(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734712
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】クローラクレーンの水平据付け構造
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20150528BHJP
B66C 23/78 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
B66C23/88 C
B66C23/78 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-62492(P2011-62492)
(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公開番号】特開2012-197145(P2012-197145A)
(43)【公開日】2012年10月18日
【審査請求日】2013年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(74)【代理人】
【識別番号】100107205
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】寺口 勝久
(72)【発明者】
【氏名】大石 政明
(72)【発明者】
【氏名】内藤 大資
(72)【発明者】
【氏名】松井 宏充
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−132788(JP,U)
【文献】
特開2000−145152(JP,A)
【文献】
特開2002−322668(JP,A)
【文献】
特開2005−263406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/88
B66C 23/78
B66C 7/12
B66F 3/36
E02F 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜面で使用するクローラクレーンを傾斜構台を用いて水平又は略水平に据え付けるための水平据付け構造であって、
前記傾斜構台は、前記傾斜面の勾配方向に敷設される、クローラクレーンの左右一対のクローラの各々の幅よりも広い幅を有する帯板状鉄板と、該帯板状鉄板の両側の側縁部に沿って各々配置されて当該側縁部を支持すると共に、各クローラが通過可能な間隔幅を保持して並設される一対の支持架台と、前記勾配方向の下部における前記一対の支持架台の各々の外側に設置されて、前記支持架台の前記勾配方向の下部を前記帯板状鉄板と共に昇降させる一対のジャッキ装置とからなり、
且つ該ジャッキ装置によるジャッキアップによって上昇した前記帯板状鉄板と、前記傾斜面との間の隙間に前記勾配方向の下方から挿入配置される、前記傾斜面の勾配の角度と対応する傾斜角度を有する楔状キャンバー部材を備えており、
クローラクレーンの左右一対のクローラの据付け位置に、一対の前記傾斜構台を各々設置し、左右一対のクローラの移動方向の後部が一対の前記傾斜構台の帯板状鉄板に各々乗るまで前記クローラクレーンを移動させた後に、前記ジャッキ装置によって前記支持架台の前記勾配方向の下部を各々ジャッキアップすることで、クローラが乗った前記帯板状鉄板を水平又は略水平に配置し、ジャッキアップによって生じた前記帯板状鉄板と前記傾斜面との間の隙間に、前記楔状キャンバー部材を各々挿入配置してクローラクレーンを水平又は略水平に据え付けるようになっており、
前記支持架台が、H形鋼からなり、該H形鋼の下部フランジの片側内側面の上に前記帯板状鉄板の両側の側縁部を載置した状態で当該側縁部を支持するクローラクレーンの水平据付け構造。
【請求項2】
前記傾斜面が上り勾配の傾斜面である請求項1記載のクローラクレーンの水平据付け構造。
【請求項3】
前記H形鋼の中央リブと上部フランジとの接合角部分から外側に張り出して、ジャッキ係合台が接合されており、前記ジャッキ装置は、前記ジャッキ係合台に係止される係止爪を備える爪付き油圧ジャッキである請求項1又は2記載のクローラクレーンの水平据付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜面で使用するクローラクレーンを傾斜構台を用いて水平又は略水平に据え付けるためのクローラクレーンの水平据付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラクレーンは、例えば鉄製の無限軌道であるクローラベルトを使用した左右一対のクローラによって走行可能な、クローラ式の下部走行体を備えると共に、上部旋回体にクレーンアタッチメントを装備して、主に荷重を吊り上げたり吊り降したりする作業を行う移動式のクレーンである。クローラクレーンは、公道では自走できないものの、クローラのクローラベルトによる接地面積が広く、また接地圧が小さいため、安定性に優れており、柔らかい地盤や、勾配のある傾斜面でも使用可能であることから、土木工事や建築工事などの各種の工事に広く用いられている。
【0003】
一方、クローラクレーンは、勾配のある傾斜面でも使用可能であるが、クローラクレーンの定格荷重は、水平に据付けた状態でのものとして定められており、クローラクレーンが斜めに据え付けられていると、作業半径が増加したり、吊上げ能力が不足したりして、所望の作業を行い難くなる。このようなことから、クローラクレーンを勾配のある傾斜面で使用する場合に、クローラクレーンの傾斜角度を調整して水平に据え付けることができるようにする技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−263406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1のクローラクレーンの傾斜角度調整装置や傾斜角度調整方法によれば、クローラクレーンの下部走行体に、両側のクローラの側部から側方に各々突出させて、ジャッキアップ装置が取り付けられている。そして、これらのジャッキアップ装置を伸長させることでクローラの下面が水平となるように下部走行体を持ち上げて、一対のジャッキアップ装置と、左右一対のクローラの前端部や後端部とによる4点で、下部走行体を支持した状態にすると共に、これによって生じたクローラの下面と傾斜面との間の隙間に楔状の傾斜板を挿入することによって、クローラクレーンを水平に据え付るようになっている。
【0006】
しかしながら、引用文献1のクローラクレーンの傾斜角度調整装置や傾斜角度調整方法によれば、クローラクレーンにジャッキアップ装置を一体として装備させる必要があり、ジャッキアップ装置を装備させるには、クローラクレーンの構成が複雑且つ高価になる。また、ジャッキアップ装置を装備していない一般のクローラクレーンについても、簡易に且つ安価に、傾斜面に水平又は略水平な状態でクローラクレーンを据え付けることを可能にする技術の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、ジャッキアップ装置を装備していない一般のクローラクレーンについても、簡易に且つ安価に、傾斜面に水平又は略水平な状態でクローラクレーンを容易に据え付けることのできるクローラクレーンの水平据付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、傾斜面で使用するクローラクレーンを傾斜構台を用いて水平又は略水平に据え付けるための水平据付け構造であって、前記傾斜構台は、前記傾斜面の勾配方向に敷設される、クローラクレーンの左右一対のクローラの各々の幅よりも広い幅を有する帯板状鉄板と、該帯板状鉄板の両側の側縁部に沿って各々配置されて当該側縁部を支持すると共に、各クローラが通過可能な間隔幅を保持して並設される一対の支持架台と、前記勾配方向の下部における前記一対の支持架台の各々の外側に設置されて、前記支持架台の前記勾配方向の下部を前記帯板状鉄板と共に昇降させる一対のジャッキ装置とからなり、且つ該ジャッキ装置によるジャッキアップによって上昇した前記帯板状鉄板と、前記傾斜面との間の隙間に前記勾配方向の下方から挿入配置される、前記傾斜面の勾配の角度と対応する傾斜角度を有する楔状キャンバー部材を備えており、クローラクレーンの左右一対のクローラの据付け位置に、一対の前記傾斜構台を各々設置し、左右一対のクローラの移動方向の後部が一対の前記傾斜構台の帯板状鉄板に各々乗るまで前記クローラクレーンを移動させた後に、前記ジャッキ装置によって前記支持架台の前記勾配方向の下部を各々ジャッキアップすることで、クローラが乗った前記帯板状鉄板を水平又は略水平に配置し、ジャッキアップによって生じた前記帯板状鉄板と前記傾斜面との間の隙間に、前記楔状キャンバー部材を各々挿入配置してクローラクレーンを水平又は略水平に据え付ける
ようになっており、前記支持架台が、H形鋼からなり、該H形鋼の下部フランジの片側内側面の上に前記帯板状鉄板の両側の側縁部を載置した状態で当該側縁部を支持するクローラクレーンの水平据付け構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
そして、本発明のクローラクレーンの水平据付け構造は、前記傾斜面が上り勾配の傾斜面であることが好ましい。
【0011】
また、本発明のクローラクレーンの水平据付け構造は、前記H形鋼の中央リブと上部フランジとの接合角部分から外側に張り出して、ジャッキ係合台が接合されており、前記ジャッキ装置は、前記ジャッキ係合台に係止される係止爪を備える爪付き油圧ジャッキであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のクローラクレーンの水平据付け構造によれば、ジャッキアップ装置を装備していない一般のクローラクレーンについても、簡易に且つ安価に、傾斜面に水平又は略水平な状態でクローラクレーンを容易に据え付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るクローラクレーンの水平据付け構造の構成を説明する側面図である。
【
図2】本発明の好ましい一実施形態に係るクローラクレーンの水平据付け構造の構成を説明する、
図1のA−Aに沿った拡大略示断面図である。
【
図3】本発明の好ましい一実施形態に係るクローラクレーンの水平据付け構造の構成を説明する、ジャッキ装置によってジャッキアップする前の状態の要部拡大略示断面図である。
【
図4】本発明の好ましい一実施形態に係るクローラクレーンの水平据付け構造の構成を説明する、ジャッキ装置によってジャッキアップして楔状キャンバー部材を挿入した状態の要部拡大略示側面図である。
【
図5】従来のクローラクレーンの水平据付け方法を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の好ましい一実施形態に係るクローラクレーンの水平据付け構造10は、
図1に示すように、例えば橋軸方向に勾配のある仮設桟橋50を手延べ方式で施工する工事において、前方杭51aを打設するためのクローラクレーン40を、架設桟橋50の最先端部分に水平に据え付けることを可能にする簡易且つ安価な据付け構造として採用されたものである。
【0015】
ジャッキアップ装置を装備していない一般のクローラクレーン40を、上り勾配の傾斜面となっている仮設桟橋50に水平又は略水平な状態で据え付けようとする場合、従来の方法によれば、例えば
図5に示すように、仮設桟橋50の最先端部分までクローラクレーン40を一旦前進させてから、前進させたクローラクレーン40の後方に、仮設桟橋50の勾配の角度と対応する傾斜角度を有する架台52を設置して、水平又は略水平な据付け面52aを形成し、しかる後にクローラクレーン40を、架台52の据付け面52aに載置されるまで後退させて水平又は略水平に据え付る方法が採用されていたが、このような据付け方法では、クローラクレーン40を仮設桟橋50の最先端部分から後退させた分、前方杭51aを打設する際の作業半径が大きくなることから、吊上げ能力のより大きなクローラクレーン40を使用する必要がある。
【0016】
また、架台52を仮設桟橋50の最先端部分に設置した場合には、これの後方からクローラクレーン40を据付け面52aに乗り上げさせるために、架台52の後方に斜路を設ける必要があるが、このような斜路は、仮設桟橋50の勾配よりも急な勾配となることから、このような急勾配の斜路を介して据付け面52aに乗り上がるまでの間に、クローラクレーン40が不安定な状態になり易い。
【0017】
本実施形態の水平据付け構造10は、水平又は略水平に据え付けるまでの間、不安定な状態にすることなく、クローラクレーン40を仮設桟橋50の最先端部分に容易に据え付ることができるようにして、定格荷重と同等の吊上げ能力でクローラクレーン40によって効率良く前方杭51aを打設する作業を行えるようにする機能を備える。
【0018】
すなわち、本実施形態のクローラクレーンの水平据付け構造10は、
図1に示すように、上り勾配の傾斜面となっている仮設桟橋50で使用するクローラクレーン40を傾斜構台11を用いて水平又は略水平に据え付けるための据付け構造であって、
図2〜
図3にも示すように、傾斜構台11は、仮設桟橋50の傾斜面の勾配方向Xに敷設される、クローラクレーン40の左右一対のクローラ41の各々の幅よりも広い幅を有する帯板状鉄板12と、帯板状鉄板12の両側の側縁部12aに沿って各々配置されて当該側縁部12aを支持すると共に、各クローラ41が移動可能な間隔幅を保持して並設された一対の支持架台13と、勾配方向Xの下部における一対の支持架台13の各々の外側に設置されて、支持架台13の勾配方向Xの下部を帯板状鉄板12と共に昇降させる一対のジャッキ装置14とからなり、且つジャッキ装置14によるジャッキアップによって上昇した帯板状鉄板12と、仮設桟橋50の傾斜面との間の隙間に勾配方向Xの下方から挿入配置される、仮設桟橋50の傾斜面の勾配の角度θと対応する傾斜角度θ’を有する楔状キャンバー部材15を備えている。
【0019】
そして、クローラクレーン40の左右一対のクローラ41の据付け位置に、一対の傾斜構台11を各々設置し、左右一対のクローラ41の仮設桟橋50の先端部分側への移動方向の後部が一対の傾斜構台11の帯板状鉄板12に各々乗るまでクローラクレーン40を仮設桟橋50の先端部分に移動させた後に、ジャッキ装置14によって支持架台13の勾配方向Xの下部を各々ジャッキアップすることで、クローラ41が乗った帯板状鉄板12を水平又は略水平に配置し、ジャッキアップによって生じた帯板状鉄板12と仮設桟橋50の傾斜面との間の隙間に、楔状キャンバー部材15を各々挿入配置してクローラクレーン40を水平又は略水平に据え付けるようになっている。
【0020】
本実施形態では、仮設桟橋50は、鉛直に立設した状態で地中に打設された例えばH形鋼からなる支持杭51と、支持杭51に支持されてこれの上端部分に架設された例えばH形鋼からなる横桁52及び縦桁53と、縦桁53を覆工受桁として縦横に並べて敷設された多数の覆工板による覆工体54とを含んで構成される、公知の構造を備える仮設の桟橋であり、先行して形成された仮設桟橋50の最先端部分から、クローラクレーン40によって手延べ方式で前方杭51aを打設すると共に、打設した前方杭51aに支持させて、次のスパンの横桁52、縦桁53、覆工体54等を取り付けることで、仮設桟橋50は、スパン毎に、橋軸方向に上り勾配となるように順次形成されるようになっている。
【0021】
クローラクレーン40は、鉄製の無限軌道であるクローラベルト41aを有する左右一対のクローラ41によって走行可能なクローラ式の下部走行体を備えると共に、上部旋回体にクレーンアタッチメント42を装備した公知の移動式のクレーンであり、吊下げワイヤ43を介してクレーンアタッチメント42の先端から吊り下げた打設装置44を用いて、前方杭51aを地中に向けて鉛直方向に打設できるようになっている。クローラクレーン40は、仮設桟橋50の覆工体54による上り勾配の傾斜面に設置されたままの状態では、定格荷重と同等の吊上げ能力を発揮することが困難なことから、本実施形態の水平据付け構造10を用いて、クローラクレーン40を仮設桟橋50の最先端部分に水平又は略水平に据え付けることで、クローラクレーン40による前方杭51aの打設作業を効率良く行えることができるようになっている。
【0022】
そして、本実施形態のクローラクレーンの水平据付け構造10は、上述のように、一対の傾斜構台11と、複数の楔状キャンバー部材15とを含んで構成され、各傾斜構台11は、帯板状鉄板12と、一対の支持架台13と、一対のジャッキ装置14とを各々備える(
図2〜
図3参照)。
【0023】
傾斜構台11の帯板状鉄板12は、例えば厚さが32mm程度の鉄板からなり、左右一対のクローラ41のクローラベルト41aによる例えば760mm程度の幅よりも広い幅の、例えば1200mm程度の幅を有すると共に、各クローラ41のクローラベルト41aの接地長さの例えば略2/3程度の、例えば3800mm程度の長さを有する、縦長矩形の帯板形状に形成される。帯板状鉄板12は、両側の側縁部12aを両側の支持架台13に各々載置した状態で、ジャッキ装置14によってジャッキアップされるまでの間、仮設桟橋50の覆工体54による上り勾配の傾斜面の勾配方向Xに沿って敷設される。
【0024】
傾斜構台11の一対の支持架台13は、各々例えばH−300×300×10×15のH形鋼からなり、一対のフランジ部13aを上下に配置すると共に、中央のリブ部13bを縦方向に配置した状態で、帯板状鉄板12と同様の例えば3800mm程度の長さで、例えば950mm程度の間隔幅を保持して、帯板状鉄板12の両側に設置される。支持架台13は、H形鋼の下部フランジ13aの片側内側面(上面)の上に帯板状鉄板12の側縁部12aを載置した状態で、当該側縁部12aを支持し、ジャッキ装置14のジャッキアップによる当該支持架台13の上昇に伴って、クローラクレーン40のクローラ41が乗り上げた帯板状鉄板12をクローラクレーン40と共に上昇させることができるようになっている。
【0025】
また、本実施形態では、H形鋼による支持架台13の中央リブ13bと上部フランジ13aとの接合角部分から外側に張り出して、ジャッキ係合台16が接合されている。ジャッキ係合台16は、支持架台13を構成するH形鋼よりも一回り小さな断面形状を備える、例えばH−200×200×8×12のH形鋼からなり、その上部フランジ部16aの上面を支持架台13の上部フランジ部13aの下面に密着させると共に、内側の端面を支持架台13の中央リブ13bの外側面に当接させた状態で、溶接等によって、支持架台13の中央リブ13bと上部フランジ13aとの接合角部分に一体として接合固定される。これによって、ジャッキ係合台16は、その外側端部を支持架台13の上部フランジ13aよりも外側に僅かに突出させると共に、その下部フランジ16aと支持架台13の下部フランジ13aとの間に隙間を保持した状態で、中央リブ13bと上部フランジ13aとの接合角部分から外側に張り出して設けられることになる。ジャッキ係合台16の外側端部の下部フランジ16aには、これの下方からジャッキ装置14の係止爪14aが係止されることになる。
【0026】
傾斜構台11の一対のジャッキ装置14は、本実施形態では、ジャッキ係合台16の下部フランジ16aに係止される係止爪14aを備える爪付き油圧ジャッキを用いることができる。爪付き油圧ジャッキは、据付ベース部14bから立設するジャッキ本体14cの側方に張り出して設けた係止爪14a(
図3参照)を、油圧の作用によって、ジャッキ本体14cに沿って上下に昇降させる機能を備える公知の油圧式のジャッキであり、また係止爪14aを据付ベース部14bの下方まで下降させることが可能な構成を備えている。このような爪付き油圧ジャッキとしては、好ましくは商品名「油圧爪付ジャッキ」(株式会社今野製作所製)を用いることができる。
【0027】
なお、爪付き油圧ジャッキによるジャッキ装置14は、必要に応じて、仮設桟橋50の覆工体54との間に傾斜面の勾配を解消するための据付け台17を介在させることで(
図4参照)、据付ベース部14bを水平に配置できるようにして、より安定した状態で支持架台13及び帯板状鉄板12を昇降させることが可能になる。
【0028】
傾斜構台11と共に本実施形態の水平据付け構造10を構成する楔状キャンバー部材15は、例えばアカマツ等による木製チャンバーを用いることができる。楔状キャンバー部材15は、鋼板を用いて立体形状に組み付けたものを用いることもでききる。楔状キャンバー部材15は、本実施形態では、縦断面が扁平な略直角三角形形状を備えると共に、横断面が横長矩形形状を備えるように形成されている。楔状キャンバー部材15は、各傾斜構台11の一対の支持架台13の間に各々一対挿入できるように、例えば300mm程度の幅を有すると共に、帯板状鉄板12と同様の例えば3800mm程度の長さを有するように形成される。楔状キャンバー部材15は、略直角三角形形状の縦断面の斜辺部分が、底辺部分に対して仮設桟橋50の傾斜面の勾配の角度θと対応する傾斜角度θ’を有するように形成されており、当該斜辺部分を仮設桟橋50の覆工体54による傾斜面に沿って配置することで、略直角三角形形状の縦断面の底辺部分によって、覆工体54の上方に、水平又は略水平なクローラクレーン40の据付け面15aを形成できるようになっている。
【0029】
そして、上述の構成を備える本実施形態の水平据付け構造10を用いて仮設桟橋50の最先端部分にクローラクレーン40を水平又は略水平に据え付けるには、仮設桟橋50の最先端部分における左右一対のクローラ41の据付け予定位置に、一対の傾斜構台11を、ジャッキ装置14をジャッキアップしていない状態で、帯板状鉄板12を傾斜面の勾配方向Xである仮設桟橋50の橋軸方向に沿わせるようにして各々設置する。次に、クローラクレーン40を、仮設桟橋50の最先端部分に向けて前進移動させて、左右一対のクローラ41を、各傾斜構台11の一対の支持架台13の間の間隔部分を通過させながら、敷設された帯板状鉄板12の上に乗り上げさせる。
【0030】
左右一対のクローラ41が、これの移動方向の後部が帯板状鉄板12に各々乗るまでクローラクレーン40を前進移動させて、仮設桟橋50の最先端部分の据付け予定位置に配置されたら、クローラクレーン40の移動を停止した後に、ジャッキ装置14を作動させて、支持架台13及び帯板状鉄板12の勾配方向Xの下部を、クローラ41と共に、これらが水平又は略水平に配置されるまでジャッキアップする。また、ジャッキアップすることによって生じた、帯板状鉄板12と仮設桟橋50の覆工体54による傾斜面との間の隙間に、楔状キャンバー部材15を、勾配方向Xの下方から押し込むようにして挿入配置する。これらによって、支持架台13及び帯板状鉄板12が水平又は略水平に配置された状態では、支持架台13及び帯板状鉄板12は、楔状キャンバー部材15によって下方から強固に支持された状態でこれの据付け面15aに載置されて、クローラクレーン40を、仮設桟橋50の最先端部分に、水平又は略水平に安定した状態で据え付けることが可能になる。
【0031】
したがって、本実施形態のクローラクレーンの水平据付け構造10によれば、ジャッキアップ装置を装備していない一般のクローラクレーン40についても、傾斜構台11と楔状キャンバー部材15とによる簡易且つ安価な構成によって、傾斜面となっている仮設桟橋50にクローラクレーン40を水平又は略水平な状態で容易に据え付けることが可能になる。これによって、作業半径が大きくならないようにして、従来と同様の吊り能力のクローラクレーン40を用いて、前方杭51aの打設作業を効率良く行うことが可能になる。
【0032】
また、ジャッキ装置14による支持架台13及び帯板状鉄板12のジャッキアップに伴って発生する、帯板状鉄板12と仮設桟橋50の傾斜面との間の隙間に、その都度、楔状キャンバー部材15を勾配方向Xの下方から楔状に押し込むようにして差し込んでゆくので、万が一、ジャッキ装置14が故障した場合でも、帯板状鉄板12等と共に上昇させたクローラクレーン40が急激に落ち込むことになるのを、効果的に回避することが可能になる。さらに、ジャッキ装置14と楔状キャンバー部材15を使用しているので、傾斜角度θ’の異な複数種類の楔状キャンバー部材15を予め用意することで、様々な勾配に対応することが可能になる。
【0033】
クローラクレーン40は、水平又は略水平に据え付けた状態から、例えばジャッキ装置14をさらに上昇させて楔状キャンバー部材15を引き抜いた後に、ジャッキ装置14を下降させることで、支持架台13及び帯板状鉄板12と共に、仮設桟橋50の傾斜面にスムーズに、且つ容易に降ろすことが可能である。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の水平据付け構造は、仮設桟橋以外の、道路等のその他の種々の工事現場において、傾斜面にクローラクレーンを水平又は略水平に据え付けるために用いることができる。また、上り勾配のみならず、下り勾配の傾斜面に、クローラクレーンを水平又は略水平に据え付けるために用いることもできる。
ジャッキ装置は、爪付き油圧ジャッキである必要は必ずしも無い。
【符号の説明】
【0035】
10 クローラクレーンの水平据付け構造
11 傾斜構台
12 帯板状鉄板
12a 側縁部
13 支持架台(H形鋼)
13a フランジ部
13b リブ部
14 ジャッキ装置
14a 係止爪
15 楔状キャンバー部材
15a 据付け面
16 ジャッキ係合台
16a フランジ部
17 据付け台
40 クローラクレーン
41 クローラ
41a クローラベルト
50 仮設桟橋
51a 前方杭
54 覆工体
X 勾配方向