(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタにおいて、適切な印刷を行うためには、解像度に応じた適切な大きさでインクのドットを形成する必要がある。しかし、例えば同じインクジェットプリンタを用い、同じ印刷条件の設定で印刷を行ったとしても、形成されるインクのドットのサイズは、例えば使用する媒体の種類等に応じて、変化する場合がある。
【0005】
そのため、インクジェットプリンタを使用する場合には、例えば媒体の種類等に応じて、印刷条件の設定等を異ならせ、インクのドットのサイズを調整することが必要となる場合がある。また、例えば、この調整を行うために、インクのドットが適切なサイズで形成されているか否か(ドットのサイズ適性)を判断することが必要となる場合がある。
【0006】
ドットのサイズ適性の判断は、例えば、ドットを拡大して観察する機能を有する特別な装置等を用いて行うことが考えられる。しかし、このような特別な装置を用いるとすると、必要な作業が増え、例えば作業に不慣れなユーザ等では、適切な判断をできなくなるおそれがある。また、その結果、例えば、ユーザ自身でサイズ適性の判断をできれば解決できる問題が生じた場合にも、インクジェットプリンタのメーカのエンジニア等に、出張によるメンテナンスの作業等を依頼することが必要となるおそれもある。
【0007】
そのため、従来、特別な測定機器等を用いることなく、ユーザ自身により、容易かつ適切にインクのドットのサイズ適性を判断できる方法が望まれていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるインクジェットプリンタ、プログラム、及びテストパターンを提供することを目的とする
【0008】
尚、従来、印刷の状態を確認するための様々なテストパターンが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、本発明と同じ目的で、同じテストパターンを用いる構成は知られていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)インクジェット方式で印刷を行うインクジェットプリンタ
が備えるインクジェットヘッドから吐出されるインクにより形成されるドットのサイズ適性の判断をするドットのサイズの判断方法であって、インクジェットヘッドに、インクジェットプリンタの動作を確認する場合に用いるテストパターンを印刷させ、
テストパターンを目視で確認することにより、ドットのサイズ適性の判断を行い、テストパターンは、インクジェットヘッドからインクを吐出しないことにより形成される白線部を除き、インクジェットヘッドから吐出されるインクにより一定の領域を塗りつぶした白線形成パターン部を備え、白線形成パターン部は、白線部として、インクジェットヘッドから吐出されるインクにより形成される少なくともドット1個分の幅で第1の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第1方向第1白線と、第1方向第1白線よりも広い幅で第1の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第1方向第2白線と、少なくともドット1個分の幅で第1の方向と直交する第2の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第2方向第1白線と、第2方向第1白線よりも広い幅で第2の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第2方向第2白線とを有し、テストパターンは、第1方向第1白線及び第2方向第1白線と、第1方向第2白線及び第2方向第2白線とを目視により対比することで媒体上に形成されるドットのサイズが適正であるか否かの判断が可能なパターンであり、ドットのサイズが適正である場合、テストパターンにおいて、第1方向第1白線及び第2方向第1白線の白線部は、少なくとも一部の領域がインクジェットヘッドから吐出されるインクにより埋まっている状態になり、かつ、第1方向第2白線及び第2方向第2白線の白線部は、埋まらずに視認できる状態になる。
【0010】
インクジェットプリンタは、例えば、予め設定された主走査方向へインクジェットヘッドを走査する主走査動作と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的にインクジェットヘッドを移動させる副走査動作を行うことにより、媒体の各位置に印刷を行う。この場合、第1の方向は、例えば、主走査方向である。また、第2の方向は、例えば、副走査方向である。
【0011】
複数の第1方向第1白線のそれぞれは、例えば、第2の方向へ一定の間隔で並ぶ。複数の第2方向第1白線のそれぞれは、例えば、第1の方向へ一定の間隔で並ぶ。また、複数の第1方向第1白線のそれぞれは、例えば、複数の第2方向第1白線と直交する。
【0012】
第1方向第1白線及び第2方向第1白線は、例えばドット1〜3個分の幅の白線部であることが好ましい。また、第1方向第1白線及び第2方向第1白線の少なくとも一方の幅は、ドット1個分の幅であることが好ましい。また、ドットの形状が、例えば円形又は略円形等の、第1方向及び第2方向に対して対称な形状である場合、第1方向第1白線の幅と、第2方向第1白線の幅とは、例えば同じであることが好ましい。この場合、例えば、第1方向第1白線及び第2方向第1白線の幅を、共にドット1個分の幅とすることが考えられる。また、ドットの形状が、例えば円形又は略円形等の、第1方向及び第2方向に対して非対称な形状である場合、第1方向第1白線の幅と、第2方向第1白線の幅とは、異なっていてもよい。
【0013】
このように構成した場合、解像度における最小線幅の白線部、又は最小線幅に近い白線部等を形成することにより、使用しているインクジェットヘッドによる印刷の状態を適切に確認できる。また、例えば、周囲を塗りつぶした状態で白線部を形成することにより、白線部の状態をより適切に確認できる。
【0014】
また、白線部として、直交する2つの方向へ白線部を形成することにより、例えば白線部の状態に異常が存在した場合に、それが、特定の方向に対してのみ生じるものなのか否かを、適切に確認できる。例えば、第1及び第2の方向を、主走査方向及び副走査方向とした場合、主走査動作及び副走査動作の一方の動作に原因がある場合と、両方の動作と無関係な原因がある場合とを区別しやすくなる。また、例えば、それぞれの方向へ複数の白線部を形成することにより、特定の位置の白線部にのみ異常が生じる場合と、白線部の位置によらず異常が生じる場合とを、適切に区別できる。
【0015】
そのため、このように構成すれば、例えば、印刷結果の状態を適切に確認できる。また、これにより、例えば、インクジェットプリンタにおける印刷条件の設定等を適切に行うことが可能となり、インクジェットプリンタにより、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
【0016】
尚、ドット1個分の幅とは、例えば、印刷の解像度に応じた1画素分の幅である。インクジェットプリンタは、例えば、各画素に対応するドットとして、複数種類のサイズのインクのドットを形成することにより、多階調の印刷を印刷を行ってもよい。この場合、インクジェットプリンタは、白線形成パターン部のうち、白線部以外の領域を、各階調に対応するドットのサイズのうち、最大のサイズのドットにより塗りつぶす。
【0017】
(構成2)テストパターンは、媒体上に形成されるドットのサイズ適性の判断に用いるテストパターンである。ドットのサイズ適性の判断とは、例えば、使用している媒体において、ドットが所定のサイズで形成されているか否かを判断することである。
【0018】
また、ドットが所定のサイズで形成されているとは、例えば、印刷の解像度に応じた1画素の大きさに応じたサイズでドットが形成されていることである。ドットが所定のサイズで形成されているとは、印刷条件の設定において形成しようとしたサイズのドットが形成されていることであってよい。
【0019】
例えば、形成されるドットのサイズが必要なサイズより小さい場合、白線部の周囲における塗りつぶした部分を構成する各ドットのサイズが小さくなるため、白線部の幅は大きくなる。一方、ドットのサイズが十分に大きな場合、白線部の幅は、より小さくなる。そのため、このように構成すれば、例えば、幅の違いによる白線部の見え方を確認することにより、ドットのサイズ適性を適切に判断できる。
【0020】
より具体的には、例えば、ドットのサイズが十分に大きな場合、ドット1個分の幅等狭い幅の白線部は、少なくともいずれかの角度から観察した場合、周囲の塗りつぶした部分に埋まり、目視では見えなくなる。一方、ドットのサイズが不足している場合、白線部の幅が大きくなるため、いずれの角度から観察しても、白線部が隠れることなく、例えばうっすらと白線部が見える等の状態で、白線部が残っている状態を確認できることとなる。そのため、このように構成すれば、例えば、例えば角度を変えながら第1方向第1白線及び第2方向第1白線を観察することにより、ドットのサイズ適性の判断を適切に行うことができる。
【0021】
ここで、インクのドットのサイズは、例えば、使用する媒体とインクとの組み合わせに応じて変化する。そのため、例えば、使用するインクが決まっている場合、ドットのサイズは、印刷適性のうち、媒体に依存する性質、すなわち、媒体のインクに対する適性を反映すると考えられる。従って、このように構成すれば、例えば、媒体のインクに対する適性を適切に判断できる。
【0022】
また、ドットのサイズ適性の判断としては、その一態様として、例えば、ドットの直径の確認をすることが考えられる。ドットの直径とは、例えば、インクのドットの形状を近似的に円形と見た場合の直径である。この円形は、例えばドットの外接円であってよい。ドットの直径の確認は、ドットの直径が所定の直径以上の十分な大きさを有することの確認であってよい。
【0023】
尚、第1方向第1白線及び第2方向第1白線の幅は、例えば、上記の判断が適切に行える幅に適宜設定されることが好ましい。また、通常の印刷条件において、第1方向第1白線及び第2方向第1白線の少なくとも一方の幅は、ドット1個分の幅であることが好ましい。また、ドットの形状が、第1方向及び第2方向に対して対称な形状である場合、第1方向第1白線及び第2方向第1白線の幅は、共に、ドット1個分の幅であることが好ましい。
【0024】
(構成3)テストパターンは、目視により確認されるテストパターンであり、複数の第1方向第1白線のそれぞれは、第2の方向へ3mm以上の一定の間隔を空けて形成され、複数の第2方向第1白線のそれぞれは、第1の方向へ3mm以上の一定の間隔を空けて形成される。第2方向第1白線の間隔は、例えば、第1方向第1白線の間隔と同じであることが好ましい。この間隔は、例えば3〜7mm(例えば5mm程度)であってよい。
【0025】
このように構成した場合、例えば、十分な間隔を空けて第1方向第1白線及び第2方向第1白線を形成することにより、目視による観察が行いやすくなる。そのため、このように構成すれば、例えば、目視によりドットのサイズ適性等を適切に確認できる。
【0026】
(構成4)白線形成パターン部は、インクジェットヘッドから吐出されるインクにより形成される線であり、第1方向第1白線及び第2方向第1白線のそれぞれの延長線上に形成される引き出し線を有する。
【0027】
このように構成すれば、例えば、第1方向第1白線及び第2方向第1白線の位置を確認しやすくなる。そのため、例えば、ドットのサイズが十分に大きく、白線部が周囲に埋まった状態にある場合でも、第1方向第1白線及び第2方向第1白線があるべき位置を適切に確認できる。また、これにより、インクのドットのサイズ適性等を、より適切に確認できる。
【0028】
(構成5)白線形成パターン部は、白線部として、第1方向第1白線よりも広い幅で第1の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第1方向第2白線と、第2方向第1白線よりも広い幅で第2の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第2方向第2白線とを更に有する。
【0029】
第1方向第2白線及び第2方向第2白線は、第1方向第1白線及び第2方向第1白線よりも線幅が太いため、例えばドットのサイズが十分に大きい場合でも、周囲の塗りつぶした部分に埋まりにくくなる。しかし、例えばドットのサイズが過剰である場合には、第1方向第2白線及び第2方向第2白線も、周囲の塗りつぶした部分に埋まり、目視では見えなくなる。
【0030】
そのため、このように構成すれば、例えば、ドットのサイズが過剰ではなく、所定の範囲内にあることを適切に確認できる。また、これにより、インクのドットのサイズ適性等等を、より適切に確認できる。
【0031】
白線形成パターン部は、白線部として、第2方向第2白線よりも広い幅で第1の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第1方向第3白線と、第2方向第2白線よりも広い幅で第2の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第2方向第3白線とを更に有してもよい。この場合、第1方向第3白線及び第2方向第3白線は、より線幅が太いため、ドットのサイズが大きく、より幅の狭い白線部が埋まってしまう場合であっても、はっきりとした白線として残るこことなる。そのため、より幅の狭い白線部の状態を確認する場合に、例えば、第1方向第3白線及び第2方向第3白線と対比することにより、白線部が見える状態か否かを適切に判断しやすくなる。また、例えば、第1方向第3白線又は第2方向第3白線が見えなくなっている場合には、ドットのサイズが明らかに過剰であると判断できる。これにより、インクのドットのサイズ適性等を、より適切に確認できる。
【0032】
尚、例えば第1方向第1白線及び第2方向第1白線の幅がドット1個分である場合、第1方向第2白線及び第2方向第2白線の幅は、ドット2個分とすることが好ましい。また、第1方向第3白線及び第2方向第3白線の幅は、ドット3個分とすることが好ましい。
【0033】
(構成6)インクジェットプリンタは、インクのドットの1個あたりに吐出するインクの吐出量を変更可能であり、テストパターンは、吐出量の設定を異ならせてそれぞれ形成された複数の白線形成パターン部を備える。
【0034】
このように構成すれば、例えば、吐出量の設定が異なる複数種類の印刷条件について、同時に、それぞれの印刷条件により形成されるインクのドットのサイズ適性等を確認できる。また、これにより、例えば、適切なドットのサイズを実現するのに適した印刷条件の設定を見つけることが、より容易になる。
【0035】
(構成7)テストパターンは、インクジェットヘッドに対して相対的に媒体を移動させる送り量の設定の確認に用いる送り量確認用パターン部と、媒体上に形成されるドットの位置の設定の確認に用いるドット位置確認用パターン部とを更に備える。
【0036】
例えば、媒体の搬送の送り量の設定や、ドットの位置の設定が不適切であると、ドットのサイズが適切である場合にも、印刷結果に白線状の縞が生じる場合がある。そのため、送り量やドットの位置の設定が不適切であると、ドットのサイズ適性等を適切に確認できないおそれがある。
【0037】
これに対し、このように構成すれば、例えば、送り量確認用パターン部やドット位置確認用パターン部により、送り量やドットの位置の設定の適否を適切に確認できる。また、これにより、例えば、ドットのサイズ適性等を確認する前に、送り量やドットの位置の設定を正しく修正することができる。従って、このように構成すれば、例えば、インクのドットのサイズ適性等を、より適切に確認できる。
【0038】
(構成8)インク滴を吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタに印刷を行わせるプログラムであって、インクジェットヘッドに、インクジェットプリンタの動作を確認する場合に用いるテストパターンを印刷させ、テストパターンは、インクジェットヘッドからインクを吐出しないことにより形成される白線部を除き、インクジェットヘッドから吐出されるインクにより一定の領域を塗りつぶした白線形成パターン部を備え、白線形成パターン部は、白線部として、インクジェットヘッドから吐出されるインクにより形成される少なくともドット1個分の幅で第1の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第1方向第1白線と、少なくともドット1個分の幅で第1の方向と直交する第2の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第2方向第1白線とを有する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0039】
このプログラムは、例えば、インクジェットプリンタの動作を制御するホストPCにより実行される。ホストPCは、例えば、プログラムに従って、このテストパターンを示す印刷データをインクジェットプリンタへ送ることにより、インクジェットプリンタのインクジェットヘッドに、テストパターンを印刷させる。また、このプログラムは、インクジェットプリンタの制御部により実行されてもよい。
【0040】
(構成9)インクジェットプリンタの動作を確認する場合にインクジェットプリンタのインクジェットヘッドにより印刷されるテストパターンであって、インクジェットヘッドからインクを吐出しないことにより形成される白線部を除き、インクジェットヘッドから吐出されるインクにより一定の領域を塗りつぶした白線形成パターン部を備え、白線形成パターン部は、白線部として、インクジェットヘッドから吐出されるインクにより形成される少なくともドット1個分の幅で第1の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第1方向第1白線と、少なくともドット1個分の幅で第1の方向と直交する第2の方向へそれぞれ延伸する複数の白線部である複数の第2方向第1白線とを有する。このテストパターンは、例えば、媒体に印刷されているテストパターンである。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、例えば、印刷結果の状態を適切に確認できる。また、例えば、印刷結果におけるインクのドットのサイズ適性を、目視により適切に確認できる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタ10の構成の一例を示す。インクジェットプリンタ10は、媒体50に対してインクジェット方式で印刷を行う印刷装置であり、インクジェットヘッド12及び制御部14を備える。
【0044】
本例において、インクジェットプリンタ10は、例えば、予め設定された主走査方向へインクジェットヘッド12を走査する主走査動作と、主走査方向と直交する副走査方向へ媒体に対して相対的にインクジェットヘッド12を移動させる副走査動作を行うことにより、媒体50の各位置に印刷を行う。主走査動作において、インクジェットプリンタ10は、インクジェットヘッド12に、インク滴を吐出しつつ主走査方向へ移動するスキャン動作を行わせる。また、インクジェットプリンタ10は、副走査動作において、インクジェットヘッド12に対して相対的に、媒体50を送る。
【0045】
インクジェットプリンタ10は、図示した構成以外に、例えば主走査動作及び副走査動作等の印刷動作に必要な構成を適宜備える。また、インクジェットプリンタ10は、例えば、複数のインクジェットヘッド12を備えてもよい。複数のインクジェットヘッド12のそれぞれは、例えば、CMYKインクの各色等の、それぞれ異なる色のインク滴を吐出する。
【0046】
インクジェットヘッド12は、例えば所定のノズル列方向へ並ぶ複数のノズルを有する印刷ヘッドであり、これらのノズルから媒体50へインク滴を吐出することにより、媒体50上にインクのドットを形成する。また、これにより、インクジェットヘッド12は、媒体50に印刷を行う。
【0047】
制御部14は、インクジェットプリンタ10の動作を制御するコントローラであり、例えばホストPCの制御に応じて、インクジェットヘッド12等のインクジェットプリンタ10の各部の動作を制御する。また、制御部14は、例えば、ホストPCから受け取る印刷データに基づき、その印刷データが示す画像を、インクジェットヘッド12に印刷させる。
【0048】
また、本例において、インクジェットプリンタ10は、インクのドットの1個あたりに吐出するインクの吐出量を変更可能である。インクのドットの1個あたりに吐出するインクの吐出量とは、例えば、インクジェットヘッド12の1個のノズルから吐出されるインクにより1個のドットを媒体50上に形成する場合に、そのノズルから吐出されるインクの量である。
【0049】
そのため、本例において、制御部14は、例えばユーザの操作に応じて、インクのドットの1個あたりに吐出するインクの吐出量の設定を記憶する。また、印刷動作時において、制御部14は、設定されているインクの吐出量に応じて、インクジェットヘッド12のノズルから、インク滴を吐出させる。
【0050】
この場合、制御部14は、例えば、1個のドットを形成するためにノズルから吐出させるインク滴の液滴数を変化させることにより、ドットの1個あたりに吐出するインクの吐出量を変更する。また、制御部14は、1回に吐出させるインク滴の容量自体を変化させることにより、ドットの1個あたりに吐出するインクの吐出量を変更してもよい。
【0051】
また、本例において、インクジェットプリンタ10は、各画素に対応するドットとして、複数種類のサイズのドットを形成することにより、多階調の印刷を行う。例えば、インクジェットプリンタ10は、大(Large)、中(Middle)、小(Small)の3種類のサイズのドットを形成することにより、多階調の印刷を行う。この場合、制御部14は、例えば、各サイズ毎に、インクのドットの1個あたりに吐出するインクの吐出量の設定を記憶する。
【0052】
また、本例において、制御部14は、例えばホストPCの指示に応じて、インクジェットヘッド12に、所定のテストパターンを印刷させる。このテストパターンは、例えば、インクジェットプリンタ10の動作を確認する場合に目視により確認されるテストパターンである。以下、このテストパターンについて説明する。
【0053】
図2は、本例において用いるテストパターン100の構成の一例を示す。本例において、テストパターン100は、媒体50上に形成されるドットの直径の確認に用いるテストパターンであり、複数の吐出量指定パターン150a〜150cを備える。
【0054】
尚、ドットの直径の確認とは、例えば、ドットのサイズ適性の判断の一態様である。また、以下の説明のように、ドットの直径を確認することにより、ドットのサイズ適性を適切に判断できる。ドットのサイズ適性の判断とは、例えば、使用している記録媒体50において、ドットが所定のサイズで形成されているか否かを判断することである。また、本例において、ドットの形状は、例えば円形又は略円形等の、主走査方向及び副走査方向に対して対称な形状である。
【0055】
複数の吐出量指定パターン150a〜150cのそれぞれは、インクのドットの1個あたりに吐出するインクの吐出量をそれぞれ異ならせて形成したパターンである。また、本例において、吐出量指定パターン150a〜150cのそれぞれは、白線形成パターン部102、送り量確認用パターン部104、及びドット位置確認用パターン部106を備える。これにより、テストパターン100は、吐出量指定パターン150a〜150cのそれぞれに対応する吐出量に応じて、吐出量の設定を異ならせてそれぞれ形成された複数の白線形成パターン部102、送り量確認用パターン部104、及びドット位置確認用パターン部106を備える。
【0056】
白線形成パターン部102は、ドットの直径の確認に用いるパターンの部分である。また、送り量確認用パターン部104及びドット位置確認用パターン部106は、白線形成パターン部102を適切に使用するための前提となる条件を確認するために用いられる部分である。
【0057】
尚、吐出量指定パターン150a〜150cにおける吐出量の設定は、サイズが大(Large)のドットを形成する場合の吐出量の設定である。本例において、吐出量指定パターン150aの吐出量の設定としては、ドット1個あたりのインク滴の個数を3とする設定(L3)を用いる。吐出量指定パターン150bの吐出量の設定としては、ドット1個あたりのインク滴の個数を6とする設定(L6)を用いる。また、吐出量指定パターン150cの吐出量の設定としては、ドット1個あたりのインク滴の個数を9とする設定(L9)を用いる。
【0058】
また、本例において、インクジェットプリンタ10は、1色のインクにより、テストパターン100を印刷する。この1色のインクとしては、例えば黒(K)色のインクを好適に用いることができる。また、例えば、黒(K)色以外の色のインクのドットの直径を確認しようとする場合、インクジェットプリンタ10は、その色のインクにより、テストパターン100を印刷する。インクジェットプリンタ10は、例えば、複数色の各色毎に、それぞれの色のインクを用いて、各色に対応するテストパターン100を印刷してもよい。
【0059】
また、図中に示した座標軸のうち、Y方向は、主走査方向である。X方向は、副走査方向である。本例において、インクジェットプリンタ10は、複数の吐出量指定パターン150a〜150cを、主走査方向へ並べて印刷する。また、吐出量指定パターン150a〜150cのそれぞれにおいて、白線形成パターン部102、送り量確認用パターン部104、及びドット位置確認用パターン部106を、副走査方向へ並べて印刷する。
【0060】
以下、白線形成パターン部102、送り量確認用パターン部104、及びドット位置確認用パターン部106のそれぞれについて、更に詳しく説明する。最初に、送り量確認用パターン部104、及びドット位置確認用パターン部106について説明する。
【0061】
図3は、送り量確認用パターン部104及びドット位置確認用パターン部106について更に詳しく説明する図である。
図3(a)は、送り量確認用パターン部104について更に詳しく説明する図である。
【0062】
送り量確認用パターン部104は、インクジェットヘッド12に対して相対的に媒体50を移動させる送り量の設定の確認に用いるパターンである。この送り量は、例えば、1回の副走査動作において媒体50を移動させる量である。また、送り量の設定とは、例えば、送り量を補正するデータである送り補正の設定のことである。
【0063】
本例において、送り量確認用パターン部104は、少なくとも2回の連続する主走査動作により形成されるパターンである。また、送り量確認用パターン部104は、各回の主走査動作により形成される部分の境界部分に、境界部分を示す見出し線を有する。
【0064】
送り量確認用パターン部104において、各回の主走査動作により形成される部分は、最大のドットサイズで全ての画素を形成するベタ印字(ドット濃度100%)よりも薄い濃度で全体を塗りつぶしたパターンである。この部分のパターンは、例えば、網掛けパターン等であってもよい。
【0065】
このような送り量確認用パターン部104を印刷した場合、送り量の設定が適切であれば、
図3(a)の中央部において正常な状態として示したように、各回の主走査動作により形成される部分は、互いに重なることなく連続して均一に形成される。そのため、この場合、各回の主走査動作の境界部分は目立たない。
【0066】
一方、送り量の設定が大き過ぎる場合、
図3(a)の上部において送り量過剰な状態として示したように、各回の主走査動作により形成される部分に隙間が生じ、境界部分に白筋が生じる。また、送り量の設定が小さ過ぎる場合、
図3(a)の下部において送り量不足な状態として示したように、各回の主走査動作により形成される部分が重なって濃い部分となり、境界部分に黒筋が生じる。そのため、本例において、送り量の設定が不適切である場合、送り量確認用パターン部104の見出し線の位置に筋が現れることとなる。そのため、本例によれば、例えば、送り量の設定の適否を適切に確認できる。
【0067】
図3(b)は、ドット位置確認用パターン部106について更に詳しく説明する図である。ドット位置確認用パターン部106は、媒体50上に形成されるドットの位置の設定の確認に用いるパターンである。
【0068】
本例において、ドット位置確認用パターン部106は、少なくとも2回の連続する主走査動作により形成されるパターンである。また、ドット位置確認用パターン部106は、各回の主走査動作により形成される部分の境界部分に、境界部分を示す見出し線を有する。
【0069】
ドット位置確認用パターン部106において、各回の主走査動作により形成される部分は、副走査方向へ延伸する複数の直線が主走査方向へ並ぶパターンである。各直線は、1回の主走査動作により形成される部分の副走査方向における幅全体分の長さを有する。また、各直線において、主走査動作の境界部分側の端部は、直線における他の部分と比べ、太くなっている。
【0070】
この場合、ドットの位置の設定が適切であれば、
図3(b)の上部において正常な状態として示したように、各主走査動作で形成される複数の直線は、副走査方向へ連続して繋がる。この場合、見出し線で示される主走査動作の境界部分の近傍は、他の部分より若干濃くなるが、直線の本数の密度は、他の部分と変わらない。そのため、他の部分での直線1本に対する境界部分の直線の本数は、1本となる。
【0071】
一方、ドットの位置の設定が不適切であり、位置ずれが発生している場合、
図3(b)の下部において位置すれの状態として示したように、連続する主走査動作によりそれぞれにおいて形成される複数の直線の位置にずれが生じ、繋がらなくなる。そのため、主走査動作の境界部分では、他の部分において1本の線がある範囲に、2本の線が見える状態となる。また、その結果、境界部分は、正常な状態と比べて濃くなる。そのため、本例によれば、例えば、位置ずれの有無を適切に確認できる。また、これにより、例えば、媒体50上に形成されるドットの位置の設定の適否を適切に確認できる。
【0072】
尚、送り量確認用パターン部104及びドット位置確認用パターン部106としては、上記の他に、各種の公知のパターンを用いてもよい。また、本例において、送り量確認用パターン部104及びドット位置確認用パターン部106は、複数の吐出量指定パターン150a〜150c(
図2参照)のそれぞれにおいて、それぞれ異なる設定の吐出量で形成される。そのため、本例によれば、吐出量の設定毎に、送り量及びドットの位置の設定を適切に確認できる。
【0073】
図4は、白線形成パターン部102について更に詳しく説明する図である。
図4(a)は、白線形成パターン部102の各部について説明する図である。本例において、白線形成パターン部102は、白線部を除き、インクジェットヘッド12から吐出されるインクにより一定の領域(ベタ領域200)を塗りつぶしたパターンである。ベタ領域200は、例えば、サイズが大(Large)のドットを各画素の位置に形成することにより、濃度100%でベタ印字を行った領域である。白線部は、例えば、周囲が塗りつぶされている中で、インクジェットヘッド12からインクを吐出しないことにより形成される白線である。
【0074】
また、本例において、白線形成パターン部102は、白線部として、それぞれ複数のY方向1ドット白線202、Y方向2ドット白線204、Y方向3ドット白線206、X方向1ドット白線212、X方向2ドット白線214、及びX方向3ドット白線216を有する。また、これらの位置を示すマーカとして、引き出し線402、黒丸302、黒三角304、黒四角306、白丸312、白三角314、及び白四角316を有する。
【0075】
複数のY方向1ドット白線202は、複数の第1方向第1白線の一例であり、インクジェットヘッド12から吐出されるインクにより形成されるドット1個分の幅で、主走査方向(Y方向)へそれぞれ延伸する。主走査方向は、第1の方向の一例である。ドット1個分の幅とは、例えば、印刷の解像度に応じた1画素分の幅である。
【0076】
また、複数のY方向1ドット白線202のそれぞれは、例えば、副走査方向へ一定の間隔で並ぶ。副走査方向は、第1の方向と直交する第2の方向の一例である。この間隔は、例えば3mm以上とすることが好ましい。この間隔は、例えば3〜7mm(例えば5mm程度)であってよい。
【0077】
複数のY方向2ドット白線204は、第1方向第2白線の一例であり、ドット2個分の幅で、主走査方向へそれぞれ延伸する。ドット2個分の幅とは、例えば、印刷の解像度に応じた2画素分の幅である。複数のY方向2ドット白線204は、例えば、複数のY方向1ドット白線202が形成されている領域と副走査方向において離間した領域に形成される。また、複数のY方向2ドット白線204のそれぞれは、例えば、副走査方向へ一定の間隔で並ぶ。この間隔は、例えば3mm以上とすることが好ましい。この間隔は、Y方向1ドット白線202の間隔と同じであってよい。
【0078】
複数のY方向3ドット白線206は、複数の第1方向第3白線の一例であり、ドット3個分の幅で、主走査方向へそれぞれ延伸する。ドット3個分の幅とは、例えば、印刷の解像度に応じた3画素分の幅である。複数のY方向3ドット白線206は、例えば、複数のY方向1ドット白線202、及び複数のY方向2ドット白線204が形成されている領域と副走査方向において離間した領域に形成される。また、複数のY方向3ドット白線206のそれぞれは、例えば、副走査方向へ一定の間隔で並ぶ。この間隔は、例えば3mm以上とすることが好ましい。この間隔は、Y方向1ドット白線202の間隔と同じであってよい。
【0079】
複数のX方向1ドット白線212は、複数の第2方向第1白線の一例であり、ドット1個分の幅で、副走査方向(X方向)へそれぞれ延伸する。また、複数のX方向1ドット白線212のそれぞれは、例えば、主走査方向へ一定の間隔で並ぶ。この間隔は、例えば3mm以上とすることが好ましい。この間隔は、Y方向1ドット白線202の間隔と同じであってよい。
【0080】
複数のX方向2ドット白線214は、複数の第2方向第2白線の一例であり、ドット2個分の幅で、副走査方向へそれぞれ延伸する。複数のX方向2ドット白線214は、例えば、複数のX方向1ドット白線212が形成されている領域と主走査方向において離間した領域に形成される。また、複数のX方向2ドット白線214のそれぞれは、例えば、主走査方向へ一定の間隔で並ぶ。この間隔は、例えば3mm以上とすることが好ましい。この間隔は、X方向1ドット白線212の間隔と同じであってよい。
【0081】
複数のX方向3ドット白線216は、複数の第2方向第3白線の一例であり、ドット3個分の幅で、副走査方向へそれぞれ延伸する。複数のX方向3ドット白線216は、例えば、複数のX方向1ドット白線212、及びX方向2ドット白線214が形成されている領域と主走査方向において離間した領域に形成される。また、複数のX方向3ドット白線216のそれぞれは、例えば、主走査方向へ一定の間隔で並ぶ。この間隔は、例えば3mm以上とすることが好ましい。この間隔は、X方向1ドット白線212の間隔と同じであってよい。
【0082】
また、本例において、各Y方向1ドット白線202、各Y方向2ドット白線204、及び各Y方向3ドット白線206は、副走査方向へ延伸することにより、各X方向1ドット白線212、各X方向2ドット白線214、及び各X方向3ドット白線216と直交する。これにより、白線形成パターン部102は、ドット濃度100%のベタ塗りの図柄の中に、1/2/3ドットの隙間の縦横の白線部がそれぞれ並ぶ格子状のパターンとなる。尚、白線形成パターン部102に形成される各白線部の幅は、例えばインクジェットプリンタ10の用途等に応じて、上記以外の幅に適宜設定することも考えられる。
【0083】
引き出し線402は、インクジェットヘッド12から吐出されるインクにより形成される線であり、各Y方向1ドット白線202、各Y方向2ドット白線204、各Y方向3ドット白線206、各X方向1ドット白線212、各X方向2ドット白線214、及び各X方向3ドット白線216の延長線上に形成される。そのため、本例によれば、例えば、引き出し線402の位置に基づき、各白線部の位置を目視により適切に確認できる。
【0084】
尚、例えば、ノズル抜け等の不良が発生している場合、本来白線部を形成しようとする位置以外にも、白筋等の白線が生じる場合がある。この場合、例えば引き出し線402がないとすると、白線形成パターン部102に本来含まれるべき白線部と、不良が原因で発生した白筋等を、適切に見分けることが困難になる。これに対し、本例によれば、白線形成パターン部102に本来含まれるべき白線部を適切に見分けることができる。また、例えば、引き出し線402のない位置に発生した白筋等を確認することにより、ノズル抜け等の不良を適切に発見することも可能になる。
【0085】
黒丸302、黒三角304、黒四角306、白丸312、白三角314、及び白四角316は、白線部の種類を示すマーカであり、各白線部の一端の近傍に形成されることにより、その位置に形成されている白線部の種類を示す。本例において、黒丸302、黒三角304、及び黒四角306のそれぞれは、Y方向1ドット白線202、Y方向2ドット白線204、及びY方向3ドット白線206のそれぞれを示す。また、白丸312、白三角314、及び白四角314のそれぞれは、X方向1ドット白線212、X方向2ドット白線214、及びX方向3ドット白線216のそれぞれを示す。本例によれば、例えば、形成されている白線部の種類を目視により容易かつ適切に区別できる。
【0086】
以下、白線形成パターン部102の確認の仕方について説明する。白線形成パターン部102の確認において、どの白線部の状態を先に判断するかは、確認しようとする項目等に応じて、以下で説明する順番以外にも、適宜変更可能である。また、本例において、白線形成パターン部102の確認は、送り量確認用パターン部104及びドット位置確認用パターン部106(
図2参照)を用いて送り量及びドットの位置の設定が適切に行われていることが確認できた状態で行う。これは、例えば、送り量やドットの位置の設定が不適切であると、ドットの直径の確認を適切に行えないおそれがあるためである。本例によれば、例えば、送り量やドットの位置の設定を先に行うことにより、インクのドットの直径を、より適切に確認できる。
【0087】
また、本例において、白線形成パターン部102の確認は、各白線部が埋まっている状態にあるか否かを目視により判断することにより行う。白線部が埋まっている状態とは、例えば、少なくともいずれかの角度から観察した場合、白線部が周囲の塗りつぶした部分に埋まり、目視では見えなくなることである。この状態は、例えば、白線部の位置が周囲のドットの中に埋まり、かつ、その位置の色が周囲のベタ塗りの領域と同等である状態である。また、この状態は、ある角度で観察した場合には白線部の位置が光って見えたり、溝に見えたりするが、別のある角度で観察すると、白線部が見えない状態であってよい。また、いずれの角度から観察しても、白線部が見えない状態であってもよい。
【0088】
尚、白線部が周囲のドットに十分に埋まっている場合でも、観察する角度によっては、光の反射の影響により、白線部の位置が浮き上がって見えたり、溝に見えたりする場合もある。これは、光の反射の影響で、角度によっては、白線部の位置の凹凸が目立つ状態になるためである。そのため、白線部の観察は、印刷物の表面が光の反射の影響を受けにくい角度で行うことが好ましい。
【0089】
また、白線部が埋まっていない状態とは、例えば、いずれの角度から観察しても白線部が目視により見える状態である。この状態は、例えば、いずれの角度から観察した場合にも、少なくともうっすら白線が残っているように見える状態であってよい。
【0090】
また、本例において、白線部が埋まっているか否かの判断は、先ず、例えば、Y方向1ドット白線202及びX方向1ドット白線212(以下、1ドット白線とする)に対して行う。本例において、1ドット白線は、ドットの直径の下限、すなわち、ドットの直径が不足していないかを判断するために用いる白線部である。
【0091】
1ドット白線について確認する場合、ユーザは、例えば、黒丸302の位置の横方向(Y方向)及び、白丸312の位置の縦方向(X方向)について、白線部の埋まり具合を、印刷物を上下左右に傾けて、様々な角度から目視により観察する。これにより、ユーザは、この位置において白線部が見えるかどうかを観察する。そして、この位置において、白線部が見えない状態である場合、1ドット白線は埋まっている状態にあると判断する。
【0092】
ここで、白線部が埋まっていない状態は、例えば、白線部の周囲に形成されたドットの直径が小さく、白線部を埋めるには不十分である場合に生じる。そのため、1ドット白線が埋まっていない状態の場合、ドットの直径は不十分であると判断できる。ドットの直径が不十分である場合、印刷結果において、かすれや白筋が発生する可能性が高くなる。
【0093】
一方、白線部が埋まっている状態は、例えば、白線部の周囲に形成されたドットの直径が十分に大きい場合に生じる。そのため、1ドット白線が埋まっている状態にある場合、ドットの直径は、必要な下限値よりも大きく、十分であると判断できる。
【0094】
尚、インクのドットの直径が十分であるとは、例えば、インクジェットプリンタのマシン精度によって生じる送り誤差によるドット位置のずれが最大の場合でも、ドットの濃度を100%とするベタ印字を行った場合に、媒体50上を隙間なく埋めることができるドットの直径であることを言う。例えば、600dpi×600dpiの解像度の場合、600dpiの解像度に対応する理想の直径は、59μmである。これに対し、インクジェットプリンタ10の送り誤差を考慮して、+0〜30μmを加えると、59〜89μmとなる。また、光縞を低減するためにドットの間引きをすることを考慮すると、更に+40μmを加え、100〜130μmとなる。そして、これらに加え、ドットで埋まった隙間部分の色濃度が周囲の色濃度と同等になることを考えると、ドットの直径は、100〜130μmであり、かつ、ベタ部分と隙間部分の色濃度差が目立たない状態とすることが好ましい。
【0095】
続いて、1ドット白線により、ドットの直径が十分に大きいと判断できた場合、続いて、例えば、白線部が埋まっているか否かの判断を、Y方向2ドット白線204及びX方向2ドット白線214(以下、2ドット白線とする)に対して行う。本例において、2ドット白線は、ドットの直径の上限、すなわち、ドットの直径が過剰でないかを判断するために用いる白線部である。2ドット白線について確認する場合、ユーザは、例えば、黒三角304の位置の横方向及び、白三角314の位置の縦方向について、1ドット白線の場合と同様にして、観察を行う。
【0096】
2ドット白線については、いずれかの角度から見た場合に白線部が見える状態が正常である。この場合、ドットの直径は、過剰ではなく、適切な大きさの範囲であると判断できる。一方、2ドット白線も埋まった状態にある場合、ドットの直径が、上限を超え、過剰であると判断できる。
【0097】
尚、本例において、Y方向3ドット白線206及びX方向3ドット白線216(以下、3ドット白線とする)は、埋まる可能性の低いはっきりとした白線として用いるための、予備的な白線部である。1ドット白線及び2ドット白線が見える状態か否かを判断する場合、3ドット白線と対比し、コントラストを確認することにより、1ドット白線及び2ドット白線が見える状態か否かを適切に判断しやすくなる。また、黒四角306の位置の横方向や、黒四角306の位置の縦方向において、いずれかの3ドット白線が見えない状態になっている場合、ドットの直径が明らかに過剰であると判断できる。
【0098】
本例によれば、例えば、印刷を行った印刷環境におけるインクのドットの直径を適切に確認できる。また、例えば、周囲を塗りつぶした状態で、十分な間隔を空けて各白線部を形成することにより、目視による観察が行いやすくなる。また、各白線部を、直交する2つの方向へそれぞれ複数本ずつ形成することにより、白線部の状態をより適切に確認できる。
【0099】
そのため、本例によれば、例えば、特別な測定機器等を用いることなく、容易な判断方法により、ユーザレベルにおいて、ドットの直径が不足しているかどうかを確認できる。また、これにより、例えば、媒体50に形成されるドットの直径を適切に確認できる。
【0100】
また、白筋の原因となりやすいドットの直径の不足について、ユーザ自身で確認を行うことにより、白筋の問題の発生を未然に防ぎやすくなる。また、例えばユーザの環境において、白筋の発生等の画質の問題が発生した場合にも、例えば、メーカのエンジニアと電話等で情報交換することにより、白線形成パターン部102を用いて、ドットの直径の不足に関する確認や助言を受けることが可能になる。また、メーカのエンジニアも、現地に赴くことなく、より適切に判断や助言を行うことが可能になる。
【0101】
ここで、本例において、テストパターン100(
図2参照)は、それぞれ異なる吐出量の設定で形成される複数の吐出量指定パターン150a〜150cに対応して、複数の白線形成パターン部102を有する。白線形成パターン部102の確認においては、例えば、先ず、吐出量の設定が最も大きな吐出量指定パターン150cの白線形成パターン部102に対し、1ドット白線が埋まっている状態か否かを判断することが好ましい。
【0102】
この場合、吐出量指定パターン150cの白線形成パターン部102において、1ドット白線が埋まっている状態であれば、少なくとも、テストパターン100を印刷した印刷環境、例えば、インクジェットプリンタ10、媒体50、及び設置環境の組み合わせにおいて、十分なドットの直径を実現できることを、目視により迅速に判断できる。
【0103】
また、吐出量指定パターン150cの白線形成パターン部102において、1ドット白線が埋まっていない場合、その印刷環境では、ドットの直径が不足することがわかる。そのため、例えば、使用している媒体50ではドットの直径が不足することを、早い段階で適切に判断できる。また、これにより、媒体50の種類を変更すること等が可能となるため、ドットの直径が不足する媒体50を使用することが少なくなる。
【0104】
また、吐出量指定パターン150cの白線形成パターン部102により、印刷環境においてドットの直径を十分にし得ることが確認できた場合、例えば、吐出量指定パターン150a、及び吐出量指定パターン150bの白線形成パターン部102の確認結果に更に基づき、印刷環境に合わせた印刷条件の設定等を行うことができる。以下、印刷条件の設定について更に詳しく説明する。
【0105】
図4(b)は、印刷条件の設定の一例を説明する図であり、印刷条件の設定に用いる表の一例を示す。以下において説明する印刷条件の設定は、サイズが大(Large)のインクのドットの1個あたりに吐出するインクの吐出量の設定(以下、Large設定とする)である。Large設定の設定値の変更は、例えば、印刷条件を示すプロファイル情報において、ドットの直径又はドットサイズ等の設定の変更により行う。
【0106】
また、表において、L3は、吐出量指定パターン150aにおける1ドット白線の観察結果を示す。また、L6は、吐出量指定パターン150bにおける1ドット白線の観察結果を示す。L9は、吐出量指定パターン150cにおける1ドット白線の観察結果を示す。また、Case1〜3は、それぞれ異なる印刷環境における結果を示す。
【0107】
Case1として示した印刷環境の場合、1ドット白線は、L3、L6の設定におけるインクの吐出量では埋まらず、かつ、L9の設定では埋まる。そのため、この場合、Large設定を、L6の場合よりも大きく、例えば、7,8,9のいずれかを目安に設定することが考えられる。
【0108】
また、Case2として示した印刷環境の場合、1ドット白線は、L3の設定では埋まらず、かつ、L6、L9の設定では埋まる。そのため、この場合、Large設定を、L3の場合よりも大きく、L6の前後の値とした、5,6,7のいずれかを目安に設定することが考えられる。
【0109】
また、Case3として示した印刷環境の場合、1ドット白線は、L3、L6、L9のいずれの設定でも埋まる。そのため、この場合、Large設定を、L6未満の3,4,5のいずれかを目安に設定することが考えられる。
【0110】
このように、本例によれば、例えば、印刷環境の準備後、テストパターン100を印刷し、目視により判断を行うことにより、印刷条件を適切に設定できる。また、印刷条件の設定においては、例えば、吐出量の設定を変えた吐出量指定パターン150a〜150cにおける1ドット白線の埋まり具合を目視により観察し、所定の表と照合することにより、Large設定の設定を適切に選出できる。
【0111】
これにより、例えば、インクジェットプリンタにおける印刷条件の設定等を適切に行うことが可能となる。また、印刷条件の設定を適切に行うことにより、例えば、高い品質の印刷を適切に行うことができる。
【0112】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。