(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による有段リフタ装置(有段下降装置)を車両シートの上下位置調整装置に適用した一実施形態を示す要部の側面図である。
【
図2】本発明による有段リフタ装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図3】本発明による有段リフタ装置の分解斜視図である。
【
図4】本発明による有段リフタ装置の組立状態の平面図である。
【
図5】本発明による有段リフタ装置の組立状態の背面図である。
【
図6】同有段リフタ装置の組立状態における
図2のVI-VI線に沿う断面図である。
【
図7】同有段リフタ装置の組立状態における
図2のVII-VII線に沿う断面図である。
【
図8】同有段リフタ装置の組立状態における
図2のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】同有段リフタ装置の特定高さ位置のロック状態(初期位置)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は昇降方向の運動伝達機構の主要要素を示す図である。
【
図10】同車両シートの上下位置調整装置の下降操作の第1段階(ロックオフ待機状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図11】同下降操作の第2段階(ロックオフ状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図12】同下降操作の第3段階(ロックオフmax状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図13】同下降操作の第4段階(ロックオン待機状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図14】同下降操作の第5段階(ロックオン状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図15】同下降操作の第6段階(初期位置復帰状態)を示す側面図でああって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図16】同有段リフタ装置の特定高さ位置から一段下降した高さ位置でのロック状態(初期位置)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図17】同有段リフタ装置の特定高さ位置のロック状態(初期位置)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図18】同有段リフタ装置の上昇操作の第1段階(ロックオフ待機状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図19】同上昇操作の第2段階(ロックオフ状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図20】同上昇操作の第3段階(ロックオフmax状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図21】同上昇操作の第4段階(ロックオン待機状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図22】同上昇操作の第5段階(ロックオン状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図23】同上昇操作の第6段階(初期位置復帰状態)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図24】同有段リフタ装置の特定高さ位置から一段上昇した高さ位置でのロック状態(初期位置)を示す側面図であって、(A)はロック機構およびロック復帰機構の主要要素を示す図、(B)は入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素を示す図である。
【
図25】本発明による有段リフタ装置の他の実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図示実施形態は、本発明の有段リフタ装置(段階的に調整できるリフタ装置)を車両シートの上下位置調整装置に適用した実施形態を示している。
図1はその一実施形態の有段リフタ装置を車両シートに組み付けた状態の側面図、
図2は同有段リフタ装置の側面図、
図3は同有段リフタ装置を分解した斜視図である。
シート(座面)が支持されるロアブラケット50の内面51に固定されるベースプレート(昇降体)13上に回動可能に支持された軸11には、該軸11の軸線方向の位置を異ならせて、昇降リンク10Xと有歯リンク10Tが一体に結合されており、昇降リンク10Xの下端部は、床面と一体の床面ブラケット(基部)14に軸12で枢着されている。従って、有歯リンク10Tが軸11を中心に揺動すると、昇降リンク10Xが軸11を中心に揺動し、ベースプレート13が基部14に対して昇降する。本実施形態は、有歯リンク10Tを正逆に揺動させることにより、ベースプレート13を昇降させる実施形態である。
【0014】
有歯リンク10T回りの全体構造を、
図1ないし
図8で説明する。軸
(枢着軸)11でベースプレート13上に枢着された有歯リンク10Tには、軸11を中心とする円弧上に位置するリンクピニオン15と、このリンクピニオン15より小径のリンクラチェット16が一体に形成されている。また、有歯リンク10Tには、軸11を中心とする円弧ガイド10Pが穿設されており、この円弧ガイド10Pには、ベースプレート13と第2補助ブラケット18に両端を固定したガイドピン10Qが相対移動自在に嵌まっている。
【0015】
ベースプレート13(リンクピニオン15とリンクラチェット16の円弧(基礎円)中心となる軸11を有する部材)上には、該ベースプレート13の裏面と表面に固定される第1、第2補助ブラケット17と18を介して、軸21が回動可能に支持されている。
【0016】
軸21には、第1、第2補助ブラケット17と18に回動自在に軸支された両軸部間に、セレーション部21a、21bが形成されている(
図8)。セレーション部21aには、有歯リンク10Tのリンクピニオン15に噛み合う入力ピニオン22が同軸一体に(相対回転不能に)結合され、セレーション部21bには、両方向運動伝達ラチェット23と減衰ギヤ30が同軸一体に(相対回転不能に)結合されている。また軸21のセレーション部21aと21bの間には、ベースプレート13の軸穴に相対回動自在に挿通される丸軸部21dと、ベースプレート13に当接して軸方向の位置決めするフランジ部21eが形成されている。軸21の両端部には、抜け止め用のナット、ワッシャが装着されている(同
図8)。
【0017】
ベースプレート13と第1補助ブラケット17の間には第1補助レバー(内側入力部材)201が位置し、第2補助ブラケット18の外側には第2補助レバー(支持プレート)204が位置していて、この第1補助レバー201及び第2補助レバー204が、軸21の丸軸部に相対回動自在に支持されている(
図4)。第1補助レバー201は、ベースプレート13の内面に沿うインナアーム201aと、このインナアーム201aの自由端部をベースプレート13に穿設された円弧開口13a1を通る方向に折り曲げた外方接続アーム201bを備えており、この外方接続アーム201bは、第2補助レバー204の自由端部側に形成された貫通孔204aを貫通している(
図4)。第1補助レバー201と第2補助レバー204は、常時軸21を中心に一体に回動する。第2補助レバー204は、一端部が軸(操作軸)21に支持され、他端部が第1補助レバー(内側入力部材)201の外方接続アーム201bに結合された支持プレートを構成している。
【0018】
第1補助レバー201には、コントロールレバー20が結合されている。コントロールレバー20は、ロアブラケット50の外面52に沿う操作部(アウタアーム)20aと、その後端部から内方に略直角方向に曲げられ、ロアブラケット50の貫通孔(円弧孔)50aを通る内方接続アーム20bを備えていて、この内方接続アーム20bが第1補助レバー201の外方接続アーム201bに重ね合わされ、さらに半円筒部材(結合部材)203を介して一体に結合されている(
図4)。すなわち、半円筒部材203は、その径方向切断面の両端を平板状の内方接続アーム20bに接合し、該半円筒部材203の内側に外方接続アーム201bを位置させて接合している。半円筒部材203により内方接続アーム20bと外方接続アーム201bを結合したので結合部がボックス断面になり、さらなる強度の向上が図られている。内方接続アーム20bは、さらに内方接続アーム20bに対して略直角に折り曲げられたアングル部20cを有し、このアングル部20cが半円筒部材203の外面に当て付けられて固定されている(
図1、
図4参照)。
【0019】
以上のコントロールレバー20、第1補助レバー201及び第2補助レバー204は、全体で、軸21を中心に揺動する入力部材を構成しており、そのうち、インナアーム201aと外方接続アーム201bを有する第1補助レバー201は、内側入力部材を構成し、操作部20aと内方接続アーム20bを有するコントロールレバー20は、外側入力部材を構成している。
【0020】
このコントロールレバー20は、中立位置復帰ばね(トーションばね)19により、常時は中立位置に保持されている。すなわち、中立位置復帰ばね19は、その中心コイル部が、ベースプレート13に固定されたばね軸192に嵌合され、脚部19a、19bが、第1補助レバー201の外方接続アーム201b及びベースプレート13に突設されたばね掛け突起13c(
図4)を挟むように係合されていて、操作力を加えない状態ではコントロールレバー20を中立位置に保持している。そして、中立位置復帰ばね19は、コントロールレバー20を上下に昇降操作させた操作力を開放すると、コントロールレバー20を中立位置に復帰させる。
【0021】
第1補助レバー201上には、両方向運動伝達ラチェット23に選択的に係合する一対の上昇方向運動伝達ラッチ(以下、上昇ラッチ)27と下降方向運動伝達ラッチ(以下、下降ラッチ)28が軸27aと軸28aでそれぞれ枢着されている(
図2、
図3)。
【0022】
この上昇ラッチ27と下降ラッチ28は、両方向運動伝達ラチェット23の上下歯面に対称形に位置するもので、その先端部に噛合爪部27bと28bを備え、中間部に強制解除ピン27cと28cを備えている。一対の強制解除ピン27cと28cの間には、噛合爪部27b、28bが両方向運動伝達ラチェット23の歯23aに噛み合う方向に両ラッチ27、28を回動付勢するトーションばね278が挿入されている。トーションばね278は、その中心コイル部が第1補助レバー201に植設したピン205に嵌合されている。
【0023】
上昇ラッチ27の強制解除ピン(制御ピン)27cと、下降ラッチ28の強制解除ピン(制御ピン)28cは、ベースプレート13に形成した位置規制カム孔(制御カム溝)270と280内に嵌まっている。位置規制カム孔270と280は、待機面271、281と、規制解除面272、282(
図3)を有し、コントロールレバー20の中立位置及びその近傍では、待機面271と281が強制解除ピン27cと強制解除ピン28cとに接触して、上昇ラッチ27、下降ラッチ28をそれぞれ両方向運動伝達ラチェット23との噛合待機位置に保持する(
図9(B)、
図16(B)、
図17(B)、
図24(B)参照)。一方、コントロールレバー20を中立位置から上昇方向に昇降操作させたときには、規制解除面272がトーションばね278による上昇ラッチ27の回動を規制しないで上昇ラッチ27の噛合爪部27bと両方向運動伝達ラチェット23の歯23aの噛み合いを可能にし、下降ラッチ28を両方向運動伝達ラチェット23との非噛合位置に移動させ(
図10(B)参照)、コントロールレバー20を中立位置から下降方向に昇降操作させたときには、規制解除面282がトーションばね278による下降ラッチ28の回動を規制しないで下降ラッチ28の噛合爪部28bと両方向運動伝達ラチェット23の歯23aの噛み合いを可能にし、上昇ラッチ27を両方向運動伝達ラチェット23との非噛合位置に移動させる(
図18(B)参照)。そして、コントロールレバー20が中立位置から上昇方向に昇降操作されると、先ず上昇ラッチ27がその噛合爪部27bを歯23aに噛み合わせ(
図11(B))、その後上昇ラッチ27が両方向運動伝達ラチェット23の歯23aを押して入力ピニオン22を上昇方向に回動させる(
図12(B)ないし
図14(B))。また、コントロールレバー20が中立位置から下降方向に昇降操作されると、先ず下降ラッチ28がその噛合爪部28bを歯23aに噛み合わせ(
図19(B))、その後下降ラッチ28が両方向運動伝達ラチェット23の歯23aを押して入力ピニオン22を下降方向に回動させる(
図20(B)ないし
図22(B))結果、入力ピニオン22と噛み合うリンクピニオン15を有する有歯リンク10Tが正逆に回動して、ベースプレート13が昇降する。
【0024】
以上のコントロールレバー20、上昇ラッチ27及び両方向運動伝達ラチェット23は、コントロールレバー20が中立位置から上昇位置に昇降操作される度に、上記リンクピニオン15を介して有歯リンク10Tを上昇方向に揺動させ、ベースプレート13を有段で上昇させる上昇機構(昇降機構)を構成する。同様に、コントロールレバー20、下降ラッチ28及び両方向運動伝達ラチェット23は、コントロールレバー20が中立位置から下降位置に昇降操作される度に、上記リンクピニオン15を介して有歯リンク10Tを下降方向に揺動させ、ベースプレート13を有段で下降させる下降機構(昇降機構)を構成する。
【0025】
また、以上の上昇ラッチ27の強制解除ピン27cと位置規制カム孔(制御カム溝)270、下降ラッチ28の強制解除ピン28cと位置規制カム孔(制御カム溝)280は、コントロールレバー20が中立位置から上昇位置方向に昇降操作されるたびに、下降ラッチ28の噛合爪部28bと両方向運動伝達ラチェット23の歯23aとの噛合を外して上昇ラッチ27の噛合爪部27bと両方向運動伝達ラチェット23の歯23aの噛合により有歯リンク10Tを上昇方向に回動させ、同コントロールレバー20が中立位置から下降位置方向に昇降操作されるたびに、上昇ラッチ27の噛合爪部27bと両方向運動伝達ラチェット23の歯23aとの噛合を外して下降ラッチ28の噛合爪部27bと両方向運動伝達ラチェット23の歯23aの噛合により同有歯リンク10Tを下降方向に回動させるラッチ制御機構を構成する。
【0026】
一方、コントロールレバー20が上昇端または下降端に達した後、中立位置に戻る過程では、上昇ラッチ27と下降ラッチ28は両方向運動伝達ラチェット23に対して空転する(
図17、
図23)。つまり、コントロールレバー20の中立位置からの昇降操作方向を問わず、上昇ラッチ27または下降ラッチ28が両方向運動伝達ラチェット23を介して入力ピニオン22を回動させるとき、常にベースプレート13が昇降する。ベースプレート13が昇降するときには常にコントロールレバー20の揺動を伴う。
【0027】
ベースプレート13と第2補助ブラケット18の間には、リンクラチェット16と係合する下ロックポール24と上ロックポール25がそれぞれ軸24aと25aで枢着されている(
図3、
図9(A))。下ロックポール24と上ロックポール25の先端部には、リンクラチェット16と係脱する噛合爪部(先端爪部、係合爪部)24bと25bがそれぞれ形成されており、軸24aと25aには、この下ロックポール24と上ロックポール25をその噛合爪部24b、25bがリンクラチェット16と係合する方向に付勢するトーションばね
(弾性付勢部材)24cと25cが装着されている。また、下ロックポール24と上ロックポール25の上には、軸24aと25aと平行な制御ピン24dと25dが植設されている。
【0028】
下ロックポール24の制御ピン24dと上ロックポール25の制御ピン25dは、ベースプレート13の反対側(コントロールレバー20の第1補助レバー201側)に延びており、第1補助レバー201には、この制御ピン24dと制御ピン25dに対応させて上キャンセル爪241と下キャンセル爪251が軸241aと251aでそれぞれ枢着されている。上キャンセル爪241と下キャンセル爪251は、軸241aと251aの両側に、制御ピン24dと25dに係脱する押圧爪241bと251bと、ばね掛け爪241cと251cと、突起241dと251dを有しており、ばね掛け爪241cと251cの間には引張ばね245が張設されているが、突起241dと251dが第1補助レバー201に当接することで、上キャンセル爪241と下キャンセル爪251の回転が規制されている。
【0029】
下ロックポール24の軸24aの位置と噛合爪部24bの歯形状は、噛合爪部24bとリンクラチェット16が噛み合っているときには有歯リンク10Tの下降回動(
図9、
図14ないし
図16、
図17、
図22ないし
図24における時計方向回動)を許さない(有歯リンク10Tをロックする)ように定められている。同様に、上ロックポール25の軸25aの位置と噛合爪部25bの歯形状は、噛合爪部25bとリンクラチェット16が噛み合っているときには有歯リンク10Tの上昇回動(
図9、
図14ないし
図16、
図17、
図22ないし
図24における反時計方向回動)を許さない(有歯リンク10Tをロックする)ように定められている。逆に、下ロックポール24の噛合爪部24bとリンクラチェット16との噛合が外れた状態で有歯リンク10Tが下降方向に回動するときには、上ロックポール25の噛合爪部25bはその下降回動を許容し(噛合爪部25bはトーションばね25cの回動付勢力によってリンクラチェット16との接触を保ちながら軸25aを中心に回動してリンクラチェット16の次歯と噛み合い(
図11ないし
図14))、上ロックポール25の噛合爪部25bとリンクラチェット16との噛合が外れた状態で有歯リンク10Tが上昇方向に回動するときには、下ロックポール24の噛合爪部24bはその上昇回動を許容する(トーションばね24cの回動付勢力によってリンクラチェット16との接触を保ちながら軸24aを中心に回動してリンクラチェット16の次歯と噛み合う(
図19ないし
図22))。以上の下ロックポール24と上ロックポール25、および下ロックポール24と上ロックポール25をリンクラチェット16に噛み合う方向に回動付勢するトーションばね24cと25cは、下ロックポール24および上ロックポール25とリンクラチェット16との噛合状態で上記有歯リンク10Tの昇降回動を阻止するロック機構を構成している。
【0030】
軸21に相対回転不能に結合された減衰ギヤ30は、その周面にセクタギヤ30aを有しており、このセクタギヤ30aに、第1補助ブラケット17上に支持したスプリングブレーキ60のギヤ61が噛み合っている(
図3、
図4、
図5)。スプリングブレーキ60は、周知のもので、セクタギヤ30aに噛み合うギヤ61を有する回転体62と、第1補助ブラケット17上に固定される摩擦ケース63と、摩擦ケース63の内面に位置するコイルスプリング64とを有しており、コイルスプリング64の両端部が回転体62に係止されている。セクタギヤ30aの回転を受けてギヤ61及び回転体62が回転すると、コイルスプリング64が縮径して摩擦ケース63との摩擦を減じ、一定の摩擦抵抗を発生させながら相対回転する。
【0031】
図9ないし
図24は、上記構成の本有段リフタ機構の動作を説明するための図である。
図9ないし
図24において、各図の(A)は、ロック機構およびロック復帰機構の主要要素(コントロールレバー20(第1補助レバー201)、下ロックポール24、上ロックポール25、上キャンセル爪241、下キャンセル爪251および有歯リンク10T)を示す側面図、各図の(B)は、入力部材の昇降操作を昇降機構に伝達する主要要素(コントロールレバー20(第1補助レバー201)、上昇ラッチ27、下降ラッチ28、入力ピニオン22、両方向運動伝達ラチェット23および有歯リンク10T)を示す側面図である。
図9ないし
図24では、部材の上下(表裏)位置関係を無視して主要要素を実線で描いている。
図9ないし
図24において、下ロックポール24、上ロックポール25、上キャンセル爪241、下キャンセル爪251および上昇ラッチ27及び下降ラッチ28、のうち、下ロックポール24と上キャンセル爪241、上ロックポール25と下キャンセル爪251については互いに方向と間隔の異なるハッチングを付し、上昇ラッチ27と下降ラッチ28については互いに異なる方向のハッチングを付して描いた。
【0032】
最初に
図9から
図17について、下降動作を説明する。
図9は、コントロールレバー20が中立位置にあるロック状態を示している。このとき、下ロックポール24の噛合爪部24bと上ロックポール25の噛合爪部25bは共にリンクラチェット16との係合位置(噛合位置)にあり、有歯リンク10Tの回動を阻止(ロック)している。また、上昇ラッチ27と下降ラッチ28はそれぞれ、強制解除ピン27c、28cが位置規制カム孔270、280の噛合待機面271、281に拘束された、両方向運動伝達ラチェット23との噛合待機位置(噛み合う直前の位置)にある。
【0033】
この初期位置において、軸21を中心にコントロールレバー20を下降方向に少し(
図9(A)からa゜)揺動操作させると、軸241aで第1補助レバー201に枢着されている上キャンセル爪241の押圧爪241bが下ロックポール24の制御ピン24dに当接し、ロックオフ待機状態となる(
図10(A))。さらに、コントロールレバー20(第1補助レバー201)を初期位置からの回転角がb゜となる迄下降回動させると、押圧爪241bが制御ピン24dを押して下ロックポール24を軸24aを中心に時計方向に回動させ、噛合爪部24bとリンクラチェット16との噛合が外れてロックオフ状態となる(
図11(A))。よって有歯リンク10Tの下降回動が可能となる(許容される)。前述のように、有歯リンク10Tが下降回動するとき、上ロックポール25はその回動を妨げない。
以上の上キャンセル爪241および下ロックポール24の制御ピン24dは、コントロールレバー20が中立位置から下降方向に揺動操作されると、下ロックポール24とリンクラチェット16の噛合(ロック機構のロック)を解除するロック解除機構を構成している。
【0034】
さらに、コントロールレバー20(第1補助レバー201)を下降方向に回動させると、ロックオフmax状態(
図12(A)、コントロールレバー20を初期位置からc゜回転させた状態)から押圧爪241bが制御ピン24dを乗り越え、ロックオン待機状態(
図13(A)、コントロールレバー20を初期位置からd゜回転させた状態)に移行する。押圧爪241bが制御ピン24dを乗り越えたロックオン待機状態で、下ロックポール24をロック解除方向に回動させていた力が消失し、トーションばね24cの回動付勢力により、下ロックポール24はリンクラチェット16との噛合方向に回動する。このロックオン待機状態は、下ロックポール24がリンクラチェット16に当接係合した状態(完全に噛み合う前の状態、不完全噛合状態)である。そして、コントロールレバー20をさらに下降方向に回動させた状態(初期位置からe゜回転させた状態、ロックオン状態、
図14(A))で、下ロックポール24と上ロックポール25が共にリンクラチェット16に正しく噛み合って、有歯リンク10Tの回動を阻止する(ロックする)。以上の上キャンセル爪241および下ロックポール24の制御ピン24dは、コントロールレバー20が下降揺動端に達する前に、下ロックポール24をトーションばね24cの回動付勢力によりリンクラチェット16との噛合可能位置に復帰させるロック復帰機構を構成している。
【0035】
コントロールレバー20が下降揺動端に達した後、その操作力を開放すると、中立位置復帰ばね19の力によりコントロールレバー20が中立位置に復帰し(
図16(A)、復帰状態)、中立位置に復帰する迄に、押圧爪241bが制御ピン24dを乗り越えて初期位置に復帰する(
図15(A)、
図16(A))。このとき押圧爪241bは、制御ピン24dを介して下ロックポール24を反時計方向に回転させようとするが、噛合爪部24bとリンクラチェット16が噛み合っているため、引張ばね245の付勢力に反して上キャンセル爪241が反時計方向に回転し、押圧爪241bが制御ピン24dを乗り越える。
【0036】
一方、コントロールレバー20が中立位置(
図9(B))からロックオフ位置(
図11(B))に移動する間に、第1補助レバー201上に軸28aで枢着されている下降ラッチ28は、その強制解除ピン28cの拘束が位置規制カム孔280の規制解除面282により開放されて両方向運動伝達ラチェット23方向への移動が自由になり、トーションばね278の付勢力によって噛合爪部28bが両方向運動伝達ラチェット23と噛合する位置に移動する。逆に、第1補助レバー201上に軸27aで枢着されている上昇ラッチ27は、その強制解除ピン27cが位置規制カム孔270の待機面271に拘束されて両方向運動伝達ラチェット23との非噛合位置に移動し、噛合爪部27bが両方向運動伝達ラチェット23から離れる(
図9(B)、
図11(B))。
【0037】
図11のロックオフ位置において、コントロールレバー20をさらに下降方向に回動操作させると、下降ラッチ28の噛合爪部28bが両方向運動伝達ラチェット23の歯23aに係合し、これを押す。両方向運動伝達ラチェット23は軸21を介して入力ピニオン22と一体にされているから、両方向運動伝達ラチェット23が下降回動すると入力ピニオン22が下降回動し、入力ピニオン22と噛み合うリンクピニオン15を有する有歯リンク10Tが下降方向に回動し、ベースプレート13が下降する(
図12(B)ないし
図14(B))。この実施形態では、コントロールレバー20が初期位置からe゜回転するとき、有歯リンク10Tがf゜回動している。
【0038】
以上のように、コントロールレバー20を下降方向へ回動操作させる度に、両方向運動伝達ラチェット23及び軸21を介して入力ピニオン22が上昇方向に回転し、入力ピニオン22と噛み合うリンクピニオン15を有する有歯リンク10Tが下降方向に回動する。そして、
図14のロックオン状態では、下ロックポール24(と上ロックポール25)がリンクラチェット16と噛み合って有歯リンク10Tの下降回動が阻止されるから、コントロールレバー20を中立位置から下降方向に1回昇降操作させる度に、有歯リンク10Tは両方向運動伝達ラチェット23及びリンクラチェット16の一歯分ずつ下降する下降方向有段回動伝達動作が行われる。
【0039】
また、入力ピニオン22は、軸21を介して減衰ギヤ30と一体にされており、この減衰ギヤ30は、スプリングブレーキ60のギヤ61と噛み合っている。スプリングブレーキ60自体は、周知のブレーキ機構(減衰機構)であり、減衰ギヤ30の回動にブレーキ(抵抗)を与える作用をするため、仮にベースプレート13に大荷重が加わっていたとしても、ベースプレート13が衝撃的に下降することを防止できる。
【0040】
次に上昇動作を説明する。以下の上昇動作は、以上の下降動作の説明における下ロックポール24を上ロックポール25と置き換え、上キャンセル爪241を下キャンセル爪251と置き換え、下降ラッチ28を上昇ラッチ27と置き換えた説明に相当する。
【0041】
図17において、軸21を中心にコントロールレバー20を上昇方向に少し(
図18(A)からa゜)揺動操作させると、軸251aで第1補助レバー201に枢着されている下キャンセル爪251の押圧爪251bが上ロックポール25の制御ピン25dに当接し、ロックオフ待機状態となる(
図18(A))。さらに、コントロールレバー20(第1補助レバー201)を初期位置からの回転角がb゜となる迄上昇回動させると、押圧爪251bが制御ピン25dを押して上ロックポール25を軸25aを中心に反時計方向に回動させ、噛合爪部25bとリンクラチェット16との噛合が外れてロックオフ状態となる(
図19(A))。よって有歯リンク10Tの上昇回動が可能となる(許容される)。前述のように、有歯リンク10Tが上昇回動するとき、下ロックポール24はその回動を妨げない。
【0042】
さらに、コントロールレバー20(第1補助レバー201)を上昇方向に回動させると、ロックオフmax状態(
図20(A)、コントロールレバー20を初期位置からc゜回転させた状態)から押圧爪251bが制御ピン25dを乗り越え、ロックオン待機状態(
図21(A)、コントロールレバー20を初期位置からd゜回転させた状態)に移行する。押圧爪251bが制御ピン25dを乗り越えたロックオン待機状態では、上ロックポール25をロック解除方向に回動させていた力が消失し、トーションばね25cの回動付勢力により、上ロックポール25はリンクラチェット16との噛合方向に回動する。このロックオン待機状態は、上ロックポール25がリンクラチェット16に当接係合した状態(完全に噛み合う前の状態、不完全噛合状態)である。そして、コントロールレバー20をさらに上昇方向に回動させた状態(初期位置からe゜回転させた状態、ロックオン状態)で、下ロックポール24と上ロックポール25が共にリンクラチェット16に正しく噛み合って、有歯リンク10Tの回動を阻止する(ロックする)(
図22(A))。
【0043】
コントロールレバー20が上昇揺動端に達した後、その操作力を開放すると、中立位置復帰ばね19の力によりコントロールレバー20が中立位置に復帰し(
図24(A)、復帰状態)、中立位置に復帰する迄に、押圧爪251bが制御ピン25dを乗り越えて初期位置に復帰する(
図23(A)、
図24(A))。このとき押圧爪251bは、制御ピン25dを介して上ロックポール25を時計方向に回転させようとするが、噛合爪部24bとリンクラチェット16が噛み合っているため、引張ばね245の付勢力に反して下キャンセル爪251が時計方向に回転し、押圧爪241bが制御ピン25dを乗り越える。
【0044】
一方、コントロールレバー20が中立位置(
図17(B))からロックオフ位置(
図19(B))に移動する間に、第1補助レバー201上に軸27aで枢着されている上昇ラッチ27は、その強制解除ピン27cの拘束が位置規制カム孔270の規制解除面272により開放されて両方向運動伝達ラチェット23方向への移動が自由になり、トーションばね278の付勢力によって噛合爪部27bが両方向運動伝達ラチェット23と噛合する位置に移動する。逆に、第1補助レバー201上に軸28aで枢着されている下降ラッチ28は、その強制解除ピン28cが位置規制カム孔280の待機面281に拘束されて両方向運動伝達ラチェット23との非噛合位置に移動し、噛合爪部28bが両方向運動伝達ラチェット23から離れる(
図17(B)、
図19(B))。
【0045】
図19のロックオフ位置において、コントロールレバー20をさらに上昇方向に回動操作させると、上昇ラッチ27の噛合爪部27bが両方向運動伝達ラチェット23の歯23aに係合し、これを押す。両方向運動伝達ラチェット23は軸21を介して入力ピニオン22と一体にされているから、両方向運動伝達ラチェット23が上昇回動すると入力ピニオン22が上昇回動し、入力ピニオン22と噛み合うリンクピニオン15を有する有歯リンク10Tが上昇方向に回動し、ベースプレート13が上昇する(
図20(B)ないし
図22(B))。この実施形態では、コントロールレバー20が初期位置からe゜回転するとき、有歯リンク10Tがf゜回動している。
【0046】
以上のように、コントロールレバー20を上昇方向へ回動操作させる度に、両方向運動伝達ラチェット23及び軸21を介して入力ピニオン22が上昇方向に回転し、入力ピニオン22と噛み合うリンクピニオン15を有する有歯リンク10Tが上昇方向に回動する。そして、
図22のロックオン状態では、上ロックポール25(と下ロックポール24)がリンクラチェット16と噛み合って有歯リンク10Tの上昇回動が阻止されるから、コントロールレバー20を中立位置から上昇方向に1回昇降操作させる度に、有歯リンク10Tは両方向運動伝達ラチェット23及びリンクラチェット16の一歯分ずつ上昇する上昇方向有段回動伝達動作が行われる。
【0047】
以上の実施形態では、昇降リンク10Xと有歯リンク10Tを別々に設けたが、両リンクを同一の部材とすることも可能である。あるいは、別部材とした有歯リンクと昇降リンクを同一の軸11に軸方向に離間させて結合する態様も可能である。以上の場合、昇降リンクを複数設けて同一の軸11に離間させて結合することも可能である。さらに、別々に設けた有歯リンクと昇降リンクの軸を前後に離間させる態様も可能である。
【0048】
図25は、その一実施形態の側面図であり、シート(座面)が支持されるベースプレート(昇降体)13上には、前後に離れた軸11Xと軸11で昇降リンク10X1と有歯リンク10Tがそれぞれ枢着されている。昇降リンク10X1の下端部は、床面と一体の床面ブラケット(基部)14に軸12で枢着されており、昇降リンク10X1と有歯リンク10Tの上部間は、軸10A、10Bを介して連結リンク10Cの両端に枢着されている。従って、有歯リンク10Tが軸11を中心に揺動すると、連結リンク10Cを介して昇降リンク10X1が軸11Xを中心に揺動し、ベースプレート13が基部14に対して昇降する。本実施形態は、有歯リンク10Tを正逆に揺動させることにより、ベースプレート13を昇降させる実施形態である。
【0049】
また、以上の実施形態では、入力部材として軸を中心に揺動操作可能なコントロールレバー20を用いたが、回動ハンドルも使用可能である。
【0050】
また、以上の実施形態では、ベースプレート13側の軸11に、該軸を中心とする円弧上に位置するリンクラチェット16を有する有歯リンク10Tを枢着したが、基部14側の軸12に、該軸を中心とする円弧上に位置するリンクラチェットを有する有歯リンク10Tを枢着しても本発明は成立する。この態様では、図示実施形態においてベースプレート13に搭載した、昇降リンク10X、有歯リンク10T、コントロールレバー20、第1補助レバー201、半円筒部材203、第2補助レバー204を含む運動伝達レバー機構、下ロックポール24、上ロックポール25とリンクラチェット16を含むロック機構、及び両方向運動伝達ラチェット23と上昇ラッチ27及び下降ラッチ28を含む上昇方向回動伝達機構を、基部14側に設置すればよい。
【0051】
以上の実施形態は、有歯リンク10Tの回動に一定の負荷を与える減衰機構として有歯リンク10Tに連動回動する減衰ギヤ30を備え、この減衰ギヤ30にスプリングブレーキ60を連動させたが、ギヤではなく軸(軸21)などで連動させてもよい。本発明はスプリングブレーキ60に限定されず、例えばオイルダンパを使用してもよい。
【0052】
以上の実施形態は、本発明を車両用シートの上下位置調整装置に適用したものであるが、通常の椅子や作業台(昇降体)の昇降装置としても本発明は適用可能である。さらに、昇降体の下降端から上昇端への移動をばね力(または手動)で行わせる(つまり、有段上昇を行わせない)実施形態も可能であり、この有段下降装置では、有段上昇に必要な要素は取り除くことができる。