(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734412
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】ドライブトレイン及び自動車
(51)【国際特許分類】
F16H 61/28 20060101AFI20150528BHJP
B60K 6/387 20071001ALI20150528BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20150528BHJP
B60K 6/365 20071001ALI20150528BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20150528BHJP
B60K 6/26 20071001ALI20150528BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20150528BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20150528BHJP
H02K 7/10 20060101ALI20150528BHJP
F16D 28/00 20060101ALI20150528BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20150528BHJP
B60T 7/02 20060101ALI20150528BHJP
F16H 63/34 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
F16H61/28ZHV
B60K6/387
B60K6/48
B60K6/365
B60K6/52
B60K6/26
B60K6/547
B60K1/00
H02K7/10 C
F16D28/00 Z
B60T1/06 G
B60T7/02 E
F16H63/34
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-506545(P2013-506545)
(86)(22)【出願日】2011年4月29日
(65)【公表番号】特表2013-531765(P2013-531765A)
(43)【公表日】2013年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2011002157
(87)【国際公開番号】WO2011134673
(87)【国際公開日】20111103
【審査請求日】2012年11月26日
(31)【優先権主張番号】61/329,598
(32)【優先日】2010年4月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510017000
【氏名又は名称】マグナ ステアー ファールゾイヒテクニーク アーゲー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】カッスラー, ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】ピヒラー, シュテファン
【審査官】
瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−314036(JP,A)
【文献】
特開2002−326582(JP,A)
【文献】
特開2009−090769(JP,A)
【文献】
特開2010−076568(JP,A)
【文献】
特表2008−521707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/28
B60K 1/00
B60K 6/26
B60K 6/365
B60K 6/387
B60K 6/48
B60K 6/52
B60K 6/547
B60T 1/06
B60T 7/02
F16D 28/00
F16H 63/34
H02K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドライブトレインであって、前記ドライブトレインを選択的にロックするパーキングロック(46)と、電動機(12)および動力車軸(34)とを有し、前記動力車軸が、前記電動機(12)に永久的に駆動連結され、切り離しクラッチ(36)を介して、前記自動車の少なくとも1つの車輪に選択的に駆動連結可能であり、前記パーキングロック(46)および前記切り離しクラッチ(36)が、共通のアクチュエータ(52、52’)によって作動され、当該アクチュエータ(52、52’)が、前記切り離しクラッチ(36)が、閉状態にあるときのみ、前記パーキングロック(46)が作動されうる、ドライブトレイン。
【請求項2】
前記パーキングロック(46)および前記切り離しクラッチ(36)が、軸方向に作動されうることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項3】
前記パーキングロック(46)、前記切り離しクラッチ(36)および/または動力車軸(34)が、同軸に配設されることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項4】
前記パーキングロック(46)を作動するための作動運動および前記切り離しクラッチ(36)を開くための作動運動は、反対方向に向けられることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項5】
前記切り離しクラッチ(36)が、軸方向に横断可能なクラッチ部(38’)を備え、前記クラッチ部(38’)が、前記自動車の車輪に回転可能に固定されて連結される車軸部分(42)に割り当てられることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項6】
前記アクチュエータ(52、52’)が、軸方向に変位可能なスライドスリーブ(58)を備え、前記スライドスリーブ(58)が、前記動力車軸(34)を部分的に取り囲み、前記動力車軸(34)によって少なくとも部分的に同軸方向に案内される作動シャフト(54)によって移動されうることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項7】
前記スライドスリーブ(58)が、半径方向に少なくとも部分的に延びるピン(56)によって軸方向に変位可能なように前記作動シャフト(54)に連結されることを特徴とする、請求項6に記載のドライブトレイン。
【請求項8】
前記スライドスリーブ(58)が、前記クラッチ部(38’)を軸方向に横断するために、前記切り離しクラッチ(36)の軸方向に横断可能なクラッチ部(38’)に選択的に連結可能であることを特徴とする、請求項5または6に記載のドライブトレイン。
【請求項9】
前記アクチュエータ(52、52’)が、前記切り離しクラッチ(36)を閉状態にするバイアスを生成するように働く弾性要素(64)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項10】
前記電動機(12)の前記動力車軸(34)への駆動連結が、遊星トランスミッション(24)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項11】
前記パーキングロック(46)が、前記パーキングロック(46)が作動されると、前記遊星トランスミッション(24)がロックされるように構成されることを特徴とする、請求項10に記載のドライブトレイン。
【請求項12】
前記パーキングロック(46)が、前記電動機(12)の回転子(16)に回転可能に固定されるパーキングロックスリーブ(48)を備えることを特徴とする、請求項10に記載のドライブトレイン。
【請求項13】
前記パーキングロック(46)がスリーブ(50)を備え、前記スリーブ(50)が、前記スライドスリーブ(58)によって選択的に軸方向に横断可能であり、前記動力車軸(34)に回転可能に固定されて連結され、前記パーキングロックスリーブ(48)と係合状態にもたらされうることを特徴とする、請求項12に記載のドライブトレイン。
【請求項14】
前記電動機(12)が、固定子(14)と、回転子(16)とを備え、前記パーキングロック(46)および前記切り離しクラッチ(36)が、前記回転子(16)に少なくとも部分的に、配設されることを特徴とする、請求項1に記載のドライブトレイン。
【請求項15】
前記回転子(16)が中空シャフトとして具現化され、前記中空シャフトを通って、前記動力車軸(34)が少なくとも部分的に同軸に延びることを特徴とする、請求項14に記載のドライブトレイン。
【請求項16】
前車軸および後車軸と、請求項1に記載のドライブトレインとを有する自動車であって、前記前車軸および後車軸は、それぞれ2つの動力車軸(34)を備え、前記動力車軸の各々に別々の電動機(12)が割り当てられる自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライブトレインを選択的にロックするパーキングロックと、電動機および動力車軸とを有し、動力車軸が、電動機に永久的に駆動連結され、切り離しクラッチを介して自動車の少なくとも1つの車輪に選択的に駆動連結可能である自動車のドライブトレインに関する。
【背景技術】
【0002】
上述したタイプのドライブトレインは、特に、電気自動車またはハイブリッド車で使用される。この場合、パーキングロックは、エンジンが切られたときの状態に車両を固定するように働く。切り離しクラッチは、例えば、アイドリング状態にするために、電動機と車輪との係合を解除するように働く。例えば、ハイブリッド車の場合、車輪と電動機との切り離しは、内燃機関単独での車両の高速駆動時に電動機が回転するのを防止するように働きうる。しかしながら、例えば、故障時の場合など、車輪と電動機との間の機械的接続を解除できるようにするために、このような切り離しクラッチは、純粋な電気自動車において重要である。
【0003】
自動車においてドライブトレインが利用可能な全空間は、一般に非常に限られている。加えて、パーキングロックおよび切り離しクラッチのそれぞれの機能は常に利用可能でなければならない。パーキングロックおよび切り離しクラッチを作動するために、従来、別々のアクチュエータが設けられているため、ドライブトレインの製造コストが増し、全空間のうちさらに多くの空間が使われてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、高信頼性の動作とともに、単純かつ小型の構造のドライブトレインを作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、自動車のドライブトレインであって、ドライブトレインを選択的にロックするパーキングロックと、電動機および動力車軸とを有し、動力車軸が、電動機に永久的に駆動連結され、切り離しクラッチを介して、自動車の少なくとも1つの車輪に選択的に駆動連結可能であり、パーキングロックおよび切り離しクラッチが、共通のアクチュエータによって作動されうるドライブトレインによって達成される。
【0006】
本発明によれば、パーキングロックおよび切り離しクラッチは、共通のアクチュエータによって作動されうる。したがって、2つの前記機能ユニットの各々に、別々のアクチュエータが設けられない。パーキングロックおよび切り離しクラッチの両方を作動するように働く共通のアクチュエータを使用すると、必要なコンポーネント数が減ることで、ドライブトレインの製造コストおよび組み立てコストに有利な影響を及ぼす。加えて、本発明によるドライブトレインは、既知の構造の同等のドライブトレインより小型のデザインのものでありうる。
【0007】
パーキングロックおよび切り離しクラッチは、軸方向に、特に、共通の軸に沿って作動されうる。
【0008】
パーキングロック、切り離しクラッチおよび/または動力車軸は、同軸に配設されてもよい。
【0009】
ドライブトレインの確実な動作を常時確保するために、アクチュエータは、切り離しクラッチが閉状態にあるときのみ、パーキングロックが作動可能なように構成されてもよい。このような構成により、パーキングロックが係合されると、車輪が動力車軸に自動的に連結されるようになる。これは、上述した自動安全機能がない場合、パーキングロックが作動され、前記コンポーネントがロックされていても、切り離しクラッチが開状態のまま車輪が自由に回転しうるため、パーキングロックが電動機または動力車軸をロックすることによって、ドライブトレインがロックされるように配設される場合、特に重要である。
【0010】
パーキングロックを作動するための作動運動および切り離しクラッチを開くための作動運動は、特に、反対方向に向けられる。
【0011】
切り離しクラッチは、軸方向に横断可能なクラッチ部を備えてもよく、このクラッチ部は、自動車の車輪に回転可能に固定されて連結された車軸部分に割り当てられる。例えば、前記クラッチ部は、スリーブ状のデザインのものであり、回転可能に固定されるが、軸方向に横断可能になるようにリニア軸受によって車軸部分に連結される。
【0012】
アクチュエータは、軸方向に変位可能なスライドスリーブを含んでもよく、このスライドスリーブは、動力車軸を部分的に取り囲み、動力車軸によって少なくとも部分的に同軸方向に案内される作動シャフトによって移動されうる。言い換えれば、半径方向に見た場合、動力車軸は、スライドスリーブと作動シャフトとの間に少なくとも部分的に配設される。スライドスリーブの作動機構の単純なデザイン構成において、スライドスリーブは、半径方向に少なくとも部分的に伸びるピンによって軸方向に変位可能なように作動シャフトに連結される。
【0013】
切り離しクラッチを作動するために、スライドスリーブは、クラッチ部を軸方向に横断させるように、選択的に、例えば、直接的または間接的に、切り離しクラッチの軸方向に横断可能なクラッチ部に連結可能であってもよい。
【0014】
アクチュエータは、切り離しクラッチを閉状態にするバイアスを生成するように働く弾性要素を備えてもよい。例えば、弾性要素は、ばねであり、ばねは、作動シャフトおよびスライドスリーブによって軸方向に横断可能なクラッチ部に作用し、アクチュエータによる能動的な作動がない場合、クラッチ部を押圧して、切り離しクラッチを閉状態にする。
【0015】
電動機と動力車軸の省スペース連結は、例えば、遊星トランスミッションを備えてもよい。この実施形態は、特に、回転子と動力車軸とが同軸に配設され、動力車軸が回転子を少なくとも部分的に通って延びる場合に有用である。
【0016】
ドライブトレインの効率的なロックは、パーキングロックが作動されると、遊星トランスミッションがロックされるように構成されれば達成される。
【0017】
1つの実施形態によれば、パーキングロックは、電動機の回転子に回転可能に固定されたパーキングロックスリーブを備える。回転子が、例えば、減速歯車として具現化された遊星トランスミッションの太陽歯車に回転可能に固定されるようにさらに連結され、動力車軸が、遊星トランスミッションの遊星枠に回転可能に固定されるように連結され、またはその逆に連結されれば、パーキングロックを作動することで動力車軸に直接パーキングロックスリーブを連結および回転可能に固定することによって、ドライブトレインがロックされうる。この状況において、遊星トランスミッションの「入力」および「出力」が回避され、関与するコンポーネントの回転が、例えば、2段遊星歯車によって与えられる遊星トランスミッションの減速により防止される。
【0018】
パーキングロックスリーブは、スライドスリーブによって選択的に軸方向に横断可能であり、動力車軸に回転可能に固定されて連結され、パーキングロックスリーブと係合状態にもたらされうるスリーブによって、動力車軸に連結されうる。
【0019】
多くの場合、電気後車軸ドライブを有する車両において電気ドライブが利用可能な全空間は、自動車の最低地上高の要求により、厳しく制限されている。要求された車軸運動学およびその結果得られる車軸構造により、ドライブトレインに与えられる全空間を規定するさらなる制約がかかる。したがって、さらなる実施形態によれば、電動機は固定子および回転子を備え、パーキングロックおよび切り離しクラッチは、回転子に少なくとも部分的に、特に、全体的に配設される。パーキングロックおよび切り離しクラッチを回転子の内部に少なくとも部分的に統合すると、特に、電動機の軸方向に見た場合、ドライブトレインの構成が非常に小型のものになる。さらに、ドライブトレインの機能コンポーネントが空間的に近接することにより、「パッケージ」が最適化され、従来のドライブトレインより組み立てが容易になる。
【0020】
1つの実施形態によれば、回転子は、中空シャフトとして具現化され、この中空シャフトを通って動力車軸が少なくとも部分的に延びる。中空シャフトはまた、パーキングロックおよび切り離しクラッチを収容してもよい。
【0021】
本発明は、さらに、自動車、特に、前車軸および後車軸と、上述した実施形態の少なくとも1つによるドライブトレインとを有する自動車であって、前車軸および/または後車軸は、いずれの場合も、2つの動力車軸を備え、動力車軸の各々に別々の電動機が割り当てられる自動車に関する。言い換えれば、前車軸および/または後車軸の各ハーフシャフトに別々のドライブトレインが割り当てられるため、車軸のそれぞれの個々の車輪に駆動トルクが明確かつ個別に送り出せる。これは「トルクベクタリング」とも呼ばれる。加えて、この構成では、車軸につき電動機が1つのみの自動車や、自動車の推進用の電動機が1つのみの自動車より小型の電動機を使用可能である。
【0022】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲、本明細書および図面において明示される。
【0023】
本発明は、添付の図面を参照しながら、有益な実施形態を基本として例示的にのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】切り離しクラッチおよびパーキングロックを作動するアクチュエータを有する本発明によるドライブトレインの実施形態を示す。
【
図2】切り離しクラッチが閉状態であり、パーキングロックが非作動状態であるアクチュエータの実施形態を示す。
【
図3】切り離しクラッチが開状態およびパーキングロックが非作動状態の
図1に示すアクチュエータの実施形態を示す。
【
図4】パーキングロックが作動状態の
図2に示すアクチュエータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、電動機12を有するドライブトレイン10を示す。電動機12は、自動車の後車軸のハーフシャフトを駆動するように働く。後車軸は、対称的な構造のものであり、すなわち、電動機は、後車軸のもう一方のハーフシャフト(図示せず)に同様に割り当てられる。したがって、後車軸に接続された車輪(図示せず)の各々に別々の電動機が割り当てられるため、これらの車輪には、個々におよび互いに別々に駆動トルクが供給されうる。これにより、「トルクベクタリング」が可能になり、すなわち、自動車の運転動力学を任意の所与の時間における条件に適応可能にするために、運転状況に特有のものである後車軸の車輪に駆動トルクが分配される。
【0026】
電動機12は、固定子14と、回転子16とを備える。回転子16は、軸受18によってハウジング20に支持される。
【0027】
電動機12によって発生した駆動トルクは、回転子16から中空シャフト部分22を介して遊星トランスミッション24へ伝達される。遊星トランスミッション24は、太陽歯車26を備え、太陽歯車26は、中空シャフト部分22に接続され、第1の遊星歯車28と噛み合う。第1の遊星歯車28は、第2の遊星歯車28’に回転可能に固定され、第2の遊星歯車28’の直径は、第1の遊星歯車28より小さい。第2の遊星歯車28’は、ハウジング20において回転できないように固定されたリング歯車30と噛み合う。遊星歯車28、28’は両方で、遊星枠32に回転可能に配設された2段遊星歯車28’’を形成する。遊星歯車28’’の2段構造により、遊星トランスミッション24は、太陽歯車26の駆動運動によって遊星枠32のギアダウン運転をもたらす減速歯車である。
【0028】
遊星枠32は、中間シャフト34に回転可能に固定され、中間シャフト34は、回転子16内に同軸に延び、事実上、回転子を長手方向に貫通する。切り離しクラッチ36は、遊星トランスミッション24から離れた中間シャフト34の一端に配設される。爪クラッチとして具現化される切り離しクラッチ36はクラッチ部38を備え、クラッチ部38は、中間シャフト34に回転可能に固定され、軸方向に変位可能なクラッチ部38’に選択的に連結可能である。切り離しクラッチ36は、閉状態に示されている。
【0029】
リニア軸受40によって、クラッチ部38’は軸方向に変位可能であるが、車軸部分42に回転可能に固定されるように接続され、車軸部分42は、回転子16内に延び、自動車の車輪を固定するためのフランジ44と一体に形成される。車軸部分42は、軸受18’によって回転子16に支持される。
【0030】
ドライブトレイン10は、例えば、駐車時に自動車の動きを防止するために、パーキングロック46によってロックされうる。パーキングロック46は、回転子16に回転可能に固定されたパーキングロックスリーブ48と、軸方向に変位可能であるが、回転可能に固定されたリニア軸受40’によって中間シャフト34に連結されたスリーブ50とを備える。
【0031】
軸方向に横断可能なクラッチ部38’のように、スリーブ50は、電動機12および中間シャフト34の回転軸Rの軸方向にアクチュエータ52によって変位可能である。このような変位は、軸方向に変位可能なスライドスリーブ58にピン56によって連結される作動シャフト54によって発生されうる。スライドスリーブ58は、スリーブ50に直接接続される。切り離しクラッチ36は、クラッチ部38’に接続された圧力スリーブ60を有するボール59によって選択的に連結することで作動される。
【0032】
以下、アクチュエータ52の動作原理についてさらに詳細に説明する。
【0033】
図2は、アクチュエータのわずかに修正された実施形態52’を示す。特に、中間シャフト34は、アクチュエータ52のものと対比すると、ピン56が貫通する細長い孔62が1つしかない。しかしながら、機能的に、アクチュエータ52、52’は実質的に同一である。特に、任意の数のピン56および対応する細長い孔62が設けられてもよい。
【0034】
図2において、アクチュエータ52’は、切り離しクラッチ36の閉位置を規定する。パーキングロック46は開かれている。切り離しクラッチ36を開くために、スライドスリーブ58は、
図2に示す位置から左へ変位されなければならない。このような変位は、作動シャフト54の適切な並進運動によって発生され、ピン56を介してスライドスリーブ58に伝達される。中間シャフト34を通って同軸に延び、スライドスリーブ58の作動に必要とされる作動シャフト54の動きは、より詳細には図示していない機構によって作り出される。
【0035】
作動シャフト54が左側に移動するとき、アクチュエータ52’が開運動を要求しない限り、切り離しクラッチ36、ひいては、パーキングロック46を閉位置に保つバイアスをばね64が発生するため、ばね64によって生じるばね力に打ち勝たなければならない。
【0036】
スライドスリーブ58が左側に移動するにつれ、スライドスリーブ58が圧力スリーブ60に接続された保持リング66に当たるため、圧力スリーブ60も同様に左側に移動する。次に、圧力スリーブ60は、クラッチ部38’に配設された保持リング66’に当たる。すでに記載したように、クラッチ部38’は軸方向に横断可能であるため、スライドスリーブ58が
図2に示す状況から左側に作動運動すると、クラッチ部38’はフランジ44へ移動するため、クラッチ部38、38’の爪68の係合が解除される。次に、車軸部分42は、電動機12から切り離される。この状態は、
図3のアクチュエータ52によって示されている。
【0037】
切り離しクラッチ36を閉じるために、スライドスリーブ58は再度右側に移動する。特に、円周方向に均一に分散させて配設される複数のボール59が基本的に設けられてもよいという暗黙の了解の下、圧力スリーブ60は、ボール59によってスライドスリーブ58に連結され、結果的に、右側に移動される。クラッチ部38、38’が完全に係合され、クラッチ部38’が軸方向に運動できなくなると、圧力スリーブ60がさらに右側へ移動する動きがロックされる。このとき、再度、
図2に示す状態に達する。
【0038】
スライドスリーブ58が右側にさらに移動する場合、ボール59は半径方向内向きに押圧されるため、軸方向への運動に関しては、圧力スリーブ60とスライドスリーブ58との連結が解消される。
【0039】
図4は、パーキングロック46の作動状態を示す。パーキングロック46を作動するために、スライドスリーブ58は、
図2に示す状況から右側にさらに移動する。スライドスリーブ58は、右側に移動する際、スリーブ50上の対応するウェブ72と相互作用するショルダ70上にわたってスライドスリーブ58とともにスリーブ50を移送する。スライドスリーブ58およびスリーブ50が横断してつながれるということは、スリーブ50がパーキングロックスリーブ48と係合状態にもたらされることを意味する。すでに記載したように、パーキングロックスリーブ48は、回転子16に回転可能に固定されているため、遊星トランスミッション24は回避され、すなわち、遊星枠32および太陽歯車26が最終的に連結され、互いに対して回転可能に固定される。遊星トランスミッション24は、遊星歯車28、28’の直径と異なることで、減速歯車として機能するため、例えば、自動車が配置されているパーキングロットの斜面によって生じる勾配抵抗が自動車に作用することで、例えば、遊星枠32にトルクが作用するときにロックが起こる。
【0040】
図4は、切り離しクラッチ36が閉じられるときのみ、パーキングロック46の作動が可能になることを示す。これにより、ドライブトレイン10の構造が高信頼性および安全なものになる。
【0041】
パーキングロック46を開くために、スライドスリーブ58は、
図3に示す状況から左側に変位され、スライドスリーブは、スリーブ50に取り付けられた保持リング66’’によってスライドスリーブ58とともにスリーブ50を移送する。それにより、スリーブ50とパーキングロックスリーブ48との間の回転可能に固定された接続が取り消され、遊星トランスミッション24はロックされた状態ではなくなる。
【0042】
上記説明から、切り離しクラッチ36およびパーキングロック46が所定の方法でのみ作動可能であるため、アクチュエータ52、52’が最初にドライブトレイン10を確実に動作させることが分かる。
【0043】
さらに、軸方向に移動可能なコンポーネントが同軸に配設されるため、アクチュエータ52、52’の構造は非常に堅牢である。また、これにより、小型で半径方向に「入れ子式」の構造のアクチュエータ52、52’が得られる。アクチュエータ52、52’の小型構造により、回転子16にすべて配設することができることで、特に、軸方向において、全ドライブトレイン10の構造が小型になる。さらに、アクチュエータ52、52’は、回転子16内で保護される。
【0044】
最終的に、上述したドライブトレイン10の構成により、車両に簡単に装着可能なモジュールが得られる。すなわち、ドライブトレイン10は、1つの小型「パッケージ」に動力ユニットおよび安全性関連の機能ユニットの両方を備える。また、これにより、自動車の車軸の各車輪に別々のドライブトレイン10を割り当てることができる。
【0045】
上述した利点に加えて、ドライブトレイン10のさらなる顕著な特徴として、切り離しクラッチ36およびパーキングロック46の両方を作動させるために、1つのアクチュエータ52、52’しか要求されないため、コスト効率が良い構造である点が挙げられる。製造コストおよび組み立てコストの削減の他にも、システム全体の故障しやすさも低減される。
【符号の説明】
【0046】
10 ドライブトレイン
12 電動機
14 固定子
16 回転子
18,18’ 軸受
20 ハウジング
22 中空シャフト部分
24 遊星トランスミッション
26 太陽歯車
28,28’,28’’ 遊星歯車
30 リング歯車
32 遊星枠
34 中間シャフト
36 切り離しクラッチ
38,38’ クラッチ部
40,40’ リニア軸受
42 車軸部分
44 フランジ
46 パーキングロック
48 パーキングロックスリーブ
50 スリーブ
52,52’ アクチュエータ
54 作動シャフト
56 ピン
58 スライドスリーブ
59 ボール
60 圧力スリーブ
62 細長い孔
64 ばね
66,66’,66’’ 保持リング
68 爪
70 ショルダ
72 ウェブ
R 回転軸