特許第5734445号(P5734445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734445
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】航空機の開口部のシール構造、航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 1/14 20060101AFI20150528BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B64C1/14
   F16J15/10 P
   F16J15/10 N
   F16J15/10 Y
   F16J15/10 D
【請求項の数】19
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-534599(P2013-534599)
(86)(22)【出願日】2012年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2012005970
(87)【国際公開番号】WO2013042362
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2013年10月29日
(31)【優先権主張番号】特願2011-205028(P2011-205028)
(32)【優先日】2011年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】508208007
【氏名又は名称】三菱航空機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(72)【発明者】
【氏名】八幡 勇作
(72)【発明者】
【氏名】横井 尚
(72)【発明者】
【氏名】土居 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊原木 幹成
【審査官】 黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−541286(JP,A)
【文献】 特開2000−124654(JP,A)
【文献】 特開平02−191399(JP,A)
【文献】 米国特許第04312153(US,A)
【文献】 特開平09−083169(JP,A)
【文献】 特開平02−119300(JP,A)
【文献】 米国特許第04857668(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/14
F16J 15/10
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の機体に形成された開口部と前記開口部を塞ぐ閉塞体との間に配置されるガスケットシールを用いた航空機の開口部のシール構造であって、
前記開口部を塞ぐ前記閉塞体と、
前記開口部および前記閉塞体の一方に設けられる前記ガスケットシールと、
前記開口部および前記閉塞体の他方に設けられ、前記ガスケットシールと電気的に接続される金属製金具と、を備えるとともに、
前記ガスケットシールは、ゴム系材料からなるガスケットシール本体と、前記ガスケットシール本体の表面を覆う導電性繊維とを備えており、
前記金属製金具は、前記ガスケットシールの前記導電性繊維に対する接触面に少なくともメッキ層を備えているとともに、前記メッキ層と前記金属製金具の母材との境界部が絶縁性を有した防食被覆により覆われていることを特徴とする航空機の開口部のシール構造。
【請求項2】
前記導電性繊維は、
a)表面に金属メッキ膜を形成した合成繊維、b)金属繊維、およびc)導電性材料を内包する高分子繊維、のいずれかである、
ことを特徴とする請求項1に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項3】
前記ゴム系材料はシリコンゴムであることを特徴とする請求項1または2に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項4】
前記ゴム系材料は、導電性フィラーが混入された導電性ゴムであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項5】
前記閉塞体は扉である、請求項1から4のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項6】
前記金属製金具は、前記閉塞体を閉じたときに前記ガスケットシールに突き当たるストライカーまたはスカッフプレートである、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項7】
前記金属製金具の前記母材はアルミ合金である、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項8】
前記閉塞体が扉であり、
前記ガスケットシールが前記扉に設けられ、
前記金属製金具が前記開口部に形成された扉フレームに設けられている、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項9】
前記金属製金具は、前記ストライカーである、
ことを特徴とする請求項6に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項10】
前記ガスケットシールの前記導電性繊維は、表面に金属メッキ膜を形成した合成繊維であり、
前記金属メッキ膜を構成する金属材料の標準電位が、前記金属製金具の前記メッキ層を構成する金属材料の標準電位と同一または略同一である、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項11】
前記ガスケットシールの前記導電性繊維は、金属繊維であり、
前記金属繊維を構成する金属材料の標準電位が、前記金属製金具の前記メッキ層を構成する金属材料の標準電位と同一または略同一である、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項12】
前記金属製金具の前記メッキ層は、ニッケルまたはクロムを主成分とするメッキ層である、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項13】
前記金属製金具の前記メッキ層は、無電解ニッケルメッキ層または硬質クロムメッキ層である、
ことを特徴とする請求項12に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項14】
前記金属製金具の前記メッキ層は、スズを主成分とするメッキ層である、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項15】
前記金属製金具の前記メッキ層はニッケルメッキ層であり、
前記ガスケットシールの前記導電性繊維は、合成繊維の表面に、ニッケル、銅、銀、金またはこれらの合金を主成分とする金属メッキ膜を形成したものである、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項16】
前記金属製金具の前記メッキ層はクロムメッキ層またはスズメッキ層であり、
前記ガスケットシールの前記導電性繊維は、300シリーズのステンレススチール、400シリーズのステンレススチール、または2000シリーズのアルミ合金で形成した金属繊維から形成される、
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項17】
前記ストライカーは、前記メッキ層が形成された以外の領域が、前記防食被覆により覆われていることを特徴とする請求項に記載の航空機の開口部のシール構造。
【請求項18】
航空機の機体に形成された開口部と前記開口部を塞ぐ閉塞体との間に配置されるガスケットシールを用いた航空機の開口部のシール構造であって、
前記ガスケットシールは、ゴム系材料からなるガスケットシール本体と、前記ガスケットシール本体の表面を覆う導電性繊維とを備え、かつ、
前記閉塞体が扉であり、
耐腐食鋼製の第1のボンディングストラップが、前記ガスケットシールを支持した状態で前記扉に設けられ、
耐腐食鋼製の第2のボンディングストラップが、前記開口部に形成された扉フレームに設けられているとともに、
前記扉を閉じたときに前記第1のボンディングストラップが前記第2のボンディングストラップに突き当たる、ことを特徴とする航空機の開口部のシール構造。
【請求項19】
請求項から18のいずれか1項に記載のシール構造を有する航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットシール、航空機の扉および航空機の開口部のシール構造に関する。また、本発明は、当該シール構造を有する航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は、ラジオ、テレビジョン、レーダー、送信機、および他のソースからの電磁環境 (Electro−Magnetic Environment)である高放射電界強度(HIRF: High Intensity Radiated Fields)に対し、巡航飛行中或いは離着陸時において、誤作動や不時の挙動等が発生せず、安全に飛行できるようにしなければならない。このため、FAA(連邦航空局:Federal Aviation Administration)のRegulations(耐空性審査要求)である、(14CFR)§§23.1308, 25.1317, 27.1317及び29.1317, High−intensity Radiated Fields (HIRF) protectionで要求されるHIRF保護対策を施さなければならない。
図7は、航空機が離着陸時に空港の航空管制レーダアンテナに接近した場合のHIRF環境を説明するための図である。この場合、アンテナまでの接近距離(Slant Range)とアンテナから見た角度(Look Angle)により、放射電界強度は決定されている。
【0003】
以下の理由から、近年、航空機の電気/電子システムの保護の重要性は著しく増加している。
1)航空機の継続的な安全な飛行と着陸のために必要な機能を実行する 電気/電子システムへの、より大きな依存、
2)航空機の設計で用いられるある種の複合材による電磁遮蔽の低下、
3)データ・バスやプロセッサの動作速度の高速化、より高密度のICやカード、そして電子機器のより高い感度に伴う、電気/電子システムのHIRFに対するサセプティビリティ(感受性)の上昇、
4)使用周波数の特に1GHz以上の高周波帯域への拡大、
5)RF送信器の数と電力の増加に伴う、HIRF環境の苛酷さの上昇、
6)HIRFに曝された時に一部の航空機が受けた悪影響。
【0004】
一方、航空機内においては、携帯電話やゲーム機、ノート型パーソナルコンピュータ等の各種電子機器や航空貨物に付けられるアクティブタイプのRFID(Radio Frequency IDentification)タグ等のPED(Personal Electro Device)が発する電波や電磁ノイズ(以下、単に電磁ノイズと称する)により、例えば、管制塔との通信、所定のルートで飛行を行うための航法(Navigation)の通信や制御に悪影響が生じ得る。そこで、機内での各種電子機器の使用を控えることを乗客に求めているのは周知の通りである。
【0005】
航空機の機体は、一般に金属材料で形成されており、これにより電磁ノイズは減衰されている。このため、電磁ノイズは、主にキャビンの窓およびコックピットの窓を通して出入りする。そこで、障害となり得る電磁ノイズが、窓からコックピットや電子機器室に侵入するのを防ぐため、複数枚のアクリル等からなるウインドウパネルを積層してなる窓に、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)、金、銀等の膜を挟み込んで設けることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、図8に示すように、航空機の機体には、乗降や点検等の目的で、様々な開口部が形成されている。これらの開口部を塞ぐ扉は、一般に機体と同種の金属材料で形成されている。
このような扉および機体側の開口部のいずれか一方には、気密性を保持し、且つ水分が浸入しないように、絶縁性のゴム系材料からなるガスケットシールを設けていた(例えば、特許文献2〜5参照。)。そして、ガスケットシールが接触する相手側は、アノダイズ処理と塗装により、防食処置が施されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2003−523911号公報
【特許文献2】米国特許第3802125号明細書
【特許文献3】米国特許第4312153号明細書
【特許文献4】米国特許第4854010号明細書
【特許文献5】米国特許第2008/0164373号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
航空機の扉と機体は金属等の導電性材料からなるために、外部からの電磁波の侵入を防止できる。一方、航空機の機体に形成された開口部と扉との隙間には、ゴム系材料からなるガスケットシールが配置されている。このガスケットシールは、機体内の気圧を機体外部の低圧力より保持し、かつ、外部の雨や湿気を侵入させないよう、気密シール特性を目的として、EPDMゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)やシリコンゴムから通常作製されている。
しかしながら、これらのガスケットシールは、非導電性の材料であるため、電磁シールド効果はない。したがって、電磁波はこのガスケットシールをあたかも開口スロット(電波の侵入口)として作用させ、波長が半分(1/2波長)以下の高周波帯では電磁波が減衰することなく、そのままガスケットシールを通過してしまう。このため、ガスケットシールから機体内部に電磁波が侵入し、機体内部に搭載されている電子機器に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0009】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、電磁波の侵入を確実に防ぐことのできる航空機の開口部のシール構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的のもと、本発明は導電性を有するガスケットシールを用いた航空機の開口部のシール構造を提供する。すなわち、本発明は、航空機の機体に形成された開口部と開口部を塞ぐ閉塞体との間に配置されるガスケットシールを用いた航空機の開口部のシール構造であって、開口部を塞ぐ閉塞体と、開口部および閉塞体の一方に設けられるガスケットシールと、開口部および閉塞体の他方に設けられ、ガスケットシールと電気的に接続される金属製金具と、を備える。ガスケットシールは、ゴム系材料からなるガスケットシール本体と、ガスケットシール本体の表面を覆う導電性繊維とを備えている。そして、金属製金具は、ガスケットシールの導電性繊維に対する接触面に少なくともメッキ層を備えているとともに、メッキ層と金属製金具の母材との境界部が絶縁性を有した防食被覆により覆われていることを特徴とする。
ここで、開口部を塞ぐ閉塞体としては、扉や脱出ハッチ等が挙げられる。導電性繊維を用いてガスケットシールの表面を導電化することで、ガスケットシールの気密シール性能を損なうことなく、ガスケットシールからの電磁波侵入を防止することができる。また、表面が導電化されたガスケットシールおよび金属製金具を介して、航空機の開口部と、開口部を塞ぐ閉塞体が電気的に接続される。これにより、ガスケットシールからの電磁波侵入を防止しつつ、機体構造に雷電流のリターンパス(帰還経路)や静電気のボンディングパス(接地経路)を構成することができる。金属製金具としては、ストライカー、スカッフプレート、ボンディングストラップ等が例示される。
導電性繊維としては、a)表面に金属メッキ膜を形成した合成繊維、b)金属繊維、およびc)導電性材料を内包する高分子繊維、のいずれかを用いることができる。
【0012】
金属製金具としてのストライカーおよびスカッフプレートは、閉塞体を閉じたときにガスケットシールに突き当たる。ストライカーまたはスカッフプレートは、ガスケットシールの導電性繊維に対する接触面に少なくともメッキ層を備える。導電性繊維を構成する金属材料と、上記メッキ層を構成する金属材料を適切に選択することで、湿気及び塩水噴霧環境下においても、MIL-STD-889により定義されている異種金属結合(Dissimilar Metals)による電食(Galvanic Corrosion)を防止することができる。具体的には、メッキ層を構成する金属材料および導電性繊維を構成する金属材料が、同一または略同一の標準電位(Anodic Index)を有することが、上記電食を防止する上で好ましい。なお、両金属材料の標準電位が同一ではないが、その標準電位の差が絶対値で0.15V以下である場合に、本願明細書では「標準電位が略同一」という。
機体を構成するアルミ合金が電食によって腐食してしまうことを防止するために、アルミ合金を耐腐食鋼(CRES: Corrosion REsistant Steel)に変える方法も有る。しかしながら、耐腐食鋼は、航空機に多用するには重量が増大するデメリットの方が大きい。
これに対し、ガスケットシールの導電性繊維の材質と、ストライカーまたはスカッフプレートのメッキ層の材質を適切に選択するという本発明の手法によれば、軽量、すなわち機体の重量増大を招くことなく、簡易かつ低コストで電食の発生を防ぐことができる。
本発明は、上記したシール構造を有する航空機も提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガスケットシールの気密シール性能を損なうことなく、ガスケットシールからの電磁波侵入を防止することができる。
また、本発明によれば、表面を導電化したガスケットシールとストライカー等の金属製金具を介して、扉と機体側とを電気的に接続することができる。この電磁シールド構造によれば、閉塞体(扉、ハッチ等)と機体開口部側の扉フレームとの間を電気的に塞ぎ、電磁的な隙間からの電波や電磁ノイズの侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における、航空機の開口部のシール構造の一例を示す断面図である。
図2】第1実施形態の変形例を示す断面図である。
図3】第2実施形態における、航空機の開口部のシール構造を示す断面図である。
図4図4(a)は第3実施形態における、航空機の開口部のシール構造を示す断面図であり、図4(b)は第3実施形態におけるガスケットシールの拡大図である。
図5】第3実施形態のガスケットシールを用いた場合における電磁シールド測定結果(垂直偏波)を示すグラフである。
図6】第3実施形態のガスケットシールを用いた場合における電磁シールド測定結果(水平偏波)を示すグラフである。
図7】航空機が遭遇するHIRF(高放射電界強度)環境を示す図である。
図8】航空機の扉やハッチを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1に示すように、航空機10の機体の外皮11に、乗降や点検等の目的で、開口部12が形成され、この開口部12に、扉13が開閉可能に設けられている。
ここで、外皮11と扉13は、アルミ合金等、導電性材料から形成されている。
【0016】
ガスケットシール20は、扉13および開口部12のいずれか一方に固定され、他方には、ガスケットシール20に先端が突き当たるストライカー30が設けられている。
本実施形態では、ガスケットシール20を扉13に設け、ストライカー30を開口部12側に設けることとするが、もちろん、これに限るものではない。すなわち、ガスケットシール20を開口部12側に設け、ストライカー30を扉13に設けてもよい。
【0017】
ガスケットシール20は、弾性を有したゴム系材料からなり、例えばモールド加工により作製可能である。ゴム系材料としては、シリコンゴムやEPDMゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)等が挙げられる。なお、本願におけるゴム系材料は、エラストマーおよびゴムを広く包含する。
ガスケットシール20は、シール部21と、シール部21の一端に一体に形成されたベース部22とから形成されている。シール部21は、扉13の外周部に沿って連続するよう環状に設けられ、断面視すると、内部に中空部21aを有する。ベース部22は矩形断面を有し、扉13の外周部に沿って連続するように設けられている。
中空部21aは、1気圧を保持した空気層とすることができる。
なお、ガスケットシール20が、空気層からなる中空部21aを有することは必須ではない。例えば、中空部21aに、シリコンスポンジ等を配置して、空気層が存在しないガスケットシールとしてもよい。
また、図1では全体としてP型の断面形状を有するガスケットシール20を示したが、これはあくまで例示である。ガスケットシール20の断面形状は、P型に限らず、D型やこれらを変形した形状としてもよい。
【0018】
このガスケットシール20は、シール保持部14にベース部22が嵌め込まれることによって扉13に保持されている。シール保持部14は、機内側を向く扉13の背面13aに形成されている。シール保持部14は、扉13と同様に、アルミ合金等、導電性材料から形成されている。
【0019】
機体の外皮11側には、開口部12の周縁部に沿って、機内側に突出するエッジメンバー31が形成されている。そして、このエッジメンバー31に、ストライカー30が取り付けられている。つまり、エッジメンバー31は扉フレームとして機能している。ストライカー30は、その一端部30aがエッジメンバー31に導電性を有したリベット等の接合部材により接合される。ストライカー30の他端部30bは、開口部12の内方に位置して、扉13に取り付けられたガスケットシール20のシール部21に対向するよう設けられている。
扉13を閉じたときに、ストライカー30の先端部30cがガスケットシール20のシール部21に突き当たってシール部21を押しつぶす方向に圧縮変形させる。これによって、機体に形成された開口部12のシール性を確保している。
ストライカー30は、通常、その母材がアルミ合金等の導電性材料からなる。
【0020】
<第一の特徴>
本発明は、ガスケットシール20の表面が、導電性繊維24により覆われていることを第一の特徴としている。ゴム系材料からなるガスケットシール20を、導電性繊維24で覆うことで、ガスケットシール20の表面を導電化することができる。これにより、扉13と機体との間にあるガスケットシール20から機体内部に電磁波が侵入することを防止することができる。
ここで、導電性繊維24を用いずに、金属等の導電性フィラーをゴム系材料に混ぜてガスケットシールを導電化することも考えられる。但し、この手法では、電磁波侵入防止が可能な程度の量の導電性フィラーをゴム系材料に混ぜると、ガスケットシールの可とう性、伸び、復元性、硬度等に影響がでるため、ガスケットシールの気密シール性能が低下してしまう。これに対し、ガスケットシール20の表面を導電性繊維24により覆うことでガスケットシール20の表面を導電化するという本発明の手法によれば、ガスケットシール20の気密シール性能を損なうことなく、ガスケットシール20からの電磁波侵入を防止することができる。
また、扉13と機体の開口部12との間の隙間を、バネ特性を有する金属性ガスケットで電磁シールドすることも考えられる。金属性ガスケットとしては、ベリリウム銅や耐腐食鋼(CRES)等の金属で作製された市販のFinger Stock等がある。但し、金属性ガスケットは隙間があり、気密シール性能を有さないため、本発明では上述した通り、ゴム系材料からなるガスケットシール20を用いる。
【0021】
導電性繊維24の一例として、表面に金属メッキ膜を形成した合成繊維が挙げられる。扉13がアルミ合金製である場合には、上記金属メッキの材料としてAg、Cu、Ni、Tin、Cr、Au等の良導体を用いることで、電磁シールド効果を得ることができる。
【0022】
導電性繊維の他の例としては、(i)金属繊維や、(ii)導電性を有する金属やその化合物、またはカーボンブラック等の導電性材料を内包する高分子繊維が挙げられる。
例えば、上記した良導体からなる金属繊維や、上記した良導体またはカーボンブラックのフィラーを内包する高分子繊維を用いることでも、電磁シールド効果を得ることができる。
【0023】
上述したような構成によれば、導電性繊維24により覆われたガスケットシール20は扉13の外周に沿うよう設けられ、ストライカー30を介して機体の開口部12に電気的に接地されている。これにより、扉13と機体の開口部12との隙間部分に、電気的に隙間なく導電性材料からなるシールド構造を形成することができ、電磁ノイズの機体内部への侵入を防止することができる。
このようにして、電磁ノイズ侵入防止のための導電性ガスケットシール20を、確実かつ容易、低コストに電気的に機体の開口部12に接地することが可能となる。
【0024】
また、扉13に雷が着雷した場合、扉13側のシール保持部14、導電性繊維24および機体の開口部12に設けられたストライカー30によって、機体構造に雷電流のリターンパス(帰還経路)を構成することができる。また、飛行中に雹、雨、雪および塵との摩擦により生ずる静電気(P-Static: Precipitation Static)が扉13に帯電した場合、同様に扉13側のシール保持部14、導電性繊維24および機体の開口部12に設けられたストライカー30によって、機体構造に静電気の除電ボンディングパス(接地経路)を構成することができる。
【0025】
<第二の特徴>
本発明は、ストライカー30が、少なくとも先端部30cの表面(すなわち、ガスケットシール20の表面を覆う導電性繊維24に対する接触面)に、メッキ層32を備えることを第二の特徴としている。
上述したように、ストライカー30の母材は、通常、アルミ合金である。アルミ合金の防食には、電解処理ではなく、化成処理(化学的にアルミ合金表面に酸化皮膜を生成させる表面処理。ベーマイト法、MBV(Modifizierte Bauer Vogel)法、リン酸塩法,クロメート法など。)も考えられるが、化成処理(酸化皮膜)では導電性を確保できないため不適である。そこで、本発明では、少なくともストライカー30の先端部30cの表面に、メッキ層32を形成する。
メッキ層32としては、ニッケルメッキ層またはクロムメッキ層が好ましい。なかでも、メッキ層32を硬質クロムメッキまたは無電解ニッケルメッキで形成した場合には、ストライカー30の耐摩耗性,耐振動性などの機械的特性も向上させることができる。よって、扉13を閉じるたびにガスケットシール20に突き当たるストライカー30のメッキ層32として、硬質クロムメッキおよび無電解ニッケルメッキは好適である。
無電解ニッケル皮膜は、熱処理することで硬度を高めることが出来るため、耐摩耗性も向上させることができる。また、メッキ皮膜の代表的な特性を備えているほか、均一電着性,耐薬品性に優れるとともに、装飾性も高い。なお、無電解ニッケル皮膜の上に、金、クロムなどをメッキし、色調を変えることも可能である。
その他、スズメッキ、銀メッキ、亜鉛メッキによって、メッキ層32を形成することも可能である。これらによっても、アルミ合金材へのメッキ処理が可能であり、かつスズメッキ皮膜、銀メッキ皮膜、亜鉛メッキ皮膜も、メッキ皮膜の代表的な特性を備えている。
このメッキ層32は、少なくともガスケットシール20とストライカー30との接触部分の全域を含むように形成することができる。
【0026】
さらに、ストライカー30には、メッキ層32が形成されている部分以外に、ストライカー30自体の腐食を防ぐための絶縁性の塗装層(防食被覆)33が形成されていてもよい。この塗装層33は、メッキ層32の端部32a、32bを覆うように形成されており、メッキ層32と塗装層33とでストライカー30の全体を覆っている。図1に示すように、メッキ層32の端部32a、32bは、ガスケットシール20に突き当たるストライカー30の先端部30cとは反対側に位置している。
塗装層33を設けることで、メッキ層32とストライカー30の母材との境界部や、その他の部分における腐食(電食)を防止できる。これによって、ストライカー30の母材として、腐食防止のためにCRES材を用いる必要がなく、アルミ合金を用いることができるので、重量増を抑えてストライカー30を形成することができる。
【0027】
このような構成においては、扉13の背面13aにガスケットシール20が設けられ、このガスケットシール20は、その表面が導電性繊維24により覆われている。そして、扉13を閉じた状態では、機体の外皮11側に設けられ、その母材およびメッキ層32が導電性材料からなるストライカー30に、導電性繊維24に覆われたガスケットシール20が突き当たるようになっている。これにより、扉13と機体の開口部12との間において、気密性および防水性はもちろんのこと、扉13と機体の外皮11が導電性繊維24およびストライカー30のメッキ層32および母材を介して電気的に接続されるため、電磁波を確実にシールドすることができる。
【0028】
ここで、ストライカー30のメッキ層32と、ガスケットシール20の表面を覆う導電性繊維24との好ましい組み合わせを例示する。以下の組合せを採用することで、異種間金属による電食によって導電性繊維24やストライカー30が腐食するのを防ぐことができる。
−ケース1:ストライカー30のメッキ層32がニッケルメッキ層である場合−
ケース1の場合には、導電性繊維24としては、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の表面に、ニッケル、銅、銀、金またはこれらの合金を主成分とする金属メッキ膜を形成したものが好ましい。
【0029】
−ケース2:ストライカー30のメッキ層32がクロムメッキ層またはスズメッキ層である場合−
ケース2の場合には、300シリーズのステンレススチール、400シリーズのステンレススチール、または2000シリーズのアルミ合金で形成した金属繊維によって、導電性繊維24を形成することができる。
【0030】
以上では、ガスケットシール20自体は非導電性のシリコンゴムやEPDMゴム等で形成し、ガスケットシール20の表面を導電性繊維24で覆う構成を示したが、ガスケットシール20の本体自体が導電性を有するようにしてもよい。
すなわち、EPDMゴムやシリコンゴムなどのゴム系材料に、Ag,Cu,Ni,Al等の金属製フィラー、またはカーボン微粒子(Carbon Particle)を含有させた導電性EPDMゴムや導電性シリコンゴム、もしくは導電性シリコンエラストマー等によって、ガスケットシール20の本体自体を形成することもできる。なお、上記した金属製フィラーに代えて、Ag/Cu、Ag/Al、Ni/Cu、Ni/Al、Ag/C、Ni/C等を用いてもよい。
ガスケットシール20の本体を導電性ゴム系材料で形成する場合にも、ガスケットシール20本体の表面は導電性繊維24に覆われる。導電性ゴム系材料および導電性繊維24を用いることで、ガスケットシール20の電磁シールド効果を高めることができる。
なお、本願明細書において、「Ag/Cu」等の表記は、以下を意味している。
Ag/Cu: 銅微粒子の外表面に銀メッキを施したフィラー
Ag/Al: アルミ微粒子の外表面に銀メッキを施したフィラー
Ni/Cu: 銅微粒子の外表面にニッケルメッキを施したフィラー
Ni/Al: アルミ微粒子の外表面にニッケルメッキを施したフィラー
Ag/C: グラファイトカーボン微粒子の外表面に銀メッキを施したフィラー
Ni/C: グラファイトカーボン微粒子の外表面に銀メッキを施したフィラー
【0031】
<変形例>
上記実施の形態では、図1に示したような断面形状のガスケットシール20とストライカー30とにより扉13と開口部12との隙間を塞ぐ構成としたが、これに限るものではない。
例えば、図1では、ガスケットシール20のシール部21の先端面に対し、ストライカー30の先端部30cが直交する方向に突き当たる構成としたが、図2(a)に示すように、ストライカー30Aの先端部30Cが、ガスケットシール20Aのシール部21の先端面に平行に突き当たる構成としても良い。
さらに、図2(b)に示すように、ガスケットシール20Bのシール部21を、ベース部22から帯状に延びる平板状の形状としても良い。さらに、このシール部21に対し、ストライカー30Bの平面部30dが接触するようにしても良い。
【0032】
[第2実施形態]
第2実施形態では、ガスケットシール20Cが、扉フレーム100の周囲に配置されたスカッフプレート50に突き当たる例を示す。なお、上記に示した構成と共通する構成については同符号を付してその説明を省略する。
図3に示すように、ガスケットシール20Cは、シール部21と、シール部21の一端に一体に形成されたベース部22Aとから形成されている。シール保持部14Aに、ベース部22Aの全体およびシール部21の一部が嵌め込まれた状態で、ガスケットシール20Cは扉13の外周に沿って固定されている。シール保持部14Aは、扉13の外周縁部に配置される外側シール保持部14aと、外側シール保持部14aよりも扉13の内側に配置される内側シール保持部14bとからなる。外側シール保持部14aは固定用リベットRによって、また内側シール保持部14bは固定用ファスナFによって、扉13にそれぞれ固定されている。
ガスケットシール20Cは、その表面が上述した導電性繊維24に覆われているが、図3では導電性繊維24の図示を省略している。スカッフプレート50は、アルミ合金等の導電性材料により形成されている。
扉13が閉じた状態で、ガスケットシール20Cは、扉フレーム100の周囲に配置され、かつ導電性材料からなるスカッフプレート50と電気的に接続される。つまり、スカッフプレート50を介して、ガスケットシール20Cは扉フレーム100に電気的に接地される。この構成により、扉13と扉フレーム100間の電磁シールド構造が達成される。
第1実施形態において、ストライカー30にメッキ層32を形成したのと同様に、スカッフプレート50にもメッキ層32Aを形成してもよい。メッキ層32Aは、スカッフプレート50と導電性繊維24とが接触する部分を少なくとも覆うように形成することが望ましい。メッキ層32Aと導電性繊維24との好ましい組合せも、上述した通りである。例えば、ガスケットシール20Cの導電性繊維24が、表面に金属メッキ膜を形成した合成繊維である場合には、スカッフプレート50のメッキ層32Aを構成する金属材料の標準電位が、導電性繊維24の金属メッキ膜を構成する金属材料の標準電位と同一または略同一となるように、スカッフプレート50にメッキ層32Aを形成することが好ましい。また、ガスケットシール20Cの導電性繊維24が金属繊維である場合には、金属繊維を構成する金属材料の標準電位が、スカッフプレート50のメッキ層32Aを構成する金属材料の標準電位と同一または略同一となるように、スカッフプレート50にメッキ層32Aを形成することが好ましい。
【0033】
[第3実施形態]
第3実施形態では、ガスケットシール20Dを、扉側ボンディングストラップ(第1のボンディングストラップ)60Aを介して扉13側に設けた例を示す。
図4(a)、図4(b)に示すように、ガスケットシール20Dは、シール部21と、シール部21の一端に一体に形成されたベース部22Bとから形成されている。ガスケットシール20Dは、断面視するとP字状となっており、その表面が上述した導電性繊維24に覆われている。なお、図4(a)、図4(b)では導電性繊維24の図示を省略している。
扉側ボンディングストラップ60Aは、断面視すると略L字状となっている。ガスケットシール20Dのベース部22Bが、ワッシャWおよび扉側ボンディングストラップ60Aに挟持された状態で、ガスケットシール20DはボルトB、ナットNを介して扉13に固定されている。
ボルトBは、ガスケットシール20Dのベース部22Bを貫通する。このため、ベース部22Bは、その内部にグラスファイバー等から形成される芯が挿入されており、シール部21Aよりも高い剛性を有するように補強されている。
扉側ボンディングストラップ60Aの一端は、扉13を閉じたときに、機体開口部側ボンディングストラップ(第2のボンディングストラップ)60Bの一端に突き当たる。機体開口部側ボンディングストラップ60Bの一端は、例えばボルト、ナット等の締結具によって、機体開口部に設けられたエッジメンバー(扉フレーム)31に固定されている。扉側ボンディングストラップ60Aおよび機体開口部側ボンディングストラップ60Bは、耐腐食鋼(CRES)等で作製された金属性金具である。
第3実施形態においても、その表面が導電性繊維24に覆われたガスケットシール20Dが、扉13と機体11の開口部12との間に配置されている。これにより、機体外部からの電磁波がガスケットシール20Dを介して機体内部に侵入することを防止することができる。また、ガスケットシール20Dを支持する扉側ボンディングストラップ60Aを介して、ガスケットシール20Dは扉13に電気的に接地される。そして、扉13を閉じたときに、扉側ボンディングストラップ60Aが機体開口部側ボンディングストラップ60Bに突き当たる。この構成により、扉13と機体11の開口部12間の電磁シールド構造が達成される。
また、雷が扉13に着雷した際の雷帰還電流および飛行中の静電気(P-Static)による帯電に対しては、静電気除電のため、ボンディングストラップ60A、60Bから機体構造へ確実に導通させることができる。
【0034】
また、ガスケットシール20D、扉側ボンディングストラップ60Aおよび機体開口部側ボンディングストラップ60Bとの間で湿気や塩水噴霧環境下での異種金属結合による電食は発生しないよう設計されている。
例えば、ガスケットシール20Dの表面を覆う導電性繊維24として、ポリエステル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の表面に、ニッケル(標準電位0.30)、銅(標準電位0.35)、またはニッケル銅合金(標準電位0.30)を主成分とする金属メッキ膜を形成したものを用いる。そして、ボンディングストラップ60A、60Bを同種の耐腐食鋼(CRES:標準電位0.35)から形成し、ボンディングストラップ60Aが導電性繊維24と接触する部分にニッケル(標準電位0.30)やニッケルクロム合金(標準電位0.35)を主成分とするメッキ層を形成する。このように、ボンディングストラップ60A、60Bを同種の耐腐食鋼から形成するとともに、導電性繊維24の金属メッキ膜を構成する金属材料の標準電位が、ボンディングストラップ60Aのメッキ層を構成する金属材料の標準電位と同一または略同一となるように材料を選択することにより、電食の発生を防止できる。
【0035】
〔実施例1〕
第3実施形態で示したガスケットシール20Dを用いて、IEEE STD-299-2006 「IEEE Standard Method for Measuring the Effectiveness of Electromagnetic Shielding Enclosures」に準拠した電磁シールド試験を行った。ガスケットシール20Dを電気的に接続するボンディングストラップ60の本数を10本にした場合の電磁シールド効果を図5図6に示す。なお、ガスケットシール20Dの本体は、シリコンゴム製であり、その内部に導電性フィラーを含有していない。ガスケットシール20Dの表面を覆う導電性繊維24として、ニッケルメッキを施したポリエステル繊維を使用した。この導電性繊維24を、導電性シリコンゴムにより、ガスケットシール20Dの表面に貼り付けた。
図5および図6に示すように、その表面が導電性繊維24に覆われたガスケットシール20Dを用いることで、100MHzから18GHzの周波数帯域の電磁シールド効果を30dB以上とすることができた。
【0036】
なお、上記実施の形態では、扉13または航空機10の機体の開口部12にガスケットシール20(20A〜20D)を適用した例を示したが、扉13に限らず、図8に示した脱出ハッチ等にガスケットシール20を適用することももちろん可能である。脱出ハッチも、航空機10の機体を構成する外皮11に形成された開口部12に取り付けられており、開口部12と脱出ハッチとの間には、気密用のガスケットシールを配置する必要があるからである。また、扉13としては、図8に示したように、航空機10の開閉式の昇降扉、サービス扉、貨物扉、電子機器室扉が例示される。
本発明は、上記に示したような電磁シールド構造を有する航空機とすることもできる。また、航空機の整備・点検パネルやマンホール等の開口部のガスケットシールを導電化する場合にも本発明を適用可能である。なお、マンホールは、燃料タンクである翼の内部を点検整備するために設けられた空洞である。
さらに、本発明のガスケットシールは、昇降用扉等に設ける換気扉(ベントドア)用圧力シールとしても、適用可能である。
また、外皮11に形成された開口部12または扉13のいずれか一方にガスケットシール20(20A〜20D)を適用した例を示したが、ガスケットシールの形状によっては、開口部12および扉13の両方にガスケットシールを設けてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10 航空機
11 外皮
12 開口部
13 扉(閉塞体)
14、14A シール保持部
20、20A、20B、20C、20D ガスケットシール
21 シール部
22 ベース部
24導電性繊維
30、30A ストライカー(金属製金具)
31 エッジメンバー(扉フレーム)
32、32Aメッキ層
33塗装層(防食被覆)
50 スカッフプレート(金属製金具)
60A 扉側ボンディングストラップ(金属製金具、第1のボンディングストラップ)
60B 機体開口部側ボンディングストラップ(金属製金具、第2のボンディングストラップ)
100 扉フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8