(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セルロースを50〜99質量%、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む陰イオン性多糖類を1〜50質量%含むセルロース複合体であって、該セルロース複合体に含まれるコロイド状セルロース複合体における動的光散乱法により測定されるメジアン径が0.85μm以上である上記セルロース複合体。
水系媒体に、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース複合体と、水不溶性成分とを含み、損失正接tanδ(損失弾性率G‘’/貯蔵弾性率G‘)が1.5以上である、飲食品。
水系媒体に、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース複合体と、水不溶性成分とを含み、損失正接tanδ(損失弾性率G‘’/貯蔵弾性率G‘)が1.5以上である、医薬品。
水系媒体に、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース複合体と、水不溶性成分とを含み、損失正接tanδ(損失弾性率G‘’/貯蔵弾性率G‘)が1.5以上である、工業製品。
セルロースとカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む陰イオン性多糖類と水系媒体とを含む混合物を、湿式で共処理する工程において、固形分を35質量%以上、温度を80℃以下とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロース複合体の製造方法。
前記カルボキシメチルセルロースナトリウムが、0.05Mの水酸化ナトリウム中で測定されたゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより得られる分子量分布として、二山(バイモーダル)以上となるものを使用する請求項13に記載のセルロース複合体の製造方法。
前記カルボキシメチルセルロースナトリウムが、粘度が100mPa・s以上のA成分と、100mPa・s未満のB成分を、質量比で、5/95〜95/5で配合された請求項13又は14に記載のセルロース複合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のセルロース複合体は、セルロースと多糖類とを含むセルロース複合体であって、該セルロース複合体に含まれるコロイド状セルロース複合体の動的光散乱法により測定されるメジアン径が、0.85μm以上のものをいう。また、本発明のセルロース複合体は、このセルロース複合体を1質量%含むpH6〜7の水分散体における貯蔵弾性率(G’)が0.50Pa以上であるものをいう。本発明でいう複合化とは、セルロースの表面が、水素結合等の化学結合により、多糖類で被覆されることをいう。
【0022】
<セルロース>
本発明において、「セルロース」とは、セルロースを含有する天然由来の水不溶性繊維質物質である。原料としては、木材、竹、麦藁、稲藁、コットン、ラミー、バガス、ケナフ、ビート、ホヤ、バクテリアセルロース等が挙げられる。原料として、これらのうち1種の天然セルロース系物質を使用しても、2種以上を混合したものを使用することも可能である。
【0023】
<セルロースの平均重合度>
本発明に用いるセルロースの平均重合度は、500以下の結晶セルロースが好ましい。平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定できる。平均重合度が500以下ならば、多糖類との複合化の工程において、セルロース系物質が攪拌、粉砕、摩砕等の物理処理を受けやすくなり、複合化が促進されやすくなるため好ましい。より好ましくは、平均重合度は300以下、さらに好ましくは、平均重合度は250以下である。平均重合度は、小さいほど複合化の制御が容易になるため、下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては10以上である。
【0024】
<セルロースの加水分解>
平均重合度を制御する方法としては、加水分解処理等が挙げられる。加水分解処理によって、セルロース繊維質内部の非晶質セルロースの解重合が進み、平均重合度が小さくなる。また同時に、加水分解処理により、上述の非晶質セルロースに加え、ヘミセルロースや、リグニン等の不純物も、取り除かれるため、繊維質内部が多孔質化する。それにより、混練工程等で、セルロースと多糖類に機械的せん断力を与える工程において、セルロースが機械処理を受けやすくなり、セルロースが微細化されやすくなる。その結果、セルロースの表面積が高くなり、多糖類との複合化の制御が容易になる。
加水分解の方法は、特に制限されないが、酸加水分解、熱水分解、スチームエクスプロージョン、マイクロ波分解等が挙げられる。これらの方法は、単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。酸加水分解の方法では、セルロース系物質を水系媒体に分散させた状態で、プロトン酸、カルボン酸、ルイス酸、ヘテロポリ酸等を適量加え、攪拌させながら、加温することにより、容易に平均重合度を制御できる。この際の温度、圧力、時間等の反応条件は、セルロース種、セルロース濃度、酸種、酸濃度により異なるが、目的とする平均重合度が達成されるよう適宜調製されるものである。例えば、2質量%以下の鉱酸水溶液を使用し、100℃以上、加圧下で、10分以上セルロースを処理するという条件が挙げられる。この条件のとき、酸等の触媒成分がセルロース繊維内部まで浸透し、加水分解が促進され、使用する触媒成分量が少なくなり、その後の精製も容易になる。
【0025】
<セルロースの粒子形状(L/D)>
本発明のセルロース複合体中のセルロースは、微細な粒子状の形状であることが好ましい。セルロースの粒子形状は、本発明のセルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1〜0.5質量%に純水で希釈し、マイカ上にキャストし、風乾されたものを、高分解能走査型顕微鏡(SEM)、又は原子間力顕微鏡(AFM)で計測された際に得られる粒子像の長径(L)と短径(D)とした場合の比(L/D)で表され、100個〜150個の粒子のL/Dの平均値として算出される。
L/Dは、懸濁安定性の点で20未満が好ましく、15以下がより好ましく、10以下がさらに好ましく、5以下が特に好ましく、5未満が格別に好ましく、4以下が最も好ましい。
【0026】
<多糖類>
本発明における多糖類は、グルコース、ガラクトース、マンノース、キシロース、N−アセチルグルコサミン、グルコン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸等の糖類がα又はβ結合し、主鎖又は側鎖を構成する化合物のことをいう。例えば、天然由来では、アーモンドガム、アラビアガム、アラビノガラクタン、エレミ樹脂、カラヤガム、ガッティガム、ダンマル樹脂、トラガントガム、モモ樹脂等の樹脂由来の多糖類、アマシードガム、カシアガム、ローカストビーンガム、グアーガム、グアーガム酵素分解物、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、セスバニアガム、タマリンド種子ガム、タラガム、トリアカンソスガム等の豆類由来の多糖類、アルギン酸、カラギーナン、フクロノリ抽出物、ファーセルラン等の海草由来の多糖類、アロエベラ抽出物、オクラ抽出物、キダチアロエ抽出物、トロロアオイ、ペクチン等の果実類、葉、地下茎由来の多糖類、アエロモナスガム、アウレオバシジウム培養液、アゾトバクター・ビネランジーガム、ウェランガム、エルウィニア・ミツエンシスガム、エンテロバクター・シマナスガム、エンテロバクターガム、カードラン、キサンタンガム、ジェランガム、スクレロガム、デキストラン、納豆菌ガム、プルラン、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、レバン等の微生物の発酵産物由来の多糖類、セルロース由来の多糖類としては、セルロース、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、およびメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、及びそのナトリウム、カルシウム等のセルロース誘導体等が挙げられ、その他としては、酵母細胞壁、キチン、キトサン、グルコサミン、オリゴグルコサミン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸等が挙げられる。
これらの多糖類は、単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
その中でも、本発明のセルロース複合体に用いるには、陰イオン性、又は中性多糖類が、結晶セルロースと複合化しやすいため、好ましい。さらに、陰イオン性多糖類は、より複合化しやすいため、好ましい。
【0027】
<陰イオン性多糖類>
水中で陽イオンが遊離し、それ自身が陰イオンとなるものを陰イオン性多糖類と呼ぶ。本発明において陰イオン性多糖類を用いることで、セルロースとの複合化がより促進されるため好ましい。
陰イオン性多糖類としては、以下のものが好適である。
例えば、サイリウムシードガム、カラヤガム、カラギーナン、寒天、ファーセルラン、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、HMペクチン、LMペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、ジェランガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシエチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロースカルシウム等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの陰イオン性多糖類は2種以上を組み合わせてもよい。
【0028】
<セルロース複合体のコロイド状セルロース複合体含有量>
本発明のセルロース複合体は、コロイド状セルロース複合体を50質量%以上含有することが好ましい。ここでいうコロイド状セルロース複合体含有量とは、セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m
2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m
2/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みに残存する固形分(セルロースと、多糖類を含む。また、本発明のセルロース複合体が水溶性ガムを含む場合は、さらに、水溶性ガムを含む)の質量百分率のことである。コロイド状セルロース複合体の含有量が50質量%以上であると、懸濁安定性が向上する。さらに好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70質量%以上である。コロイド状セルロース複合体含有量は、多ければ多いほど、懸濁安定性が高いため、その上限は特に制限されないが、好ましい範囲としては、100質量%以下である。
【0029】
<複合体の多糖類の広がり ※動的光散乱法によるメジアン径>
本発明のセルロース複合体は、従来品に対し、セルロース粒子表面から放射状に伸びた多糖類の広がりが大きいという特徴がある。この多糖類の広がりは、上述のコロイド状セルロース複合体における、動的光散乱法により測定されるメジアン径で表され、本発明のセルロース複合体については、このメジアン径は0.85μm以上であることが必要である。
この動的光散乱法によるメジアン径は、以下の方法で測定することができる。まず、セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m
2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m
2/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取する。この上澄み液を、50mL容量のPP製サンプル管に入れて、超音波洗浄器(アズワン製 超音波洗浄器 商品名AUC−1L型)で10分間、超音波処理する。その後、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子(株)製 商品名「ELSZ−2」(バッチセル))により粒度分布(粒径値に対する散乱強度の度数分布)を測定される。ここでいうメジアン径とは、この度数分布における散乱強度の積算50%に対応する粒径値(μm)のことである。このメジアン径は大きいほど、セルロース複合体の懸濁安定性が優れるため、好ましくは0.90μm以上であり、より好ましくは1.0μm以上であり、さらに好ましくは1.1μm以上であり、特に好ましくは1.2μm以上である。上限については、特に制限はないが、好ましくは5.0μm以下であり、より好ましくは3.0μm以下であり、さらに好ましくは2.0μm以下であり、特に好ましくは1.5μm以下である。
【0030】
<カルボキシメチルセルロースナトリウム>
上述の陰イオン性多糖類の中でも、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMC−Na)が、特にセルロースと複合化しやすいため好ましい。ここでいうCMC−Naとは、セルロースの水酸基がモノクロロ酢酸で置換されたもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の化学構造を持つものである。CMC−Naは、パルプ(セルロース)を水酸化ナトリウム溶液で溶かし、モノクロロ酸(或いはそのナトリウム塩)で置換して得られる。
特に、置換度と粘度が特定範囲に調製されたCMC−Naを用いることが、複合化の観点から好ましい。
また、CMC−Naの粘度は、1質量%の純水溶液において、500mPa・s以下が好ましい。ここでいう粘度は、以下の方法で測定される。まず、CMC−Naの粉末を、1質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散し、水溶液を調製する。次に、得られた水溶液ついて、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。CMC−Naの粘度が低いほど、セルロース、多糖類との複合化が促進されやすい。そのため、200mPa・s以下がより好ましく、100mPa・s以下がさらに好ましい。下限は特に設定されるものではないが、好ましい範囲としては1mPa・s以上である。
【0031】
<「CMC−Na」の組合せ>
本発明のセルロース複合体に用いられるCMC−Naは、粘度が異なる2種を組合せたものであることが好ましい。このCMC−Naの組合せは、具体的には、2質量%水溶液の25℃における粘度が100mPa・s以上であるA成分と、100mPa・s未満であるB成分を含有し、A成分とB成分の配合比が、A成分/B成分=5/95〜95/5(質量比)であることが好ましい。
ここで粘度は、以下の方法で測定される。まず、CMC−Naの粉末を、2質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散し、水溶液を調製する。次に、得られたに水溶液ついて、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローター種は、粘度によって適宜変更できる。
ここで高粘度のCMC−NaであるA成分は、セルロースと複合化した際に、水分散状態でセルロース表面から放射状に広がり、隣接する複合体のCMC−Naと絡み合うことで、セルロース複合体のネットワーク構造を剛直にし、結果として水分散体の貯蔵弾性率(G’)を高める働きをする。A成分の粘度は適度な範囲に設定することで、セルロース表面からのCMC−Naの広がりが大きくなるため好ましい。A成分の粘度としては、200mPa・s以上がより好ましく、300mPa・s以上がさらに好ましく、500mPa・s以上が特に好ましい。上限としては、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましく、2000mPa・s以下がさらに好ましく、1000mPa・s以下が特に好ましい。
また、低粘度のCMC−NaであるB成分は、セルロースと多糖類を混練する際に、混練物を固くする作用があり、混練電力が掛かりやすくなるため、所定の時間で複合化を促進する効果がある。B成分の粘度と、上述の複合化促進効果には相関がある。B成分の粘度としては、90mPa・s以下がより好ましく、70mPa・s以下がさらに好ましく、50mPa・s以下が特に好ましく、30mPa・s以下が最も好ましい。下限としては、1mPa・s以上が好ましく、5mPa・s以上がより好ましく、10mPa・s以上がさらに好ましく、20mPa・s以上が特に好ましい。
上述のA成分とB成分の配合比により、セルロース複合体の製造における複合化のしやすさ、及びそれにより得られるセルロース複合体の機能が、調整できる。この配合比(質量比)としては、A成分/B成分=10/90〜90/10がより好ましく、20/80〜80/20がさらに好ましく、30/70〜70/30が特に好ましく、40/60〜60/40が最も好ましい。
【0032】
<CMC−Naの分子量分布>
本発明で用いるCMC−Naは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、分子量を測定した際に、得られたクロマトグラムが、二山(バイモーダル)以上のピークを有するものを用いることが好ましい。
二山(バイモーダル)以上のピークとは、GPCクロマトグラムにおいて、二つ以上の別々のピークを示す曲線の形態(ピークトップが二つ以上)をとることを意味する。この形態をとるものは、分子量分布が単分散ではなく、複数の成分が混合されることで、それぞれが補完しあい、セルロース表面からのCMC−Naの広がりが大きくなり、その結果G‘が高いセルロース複合体が得られる。
ここでいうゲルパーミエーションクロマトグラフィーとは、株式会社島津製作所製 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)商品名LC−20A型に、カラムとして東ソー株式会社製 商品名TSK−GEL G5000PW型(7.8mmx30cm)一本と、商品名TSK−GEL G3000PWXL型(7.8mmx30cm)二本を直列でつなぎ、移動層として0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用い、移動層の流量を1mL/分、カラム温度30℃、RI検出器もしくはUV検出器(波長210nm)で測定した際に得られるクロマトグラムにおいて、二山(バイモーダル)以上のピークが検出されることである。
用いるCMC−Naは、上記の移動層と同じ溶液に、完全に溶解したものを用いることができ、CMC−Naの溶液濃度は0.01〜1.0質量%の濃度の範囲で適宜調整され、CMC−Na溶液の打ち込み量は、5〜10μL/回で測定される。
ピークが単分散ではなく、二山(バイモーダル)以上の分子量分布を有するCMC−Naを用いることで、セルロース複合体の表面電荷が高く、CMC−Naの広がりが大きくなるため、二山(バイモーダル)以上の分子量分布を有するCMC−Naを用いることが好ましい。
【0033】
<CMC−Naの置換度>
本発明のセルロース複合体に用いるCMC−Naは、高置換度のものを用いることが好ましい。CMC−Naの置換度が高いほど、セルロースと複合化しやすく、セルロース複合体の貯蔵弾性率が高まり、高塩濃度の水溶液中(例えば10質量%の塩化ナトリウム水溶液)でも高い懸濁安定性を発揮できるため好ましい。また、高置換度のCMC−Naを用いることで、乳成分等のタンパク質と過度の凝集を発生しにくいものが得られる。置換度とは、セルロース中の水酸基にカルボキシメチル基がエーテル結合した度合いのことであり、具体的には、置換度は0.5以上が好ましく、1.0以上がより好ましく、1.2以上がさらに好ましく、1.3以上が特に好ましい。上限は3以下が好ましく、2以下がより好ましく、1.5以下がさらにこのましい。
ここでいう置換度は、以下の方法で測定される。試料(無水物)0.5gを精密にはかり、ろ紙に包んで磁性ルツボ中で灰化する。冷却した後、これを500mLビーカーに移し、水約250mLと、0.05M硫酸35mLを加えて30分間煮沸する。これを冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加えて、過剰の酸を0.1M水酸化カリウムで逆滴定して、次の式で算出する。
A=((af−bf1)/試料無水物(g))−アルカリ度(又は+酸度)
置換度=(162xA)/(10000−80A)
ここで、
A:試料1g中のアルカリに消費された0.05Mの硫酸の量(mL)
a:0.05M硫酸の使用量(mL)
f:0.05M硫酸の力価
b:0.1M水酸化カリウムの滴定量(mL)
f1:0.1M水酸化カリウムの力価
162:グルコースの分子量
80:CH
2COONa−Hの分子量
アルカリ度(又は酸度)の測定法:試料(無水物)1gを300mLフラスコに精密に測りとり、水約200mLを加えて溶かす。これに0.05M硫酸5mLを加え、10分間煮沸した後、冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加え、0.1M水酸化カリウムで滴定する(SmL)。同時に空試験を行い(BmL)、次の式で算出する。
アルカリ度=((B−S)xf)/試料無水物(g)
ここで、f:0.1M水酸化カリウムの力価である。(B−S)xfの値が、(−)の時には、酸度とする。
【0034】
<セルロースと多糖類の配合比率>
本発明のセルロース複合体は、好ましくは、セルロースを50〜99質量%、及び多糖類を1〜50質量%含む。複合化によって、多糖類がセルロース粒子の表面を水素結合等の化学結合により被覆することで、中性の水溶液に分散した際に、セルロース複合体がもつ懸濁安定性が向上する。また、セルロースと多糖類を上記の組成とすることで、複合化が促進され、中性の水分散体における懸濁安定性が向上して、機能性食品素材等の水不溶性成分の沈降防止効果を達成することがより容易となる。本発明のセルロース複合体は、セルロースを70〜99質量%、多糖類を1〜30質量%を含むことがより好ましく、セルロースを80〜99質量%、多糖類を1〜20質量%を含むことがさらに好ましく、セルロースを85〜99質量%、多糖類を1〜15質量%を含むことが特に好ましい。
【0035】
<セルロース複合体中のセルロース芯材の粒子径 ※レーザー回折/散乱法によるメジアン径>
本発明のセルロース複合体のコロイド状セルロース複合体について、レーザー回折/散乱法により測定されるメジアン径は、1.0μm以下であることが好ましい。この方法で計測されるメジアン径は、上述の動的光散乱法によるものと異なり、セルロース複合体の中心に存在するセルロース芯材の粒子径を表すものである。このレーザー回折/散乱法によるメジアン径は、以下の方法で測定することができる。
まず、セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m
2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m
2/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取する。この上澄み液を、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。この値が小さいほど、セルロース複合体の懸濁安定性が優れるため好ましく、より好ましくは0.7μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以下であり、特に好ましくは0.3μm以下であり、最も好ましくは0.2μm以下である。
【0036】
<セルロース複合体中の粗大粒子の大きさ ※レーザー回折/散乱法によるメジアン径>
本発明のセルロース複合体は、それに含まれる粗大粒子のメジアン径が小さい特徴がある。この粗大粒子の大きさは、以下の方法で測定できる。まず、セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離を経ずに、そのまま、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により得られた体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)のことである。このメジアン径が20μm以下であると、セルロース複合体の懸濁安定性がより容易に向上するため、好ましい。また、セルロース複合体を含有する食品を食した際に、ザラツキのない、なめらかな舌触りのものを提供することができる。より好ましくは15μm以下であり、特に好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。下限は特に制限されないが、好ましい範囲としては0.1μm以上である。
【0037】
<セルロース複合体の貯蔵弾性率>
次に、本発明のセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)について説明する。
本発明のセルロース複合体は、セルロース複合体を1質量%含むpH6〜7の水分散体において貯蔵弾性率(G’)が0.50Pa以上である。貯蔵弾性率とは、水分散体のレオロジー的な弾性を表現するものであり、セルロースと多糖類との複合化、又はセルロースと多糖類及びその他水溶性ガムとの複合化の程度を表すものである。貯蔵弾性率が高いほど、セルロースと多糖類との複合化、又はセルロースと多糖類及びその他水溶性ガムとの複合化が促進され、セルロース複合体の水分散体におけるネットワーク構造が、剛直であることを意味する。ネットワーク構造が剛直なほど、セルロース複合体の懸濁安定性に優れる。
本発明において、貯蔵弾性率は、セルロース複合体を純水中に分散させた水分散体(pH6〜7)の動的粘弾性測定により得られる値とした。水分散体に歪みを与えた際の、セルロース複合体ネットワーク構造内部に蓄えられた応力を保持する弾性成分が貯蔵弾性率として表される。
貯蔵弾性率の測定方法としては、まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製する。得られた水分散体を3日間室温で静置する。この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引、水分散体は微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する)により測定する。本発明における貯蔵弾性率は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値のことである。この貯蔵弾性率の値が大きいほど、セルロース複合体が形成する水分散体の構造はより弾性的であり、セルロースと多糖類との複合化、又はセルロースと多糖類及びその他水溶性ガムが高度に複合化していることを表している。
セルロース複合体の貯蔵弾性率は、0.75Pa以上が好ましく、1.0Pa以上がより好ましく、さらに好ましくは1.3Pa以上であり、特に好ましくは1.6Pa以上であり、最も好ましくは、1.8Pa以上である。
上限は、特に設定されるものではないが、飲料とした場合の飲みやすさを勘案すると、6.0Pa以下である。6.0Pa以下であると、懸濁安定性が充分に得られるセルロース複合体の添加量(飲料により異なるが、例えば、コーヒー、ココア、紅茶等の嗜好飲料、またはCa強化牛乳等の飲料では0.1〜1.0質量%)において、飲み口が軽いため好ましい。また、食感を調節するために、セルロース複合体の添加量が低い場合(例えば0.5質量%以下)でも、セルロース以外の水不溶成分と凝集等を生じにくい。
【0038】
<セルロース複合体の構造>
本発明のセルロース複合体は、従来品に対し、セルロース表面から放射状に伸びた多糖類の広がりが、大きいという特徴がある。セルロース表面から伸びた多糖類の広がりが大きいほど、隣接するセルロース複合体の多糖類と絡み合いやすくなる。その結果、セルロース複合体同士の絡み合いが密に生じることで、ネットワーク構造が剛直になり、貯蔵弾性率(G’)が向上し、懸濁安定性が高くなる。この多糖類の広がりは、以下の方法で測定することができる。
まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間、全量300g)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製する。得られた水分散体を3日間以上、室温で静置する。その後、純水で20倍希釈され、サンプル液が調製される。水分散体の微細構造を壊さないよう、スポイトを使用して、5μlをゆっくりと吸出し、1cmx1cmの壁開されたマイカ上に、ゆっくり滴下し、エアダスターで余分な水分を吹き飛ばし、マイカ上に定着したサンプルを、AFM(島津製作所製 走査型プローブ顕微鏡SPM−9700、位相モード、オリンパス社製プローブOMCL−AC240TSを使用)にて、観察する。この観察像において、セルロース粒子は高さ2nm以上の棒状粒子として観察され、そのセルロース粒子から周囲に放射状に伸びる高さ2nm未満の多糖類が観察できる(
図1)。本発明では、このセルロース粒子から周囲に放射状に伸びた多糖類の広がりを、前記コロイド状セルロース複合体における、動的光散乱法により測定されるメジアン径で表す。
多糖類は高度に複合化されると、この広がりがより大きくなるため好ましい。さらに、多糖類として、特定の置換度、粘度を有するCMC−Naを用いると、さらにこの広がりが大きくなる。特定の粘度の2種のCMC−Naを組合せることで、この広がりは、一段と大きくなる。
【0039】
<セルロース複合体の水分散体の粘度>
本発明のセルロース複合体は、上述の如く、セルロース粒子からのCMC−Naの広がりが大きいため、水分散体中で、隣接する粒子と絡み合いやすい特徴がある。そのため、従来品より、高い粘度を有し、飲食品に添加した際に、コク、喉越し(飲みやすさ)等の良好な食感を付与できる。ここでいう粘度とは、以下の方法で測定することができる。
まず、セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%濃度の純水分散体を調製する。この水分散体ついて、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして30秒静置後に、30秒間回転させて測定する。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用したローターは以下の通りである。すなわち、1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s以上:No3)で測定する。
セルロース複合体の水分散体の粘度の好ましい範囲としては、100mPa・s以上である。より好ましい範囲は、150mPa・s以上であり、さらに好ましくは200mPa・s以上であり、よりさらに好ましくは250mPa・s以上、特に好ましくは、300mPa・s以上であり、最も好ましくは350mPa・s以上である。上限は、飲みやすさと密接に関連し、1000mPa・s以下が好ましく、700mPa・s以下がより好ましく、600mPa・s以下がさらに好ましく、500mPa・s以下が特に好ましい。
<水溶性ガム>
本発明のセルロース複合体は、さらに多糖類以外の水溶性ガムを含むことが好ましい。水溶性ガムとしては、水膨潤性が高く、セルロースと複合化しやすいガムが好ましい。
例えば、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム、カラヤガム、キトサン、アラビアガム、寒天、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム等のアルギン酸塩、HMペクチン、LMペクチン等のペクチン、アゾトバクター・ビネランジーガム、キサンタンガム、カードラン、プルラン、デキストラン、ジェランガム、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられる。これらの水溶性ガムは2種以上を組み合わせてもよい。
上述の水溶性ガムの中でも、セルロースとの複合化の点で、キサンタンガム、カラヤガム、ジェランガム、ペクチン、アルギン酸塩が好ましい。
【0040】
<多糖類と水溶性ガムの質量比>
多糖類と上記の水溶性ガムとの質量比は、30/70〜99/1であることが好ましい。本発明のセルロース複合体において、多糖類と上記の水溶性ガムが前記の範囲にあることで、弱アルカリ性(pH8)から酸性(pH3)までの広いpH領域の本発明のセルロース複合体を含む水分散体において、本発明のセルロース複合体は懸濁安定性を示す。これら多糖類と水溶性ガムとの配合量比として、より好ましくは、40/60〜90/10であり、さらに好ましくは40/60〜80/20である。
【0041】
<親水性物質>
本発明のセルロース複合体に、水への分散性を高める目的で、多糖類及び水溶性ガム以外に、さらに親水性物質を加えてもよい。親水性物質とは、冷水への溶解性が高く粘性を殆どもたらさない有機物質であり、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳糖、マルトース、ショ糖、α−、β−、γ−シクロデキストリン等のオリゴ糖類、ブドウ糖、果糖、ソルボース等の単糖類、マルチトール、ソルビット、エリスリトール等の糖アルコール類等が適している。これらの親水性物質は、2種類以上組み合わせてもよい。上述の中でも、澱粉加水分解物、デキストリン類、難消化性デキストリン、ポリデキストロース等の親水性多糖類が分散性の点で好ましい。
その他の成分の配合については、組成物の水中での分散及び安定性を阻害しない程度に配合することは自由である。
【0042】
<セルロース複合体の製造方法>
次に、本発明のセルロース複合体の製造方法を説明する。
本発明の特定のメジアン径を有するコロイド状セルロース複合体を特定量含むセルロース複合体は、混練工程においてセルロースと多糖類に機械的せん断力をあたえ、セルロースを微細化させるとともに、セルロース表面に多糖類を複合化させることによって得られる。また、多糖類以外の水溶性ガムや親水性物質、及び、その他の添加剤などを添加しても良い。上述の処理を経たものは、必要に応じ、乾燥される。本発明のセルロース複合体には、上述の機械的せん断を経て、未乾燥のもの及びその後乾燥されたもの等、いずれの形態でもよい。
機械的せん断力を与えるには、混練機等を用いて混練する方法を適用することができる。混練機は、ニーダー、エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ライカイ機等を用いることができ、連続式でもバッチ式でもよい。混練時の温度は成り行きでもよいが、混練の際の複合化反応、摩擦等により発熱する場合にはこれを除熱しながら混練してもよい。これらの機種を単独で使用することも可能であるが、二種以上の機種を組み合わせて用いることも可能である。これらの機種は、種々の用途における粘性要求等により適宜選択すればよい。
また、混練温度は、低いほど、多糖類の劣化が抑制され、結果として得られるセルロース複合体の貯蔵弾性率(G’)が高くなるため好ましい。混練温度は、80℃以下であることが好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、50℃以下がよりさらに好ましく、30℃以下が特に好ましく、20℃以下が最も好ましい。高エネルギー下で、上記の混練温度を維持するには、ジャケット冷却、放熱等の徐熱を工夫することも自由である。
混練時の固形分は、35質量%以上であることが好ましい。混練物の粘性が高い半固形状態で混練することで、混練物が緩い状態にならず、下記に述べる混練エネルギーが混練物に伝わりやすくなり、複合化が促進されるため好ましい。混練時の固形分は、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは55質量%以上である。上限は特に限定されないが、混練物が水分量の少ないパサパサな状態にならず、充分な混練効果と均一な混練状態が得られることを考慮して、現実的範囲は90質量%以下が好ましい。より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下である。また、固形分を上記範囲とするために、加水するタイミングとしては、混練工程の前に必要量を加水してもよいし、混練工程の途中で加水してもよいし、両方実施しても良い。
【0043】
ここで、混練エネルギーについて説明する。混練エネルギーとは混練物の単位質量当たりの電力量(Wh/kg)で定義するものである。混練エネルギーは、50Wh/kg以上とすることが好ましい。混練エネルギーが50Wh/kg以上であれば、混練物に与える磨砕性が高く、セルロースと多糖類、又は、セルロース、多糖類、及びその他水溶性ガム等との複合化が促進され、中性のセルロース複合体の懸濁安定性は向上する。より好ましくは80Wh/kg以上であり、さらに好ましくは100Wh/kg以上であり、特に好ましくは200Wh/kg以上であり、一層好ましくは300Wh/kg以上であり、最も好ましくは400Wh/kg以上である。
混練エネルギーは、高い方が、複合化が促進されると考えられるが、混練エネルギーをあまり高くすると、工業的に過大な設備となること、設備に過大な負荷がかかることから、混練エネルギーの上限は1000Wh/kgとするのが好ましい。
【0044】
複合化の程度は、セルロースとその他の成分の水素結合の割合と考えられる。複合化が進むと、水素結合の割合が高くなり本発明の効果が向上する。また、複合化が進むことで、セルロース複合体に含まれるコロイド状セルロース複合体のメジアン径が大きくなる。
【0045】
本発明のセルロース複合体を得るにあたって、前述の混練工程より得られた混練物を乾燥する場合は、棚段式乾燥、噴霧乾燥、ベルト乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等の公知の乾燥方法を用いることができる。混練物を乾燥工程に供する場合には、混練物に水を添加せず、混練工程の固形分濃度を維持して、乾燥工程に供することが好ましい。
【0046】
乾燥後のセルロース複合体の含水率は1〜20質量%が好ましい。含水率を20%以下とすることで、べたつき、腐敗等の問題や運搬・輸送におけるコストの問題が生じにくくなる。より好ましくは15%以下、特に好ましくは10%以下である。また、1%以上とすることで、過剰乾燥のため分散性が悪化することもない。より好ましくは1.5%以上である。
【0047】
セルロース複合体を市場に流通させる場合、その形状は、粉体の方が取り扱い易いので、乾燥により得られたセルロース複合体を粉砕処理して粉体状にすることが好ましい。但し、乾燥方法として噴霧乾燥を用いた場合は、乾燥と粉末化が同時にできるため、粉砕は必要ない。乾燥したセルロース複合体を粉砕する場合、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の公知の方法を用いることができる。粉砕する程度は、粉砕処理したものが目開き1mmの篩いを全通する程度に粉砕する。より好ましくは、目開き425μmの篩いを全通し、かつ、平均粒度(重量平均粒子径)としては10〜250μmとなるように粉砕することが好ましい。これらの乾燥粉末は、セルロース複合体の微粒子が凝集し、二次凝集体を形成しているものである。この二次凝集体は、水中で攪拌すると崩壊し、上述のセルロース複合体微粒子に分散する。二次凝集体の見かけの重量平均粒子径は、ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)、JIS標準篩(Z8801−1987)を用いて、試料10gを10分間篩分することにより得られた粒度分布における累積重量50%粒径のことである。
乾燥したセルロース複合体を水中で攪拌した際、容易に分散し、セルロースが均一に分散した、なめらかな組織を持つザラツキの無い安定なコロイド分散体が形成される。特に、中性において、セルロースが凝集や分離を起こさず、安定なコロイド分散体を形成するため、安定剤等として優れた機能を奏する。
【0048】
<低温による高度複合化>
上述のように、本発明のセルロース複合体を得るには、多糖類として、CMC−Naを使用する場合に、粘度の異なる二成分を、特定の比率で混ぜ合わせることが好ましい。
一方、本発明では、CMC−Naとして粘度の異なる二成分を用いずとも、上記の製造方法における混練温度を、さらに低温にすることで、低粘度のCMC−Na単独の使用でも、懸濁安定性が優れたセルロース複合体が得られる。
ここで用いるCMC−Naの粘度は、100mPa・s以下が好ましく、90mPa・s以下がより好ましく、70mPa・s以下がさらに好ましく、50mPa・s以下が特に好ましく、30mPa・s以下が最も好ましい。下限としては、1mPa・s以上が好ましく、5mPa・s以上がより好ましく、10mPa・s以上がさらに好ましく、20mPa・s以上が特に好ましい。
【0049】
ここでいう粘度は、以下の方法で測定される。まず、CMC−Naの粉末を、2質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散し、水溶液を調製する。次に、得られたに水溶液ついて、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。
【0050】
さらに、混練温度は、低いほど、複合体の貯蔵弾性率(G’)が高くなるため好ましく、混練温度は、0〜50℃が好ましく、40℃以下がより好ましく、30℃以下が特に好ましく、20℃以下がさらに好ましく、10℃以下が最も好ましい。20℃以下で混練する場合は、CMC−Naが水に膨潤するまでの間(混練開始から、電力量が30Wh/kgに到達するまで)は、室温以上とすることもできる。
【0051】
<用途>
本発明のセルロース複合体は、種々の食品に使用できる。例を挙げると、コーヒー、紅茶、抹茶、ココア、汁粉、ジュース等の嗜好飲料、生乳、加工乳、乳酸菌飲料、豆乳等の乳性飲料、カルシウム強化飲料等の栄養強化飲料並びに食物繊維含有飲料等を含む各種の飲料類、アイスクリーム、アイスミルク、ソフトクリーム、ミルクシェーキ、シャーベット等の氷菓類、バター、チーズ、ヨーグルト、コーヒーホワイトナー、ホイッピングクリーム、カスタードクリーム、プリン等の乳製品類、マヨネーズ、マーガリン、スプレッド、ショートニング等の油脂加工食品類、各種のスープ、シチュー、ソース、タレ、ドレッシング等の調味料類、練りがらしに代表される各種練りスパイス、ジャム、フラワーペーストに代表される各種フィリング、各種のアン、ゼリーを含むゲル・ペースト状食品類、パン、麺、パスタ、ピザ、各種プレミックスを含むシリアル食品類、キャンディー、クッキー、ビスケット、ホットケーキ、チョコレート、餅等を含む和・洋菓子類、蒲鉾、ハンペン等に代表される水産練り製品、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等に代表される畜産製品、クリームコロッケ、中華用アン、グラタン、ギョーザ等の各種の惣菜類、塩辛、カス漬等の珍味類、ペットフード類及び経管流動食類等である。
【0052】
本発明のセルロース複合体は、これらの用途において、懸濁安定剤、乳化安定剤、増粘安定剤、泡安定剤、クラウディー剤、組織付与剤、流動性改善剤、保形剤、離水防止剤、生地改質剤、粉末化基剤、食物繊維基剤、油脂代替などの低カロリー化基剤として作用するものである。また、上記の食品がレトルト食品、粉末食品、冷凍食品、電子レンジ用食品等形態又は用時調製の加工手法が異なっていても本発明の効果は発揮される。特に、加熱環境、高濃度環境においても機能を発揮する点が、従来のセルロース系の素材と異なる。
【0053】
本発明のセルロース複合体を食品に使用する場合、各食品の製造で一般に行われている方法と同様の機器を使用して、主原料の他、必要に応じて、香料、pH調整剤、増粘安定剤、塩類、糖類、油脂類、蛋白類、乳化剤、酸味料、色素等と配合して、混合、混練、撹拌、乳化、加熱等の操作を行えばよい。
【0054】
特に、本発明のセルロース複合体は、貯蔵弾性率(G’)が高く、少量の添加でも、低粘度で懸濁安定性に優れるため、特に、コーヒー、ココア、紅茶抽出物等の成分が高濃度配合されたリッチテイスト飲料の懸濁安定剤として好適である。
【0055】
<セルロース複合体の添加方法>
飲食品に、本発明のセルロース複合体を添加する方法としては次の方法が挙げられる。主原料或いは着色料、香料、酸味料、増粘剤等の成分と同時に、本発明のセルロース複合体を水に分散させることにより添加できる。
また、セルロース複合体の乾燥粉末を、水系媒体に分散する場合には、セルロース複合体を一旦、水に分散した後、目的とする食品形態に添加する方が、セルロース複合体の懸濁安定性が向上するため好ましい。セルロース複合体が乾燥粉末の場合、水への分散方法としては、食品等の製造工程で通常使用される各種の分散機・乳化機・磨砕機等の混練機を使用して分散することができる。混練機の具体例としては、プロペラ攪拌機、高速ミキサー、ホモミキサー、カッター等の各種ミキサー、ボールミル、コロイドミル、ビーズミル、ライカイ機等のミル類、高圧ホモジナイザー、ナノマイザー等の高圧ホモジナイザーに代表される分散機・乳化機、プラネタリーミキサー、ニーダー、エクルトルーダー、タービュライザー等に代表される混練機等が使用できる。2種以上の混練機を組み合わせて使用してもかまわない。また、加温しながら行ったほうが分散は容易である。
【0056】
<飲食品への添加量>
飲食品に対するセルロース複合体の添加量としては、特に制限はないが、例えば、コーヒー、ココア、牛乳等の飲料において、0.01質量%以上が好ましい。セルロース複合体の添加量を0.01質量%以上とすることで、分散、懸濁安定性が増し、乳化安定、離水防止の効果が優れる。より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。セルロース複合体の添加量を5質量%以下とすることで、凝集や分離を引き起こすこともなく、また、飲料の飲みやすさ(のど越し、舌のざらつき)の点からも5質量%以下が好ましい。
【0057】
<水不溶性成分>
本発明のセルロース複合体は、特に、水不溶性成分を含む中性の飲食品に好適である。水不溶性成分とは、水に溶けない成分のことで、本発明においては、10mmの目開きの篩を通過するものをいう。より好適には、5mmの篩いを通過するものであり、さらに好適には2mmの篩いを通過するものである。水不溶性成分は、中性において不安定となるが、本発明のセルロース複合体を添加することで、優れた懸濁安定性が得られる。
水不溶性成分としては、密度が1.0g/mL以上のものが好ましい。密度が高いことで、炭水化物、ミネラル等の栄養素が豊富である。この密度は、イオン交換水中に分散させ、遠心沈降(12000Gx60分、ここでGは重力加速度)処理した後に、全分散液の体積増加と、質量増加の比から求められる(質量増加/体積増加)。密度が高いほど、栄養素を摂取しやすいため好ましく、1.1g/mL以上がより好ましく、1.2g/mL以上がさらに好ましく、1.5g/mL以上が特に好ましい。上限は、咀嚼しやすさの点で、3g/mL以下が好ましい。
水不溶性成分としては、ココア粉、穀物粉、食物・飲料中のタンパクや、果実くず、乳酸菌飲料等に含有される乳酸菌、野菜果汁飲料中のパルプ分等、ミルクカルシウム、炭酸カルシウム、マグネシウム、亜鉛、又はその塩、ベータグルカン、プロテイン(大豆タンパク、ミルクプロテイン、コラーゲン)、ウコン、レイシ等の水より比重が大きい機能性食品素材等、コエンザイムQ10等のユビデカレノン化合物、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、又はそのエステル等のオメガ3化合物、セラミド化合物等の水より比重が軽い機能性食品素材等が挙げられる。
また、本発明で使用する水不溶性成分としては、特に、穀物を配合することが好ましい。
上記した機能性食品素材は、飲料の一日摂取量と、素材の効果効能にもよるが、飲料に対して、0.01質量%以上添加することが、好ましい。より好ましくは、0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
【0058】
<飲料の粘度>
本発明の飲料の粘度は、25℃におけるB型粘度計による粘度が3〜700mPa・sであるのが好ましい。この範囲内であれば、成分の凝集・沈殿を抑制し、飲みやすい中性飲食品が調製できる。かかる観点より、10〜400mPa・sがより好ましく、20〜200mPa・sがさらに好ましい。
【0059】
<飲料の粘弾性>
本発明の飲食品、医薬品、工業製品は、水系媒体にセルロース複合体と水不溶性成分とを含み、その粘弾性において、損失正接tanδ(損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’)が1.5以上である。この損失正接が高いほど、飲料等を飲用した際に、コク等の風味が良好になるため、好ましい。また、水不溶性成分の密度は、好ましくは1.0g/mL以上である。
ここでいう損失正接tanδは、飲料の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置により測定される貯蔵弾性率G’と、損失弾性率G’’から、以下の式で、算出される。
Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型、ジオメトリー:Double Wall Couette型、温度:25.0℃一定、角速度:20rad/秒、ひずみ:1→794%の範囲で掃引、飲料中のセルロース複合体の微細構造を壊さないようスポイトを使用して、ゆっくりと仕込み、5分間静置した後に、Dynamic Strainモードで測定を開始する。
式:損失正接tanδ=損失弾性率G’’/貯蔵弾性率G’。
本発明における損失正接tanδは、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み200%の貯蔵弾性率、損失弾性率の値から得られる。上記飲料の損失正接tanδは、1.6以上が好ましく、1.7以上がより好ましく、さらに好ましくは1.8以上であり、特に好ましくは1.9以上であり、最も好ましくは、2以上である。
なお、本発明において、水系媒体とは、60質量%〜100質量%の水と0質量%〜40重量%の水溶性有機溶媒とからなる媒体を意味する。より好ましくは、70質量%〜100質量%の水と0質量%〜30重量%、さらに好ましくは、80質量%〜100質量%の水と0質量%〜20重量%の水溶性有機溶媒とからなり、特に好ましくは、90質量%〜100質量%の水と0質量%〜10重量%の水溶性有機溶媒とからなる。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ポリエチレングリコール等が挙げられる。食品に使用する場合は、エタノール等の経口摂取可能な、アルコール類が好適に使用でき、医薬品においては、ポリエチレンギリコール等の医薬品の吸収性を改善するものを好適に使用できる。
【0060】
<高濃度ココア飲料>
本発明のセルロース複合体は、カカオ濃度が高いリッチテイストのココア飲料にも好適である。ここでいう高濃度のココア飲料とは、ココア飲料中にカカオ分を1.5〜3.5質量%加えることを特徴とするココア飲料であり、カカオ分としてココアパウダー、カカオパウダー、カカオエキスを単品、又は任意の混合比にて配合したものを用いることができる。特に、高油分(10質量%以上)のココアパウダーを使用し、カカオバター含量が0.15質量%以上とすることで、風味と、ボディーが豊かなリッチテイストのココア飲料が得られる。このような、高濃度ココア飲料では、リング現象、乳脂の分離、沈澱物の発生等の問題が生じやすく、本発明のセルロース複合体を添加することで、これらの課題が解消され、安定な濃厚感のあるココア飲料が得られるものであり、レトルト殺菌或いはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑えることができる。さらに牛乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、練乳からなる群から少なくとも1種類の乳成分を含むココア飲料においても、レトルト殺菌或いはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑えた乳成分入りコーヒー飲料を提供できる。ここで、レトルト殺菌及びUHT殺菌の条件としては、通常の乳成分入りコーヒー飲料において用いられている条件であれば特に限定させるものではないが、一般的に120℃〜145℃の範囲で、15秒〜60分の範囲内で行われる。
【0061】
<高濃度コーヒー飲料>
本発明のセルロース複合体は、コーヒー濃度が高いリッチテイストのコーヒー飲料に好適である。ここでいう高濃度のコーヒー飲料とは、コーヒーが生豆換算で10〜15質量%が好ましい。さらにコーヒー豆の抽出率は15〜35%がよく、最終的なコーヒー飲料中のコーヒー濃度(Brix値)は、1.5〜5.25が好ましい。このBrix値は、屈折率計(株式会社アタゴ社製 N−10E)を用いて測定した値を用いることができる。最終的な、コーヒー飲料では、糖分、蛋白質等が入るため、コーヒー単独のBrix値を測定するには、抽出液段階で測定し、その抽出液の飲料中への添加量で換算されるものである。
また、ここで、使用される乳成分は、牛乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳が特に挙げられる。本発明は、高機能のセルロース複合体を含有することにより、生豆換算で10質量%を越えるような乳成分入りコーヒー飲料の、レトルト殺菌或いはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑えることができるが、さらに牛乳、濃縮乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、練乳からなる群から少なくとも1種類の乳成分を含むコーヒー飲料においても、レトルト殺菌或いはUHT殺菌を行った後でも凝集物の発生を抑えた乳成分入りコーヒー飲料を提供できる。ここで、レトルト殺菌及びUHT殺菌の条件としては、通常の乳成分入りコーヒー飲料において用いられている条件であれば特に限定させるものではないが、一般的に120℃〜145℃の範囲で、15秒〜60分の範囲内で行われる。
【0062】
<高濃度茶飲料>
本発明のセルロース複合体は、茶濃度が高いリッチテイストの茶飲料に好適である。ここでいう高濃度の茶飲料とは、茶の抽出液である茶飲料のカフェイン濃度を測定した際に、飲料100mL当たり、10mg以上のカフェインを含むもののことである。高濃度のカフェインが抽出された茶飲料は、カテキン、タンニン等のポリフェノールも、多く含むため、飲用した際に、酸化防止効果、殺菌効果、体調改善効果が得られるため好ましい。また、見た目にも、緑色、茶色等の茶本来の鮮やかな色を呈するものである。ここでカフェインは、これらの茶抽出物の濃度の指標となる。従って、より好ましいカフェイン濃度は、飲料100mL当たり15mg以上であり、さらに好ましくは20mg以上であり、特に好ましくは30mg以上であり、最も好ましくは40mg以上である。茶抽出物の濃度が高いほど、苦味が強くなり、飲用しにくくなるため、上限としては100mg以下である。
ここでいう、茶とは、植物の葉、茎を乾燥等の加工を経て、得られるものを原料として、これらから、水または熱水で成分が抽出されたものである。チャノキ(茶の木、学名:Camellia sinensis)は、ツバキ科ツバキ属の常緑樹の葉や茎を、用いたものが好ましい。これらの植物原料は、加工方法により、以下に分類される。緑茶(不発酵茶)は酸化発酵を行わないものであり、白茶(弱発酵茶)は、ほんの少し酸化発酵させるものであり、青茶(半発酵茶)は、ある程度酸化発酵を行わせるものであり、烏龍茶は青茶に分類される。また、紅茶(完全発酵茶・全発酵茶)は、酸化発酵を完全に行わせるものであり、黄茶(弱後発酵茶)は、白茶と同じ工程を行った後、軽く酸化発酵させるものであり、黒茶(後発酵茶)は、緑茶にコウジカビによる、通常の意味での発酵を行わせたものであり、プーアル茶は黒茶に分類される。これらの中でも、本発明の茶飲料は、緑茶、青茶、紅茶を用いることが、風味、健康成分の含有量の点で好ましい。
これらの茶から抽出される色素は、飲料を長期保存のため殺菌することにより、少なからず退色してしまうが、本発明のセルロース複合体は、結晶セルロースから放射状にのびたCMC−Naによる熱遮蔽効果により、殺菌時の退色が抑えられる効果を有する。ここで、結晶セルロース複合体の高濃度茶飲料での配合量は、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、0.3質量%以上が最も好ましい。結晶セルロース複合体を配合するほど、退色防止効果と、懸濁安定効果が得られるが、濃度が高くなり、嚥下しにくくなるため、上限としては5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%が特に好ましい。
本飲料には、苦味を和らげるため、牛乳、山羊乳等の動物性乳、豆乳等の植物性乳等の乳成分を配合することが好ましい。乳成分の濃度は、飲料中のタンパク質量により測定することができ、好ましいタンパク質量としては、飲料100mL当たり、0.1g以上である。より好ましくは、飲料100mL当たり、0.2g以上であり、さらに好ましくは、0.3g以上であり、特に好ましくは、0.5g以上であり、最も好ましくは1g以上である。上限としては、茶本来の風味を損なわない範囲で設定され、好ましくは3g以下であり、より好ましくは2g以下である。
【0063】
<食事代替飲料>
食事代替飲料とは、豆類、穀物が水系媒体に配合され、栄養価の高い、朝食等の食事を代替、補完するための飲料のことである。本発明の結晶セルロース複合体は、高濃度の炭水化物、タンパク質等の懸濁安定性、退色防止性に優れるため、本用途に好適である。
本発明の食事代替飲料に含まれる豆類、穀物としては、以下のものが挙げられる。豆類としては、マメ科植物等の種子ないし果実の粉砕物又はペーストを配合することが好ましい。マメ科植物由来のものとしては、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、ライマメ、エンドウ、ベニバナインゲン、ソラマメ、ササゲ、ヒヨコマメ、リョクトウ、レンズマメ、イナゴマメ、ラッカセイ、クラスタマメ、ナタマメ、キマメ等が挙げられ、マメ科以外のものとしては、コーヒー豆(アカネ科)、カカオ豆(アオギリ科、又はアオイ科)、メキシコトビマメ(トウダイグサ科)等の種子ないし果実を使用することができる。
ここでいう穀物としては、イネ科植物、麦類、擬穀等の植物の種子又は果実の粉砕物又はペーストのことである。イネ科の穀物としては、米類として、サティバ種(アジアイネ)、ジャポニカ種(日本型)、ジャバニカ種(ジャワ型)、インディカ種(インド型)、グラベリマ種(アフリカイネ) 、ネリカ(アジアイネとアフリカイネの種間雑種)、トウモロコシ(トウキビ)、麦類としては、オオムギ(大麦)、モチムギ(オオムギのモチ種)、ハダカムギ(オオムギの変種)、コムギ(小麦)、ライムギ(ライ麦)、カラスムギ、エンバク(オーツ麦)、ハトムギ(種子ではなく果実である)、キビ、アワ、ヒエ、モロコシ(タカキビ、コウリャン、ソルガム) 、シコクビエ、トウジンビエ、テフコドラ(コードンビエ)、マコモ(野生植物と栽培植物の中間)等が挙げられる。さらに、擬穀としては、ソバ、ダッタンソバ、アマランス(アマランサス、センニンコク)、キノア等が挙げられる。
【0064】
本発明のセルロース複合体は、懸濁安定性に優れるため、これらの栄養素が豊富な、豆類、穀物を高濃度で配合した食事代替飲料を製造することが可能である。
この食事代替飲料に適した豆類としては、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、リョクトウ、ラッカセイが好ましく、より好ましくは、ダイズ、アズキ、ラッカセイである。
また、食事代替飲料に適した穀物としては、サティバ種(アジアイネ)、ジャポニカ種(日本型)、ジャバニカ種(ジャワ型)、インディカ種(インド型)、トウモロコシ(トウキビ)が好ましく、麦類としては、オオムギ(大麦)、コムギ(小麦)、ライムギ(ライ麦)、エンバク(オーツ麦)等が好ましく、 擬穀としては、ソバが好ましい。より好ましくは、サティバ種(アジアイネ)、ジャバニカ種(ジャワ型)、インディカ種(インド型)、トウモロコシ(トウキビ)、オオムギ(大麦)、ライムギ(ライ麦)、エンバク(オーツ麦)である。これらは、炭水化物に加え、食物繊維、ミネラルが豊富なため、食事代替として好ましい。
【0065】
上記した豆類、穀物は、一日摂取量と、素材の栄養効能にもよるが、飲料に対して、1質量%以上添加することが、好ましい。より好ましくは、2質量%以上であり、さらに好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上である。これらの加工方法、できあがった飲料の粘度にもよるが、これらの配合量の上限としては、20質量%以下が好ましく、より飲みやすさを考慮すると、10質量%以下が好ましい。
これらの豆類、穀物の色素は、飲料を長期保存のため殺菌することにより、少なからず退色してしまうが、本発明のセルロース複合体は、結晶セルロースから放射状にのびたCMC−Naによる熱遮蔽効果により、殺菌時の退色が抑えられる効果を有する。ここで、食事代替飲料での結晶セルロース複合体の配合量は、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましく、0.2質量%以上が特に好ましく、0.3質量%以上が最も好ましい。結晶セルロース複合体を配合するほど、退色防止効果と、懸濁安定効果が得られるが、濃度が高くなり、嚥下しにくくなるため、上限としては5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%が特に好ましい。
【0066】
本飲料には、苦味を和らげるため、牛乳、山羊乳等の動物性乳、豆乳等の植物性乳等の乳成分を配合することが好ましい。乳成分の濃度は、飲料中のタンパク質量により測定することができ、好ましいタンパク質量としては、飲料100mL当たり、0.1g以上である。より好ましくは、飲料100mL当たり、0.2g以上であり、さらに好ましくは、0.3g以上であり、特に好ましくは、0.5g以上であり、最も好ましくは1g以上である。上限としては、素材の風味を損なわない範囲で設定され、好ましくは3g以下であり、より好ましくは2g以下である。
【0067】
<食品以外の用途>
本発明のセルロース複合体は、コロイド分散性が著しく向上したものであり、食品以外にも、シロップ剤、液剤、軟膏等の医薬品、化粧水、乳液、洗浄剤等の化粧品、食品用・工業用洗浄剤及び処理剤原料、家庭用(衣料、台所、住居、食器等)洗剤原料、塗料、顔料、セラミックス、水系ラテックス、乳化(重合)用、農薬用、繊維加工用(精錬剤、染色助剤、柔軟剤、撥水剤)、防汚加工剤、コンクリート用混和剤、印刷インキ用、潤滑油用、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、分散剤、脱墨剤等が用途として挙げることができる。その中でも、特に、水不溶性成分を含む水系懸濁状態の組成物において、凝集や分離、離水、沈降を発生させることなく、安定な分散状態を保持することが可能である。また、安定剤としての性能が著しく向上するとともに、その滑らかな舌ざわりとボディ感によりザラツキの問題が解消されるため、上記に記載した以外の幅広い食品用途で使用することも可能である。
【実施例】
【0068】
本発明を下記の実施例により説明する。ただし、これらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0069】
<セルロースの平均重合度>
セルロースの平均重合度は、「第14改正日本薬局方」(廣川書店発行)の結晶セルロース確認試験(3)に規定される銅エチレンジアミン溶液による還元比粘度法により測定された。
【0070】
<カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)の粘度>
(1)CMC−Naの粉末を、2質量%として、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散し、水溶液を調製された。
(2)得られたに水溶液ついて、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして60秒静置後に、30秒間回転させて測定された。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。
【0071】
<セルロース複合体の水分散体の粘度>
セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%濃度の純水分散体を調製した。この水分散体ついて、分散3時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして30秒静置後に、30秒間回転させて測定された。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用したローターは以下の通りである。すなわち、1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s以上:No3)で測定した。
【0072】
<CMC−Naの分子量分布>
(1)まず、CMC−Naを、0.05mol/L水酸化ナトリウム水溶液に、0.5質量%で溶解した。
(2)次に、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製 商品名LC−20A型、カラム:東ソー株式会社製 商品名TSK−GEL G5000PW型(7.8mmx30cm)一本と、商品名TSK−GEL G3000PWXL型(7.8mmx30cm)二本を直列、移動層として0.05mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用い、移動層の流量を1mL/分、カラム温度30℃、UV検出器で波長210nm)に、上記のCMC−Na溶液を5μL打ち込んだ。
(3)得られたクロマトグラムから、ピーク数を目視でカウントした。
【0073】
図3は、実施例1、3〜5の製造に用いたCMC−NaのGPCクロマトグラムである。保持時間16〜24分に、低分量のCMC−Na(粘度25mPa・s)のピークが検出され、6〜16分に高分子量(粘度620mPa・s)のピークが二山(バイモーダル)で検出された。なお、11分に検出されたピークは、CMC−Na以外の未確認のピークである。
図4は、実施例2の製造に用いたCMC−NaのGPCクロマトグラムである。保持時間14〜24分に、低分量のCMC−Na(粘度25mPa・s)のピークが検出され、4〜13分に高分子量(粘度7000mPa・s)のピークが二山(バイモーダル)で検出された。なお、11分に検出されたピークは、CMC−Na以外の未確認物質のピークである。
図5は、実施例8の製造に用いたCMC−NaのGPCクロマトグラムである。保持時間19〜23分に、低分量のCMC−Na(粘度50mPa・s)のピークが検出され、14〜19分に高分子量(粘度500mPa・s)のピークが二山(バイモーダル)で検出された。
【0074】
<CMC−Naの置換度>
(1)CMC−Na(無水物)0.5gを精密にはかり、ろ紙に包んで磁性ルツボ中で灰化する。これを冷却した後、これを500mLビーカーに移し、水約250mLと、0.05M硫酸35mLを加えて30分間煮沸した。これを冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加えて、過剰の酸を0.1M水酸化カリウムで逆滴定して、次の式で算出した。
A=((af−bf1)/試料無水物(g))−アルカリ度(又は+酸度)
置換度=(162xA)/(10000−80A)
ここで、
A:試料1g中のアルカリに消費された0.05Mの硫酸の量(mL)
a:0.05M硫酸の使用量(mL)
f:0.05M硫酸の力価
b:0.1M水酸化カリウムの滴定量(mL)
f1:0.1M水酸化カリウムの力価
162:グルコースの分子量
80:CH
2COONa−Hの分子量
アルカリ度(又は酸度)の測定法:試料(無水物)1gを300mLフラスコに精密に測りとり、水約200mLを加えて溶かす。これに0.05M硫酸5mLを加え、10分間煮沸した後、冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加え、0.1M水酸化カリウムで滴定した(SmL)。同時に空試験を行い(BmL)、次の式で算出した。
アルカリ度=((B−S)xf)/試料無水物(g)
ここで、
f:0.1M水酸化カリウムの力価、(B−S)xfの値が(−)の時には、酸度とした。
【0075】
<セルロース複合体の貯蔵弾性率の測定法>
(1)セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%濃度の純水分散体を調製した。得られた水分散体を3日間室温で静置した。
(2)この水分散体の応力のひずみ依存性を、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型)、ジオメトリー:Double Wall Couette型、ひずみを1→794%の範囲で掃引)により測定された。本発明において、貯蔵弾性率(G’)は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み20%の値を用いた。
【0076】
<セルロース複合体のコロイド状セルロース複合体含有量>
(1)セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散した。
(2)この分散液を、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m
2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m
2/sで45分間遠心処理する。)した。
(3)遠心後の上澄みは、ガラス製秤量ビンに導入し、60℃で15時間、その後、105℃で2時間乾燥し、デシケータ内で恒量した後、重量を測定した。また、別途、未遠心の水分散体も同様に乾燥し、重量を測定した。それらの結果から、上澄みに残存するセルロース固形分の質量百分率を以下の式から求めた。
コロイド状セルロース複合体含有量の計算式:(上澄み50gの固形分)/(未遠心50g中の固形分)×100
【0077】
<コロイド状セルロース複合体の動的光散乱法によるメジアン径>
(1)セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散され、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m
2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m
2/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取された。
(2)この上澄み液を、50mL容量のPP製サンプル管に入れて、超音波洗浄器(アズワン製 超音波洗浄器 商品名AUC−1L型)で10分間、超音波処理された。
(3)その後、ゼータ電位・粒径測定システム(大塚電子(株)製 商品名「ELSZ−2」(バッチセル))により粒度分布(粒径値に対する散乱強度の度数分布)を測定された。ここでいうメジアン径とは、この度数分布における散乱強度の積算50%に対応する粒径値(μm)のことである。
【0078】
<コロイド状セルロース複合体のレーザー回折/散乱法によるメジアン径(セルロース複合体のセルロース芯材の粒子径)>
(1)セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させ、遠心分離(久保田商事(株)製、商品名「6800型遠心分離器」ロータータイプRA−400型、処理条件:遠心力39200m
2/sで10分間遠心した上澄みを採取し、さらに、この上澄みについて、116000m
2/sで45分間遠心処理する。)し、遠心後の上澄みを採取された。
(2)この上澄み液を、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)に測定され、体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)が求められた。
【0079】
<粗大粒子のレーザー回折/散乱法によるメジアン径>
(1)セルロース複合体を、0.5質量%の濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散された。
(2)分散液を、そのまま、レーザー回折/散乱法粒度分布計(堀場製作所(株)製、商品名「LA−910」、超音波処理1分、屈折率1.20)により測定され、体積頻度粒度分布における積算50%粒子径(体積平均粒子径)として求められた。
<セルロースの粒子形状(L/D)>
セルロース複合体を、1質量%濃度で純水懸濁液とし、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間)で分散させた水分散体を、0.1質量%に純水で希釈し、スポイトを使用し、マイカ上に1滴キャストした。エアダスターにて、余剰の水分を吹き飛ばし、風乾し、サンプルを調製した。原子間力顕微鏡(装置Digital Instruments社製 Nano ScopeIV MM、スキャナーEV、測定モードTapping、プローブNCH型シリコン単結晶プローブ)で計測された画像を基に、長径(L)が2μm以下の粒子の形状から、長径(L)と短径(D)のを求め、その比(L/D)がセルロース粒子の形状であり、100〜150個の粒子の平均値として算出した。
【0080】
<セルロース複合体の構造:セルロースからの多糖類の広がりの観察>
セルロース複合体を、高剪断ホモジナイザー(日本精機(株)製、商品名「エクセルオートホモジナイザーED−7」処理条件:回転数15,000rpm×5分間、全量300g)を用いて純水中に分散させ、1.0質量%の純水分散体を調製する。得られた水分散体を3日間以上、室温で静置する。その後、純水で20倍希釈され、サンプル液が調製される。水分散体の微細構造を壊さないよう、スポイトを使用して、5μlをゆっくりと吸出し、1cmx1cmの壁開されたマイカ上に、ゆっくり滴下し、エアダスターで余分な水分を吹き飛ばし、マイカ上に定着したサンプルを、AFM(島津製作所製 走査型プローブ顕微鏡SPM−9700、位相モード、オリンパス社製プローブOMCL−AC240TSを使用)にて、観察した。この観察像において、セルロース粒子は高さ2nm以上の棒状粒子として観察され、そのセルロース粒子から周囲に放射状に伸びる高さ2nm未満の多糖類が観察された(
図1:実施例4のセルロース複合体Dに関するAFM像)。
【0081】
(実施例1)
市販DPパルプを裁断後、2.5mol/L塩酸中で105℃、15分間加水分解した後、水洗・濾過を行い、固形分が50質量%のウェットケーキ状のセルロースを作製した(平均重合度は220であった)。
次に、ウェットケーキ状のセルロースと、A成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度620mPa・s、置換度0.7〜0.8)、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度25mPa・s、置換度0.7〜0.8)を用意し、プラネタリーミキサー((株)品川工業所製、5DM−03−R、撹拌羽根はフック型)に、セルロース(以下MCC)/CMC−Na(A成分+B成分)の質量比が90/10(CMC−Naの構成:A成分/B成分=50/50)となるように投入し、固形分45質量%となるように加水した。
その後、126rpmで混練し、セルロース複合体Aを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、390Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。
得られたセルロース複合体Aの貯蔵弾性率(G’)は、5.5Paであった。また、セルロース複合体Aの粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、78質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.5μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.13μmであり、粗大粒子のメジアン径は、6.5μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、383mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0082】
(実施例2)
実施例1と同様の操作で、裁断した市販DPパルプを用いてセルロースの加水分解を行い、次に、ウェットケーキ状のセルロース(平均重合度は220)と、A成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度7000mPa・s、置換度0.7〜0.8)、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度25mPa・s、置換度0.7〜0.8)を用意し、MCC/CMC−Na(A成分+B成分)の質量比が52/48(CMC−Naの構成:A成分/B成分=10/90)となるように投入し、固形分45質量%となるように加水し、実施例1と同様に混練し、セルロース複合体Bを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、220Wh/kgであった。混練温度は、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜40℃であった。
得られたセルロース複合体Bの貯蔵弾性率(G’)は1.4Pa、粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、69質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.2μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.13μmであり、粗大粒子のメジアン径は、9.3μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、252mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0083】
(実施例3)
実施例1と同様の操作で、裁断した市販DPパルプを用いてセルロースの加水分解を行い、次に、ウェットケーキ状のセルロース(平均重合度は220)と、A成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度620mPa・s、置換度0.7〜0.8)、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度25mPa・s、置換度0.7〜0.8)を用意し、MCC/CMC−Na(A成分+B成分)の質量比が80/20(CMC−Naの構成:A成分/B成分=40/60)となるように投入し、固形分40質量%となるように加水し、実施例1と同様に混練し、セルロース複合体Cを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、190Wh/kgであった。混練温度は、ジャケット冷却の調整で行われ、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜60℃であった。
得られたセルロース複合体Cの貯蔵弾性率(G’)は2.3Pa、粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、67質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.1μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.13μmであり、粗大粒子のメジアン径は、8.2μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、182mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0084】
(実施例4)
市販KPパルプを使用し、実施例1と同様の操作で、セルロースの加水分解を行い、次に、ウェットケーキ状のセルロース(平均重合度は220)と、A成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度620mPa・s、置換度0.7〜0.8)、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度25mPa・s、置換度0.7〜0.8)を用意し、MCC/CMC−Na(A成分+B成分)の質量比が90/10(CMC−Naの構成:A成分/B成分=40/60)となるように投入し、固形分50質量%となるように加水し、実施例1と同様に混練し、セルロース複合体Dを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、100Wh/kgであった。混練温度は、ジャケット冷却の調整で行われ、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜65℃であった。
得られたセルロース複合体Dの貯蔵弾性率(G’)は2.5Pa、粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、72質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.2μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.13μmであり、粗大粒子のメジアン径は、9.1μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、220mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0085】
(実施例5)
実施例1と同様の操作で、裁断した市販DPパルプを用いてセルロースの加水分解を行い、次に、ウェットケーキ状のセルロース(平均重合度は220)と、A成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度620mPa・s、置換度0.7〜0.8)、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度25mPa・s、置換度0.7〜0.8)を用意し、MCC、CMC−Na以外に、水溶性ガムとしてキサンタンガムを、親水性物質としてデキストリンを配合し、MCC/CMC−Na(A成分+B成分)/キサンタンガム/デキストリンの質量比が70/5(CMC−Naの構成:A成分/B成分=50/50)/5/20となるように投入し、固形分45質量%となるように加水し、実施例1と同様に混練し、セルロース複合体Eを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、80Wh/kgであった。混練温度は、ジャケット冷却の調整で行われ、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜65℃であった。
得られたセルロース複合体Eの貯蔵弾性率(G’)は1.2Pa、粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、75質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は0.95μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.16μmであり、粗大粒子のメジアン径は、8.5μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、140mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0086】
(実施例6)
実施例1と同様の操作で、裁断した市販DPパルプを用いてセルロースの加水分解を行い、次に、ウェットケーキ状のセルロース(平均重合度220)と、A成分は加えずに、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度25mPa・s、置換度0.7〜0.8)を用意し、MCC/CMC−Na(B成分)の質量比が90/10(CMC−Naの構成:A成分/B成分=0/100)となるように投入し、固形分45質量%となるように加水し、実施例1と同様に混練し、セルロース複合体Fを得た。
混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、200Wh/kgであった。混練温度は、ジャケット冷却の調整で行われ、熱伝対を用いて、混練エネルギーが30Wh/kgまでは、50℃以下で混練され、その後、ジャケット冷却により、混練物が冷却され、混練を通して15℃以下であった。
得られたセルロース複合体Fの貯蔵弾性率(G’)は1.0Pa、粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、78質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は0.85μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.13μmであり、粗大粒子のメジアン径は、7.8μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、175mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0087】
(比較例1)
実施例1と同様の操作で、裁断した市販DPパルプを用いてセルロースの加水分解を行い、次に、ウェットケーキ状のセルロース(平均重合度は220)と、A成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度620mPa・s、置換度0.7〜0.8)、B成分を配合せずに、MCC/CMC−Na(A成分+B成分)の質量比が90/10(CMC−Naの構成:A成分/B成分=100/0)となるように投入し、固形分37質量%となるように加水し、実施例1と同様に混練し、セルロース複合体Gを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、60Wh/kgであった。混練温度は、ジャケット冷却の調整で行われ、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜85℃であった。
得られたセルロース複合体Gの貯蔵弾性率(G’)は0.45Pa、粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、70質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は0.81μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.13μmであり、粗大粒子のメジアン径は、9.5μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、98mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0088】
(比較例2)
市販DPパルプを裁断後、10質量%塩酸中で105℃、20分間加水分解して得られた酸不溶性残渣をろ過、洗浄した後、固形分10質量%のセルロース水分散体を調製した(平均重合度は200であった)。この加水分解セルロースの体積平均粒子径は17μmであった。このセルロース水分散体を媒体攪拌湿式粉砕装置(コトブキ技研工業株式会社製アペックスミル、AM−1型)で、媒体として直径1mmφのジルコニアビーズを用いて、攪拌翼回転数1800rpm、セルロース水分散体の供給量0.4L/minの条件にて2回通過で粉砕処理を行い、微細セルロースのペースト状物を得た。
ペースト状微細セルロース/CMC−Na(置換度0.90、粘度7mPa・s)との質量比が80/20、となるよう秤量し、総固形分濃度が11質量%となるよう純水で調製し、TKホモミキサー(特殊機化工業(株)製、MARKII)を用いて8,000rpmで20分間分散してペースト状水分散体を調製した(アペックスミルと、TKホモジナイザーの消費電力と処理量から混練エネルギーを算出したところ、30Wh/kgであった。混練温度は、実施例1と同様に測定され、混練を通して20〜60℃、到達温度は50〜60℃であった)。
この水分散体を、ドラムドライヤー(楠木機械製作所(株)製、KDD−1型)で、水蒸気圧力2Kg/cm2、回転数0.6rpmで乾燥し、スクレーパーで掻き取り出し、フラッシュミル(不二パウダル(株)製)で粗砕し、薄片状、鱗片状のセルロース複合体Hを得た。混練エネルギーは0.03kWh/kgであった。
得られたセルロース複合体Hの貯蔵弾性率(G’)は0.38Pa、粒子L/Dは1.3、コロイド状セルロース複合体含有量は、91質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は0.65μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.11μmであり、粗大粒子のメジアン径は、3.4μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、80mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0089】
(比較例3)
実施例1と同様の操作で、裁断した市販DPパルプを用いてセルロースの加水分解を行い、次に、ウェットケーキ状のセルロース(平均重合度は220)と、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度7mPa・s、置換度0.7〜0.8)、A成分を配合せずに、MCC/CMC−Na(B成分)の質量比が90/10(CMC−Naの構成:A成分/B成分=0/100)となるように投入し、固形分40質量%となるように加水し、実施例1と同様に混練し、セルロース複合体Iを得た。混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、60Wh/kgであった。混練温度は、ジャケット冷却の調整で行われ、熱伝対を用いて、混練物の温度が直接測定され、混練を通して20〜85℃であった。
得られたセルロース複合体Iの貯蔵弾性率(G’)は0.41Pa、粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、70質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は0.69μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.13μmであり、粗大粒子のメジアン径は、9.3μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、75mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0090】
(実施例7)
実施例1と同様の操作で、裁断した市販DPパルプを用いてセルロースの加水分解を行い、次に、ウェットケーキ状のセルロース(平均重合度220)と、A成分は加えずに、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度50mPa・s、置換度1.3)を用意し、MCC/CMC−Na(B成分)の質量比が90/10(CMC−Naの構成:A成分/B成分=0/100)となるように投入し、固形分46質量%となるように加水し、実施例1と同様に混練し、セルロース複合体Jを得た。
混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、200Wh/kgであった。混練温度は、ジャケット冷却の調整で行われ、熱伝対を用いて、混練エネルギーが30Wh/kgまでは、50℃以下で混練され、その後、ジャケット冷却により、混練物が冷却され、混練を通して15℃以下であった。
得られたセルロース複合体Jの貯蔵弾性率(G’)は2.6Pa、粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、78質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は1.3μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.13μmであり、粗大粒子のメジアン径は、7.5μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、180mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0091】
(実施例8)
実施例1と同様の操作で、裁断した市販DPパルプを用いてセルロースの加水分解を行い、次に、ウェットケーキ状のセルロース(平均重合度220)と、A成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度500mPa・s、置換度1.5)、B成分として市販CMC−Na(2%溶解液の粘度50mPa・s、置換度1.3)を用意し、MCC/CMC−Na(B成分)の質量比が92/8(CMC−Naの構成:A成分/B成分=25/75)となるように投入し、固形分48質量%となるように加水し、実施例1と同様に混練し、セルロース複合体Kを得た。
混練エネルギーは、プラネタリーミキサーの混練時間により制御され、実測値は、250Wh/kgであった。混練温度は、ジャケット冷却の調整で行われ、熱伝対を用いて、混練エネルギーが30Wh/kgまでは、50℃以下で混練され、その後、ジャケット冷却により、混練物が冷却され、混練を通して40℃以下であった。
得られたセルロース複合体Kの貯蔵弾性率(G’)は4Pa、粒子L/Dは1.6、コロイド状セルロース複合体含有量は、77質量%であり、コロイド状セルロース複合体の動的光散乱メジアン径は2.2μmであり、レーザー回折/散乱法メジアン径は、0.13μmであり、粗大粒子のメジアン径は、7.8μmであった。また、セルロース複合体の水分散体の粘度は、330mPa・sであった。
結果を表−1に示す。
【0092】
(実施例、比較例:ココア飲料)
上記の実施例、比較例により得られたセルロース複合体A〜Kを使用し、以下の操作によりココア飲料を作製し、評価を行った。ココア粉末30g(油分を10質量%含む、砂糖50g、全脂粉乳8g、食塩0.5g乳化剤(モノグリセライド製剤)1.0gの粉体原料を予め混合したものとセルロース複合体4.0gを加え、さらに80℃の温めたイオン交換水を加え1000gにした。その後、プロペラで攪拌(500rpm、10分間)し、ピストン型ホモジナイザーにて均質化処理(10MPa)行い、200mL容のガラス製耐熱ビンに充填し高濃度ミルクココアを得た。これを加熱殺菌処理(121℃、30分)し、水道水で1時間冷却した後、容器を上下に10回軽く振盪した後、5℃の雰囲気にて1ヶ月間静置保存し、目視にて外観を観察した。評価方法は以下の通り、得られた結果は、表1に示した。
【0093】
<懸濁安定性:飲食品の外観観察>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)において、以下の4項目に関し、基準を定め、目視により判定した。
(分離)耐熱ビン入り飲料上部の色が薄い層の体積で評価した。
◎(優):分離なし、○(良):分離10%未満、△(可):分離30%未満、×(不可):分離30%以上
(沈降)耐熱ビン入り飲料底面の堆積物の量で評価した。
◎(優):沈降なし、○(良):部分的に薄く沈降、△(可):一面に薄く沈降、×(不可):全体的に濃く沈降
(凝集)耐熱ビン入り飲料全体において、不均一な部分の量で評価した。
◎(優):均一、○(良):僅かに一部不均一、△(可):一部不均一、×(不可):全体的に不均一
(オイルリング)耐熱ビン入り飲料の上部において、ビンの淵に沿って確認されるリング状オイル固化物の量で評価した。
◎(優):なし、○(良):僅かに一部発生、△(可):不完全なリング状に発生、×(不可):完全なリング状に発生
【0094】
<飲料の粘度 ※飲料以外の食品では、この評価基準は該当しない。>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)を、製造1時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして30秒静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するローターは以下の通りであった。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)で測定した。測定結果は、以下の基準で分類した。
(粘度)◎(優):1〜10、○(良):10〜20、△(可):20〜50、×(不可):50〜[mPa・s]
【0095】
<食感>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):のど越しが軽く、適度なボディがある。
○(良):のど越しに、やや糊状感がある。
△(可):のど越しが重く糊状感がある。
×(不可):のど越しがよいが、水くさく感じる。
【0096】
<味:コク>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):良好なコクがある。
○(良):コクがある。
△(可):僅かにコクがある。
×(不可):コクがない。
【0097】
<飲料の粘弾性:tanδ>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)を、製造1日後に、常温(25℃)に戻し、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型)、ジオメトリー:Double Wall Couette型、ひずみを1→794%の範囲で掃引)により測定した。本発明において、損失正接tanδ(損失弾性率G‘’/貯蔵弾性率G‘)は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み200%の貯蔵弾性率、損失弾性率の値から得られた。
【0098】
(実施例、比較例:高濃度コーヒー飲料)
上記の実施例、比較例により得られたセルロース複合体A〜Kを使用し、以下の操作によりコーヒー飲料を作製し、評価を行った。コーヒー粉末(キーコーヒー(株)製 商品名「プレミアムブレンド」)を250gを、ネル製のろ布に、計りとり、沸騰させた熱水2000gをまわしかけて、ろ布を通過したコーヒー抽出液を作成した。この抽出液を、糖度計(アタゴ製 商品名「PAL−1」)を用いて、Brixを測定した結果、Brixは、3.3であった。
次に、このコーヒー抽出液64.5質量部に対し、牛乳を13.0質量部、グラニュー糖を5.0質量部、乳化剤(三菱化学フーズ製 商品名「ショ糖脂肪酸エステルP−1670」)を0.03質量部、炭酸水素ナトリウム(和光純薬製 特級グレード)を0.45質量部、セルロース複合体A〜Kを、それぞれ0.05質量部を加え、それに純水を加え合計で100質量部とした後、ステンレス製の2L溶の容器に入れて、80℃で、プロペラで攪拌(300rpm、10分間)した。その後、この分散液を、ピストン型ホモジナイザー(APV製 商品名「マントンゴーリンホモジナイザー」)にて、均質化処理(20MPa)行った。これをUHT加熱殺菌処理(140℃、60秒)し、200mL容のガラス製耐熱ビンに充填し、密栓の上、水道水で1時間冷却した後、容器を上下に10回軽く振盪した後、60℃の雰囲気にて28日間静置保存し、目視にて外観を観察した。評価方法は以下の通り、得られた結果は、表1に示した。
【0099】
<懸濁安定性:飲食品の外観観察>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)において、以下の4項目に関し、基準を定め、目視により判定した。
(分離)耐熱ビン入り飲料上部の色が薄い層の体積で評価した。
◎(優):分離なし、○(良):分離10%未満、△(可):分離30%未満、×(不可):分離30%以上
(沈降)耐熱ビン入り飲料底面の堆積物の量で評価した。
◎(優):沈降なし、○(良):部分的に薄く沈降、△(可):一面に薄く沈降、×(不可):全体的に濃く沈降
(凝集)耐熱ビン入り飲料全体において、不均一な部分の量で評価した。
◎(優):均一、○(良):僅かに一部不均一、△(可):一部不均一、×(不可):全体的に不均一(オイルリング)耐熱ビン入り飲料の上部において、ビンの淵に沿って確認されるリング状オイル固化物の量で評価した。
◎(優):なし、○(良):僅かに一部発生、△(可):不完全なリング状に発生、×(不可):完全なリング状に発生
【0100】
<飲料の粘度 ※飲料以外の食品では、この評価基準は該当しない。>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)を、製造1時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして30秒静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するローターは以下の通りであった。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)で測定した。測定結果は、以下の基準で分類した。
(粘度)◎(優):1〜10、○(良):10〜20、△(可):20〜50、×(不可):50〜[mPa・s]
【0101】
<食感>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):のど越しが軽く、適度なボディがある。
○(良):のど越しに、やや糊状感がある。
△(可):のど越しが重く糊状感がある。
×(不可):のど越しがよいが、水くさく感じる。
【0102】
<味:コク>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):良好なコクがある。
○(良):コクがある。
△(可):僅かにコクがある。
×(不可):コクがない。
【0103】
<飲料の粘弾性:tanδ>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)を、製造1日後に、常温(25℃)に戻し、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型)、ジオメトリー:Double Wall Couette型、ひずみを1→794%の範囲で掃引)により測定した。本発明において、損失正接tanδ(損失弾性率G‘’/貯蔵弾性率G‘)は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み200%の貯蔵弾性率、損失弾性率の値から得られた。
【0104】
(実施例、比較例:高濃度ミネラル強化乳飲料)
上記の実施例、比較例により得られたセルロース複合体A〜Kを使用し、以下の操作により高濃度ミネラル強化乳飲料を作製し、評価を行った。牛乳を20質量部、生クリームを3.2質量部、脱脂粉乳5.8質量部を加え攪拌した後、ここに、ドロマイト(CaMg(CO
3)
2、密度2.8〜2.9g/cm
3)を0.33質量部、ピロリン酸第二鉄0.0067質量部と、グルコン酸亜鉛0.0067質量部、セルロース複合体0.20質量部を加え、更に水を加え全量を100質量部(2L)とした後に、高剪断ホモジナイザー(プライミクス製 商品名「TKホモジナイザーMARKII」)により6000rpmで10分間攪拌した。攪拌後に、クエン酸水溶液を少量加え、pHを6.5に調整した。その後、80℃の温浴中に移し、プロペラ式攪拌機で300rpm、10分間攪拌し、ピストン型ホモジナイザー(APV製 商品名「マントンゴーリンホモジナイザー」)にて、均質化処理(20MPa)行った。これをUHT加熱殺菌処理(130℃、3秒)し、200mL容のガラス製耐熱ビンに充填し、密栓の上、水道水で1時間冷却した後、容器を上下に10回軽く振盪した後、5℃の雰囲気にて7日間静置保存し、目視にて外観を観察した。評価方法は以下の通り、得られた結果は、表1に示した。
【0105】
<懸濁安定性:飲食品の外観観察>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)において、以下の4項目に関し、基準を定め、目視により判定した。
(沈降)耐熱ビン入り飲料底面の堆積物の量で評価した。
◎(優):沈降なし、○(良):部分的に薄く沈降、△(可):一面に薄く沈降、×(不可):全体的に濃く沈降
(再分散回数)耐熱ビン入り飲料を、ゆっくりと上下に反転し、底部の沈降物がなくなった回数を再分散回数とした。(例:一回の上反転+下反転で解消した場合は再分散回数一回とした。)
【0106】
<飲料の粘度 ※飲料以外の食品では、この評価基準は該当しない。>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)を、製造1時間後(25℃保存)に、B形粘度計(ローター回転数60rpm)にセットして30秒静置後に、30秒間回転させて測定した。但し、ローターは、粘度によって適宜変更できる。使用するローターは以下の通りであった。1〜20mPa・s:BL型、21〜100mPa・s:No1、101〜300mPa・s:No2、301mPa・s:No3)で測定した。測定結果は、以下の基準で分類した。
(粘度)◎(優):1〜10、○(良):10〜20、△(可):20〜50、×(不可):50〜[mPa・s]
【0107】
<食感>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):のど越しが軽く、適度なボディがある。
○(良):のど越しに、やや糊状感がある。
△(可):のど越しが重く糊状感がある。
×(不可):のど越しがよいが、水くさく感じる。
【0108】
<飲料の粘弾性:tanδ>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)を、製造1日後に、常温(25℃)に戻し、粘弾性測定装置(Rheometric Scientific,Inc.製、ARES100FRTN1型)、ジオメトリー:Double Wall Couette型、ひずみを1→794%の範囲で掃引)により測定した。本発明において、損失正接tanδ(損失弾性率G‘’/貯蔵弾性率G‘)は、上述の測定で得られた歪み−応力曲線上の、歪み200%の貯蔵弾性率、損失弾性率の値から得られた。
【0109】
(実施例、比較例:黒ゴマ配合乳飲料)
上記の実施例、比較例により得られたセルロース複合体A〜Kを使用し、以下の操作により黒ゴマ配合乳飲料を作製し、評価を行った。オート麦粉末30g(密度1.0〜1.5g/cm
3)、練りゴマペースト30g、グラニュー糖70g、スキムミルク(雪印製)10g、ピーナッツバター(明治屋製)10g、モルトエキス5g、モノステアリン酸グリセロール(和光純薬製)1.5g、水842gに、セルロース複合体A〜Kを1.5g配合し、以下の手順で飲料を試作した。まず、上記の水を除く、粉末成分を粉混合(PE袋中、手で三分間振盪)し、次いで、80℃の水中に、上記粉末を添加したものを、高剪断ホモジナイザー(プライミクス(株)製、商品名「TKホモミキサー MARKII2.5型」処理条件:回転数7,000rpm×5分間、全量1000g)を用いて分散させた。次いで、コロイドミル((株)エスエムテー製、商品名「MC−1」)を、1回通し、再度70℃に加熱した。その後、ピストン型ホモジナイザー(APV製、マントンガウリンホモジナイザー)にて均質化処理(20MPa)行い、UHT殺菌処理(140℃、30秒)し、250mL容のガラス製耐熱ビンに密封し、5℃で1日保存後に以下の評価を実施し、結果は、表―1に示した。
【0110】
<懸濁安定性:飲食品の外観観察>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)において、以下の4項目に関し、基準を定め、目視により判定した。
(分離)耐熱ビン入り飲料上部の色が薄い層の体積で評価した。
◎(優):分離なし、○(良):分離10%未満、△(可):分離30%未満、×(不可):分離30%以上
(沈降)耐熱ビンをゆっくり上下反転し、底面の堆積物の付着量で評価した。
◎(優):付着なし、○(良):部分的に薄く付着、△(可):一面に薄く付着、×(不可):全体的に濃く付着
(凝集)耐熱ビン入り飲料全体において、不均一な部分の量で評価した。
◎(優):均一、○(良):僅かに一部不均一、△(可):一部不均一、×(不可):全体的に不均一
【0111】
<食感>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):のど越しが軽く、適度なボディがある。
○(良):のど越しに、やや糊状感がある。
△(可):のど越しが重く糊状感がある。
×(不可):のど越しがよいが、水くさく感じる。
【0112】
(実施例、比較例:小豆配合乳飲料)
上記の実施例、比較例により得られたセルロース複合体A〜Kを使用し、以下の操作により小豆配合乳飲料を作製し、評価を行った。乾燥小豆75gに、水を1287g加え、4時間常温で放置した後、1.5時間沸騰させた。70℃まで冷却した後、上述と同様にコロイドミルで1パス処理した。処理された分散液を、40メッシュのSUS製篩を通した。この操作を二回繰り返した後、粉末乳(ネスレ製ブライトC−40)15g、グラニュー糖120g、モノステアリン酸グリセロール(和光純薬)1.5g、セルロース複合体1.5gを予め粉混合したものを添加し、上述のTKホモジナイザーで、7000rpmで5分間処理し、上述のピストン型ホモジナイザー(APV製、マントンガウリンホモジナイザー)にて均質化処理(20MPa)行い、UHT殺菌処理(140℃、30秒)し、250mL容のガラス製耐熱ビンに密封し、5℃で1日保存後に以下の評価を実施し、結果は、表―1に示した。
【0113】
<懸濁安定性:飲食品の外観観察>
各種飲料(製造法は、以下の実施例、比較例を参照)において、以下の4項目に関し、基準を定め、目視により判定した。
(分離)耐熱ビン入り飲料上部の色が薄い層の体積で評価した。
◎(優):分離なし、○(良):分離10%未満、△(可):分離30%未満、×(不可):分離30%以上
(沈降)耐熱ビンをゆっくり上下反転し、底面の堆積物の付着量で評価した。
◎(優):付着なし、○(良):部分的に薄く付着、△(可):一面に薄く付着、×(不可):全体的に濃く付着
(凝集)耐熱ビン入り飲料全体において、不均一な部分の量で評価した。
◎(優):均一、○(良):僅かに一部不均一、△(可):一部不均一、×(不可):全体的に不均一
【0114】
<食感>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):のど越しが軽く、適度なボディがある。
○(良):のど越しに、やや糊状感がある。
△(可):のど越しが重く糊状感がある。
×(不可):のど越しがよいが、水くさく感じる。
【0115】
<殺菌後の退色>
食感は、以下の評価基準とした。
◎(優):殺菌前後で、退色を生じなかった。
○(良):殺菌前後で、やや退色を生じた。
△(可):殺菌前後で、若干退色を生じた。
×(不可):殺菌前後で、明らかに退色を生じた。
【表1】