【文献】
ATOGUCHI T, et al.,Phenol oxidation over titanosilicalite-1: experimental and DFT study of solvent,J Mol Catal A Chem,2001年11月20日,Vol.176, No.1/2,Page.173-178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チタノシリケート、3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールおよび反応液の総質量の5〜90質量%の水及び/またはメタノールの存在下、フェノール類を過酸化水素と反応させることを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。
3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールの使用量が、反応液の総質量に対して1〜90質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。
3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールが、t-ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−メチル−2−ブタノールまたは3−メチル−2−ブタノールである請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。
請求項6〜9のいずれかに記載の触媒を分離した後の反応液から、3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールと、水及び/またはメタノールを同時に蒸留により分離し、その一部または全部を反応に再使用することを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。
請求項10に記載の蒸留工程で分離した3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールと、水及び/またはメタノールに、触媒分離工程で分離した触媒、または触媒分離工程で分離した後に乾燥処理した触媒を分散し、反応器に供給することを特徴とする芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いるフェノール類とは、無置換のフェノール及び置換フェノールを意味する。ここで置換フェノールとは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の炭素数1から6の直鎖または分枝アルキル基あるいはシクロアルキル基で置換されたアルキルフェノールが挙げられる。
【0011】
フェノール類としては、フェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−エチルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−ブチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノールが例示されるが特に、フェノールが好ましい。尚、フェノール類の2位と6位の両方に置換値を有している場合には、生成物はハイドロキノン誘導体のみとなる。
【0012】
反応生成物である芳香族ジヒドロキシ化合物の具体的なものとしては、ハイドロキノン類(置換又は無置換のハイドロキノン)、カテコール類(置換又は無置換のカテコール)が挙げられ、より具体的には、ハイドロキノン、カテコール、2−メチルハイドロキノン、3−メチルカテコール、4−メチルカテコール、3−メチルハイドロキノン、1,4−ジメチルハイドロキノン、1,4−ジメチルカテコール、3,5−ジメチルカテコール、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,3−ジメチルカテコールなどを挙げることができる。
【0013】
本発明を実施するに際して、その方法はバッチ式、セミバッチ式、または連続流通式のいずれの方法においても実施することが可能である。触媒の充填方式としては、固定床、流動床、懸濁床、棚段固定床等種々の方式が採用され、いずれの方式で実施しても差し支えない。
【0014】
本発明において反応液の総質量とは反応系内の液状成分の総質量である。即ちチタノシリケート等の固体成分の質量を含まない。
反応系内の液状成分としては、フェノール類、過酸化水素、3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコール、水及び/またはメタノール、芳香族ジヒドロキシ化合物、反応副生物などが含まれる。必要に応じて他の溶媒等を本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。反応の進行に伴い、反応生成物の量が増えるが、反応中の反応液の総質量は実質的に一定である。
【0015】
本発明で触媒として用いるチタノシリケートの組成は(SiO
2)
x・(TiO
2)
(1-x)で示される構造のものを指す。この場合x/(1-x)の値の範囲は、5〜1000、好ましくは10〜500のものが用いられる。チタノシリケートは公知の方法により製造することができる。たとえば、US 4,410,501号公報、Catalysis Today 147 (2009) 186-195に記載されているようにケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドを4級アンモニウム塩などの存在下、水熱合成する方法が一般的である。用いる4級アンモニウム塩がテトラプロピルアンモニウム塩の場合、得られるチタノシリケートがMFI構造となり、好適に使用される。またMFI型チタノシリケートは、(SiO
2)
x・(TiO
2)
(1-x)が所定の範囲のものであれば、市販されているものを用いても差し支えない。
また、チタノシリケート触媒はそのまま使用しても良いが、触媒の充填方式に合わせて成型して使用しても良い。触媒の成型方法としては、押し出し成型、打錠成型、転動造粒、噴霧造粒などが一般的である。固定床の方式で触媒を使用する場合は押し出し成型や打錠成型が好ましい。懸濁床の方式の場合は噴霧造粒が好ましく、例えば、US4,701,428号公報に記載されているようにあらかじめ調製したチタノシリケート懸濁液とシリカ原料を混合し、スプレードライヤーを用いて噴霧造粒を行う方法が一般的である。ケイ素原料としては、ケイ素のアルコキシドやコロイダルシリカ、水中溶存シリカ、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)、ケイ酸カリウムなどを用いることができるが、ケイ素以外の金属不純物を含むと触媒性能に悪影響を及ぼすため、不純物の少ないケイ素のアルコキシドやコロイダルシリカ、水中溶存シリカが好ましい。また、噴霧造粒後に乾燥や焼成を行ってもよい。噴霧造粒した成型触媒の平均粒径は、好ましくは0.1μm〜1000μm、より好ましくは5μm〜100μmの範囲である。0.1μm以上であると触媒のろ過などのハンドリングがしやすいため好ましく、1000μm以下であると触媒の性能が良く強度が高いため好ましい。
【0016】
チタノシリケート触媒の使用量は反応液の総質量に対して、外率で好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.4〜20質量%の範囲である。0.1質量%以上であると、反応が短時間で完結し、生産性が向上するため好ましい。30質量%以下であると、触媒の分離回収量が少ない点で好ましい。
【0017】
過酸化水素は、フェノール類に対して、モル比で0.01以上1以下にすることが好ましい。また、用いる過酸化水素の濃度は特に限定しないが、通常の30%濃度の水溶液を用いても良いし、さらに高濃度の過酸化水素水をそのまま、あるいは反応系において不活性な溶媒で希釈して用いても良い。希釈に用いる溶媒としては、アルコール類、水などが挙げられる。過酸化水素は一度に加えても良いし、時間をかけて徐々に加えても良い。
【0018】
本反応で用いる3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールとしては、t-ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノールなどを挙げることができる。その中でも、特にt-ブチルアルコール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−メチル−2−ブタノールが好ましい。このようなアルコール類を含むと、ハイドロキノン類の選択率を高くすることができる。
なお、チタノシリケートのTiにメタノールなどのアルコールが配位し、過酸化水素による酸化反応を促進することが知られている。t-ブチルアルコールのように3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールは、適度に嵩高い構造を有しTiに配位すると、Ti周りの立体障害によりフェノール類のパラ位が選択的に酸化されると推定している。しかし、さらに嵩高いアルコールの場合、チタノシリケートの細孔内に入らないか、またはTiに配位しにくくなることにより選択性の向上が見られないと推定している。
【0019】
この3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールの使用量としては、反応液の総質量に対して好ましくは1〜90質量%の範囲、より好ましくは3〜50質量%の範囲が特に好ましい。
【0020】
1質量%以上の場合はハイドロキノン類の選択率が高い点で好ましく、90質量%以下の場合は反応速度が速く、溶媒の回収量が少なくなる点で好ましい。
本発明において水及び/又はメタノールとしては、水を用いてもメタノールを用いてもよく、また水とメタノールを任意の比率で併用してもよい。
プロトン性の溶媒が存在すると、酸化活性種を安定化したり、プロトン移動を促進したりすることが知られている。本反応においても、水またはメタノールを用いることで、これらのプロトン性の小分子が酸化活性種を安定化しているか、またはプロトン移動を促進することにより、反応を促進していると推定している。
【0021】
水は過酸化水素水に含まれる水でも良い。水及び/またはメタノールは、反応液の総質量に対して5〜90質量%の範囲が好ましく、8〜90質量%の範囲がより好ましく、8〜85質量%の範囲がさらに好ましい。
芳香族ジヒドロキシ化合物の収率が高く、かつハイドロキノン類の選択率を高めることができることから、水及び/またはメタノールの下限は、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、9質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0022】
上限が90質量%以下であるとハイドロキノン類の選択性が高く、反応速度が速く、かつ溶媒の回収量が少なくてすむ。
なお、反応液中に含まれる、反応原料(フェノール類、過酸化水素)は10〜94質量%、好ましくは13〜80質量%の範囲で含まれていることが好ましい。この範囲にあれば、本発明の製造方法で、効率的に、所望の芳香族ジヒドロキシ化合物を製造できる。
【0023】
3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールと、水・メタノールの使用量比(質量比)は、(3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコール:水・メタノール)で1:99〜90:10、好ましくは3:97〜80:20の範囲にあることが好ましい。
この比率であれば、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率が大きく、かつハイドロキノン類の選択率が高くなる。
【0024】
反応温度は、好ましくは30℃〜130℃の範囲、より好ましくは40℃〜100℃の範囲である。この範囲以外の温度でも反応は進行するが、生産性の向上の観点から上記範囲が好ましい。反応圧力は特に制限されない。
【0025】
また本反応は、回分式で行っても良く、半回分式で行ってもよく、連続的に反応を行っても良い。連続的に行う場合は、懸濁式の均一混合槽で行なっても良く、固定床流通式のプラグフロー形式で行っても良い。また複数の反応器を直列及び/または並列に接続しても良い。反応器数は1〜4器とするのが機器費の観点から好ましい。また複数の反応器を使用する場合は、それらに過酸化水素を分割して加えても良い。
本反応を懸濁床で行う場合、反応液から触媒を分離する工程を含むことが好ましい。触媒の分離には、沈降分離、遠心ろ過器、加圧ろ過器、フィルタープレス、リーフフィルター、ロータリーフィルターなどが用いられる。ロータリーフィルターなどの連続的なろ過器の場合、触媒を含む反応液から液相部を抜き出した後の濃縮された触媒懸濁液を再度反応に使用できる。連続的に反応を行う場合、連続的に液相部が抜き出される。また、触媒を懸濁液ではなくケーキまたは粉体として取り出す場合、そのまま再度反応に使用しても良いし、乾燥処理(再生処理ともいう)をしてから再度反応に使用しても良い。乾燥処理には、箱型乾燥機、バンド乾燥機、回転乾燥機、噴霧乾燥器、気流乾燥機などが用いられる。乾燥処理は、窒素などの不活性ガス雰囲気下、空気雰囲気下、不活性ガスで希釈した空気雰囲気下、水蒸気雰囲気下、不活性ガスで希釈した水蒸気雰囲気下などで行うことができる。乾燥の温度としては60〜800℃が好ましく、80〜600℃が特に好ましい。この温度であれば、触媒の性能を著しく損なうことなく付着した有機物を減少させることができる。また、異なる複数の温度域を組み合わせて処理を行うこともできる。
【0026】
また、上記反応液からジヒドロキシ化合物を得るため、反応液または触媒を分離した後のジヒドロキシ化合物を含む分離液に対し、未反応成分や副生成物を除去するなどの精製処理を行っても良い。該精製処理は、触媒を分離した後のジヒドロキシ化合物を含む分離液に対してより好適に用いることができる。精製処理の方法については特に制限は無く、具体的には油水分離、抽出、蒸留、晶析、およびこれらの組み合わせ等の方法が挙げられる。精製処理の方法、手順等は特に限定しないが、例えば以下のような方法により、反応液および触媒を分離した後のジヒドロキシ化合物を含む分離液の精製が可能である。
反応液が油相と水相の2相に分離する場合、油水分離が可能である。油水分離により、ジヒドロキシ化合物含有量が低い水相を除去して、油相を回収する。この場合、分離した水相は抽出や蒸留により、ジヒドロキシ化合物を回収しても良いし、一部または全部を再度反応に用いても良い。また分離した水相に前記触媒分離工程で分離した触媒や乾燥処理をした触媒を分散し、反応器に供給することもできる。一方、油相はさらに抽出、蒸留および晶析等により精製処理を行うことが望ましい。
【0027】
抽出には、1−ブタノール、トルエン、イソプロピルエーテル、メチルイソブチルケトンなどの溶媒が使用される。抽出と油水分離とを組み合わせると、前記油水分離を効率よく実施することが可能となる。抽出溶媒は蒸留塔により分離回収しリサイクルして使用することが好ましい。
蒸留は、触媒分離直後の反応液に対して実施しても良いし、前記油水分離後の油相および水相に実施しても良い。さらに抽出液を蒸留してもよい。
触媒分離直後の反応液を蒸留する場合、まず水やアルコール類などの軽沸成分を分離するのが好ましい。水とアルコール類は別々の蒸留塔で分離しても良いし、1つの蒸留塔で分離しても良い。本発明では、水、メタノールおよび3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールを同時に蒸留により分離することが望ましい。
分離した水やメタノールおよび3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコール類は、一部または全部を再度反応に用いても良い。また分離した水やメタノールおよび3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコール類に前記触媒分離工程で分離した触媒や乾燥処理をした触媒を分散し、反応器に供給することもできる。
【0028】
前記した油水分離、抽出、蒸留等操作により、水やアルコール類を分離した後、次の蒸留操作でフェノール類を回収し、再度反応に用いても良い。回収したフェノール類に分離しきれなかった水が含まれる場合は、イソプロピルエーテルまたはトルエンを加え共沸蒸留により除去することができる。この共沸蒸留は、フェノール類回収前の水やアルコール類分離後の液に対して行うこともできる。分離した水は、再度反応に用いても良いし、廃水としても良い。回収したフェノール類に水以外の反応副生物などの不純物が含まれる場合は、さらに蒸留操作で分離することもできる。不純物が反応副生物のベンゾキノン類の場合、フェノール類と共に再度反応器に供給することができる。
フェノール類分離の後、芳香族ジヒドロキシ化合物よりも高沸の成分を蒸留によって除去し、次の蒸留操作によってハイドロキノン類とカテコール類を分離できる。また高沸成分とハイドロキノン類とカテコール類は、ハイドロキノン類を蒸留塔の中段から抜き出すことにより1つの蒸留操作で分離することもできる。
得られたハイドロキノン類とカテコール類は、必要に応じて、蒸留や晶析により不純物を除去し純度を高めることができる。
【0029】
こうして得られたハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物は種々の有機合成中間体または原料物質として有用であり、還元剤、ゴム薬、染料、医薬、農薬、重合禁止剤、酸化抑制剤などの分野に利用される。
【0030】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
芳香族ジヒドロキシ化合物の収率(%)=
〔(生成したハイドロキノンのモル数)+(生成したカテコールのモル数)〕÷(加えた過酸化水素のモル数)×100
ハイドロキノン/カテコール比=
(生成したハイドロキノンのモル数)÷(生成したカテコールのモル数)×100
溶媒酸化物の収率(%)=
(生成した溶媒酸化物のモル数)÷(加えた過酸化水素のモル数)×100
反応液中の水ないしメタノールの質量分率(%)=
〔(加えた水ないしメタノールの質量)+(加えた過酸化水素水に含まれる水の質量)〕÷(反応液の総質量)×100
【0031】
(実施例1)
冷却器、温度計、フィードポンプ、及びマグネチックスターラーチップを備えた内容積50mlのフラスコにCatalysis Today 147 (2009) 186-195 に記載の方法で調製したチタノシリケート(TS−1)触媒0.65g、フェノール6.2g、t-ブチルアルコール4mL、及び水6mLを仕込み、スターラーで攪拌しながら油浴中で50℃に加熱した。ここに、34%過酸化水素水0.46gをフィードポンプから10分間かけて滴下し、そのまま190分間保持した。反応液を冷却後、触媒を濾別し、反応液の一部を取り、残存過酸化水素をヨードメトリーで、生成物をガスクロマトグラフィーで定量した。
その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は57%、ハイドロキノン/カテコール比は4.1、溶媒酸化物の収率は1%以下となった。
【0032】
[ガスクロマトフラフィーの分析条件]
検出器;水素炎イオン化検出器(FID)
カラム;DB-5(Agilent J&W)、内径0.25mm、長さ60m、膜厚0.25μm
カラム温度;80℃10分保持、昇温速度4℃/分、280℃まで昇温
注入口温度;280℃
検出器温度;280℃
キャリアーガス;ヘリウム
流速;80ml/min.
【0033】
(実施例2)
t-ブチルアルコールの代わりに2,2−ジメチル−1−プロパノール3.2gを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は37%、ハイドロキノン/カテコール比は4.8、溶媒酸化物の収率は1%以下となった。
【0034】
(実施例3)
t-ブチルアルコールの代わりに2−メチル−2−ブタノール4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は48%、ハイドロキノン/カテコール比は4.5、溶媒酸化物の収率は1%以下となった。
【0035】
(比較例1)
t-ブチルアルコールの代わりに1,4−ジオキサン4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は38%、ハイドロキノン/カテコール比は5.1、溶媒酸化物の収率は24%となった。
【0036】
(比較例2)
t-ブチルアルコール4mL、水6mLの代わりに水10mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は63%、ハイドロキノン/カテコール比は0.9となった。
【0037】
(比較例3)
t-ブチルアルコールの代わりにメタノール4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は49%、ハイドロキノン/カテコール比は1.2となった。
【0038】
(比較例4)
t-ブチルアルコールの代わりに1−ブタノール4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は17%、ハイドロキノン/カテコール比は0.7となった。
【0039】
(比較例5)
t-ブチルアルコールの代わりに1−ヘキサノール4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は1.6%、ハイドロキノン/カテコール比は0となった。
【0040】
(比較例6)
t-ブチルアルコールの代わりに2−プロパノール4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は24%、ハイドロキノン/カテコール比は1.2となった。
【0041】
(比較例7)
t-ブチルアルコールの代わりに2−ブタノール4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は18%、ハイドロキノン/カテコール比は1.5となった。
【0042】
(比較例8)
t-ブチルアルコールの代わりに3−メチル−3−ペンタノール4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は13%、ハイドロキノン/カテコール比は1.7となった。
【0043】
(比較例9)
t-ブチルアルコールの代わりに3−エチル−3−ペンタノール4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は61%、ハイドロキノン/カテコール比は1.3となった。
【0044】
(比較例10)
t-ブチルアルコールの代わりにシクロヘキサノール4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は15%、ハイドロキノン/カテコール比は1.5となった。
【0045】
(比較例11)
t-ブチルアルコールの代わりに1−メチルシクロヘキサノール3.7gを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は32%、ハイドロキノン/カテコール比は2.0となった。
【0046】
(比較例12)
t-ブチルアルコールの代わりにシクロヘキサンメタノール4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は5.9%、ハイドロキノン/カテコール比は0.5となった。
【0047】
(比較例13)
t-ブチルアルコールの代わりにピバロニトリル4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は2.8%、ハイドロキノン/カテコール比は0となった。
【0048】
(比較例14)
t-ブチルアルコールの代わりにシクロヘキサン4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は44%、ハイドロキノン/カテコール比は0.6となった。
【0049】
(比較例15)
t-ブチルアルコールの代わりにベンゼン4mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は63%、ハイドロキノン/カテコール比は0.8となった。
【0051】
(実施例4)
水の代わりにメタノール6mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は37%、ハイドロキノン/カテコール比は3.5となった。
【0052】
(比較例16)
水の代わりにエタノール6mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は5.5%、ハイドロキノン/カテコール比は3.1となった。
【0053】
(比較例17)
水の代わりにアセトニトリル6mLを使用した以外は実施例1と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は11%、ハイドロキノン/カテコール比は0.5となった。
【0055】
(実施例5)
冷却器、温度計、及びマグネチックスターラーチップを備えた内容積50mlのフラスコにCatalysis Today 147 (2009) 186-195 に記載の方法で調製したチタノシリケート(TS−1)触媒0.2g、フェノール6.2g、t-ブチルアルコール2mL、及び水0.5mLを仕込み、スターラーで攪拌しながら油浴中で70℃に加熱した。ここに、34%過酸化水素水0.45gを加え、そのまま200分間保持した。反応液を冷却後、触媒を濾別し、反応液の一部を取り、残存過酸化水素をヨードメトリーで、生成物をGCで定量した。
その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は41%、ハイドロキノン/カテコール比は1.9となった。
(実施例5A)
水の量を0.39mLとした以外は実施例5と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は43%、ハイドロキノン/カテコール比は1.6となった。
【0056】
(実施例6)
水の量を1mLとした以外は実施例5と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は43%、ハイドロキノン/カテコール比は2.5となった。
【0057】
(実施例7)
水の量を3mLとした以外は実施例5と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は53%、ハイドロキノン/カテコール比は3.1となった。
【0058】
(実施例8)
水の量を10mLとした以外は実施例5と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は56%、ハイドロキノン/カテコール比は3.3となった。
【0059】
(実施例9)
水の量を40mLとした以外は実施例5と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は52%、ハイドロキノン/カテコール比は3.4となった。
【0060】
(比較例18)
水を使用しなかった以外は実施例5と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は39%、ハイドロキノン/カテコール比は1.4となった。
【0062】
(実施例10)
冷却器、温度計、触媒スラリーフィードライン、フェノール/溶媒フィードライン、過酸化水素水フィードライン、及び撹拌翼を備えた内容積500mlの温水ジャケット付きのセパラブルフラスコにCatalysis Today 147 (2009) 186-195 に記載の方法で調製したチタノシリケート(TS−1)触媒2.65g、フェノール55.66g、t-ブチルアルコール39.75g、及び水82.16gを仕込み、撹拌翼で攪拌しながら温水ジャケットにて反応液の内温が70℃なるまで加熱した。尚、このセパラブルフラスコは内容積230mlの高さに側管を設置しており、反応液量が230ml以上になるとオーバーフローによって反応液はセパラブルフラスコ外に除去される。ここに、4.0質量%のチタノシリケート(TS−1)触媒スラリーを2.98g/分で、7.8質量%の過酸化水素水を0.71g/分で、フェノールの濃度が58.3質量%となるようなフェノールとt-ブチルアルコールの混合溶液を3.98g/分で連続フィードし始め、滞留時間が30分の条件で連続酸化反応を開始した。反応液のオーバーフローが確認されてから90分後のオーバーフロー液を採取し、冷却後、触媒を濾別し、反応液の一部を取り、残存過酸化水素をヨードメトリーで、生成物をガスクロマトグラフィーで定量した。
その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は70.1%、ハイドロキノン/カテコール比は4.8、溶媒酸化物の収率は1%以下となった。
【0063】
(実施例11)
冷却器、温度計、撹拌羽根及びメカニカルスターラーを備えた内容積300mlのフラスコにCatalysis Today 147 (2009) 186-195 に記載の方法で調製したチタノシリケート(TS−1)触媒10g、フェノール52.5g、t-ブチルアルコール50mL、及び水75mLを仕込み、スターラーで攪拌しながら油浴中で70℃に加熱した。ここに、34%過酸化水素水27.9gをフィードポンプから120分間かけて滴下し、そのまま60分間保持した。反応液を冷却後、触媒を濾別し、反応液の一部を取り、残存過酸化水素をヨードメトリーで、生成物をGCで定量した。
その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は59%、ハイドロキノン/カテコール比は4.9となった。
【0064】
(実施例12)
冷却器、温度計、及びマグネチックスターラーチップを備えた内容積50mlのフラスコに実施例11で濾別した触媒をチタノシリケート(TS−1)触媒含有量が0.8gとなるように仕込み、フェノール4.2g、t-ブチルアルコール4mL、及び水6mLを仕込み、スターラーで攪拌しながら油浴中で70℃に加熱した。ここに、34%過酸化水素水2.2gをフィードポンプから120分間かけて滴下し、そのまま60分間保持した。反応液を冷却後、触媒を濾別し、反応液の一部を取り、残存過酸化水素をヨードメトリーで、生成物をGCで定量した。
その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は12%、ハイドロキノン/カテコール比は2.0となった。
【0065】
(実施例13)
実施例11で濾別した触媒を空気雰囲気下200℃で5時間乾燥した以外は実施例12と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は46%、ハイドロキノン/カテコール比は3.6となった。
【0066】
(実施例14)
実施例11で濾別した触媒を空気雰囲気下400℃で5時間乾燥した以外は実施例12と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は64%、ハイドロキノン/カテコール比は4.8となった。
【0067】
(実施例15)
実施例11で濾別した触媒を空気雰囲気下500℃で5時間乾燥した以外は実施例12と同様に実施した。その結果、芳香族ジヒドロキシ化合物類の収率は57%、ハイドロキノン/カテコール比は4.2となった。
[課題] フェノール類を過酸化水素と反応する際に、溶媒由来の副生成物を抑制しつつ、過酸化水素基準の収率を高く維持したまま、ハイドロキノン類を高選択的に製造する芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法を提供する。
[解決手段] チタノシリケート、3級または4級炭素を有する炭素数4〜5のアルコールおよび反応液の総質量の5〜90質量%の水及び/またはメタノールの存在下、フェノール類を過酸化水素と反応させる芳香族ジヒドロキシ化合物の製造方法。