特許第5734510号(P5734510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5734510
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】合成樹脂容器製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/20 20060101AFI20150528BHJP
   B65D 1/18 20060101ALI20150528BHJP
   B65D 25/28 20060101ALI20150528BHJP
   B65D 25/42 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B29C49/20
   B65D1/18 111
   B65D25/28 101B
   B65D25/42 Z
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-509397(P2014-509397)
(86)(22)【出願日】2013年8月1日
(86)【国際出願番号】JP2013070891
【審査請求日】2014年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】591181126
【氏名又は名称】株式会社利川プラスチック
(74)【復代理人】
【識別番号】100187584
【弁理士】
【氏名又は名称】村石 桂一
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】利川 暉
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−284746(JP,A)
【文献】 特開昭47−009944(JP,A)
【文献】 実開平01−063529(JP,U)
【文献】 特開平06−199350(JP,A)
【文献】 実開平07−019141(JP,U)
【文献】 特開2003−236920(JP,A)
【文献】 実開平05−042116(JP,U)
【文献】 特開平09−295341(JP,A)
【文献】 特開2009−274429(JP,A)
【文献】 特開2007−302156(JP,A)
【文献】 特開平11−254511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00−49/80
B65D 1/00− 1/48
B65D 25/00−25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面の少なくとも一端に口金を有するとともに、前記天面に複数の取手が並置された合成樹脂容器を、ブロー成形によって製造する合成樹脂容器製造方法であって、
前記口金及び複数の前記取手をそれぞれインサート部品として予め成形しておき、これらインサート部品の融着温度で該インサート部品の融着部を加熱するインサート部品加熱工程と、
前記インサート部品加熱工程後に、前記インサート部品の融着部を金型内に臨ませた状態でパリソンの供給方向と平行に前記インサート部品を金型に配置するインサート部品配置工程と、
前記インサート部品配置工程後に、前記金型内に前記パリソンを供給して前記金型を型締めした後に、前記口金を介して前記パリソンをブローして前記パリソンと前記インサート部品とを融着させる容器成形工程と、
を備え、
前記容器成形工程における前記ブロー前において、前記インサート部品のうちの少なくとも前記口金を、予め、前記金型内の前記パリソンに当接させた状態で、前記パリソンに前記ブローを行うこと
を特徴とする合成樹脂容器製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の合成樹脂容器製造方法であって、
前記インサート部品として、さらに補助取手を予め成形しておき、
前記補助取手を、前記合成樹脂容器の底面であって且つ前記口金の位置と対角位置に配置すること
を特徴とする合成樹脂容器製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の合成樹脂容器製造方法であって、
前記インサート部品における前記取手及び前記補助取手の両方又はいずれか一方には、指が嵌まる把持用凹部が形成されたものであること
を特徴とする合成樹脂容器製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
合成樹脂容器製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、直方体形状の合成樹脂製の容器であって、天面の少なくとも一端に口金を有するとともに、天面の長辺に沿って3つの取手が並置された容器が開示されている。この容器を2つ、相互の取手が平行となるように隣接させると、各容器の最外に位置する取手同士が近接するので、これら取手の両方を同時に把持することができる。すなわち、両方の取手に指を掛けて、片手で2つの容器を同時に持ち運びすることができ、両手で最大4個の容器を持ち運びすることができる。
【0003】
さらに、容器内に収容物が収容されて重くなったときは、容器天面の両側に配置された取手を容器の両側から2人でそれぞれ把持して、2人で協力して1つの容器を持ち運びすることもできる。
【0004】
ところで、特許文献1及び特許文献2には、上述の容器の製造方法が開示されていないが、従来から1つの取手を備えた容器の製造方法として、特許文献3が知られている。
【0005】
特許文献3には、口金を含んだ容器本体部分を成形するキャビティと、取手部分を成形するキャビティと、を有する一対の金型内にパリソンを供給し、一対の金型を型締めした後にパリソンをブローして容器を製造する製造方法が開示されている。すなわち、ブロー成形によって容器本体部分の成形及び取手部分の成形を、1つの金型で同時に行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭52−53417号公報
【特許文献2】実開平2−73132号公報
【特許文献3】特許第3955089号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3の製造方法では、金型内のパリソンをブローして容器本体部分及び取手部分を1つの金型で同時に成形した後に、一対の金型を型開きし、成形品を金型から離形して容器を製造する。ここで、金型から容器の取手部分を離形するには、一対の金型の型合わせ面(パート面)に取手部分が配置されていなければ、型開きされた金型から取手部分を離形することができない。したがって、特許文献3の製造方法では必然的に1個の取手を備える容器しか製造することができなかった。すなわち、特許文献1及び2の容器は、特許文献3の製造方法で製造することはできない。
【0008】
さらに、特許文献3の容器の製造方法では、容器の口金部分についても、容器本体部分及び取手部分と同時に成形することとしている。ここで口金には、容器内を密封するネジキャップが取り付けられるため、口金の全周に亘ってネジキャップと螺合する雄ネジを形成する必要がある。
【0009】
しかし、特許文献3に開示された製造方法では、口金部分も取手部分と同様に金型のパート面に配置されるため、成形された口金部分にはパーティングラインが生じることとなる。口金にパーティングラインが形成されると、その部分において規定の形状の雄ネジを成形することが困難となることから、ネジキャップと口金との密着性に影響が出る虞があった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、天面に複数の取手を有する合成樹脂容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達するために、本発明は次のとおりの構成としている。
【0012】
本発明に係る合成樹脂容器製造方法は、天面の少なくとも一端に口金を有するとともに、前記天面に複数の取手が並置された合成樹脂容器を、ブロー成形によって製造する合成樹脂容器製造方法であって、前記口金及び複数の前記取手をそれぞれインサート部品として予め成形しておき、これらインサート部品の融着温度で該インサート部品の融着部を加熱するインサート部品加熱工程と、前記インサート部品加熱工程後に、前記インサート部品の融着部を金型内に臨ませた状態でパリソンの供給方向と平行に前記インサート部品を金型に配置するインサート部品配置工程と、前記インサート部品配置工程後に、前記金型内に前記パリソンを供給して前記金型を型締めした後に、前記口金を介して前記パリソンをブローして前記パリソンと前記インサート部品とを融着させる容器成形工程と、を備え、前記容器成形工程における前記ブロー前において、前記インサート部品のうちの少なくとも前記口金を、予め、前記金型内の前記パリソンに当接させた状態で、前記パリソンに前記ブローを行うことを特徴とする。
【0013】
このような特定事項により、取手の数が多い複雑な構造の合成樹脂容器であっても製造することができる。また、インサート部品は、予め個別に成形されるため、従来技術と異なり、インサート部品をパーティングラインが目立たない成型方法で成形することができる。これにより、インサート部品のうち、特に口金は、その外周面に規定の形状の雄ネジを容易に形成することができるため、口金を密封するネジキャップを密着性よく口金に取り付けることができる。さらに、口金とネジキャップとの密着性が高いものとなるため、従来、密着性を補うために使用されていたパッキングを不要とすることができる。また、インサート部品のうちの少なくとも口金をパリソンのブロー前にパリソンに近づけるため、パリソンと口金との融着不良を起きにくくし、確実にパリソンと口金を融着させることができる。なお、口金以外の他のインサート部品も金型内に押し出してもよい。
【0016】
上記の合成樹脂容器製造方法であって、前記インサート部品として、さらに補助取手を予め成形しておき、前記補助取手を、前記合成樹脂容器の底面であって且つ前記口金の位置と対角位置に配置する構成とする。
【0017】
このような構成により、合成樹脂容器内に収容された収容物を口金から排出する際に、取手を把持するとともに補助取手を把持して合成樹脂容器を傾けることで、口金から収容物を容易に排出することができる。
【0018】
上記の合成樹脂容器製造方法であって、前記インサート部品における前記取手及び前記補助取手の両方又はいずれか一方には、指が嵌まる把持用凹部が形成されたものである構成とする。
【0019】
このような構成により、取手及び補助取手には指が嵌まる把持用凹部が形成されているため、手が滑りにくく、合成樹脂容器を持ち運びしやすくすることができる。
【0020】
本発明に係る合成樹脂容器は、上記の合成樹脂容器製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、天面に複数の取手を有する合成樹脂容器の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】本発明に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の斜視図である。
図1B】本発明に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の変形例の斜視図である。
図2A】本発明の合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の使用態様を説明する説明図である。
図2B】本発明の合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の使用態様を説明する説明図である。
図3A】本発明の合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の使用態様を説明する説明図である。
図3B】本発明の合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の使用態様を説明する説明図である。
図4】本発明に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の変形例の効果を説明する説明図である。
図5】本発明の合成樹脂容器の製造に用いられるインサート部品を示す図であって、(a)は、口金部品の斜視図、(b)は、取手部品の斜視図、(c)は、補助取手部品の斜視図である。
図6】本発明の合成樹脂容器の製造に用いられる第一部品保持具を示す図であって、(a)は第一部品保持具の斜視図、(b)は、(a)の底面図である。
図7】本発明の合成樹脂容器の製造に用いられる第一部品保持具の変形例を示す図であって、(a)は第一部品保持具の斜視図、(b)は、(a)の底面図である。
図8】本発明の合成樹脂容器の製造に用いられる第二部品保持具の斜視図である。
図9】本発明の合成樹脂容器の製造に用いられる金型の斜視図である。
図10A】本発明の合成樹脂容器のインサート部品配置工程を示す模式図である。
図10B】本発明の合成樹脂容器のインサート部品配置工程において、口金部品に空気供給管を差し込む工程を説明する説明図である。
図10C】本発明の合成樹脂容器の製造工程において、金型の側面から見たインサート部品配置工程を示す模式図である。
図11A】本発明の合成樹脂容器の製造方法において、金型の上方から見た容器成形工程を示す模式図である。
図11B】本発明の合成樹脂容器の製造方法において、金型の側面から見た容器成形工程を示す模式図である。
図12A】本発明の合成樹脂容器の製造方法において、金型の上方から見た容器成形工程を示す模式図である。
図12B】本発明の合成樹脂容器の製造方法において、金型の側面から見た容器成形工程を示す模式図である。
図13A】本発明の合成樹脂容器の製造方法において、金型の上方から見た容器成形工程を示す模式図である。
図13B】本発明の合成樹脂容器の製造方法において、金型の側面から見た容器成形工程を示す模式図である。
図14A】本発明の合成樹脂容器の製造方法において、金型の上方から見た容器成形工程を示す模式図である。
図14B】本発明の合成樹脂容器の製造方法において、金型の側面から見た容器成形工程を示す模式図である。
図15】本発明の合成樹脂容器の製造方法において、金型の斜め上方から見た容器成形工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について、まず、本実施形態に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器を説明した後に、この合成樹脂容器の製造方法について説明する。
【0027】
[本実施形態に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の説明]
・本実施形態に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の構成
本実施形態に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器について図1Aから図4までを参照しながら説明する。
【0028】
図1Aは、本発明に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の斜視図、図1Bは、本発明に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の変形例の斜視図、図2Aから図3Bは、本発明の合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の使用態様を説明する説明図、図4は、図1Bに示す合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の作用効果を説明する説明図である。
【0029】
本実施形態に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器10は、略方形であって、天面の少なくとも一端に口金2を有するとともに、天面の長手方向に沿って3つの取手3が並置されており、さらに、底面であって口金2位置と対角位置には、補助取手4が備えられたものである(図1A参照)。
【0030】
天面に配された各取手3の側面には、それぞれ、指が嵌まる把持用凹部31が形成されており、各取手3の長手方向の両端部には、貫通孔33(後述する図5(b)参照)が形成されている。各貫通孔33には、各取手3を接続する把持部材32が挿通されており、把持部材32によって各取手3がそれぞれ接続されている。
【0031】
天面の一端に配された口金2には、合成樹脂容器10内を密封するネジキャップ(不図示)と螺合する雄ネジ21が全周に亘って形成されている。
【0032】
底面に配された補助取手4には、前述した取手3と同様に、指が嵌まる把持用凹部41が形成されている。
【0033】
また、補助取手4が設けられている合成樹脂容器10の角部は斜面に形成されるとともに、補助取手4の幅寸法が合成樹脂容器10の底面の幅寸法よりも短く設定されているため、合成樹脂容器10の底面において、補助取手4の両側に間隙50が形成されている。したがって、合成樹脂容器10が地面に置かれている場合に、この間隙50に手を差し入れれば、容易に合成樹脂容器10を把持することができる。
【0034】
なお、本発明の合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器10の変形例として、図1Bに示すように、口金2が天面の中央に形成されているとともに、取手3が天面の短手方向に沿って天面の両端に形成された合成樹脂容器10としてもよい。図示例では、合成樹脂容器10には、前述した補助取手4が備えられていないが、補助取手4が備えられていてもよい。
【0035】
・本実施形態に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器の効果
以上説明した構成により、図1Aに示した本発明に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器10は、天面の長手方向に沿って3つの取手3が並置されているため、この合成樹脂容器10を2つ、相互の取手3が平行となるように隣接させると、各合成樹脂容器10の最外に位置する取手3同士が近接するので、これら取手3の両方を同時に把持することができる。すなわち、両方の取手3に指を掛けて、片手で2つの合成樹脂容器10を同時に持ち運びすることができ、両手で最大4個の合成樹脂容器10を持ち運びすることができる。さらに、合成樹脂容器10内に収容物が収容されて重くなったときは、合成樹脂容器10天面の両側に配置された取手3を合成樹脂容器10の両側から2人でそれぞれ把持して、2人で協力して1つの合成樹脂容器10を持ち運びすることもできる。(図2B参照)。
【0036】
また、本発明に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器10は、底面であって口金2位置と対角位置に補助取手4が備えられているため、合成樹脂容器10内に収容された収容物を口金2から排出する際に、取手3を把持するとともに補助取手4を把持して合成樹脂容器10を傾けることで、口金2から収容物を容易に排出することができる(図3A参照)。さらに、各取手3を接続する把持部材32と補助取手4の両方を掴んで口金2から収容物を排出することもできる(図3B参照)。
【0037】
なお、合成樹脂容器10の天面の取手3の数は、3つに限られるものではなく、2つでもよいし、4つ以上であってもよい。
【0038】
さらに、図1Bに示した本発明に係る合成樹脂容器の製造方法によって製造された合成樹脂容器10の変形例では、取手3が短手方向に沿って配置されているため、図4に示すように、使用者は、図1Aに示した合成樹脂容器10よりも体を合成樹脂容器10の重心に近い状態(図4においては、距離Lだけ合成樹脂容器10の重心に近づくことができている)で両方の取手3を把持して合成樹脂容器10を持ち運びすることができる。これにより、図1Bに示した合成樹脂容器10を持ち上げる際は、図1Aに示した合成樹脂容器10を持ち上げる際と比較して前屈みにならなくてもよいため、楽な姿勢で合成樹脂容器10を持ち上げることができる。
【0039】
[本実施形態に係る合成樹脂容器の製造方法の説明]
次に、本実施形態に係る合成樹脂容器10の製造方法について、説明する。本実施形態に係る合成樹脂容器製造方法は、ブロー成形によって合成樹脂容器を製造する合成樹脂容器製造方法であって、インサート部品加熱工程と、インサート部品配置工程と、容器成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0040】
以下、この工程に沿って合成樹脂容器製造方法を説明する。
【0041】
・インサート部品加熱工程の説明
まず、インサート部品加熱工程について、図5から図8を参照しながら説明する。図5は、本発明の合成樹脂容器の製造に用いられるインサート部品を示す図であって、(a)は、口金部品の斜視図、(b)は、取手部品の斜視図、(c)は、補助取手部品の斜視図である。図6は、本発明の合成樹脂容器の製造に用いられる第一部品保持具を示す図であって、(a)は第一部品保持具の斜視図、(b)は、(a)の底面図である。図7は、図1Bに示す本発明の合成樹脂容器の製造に用いられる第一部品保持具の一例を示す図であって、(a)は第一部品保持具の斜視図、(b)は、(a)の底面図である。図8は、本発明の合成樹脂容器の製造に用いられる第二部品保持具の斜視図である。
【0042】
インサート部品加熱工程は、予め成形したインサート部品を、インサート部品の融着温度で加熱する工程である。本実施形態のインサート部品には、合成樹脂容器10の口金2に相当する口金部品20と、合成樹脂容器10の取手3に相当する取手部品30と、合成樹脂容器10の補助取手4に相当する補助取手部品40が用いられ、いずれもポリエチレン製とする。
【0043】
口金部品20は、外周面に雄ネジ21が形成された円筒状の部材であり、その下端には、後述するパリソンPと融着するフランジ状の融着面24が設けられている(図5(a)参照)。
【0044】
取手部品30は、その側面に指が嵌まる把持用凹部31が形成されている(図5(b)参照)。取手部品30の長手方向の両端部には、把持部材32(図1A参照)を挿通する貫通孔33が形成されている。取手部品30の底面を後述するパリソンPと融着する融着面34とする。
【0045】
補助取手部品40は、略長方形状の平板の補助取手本体42と、補助取手本体42の両側に備えられ、補助取手本体42を合成樹脂容器10の底面に対して垂直に保持する保持部材43とから構成されている(図5(c)参照)。補助取手本体42には、長手方向に沿って指が嵌まる把持用凹部41が形成されている。保持部材43は、後述する第二部品保持具212の第二保持台222と嵌着するものである。そして、補助取手本体42の上面及び保持部材43の傾斜面を後述するパリソンPと融着する融着面44とする。
【0046】
これらインサート部品は、予め、パーティングラインが目立たない公知な樹脂成型方法によって個別に成形されている。これにより、インサート部品のうち、特に口金部品20は、パーティングラインが目立たず、その外周面に規定の形状の雄ネジ21を容易に形成することができる。
【0047】
各インサート部品を個別に成形した後に、各インサート部品を、部品保持具にそれぞれ取り付ける。部品保持具は、インサート部品を保持した状態で、インサート部品とともに後述する金型310、320内に収容されるものである。
【0048】
本実施形態の部品保持具には、合成樹脂容器10の天面に備えられるインサート部品(口金部品20及び取手部品30)を保持する第一部品保持具211と、合成樹脂容器10の底面に備えられるインサート部品(補助取手部品40)を保持する第二部品保持具212とが用いられる。なお、補助取手4を備えない合成樹脂容器10を製造する場合は、第一部品保持具211だけでもよい。
【0049】
ここで、第一部品保持具211及び第二部品保持具212の構成について説明する。
【0050】
第一部品保持具211は、インサート部品を保持する第一保持台221と、第一保持台221を支持する支持脚241と、支持脚241が載置され金型310、320に収容される第一金型取付台231から構成されている(図6(a)参照)。
【0051】
第一保持台221は、複数の取手部品30をそれぞれ保持する保持溝251が長手方向に沿って並んで形成されるとともに、口金部品20を保持する保持筒252が一端部に形成されている。保持筒252の高さは、後述する支持脚241の高さと同じ高さである。また、保持筒252の開口径は、口金部品20の外径と略同一である。
【0052】
支持脚241は、第一保持台221の四隅を支持し、第一金型取付台231から立設されるものである。支持脚241の高さは、第一保持台221の保持溝251に保持される取手部品30の高さよりも低く設計されている。
【0053】
第一金型取付台231は、前述した第一保持台221の面積よりも大きい面積とする略長方形状の平板であり、その長辺の両端部は、後述する一対の金型310、320の第一収容溝330にそれぞれ収容されるものである。第一金型取付台231において保持筒252が当接される位置には、後述する空気供給管22を取り付ける挿通孔260が形成されている(図6(b)参照)。
【0054】
なお、図1Bに示した合成樹脂容器10を製造する場合は、図7(a)及び図7(b)に示した第一保持台221を用いる。すなわち、保持筒252は、第一保持台221の中央に形成されており、保持溝251は、短手方向に沿って第一保持台221の両端に形成されている。
【0055】
また、第二部品保持具212は、第二保持台222と、第二金型取付台232から構成されている(図8参照)。
【0056】
第二金型取付台232は、略長方形状の平板であり、その短辺の両端部が後述する一対の金型310、320の第二収容溝340にそれぞれ収容されるものである。
【0057】
第二保持台222は、略直角三角柱状であり、補助取手本体42の長辺より短く設計されているため補助取手本体42を嵌着することができ、補助取手部品40を合成樹脂容器10の底面と垂直に保持するものである。
【0058】
上記説明した第一部品保持具211及び第二部品保持具212にインサート部品(口金部品20、取手部品30、補助取手部品40)を取り付ける。
【0059】
第一部品保持具211においては、口金部品20を口金部品20の上面側から第一保持台221の保持筒252に挿入するとともに、複数の取手部品30を取手部品30の上面側から第一保持台221の保持溝251にそれぞれ挿入する。第一保持台221の支持脚241の高さは、取手部品30の高さよりも低く設定されているため、取手部品30の融着面34を第一保持台221からはみ出して保持することができる。また、口金部品20のフランジ部分が第一保持台221と当接するため、口金部品20についても融着面24を第一保持台221からはみ出して保持することができる。
【0060】
第二部品保持具212においては、補助取手部品40を第二保持台222に嵌着する。これにより、補助取手本体42を合成樹脂容器10の底面と垂直となるように補助取手部品40を保持することができる。
【0061】
各インサート部品を、第一部品保持具211及び第二部品保持具212にそれぞれ取り付けた後に、各インサート部品の融着面24、34、44をホットプレート上に載置して加熱する。本実施形態のインサート部品はポリエチレン製であるため、加熱温度を160℃〜180℃とし、各インサート部品の融着面24、34、44を3mm〜4mm程度溶かす。これにより、後述する容器成形工程において、パリソンPと融着面24、34、44とを当接させると、パリソンPと融着面24、34、44とを融着させることができる。
【0062】
・インサート部品配置工程の説明
次にインサート部品配置工程について、図9から図10Cを参照しながら説明する。図9は、本発明の合成樹脂容器の製造に用いられる金型の斜視図、図10Aは、本発明の合成樹脂容器のインサート部品配置工程を示す模式図、図10Bは、本発明の合成樹脂容器のインサート部品配置工程において、口金部品に空気供給管を差し込む工程を説明する説明図、図10Cは、本発明の合成樹脂容器の製造工程において、金型の側面から見たインサート部品配置工程を示す模式図である。
【0063】
インサート部品配置工程は、インサート部品加熱工程後に行われ、パリソンPの供給方向と平行にインサート部品(口金部品20、取手部品30、補助取手部品40)を金型310、320内に配置する工程である。
【0064】
まず、インサート部品加熱工程を行った第一部品保持具211及び第二部品保持具212をパリソンPの供給方向と平行に金型310、320内に収納する。
【0065】
パリソンPを供給するパリソン供給装置(不図示)は、金型310、320の上方に配置されており、パリソンPはパリソン供給装置から垂直方向に垂下可能とされている。
【0066】
金型310、320は、一対の対向した分割型からなり、パリソン供給装置を基準にして型開き、型締め自在とされている(図9参照)。金型310、320内部には、合成樹脂容器10の形状に合ったキャビティを備えている。また、パリソンPの供給方向と平行であって、金型310、320同士が型合わされる型合わせ面の一方には、第一部品保持具211を収容する第一収容溝330が形成されている。第一収容溝330の長さは、前述した第一金型取付台231の長辺の長さに設計されている。さらに、第一部品保持具211が収容される面と対向する面であって、口金部品20の配置位置と対向位置には、第二部品保持具212を収容する第二収容溝340が形成されており、第二収容溝340の長さは、前述した第二金型取付台232の短辺の長さに設計されている。
【0067】
上記説明した金型310、320において、第一収容溝330には第一部品保持具211を、第二収容溝340には第二部品保持具212を取り付けた後に、口金部品20の開口に、密着部材23及び空気供給管22を嵌挿する(図10A及び図10B参照)。
【0068】
密着部材23は、後述するパリソンPをブローして膨らませる際に、口金部品20の開口内にパリソンPが侵入することを防止するものである。そのため、密着部材23の外径は、口金部品20の開口径と同一とされており、密着部材23は、口金部品20の開口内に密着されている。密着部材23の中心には、密着部材23の口径よりも口径が小さい空気供給管22が差し込まれて固定されている。
【0069】
空気供給管22は、外部からパリソンPに空気を供給するものである。空気供給管22の先端は、パリソンPを突き破ることができる程度に先鋭化されている。
【0070】
このように、口金部品20の開口には密着部材23が嵌挿されているので、密着部材23に差し込まれた空気供給管22を第一部品保持具211を基準に摺動させると、密着部材23と密着された口金部品20が金型310、320内で摺動する(図10C参照)。
【0071】
・容器成形工程の説明
次に容器成形工程について、図11Aから図15を参照しながら説明する。図11Aから図15は、本発明の合成樹脂容器の製造方法において、容器成形工程を示す模式図である。
【0072】
容器成形工程は、前述したインサート部品配置工程後に行われ、金型310、320内にパリソンPを供給して金型310、320を型締めした後に、パリソンPをブローしてパリソンPとインサート部品とを融着させる工程である。
【0073】
以下、容器成形工程を詳細に説明する。
【0074】
まず、型開きされた金型310、320の上方からパリソン供給装置によってパリソンPを垂下させてパリソンPを金型310、320のキャビティ内に供給する(図11A及び図11B参照)。このとき、空気供給管22を摺動させて、予め、口金部品20をパリソンPに近づけておく。つまり、口金部品20を第一部品保持具211から離れる方向に移動させる。なお、予め、取手部品30をパリソンPに近づけておいてもよい(つまり、取手部品30を第一部品保持具211から離すように移動させてもよい)。
【0075】
次に、一対の金型310、320でパリソンPを挟みこんで型締めする。これとともに、空気供給管22をさらに摺動させ、空気供給管22の先端でパリソンPを突き破る(図12A及び図12B参照)。これにより、口金部品20及び密着部材23がパリソンPに当接する。
【0076】
次に、空気供給管22からパリソンP内に圧縮空気を供給する(図13A及び図13B参照)。このとき、密着部材23がパリソンPと密着しているため、パリソンP内に供給された空気が外部に漏れることなく、パリソンPを膨らますことができる。パリソンPは、口金部品20及び取手部品30が配置された側から先に膨らんでいく。パリソンPが膨らむことで、パリソンPと当接された口金部品20が第一部品保持具211に近づく方向に押し戻される一方で、パリソンPは、第一部品保持具211からはみ出して保持された取手部品30と当接する。
【0077】
口金部品20及び取手部品30が配置された側のパリソンPが膨らんだ後に、補助取手が配置された側のパリソンPが膨らんでいき、第二部品保持具212に保持された補助取手部品40とパリソンPが当接する。取手部品30、補助取手部品40、口金部品20はそれぞれ、インサート部品加熱工程によって融着面24、34、44がそれぞれ融解されているため、取手部品30、補助取手部品40、口金部品20がパリソンPと融着して一体化される。これとともに、パリソンPは金型310、320内のキャビティ形状に沿った形状に成形される(図14A及び図14B参照)。
【0078】
パリソンPを十分固化した後に、金型310、320を型開きし(図15参照)、金型310、320から成形品を離形する。その後、成形品から第一部品保持具211及び第二部品保持具212を取り外す。その後、取手3同士を接続する把持部材32を各取手3の貫通孔33に挿入して、把持部材32と取手3を融着する。これにより、天面に複数の取手3を備えた合成樹脂容器10を製造することができる。
【0079】
・本実施形態に係る合成樹脂容器の製造方法の効果
以上説明したとおり、本実施形態では、インサート部品として、予め、少なくとも取手部品30を成形したものを金型310、320内に配置し、金型310、320内でブローされたパリソンPとインサート部品を融着させて成形するため、取手3の数が多い複雑な構造の合成樹脂容器10であっても製造することができる。また、インサート部品として口金部品20を予め成形するため、従来技術と異なり口金2のパーティングラインが目立たない合成樹脂容器10を製造することができる。
【0080】
また、パリソンPのブロー前に、予め、口金部品20をパリソンPに当接させるため、パリソンPと口金部品20との融着不良が起きることがなく、確実に融着させることができる。
【0081】
なお、本実施形態に係る合成樹脂容器10の製造方法において、インサート部品を保持する第一部品保持具211及び第二部品保持具212を複数セット準備することにより、前述したインサート部品加熱工程、インサート部品配置工程、容器成形工程を一連に行うことができる。すわなち、少なくとも2セットの第一部品保持具211及び第二部品保持具212を準備することにより、1セット目の第一部品保持具211及び第二部品保持具212を金型310、320に配置してブロー成形を行っている間に、2セット目の第一部品保持具211及び第二部品保持具212に対してインサート部品加熱工程を行うことができるので、効率よく合成樹脂容器10を製造することができる。
【0082】
なお、上記に示した本発明の実施形態はいずれも本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、天面に複数の取手を有する合成樹脂容器の製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
10 合成樹脂容器
2 口金
20 口金部品
3 取手
30 取手部品
4 補助取手
40 補助取手部品
30、41 把持用凹部
24、34、44 融着面
310、320 金型
P パリソン
【要約】
天面に複数の取手を有する合成樹脂容器及びその製造方法を提供する。口金及び複数の取手をそれぞれインサート部品として予め成形するとともにその融着部を加熱しておいてから、インサート部品をパリソンの供給方向と平行に配置し、その後、金型内にパリソンを供給して金型を型締めし、口金を介してパリソンをブローしてパリソンとインサート部品とを融着させる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15