張生理食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール及びリン酸緩衝溶液、並びに他の非毒性で混合可能な滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムを含むがこれらに限定されず、同様に着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤もまた製剤者の判断により組成物中に存在していてもよい。
【0139】
化合物及び薬学的に許容される組成物の用途
【0140】
また別の態様として、本発明は、CFTRに関わる病態、疾患、又は障害の処置方法を提供する。特定の態様としては、本発明は、CFTR活性の不全が関わる病態、疾患、又は障害の処置方法であって、本明細書中に記載の化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1の固相形態を、それを必要とする対象、好ましくは哺乳類に投与することを含む方法を提供する。
【0141】
ここで使用される場合「CFTR介在性疾患」は、嚢胞性線維症、喘息、喫煙誘発性COPD、慢性気管支炎、鼻副鼻腔炎、便秘、膵炎、膵機能不全、先天性両側精管欠損症(CBAVD)に起因する男性不妊、軽度肺疾患、突発性膵炎、アレルギー性気管支肺アルペルギルス症(ABPA)、肝疾患、遺伝性肺気腫、遺伝性血色素症、血液凝固−線維素溶解欠乏症、プロテインC欠乏症、1型遺伝性血管浮腫、脂質プロセシング欠損症、家族性高コレステロール血症、1型乳糜血症、無βリポタンパク血症、リソソーム性蓄積症、I細胞病/偽ハーラー症、ムコ多糖症、サンドホフ病/テイ−サックス病、クリグラー・ナジャー症候群II型、多腺性内分泌障害/高インスリン血症、糖尿病、ラロン小人症、ミエロオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能亢進症、メラノーマ、グリカノーシスCDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノーゲン血症、ACT欠損症、糖尿病性尿崩症(DI)、骨端軟骨性DI、腎性DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリツェーウス・メルバッハー病(Perlizaeus-Merzbacher disease)、神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺(progressive supranuclear plasy)、ピック病、数種のポリグルタミン神経障害、ハンチントン病、脊髄小脳性運動失調症I型(spinocerebullar ataxia type I)、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubal pallidoluysian)、筋緊張性ジストロフィ、海綿状脳症、遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオンタンパク質プロセシング欠損による)、ファブリー病、シュトロイスラー・シャインカー症候群、COPD、眼乾燥疾患、シェーグレン病、骨粗鬆症、骨減少症、ゴーラム症候群、塩素チャネル病、先天性筋強直症(トムソン型およびベッカー型)、バーター症候群III型、デント病、驚愕過剰症、てんかん、驚愕過剰症、リソソーム蓄積症、アンジェルマン症候群、原発性線毛ジスキネジア(PCD)、線毛の構造および/または機能の遺伝性障害、内蔵逆位を伴うPCD(カルタゲナー症候群としても公知)、内蔵逆位を伴わないPCD又は線毛体無形成から選択される。
【0142】
特定の態様としては、本発明は、本明細書に記載の化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1の有効量をヒトに投与する過程を含む、該ヒトにおけるCFTR介在性疾患の処置方法を提供する。
【0143】
異なる好ましい態様としては、本発明は、本明細書に記載の化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1をヒトに投与する過程を含む、該ヒトにおける嚢胞性線維症を処置する方法を提供する
【0144】
本発明において、化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1又はそれらの薬学的に許容される組成物の「有効量」は、上記疾患のいずれかを処置するか又は重症度を軽減するのに有効な量を意味する。
【0145】
化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1又はそれらの薬学的に許容される組成物は、上記疾患の1つ以上を処置するか又は重症度を軽減するのに有効な任意の量及び任意の経路を用いて投与してよい。
【0146】
特定の態様としては、本明細書に記載の化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1又はそれらの薬学的に許容される組成物は、呼吸器及び非呼吸器の上皮頂端膜において残存CFTR活性を示す嚢胞性線維症の患者において、疾患を処置するか又は重症度を軽減するのに有効である。上皮表面の残存CFTR活性の存在は、当該分野において知られた方法、例えば標準的な電気生理学的、生化学的又は組織化学的技術を使用して、容易に検出できる。そのような方法は、インビボ又はエクスビボにおける電気生理学的技術、汗又は唾液中におけるCl濃度の測定、又はエクスビボにおける細胞表面密度をモニターするための生化学的又は組織化学的技術を用いて、CFTR活性を同定する。そのような方法を用いることにより、最も一般的な変異であるΔF508、並びに、他の変異、例えばG551D変異又はR117H変異についてホモ接合又はヘテロ接合である患者を含む、種々の異なる変異についてヘテロ接合又はホモ接合である患者において、残存CFTR活性が容易に検出される。
【0147】
ある態様としては、本明細書中に記載の化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1又はそれらの薬学的に許容される組成物は、残存CFTR活性を示す特定の遺伝子型、例えばクラスIII変異(制御又はゲーティング障害)、クラスIV変異(伝導率変更)、又はクラスV変異(合成減少)(Lee R. Choo−Kang、Pamela L.、Zeitlin、Type I、II、III、IV、and V cystic fibrosis Tansmembrane Conductance Regulator Defects and Opportunities of Therapy;Current Opinion in Pulmonary Medicine 6:521−529、2000)を示す嚢胞性線維症を処置又は重症度を軽減するのに役立つ。残存CFTR活性を示す他の遺伝子型の患者には、これらのクラスの1種に対してホモ接合性であるか、またはクラスI変異、クラスII変異もしくはそうした分類のない変異を含む任意の他の部類の変異とヘテロ接合性である患者が含まれる。
【0148】
ある態様としては、本明細書に記載の化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1又はそれらの薬学的に許容される組成物は、特定の臨床表現型、例えば典型的に上皮頂端膜における残存CFTR活性の量と相関する軽度から中度の臨床表現型の嚢胞性線維症患者の処置又は重症度の軽減に有効である。そのような表現型は、膵機能不全を示す患者又は突発性膵炎及び先天性両側精管欠損症、又は軽度肺疾患と診断された患者を含む。
【0149】
必要となる正確な量は、患者の種、年齢、及び全身状態、感染の重症度、特定の薬剤、投与方法等に依存し、患者ごとに異なる。本発明の化合物は、投与の簡易化及び用量の統一性のため、投与単位形態に製剤化されることが好ましい。表現「投与単位形態」はここで使用される場合、処置される患者に適切な、物理的に区別されたユニットをいう。しかし、本発明の化合物及び組成物の一日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で、担当医によって判断されることは理解されるであろう。特定の任意の患者又は生物における、具体的な有効量レベルは、治療される疾患及び疾患の重症度;用いる特定の化合物の活性;用いる特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康度、性別及び食習慣;投与時間、投与経路、及び用いる特定の化合物の排泄速度;処置期間;特定の化合物と組み合わせて又は同時に用いる薬物及び医学分野においてよく知られている同様の因子を含む様々な因子に依存する。本明細書において使用される場合、用語「患者」又は「対象」は、動物、好ましくは哺乳類、及び最も好ましくはヒトである。
【0150】
本発明の薬学的に許容される組成物は、ヒト及び他の動物に、処置する感染症の重症度に依存して、経口的、直腸的、非経腸的、嚢内、膣内、腹腔内、局所(散剤、軟膏剤、又は滴薬として)、口腔内、経口又は経鼻スプレー等により投与される。特定の態様としては、本発明の化合物を、所望の治療効果を得るために、対象の体重に応じて1日あたり、約0.01mg/kgないし約50mg/kg、好ましくは約1mg/kgないし約25mg/kgで、1日1回以上、経口又は非経腸的に投与してよい。
【0151】
特定の態様としては、化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1の投与単位形態は100mgないし1,000mgの用量である。異なる態様としては、化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1の投与用量は、200mgないし900mgである。異なる態様としては、化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1の投与用量は、300mgないし800mgである。異なる態様としては、化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1の用量は、400mgないし700mgである。異なる態様としては、化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1の用量は、500mgないし600mgである。
【0152】
注射用製剤、例えば、滅菌した水溶性又は油性注射用懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用いて当該分野において知られた技術によって調製されうる。滅菌の注射用製剤は、例えば1,3−ブタンジオール溶液のような、非毒性の非経腸的に許容可能な希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液又は乳濁液でありうる。用いられうる許容可能な担体及び溶媒は、水、リンガー溶液、U.S.P.及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌固定油は、好都合に溶媒又は懸濁媒体として用いられる。この目的で、合成のモノ又はジグリセリドを含む固定油を含むあらゆる無菌の固定油を使用できる。加えて、脂肪酸、例えば、オレイン酸が注射剤の調製に用いられる。
【0153】
注射用製剤は、例えば、バクテリア−保持フィルタで濾過することにより、又は使用前に滅菌水又は他の注射可能な媒体に溶解又は分散させることができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことにより、滅菌される。
【0154】
直腸又は膣内投与用組成物は、好ましくは、本発明の化合物と、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、それゆえ直腸又は膣腔内では溶解し、活性化合物を放出する、適切な非刺激性の賦形剤又は担体、例えばココアバター、ポリエチレングリコール又は坐剤蝋を混合することにより調製できる坐剤である。
【0155】
固体投与形態は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤を含む。そのような投与形態においては、活性化合物は、少なくとも1種の不活性な、薬学的に許容される賦形剤又は担体、例えば、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム及び/又はa)充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトール、及びケイ酸、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、ショ糖、及びアカシア、c)保湿剤、例えば、グリセロール、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム、e)遅延剤、例えば、パラフィン、f)吸収促進剤、例えば4級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロール、h)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイトクレイ、及びi)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合、投与形態は、緩衝剤を含んでもよい。
【0156】
類似の型の固体組成物はまた、乳糖又は乳糖並びに高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を用いた、軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル剤の充填剤として用いてもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤の固体投与形態は、コーティング及びシェル、例えば腸溶性コーティング並びに薬学の製剤分野において知られている他のコーティングと共に調製できる。それらは場合により、不透明剤を含み得、また、腸管の特定の部分においてのみ又はそこで優先的に、必要に応じて遅延様式で活性成分を放出する組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質および蝋が挙げられる。同様の型の固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質充填ゼラチンカプセル剤および硬質充填ゼラチンカプセル剤において充填剤として使用され得る。
【0157】
活性化合物はまた、上記の1種以上の賦形剤を有するマイクロカプセル化形態でありうる。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体投薬形態は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶性コーティング、放出制御コーティングおよび製剤分野においてよく知られた他のコーティングとともに調製され得る。このような投与形態において、活性成分をショ糖、乳糖またはデンプンのような少なくとも1種の希釈剤と混合してよい。このような投与形態は、慣行どおり、不活性希釈剤、例えば、錠剤化滑沢剤および他の錠剤化補助剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース以外のさらなる物質を含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、その投与形態はまた、緩衝化剤を含み得る。それらは、場合に応じて、不透明剤を含み得、また、腸管の特定の部分においてのみ又はそこで優先的に、場合に応じて、遅延様式で活性成分を放出する組成物であり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質および蝋が挙げられる。
【0158】
本明細書中に記載の化合物1のフォームA又、アモルファス化合物1又はそれらの薬学的に許容される組成物はまた組合せ治療で用いることができ、すなわち、化合物1のフォームA又はアモルファス化合物1を1種以上の他の所望の治療剤または医療的手順と同時に、その前に、またはその後に投与できることも理解されるであろう。組み合わせレジメンにおいて使用する治療(治療剤または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療剤および/または手順の適合性ならびに達成すべき所望の治療効果を考慮する。使用される治療が、同じ障害に対する所望の効果を達成し得る(例えば、本発明の化合物を同じ障害を処置するために使用される別の薬剤と同時に投与してよい)か、またはそれらが異なる効果を達成し得る(例えば、何らかの有害作用の制御)こともまた理解されるであろう。ここで使用される場合、特定の疾患又は状態を処置又は予防するために通常投与される追加の治療剤は、「処置される治療又は状態に適切である」として知られている。
【0159】
ある態様としては、追加の薬剤は、粘液溶解剤、気管支拡張剤、抗生物質、抗感染症剤、抗炎症剤、本発明の化合物以外のCFTR調節剤、及び栄養剤から選択される。
【0160】
ある態様としては、追加の薬剤は、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸である。異なる態様としては、追加の薬剤は、N−(5−ヒドロキシ−2,4−ジtert−ブチル−フェニル)−4−オキソ−1H−キノリン−3−カルボキサミドである。異なる態様としては、追加の薬剤は、表1から選択される。
表1
【表1】

【表2】

異なる態様としては、追加の薬剤は、上述の薬剤の任意の組合せである。例えば、組成物は、化合物1、3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)シクロプロパンカルボキサミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸及びN−(5−ヒドロキシ−2,4−ジtert−ブチル−フェニル)−4−オキソ−1H−キノリン−3−カルボキサミドを含んでよい。他の例としては、組成物は、化合物1、N−(5−ヒドロキシ−2,4−ジtert−ブチル−フェニル)−4−オキソ−1H−キノリン−3−カルボキサミド、表1に記載の化合物のいずれか、すなわち表1の化合物1ないし14、又はそれらの任意の組合せを含んでよい。
【0161】
ある態様としては、追加の治療剤は抗生物質である。有用な抗生物質としては、トブラマイシン吸入パウダー(TIP)を含むトブラマイシン、アジスロマイシン、アズトレオナムのエアロゾル化形態を含むアズトレオナム、そのリポソーム形態を含むアミカシン、その吸入による適切な形態の製剤を含むシプロフロキサシン、そのエアロゾル化形態を含むレボフラキサシン、及び2種の抗生物質、例えば、ホスホマイシンとトブラマイシンの組み合わせを含む。
【0162】
異なる態様としては、追加の薬剤は粘液溶解剤である。ここで有効な粘液溶解剤の例には、プルモザイム(登録商標)が含まれる。
【0163】
異なる態様としては、追加の薬剤は気管支拡張剤である。気管支拡張剤の例には、アルブテロール、硫酸メタプロテレノール、酢酸ピルブテロール、サルメテロール又は硫酸テトラブリンが含まれる。
【0164】
異なる態様としては、追加の薬剤は、肺気道表面液の回復に効果的なものである。そうした薬剤は、細胞の内外での塩の動きを向上させ、肺気道中の粘液をより水和し、したがってより容易に浄化されるようにする。そうした薬剤の例には、高張食塩水、デヌホソル四ナトリウム([[(3S,5R)−5−(4−アミノ−2−オキソピリミジン−1−イル)−3−ヒドロキシオキソラン−2−イル]メトキシ−ヒドロキシホスホリル][[[(2R,3S,4R,5R)−5−(2,4−ジオキソピリミジン−1−イル)−3、4−ジヒドロキシオキソラン−2−イル]メトキシ−ヒドロキシホスホリル]オキシ−ヒドロキシホスホリル]リン酸水素)またはブロンキトール(bronchitol)(マンニトールの吸入用製剤)が含まれる。
【0165】
異なる態様としては、追加の薬剤は、抗炎症薬、すなわち肺の炎症を軽減できる薬剤である。ここで有用なそうした薬剤の例には、イブプロフェン、ドコサヘキサエン酸(DHA)、シルデナフィル、吸入用グルタチオン、ピオグリタゾン、ヒドロキシクロロキンまたはシンバスタチンが含まれる。
【0166】
異なる態様としては、追加の薬剤は、式Iの化合物以外のCFTR調節剤、すなわち、CFTR活性調節の効果を有する薬剤である。そうした薬剤の例には、アタルレン(「PTC124(登録商標)」;3−[5−(2−フルオロフェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル]安息香酸)、シナプルチド、ランコブチド(lancovutide)、デペレスタット(ヒト組換え好中球エラスターゼ阻害剤)、コビプロストン(7−{(2R、4aR、5R、7aR)−2−[(3S)−1,1−ジフルオロ−3−メチルペンチル]−2−ヒドロキシ−6−オキソオクタヒドロシクロペンタ[b]ピラン−5−イル}ヘプタン酸)または(3−(6−(1−(2,2−ジフルオロベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)シクロプロパンカルボキシアミド)−3−メチルピリジン−2−イル)安息香酸が含まれる。
【0167】
異なる態様としては、追加の薬剤は栄養剤である。そうした薬剤の例には、Pancrease(登録商標)、Pancreacarb(登録商標)、Ultrase(登録商標)もしくはCreon(登録商標)、Liprotomase(登録商標)(以前はTrizytek(登録商標))、Aquadeks(登録商標)を含むパンクレリパーゼ(パンクレアチン酵素補充療法剤(pancreating enzyme replacement))またはグルタチオン吸入剤が含まれる。ある態様では、追加の栄養剤はパンクレリパーゼである。
【0168】
異なる態様としては、追加の薬剤は、ゲンタマイシン、クルクミン、シクロホスファミド、4−酪酸フェニル、ミグルスタット、フェロジピン、ニモジピン、フィロキシンB、ゲニステイン、アピゲニン、cAMP/cGMP修飾因子、例えば、ロリプラム、シルデナフィル、ミルリノン、タダラフィル、アムリノン、イソプロテレノール、アルブテロール、及びサルメテロール(almeterol)、デオキシスペルグアリン、HSP90阻害剤、HSP70阻害剤、プロテオソーム阻害剤、例えば、エポキソミシン、ラクタシスチン等から選択される化合物である。
【0169】
異なる態様としては、追加の薬剤は、国際公開第2004028480号、国際公開第2004110352号、国際公開第2005094374号、国際公開第2005120497号又は国際公開第2006101740号に開示される化合物である。
【0170】
異なる態様としては、追加の薬剤は、CFTR調節活性を示すベンゾ(c)キノリジニウム誘導体又はCFTR調節活性を示すベンゾピラン誘導体である。
【0171】
異なる態様としては、追加の薬剤は、米国特許第7202262号、米国特許第6992096号、米国特許出願第20060148864号、米国特許出願第20060148863号、米国特許出願第20060035943号、米国特許出願第20050164973号、国際公開第2006110483号、国際公開第2006044456号、国際公開第2006044682号、国際公開第2006044505号、国際公開第2006044503号、国際公開第2006044502号又は国際公開第2004091502号に開示される化合物である。
【0172】
異なる態様としては、追加の薬剤は、国際公開第2004080972号、国際公開第2004111014号、国際公開第2005035514号、国際公開第2005049018号、国際公開第2006099256号、国際公開第2006127588号又は国際公開第2007044560号に開示される化合物である。
【0173】
これらの組合せは、嚢胞性線維症を含む本明細書に記載の疾患の治療に有用である。これらの組合せはまた本明細書中に記載されたキットにおいて有用である。
【0174】
本発明の組成物中に存在する追加の治療薬の量は、その治療薬を唯一の活性剤として含む組成物で通常投与される量を超えない。好ましくは、本発明で開示する組成物中の追加の治療薬の量は、その治療薬を唯一の治療用活性剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%〜100%の範囲である。
【0175】
本明細書に記載の化合物1のフォームA及びアモルファス形態又はそれらの薬学的に許容される組成物はまた人工装具、人工弁、代用血管、ステントおよびカテーテルなどの埋込み型医療デバイスをコーティングするための組成物中に取り込むこともできる。したがって、本発明は、他の態様では、上記した本発明の化合物1のフォームA及び/又はアモルファス形態又はその薬学的に許容される医薬組成物およびここの分類及び下位の分類のものならびに前記埋込み型デバイスをコーティングするのに適した担体を含む、埋込み型デバイスをコーティングする組成物を含む。さらに他の態様では、本発明は、上記した本発明の化合物1のフォームA及び/又はアモルファス形態またはその薬学的に許容される組成物ならびに埋込み型デバイスをコーティングするのに適した担体を含む組成物でコーティングされた埋込み型デバイスを含む。適切なコーティング、およびコーティングされた埋込み型デバイスの一般的な調製法は、米国特許第6,099,562号、同第5,886,026号および同第5,304,121号に記載されている。コーティングはヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニルおよびその混合物などのような一般に生体適合性重合物質である。そのコーティングを、フルオロシリコーン、多糖、ポリエチレングリコール、リン脂質またはその組合せの適切なトップコートで場合によりさらに被覆して組成物に制御放出の特性を付与することができる。
【0176】
ここに記載する本発明がより完全に理解されるように、以下の実施例を示す。これらの実施例は、例示のためだけのものであり、本発明をいかなる態様においても限定するものと解釈されるものではないことを理解すべきである。
【実施例1】
【0177】
方法及び材料
【0178】
変調示差走査熱量測定(MDSC)及び示差走査熱量測定(DSC)
【0179】
化合物のアモルファス形態及びスプレードライ分散体のガラス遷移温度の試験に変調示差走査熱量測定(MDSC)を用いた。示差走査熱量測定(DSC)を、結晶物質の融点を決定するため及び異なる多形を区別するために用いた。データは、TA DSC Q2000 示差走査熱量測定計(TA Instruments、New Castle、DE)を用いて収集した。装置はインジウムで較正した。約1−5mgの試料をアルミニウム製気密性パンに秤量し、1個の孔を有する蓋を圧着した。MDSCについては、60秒ごとに+/−1℃で調節しながら2℃/分での加熱速度で、−20℃ないし220℃で試料を走査した。DSCについては、10℃/分の加熱速度で、25℃ないし220℃で試料を走査した。データをThermal Advantage Q Series(登録商標)ソフトウェア(version:2.7.0.380)で収集し、Universal Analysisソフトウェア(version:4.4A、build:4.4.0.5)(TA Instruments、New Castle、DE)で分析した。
【0180】
XRPD(粉末X線回折)
【0181】
粉末X線回折を用いて、これまで製造したロットの物理的形態を特徴づけ、同定された多形を特徴付けた。化合物のXRPDデータは、PANalytical X’pert Pro粉末X線回折計(Almelo、the Netherlands)で収集した。XRPDパターンは、室温で銅照射を用いて記録した(1.54060Å)。X線を45kV、40mAにおいてニッケルKβ減縮フィルタを有するCu封入管を用いて発生させた。入射ビーム光学は、試料及び分散光側への一定照射波長を確実にするため、種々の発散スリットを含む;走査モードで測定する2.12°2シータの有効長で、高速直線固相検出器を用いた。粉末試料をゼロバックグラウンドシリコンホルダの意図した領域に充填し、良好な統計値を達成するためにスピニングを行った。刻み幅0.017°及び走査のステップ時間15.5秒で対称的走査を4−40°2シータで行った。データ収集ソフトは、X’pert Data Collector(version 2.2e)である。データ分析ソフトは、X’pert Data Viewer(version 1.2d)又はX’pert Highscore(version:2.2c)である。
【0182】
熱重量分析(TGA)
【0183】
特徴付けしたロットの残存溶媒を調べるためにTGAを用い、試料の分解が起こった温度を同定した。TGAデータはTA Q500 Thermogravimetric Analyzer(TA Instruments、New Castle、DE)によって収集した。約2−5mgの重量の試料を、加熱速度10℃/分で25℃ないし300℃でスキャンした。データはThermal Advantage Q Series(登録商標)ソフトウェア(version 2.5.0.255)で収集し、Universal Analysisソフトウェア(version 4.4A、build 4.4.0.5)(TA Instruments、New Castle、DE)で分析した。
【0184】
化合物1のフォームA単結晶構造決定
【0185】
回折データを封入管Cu Kα線源及びApexII CCD検出器を備えたBruker ApexII回折計で得た。構造をSHELXプログラム(Sheldrick,G.M.,Acta Cryst.、(2008)A64、112-122)を用いて解析し、精密化した。強度統計及び消滅則から、構造を解析し、C2空間群に精密化した。絶対配置を異常回折を用いて決定した。0.00(18)に精密化されたフラックのパラメータは、本モデルが正しいエナンチオマー[(R)]を表すことを示唆する。
【0186】
固相NMR
【0187】
固相NMRは、Bruker−Biospin 4mM HFXプローブを備えたBruker−Biospin 400 MHz広口径スペクトロメータで行った。試料を4mm ZrOロータに充填し、12.5kHzの回転速度において、マジック角スピニング(MAS)条件で回転させた。13C交差分極(CP)MAS試験において適切なリサイクル遅延を設定するために、最初にプロトン緩和時間をH MAS T飽和回復緩和試験を用いて行った。炭素CPMAS試験のCP接触時間を2秒とした。直線的傾斜(50%ないし100%)のCPプロトンパルスを用いた。ハルトマン−ハーン・マッチを外部標準試料(グリシン)で最適化した。フッ素MASスペクトルをプロトンデカップリングで記録した。TPPM15デカップリング配列を、13C及び19Fの両方の収集において磁場強度約100kHzで行った。
【0188】
ビトライド(登録商標)(水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム[又はNaAlH(OCHCHOCH]、65wgt%トルエン溶液)をAldrich Chemicalsから購入した。
【0189】
2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボン酸Saltigo(Lanxess Corporationの関連会社)から購入した。
【0190】
化合物の構造を正確に表現していない可能性のある化合物の名前が本明細書のどこかにあった場合、構造が名前よりも優先的であり、支配的である。
【0191】
化合物1の合成
【0192】
酸部分
【0193】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−メタノールの合成
【化7】
【0194】
市販の2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−カルボン酸(1.0当量)をトルエン(10体積)中でスラリー化する。温度を15−25℃に保ち、ビトライド(登録商標)(2当量)を滴下漏斗で滴下する。添加終了後、40℃に昇温して2時間攪拌し、続いて10%(w/w)NaOH水溶液(4.0当量)を、温度を40−50℃に保ち、滴下漏斗で注意深く加える。さらに30分攪拌後、40℃で層を分離させる。有機相を20℃に冷却し、水(2x1.5体積)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮し、粗(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−メタノールを得て、それを直接次工程に用いる。
【0195】
5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソールの合成
【化8】
【0196】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−メタノール(1.0当量)をMTBE(5体積)に溶解させる。触媒量のDMAP(1mol%)を加え、SOCl(1.2当量)を滴下漏斗で加える。SOClは、反応容器中の温度が15−25℃に維持される速度で加える。温度を1時間かけて30℃に上げ、続いて20℃に冷やし、温度を30℃未満に維持しながら水(4体積)を滴下漏斗で加える。さらに30分攪拌した後、層を分離させる。有機層を攪拌し、10%(w/v)NaOH水溶液(4.4体積)を加える。15ないし20分攪拌後、層を分離させる。続いて有機相を乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮し、粗5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソールを得て、それを直接次工程に用いる。
【0197】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリル
【化9】
【0198】
5−クロロメチル−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール(1当量)のDMSO(1.25体積)溶液に、温度を30−40℃に維持しながら、NaCN(1.4当量)のDMSO(3体積)中のスラリーを加える。混合物を1時間攪拌し、続いて水(6体積)に続き、MTBE(4体積)を加える。30分間攪拌後、層を分離させる。水層をMTBE(1.8体積)で抽出する。合わせた有機層を水(1.8体積)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、濃縮し、粗(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリル(95%)を得て、それを直接次の工程に用いる。
H NMR(500MHz、DMSO)δ 7.44(br s、1H)、7.43(d、J=8.4Hz、1H)、7.22(dd、J=8.2、1.8Hz、1H)、4.07(s、2H).
【0199】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−1−エチルアセテート−アセトニトリルの合成
【化10】
【0200】
反応容器に窒素気流を通し、900mLのトルエンを加えた。窒素散布を16時間以上行い、溶媒を脱気した。続いて反応容器に、NaPO(155.7g、949.5mmol)、続いてビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)(7.28 g、12.66mmol)を加えた。10%w/w tert−ブチルホスフィン(51.23g、25.32mmol)のヘキサン溶液を、23℃において窒素で浄化した添加漏斗で10分かけて加えた。混合物を50分攪拌し、5−ブロモ−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール(75 g、316.5mmol)を1分かけて加えた。さらに50分攪拌した後、混合物にシアノ酢酸エチル(71.6 g、633.0mmol)を5分かけて加え、続いて水(4.5 mL)を一度に加えた。混合物を70℃に40分かけて加熱し、HPLCで1−2時間ごとに反応物から生成物への変換率を分析した。完全な変換が観測された後(典型的には5−8時間後に100%変換)、混合物を20−25℃に冷却し、セライトパッドで濾過した。セライトパッドをトルエン(2x450mL)で濯ぎ、合わせた有機層を真空下、60−65℃で300mLまで濃縮した。濃縮液に225mLのDMSOを加え、70−80℃で溶媒の活発な蒸発が止むまで減圧濃縮した。溶液を20−25℃に冷却し、工程2の準備のため900mLまでDMSOで希釈した。
H NMR(500MHz、CDCl)δ 7.16−7.10(m、2H)、7.03(d、J=8.2Hz、1H)、4.63(s、1H)、4.19(m、2H)、1.23(t、J=7.1Hz、3H).
【0201】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリルの合成
【化11】
【0202】
上の(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−1−エチルアセテート−アセトニトリルのDMSO溶液に、<40℃の内部温度を維持しながら3N HCl(617.3mL、1.85mol)を20分かけて加えた。続いて、混合物を1時間かけて75℃まで加熱し、HPLCで1−2時間ごとに変換%を分析した。>99%の変換が観測された後(典型的には5−6時間後)、反応液を20−25℃に冷却し、MTBE(2x525mL)で抽出し、抽出においては完全に相を分離させるために十分な時間をとった。合わせた有機抽出物を5% NaCl(2x375mL)で洗浄した。続いて溶液を、冷却したレシーバーフラスコを備えた1.5−2.5Torrの真空蒸留を行うのに適切な容器に移した。溶液を<60℃で減圧濃縮し、溶媒を除去した。続いて、生成した油状物から(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリルを125−130℃(オーブン温度)で1.5−2.0Torrで得た。(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリルを、5−ブロモ−2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール(2工程)から66%収率で透明な油状物として、HPLC純度91.5%AUC(w/wアッセイで95%に相当する)で得た。
H NMR(500MHz、DMSO)δ 7.44(br s、1H)、7.43(d、J=8.4Hz、1H)、7.22(dd、J=8.2、1.8Hz、1H)、4.07(s、2H).
【0203】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルの合成
【化12】
【0204】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−アセトニトリル(1.0当量)、50重量% KOH水溶液(5.0当量)、1−ブロモ−2−クロロエタン(1.5当量)及びOctNBr(0.02当量)を70℃で1時間攪拌した。反応混合物を冷却し、続いてMTBE及び水で後処理した。有機相を水及び食塩水で洗浄し、続いて溶媒を除去して(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルを得た。
H NMR(500MHz、DMSO)δ 7.43(d、J=8.4Hz、1H)、7.40(d、J=1.9Hz、1H)、7.30(dd、J=8.4、1.9Hz、1H)、1.75(m、2H)、1.53(m、2H).
【0205】
1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸の合成
【化13】
【0206】
(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボニトリルを6M NaOH(8当量)のエタノール(5体積)溶液を用いて80℃で終夜、加水分解した。混合物を室温に冷却し、エタノールを減圧下蒸発させた。残渣を水及びMTBEに取り込み、1M HClを加えて層を分離させた。続いてMTBE層をジシクロヘキシルアミン(0.97当量)で処置した。スラリーを0℃に冷却し、濾過し、ヘプタンで洗浄し、対応するDCHA塩を得た。塩をMTBE及び10%クエン酸に取り込み、すべての固体が溶解するまで攪拌した。層を分離し、MTBE層を水及び食塩水で洗浄した。溶媒をヘプタンに交換し、続いて濾過し、50℃で終夜真空オーブンで乾燥させ、1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸を得た。
ESI−MS m/z 計算値242.04、実測値241.58(M+1)+;H NMR(500MHz、DMSO)δ 12.40(s、1H)、7.40(d、J=1.6Hz、1H)、7.30(d、J=8.3Hz、1H)、7.17(dd、J=8.3、1.7Hz、1H)、1.46(m、2H)、1.17(m、2H).
【0207】
アミン部分
【0208】
2−ブロモ−5−フルオロ−4−ニトロアニリンの合成
【化14】
フラスコに3−フルオロ−4−ニトロアニリン(1.0当量)を加え、続いて酢酸エチル(10体積)を加え、攪拌してすべての固体を溶解させた。N−ブロモコハク酸イミド(1.0当量)を内部温度が22℃を維持するよう、少しずつ加えた。反応終了後、反応混合物を真空でロータリーエバポレータによって濃縮した。残渣を蒸留水(5体積)にスラリー化してコハク酸イミドを溶解し、除去した(コハク酸イミドは、水による後処理工程でも除去できる)。水をデカントし、固体を2−プロパノール(5体積)で終夜スラリー化した。生成したスラリーを濾過し、湿潤したケーキを2−プロパノールで洗浄し、Nを通気させて、重量が一定になるまで、真空下50℃で終夜乾燥した。黄色がかった褐色の固体を単離した(50%収率、97.5%AUC)。他の不純物は、ブロモ−位置異性体(1.4%AUC)及びジ−ブロモ付加体(1.1%AUC)であった。
H NMR(500MHz、DMSO)δ8.19(1 H、d、J=8.1Hz)、7.06(br. s、2 H)、6.64(d、1 H、J=14.3Hz).
【0209】
ベンジルグリコール化−4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩の合成
【化15】
【0210】
N下、完全に乾燥させたフラスコに以下を添加した:活性化粉末4Åモレキュラー・シーブス(2−ブロモ−5−フルオロ−4−ニトロアニリンに対して50重量%)、2−ブロモ−5−フルオロ−4−ニトロアニリン(1.0当量)、過塩素酸亜鉛二水和物(20mol%)及びトルエン(8体積)。混合物を室温で、で30分以下で攪拌した。最後に、(R)−ベンジルグリシジルエーテル(2.0当量)のトルエン(2体積)溶液を安定した気流の中で加えた。反応混合物は、80℃(内部温度)に加熱し、約7時間又は2−ブロモ−5−フルオロ−4−ニトロアニリン<5%AUCとなるまで攪拌した。
【0211】
反応液を室温に冷まし、セライト(50重量%)を加え、続いて酢酸エチル(10体積)を加えた。生じた混合物を濾過してセライトを除去し、シーブスを酢酸エチル(2体積)で洗浄した。濾液を塩化アンモニウム溶液(4体積、20%w/v)で洗浄した。有機層を炭酸水素ナトリウム溶液(4体積x2.5%w/v)で洗浄した。有機層を真空下ロータリーエバポレータで濃縮した。生成したスラリーを酢酸イソプロピル(10体積)に溶解させ、この溶液をブチハイドロゲネータ(Buchi hydrogenator)に移した。
【0212】
ハイドロゲネータに5重量% Pt(S)/C(1.5mol%)を加え、N下30℃(内部温度)で混合物を攪拌した。反応混合物に、N、続いて水素を通気した。ハイドロゲネータの圧力を1Barの水素に調節し、混合物を急速に攪拌した(>1200rpm)。反応終了後、触媒をセライトパッドでろ過し、ジクロロメタン(10体積)で洗浄した。濾液を真空下濃縮した。残った酢酸イソプロピルをジクロロメタン(2体積)で回収し、ロータリーエバポレータで濃縮し乾燥した。
【0213】
生じた残渣をジクロロメタン(10体積)に溶解させた。p−トルエンスルホン酸一水和物(1.2当量)を加え終夜攪拌した。生成物を濾過し、ジクロロメタン(2体積)で洗浄し、吸引乾燥した。湿潤したケーキを乾燥トレイに移し、真空オーブンに移し、45℃のN気流で定常質量となるまで乾燥した。ベンジルグリコール化−4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩は、オフホワイトの固体として単離された。
【0214】
キラル純度は、>97%eeであると決定された。
【0215】
(3−クロロ−3−メチルブチ−1−イニル)トリメチルシランの合成
【化16】
【0216】
プロパルギルアルコール(1.0当量)を容器に加えた。塩酸水溶液(37%、3.75体積)を加え、攪拌を開始した。固体のアルコールの溶解中、緩やかな吸熱(5−6℃)が見られる。生じた混合物を終夜(1時間)攪拌したところ、ゆっくりと濃赤色となった。30Lのジャケット付き容器に水(5体積)を加え、続いて10℃に冷却する。反応混合物の内部温度を25℃未満に維持しながら、吸引によりゆっくりと水の中に移す。ヘキサン(3体積)を加え、生じた混合物を0.5時間攪拌する。相を安定させ、水相(pH<1)を排水し、廃棄した。有機相をロータリーエバポレータを用いて真空下濃縮し、生成物を赤色の油状物として得た。
【0217】
(4−(ベンジルオキシ)−3,3−ジメチルブチ−1−イニル)トリメチルシランの合成
【化17】
【0218】
方法A
【0219】
この章におけるすべての当量及び容量の記載は、250g反応に基づく。削り屑状マグネシウム(69.5g、2.86mol、2.0当量)を3Lの4首反応容器に加え、窒素下、マグネティックスターラで0.5時間攪拌した。反応容器を氷水浴に浸した。塩化プロパルギル(250g、1.43mol、1.0当量)のTHF(1.8L、7.2体積)溶液を、攪拌しながら、最初の発熱(〜10℃)が見られるまでゆっくりと反応容器に加えた。グリニャール試薬形成を、H NMR分光法を用いてIPCにより確認した。発熱が弱まると、残りの溶液をバッチ温度を<15℃に維持しながらゆっくりと加えた。添加に〜3.5時間要した。生成した暗緑色の混合物を2Lのキャップ付きのボトルにデカントした。
【0220】
この章におけるすべての当量及び容量の記載は、500g反応に基づく。22L反応容器に、ベンジルクロロメチルエーテル(95%、375 g、2.31mol、0.8当量)のTHF(1.5L、3体積)溶液を加えた。反応容器を氷水浴で冷却した。先に調製した4つのうち2つのグリニャール試薬バッチを合わせ、続いて、バッチ温度を25℃未満に維持しながら、ゆっくりとベンジルクロロメチルエーテル溶液に滴下漏斗を用いて加えた。反応混合物を終夜攪拌した(16時間)。
【0221】
この章におけるすべての当量及び容量の記載は、1kg反応に基づく。15%塩化アンモニウム溶液を30Lジャケット付き反応容器で調製した(8.5kg水中、1.5kg、10体積)。溶液を5℃に冷却した。上述の2つのグリニヤール反応混合物を合わせ、続いて排気管(header vessel)を用いて塩化アンモニウム溶液中に移した。このクエンチにおいて発熱が見られたので、25℃未満の内部温度を維持する速さで行った。添加が終わると、容器のジャケット温度を25℃に設定した。ヘキサン(8L、8体積)を加え、混合物を0.5時間攪拌した。相が安定した後、水相(pH9)を排水し、廃棄した。残った有機相を水(2L、2体積)で洗浄した。有機相を22Lロータリーエバポレータを用いて真空下濃縮し、オレンジ色の油状物として粗生成物を得た。
【0222】
方法B
【0223】
削り屑状マグネシウム(106g、4.35mol、1.0当量)を22L反応容器に加え、続いてTHF(760mL、1体積)に懸濁させた。容器を氷水浴で冷却し、バッチ温度が2℃になるようにした。塩化プロパルギル(760g、4.35mol、1.0当量)のTHF(4.5L、6体積)溶液をゆっくりと容器に加えた。
100mLを加えた後、添加をやめ、グリニャール反応が開始したことを示す、13℃の発熱が観察されるまで混合物を攪拌した。発熱が弱まると、<20℃のバッチ温度を維持しながらさらに塩化プロパルギル溶液500mLをゆっくり加えた。グリニャール試薬の形成をH NMR分光法を用いてIPCにより確認した。残りの塩化プロパルギル溶液を<20℃のバッチ温度を維持するようにゆっくりと加えた。添加は、〜1.5時間要した。生成した濃緑色の溶液を0.5時間攪拌した。グリニャール試薬形成をH NMR分光法を用いてIPCにより確認した。非希釈のベンジルクロロメチルエーテルを反応容器の滴下漏斗に加え、続いて25℃未満のバッチ温度を維持しながら、反応容器に滴下した。添加に1.0時間要した。反応混合物を終夜攪拌した。方法Aにおけるのと同じ方法および物質の相対量を用いて、水による後処理及び濃縮を行うことにより、オレンジの油状物として生成物を得た。
【0224】
4−ベンジルオキシ−3,3−ジメチルブチ−1−インの合成
【化18】
【0225】
30Lジャケット付き反応容器にメタノール(6体積)を加え、続いて5℃に冷却した。水酸化カリウム(85%、1.3当量)を反応容器に加えた。水酸化カリウムが溶解すると15−20℃の発熱が見られた。ジャケット温度を25℃に設定した。4−ベンジルオキシ−3,3−ジメチル−1−トリメチルシリルブチ−1−イン(1.0当量)のメタノール(2体積)溶液を加え、生じた混合物を、HPLCでモニターして反応が終了するまで攪拌した。25℃での典型的な反応時間は3−4時間である。反応混合物を水(8体積)で希釈し、続いて0.5時間攪拌した。ヘキサン(6体積)を加え、生じた混合物を0.5時間攪拌した。相を安定させ、続いて水層(pH10−11)を排水し、棄てた廃棄した。有機相をKOH(85%、0.4当量)の水溶液(8体積)、続いて水(8体積)で洗浄した。続いて有機相をロータリーエバポレータを用いて濃縮し、表題物質を黄−橙色の油状物として得た。この物質の典型的な純度は、当初は単一の不純物が存在して80%の範囲にある。
H NMR(400MHz、CD)δ7.28(d、2 H、J=7.4Hz)、7.18(t、2 H、J=7.2Hz)、7.10(d、1H、J=7.2Hz)、4.35(s、2 H)、3.24(s、2 H)、1.91(s、1 H)、1.25(s、6 H).
【0226】
ベンジルグリコール化4−アミノ−2−(4−ベンジルオキシ−3,3−ジメチルブチ−1−イニル)−5−フルオロアニリンの合成
【化19】
【0227】
ベンジルグリコール化4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩の固体をEtOAc(5体積)及び飽和NaHCO溶液(5体積)中で透明な有機層が得られるまで攪拌し、遊離塩基にした。生成した層を分離し、有機層を飽和NaHCO3溶液(5体積)に続き食塩水で洗浄し、真空下濃縮し、ベンジルグリコール化4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩を油状物として得た。
【0228】
続いて、フラスコにベンジルグリコール化4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩(遊離塩基、1.0当量)、Pd(OAc)(4.0mol%)、dppb(6.0mol%)及び粉末状KCO(3.0当量)を加え、アセトニトリル(6体積)と共に室温で攪拌した。生成した反応混合物を、約30分Nで排気しながらバブリングして脱気した。続いて、アセトニトリル(2体積)に溶解させた4−ベンジルオキシ−3,3−ジメチルブチ−1−イン(1.1当量)を速い気流で加え、80℃に加熱し、4−アンモニウム−2−ブロモ−5−フルオロアニリントシル酸塩が完全に消失するまで攪拌した。反応スラリーを室温に冷却し、セライトパッドで濾過しアセトニトリル(2体積)で洗浄した。濾液を真空下濃縮し、残渣を再度EtOAc(6体積)に溶解した。有機層をNHCl溶液(20% w/v、4体積)で2回及び食塩水(6体積)で洗浄した。生成した有機層を濃縮し、褐色の油状物を得て、それをそのまま次の反応に用いた。
【0229】
N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドールの合成
【化20】
【0230】
油状の粗ベンジルグリコール化4−アミノ−2−(4−ベンジルオキシ−3,3−ジメチルブチ−1−イニル)−5−フルオロアニリンをアセトニトリル(6体積)に溶解し、(MeCN)PdCl(15mol%)を室温で加えた。生じた混合物を、約30分Nで排気しながら脱気した。続いて反応混合物をN雰囲気下、80℃で終夜攪拌した。反応混合物を室温に冷まし、セライトパッドで濾過し、ケーキをアセトニトリル(1体積)で洗浄した。生成した濾液を真空下濃縮し、再度EtOAc(5体積)に溶解させた。Deloxane−II THP(N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドールの理論上の収量に基づき5重量%)を加え、室温で終夜攪拌した。続いて混合物をシリカのパッドで濾過し(2.5インチの深さ、6インチの直径のフィルタ)、EtOAc(4体積)で洗浄した。濾液を濃縮し、暗褐色残渣を得て、それをそのまま次の反応に用いた。
【0231】
粗N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドールの再精製:
【0232】
粗N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドールをジクロロメタン(〜1.5体積)に溶解し、シリカパッドで最初30%EtOAc/ヘプタンで濾過し、不純物を棄てた。続いてシリカパッドを50%EtOAc/ヘプタンで、濾液に薄い色が付くまで洗浄し、N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドールを単離した。この濾液を真空下濃縮し、褐色の油状物を得て、それを真空下室温で静置して結晶化させた。
H NMR (400MHz、DMSO)δ 7.38−7.34(m、4 H)、7.32−7.23(m、6 H)、7.21(d、1 H、J=12.8Hz)、6.77(d、1H、J=9.0Hz)、6.06(s、1 H)、5.13(d、1H、J=4.9Hz)、4.54(s、2 H)、4.46(br. s、2 H)、4.45(s、2 H)、4.33(d、1 H、J=12.4Hz)、4.09−4.04(m、2 H)、3.63(d、1H、J=9.2Hz)、3.56(d、1H、J=9.2Hz)、3.49(dd、1H、J=9.8、4.4Hz)、3.43(dd、1H、J=9.8、5.7Hz)、1.40(s、6 H).
【0233】
化合物1の合成
【0234】
ベンジル保護された化合物1の合成
【化21】
【0235】
1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸(1.3当量)をトルエン(1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸に基づき2.5体積)にスラリー化し、混合物を60℃に加熱した。SOCl(1.7当量)を滴下漏斗で加えた。生じた混合物を2時間攪拌した。トルエン及び過量のSOClをロータリーエバポレータで留去した。さらにトルエン(1−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)−シクロプロパンカルボン酸に基づき2.5体積)を加え、再度留去した。粗酸塩化物をジクロロメタン(2体積)に溶解させ、0−3℃(内部温度)に保ち、滴下漏斗で、N−ベンジルグリコール化−5−アミノ−2−(2−ベンジルオキシ−1,1−ジメチルエチル)−6−フルオロインドール(1.0当量)及びトリエチルアミン(2.0当量)のジクロロメタン(7体積)中の混合物に滴下した。生じた混合物を0℃で4時間攪拌し、続いて終夜室温に戻した。反応混合物に蒸留水(5体積)を加えて30分以上攪拌し、層を分離した。有機相を20重量% KCO(4体積x2)、続いて食塩水(4体積)で洗浄し、濃縮し、粗ベンジル保護化合物1を濃い褐色の油状物として得て、シリカパッド濾過を使用して更に精製した。
【0236】
シリカゲルパッド濾過:活性炭Darco−G(ベンジル保護化合物1の理論上の収量に基づき10重量%)の存在下、粗ベンジル保護化合物1を酢酸エチル(3体積)に溶解し、室温で終夜攪拌した。この混合物にヘプタン(3体積)を加え、シリカゲルパッド(粗ベンジル保護化合物1の2x重量)で濾過した。シリカゲルパッドを酢酸エチル/ヘプタン(1:1、6体積)で濾液にほとんど色がつかなくなるまで洗浄した。濾液を真空下濃縮し、ベンジル保護化合物1を粘性のある赤褐色の油状物として得て、直接次の反応に用いた。
【0237】
再精製:ベンジル保護化合物1を再度ジクロロメタン(ベンジル保護化合物1の理論上の収量に基づき1体積)に溶解し、シリカゲルパッド(粗ベンジル保護化合物1の2x重量)に載せた。シリカパッドをジクロロメタン(ベンジル保護化合物1の理論上の収量に基づき2体積)で洗浄し、濾液を棄てた。シリカパッドを30% 酢酸エチル/ヘプタン(5体積)で洗浄し、濾液を真空で濃縮し、ベンジル保護化合物1を粘性のある赤橙油状物として得て、次の工程に直接用いた。
【0238】
化合物1の合成
【化22】
【0239】
方法A
【0240】
20L オートクレーブに3回、窒素ガスを通気し、続いて、パラジウム炭素(Evonik E 101 NN/W、5% Pd、60% wet、200 g、0.075mol、0.04当量)を加えた。オートクレーブに窒素を3回通気した。粗ベンジル保護化合物1(1.3kg、〜1.9mol)のTHF(8L、6体積)溶液をオートクレーブに、吸引によって加えた。容器に蓋をし、続いて、3回窒素ガスを通気した。穏やかな攪拌下、容器に3回水素ガスを通気し、窒素で希釈することにより大気中に排気した。オートクレーブを水素で加圧して3Barとし、攪拌速度を800rpmとした。急速な水素取り込みが観測された(溶解)。取り込みが弱まると、容器を50℃に加熱した。
【0241】
安全性のため、温度調節器は実働日ごとの終わりには切った。容器を水素で4Barとし、続いて水素タンクから離した。
【0242】
丸2日間の反応後、さらなるPd/C(60g、0.023mol、0.01当量)を反応混合物に加えた。これは窒素ガスを3回通気し、続いて触媒を、固体添加口を通じて加えることにより行った。前のとおりの反応を再開した。丸4日後、反応は、HPLCにより出発物質だけでなく、モノベンジル中間体に対応するピークもが消失したため完了したとみなした。
【0243】
反応混合物をセライトパッドにより濾過した。容器及びフィルタケーキをTHF(2L、1.5体積)で洗浄した。続いてセライトパッドを水で湿らせ、ケーキを適宜棄てた。合わせた濾液及びTHF洗浄液を、ロータリーエバポレータを用いて濃縮し、粗生成物を黒色油状物1kgとして得た。
【0244】
以下の精製におけるすべての当量および体積の記載は、粗生成物1kgに基づく。粗黒色油状物を1:1 酢酸エチル−ヘプタンに溶解した。混合物を酢酸エチル−ヘプタンで飽和させたシリカゲル(1.5kg、1.5重量.当量)を加えた焼結漏斗に載せた。シリカパッドを、まず1:1 酢酸エチル−ヘプタン(6L、6体積)、続いて純酢酸エチル(14L、14体積)で流した。溶出液は4フラクション集め、HPLCで分析した。
【0245】
以下の精製におけるすべての当量および体積の記載は、粗生成物0.6kgに基づく。フラクション3をロータリーエバポレーションで濃縮し、褐色泡状物質(600g)を得て、続いてMTBE(1.8L、3体積)に再度溶解させた。暗褐色の溶液を終夜、周囲温度で攪拌し、その間に結晶化が起こった。ヘプタン(55mL、0.1体積)を加え、混合物を終夜攪拌した。混合物をブフナー漏斗を用いて濾過し、フィルタケーキを3:1 MTBE−ヘプタン(900mL、1.5体積)で洗浄した。フィルタケーキは1時間空気乾燥し、続いて周囲温度で16時間真空乾燥させ、VXc−661 253gをオフホワイトの固体として得た。
【0246】
以下の精製におけるすべての当量および体積の記載は、粗生成物1.4kgに基づく。上記のシリカゲル濾過したフラクション2及び3及び前述の反応により得られた物質を合わせて濃縮し、1.4kgの黒色の油状物を得た。混合物を上述したとおり再度シリカゲル濾過し(シリカゲル1.5 kg、3.5L、2.3体積の1:1 酢酸エチル−ヘプタン、続いて9L、6体積の純酢酸エチルで溶出)、濃縮して、淡褐色の泡状固体を得た(390g)。
【0247】
以下の精製におけるすべての当量および体積の記載は、粗生成物390gに基づく。淡褐色の固体はMTBEに不溶であったため、メタノールに溶解させた(1.2L、3体積)。長距離蒸留塔(distillation head)を備えた4L Morton反応器を用いて混合物を2体積に蒸留し、戻した。MTBE(1.2L、3体積)を加え、混合物を蒸留して2体積に戻した。2回目のMTBE(1.6L、4体積)を加え、蒸留して2体積に戻した。3回目のMTBE(1.2L、3体積)を加え、蒸留して3体積に戻した。蒸留物をGCで分析したところ、〜6%のメタノールを含むことを示した。温度調節器を48℃に設定した(MTBE−メタノール共沸化合物の沸点である52℃よりも低い)。混合物を20℃に2時間以上かけて冷却し、その間に比較的速い結晶化が起こった。混合物を2時間攪拌した後、ヘプタン(20mL、0.05体積)を加え、混合物を終夜(16時間)攪拌した。混合物をブフナー漏斗を用いて濾過し、フィルタケーキを3:1 MTBE−ヘプタン(800mL、2体積)で洗浄した。フィルタケーキを1時間空気乾燥し、続いて真空下周囲温度で16時間乾燥し、化合物1 130gをオフホワイトの固体として得た。
【0248】
方法B
【0249】
ベンジル保護化合物1をTHF(3体積)に溶解させ、残存溶媒を除去した。ベンジル保護化合物1を再びTHF(4体積)に溶解させ、5 重量% Pd/C(2.5mol%、60%wet、Degussa E5 E101 NN/W)を含有するハイドロゲネータに加えた。反応の内部温度を50℃とし、N(x5)に続き水素(x3)気流を通気した。ハイドロゲネータの圧力を水素で3Barに調節し、混合物を急速に攪拌した(>1100rpm)。反応終了時、触媒をセライトパッドで濾過し、THF(1体積)で洗浄した。濾液を真空下濃縮し、褐色の泡状残渣を得た。生じた残渣をMTBE(5体積)に溶解させ、0.5N HCl溶液(2体積)および蒸留水(1体積)を加えた。混合物を30分以上攪拌し、生成した層を分離した。有機相10重量%KCO溶液(2体積x2)、続いて食塩水で洗浄した。有機層をシリカゲル(25重量%)、DELOXAN−THP II(5重量%、75%wet)、及びNaSOを含有するフラスコに加え、終夜攪拌した。生じた混合物をセライトパッドで濾過し、10%THF/MTBE(3体積)で洗浄した。濾液を真空下濃縮し、粗化合物1を薄い褐色の泡状物質として得た。
【0250】
母液からの化合物1の回収:オプションA
【0251】
シリカゲルパッド濾過:母液を真空下濃縮して褐色泡状物質を得て、ジクロロメタン(2体積)に溶解させ、シリカのパッド(粗化合物1の3x重量)で濾過した。シリカパッドを酢酸エチル/ヘプタン(1:1、13体積)で洗浄し、濾液を棄てた。シリカパッドを10%THF/酢酸エチル(10体積)で洗浄し、濾液を真空下濃縮し、化合物1を薄い褐色の泡状物質として得た。引き続き上述の結晶化工程を行い、残存化合物1を単離した。
【0252】
母液からの化合物1の回収:オプションB
【0253】
シリカゲルカラムクロマトグラフィー:シリカゲルクロマトグラフィー(50% 酢酸エチル/ヘキサンないし100%酢酸エチル)の後、所望の化合物を薄い褐色の泡状物質として単離した。引き続き上述の結晶化工程を行い、残存化合物1を単離した。
【0254】
図1は化合物1のX線結晶回折パターンを示す。化合物1のDSCトレースを図2に示す。図2のDSCトレースは、化合物1が純粋な固相でないことを示す。化合物1のフォームAと比較して、余分なピークが119℃に存在する化合物1のフォームA(図6参照)。化合物1のTGAトレースを図3に示す。
【0255】
化合物1はまた、ここに参照として引用する米国特許出願公開第20090131492号に開示されたいくつかの合成経路の1つを用いて調製することもできる。
【0256】
化合物1のフォームAの合成
【0257】
スラリー法
【0258】
EtOAc、MTBE、酢酸イソプロピル、又はDCMについては、化合物1約40mgを、上述のいずれかの溶媒1−2mLに加えた。スラリーを室温で24時間ないし2週間攪拌し、化合物1のフォームAを懸濁液の遠心分離(フィルタ付き)によって得た。図5は、溶媒としてDCMを用いて、この方法により得た化合物1のフォームAのXRPDパターンを記載する。
【0259】
EtOH/水溶液については、化合物1約40mgを3個のバイアルに加えた。第1のバイアルにはEtOH 1.35mL及び水0.15mLを加えた。第2のバイアルにはEtOH 0.75mL及び水0.75mLを加えた。第3のバイアルにはEtOH 0.15mL及び水1.35mLを加えた。3個のすべてのバイアルを室温で24時間攪拌した。続いて各懸濁液を別々に遠心分離し(フィルタ付き)、化合物1のフォームAを得た。
【0260】
イソプロピルアルコール/水溶液については、化合物1約40mgを3個のバイアルに加えた。第1のバイアルには、イソプロピルアルコール1.35mL及び水0.15mLを加えた。第2のバイアルには、イソプロピルアルコール0.75mL及び水0.75mLを加えた。第3のバイアルには、イソプロピルアルコール0.15mL及び水1.35mLを加えた。3個のすべてのバイアルを室温で24時間攪拌した。続いて各懸濁液を別々に遠心分離し(フィルタ付き)、化合物1のフォームAを得た。
【0261】
メタノール/水溶液については、化合物1約40mgをバイアルに加えた。メタノール0.5mL及び水1mLを加え、懸濁液を室温で24時間攪拌した。懸濁液を遠心分離し(フィルタ付き)、化合物1のフォームAを得た。
【0262】
アセトニトリルについては、化合物1約50mgをアセトニトリル2.0mLの入ったバイアルに加えた。懸濁液を、室温で24時間攪拌し、化合物1のフォームAを遠心分離(フィルタ付き)により得た。
【0263】
アセトニトリル/水溶液については、化合物1約50mgをアセトニトリル2.5mLに加え、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、バイアルに1mL残した。水2.25mLを加えて懸濁液とした。懸濁液を室温で24時間攪拌し、化合物1のフォームAを遠心分離(フィルタ付き)により得た。
【0264】
低速蒸発法
【0265】
化合物1約55mgをアセトン0.5mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、0.2mLをバイアルに取った。バイアルを1個の穴を開けたパラフィルムでカバーし、静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
【0266】
高速蒸発法
【0267】
イソプロピルアルコールについては、化合物1約43mgをイソプロピルアルコール2.1mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液をバイアルに濾過して入れ、カバーなしに静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過により集めた。
【0268】
メタノールについては、化合物1約58mgをメタノール0.5mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、0.2mLをカバーしないバイアルに取り、静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
【0269】
アセトニトリルについては、化合物1約51mgをアセトニトリル2.5mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、溶液の半分をカバーしないバイアルに取り、静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。図7は、この方法によって調製した化合物1のフォームAのXRPDパターンを示す。
【0270】
貧溶媒法
【0271】
EtOAc/ヘプタンについては、化合物1約30mgをEtOAc1.5mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、濾液に、ゆっくり攪拌しながらヘプタン2.0mLを加えた。溶液をさらに10分間攪拌し、静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。図8は、この方法によって調製した化合物1のフォームAのXRPDパターンを示す。
【0272】
イソプロピルアルコール/水については、化合物1約21mgをイソプロピルアルコール1.0mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、溶液0.8mLを得た。ゆっくりと攪拌しながら水1.8mLを加えた。さらに水0.2mLを加えて、曇った懸濁液を得た。5分間攪拌を止めて透明な溶液を得た。溶液をさらに2分間攪拌し、静置した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
【0273】
エタノール/水については、化合物1約40mgをエタノール1.0mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、水1.0mLを加えた。溶液を1日室温で攪拌した。再結晶した化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
【0274】
アセトン/水については、化合物1約55mgをアセトン0.5mLに溶解させ、超音波により透明な溶液を得た。溶液を濾過し、0.2mLをバイアルに取った。水1.5mLを加え、続いてさらに水0.5mLを加えて曇った懸濁液を得た。懸濁液を1日室温で攪拌した。化合物1のフォームAを濾過によって集めた。
【0275】
以下の表2は、化合物1のフォームAを形成させる種々の技術をまとめたものである。
【表3】
【0276】
化合物1のフォームAの単結晶構造から計算したX−線回折パターンを図4に示す。表3は図1に示すピークを計算したリストである。
【表4】
【0277】
図5に化合物1のフォームAの実際のX線結晶回折パターンを示す。表4は図5の実際のピークをリストする。
【表5】
【0278】
図6に化合物1のフォームAのDSCトレースを示す。化合物1のフォームAの融点は約172−178℃である。
【0279】
格子の大きさ及び充填を含む結晶構造関するさらなる詳細を提供する、化合物1のフォームAについての単結晶データを得た。
【0280】
結晶調製
【0281】
メタノールの濃縮溶液(10mg/ml)からの低速蒸発により、化合物1のフォームAを得た。0.20×0.05×0.05mmの寸法の化合物1のフォームAの無色の結晶を選択し、鉱油を用いて浄化し、MicroMountに乗せ、Bruker APEXII回折装置の中心に置いた。方位行列及び初期セルパラメータを提供するために、逆格子空間において別れた40フレームの3つのバッチを得た。最終セルパラメーラを完全なデータセットに基づいて得て、精密化した。
【0282】
実験項
【0283】
逆格子空間の回折データセットを、各フレームについて0.83Åの分解能まで0.5°刻みの30秒暴露により得た。データを室温[295(2)K]で収集した。強度の積分及びセルパラメーラの精密化をAPEXIIソフトウェアを用いて行った。データ収集後の結晶の観察で分解の兆候は示されなかった。
【表6】
【0284】
幾何:すべてのエネルギースペクトル密度(esd)(2個の最小二乗(l.s.)平面の間の二面対角におけるesdを除く)を全共分散行列を用いて見積もった。セルのesdは、距離、角度及びひずみ角のesdの見積もりにそれぞれ考慮される;セルパラメーラにおけるesd間の相関は、結晶対象により定義される場合にのみ用いる。l.s.平面の関わるesdの見積もりには近似値(等方晶系)処理を行う。
【表7】
【0285】
データ収集:Apex II;セルの精密化:Apex II;データ整理:Apex II;構造解析に用いたプログラム:SHELXS97(Sheldrick、1990);構造の精密化に用いたプログラム:SHELXL97(Sheldrick、1997);分子グラフィックス:Mercury;出版のための材料を調製するために用いたソフトウェア:publCIF。
【表8】
【0286】
精密化:ALL反射に対するF2の精密化。荷重R因子wR及び適合度SはFに基づき、通常のR計数RはFに基づくが、負Fの場合Fはゼロとする。F>2シグマ(F)の閾値表現は、R係数(gt)等を計算するためだけに用いられ、精密化のための反射の選択には関連がない。Fに基づくR係数は統計的にはFに対して約2倍であり、ALLデータに基づくR係数は更に大きい。
【0287】
単結晶X線分析に基づく化合物1のフォームAの立体配座図を図9及び10に示す。4つの隣接する分子と4量体クラスタを形成する水素結合ネットワークを介して末端−OH基が結合している(図10)。もう一方のヒドロキシル基は、隣接する分子からのカルボニル基と水素結合を形成するための水素結合ドナーとして作用する。結晶構造は、本分子の稠密充填結晶構造を示す。化合物1のフォームAは単斜晶系、C2空間群で、以下の単位胞寸法:a=21.0952(16)Å、b=6.6287(5)Å、c=17.7917(15)Å、β=95.867(6)°、γ=90°を有する。
【0288】
化合物1のフォームAの固体状態13C NMRスペクトルを図11に示す。表8は関連するピークの化学シフトを表す。
【表9】
【0289】
化合物1のフォームAの固体状態19F NMRスペクトルを図12に示す。アスタリスクの付いたピークはスピニングサイドバンドを示す。表9は関連するピークの化学シフトを示す。
【表10】
【0290】
化合物1のアモルファス形態の合成
【0291】
ロータリーエバポレーション法
【0292】
化合物1のアモルファス形態は、またロータリーエバポレーションによっても得られる。化合物1(約10g)をMeOH180mLに溶解させ、50℃浴で泡状物質を形成するまでロータリーエバポレーションを行った。DSC(図14)及びXRPD(図13)で化合物1のアモルファス形態を確認した。図15は、この方法により調製した化合物1のアモルファス形態のTGAトレースである。
【0293】
スプレードライ法
【0294】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート HGグレード(HPMCAS−HG)9.95gをラウリル硫酸ナトリウム(SLS)50mgと共に500mLビーカーに測り取った。MeOH(200 ml)を固体と混合した。物質を4時間攪拌した。最大限の溶解を確実にするために、2時間攪拌後溶液を5分間超音波にかけ、続いてさらに2時間攪拌した。非常に細かいHPMCASの懸濁液が溶液中に残った。しかし、視覚的な観察によっては、ガム状部分は容器を傾けても容器の壁面に残っておらず、又は底に固まっていなかった。
【0295】
化合物1のフォームA(10g)を500mLビーカーに注ぎ、系を継続して攪拌した。溶液を以下のパラメータを用いてスプレードライした:
製剤明細:化合物1のフォームA/HPMCAS/SLS(50/49.5/0.5)
ブチミニスプレードライヤー
T入力口(設定値) 145℃
T出力口(開始時) 75℃
T出力口(終了時) 55℃
窒素圧 75psi
アスピレータ 100%
ポンプ 35%
ロタメータ(Rotometer) 40mM
フィルタ圧 65mbar
コンデンサ温度 −3℃
実行時間 1時間
【0296】
化合物1のアモルファス形態約16g(80%収率)を回収した。化合物1のアモルファス形態をXRPD(図16)及びDSC(図17)によって確認した。
【0297】
化合物1のアモルファス形態の固体状体13C NMRスペクトルを図18に示す。表10は関連するピークの化学シフトを示す。
【表11】
【0298】
化合物1のアモルファス形態の固体状態19F NMRスペクトルを図19に示す。アスタリスクの付いたピークはスピニングサイドバンドを示す。表11は関連するピークの化学シフトを示す。

【表12】
【0299】
以下の表12は、化合物1の追加の分析データを示す。

【表13】
【0300】
アッセイ
【0301】
化合物によるΔF508−CFTR矯正特性の検出及び測定のためのアッセイ
【0302】
化合物によるΔF508−CFTR調節特性のアッセイのための膜電位光学法
【0303】
電位感受性FRETセンサーを利用する光学膜電位アッセイは、GonzalezおよびTsienにより(Gonzalez, J. E. and R. Y. Tsien (1995) ”Voltage sensing by fluorescence resonance energy transfer in single cells” Biophys J 69(4):1272−80, and Gonzalez, J. E. and R. Y. Tsien (1997) ”Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescence resonance energy transfer” Chem Biol 4(4):269−77参照)、蛍光変化を測定するための機器、例えば電位/イオンプローブリーダー(VIPR)(See, Gonzalez, J. E., K. Oades, et al. (1999) ”Cell−based assays and instrumentation for screening ion−channel targets” Drug Discov Today 4(9):431−439参照)と組み合わせて記載されている。
【0304】
これらの電位感受性アッセイは、膜可溶性、電位感受性色素であるDiSBAC(3)と、原形質膜の外側のリーフレットに結合し、FRETドナーとして働く蛍光リン脂質であるCC2−DMPEの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)における変化に基づく。膜電位(V)の変化は、負に帯電したDiSBAC(3)の原形質膜を通す再分配およびそれに応じたCC2−DMPEからのエネルギー伝達量の変化をもたらす。蛍光放出の変化は、96または384ウェルマイクロタイタープレート中の細胞をベースにしたスクリーニングを行うために設計された統合された液体ハンドラーおよび蛍光ディテクターであるVIPR(登録商標)IIを使用してモニターできる。
【0305】
1. 矯正化合物の同定
【0306】
ΔF508−CFTRに関連する輸送欠損を矯正する小分子を同定するために、シングル・アディションHTSアッセイ形態を開発した。細胞を、無血清培地中、16時間、37℃で、試験化合物の存在下または非存在下(陰性対照)インキュベートした。陽性対照として、384ウェルプレートに播種した細胞を、16時間、27℃でインキュベートして、ΔF508−CFTRを「温度補正」した。細胞をその後3回クレブス・リンゲル液で濯ぎ、電位感受性色素を負荷した。ΔF508−CFTRを活性化するために、10μM フォルスコリン、CFTRポテンシエータ、ゲニステイン(20μM)を無Cl培地と共に各ウエルに添加した。無Cl培地の添加は、ΔF508−CFTR活性化に応答したCl流出を促進し、得られた膜脱分極をFRETベースの電位センサー色素を使用して光学的にモニターした。
【0307】
2.ポテンシエータ化合物の同定
【0308】
ΔF508−CFTRポテンシエータ化合物を同定するため、二重付加(double-addition)HTSアッセイ形式を開発した。最初の付加においては、無Cl培地を試験化合物あり又はなしで加えた。22秒後、ΔF508−CFTRを活性化するため、2回目の2−10μMフォルスコリン含有無Cl培地を加えた。両添加後の細胞外Cl濃度は28mMであり、それがΔF508−CFTR活性化に応答してCl流出が促進され、得られた膜脱分極を光学的にFRET−ベース電位センサー色素でモニターした。
【0309】
3.溶液
浴溶液#1:(mM) NaOH中、NaCl 160、KCl 4.5、CaCl 2、MgCl 1、HEPES 10、pH7.4
無塩化物浴溶液:浴溶液#1における塩化物塩をグルコン酸塩に置き換える
CC2−DMPE:DMSO中で10mMストック溶液を調製し、−20℃で保存した
DiSBAC(3):DMSO中で10mMストック溶液を調製し、−20℃で保存した
【0310】
4.細胞培養
【0311】
ΔF508−CFTRを安定的に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を膜電位の光学的な測定において用いる。細胞を175cm培養フラスコで、2mMグルタミン、10 %ウシ胎児血清、1xNEAA、β−ME、1xペニシリン/ストレプトマイシン、及び25mM HEPESを添加した、ダルベッコ変法イーグル培地に37℃、5%CO及び湿度90%で維持した。すべての光学的アッセイにおいて、細胞を、384−ウエルマトリゲル−コーティングプレートに30,000/ウエルを播種し、37℃で2時間培養し、続いて24時間27℃でポテンシエーターアッセイのために培養した。矯正アッセイについては、細胞は、27℃又は37℃で、化合物あり又はなしで16−24時間時間培養した。
【0312】
ΔF508−CFTR調節特性を有する化合物の電気生理学的アッセイ
【0313】
1.ウッシングチャンバーアッセイ
【0314】
ウッシングチャンバー実験をΔF508−CFTRを発現する分極上皮性細胞で行い、光学アッセイで同定されたΔF508−CFTRモジュレーターをさらに特徴付けした。Costar Snapwell細胞培養インサート上で増殖させたFRTΔF508−CFTR上皮性細胞をウッシングチャンバー(Physiologic Instruments, Inc., San Diego, CA)にマウントし、単層を電圧固定法システムを使用して連続的に短絡(short−cicuited)させた(Department of Bioengineering, University of Iowa, IA及びPhysiologic Instruments, Inc., San Diego, CA)。経上皮性抵抗を2mVパルスの適用により測定した。これらの条件下、FRT上皮は4KΩ/cmまたはそれ以上の抵抗を証明した。溶液を27℃に維持し、空気でバブリングした。電極オフセット電位および流体抵抗性を、無細胞インサートを使用して補正した。これらの条件下、電流は、頂端膜に発現されるΔF508−CFTRを通るClの流れを反映する。ISCをMP100A−CEインターフェース及びAcqKnowledgeソフトウェア(v3.2.6;BIOPAC Systems, Santa Barbara, CA)を使用してデジタルで獲得した。
【0315】
2.矯正化合物の同定
【0316】
典型的プロトコルは側底から頂端膜Cl濃度勾配を使用した。この勾配を設定するために、通常のリンゲルを側底膜に使用し、一方頂端NaClを等モル量グルコン酸ナトリウムで置き換えて(NaOHでpH7.4に滴定)、上皮を通して大きなCl濃度勾配を得た。全実験を無傷の単層で行った。ΔF508−CFTRを完全に活性化するために、フォルスコリン(10μm)、PDE阻害剤、IBMX(100μm)を適用し、続いてCFTRポテンシエータ、ゲニステイン(50μm)を添加した。
【0317】
他の細胞型でも観察される通り、ΔF508−CFTRを安定に発現するFRT細胞の低温でのインキュベーションは、原形質膜のCFTRの機能的密度を増加させる。矯正化合物の活性を決定するために、細胞を10μMの試験化合物と24時間、37℃でインキュベートし、その後3回洗浄して、その後記録した。化合物処理細胞のcAMP−およびゲニステイン仲介ISCを27℃および37℃対照で標準化し、活性パーセントとして示す。細胞の矯正化合物との前インキュベーションは、37℃対照と比較して、cAMP−およびゲニステイン仲介ISCを顕著に増加させた。
【0318】
3.ポテンシエータ化合物の同定
【0319】
典型的プロトコルは側底から頂端膜Cl濃度勾配を使用した。この勾配を設定するために、通常のリンゲルを側底膜に使用し、ニスタチン(360μg/ml)で透過処理し、一方頂端NaClを等モル量グルコン酸ナトリウムで置き換えて(NaOHでpH7.4に滴定)、上皮を通して大きなCl濃度勾配を得た。全実験をニスタチン透過処理30分後に行った。フォルスコリン(10μm)及び全試験化合物を細胞培養インサートの両側に添加した。推定ΔF508−CFTRポテンシエータの効果を、既知ポテンシエータ、ゲニステインと比較した。
【0320】
4.溶液
基底外側溶液(mM):NaCl(135)、CaCl(1.2)、MgCl(1.2)、KHPO(2.4)、KHPO(0.6)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N'−2−エタンスルホン酸(HEPES)(10)、およびデキストロース(10)。溶液をNaOHでpH7.4に滴定。
頂端溶液(mM):NaClをグルコン酸Na(135)で置き換えた以外側底溶液と同一。
【0321】
5.細胞培養
【0322】
ΔF508−CFTRを発現するフィッシャーラット上皮性(FRT)細胞(FRTΔF508−CFTR)を、我々の光学アッセイで同定した推定ΔF508−CFTRモジュレーターのウッシングチャンバー実験に使用した。細胞をCostar Snapwell細胞培養インサートで培養し、5日間、37℃および5%COで5%ウシ胎児血清、100U/ml ペニシリン、および100μg/ml ストレプトマイシン添加クーン変法ハムF−12培地で培養した。化合物のポテンシエータ活性の特徴付けに使用する前に、細胞を27℃で16−48時間培養して、ΔF508−CFTRを補正した。矯正化合物の活性を決定するために、細胞を27℃又は37℃で、化合物有りまたは無しで24時間インキュベートした。
【0323】
6.全細胞記録
ΔF508−CFTRを安定に発現する、温度および試験化合物補正したNIH3T3細胞における巨視的ΔF508−CFTR電流(IΔF508)を、有孔パッチ、全細胞記録を使用してモニターした。簡単に言うと、IΔF508の電位固定記録を、室温で、Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments Inc., Foster City, CA)を使用して行った。全記録を10kHzのサンプリング周波数で獲得し、1kHzで低域フィルタ処理した。ピペットは、細胞内溶液で満たしたとき5−6MΩの抵抗性を有した。これらの記録条件下、計算したCl(ECl)の逆転電位は室温で−28mVであった。全記録は、シール抵抗性>20GΩおよびシリーズ抵抗性<15MΩを有した。パルス発生、データ獲得、および分析を、Clampex 8(Axon Instruments Inc.)と関連したDigidata 1320 A/Dインターフェースを備えたPCを使用して行った。浴は<250μlの食塩水を含み、無重力駆動灌流系を使用して2ml/分の速度で連続的に灌流した。
【0324】
7.矯正化合物の同定
【0325】
原形質膜における機能的ΔF508−CFTRの密度を増加させる矯正化合物の活性を決定するために、我々は、上記の有孔パッチ記録技術を使用して、矯正化合物で24時間処理後の電流密度を測定した。ΔF508−CFTRを完全に活性化するために、10μM フォルスコリンおよび20μM ゲニステインを細胞に添加した。我々の記録条件下で、27℃で24時間インキュベーション後の電流密度は、37℃で24時間インキュベーション後に見られるより高かった。これらの結果は、低温インキュベーションの原形質膜におけるΔF508−CFTRの密度に対する既知の効果と一致する。矯正化合物のCFTR電流密度に対する効果を決定するために、細胞を10μMの試験化合物と24時間、37℃でインキュベートし、電流密度を27℃および37℃対照(%活性)と比較した。記録の前に、細胞を3回細胞外記録培地で洗浄し、何らかの残った試験化合物を除いた。10μMの矯正化合物とのプレインキュベーションは、37℃対照と比較して、顕著にcAMP−およびゲニステイン依存性電流を増加させた。
【0326】
8.ポテンシエータ化合物の同定
【0327】
ΔF508−CFTRポテンシエータが、ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3細胞における巨視的ΔF508−CFTR Cl電流(IΔF508)を増加させる能力を、有孔−パッチ−記録技術を使用して試験した。光学アッセイにより同定されたポテンシエータは、光学アッセイにおいて見られたのと同様の強度および効果で、IΔF508の増加を用量依存性に惹起した。試験した全細胞において、ポテンシエータ適用前および適用中の逆転電位は約−30mVであり、それは計算したECl(−28mV)である。
【0328】
9.溶液
細胞内溶液(mM):Cs−アスパルテート(90)、CsCl(50)、MgCl2(1)、HEPES(10)、及び240μg/ml アンホテリシン−B(CsOHで7.35にpH調節)。
細胞外溶液(mM):N−メチル−D−グルカミン(NMDG)−Cl(150)、MgCl(2)、CaCl(2)、HEPES(10)(HClで7.35にpH調節)。
【0329】
10.細胞培養
【0330】
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を全細胞記録に使用する。細胞を37℃で5%COおよび90%湿度に、2mM グルタミン、10%ウシ胎児血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep、及び25mM HEPESを補ったダルベッコ改変イーグル培地中、175cm培養フラスコで維持する。全細胞記録のために、2,500−5,000細胞をポリ−L−リシン被覆ガラスカバースリップに播種し、24−48時間、27℃で培養し、その後ポテンシエータの活性の試験に使用し;そして矯正化合物有りまたは無しで37℃でコレクターの活性を測定する。
【0331】
11.単一チャネル記録
【0332】
NIH3T3細胞において安定に発現される温度補正ΔF508−CFTRの一チャネル活性およびポテンシエータ化合物の活性を、切断した裏返し膜パッチを使用して観察した。簡単に言うと、一チャネル活性の電位固定記録を、室温で、Axopatch 200Bパッチクランプ増幅器(Axon Instruments Inc.)を使用して行った。全記録を10kHzのサンプリング周波数で獲得し、400Hzで低域フィルタ処理した。パッチピペットをCorning Kovar Sealing #7052グラス(World Precision Instruments, Inc., Sarasota, FL)から製造し、細胞外溶液で満たしたとき5−8MΩの抵抗性を有した。ΔF508−CFTRを切除後、1mM Mg−ATP、および75nMのcAMP依存性タンパク質キナーゼ、触媒サブユニット(PKA;Promega Corp. Madison, WI)の添加により活性化した。チャネル活性が安定した後、パッチを無重力駆動微小灌流系を使用して灌流した。流入をパッチに隣接して置き、1−2秒以内での完全な溶液交換をもたらした。急速な灌流中ΔF508−CFTR活性を維持するために、非特異的ホスファターゼ阻害剤F(10mM NaF)を浴溶液に添加した。これらの記録条件下、チャネル活性は、パッチ記録の間(60分まで)一定のままであった。細胞内から細胞外溶液への正電荷の移動により生じた電流(アニオンは逆方向に移動)を正電流として示す。ピペット電位(V)は80mVに維持した。
【0333】
チャネル活性を、≦2活性チャネルを含む膜パッチから分析した。同時開放する最大数が、実験中のチャネルの活性の数を決定した。一チャネル電流振幅を決定するために、120秒のΔF508−CFTR活性を記録したデータを「オフライン」で100Hzでフィルタし、次いでBio−Patch分析ソフトウェア(Bio−Logic Comp. France)を使用してマルチガウス関数で適合させた全点振幅ヒストグラムの構築に使用した。全顕微鏡的電流および開放可能性(P)を120秒のチャネル活性から計算した。PをBio−Patchソフトウェアを使用して、またはP=I/i(N)(ここで、I=平均電流、i=一チャネル電流振幅、およびN=パッチ中の活性チャネル数)の相関から決定した。
【0334】
12.溶液
細胞外溶液(mM):NMDG(150)、アスパラギン酸(150)、CaCl2(5)、MgCl2(2)、及びHEPES(10)(トリス塩基でpH7.35に調整)。細胞内溶液(mM):NMDG−Cl(150)、MgCl2(2)、EGTA(5)、TES(10)、及びトリス塩基(14)(HClでpH7.35に調整)。
【0335】
13.細胞培養
【0336】
ΔF508−CFTRを安定に発現するNIH3T3マウス線維芽細胞を、切除−膜パッチ−クランプ記録に使用する。細胞を37℃で、5%COおよび90%湿度に、2mM グルタミン、10%ウシ胎児血清、1×NEAA、β−ME、1×pen/strep、および25mM HEPESを補ったダルベッコ改変イーグル培地で175cm培養フラスコ中維持する。一チャネル記録のために、2,500−5,000細胞をポリ−L−リシン被覆カバーガラスに播種し、24−48時間、27℃培養して、その後使用する。
【0337】
上述の方法を用い、化合物1の活性、すなわち、EC50を測定し表13に示す。
【表14】
図1
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