特許第5734634号(P5734634)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5734634距離測定装置,光多重化装置,光ネットワーク及び距離測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734634
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】距離測定装置,光多重化装置,光ネットワーク及び距離測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   G01M11/00 R
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-277221(P2010-277221)
(22)【出願日】2010年12月13日
(65)【公開番号】特開2012-127693(P2012-127693A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100096873
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 廣泰
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆朗
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−121303(JP,A)
【文献】 特開2010−156680(JP,A)
【文献】 特開2010−101670(JP,A)
【文献】 特開2005−311824(JP,A)
【文献】 特開2010−212490(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/043056(WO,A1)
【文献】 特開2003−051785(JP,A)
【文献】 特表2012−506171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された光信号を用いて、出力側に接続された複数の光ファイバのうちの測定光ファイバに所定時間だけ出力を切り替えることにより、前記測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能な光切替器と、
前記測定光ファイバ内の故障箇所である検査対象位置において、前記光切替器から発信された前記パルス状の光信号が反射または散乱することによって戻ってくる戻り光を、前記測定光ファイバから分岐させる方向性結合器と、
該方向性結合器によって分岐された戻り光を受信する光受信器と、
を備え、
前記光切替器から前記パルス状の光信号が発信されてから前記光受信器によって前記戻り光を受信するまでの時間によって、前記光切替器又は前記光受信器から前記測定光ファイバ内の前記故障箇所である前記検査対象位置までの距離を測定することを特徴とする距離測定装置。
【請求項2】
前記光切替器は、入力される異なる複数の波長毎の光を用いて、前記測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能な光切替器であることを特徴とする請求項1に記載の距離測定装置。
【請求項3】
前記光切替器は、オンオフ制御によって傾き位置が変化する微小ミラーにより、入力された光信号を反射させることによって、出力側に接続された前記複数の光ファイバのうちの前記測定ファイバに入射可能なDMDを有することを特徴とする請求項1または2に記載の距離測定装置。
【請求項4】
入力された光信号を用いて、出力側に接続された測定光ファイバへの出力を所定時間だけ遮断状態から通過状態に切り替えることにより、前記測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能な光遮断器と、
前記測定光ファイバ内の故障箇所である検査対象位置において、前記光遮断器から発信された前記パルス状の光信号が反射または散乱することによって戻ってくる戻り光を、前記測定光ファイバから分岐させる方向性結合器と、
該方向性結合器によって分岐された戻り光を受信する光受信器と、
を備え、
前記光遮断器から前記パルス状の光信号が発信されてから前記光受信器によって前記戻り光を受信するまでの時間によって、前記光遮断器又は前記光受信器から前記測定光ファイバ内の前記故障箇所である前記検査対象位置までの距離を測定することを特徴とする距離測定装置。
【請求項5】
前記光遮断器は、入力される異なる複数の波長毎の光を用いて、前記測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能な光遮断器であることを特徴とする請求項4に記載の距離測定装置。
【請求項6】
前記光遮断器は、オンオフ制御によって傾き位置が変化する微小ミラーにより、入力された光信号を反射させることによって、出力側に接続された前記複数の光ファイバのうちの前記測定ファイバに入射可能なDMDを有することを特徴とする請求項4または5に記載の距離測定装置。
【請求項7】
入力された光信号を用いて、出力側に接続された測定光ファイバへの出力を所定時間だけ遮断状態から解除することにより、前記測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能な光減衰器と、
前記測定光ファイバ内の故障箇所である検査対象位置において、前記光減衰器から発信された前記パルス状の光信号が反射または散乱することによって戻ってくる戻り光を、前記測定光ファイバから分岐させる方向性結合器と、
該方向性結合器によって分岐された戻り光を受信する光受信器と、
を備え、
前記光減衰器から前記パルス状の光信号が発信されてから前記光受信器によって前記戻り光を受信するまでの時間によって、前記光減衰器又は前記光受信器から前記測定光ファイバ内の前記故障箇所である前記検査対象位置までの距離を測定することを特徴とする距離測定装置。
【請求項8】
前記光減衰器は、入力される異なる複数の波長毎の光を用いて、前記測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能な光減衰器であることを特徴とする請求項7に記載の距離測定装置。
【請求項9】
前記光減衰器は、オンオフ制御によって傾き位置が変化する微小ミラーにより、入力された光信号を反射させることによって、出力側に接続された前記複数の光ファイバのうちの前記測定ファイバに入射可能なDMDを有することを特徴とする請求項7または8に記載の距離測定装置。
【請求項10】
前記測定光ファイバは、基幹ネットワークを構成する光ファイバであり、
前記測定光ファイバに対して任意の波長の光を加えることのできるアド用光切替器を備える光多重化装置において、
前記アド用光切替器が、前記請求項1,2または3に記載の距離測定装置における前記光切替器として用いられることを特徴とする光多重化装置。
【請求項11】
請求項1,2または3に記載の距離測定装置における前記方向性結合器及び前記光受信器を備えることを特徴とする請求項10に記載の光多重化装置。
【請求項12】
測定光ファイバによって構成される基幹ネットワークと、
基幹ネットワーク上に設けられる複数の光多重化装置と、
各光多重化装置にそれぞれ接続される複数のローカルネットワークと、
を備える光ネットワークにおいて、
前記複数の光多重化装置のうちの少なくとも一つの光多重化装置に備えられたアド用光
切替器を、前記請求項1,2または3に記載の距離測定装置における前記光切替器として用いることを特徴とする光ネットワーク。
【請求項13】
入力された光信号を用いて、出力側に接続された複数の光ファイバのうちの測定光ファイバに所定時間だけ出力を切り替えることにより、前記測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能な光切替器と、
前記測定光ファイバ内の故障箇所である検査対象位置において、前記光切替器から発信された前記パルス状の光信号が反射または散乱することによって戻ってくる戻り光を、前記測定光ファイバから分岐させる方向性結合器と、
該方向性結合器によって分岐された戻り光を受信する光受信器と、
を用い、
前記光切替器から前記測定光ファイバに前記パルス状の光信号を発信するステップと、
前記方向性結合器により分岐されることで前記測定光ファイバ内の検査対象位置から戻ってくる戻り光を、前記光受信器により受信するステップと、
前記光切替器から前記パルス状の光信号が発信されてから前記光受信器によって前記戻り光を受信するまでの時間によって、前記光切替器又は前記光受信器から前記測定光ファイバ内の前記故障箇所である前記検査対象位置までの距離を導出するステップと、
を有することを特徴とする距離測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ内の検査対象位置(故障個所等)を特定するために、測定位置から検査対象位置までの距離を測定する距離測定装置,光多重化装置,光ネットワーク及び距離測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ネットワークにおいて、光信号を電気信号に変換することなく信号処理が可能で、かつパスの設定を遠隔操作することが可能なROADM(再構成可能光分岐挿入多重化装置(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer))等の光多重化装置が開発さ
れている(特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、光ファイバ内の検査対象位置を特定する場合、光パルスを発信する光源や、レイリー散乱による後方散乱光を検出する検出器などから構成されるOTDR(光パルス試験器(Optical Time Domain Reflectmeter))が用いられる(特許文献2参照)。上記のように光多重化装置を用いた光ネットワークにおいても、光ネットワークを構成する光ファイバ内の故障個所等の検査対象位置を、OTDRを用いて特定することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−98545号公報
【特許文献2】特開平11−142293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、故障個所等を調べるための専用の試験器(OTDR)を用いることによって、光ファイバ内の故障個所等の検査対象位置を特定することができる。
【0006】
しかしながら、本願発明者は、光多重化装置の機能(より具体的には、光多重化装置に備えられる装置の機能)に着目し、当該機能を巧みに利用することにより、専用の試験器を用いなくても、光ファイバ内の検査対象位置の特定を実現するに至った。
【0007】
本発明の目的は、専用の試験器(OTDR)を用いることなく、光ファイバ内の故障個所等を特定可能とする距離測定装置,光多重化装置,光ネットワーク及び距離測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明の距離測定装置は、
入力された光を用いて、出力側に接続された複数の光ファイバのうちの測定光ファイバに所定時間だけ出力を切り替えることにより、前記測定光ファイバにパルス状の光信号(例えば、約20msの光パルス信号)を発信可能な光切替器(例えば、MEMS型光スイッチや導波路型光スイッチ)と、
前記測定光ファイバ内の検査対象位置において、前記光切替器から発信された光信号が反射(例えば、光ファイバの接続箇所からの反射)または散乱(例えば、故障個所における散乱)することによって戻ってくる戻り光を、前記測定光ファイバから分岐させる方向
性結合器(方向性結合カプラなど)と、
該方向性結合器によって分岐された戻り光を受信する光受信器と、
を備え、
前記光切替器から光信号が発信されてから前記光受信器によって前記戻り光を受信するまでの時間によって、前記光切替器又は前記光受信器から前記検査対象位置までの距離を測定することを特徴とする。
【0010】
また、別の発明の距離測定装置は、入力された光を用いて、出力側に接続された測定光ファイバへの出力を所定時間だけ遮断状態から通過状態に切り替えることにより、前記測定光ファイバにパルス状の光信号(例えば、約20msの光パルス信号)を発信可能な光遮断器と、
前記測定光ファイバ内の検査対象位置において、前記光遮断器から発信された光信号が反射(例えば、光ファイバの接続箇所からの反射)または散乱(例えば、故障個所における散乱)することによって戻ってくる戻り光を、前記測定光ファイバから分岐させる方向性結合器(方向性結合カプラなど)と、
該方向性結合器によって分岐された戻り光を受信する光受信器と、
を備え、
前記光遮断器から光信号が発信されてから前記光受信器によって前記戻り光を受信するまでの時間によって、前記光遮断器又は前記光受信器から前記検査対象位置までの距離を測定することを特徴とする。
【0011】
更に別の発明の距離測定装置は、入力された光を用いて、出力側に接続された測定光ファイバへの出力を所定時間だけ遮断状態から解除することにより、前記測定光ファイバにパルス状の光信号(例えば、約20msの光パルス信号)を発信可能な光減衰器と、
前記測定光ファイバ内の検査対象位置において、前記光減衰器から発信された光信号が反射(例えば、光ファイバの接続箇所からの反射)または散乱(例えば、故障個所における散乱)することによって戻ってくる戻り光を、前記測定光ファイバから分岐させる方向性結合器(方向性結合カプラなど)と、
該方向性結合器によって分岐された戻り光を受信する光受信器と、
を備え、
前記光減衰器から光信号が発信されてから前記光受信器によって前記戻り光を受信するまでの時間によって、前記光減衰器又は前記光受信器から前記検査対象位置までの距離を測定することを特徴とする。
【0012】
これらの発明においては、光切替器,光遮断器又は光減衰器(以下、適宜、「光切替器等」と称する)を利用して、測定光ファイバにパルス状の光信号を発信することによって、光切替器等又は光受信器から検査対象位置までの距離を測定する構成を採用している。これにより、検査対象位置を特定することができる。従って、「測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能な光切替器等」を備えるネットワーク等においては、本発明の構成を採用することで、専用の試験器(OTDR)を用いることなく、光ファイバ内の検査対象位置(故障個所等)を特定することができる。
【0013】
前記光切替器等は、入力される異なる複数の波長毎の光を用いて、前記測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能な光切替器等であるとよい。
【0014】
これにより、特定の波長の光が通る経路の検査対象位置を特定することができる。
【0015】
前記光切替器等は、オンオフ制御によって傾き位置が変化する微小ミラーにより、入力された光信号を反射させることによって、出力側に接続された前記複数の光ファイバのうちの前記測定ファイバに入射可能なDMDを有するとよい。
【0016】
これにより、光切替器等に入力される光信号が連続光であっても、DMDへのオンオフ制御による微小ミラーからの反射光の向きの切り替えによって、パルス状の光信号を発信することができる。
【0017】
また、前記測定光ファイバは、基幹ネットワークを構成する光ファイバであり、
前記測定光ファイバに対して任意の波長の光を加えることのできるアド用光切替器を備える光多重化装置において、
前記アド用光切替器が、上記の距離測定装置における前記光切替器として用いられることを特徴とする。
【0018】
このように、測定光ファイバに光多重化装置が接続されている場合には、光多重化装置に備えられたアド用光切替器により、パルス状の光信号を発生させることで、検査対象位置を特定することが可能となる。なお、アド用光切替器に入力させる光は、当該アド用光切替器を備えた光多重化装置内のトランスポンダから送られる光を利用してもよいし、他の光多重化装置内のトランスポンダから送られる光を利用してもよいし、光多重化装置以外の光源からの光を利用してもよい。
【0019】
ここで、アド用光切替器が上記の距離測定装置における前記光切替器として用いられる光多重化装置内に、更に、上記の距離測定装置における前記方向性結合器及び前記光受信器を備えるとよい。
【0020】
このようにすれば、一つの多重化装置内に、パルス状の光信号を発信する光切替器と、光受信器とが備えられるため、光切替器から光信号が発信されてから光受信器によって受信するまでの時間の測定を簡易的な構成で実現できる。
【0021】
また、本発明の光ネットワークは、
測定光ファイバによって構成される基幹ネットワークと、
基幹ネットワーク上に設けられる複数の光多重化装置と、
各光多重化装置にそれぞれ接続される複数のローカルネットワークと、
を備える光ネットワークにおいて、
前記複数の光多重化装置のうちの少なくとも一つの光多重化装置に備えられたアド用光切替器を、上記の距離測定装置における前記光切替器として用いることを特徴とする。
【0022】
これにより、専用の試験器(OTDR)を用いることなく、基幹ネットワークを構成する光ファイバ内の検査対象位置の特定を行うことができる。
【0023】
また、本発明の距離測定方法は、
入力された光を用いて、出力側に接続された複数の光ファイバのうちの測定光ファイバに所定時間だけ出力を切り替えることにより、前記測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能な光切替器と、
前記測定光ファイバ内の検査対象位置において、前記光切替器から発信された光信号が反射または散乱することによって戻ってくる戻り光を、前記測定光ファイバから分岐させる方向性結合器と、
該方向性結合器によって分岐された戻り光を受信する光受信器と、
を用い、
前記光切替器から前記測定光ファイバにパルス状の光信号を発信するステップと、
前記方向性結合器により分岐されることで前記光ファイバ内の検査対象位置から戻ってくる戻り光を、前記光受信器により受信するステップと、
前記光切替器から光信号が発信されてから前記光受信器によって前記戻り光を受信する
までの時間によって、前記光切替器又は前記光受信器から前記検査対象位置までの距離を導出するステップと、
を有することを特徴とする。
【0024】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、専用の試験器(OTDR)を用いることなく、光ファイバ内の故障個所等の検査対象位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は光多重化装置を用いた光ネットワークの概略構成図である。
図2図2は本発明の第1の実施形態に係る光多重化装置のブロック図である。
図3図3は波長選択スイッチの概略構成図である。
図4図4は本発明の第1の実施形態に係る距離測定装置のブロック図である。
図5図5は本発明の第1の実施形態に係る距離測定装置の応用例1を示すブロック図である。
図6図6は本発明の第1の実施形態に係る距離測定装置の応用例2を示すブロック図である。
図7図7は波長ブロッカ(波長フィルタ)の概略構成図である。
図8図8は本発明の第2の実施形態に係る距離測定装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0028】
(第1の実施形態)
図1図6を参照して、本発明の第1の実施形態に係る距離測定装置,光多重化装置,光ネットワーク及び距離測定方法について説明する。
【0029】
<光ネットワーク>
特に、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る距離測定装置を適用可能な光ネットワークについて説明する。
【0030】
この光ネットワークは、リング状の光ファイバによって構成される基幹ネットワークNの複数の箇所に光分岐及び光挿入の両方が可能な光多重化装置(ROADM)が設置されている。図1に示す例においては、A地点,B地点,C地点,D地点の4か所にそれぞれ光多重化装置が設置されている場合を示している。以下、説明の便宜上、A,B,C,D地点に配置された光多重化装置については、適宜、それぞれ第1光多重化装置100a,第2光多重化装置100b,第3光多重化装置100c,第4光多重化装置100dと称する。これら第1光多重化装置100a,第2光多重化装置100b,第3光多重化装置100c、及び第4光多重化装置100dには、オフィスや家庭などのユーザとネットワークを結ぶためのローカルネットワークn1,n2,n3,n4がそれぞれ接続されている。
【0031】
光多重化装置の代表的な例であるROADMは、基幹ネットワークNを流れる波長多重された光信号の中から任意の波長の光信号を取り出して、ローカルネットワークnに送ることができ、また、ローカルネットワークnの中から任意の波長の光信号を基幹ネットワ
ークNに送ることもできる。図1においては、一例として、ある波長の光信号を、第1光多重化装置100aによってローカルネットワークn1から基幹ネットワークNに送り、第3光多重化装置100cによってローカルネットワークn3に送る場合(図中、矢印P1)と、別の波長の光信号を、第2光多重化装置100bによってローカルネットワークn2から基幹ネットワークNに送り、第4光多重化装置100dによってローカルネットワークn4に送る場合(図中、矢印P2)を示している。なお、図中矢印Sは、正方向の光信号の流れの方向を示している。
【0032】
ここで、光多重化装置は、光信号を電気信号に変換することなく信号処理を行うことができる。そのため、光多重化装置を用いた光ネットワークにおいては、基幹ネットワークNとローカルネットワークnとの相互の光信号の伝送速度を高速のまま維持できるメリットがある。また、光多重化装置を用いた光ネットワークにおいては、オペレーションセンター200から光多重化装置ノードを遠隔制御可能であることから、パス(ある波長の光の経路)を自在に設定できるメリットもある。
【0033】
<光多重化装置>
特に、図2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る光多重化装置(ROADM)100について説明する。
【0034】
光多重化装置100は、基幹ネットワークNを流れる光信号を分岐させる光カプラ10と、分岐された光信号のうち特定の波長の光信号をドロップさせるためのドロップ用波長選択スイッチ(WSS)20と、ドロップされた光信号が入力されて、ローカルネットワークn側に出力する第1トランスポンダ30とを備えている。また、光多重化装置100は、ローカルネットワークn側からの光信号が入力されて、基幹ネットワークN側に出力する第2トランスポンダ40と、上記のドロップした波長の光信号をブロックすると共に、第2トランスポンダ40から送られる光信号のうち特定の波長の光を基幹ネットワークNに加えるアド用波長選択スイッチ(WSS)50とを備えている。なお、図中、点線100Xで囲った部分は、一般的なROADMが備える構成群を示している。
【0035】
そして、本実施形態に係る光多重化装置100においては、一般的なROADM100Xが備える構成の他に、基幹ネットワークNを逆方向(図1,2中矢印Sとは反対方向)に流れる光信号を分岐させる方向性結合器60と、方向性結合器60で分岐された光信号を受信する光受信器70とを備えている。
【0036】
<波長選択スイッチ(WSS)>
光多重化装置100に備えられるアド用波長選択スイッチ50について説明する。波長選択スイッチ自体については公知技術であるので、図3の概略構成を示した図を用いて、概要のみを説明する。なお、以下の説明では、アド用波長選択スイッチ50について説明するが、ドロップ用波長選択スイッチ20については、光の進行方向が逆になるだけで、構成自体は同一である。また、波長選択スイッチには、光を集光するためのレンズや、拡散する光を平行光とするコリメータレンズなどの光学部品も備えられるが、図3では省略している。また、図3は1×2の波長選択スイッチを示している。この1×2の波長選択スイッチを後段に連結することをn回繰り返すことで1×2nの波長選択スイッチを構成できる。
【0037】
アド用波長選択スイッチ50は、DMD(Digital Micromirror Device)51と、入力ファイバf1,第1出力ファイバf2及び第2出力ファイバf3を結合するファイバアレイ52と、光合波・分波器53とを備えている。
【0038】
DMD51は、複数の可動な微小ミラーを備えている。以下、説明の便宜上、図3中、
上から順に、適宜、第1微小ミラー51a,第2微小ミラー51b,第3微小ミラー51c,第4微小ミラー51d,第5微小ミラー51e,第6微小ミラー51fと称して説明する。これらの微小ミラーは、それぞれ、オンオフ制御によって、2つの傾き位置を取るように構成されている。
【0039】
光合波・分波器53は、多重化された波長の異なる複数の光信号を各波長の光信号に分波し、また、波長の異なる複数の光信号を合波するものであり、回折格子やAWG(アレイ導波路グレーティング(Arrayed Waveguide Grating))によって構成される。
【0040】
以上の構成により、入力ファイバf1から光合波・分波器53に入力された多重化された波長の異なる複数の光信号は、各波長の光信号に分波される。図3に示す例では、6種類の波長の光信号に分波され、各波長の光信号は、それぞれ第1微小ミラー51a,第2微小ミラー51b,第3微小ミラー51c,第4微小ミラー51d,第5微小ミラー51e,第6微小ミラー51fに入射する。各微小ミラーは、例えば、オンの場合には、入射する光を光合波・分波器53のH部に導くように反射させ、オフの場合には、入射する光を光合波・分波器53のI部に導くように反射させるように構成されている。図3に示す例では、第2微小ミラー51bのみオフとし、その他の微小ミラーをオンとすることで、第2微小ミラー51bからの反射光を第2出力ファイバf3に導き、その他の微小ミラーからの反射光は、光合波・分波器53によって合波させた状態で第1出力ファイバf2に導く場合を示している。
【0041】
このように、波長選択スイッチ(WSS)は、多重化された波長の異なる複数の光信号の中から、任意の波長の光信号を第1出力ファイバf2に導き、残りの波長の光信号を第2出力ファイバf3に導くことができる。
【0042】
なお、米国特許公報US2009/0028501A1には、波長選択スイッチの一例が開示されている。この公報に開示されている波長選択スイッチにおいては、分波された光信号を平行光とした状態でDMDに入射させるためのコリメータレンズに対して、DMDからの反射光も導くように工夫した構成が開示されている。
【0043】
<距離測定装置>
特に、図4を参照して、本発明の第1の実施形態に係る距離測定装置について説明する。図4は距離測定に関係する主要構成を示すブロック図である。
【0044】
上述したように、光多重化装置100においては、アド用波長選択スイッチ50に向けて、第2トランスポンダ40を介してローカルネットワークn側からの光信号が送られる(図2図4中、矢印T10)。そして、距離測定を行う場合には、コンピュータ81の制御部からの命令に基づいて、コントローラ82により、アド用波長選択スイッチ50に備えられたDMD51を制御することによって、基幹ネットワークNを構成する光ファイバにパルス状の光信号を発信する(図2図4中矢印T20)。
【0045】
ここで、所望の波長の光をパルス状の光信号として発信させる場合の具体例な方法について、上述した図3に示すアド用波長選択スイッチ50を例にして説明する。例えば、第2微小ミラー51bに入射される波長の光信号を距離測定用の光信号としたい場合、第2微小ミラー51bをオンの状態から短時間オフにした後に再びオンの状態とする。DMDを用いた場合、オフにする時間を約20msという短時間に設定することも可能である。これにより、第2出力ファイバf3に対して、第2微小ミラー51bからの反射光が短時間だけ導かれる。従って、第2出力ファイバf3を通る光信号を、基幹ネットワークN内を通る多重化された光信号に加えるようにしておくことで、第2微小ミラー51bに入射される波長の光信号をパルス状にして、基幹ネットワークNを構成する光ファイバに発信
することが可能となる。
【0046】
発信されたパルス状の光信号は、基幹ネットワークNを構成する光ファイバ内の検査対象位置Pにおいて、反射または散乱する。すなわち、検査対象位置Pが光ファイバの接続箇所などの場合には、当該位置によって上記パルス状の光信号は反射する。また、検査対象位置Pが故障個所などの場合には、当該位置によって上記パルス状の光信号は散乱する。
【0047】
このように、検査対象位置Pにおいて反射または散乱することによって戻ってくる戻り光は、方向性結合器60によって、基幹ネットワークNを構成する光ファイバから分岐される(図2図4中、矢印T30)。そして、方向性結合器60によって光ファイバから分岐された戻り光は、光受信器70により受信される。
【0048】
コンピュータ81においては、DMD51からパルス状の光信号を発信してから、光受信器70によって戻り光を受信するまでの時間に基づいて、アド用波長選択スイッチ50又は光受信器70から検査対象位置Pまでの距離を導出する。なお、両者の距離を導出してもよい。これにより、検査対象位置Pを特定することができる。
【0049】
<距離測定方法>
アド用波長選択スイッチ50又は光受信器70から検査対象位置Pまでの距離を測定する方法(手順)について、更に詳細に説明する。
【0050】
コンピュータ81においては、DMD51から光受信器70までの距離(光路長)のデータが予め記憶されている。そして、距離測定を行う場合には、上記の通り、コンピュータ81の制御部からの命令により、DMD51から基幹ネットワークNを構成する光ファイバにパルス状の光信号を発信する。コンピュータ81においては、パルス状の光信号を発信してから、光受信器70によって戻り光を受信するまでの時間を計測する。そして、コンピュータ81において、上記の計測された時間と、上述した予め記憶されているDMD51から光受信器70までの距離のデータとから、アド用波長選択スイッチ50又は光受信器70から検査対象位置Pまでの距離を算出(導出)する。
【0051】
なお、当該距離の導出に際しては、複数回、パルス状の光信号を発信して、毎回距離を計算し、複数の計算結果の平均値を、アド用波長選択スイッチ50又は光受信器70から検査対象位置Pまでの距離として導出することで、当該距離の精度を高めるようにすることもできる。
【0052】
<本実施形態の優れた点>
本実施形態に係る距離測定装置及び距離測定方法によれば、光多重化装置100に備えられたアド用波長選択スイッチ50からパルス状の光信号を発信することによって、アド用波長選択スイッチ50又は光受信器70から検査対象位置Pまでの距離を測定することができる。従って、専用の試験器(OTDR)を用いることなく、基幹ネットワークNを構成する光ファイバ内の検査対象位置(故障個所等)を特定することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態においては、アド用波長選択スイッチ50によって、光ファイバに対して所望の波長のパルス状の光信号を発信することができるので、検査したい波長の光が通る経路の検査対象位置を特定することができる。
【0054】
また、本実施形態では、距離を測定するためにパルス状の光信号を発信させるためのアド用波長選択スイッチ50を備える光多重化装置100に対して、更に方向性結合器60と光受信器70とを設ける構成を採用している。従って、アド用波長選択スイッチ50か
ら光信号が発信されてから光受信器70によって受信するまでの時間の測定を簡易的な構成で実現できる。すなわち、例えば、図1に示す光ネットワークにおいて、複数配置される光多重化装置のうち、ある一か所に設置する光多重化装置を、図2に示す光多重化装置100とするだけで、上記の時間の測定が可能となる。
【0055】
<その他>
上記実施形態においては、方向性結合器60及び光受信器70が設けられた光多重化装置100に備えられているアド用波長選択スイッチ50からパルス状の光信号を発信する場合について説明した。しかしながら、パルス状の光信号を発信するアド用波長選択スイッチ50は、方向性結合器60及び光受信器70が設けられた光多重化装置とは異なる光多重化装置に備えられたものを用いることも可能である。
【0056】
例えば、図1に示す光ネットワークにおいて、B地点に配置する第2光多重化装置100bに方向性結合器60及び光受信器70を設けておき、A地点に配置される第1光多重化装置100aに備えられたアド用波長選択スイッチ50からパルス状の光信号を発信するようにしてもよい。このような距離測定装置を採用した場合について、図5を参照して説明する。
【0057】
図5に示す距離測定装置においては、第2光多重化装置100bに、上述した図2に示す光多重化装置100と同様に、方向性結合器60及び光受信器70を設ける。そして、距離測定を行う場合には、第1光多重化装置100aにおいて、第2トランスポンダ40からアド用波長選択スイッチ50に送られる光信号(図中矢印T11)を用いて、基幹ネットワークNを構成する光ファイバにパルス状の光信号を発信する(図中矢印T21)。そして、検査対象位置からの戻り光を、第2光多重化装置100bに設けられた光受信器70によって受信する(図中矢印T31)。
【0058】
これにより、上述した距離測定装置及び方法と同様に、検査対象位置までの距離を測定することができる。なお、このような距離測定装置を採用する場合、距離測定に関しては、B地点に配置する第2光多重化装置100bには、第2トランスポンダ40及びアド用波長選択スイッチ50は不要である(図5参照)。
【0059】
また、上記実施形態においては、アド用波長選択スイッチ50からパルス状の光信号を発信する場合において、当該アド用波長選択スイッチ50が備えられている光多重化装置100における第2トランスポンダ40から送られる光信号を利用する場合について説明した。しかしながら、アド用波長選択スイッチ50に入力させる光は、そのような光に限らない。例えば、他の光多重化装置内の第2トランスポンダ40から送られる光や、光多重化装置以外の光源からの光を用いて、アド用波長選択スイッチ50からパルス状の光信号を発信するようにしてもよい。後者の距離測定装置を採用した場合について、図6を参照して説明する。
【0060】
図6に示す距離測定装置においては、基幹ネットワークNを構成する光ファイバに、方向性結合器91及びトランスミッタ92を取り付けている。つまり、光多重化装置100の外部に、これら方向性結合器91及びトランスミッタ92を取り付けている。そして、距離測定を行う場合には、トランスミッタ92から、方向性結合器91を介して光多重化装置100におけるアド用波長選択スイッチ50に送られる光信号(図中矢印T12)を用いて、基幹ネットワークNを構成する光ファイバにパルス状の光信号を発信する(図中矢印T22)。そして、検査対象位置からの戻り光を、光多重化装置100に設けられた光受信器70によって受信する(図中矢印T32)。これにより、上述した距離測定装置及び方法と同様に、検査対象位置までの距離を測定することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、戻り光を受信するための方向性結合器60及び光受信器70を光多重化装置内に設けた場合を示したが、これらは、必ずしも光多重化装置内に設ける必要はない。つまり、これら方向性結合器60及び光受信器70を、戻り光を受信するための専用の装置として、基幹ネットワークNを構成する光ファイバに取り付けてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、DMDを備える波長選択スイッチ(MEMS型光スイッチ)によって、パルス状の光信号を発信する場合を示したが、光スイッチ(光切替器)はこれに限られるものではない。すなわち、入力された光を用いて、測定光ファイバにパルス状の光信号を発信可能なものであれば、他の光スイッチを適用可能である。例えば、導波路型光スイッチも適用可能である。ただし、導波路型光スイッチの場合、DMDに比べて、パルス長は、より長いものとなる。
【0063】
なお、特定の波長の光が通る経路の検査対象位置を特定する場合には、入力される異なる複数の波長の光の中から特定の波長の光を用いて、パルス状の光信号を発信可能な光スイッチを採用する必要がある。しかしながら、波長を特定する必要がない場合には、波長を選択する機能を有していない光スイッチを採用することができる。
【0064】
(第2の実施形態)
図7及び図8には、第2の実施形態が示されている。上記第1の実施形態においては、入力される光を利用して、パルス状の光信号を発信させる光学装置として、光スイッチ(光切替器)を採用した場合について説明した。これに対して、本実施形態では、上記光学装置として、光ブロッカ(光遮断器)を採用する場合について説明する。基本的な構成については、上記第1の実施形態と同様であるので、同一の構成については、同一の符号を付して、適宜、その説明は省略する。
【0065】
光ブロッカ自体については公知技術であるので、図7の概略構成を示した図を用いて、概要のみを説明する。なお、光ブロッカには、光を集光するためのレンズや、拡散する光を平行光とするコリメータレンズなどの光学部品も備えられるが、図7では省略している。
【0066】
光ブロッカ50Xは、DMD(Digital MicromirrorDevice)51Xと、入力ファイバ
f4及び出力ファイバf5を結合するファイバアレイ52Xと、光合波・分波器53Xとを備えている。DMD51Xは、上記実施形態でも説明したように、複数の微小ミラー(適宜、第1微小ミラー51Xa,第2微小ミラー51Xb,第3微小ミラー51Xc,第4微小ミラー51Xd,第5微小ミラー51Xe,第6微小ミラー51Xfと称する)を備えている。
【0067】
そして、入力ファイバf4から光合波・分波器53Xに入力された多重化された波長の異なる複数の光信号は、各波長の光信号に分波されて、各微小ミラーに入射される。各微小ミラーは、例えば、オンの場合には、入射する光を光合波・分波器53XのJ部に導くように反射させ、オフの場合には、入射する光を上記J部から外す方向に反射させるように構成されている。これにより、上記J部に導かれた反射光は、光合波・分波器53Xによって合波された状態で出力ファイバf5に導かれ(通過状態)、上記J部から外す方向に反射された光は、出力ファイバf5には導かれない(遮断状態)。
【0068】
このように、光ブロッカ50Xは、多重化された波長の異なる複数の光信号の中から、任意の波長の光信号を出力ファイバf5から出力させて、残りの波長の光を遮断することができる。
【0069】
次に、図8を参照して、本発明の第2の実施形態に係る距離測定装置及び方法について
説明する。本実施形態に係る距離測定装置については、上述した第1の実施形態において、図4に示す構成のうち、アド用波長選択スイッチ50が光ブロッカ50Xに変更された点以外の構成は基本的に同一である。
【0070】
本実施形態においても、上記実施形態1の場合と同様に、光ブロッカ50Xを用いて、所望の波長の光をパルス状の光信号として発信させることができる。例えば、図7に示す第4微小ミラー51Xdに入射される波長の光信号を距離測定用の光信号としたい場合、第4微小ミラーをオフの状態から短時間オンにした後に再びオフの状態とする。これにより、出力ファイバf5に対して、第4微小ミラー51Xdからの反射光が短時間だけ導かれる。これにより、上記第1の実施形態と同様に、基幹ネットワークNを構成する光ファイバにパルス状の光信号を発信できる。
【0071】
本実施形態においては、トランスミッタ93から送られる光信号(図中、矢印T10X)を用いて、基幹ネットワークNを構成する光ファイバにパルス状の光信号を発信する(図中矢印T20X)。なお、トランスミッタ93については、光ブロッカ50Xを備える装置に具備する場合には、当該装置内のものを用いてもよいし、基幹ネットワークNにROADMが設けられている場合には、当該ROADM内のトランスポンダを用いても良いし、上述した図6に示す構成のように外付けのトランスミッタを用いても良い。
【0072】
上記第1の実施形態の場合と同様に、発信されたパルス状の光信号は、基幹ネットワークNを構成する光ファイバ内の検査対象位置Pにおいて、反射または散乱する。そして、検査対象位置Pにおいて反射または散乱することによって戻ってくる戻り光は、方向性結合器60によって、基幹ネットワークNを構成する光ファイバから分岐される(図8中、矢印T30X)。そして、方向性結合器60によって光ファイバから分岐された戻り光は、光受信器70により受信される。このようにして、上記第1の実施形態の場合と同様に、光ブロッカ50X又は光受信機70から検査対象位置Pまでの距離を導出することができ、検査対象位置Pを特定することができる。
【0073】
また、入力される光を利用して、パルス状の光信号を発信させる光学装置として、光フィルタ(光減衰器)を採用することもできる。光フィルタとしては、上述した図7に示す光ブロッカ50Xと同様の構成を採用できる。
【0074】
すなわち、上記の説明においては、図7に示す構成において、説明の便宜上、各波長に分波された光信号は、それぞれ一つの微小ミラーに導かれるかのごとく説明したが、実際には、各波長の光信号はそれぞれ複数の微小ミラー群に導かれるのが一般的である。従って、ある波長の光信号が入射される微小ミラー群のうち、オンにする微小ミラーとオフにする微小ミラーの個数を制御することによって、出力する光の強度を制御することができる。
【0075】
そして、ある波長の光信号が入射される微小ミラー群における全ての微小ミラーをオフにして、出力ファイバf5に導かないようにすれば、光ブロッカと同様にある波長の光信号を遮断することができる。これにより、ある波長の光を遮断した状態から短時間だけ遮断状態を解除することによって、光ブロッカを利用する場合と同様に、パルス状の光信号を発信することができる。従って、図8に示す構成において、光ブロッカ50Xの代わりに光フィルタとしても、光ファイバ内の検査対象位置を特定することができる。
【0076】
<その他>
上記各実施形態において、距離測定に用いる光信号に対して、場所データ(光受信器70までの距離を含むデータ)とパルスの発生時刻データとを情報として含む光信号を重ねて発信させる構成を採用することもできる。このようにすれば、コンピュータ81におい
て、DMD51,51X(DMDを備えていない光スイッチ等を採用する場合には、パルス状の光を発信する発信部)から光受信器70までの距離のデータが予め記憶されていなくても、光受信器70から検査対象位置Pまでの距離を導出することができる。
【0077】
また、DMD51,51Xに送られる光が連続光であっても、上記の通り、微小ミラーのオンオフ制御によって、パルス状の光信号を発信可能である。ここで、DMD51,51Xに送る光に関しては、連続光である必要はなく、パルス光であってもよい。つまり、DMD51,51Xからパルス光を発信できるのであれば、DMD51,51Xに入力させる光は連続光であってもパルス光であってもよい。なお、他の光スイッチや光ブロッカや光フィルタを採用する場合も同様である。
【0078】
また、本発明は、一つの光多重化装置に対して複数本(n本)の入力用の光ファイバ及び出力用のファイバを接続したシステムについても適用可能である。すなわち、一つの光多重化装置によって、多重化された複数本(n本)の光を同時に処理できる場合にも本発明を適用可能である。
【0079】
また、上記実施形態においては、基幹ネットワークNを構成する光ファイバ内の検査対象位置Pを特定するために、光受信器70等から検査対象位置Pまでの距離を測定する場合について示したが、測定対象となる光ファイバは、基幹ネットワークNを構成するものに限られるものではない。例えば、上述した図1に示す光ネットワークにおいて、ローカルネットワークを構成する光ファイバ内の検査対象位置を特定することも可能である。この場合においては、光多重化装置100におけるドロップ用波長選択スイッチ20を用いて光パルスを発信させればよい。また、光ファイバに、上述したような、入力光を用いて光パルスを発信可能な光スイッチ(光ブロッカまたは光フィルタでもよい)の他に、上述した方向性結合器及び光受信器が接続されていれば、上記光ネットワークを構成する光ファイバに限らず、各種光ファイバ内の検査対象位置を特定可能である。
【符号の説明】
【0080】
50…アド用波長選択スイッチ,60…方向性結合器,70…光受信器,N…基幹ネットワーク,P…検査対象位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8