特許第5734583号(P5734583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734583
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20150528BHJP
   F16H 61/18 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B60K20/02 E
   B60K20/02 D
   F16H61/18
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-138572(P2010-138572)
(22)【出願日】2010年6月17日
(65)【公開番号】特開2012-1121(P2012-1121A)
(43)【公開日】2012年1月5日
【審査請求日】2012年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大典
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−347308(JP,A)
【文献】 特許第4217393(JP,B2)
【文献】 特開平10−220576(JP,A)
【文献】 特開平10−26221(JP,A)
【文献】 特開2008−30539(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2561796(JP,Y2)
【文献】 特開2006−69368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
F16H 61/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員によって所定位置から車両が走行されるシフト位置に操作されることで車両のシフト位置が変更可能にされると共に、所定位置に配置される際に常に車両のシフト位置が車両が走行されない位置にされるシフト部材と、
前記シフト部材をシフト位置に保持する保持手段と、
前記シフト部材をシフト位置から所定位置に付勢力によって復帰させる復帰手段と、
前記保持手段を制御可能にされ、前記シフト部材のシフト位置が適正であると判定した場合には前記保持手段が前記シフト部材をシフト位置に保持すると共に、前記シフト部材のシフト位置が適正でないと判定した場合には前記保持手段が前記シフト部材を保持しないことで前記復帰手段が前記シフト部材を所定位置に復帰させる制御手段と、
を備えたシフト装置。
【請求項2】
前記保持手段は、前記シフト部材をシフト位置に保持して操作不能にする位置と前記シフト部材をシフト位置に保持しない位置との間で移動可能にされる請求項1記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のシフト位置を変更するシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1のシフト装置では、シフトノブが操作された際に、車両の走行状態とトランスミッションの駆動状態とシフトノブのシフト位置とに応じて、制御部が適切なシフトパターンテーブルを選択する。制御部は、選択されたシフトパターンテーブルに基づいて、シフトノブのシフト位置が適正であるか否かを判定する。
【0003】
シフトノブのシフト位置が適正であると制御部が判定した場合には、シフトノブは当該シフト位置に保持される。このため、乗員が、シフトノブのシフト位置が適正であることを直感的に認識できる。
【0004】
一方、シフトノブのシフト位置が適正でないと制御部が判定した場合には、シフトパターンテーブルに基づいて、シフトノブが適正なシフト位置へ誘導されると共に、トランスミッションが適正なシフト位置にされる。このため、シフトノブのシフト位置とトランスミッションのシフト位置との不一致が生じない。
【0005】
しかしながら、上記の各シフトパターンテーブルでは、シフトノブを誘導する適正なシフト位置が異なる。したがって、シフトノブを任意のシフト位置に誘導する機構が必要となり、シフト装置のコストが高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4217393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、コストが高くなることを抑制しつつ、シフト部材のシフト位置が適正か否かを直感的に認識できると共に、シフト部材のシフト位置と車両のシフト位置との不一致を回避できるシフト装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のシフト装置は、乗員によって所定位置から車両が走行されるシフト位置に操作されることで車両のシフト位置が変更可能にされると共に、所定位置に配置される際に常に車両のシフト位置が車両が走行されない位置にされるシフト部材と、前記シフト部材をシフト位置に保持する保持手段と、前記シフト部材をシフト位置から所定位置に付勢力によって復帰させる復帰手段と、前記保持手段を制御可能にされ、前記シフト部材のシフト位置が適正であると判定した場合には前記保持手段が前記シフト部材をシフト位置に保持すると共に、前記シフト部材のシフト位置が適正でないと判定した場合には前記保持手段が前記シフト部材を保持しないことで前記復帰手段が前記シフト部材を所定位置に復帰させる制御手段と、を備えている。
【0009】
請求項2に記載のシフト装置は、請求項1に記載のシフト装置において、前記保持手段は、前記シフト部材をシフト位置に保持して操作不能にする位置と前記シフト部材をシフト位置に保持しない位置との間で移動可能にされる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載のシフト装置では、シフト部材が所定位置からシフト位置に操作されることで、車両のシフト位置が変更可能にされる。また、制御手段が保持手段を制御可能にされている。
【0012】
シフト部材のシフト位置が適正であると制御手段が判定した場合には、保持手段がシフト部材をシフト位置に保持する。このため、シフト部材のシフト位置が適正であることを直感的に認識できる。
【0013】
ここで、シフト部材のシフト位置が適正でないと制御手段が判定した場合には、復帰手段がシフト部材を所定位置に復帰させる。このため、車両のシフト位置が適正なシフト位置に自動的に変更される場合でも、シフト部材のシフト位置と車両のシフト位置との不一致を回避できる。
【0014】
さらに、このようにシフト部材のシフト位置が適正でないと制御手段が判定した場合には、シフト部材が所定位置に復帰されるため、シフト部材を任意のシフト位置に誘導する必要がない。したがって、シフト部材を任意のシフト位置に誘導する手段を備える必要がない。これにより、シフト装置のコストが高くなることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係るシフト装置の主要部を示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るシフト装置におけるシフトレバーの操作パターンを示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係るシフト装置のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、本発明の実施の形態に係る車両(自動車)のシフト装置10の主要部が分解斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両右方を矢印RHで示し、車両上方を矢印UPで示す。
【0019】
図1に示す如く、シフト装置10は、下側部分に、本体部としてのベース12を備えており、ベース12は車両の床にボルト等により締結固定されている。
【0020】
ベース12の中央部には、シフト部材としてのシフトレバー20が配置されており、シフトレバー20は、円筒状のレバーロッド22を備えている。レバーロッド22の長手方向中間部には、車両左右方向に沿って支持軸24が貫通されており、支持軸24はベース12に固定されている。レバーロッド22は支持軸24によって車両前後方向へ回動可能に支持されており、シフトレバー20はベース12に車両前後方向に操作可能に支持されている。
【0021】
レバーロッド22の長手方向中間部かつ支持軸24の車両上側には、ガイドプレート30が配置されており、ガイドプレート30には、車両前後方向を長手方向とする長尺状のガイド溝32が設けられている。ガイド溝32には、レバーロッド22が貫通されており、シフトレバー20はガイド溝32に沿って車両前後方向へ操作可能にされている。
【0022】
図2に示す如く、ガイド溝32の長手方向中間部は、所定位置としての「H」位置(ホーム位置)に設定されている。また、ガイド溝32の車両後側端はシフト位置としての「D」位置(ドライブ位置)に設定されており、ガイド溝32の車両前側端はシフト位置としての「R」位置(リバース位置)に設定されている。これにより、シフトレバー20がガイド溝32に沿って各シフト位置に操作されることで、シフトレバー20のシフト位置が変更される。
【0023】
図1及び図3に示す如く、ガイドプレート30の車両前側部には、矩形状のパーキングスイッチ34が設けられている。パーキングスイッチ34は、後述するシフトレバー制御部70及び車両制御部72を介して、車両の変速機74に電気的に接続されている。パーキングスイッチ34が乗員によって押圧操作されることで、パーキングスイッチ34が操作状態に維持可能にされて、変速機74(車両)のシフト位置が「P」位置(パーキング位置)に変更可能にされる。
【0024】
さらに、ガイドプレート30の車両右側部には、矩形状のニュートラルスイッチ36が設けられている。ニュートラルスイッチ36は、後述するシフトレバー制御部70及び車両制御部72を介して、変速機74に電気的に接続されている。ニュートラルスイッチ36が乗員によって押圧操作されることで、ニュートラルスイッチ36が操作状態に維持されて、変速機74(車両)のシフト位置が「N」位置(ニュートラル位置)に変更される。
【0025】
図1に示す如く、ガイドプレート30の車両下側かつ車両後側には、位置検出手段としてのD位置用スイッチ40が配置されている。シフトレバー20が「D」位置に操作された際には、D位置用スイッチ40はシフトレバー20によって押されてON状態となる。一方、シフトレバー20が「D」位置から離間された際には、D位置用スイッチ40はOFF状態となる。
【0026】
ガイドプレート30の車両下側かつ車両前側には、位置検出手段としてのR位置用スイッチ42が配置されている。シフトレバー20が「R」位置に操作された際には、R位置用スイッチ42はシフトレバー20によって押されてON状態となる。一方、シフトレバー20が「R」位置から離間された際には、R位置用スイッチ42はOFF状態となる。
【0027】
ガイドプレート30の車両下側かつ車両右後側には、保持手段としてのブロック状のD位置用ソレノイド44が配置されている。D位置用ソレノイド44の車両左側面には、プランジャー46が車両左右方向へ移動可能に突設されている。プランジャー46は、D位置用ソレノイド44に電流が流れる(通電状態にされる)ことで、初期状態から車両左側へ移動される。一方、プランジャー46は、D位置用ソレノイド44へ流れている電流が遮断される(非通電状態にされる)ことで、初期状態へ復帰される。プランジャー46の先端部は、ガイドプレート30に平行な板状にされて、車両左側へ開口された凹部46Aを有しており、凹部46Aはシフトレバー20のレバーロッド22に係合可能にされている。
【0028】
シフトレバー20が「D」位置に操作された際に、D位置用ソレノイド44が通電状態にされることで、プランジャー46が車両左側へ移動されて、プランジャー46の凹部46Aがレバーロッド22に係合する(以下、この位置を「規制位置」という)。このため、シフトレバー20が「D」位置に保持される。一方、プランジャー46が規制位置に移動されている状態で、D位置用ソレノイド44が非通電状態にされることで、プランジャー46が初期状態へ復帰されて、プランジャー46の凹部46Aとレバーロッド22との係合が解除される(以下、この位置を「非規制位置」という)。
【0029】
ガイドプレート30の車両下側かつ車両右前側には、保持手段としてのブロック状のR位置用ソレノイド48が配置されている。R位置用ソレノイド48の車両左側面には、プランジャー50が車両左右方向へ移動可能に突設されている。プランジャー50は、R位置用ソレノイド48に電流が流れる(通電状態にされる)ことで、初期状態から車両左側へ移動される。一方、プランジャー50は、R位置用ソレノイド48へ流れている電流が遮断される(非通電状態にされる)ことで、初期状態へ復帰される。プランジャー50の先端部は、ガイドプレート30に平行な板状にされて、車両左側へ開口された凹部50Aを有しており、凹部50Aはシフトレバー20のレバーロッド22に係合可能にされている。
【0030】
シフトレバー20が「R」位置に操作された際に、R位置用ソレノイド48が通電状態にされることで、プランジャー50が車両左側へ移動されて、プランジャー50の凹部50Aがレバーロッド22に係合する(以下、この位置を「規制位置」という)。このため、シフトレバー20が「R」位置に保持される。一方、プランジャー50が規制位置に移動されている状態で、R位置用ソレノイド48が非通電状態にされることで、プランジャー50が初期状態へ復帰されて、プランジャー50の凹部50Aとレバーロッド22との係合が解除される(以下、この位置を「非規制位置」という)。
【0031】
レバーロッド22の長手方向上側端部には、シフトレバー20を構成するシフトノブ26が固定されている。シフトノブ26の車両上側面には、解除手段としてのシフトボタン28が設けられており、シフトボタン28はレバーロッド22の長手方向下側へ押圧操作可能に配置されている。
【0032】
レバーロッド22の長手方向下側端部には、復帰手段を構成する円柱状の節度ピン60がレバーロッド22の軸線方向に沿って挿入されると共に、復帰手段を構成する図示しない圧縮コイルスプリングが挿入されている。節度ピン60の先端部は半球状に形成されており、圧縮コイルスプリングが節度ピン60をレバーロッド22の長手方向下側へ付勢して、節度ピン60の先端部がレバーロッド22の長手方向下側端から突出されている。
【0033】
シフトレバー20の車両下側には、復帰手段を構成しかつ車両上側が開口した略直方体状のガイド部材62が配置されており、ガイド部材62は、ベース12に固定されている。ガイド部材62の底壁内側面には、図示しない節度面が形成されており、節度面には、前述した節度ピン60の先端部が、圧縮コイルスプリングの付勢力によって圧接されている。
【0034】
また、節度面では、シフトレバー20の「H」位置に対応する部位からシフトレバー20の「D」位置及び「R」位置に対応する部位へ向かうに従い徐々に支持軸24に接近されている。このため、シフトレバー20が「H」位置から「D」位置又は「R」位置に操作される際には、節度ピン60の節度面への圧接力(圧縮コイルスプリングの付勢力)が徐々に大きくされて、シフトレバー20(レバーロッド22)に「H」位置への復帰力が徐々に大きくされて作用される。
【0035】
一方、図3に示す如く、シフト装置10は、制御手段としてのシフトレバー制御部70を備えている。シフトレバー制御部70には、シフトボタン28、パーキングスイッチ34、ニュートラルスイッチ36、D位置用スイッチ40、R位置用スイッチ42、D位置用ソレノイド44、R位置用ソレノイド48及び車両制御部72がそれぞれ電気的に接続されている。
【0036】
車両制御部72には、変速機74、ブレーキ76及び車速検出器78が電気的に接続されており、車両制御部72は、変速機74のシフト位置信号(変速機74のシフト位置を示す信号)、ブレーキ信号(ブレーキ76の操作の有無を示す信号であり、H信号はブレーキ76が操作されたことを示す信号で、L信号はブレーキ76が操作されないことを示す信号である)及び車速信号(車両の速度を示す信号)をシフトレバー制御部70へ出力する。
【0037】
さらに、変速機74は、車両の走行状態等に応じて車両制御部72によって自動的に適正なシフト位置に変更される構成となっている。
【0038】
次に本実施の形態の作用について説明する。
【0039】
シフトレバー20が「H」位置に配置されると共に、パーキングスイッチ34又はニュートラルスイッチ36が操作状態に維持された際には、変速機74のシフト位置が「P」位置又は「N」位置にされると共に、D位置用ソレノイド44及びR位置用ソレノイド48が非通電状態にされている。
【0040】
乗員が、車両のブレーキ76を操作しながらシフトレバー20を「H」位置から「D」位置又は「R」位置へ操作した際には、シフトレバー制御部70は、車両制御部72からのブレーキ信号のH信号を検出した状態で、D位置用スイッチ40又はR位置用スイッチ42からの入力信号(ON信号)を検出する。これにより、シフトレバー制御部70は、シフトレバー20のシフト位置が適正であると判定する。
【0041】
この際には、シフトレバー制御部70は、D位置用ソレノイド44又はR位置用ソレノイド48を通電状態に制御すると共に、パーキングスイッチ34又はニュートラルスイッチ36の操作状態を解除する。したがって、D位置用ソレノイド44のプランジャー46又はR位置用ソレノイド48のプランジャー50が非規制位置から規制位置へ移動されて、プランジャー46の凹部46A又はプランジャー50の凹部50Aがレバーロッド22に係合される。これにより、シフトレバー20が「D」位置又は「R」位置に保持されて、車両制御部72の制御により変速機74のシフト位置が「P」位置又は「N」位置から「D」位置又は「R」位置へ変更される。
【0042】
一方、乗員が、車両のブレーキ76を操作しないでシフトレバー20を「H」位置から「D」位置又は「R」位置へ操作した際には、シフトレバー制御部70は、車両制御部72からブレーキ信号のL信号を検出した状態で、D位置用スイッチ40又はR位置用スイッチ42からの入力信号(ON信号)を検出する。これにより、シフトレバー制御部70は、シフトレバー20のシフト位置が適正でないと判定する。
【0043】
この際には、シフトレバー制御部70はD位置用ソレノイド44又はR位置用ソレノイド48を非通電状態のままにする。したがって、プランジャー46又はプランジャー50が非規制位置に退避されているため、プランジャー46の凹部46A又はプランジャー50の凹部50Aはレバーロッド22に係合されない。これにより、シフトレバー20が、節度ピン60の節度面への圧接力によって、「D」位置又は「R」位置から「H」位置に復帰されて、車両制御部72により変速機74のシフト位置は「P」位置又は「N」位置のままとなる。
【0044】
次に、シフトレバー20を「D」位置から「R」位置又は「R」位置から「D」へ操作する際の説明をする。
【0045】
シフトレバー20が「D」位置又は「R」位置に保持されている状態で、乗員によってシフトボタン28が押圧操作された際には、シフトレバー制御部70はD位置用ソレノイド44又はR位置用ソレノイド48を非通電状態に制御する。このため、プランジャー46又はプランジャー50が規制位置から非規制位置へ移動されて、プランジャー46の凹部46A又はプランジャー50の凹部50Aとレバーロッド22との係合が解除される。これにより、シフトレバー20が「D」位置又は「R」位置から操作可能になる。
【0046】
乗員が、車両の速度が所定速度(例えば、5km/h)未満である時にシフトレバー20を「D」位置から「R」位置又は「R」位置から「D」位置へ操作した際には、シフトレバー制御部70は、車両制御部72からの車速信号が所定速度未満であることを検出した状態で、R位置用スイッチ42又はD位置用スイッチ40からの入力信号を検出する。これにより、シフトレバー制御部70は、シフトレバー20のシフト位置が適正であると判定する。
【0047】
この際には、シフトレバー制御部70はR位置用ソレノイド48又はD位置用ソレノイド44を通電状態に制御する。したがって、R位置用ソレノイド48のプランジャー50又はD位置用ソレノイド44のプランジャー46が非規制位置から規制位置へ移動されて、プランジャー50の凹部50A又はプランジャー46の凹部46Aがレバーロッド22に係合される。これにより、シフトレバー20が「R」位置又は「D」位置に保持されて、車両制御部72の制御により変速機74のシフト位置が「D」位置から「R」位置又は「R」位置から「D」位置へ変更される。
【0048】
一方、乗員が、車両の速度が所定速度以上である時にシフトレバー20を「D」位置から「R」位置又は「R」位置から「D」位置へ操作した際には、シフトレバー制御部70は、車両制御部72からの車速信号が所定速度以上であることを検出した状態で、R位置用スイッチ42又はD位置用スイッチ40からの入力信号を検出する。これにより、シフトレバー制御部70は、シフトレバー20のシフト位置が適正でないと判定する。
【0049】
この際には、シフトレバー制御部70はR位置用ソレノイド48又はD位置用ソレノイド44を非通電状態のままにする。したがって、プランジャー50又はプランジャー46が非規制位置に退避されているため、プランジャー50の凹部50A又はプランジャー46の凹部46Aはレバーロッド22に係合されない。これにより、シフトレバー20が、節度ピン60の節度面への圧接力によって、「R」位置又は「D」位置から「H」位置に復帰されて、車両制御部72の制御により変速機74のシフト位置が「D」位置又は「R」位置から「N」位置へ変更される。
【0050】
また、乗員が、車両のブレーキ76を操作しながらパーキングスイッチ34を押圧操作した際には、シフトレバー制御部70は、車両制御部72からのブレーキ信号のH信号を検出した状態で、パーキングスイッチ34からの入力信号を検出する。これにより、シフトレバー制御部70は、パーキングスイッチ34の押圧操作が適正であると判定する。
【0051】
この際には、シフトレバー制御部70によってパーキングスイッチ34が操作状態に維持されて、車両制御部72の制御により変速機74のシフト位置が「P」位置に変更される。さらに、シフトレバー20が「D」位置又は「R」位置に保持されている場合には、シフトレバー制御部70はD位置用ソレノイド44又はR位置用ソレノイド48を非通電状態に制御する。このため、プランジャー46又はプランジャー50が規制位置から非規制位置へ移動されて、プランジャー46の凹部46A又はプランジャー50の凹部50Aとレバーロッド22との係合が解除される。これにより、シフトレバー20が、節度ピン60の節度面への圧接力によって「H」位置に復帰される。
【0052】
一方、乗員が、車両のブレーキ76を操作しないでパーキングスイッチ34を押圧操作した際には、シフトレバー制御部70は、車両制御部72からのブレーキ信号のL信号を検出した状態で、パーキングスイッチ34からの入力信号を検出する。これにより、シフトレバー制御部70は、パーキングスイッチ34の押圧操作が適正でないと判定する。この際には、シフトレバー制御部70によってパーキングスイッチ34は操作状態に維持されずに初期状態へ復帰されて、車両制御部72により変速機74のシフト位置は、パーキングスイッチ34が押圧操作される前のシフト位置のままとなる。
【0053】
また、乗員がニュートラルスイッチ36を押圧操作した際には、シフトレバー制御部70によってニュートラルスイッチ36が操作状態に維持される。
【0054】
この際には、車両制御部72の制御により変速機74のシフト位置が「N」位置に変更される。さらに、シフトレバー20が「D」位置又は「R」位置に保持されている場合には、シフトレバー制御部70はD位置用ソレノイド44又はR位置用ソレノイド48を非通電状態に制御する。このため、プランジャー46又はプランジャー50が規制位置から非規制位置へ移動されて、プランジャー46の凹部46A又はプランジャー50の凹部50Aとレバーロッド22との係合が解除される。これにより、シフトレバー20が、節度ピン60の節度面への圧接力によって、「H」位置に復帰される。
【0055】
ここで、上述の如く、シフトレバー20が「D」位置又は「R」位置に操作された際には、シフトレバー制御部70が、シフトレバー20のシフト位置が適正であるか否かを判定する。
【0056】
シフトレバー制御部70が、シフトレバー20のシフト位置が適正であると判定した場合には、変速機74のシフト位置が「D」位置又は「R」位置に変更されると共に、シフトレバー制御部70がD位置用ソレノイド44又はR位置用ソレノイド48を通電状態に制御することで、シフトレバー20が「D」位置又は「R」位置に保持される。これにより、乗員が、シフトレバー20のシフト位置が適正であることを直感的に認識できる。
【0057】
一方、シフトレバー制御部70が、シフトレバー20のシフト位置が適正でないと判定した場合には、変速機74のシフト位置が適正なシフト位置にされると共に、シフトレバー制御部70がD位置用ソレノイド44又はR位置用ソレノイド48を非通電状態のままにすることで、シフトレバー20が、節度ピン60の節度面への圧接力によって、「D」位置又は「R」位置から「H」位置に復帰される。これにより、シフトレバー20のシフト位置と変速機74のシフト位置との不一致を回避できる。
【0058】
また、上述の如く、シフトレバー制御部70が、シフトレバー20のシフト位置が適正でないと判定した場合には、シフトレバー20は常に「H」位置に復帰されるため、シフトレバー20を任意のシフト位置に誘導する必要がない。したがって、シフト装置10は、節度ピン60の節度面への圧接力によってシフトレバー20を「H」位置に復帰させる構成であればよく、シフトレバー20を任意のシフト位置へ誘導する手段を備える必要がない。これにより、シフト装置10のコストが高くなることを抑制できる。
【0059】
さらに、将来、車両の自動運転化が実現された場合でも、シフト装置10は、「H」位置を自動運転位置として使用することで、当該自動運転化に対応できる。この場合には、シフトレバー20を自動運転位置に復帰させておくことで、車両の自動運転中に変速機74のシフト位置が適宜変更されても、該変更に対応してシフトレバー20を誘導する必要がない。また、シフト装置10に自動運転化に対応する新たなシフト位置を設定する必要がなくなり、シフト装置10の大型化を抑制できると共に、シフト装置10の操作上及び外観上の変化を少なくできる。
【0060】
なお、本実施の形態では、シフトレバー20のシフト位置は「D」位置及び「R」位置とした。これに替えて、シフトレバー20のシフト位置を「D」位置、「R」位置、及び「B」位置(ブレーキ位置)(「2」位置(セカンド位置)及び「L」位置(ロー位置)でもよい)としてもよい。
【0061】
また、本実施の形態において、エンジンが停止している際に、シフトレバー20が「H」位置に復帰している構成、又は、シフトレバー20がシフト位置に保持される構成としてもよい。シフトレバー20がシフト位置に保持される場合には、エンジンが始動される際に、シフトレバー制御部70がD位置用ソレノイド44及びR位置用ソレノイド48を非通電状態に制御することで、シフトレバー20が「H」位置に復帰される。
【0062】
さらに、本実施の形態では、D位置用ソレノイド44及びR位置用ソレノイド48が非通電状態にされることでプランジャー46及びプランジャー50が非規制位置にされると共に、D位置用ソレノイド44及びR位置用ソレノイド48が通電状態にされることでプランジャー46及びプランジャー50が規制位置に移動される構成とした。これに替えて、D位置用ソレノイド44及びR位置用ソレノイド48が通電状態にされることでプランジャー46及びプランジャー50が非規制位置にされると共に、D位置用ソレノイド44及びR位置用ソレノイド48が非通電状態にされることでプランジャー46及びプランジャー50が規制位置に移動される構成としてもよい。
【0063】
また、本実施の形態では、「H」位置をシフトレバー20の所定位置として設定し、ニュートラルスイッチ36を「H」位置とは別に設ける構成とした。これに替えて、「H」位置を「N」位置に置き換えて、当該「N」位置をシフトレバー20の所定位置としてもよい。この場合には、ニュートラルスイッチ36が削除される。
【0064】
さらに、本実施の形態では、シフトレバー20が車両前後方向のみに回動されて、シフトレバー20のシフト位置が変更される。これに替えて、シフトレバー20が車両前後方向及び車両左右方向へ回動されて、シフトレバー20のシフト位置が変更されてもよい。
【0065】
また、本実施の形態では、シフト装置10が、車両の床に配置されている。これに替えて、シフト装置10は、車両の何れの位置に配置されてもよく、例えば、インストルメントパネルやステアリングコラム等に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10 シフト装置
20 シフトレバー(シフト部材)
44 D位置用ソレノイド(保持手段)
48 R位置用ソレノイド(保持手段)
60 節度ピン(復帰手段)
62 ガイド部材(復帰手段)
70 シフトレバー制御部(制御手段)
図1
図2
図3