特許第5734821号(P5734821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5734821ブロック共重合体、分散剤及び顔料分散組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734821
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】ブロック共重合体、分散剤及び顔料分散組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20150528BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20150528BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20150528BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALN20150528BHJP
【FI】
   C08F293/00
   C09D17/00
   G02B5/20 101
   !G02F1/1335 505
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-267059(P2011-267059)
(22)【出願日】2011年12月6日
(65)【公開番号】特開2013-119568(P2013-119568A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅本 光
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−163480(JP,A)
【文献】 特開平8−291469(JP,A)
【文献】 特開2008−266400(JP,A)
【文献】 特開平4−18964(JP,A)
【文献】 特開2011−232735(JP,A)
【文献】 特開2009−84314(JP,A)
【文献】 特開2009−52010(JP,A)
【文献】 特開2012−212054(JP,A)
【文献】 特開2012−68559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 293/00
C08F 297/00
C08L 53/00
C08K 5/00−5/59
C09D 17/00
G02B 5/20
G02F 1/1335
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[一般式(1)において、nは、1〜10の整数である。Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素数が1〜10のアルキレン基である。Rは、炭素数が1〜10のアルキレン基である。]
で表わされる部分構造を含むセグメントAと、
下記一般式(2):
【化2】
[一般式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素数が1〜10のアルキレン基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数が1〜10のアルキル基である。]
で表される部分構造を含むセグメントBとを有し、
アミン価が、20mgKOH/g〜150mgKOH/gである、ブロック共重合体。
【請求項2】
前記セグメントAは、前記一般式(1)で表わされる部分構造を10質量%〜100質量%含む、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
前記セグメントBは、前記一般式(2)で表わされる部分構造を80質量%〜100質量%含む、請求項1または2に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
前記ブロック共重合体における前記セグメントAと前記セグメントBとの質量比(セグメントAの質量:セグメントBの質量)が、50:50〜95:5である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【請求項5】
前記ブロック共重合体の分子量分布(PDI)が、1.05〜2.20である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【請求項6】
前記セグメントAのブロックと前記セグメントBのブロックからなるジブロック共重合体である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のブロック共重合体からなる、分散剤。
【請求項8】
請求項7に記載の分散剤及び顔料を含む、顔料分散組成物。
【請求項9】
カラーフィルタ用である、請求項8に記載の顔料分散組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体、分散剤及び顔料分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレーなどに用いられるカラーフィルタを製造する方法としては、顔料分散法、染色法、電着法、印刷法などが知られている。これらの中でも、分光特性、耐久性、パターン形状及び精度の観点から、顔料分散法が広く使用されている。顔料分散法では、例えば、顔料、分散剤、溶媒を混合した顔料分散組成物からなる塗布膜を基板上に形成し、所望のパターン形状のフォトマスクを介して露光し、アルカリ現像する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−52010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顔料分散組成物から形成される塗布膜のアルカリ現像性が悪い場合、現像残りが生じ、カラーフィルタの色度、コントラスト、寸法精度などが低下する場合がある。
【0005】
また、顔料分散組成物を塗布する工程などにおいて、顔料分散組成物が塗布装置などに付着し、乾燥して析出物が形成される場合がある。この析出物の溶媒への溶解性が低いと、析出物が塗布膜に混入し、画像形成に支障を与える場合がある。
【0006】
本発明は、例えば分散剤として用いられたときに、優れた分散性、分散組成物から形成される塗布膜のアルカリ水溶液への溶解性(以下「アルカリ現像性」という)、分散組成物から形成される乾燥析出物の溶媒への溶解性(以下「乾燥再溶解性」という)を与えることができる、ブロック共重合体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0008】
項1
下記一般式(1):
【0009】
【化1】
【0010】
[一般式(1)において、nは、1〜10の整数である。Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素数が1〜10のアルキレン基である。Rは、炭素数が1〜10のアルキレン基である。]
で表わされる部分構造を含むセグメントAと、
下記一般式(2):
【0011】
【化2】
【0012】
[一般式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素数が1〜10のアルキレン基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数が1〜10のアルキル基である。]
で表される部分構造を含むセグメントBとを有し、
アミン価が、20mgKOH/g〜150mgKOH/gである、ブロック共重合体。
【0013】
項2 セグメントAは、一般式(1)で表わされる部分構造を10質量%〜100質量%含む、項1に記載のブロック共重合体。
【0014】
項3 セグメントBは、一般式(2)で表わされる部分構造を80質量%〜100質量%含む、項1または2に記載のブロック共重合体。
【0015】
項4 ブロック共重合体における前記セグメントAと前記セグメントBとの質量比(セグメントAの質量:セグメントBの質量)が、50:50〜95:5である、項1〜3のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【0016】
項5 ブロック共重合体の分子量分布(PDI)が、1.05〜2.20である、項1〜4のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【0017】
項6 セグメントAのブロックとセグメントBのブロックからなるジブロック共重合体である、項1〜5のいずれか1項に記載のブロック共重合体。
【0018】
項7 項1〜6のいずれか1項に記載のブロック共重合体からなる、分散剤。
【0019】
項8 項7に記載の分散剤及び顔料を含む、顔料分散組成物。
【0020】
項9 カラーフィルタ用である、項8に記載の顔料分散組成物。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、例えば分散剤として用いられたときに、分散性、アルカリ現像性、乾燥再溶解性の優れた顔料分散組成物を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0023】
<ブロック共重合体>
(セグメントA)
本実施形態に係るブロック共重合体は、下記一般式(1)で表わされる部分構造(モノマー単位)を含むセグメントAを有する。
【0024】
【化3】
【0025】
[一般式(1)において、nは、1〜10の整数である。Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素数が1〜10のアルキレン基である。Rは、炭素数が1〜10のアルキレン基である。]
【0026】
一般式(1)において、nは、1〜7の整数であることが好ましく、1〜5の整数であることがより好ましい。
【0027】
で示される炭素数が1〜10であるアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基などが挙げられる。Rは、炭素数が1〜5のアルキレン基であることが好ましい。
【0028】
で示される炭素数が1〜10のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基などが挙げられる。Rは、炭素数が1〜8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が3〜8のアルキレン基であることがより好ましい。
【0029】
セグメントAに含まれる一般式(1)で表される部分構造は、一種類のモノマー単位から構成されていてもよいし、複数種類のモノマー単位から構成されていてもよい。
【0030】
セグメントAに含まれる部分構造(モノマー単位)は、一般式(1)で表させる部分構造のみであってもよいし、他の部分構造が含まれて構成されていてもよい。セグメントAに他の部分構造が含まれる場合、他の部分構造は、ランダム共重合、ブロック共重合などの何れの態様で含まれていてもよい。
【0031】
セグメントAは、一般式(1)で表される部分構造を10質量%〜100質量%含むことが好ましく、20質量%〜80質量%含むことがより好ましい。セグメントAは、後述するセグメントBを構成する一般式(2)などの塩基性官能基を含む部分構造を有しないことが好ましい。セグメントAが、塩基性官能基を含む部分構造を有する場合、セグメントAにおける塩基性官能基を含む部分構造の割合は、1質量%以下であることが好ましい。
【0032】
セグメントAに含まれ得る他の部分構造は、一般式(1)で表される部分構造を構成するモノマー、及び後述のセグメントBを構成するモノマーの両方と共重合し得るモノマーにより構成されることが好ましい。セグメントAの他の部分構造を構成し得るモノマーの具体例としては、芳香族不飽和モノマー(スチレン系モノマー)、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。芳香族不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル及びメタクリルの少なくとも一方」を意味し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方」を意味する。例えば、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方」を意味する。
【0033】
セグメントAに含まれ得る他の部分構造は、下記一般式(3)で表される部分構造(モノマー単位)であることが好ましい。
【0034】
【化4】
【0035】
[式中、Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、置換基を有していてもよい炭素数が1〜10のアルキル基である。]
【0036】
一般式(3)のRにおいて、炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。Rは、置換基を有していてもよい炭素数が1〜5のアルキル基であることが好ましい。Rで示される炭素数1〜10のアルキル基が、置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アリール基が挙げられる。アリール基の炭素数は、通常6〜12であり、6〜9であることが好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基などが挙げられる。置換基の位置は、特に限定されない。置換基の数は、通常1〜4個であり、1〜3個であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0037】
(セグメントB)
本実施形態に係るブロック共重合体は、上記セグメントAに加えて、下記一般式(2)で表される部分構造(モノマー単位)を含むセグメントBを有する。
【0038】
【化5】
【0039】
[一般式(2)において、Rは、水素原子またはメチル基である。Rは、炭素数が1〜10のアルキレン基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数が1〜10のアルキル基である。]
【0040】
で示される炭素数が1〜10のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基などのアルキレン基などが挙げられる。Rは、炭素数が1〜5のアルキレン基であることが好ましい。
【0041】
及びRで示される炭素数が1〜10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。R及びRは、それぞれ独立して、水素原子または炭素数が1〜5のアルキル基であることが好ましい。
【0042】
セグメントBに含まれる一般式(2)で表される部分構造は、一種類のモノマー単位から構成されていてもよいし、複数種類のモノマー単位から構成されていてもよい。
【0043】
セグメントBに含まれる部分構造(モノマー単位)は、一般式(2)で表させる部分構造のみであってもよいし、他の部分構造が含まれて構成されていてもよい。セグメントBに他の部分構造が含まれる場合、他の部分構造は、ランダム共重合、ブロック共重合などの何れの態様で含まれていてもよい。
【0044】
セグメントBは、一般式(2)で表わされる部分構造を80質量%〜100質量%を含むことが好ましい。
【0045】
セグメントBに含まれ得る他の部分構造は、一般式(2)で表される部分構造を構成するモノマー、及びセグメントAを構成するモノマーの両方と共重合し得るモノマーにより構成されることが好ましい。セグメントBの他の部分構造を構成し得るモノマーの具体例としては、芳香族不飽和モノマー(スチレン系モノマー)、ヘテロ環含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。芳香族不飽和モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。ヘテロ環含有不飽和モノマーとしては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0046】
(ブロック共重合体)
ブロック共重合体において、セグメントAとセグメントBとの質量比(セグメントA:セグメントB)は、50:50〜95:5であることが好ましく、60:40〜95:5であることがより好ましい。
【0047】
ブロック共重合体のアミン価は、20mgKOH/g〜150mgKOH/gである。ブロック共重合体のアミン価がこの範囲になるように、セグメントBに一般式(2)で表される部分構造が含まれていることが好ましい。ブロック共重合体のアミン価の下限値は、30mgKOH/gであることが好ましく、上限値は120mgKOH/gであることが好ましい。
【0048】
ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)の下限値は、8,000であることが好ましく、11,000であることがよりに好ましい。ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)の上限値は、40,000であることが好ましい。
【0049】
ブロック共重合体は、分子量分布(PDI)が1.05〜2.20であることが好ましく、1.05〜2.00であることがさらに好ましい。なお、本発明において、分子量分布(PDI)とは、(ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw))/(ブロック共重合体の数平均分子量(Mn))によって求められるものである。
【0050】
ブロック共重合体のセグメントAは、一般式(1)で表される部分構造の側鎖にエステル結合部分及び末端水酸基を有することから、溶媒、バインダー樹脂との高い親和性を有すると考えられる。一方、セグメントBは、一般式(2)で表される部分構造の側鎖に塩基性有官能基を有することから、顔料との高い親和性を有すると考えられる。ブロック共重合体においては、セグメントAに含まれる一般式(1)で表される部分構造と、セグメントBに含まれる一般式(2)で表される部分構造とが局在化する。よって、溶媒中において、セグメントAを構成する一般式(1)で表される部分構造の側鎖が、溶媒、バインダー樹脂と好適に相互作用し、それとは独立にセグメントBを構成する一般式(2)で表される部分構造の側鎖が、顔料と好適に相互作用することができるため、ブロック共重合体は、顔料の分散性に優れる。よって、ブロック共重合体は、顔料などの分散剤として好適に使用することができる。
【0051】
ブロック共重合体の製造方法は、特に限定されない。ブロック共重合体は、例えば、リビングラジカル重合法などを用いたブロック重合により、モノマーを順次重合反応させることにより得られる。モノマーの重合反応によって、セグメントAを先に製造し、セグメントAにセグメントBのモノマーを重合してもよいし、セグメントBを先に製造し、セグメントBにセグメントAのモノマーを重合してもよい。また、ブロック共重合体の製造においては、モノマーの重合反応によって、セグメントAとセグメントBとを別々に製造した後、セグメントAとセグメントBとをカップリングさせてもよい。
【0052】
ブロック共重合体は、セグメントAのブロックとセグメントBのブロックからなるジブロック共重合体であることが好ましく、通常、(セグメントA)−(セグメントB)、(セグメントB)−(セグメントA)などの結合からなる。なお、リビングラジカル重合法とは、ラジカル重合の簡便性と汎用性を保ちつつ、分子構造の精密制御を可能にする重合法である。リビングラジカル重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP)、硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT)、有機テルル化合物を用いる方法(TERP)などの方法がある。これらの方法のなかでも、使用できるモノマーの多様性、高分子領域での分子量制御の観点から、国際公開2004/14848号及び国際公開2004/14962号に記載された有機テルル化合物を用いる方法(TERP)を用いることが好ましい。
【0053】
<顔料分散組成物>
本実施形態に係る顔料分散組成物は、上記のブロック共重合体からなる分散剤と顔料とを含む。顔料分散組成物は、バインダー樹脂、溶媒などを含んでいてもよい。
【0054】
顔料分散組成物において、分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して5質量部〜200質量部であることが好ましく、10質量部〜100質量部であることがより好ましく、10質量部〜50質量部であることがさらに好ましい。
【0055】
顔料としては、有機顔料及び無機顔料のいずれでもよいが、有機化合物を主成分とする有機顔料が特に好ましい。顔料としては、例えば、赤色顔料、黄色顔料、橙色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料などの各色の顔料が挙げられる。顔料の構造は、モノアゾ系顔料、ジアゾ系顔料、縮合ジアゾ系顔料などのアゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、キナクリドン系顔料、インディゴ系顔料、チオインディゴ系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料などの多環系顔料などが挙げられる。顔料分散組成物に含まれる顔料は、1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよい。顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、122、123、146、149、168、177、178、179、187、200、202、208、210、215、224、254、255、264などの赤色顔料;C.I.Pigment Yellow 1、3、5、6、14、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、93、97、98、104、108、110、138、139、147、150、151、154、155、166、167、168、170、180、188、193、194、213などの黄色顔料;C.I.Pigment Orange 36、38、43などの橙色顔料;C.I.Pigment Blue 15、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60などの青色顔料;C.I.Pigment Green 7、36、58などの緑色顔料;C.I.Pigment Violet 23、32、50などの紫色顔料などが挙げられる。顔料は、これらの中でも、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 255、C.I.Pigment Red 264、C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:2、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:6、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Green 7、C.I.Pigment Green 36、C.I.Pigment Green 58などが好ましい。
【0056】
顔料分散組成物における顔料の含有量は、顔料分散組成物の固形分全量中において、通常80質量%以下であり、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。顔料分散組成物における顔料の含有量は、顔料分散組成物の固形分全量中において、通常10質量%以上であり、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0057】
バインダー樹脂は、例えば、重合体であってもよい。バインダー樹脂が重合体である場合、重合体を構成するモノマーの具体例としては、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロドデシルなどの(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン(p−メチルスチレン)、2−メチルスチレン(o−メチルスチレン)、3−メチルスチレン(m−メチルスチレン)、4−メトキシスチレン(p−メトキシスチレン)、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブトキシスチレンなどの芳香族不飽和モノマー(スチレン系モノマー)などが挙げられる。バインダー樹脂は、カルボキシル基含有不飽和モノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体であることが好ましい。このような共重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ブチルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ベンジルとの共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ブチルと(メタ)アクリル酸ベンジルとの共重合体などが挙げられる。バインダー樹脂と顔料との親和性の観点からは、バインダー樹脂は、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸ベンジルとの共重合体であることが特に好ましい。カルボキシル基含有不飽和モノマーと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体において、カルボキシル基含有不飽和モノマーの含有量は、全モノマー成分中、通常5質量%〜90質量%であり、10質量%〜70質量%であることが好ましく、20質量%〜70質量%であることがより好ましい。
【0058】
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000〜100,000であることが好ましく、5,000〜50,000であることがより好ましく、5,000〜20,000であることがさらに好ましい。バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)が3,000以上であると、顔料分散組成物から形成された塗布膜の耐熱性、膜強度などが良好となり、重量平均分子量(Mw)が100,000以下であると、この塗布膜のアルカリ現像性が良好となる。
【0059】
バインダー樹脂の酸価は、20mgKOH/g〜170mgKOH/gであることが好ましく、50mgKOH/g〜150mgKOH/gであることがより好ましく、90mgKOH/g〜150mgKOH/gであることがさらに好ましい。バインダー樹脂の酸価が20mgKOH以上/gであると、顔料分散組成物を塗布膜としたときのアルカリ現像性が良好となり、170mgKOH/g以下であると耐熱性が良好となる。
【0060】
顔料分散組成物に含まれるバインダー樹脂は、1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよい。
【0061】
顔料分散組成物において、樹脂バインダーの含有量は、顔料100質量部に対して、5質量部〜200質量部であることが好ましく、10質量部〜100質量部であることがより好ましく、10質量部〜50質量部であることがさらに好ましい。
【0062】
溶媒は、顔料、分散またはバインダー樹脂などを溶解、分散などさせることができるものであれば、特に限定されず、公知のものであってよい。溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコール−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテルなどのグリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのグリコールアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサノールジアセテートなどのグリコールジアセテート類;シクロヘキサノールアセテートなどのアルキルアセテート類;アミルエーテル、プロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノンなどのケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、メトキシプロパノール、メトキシメチルペンタノール、グリセリン、ベンジルアルコールなどの1価又は多価アルコール類;n−ペンタン、n−オクタン、ジイソブチレン、n−ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシルなどの脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンのなどの芳香族炭化水素類;アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどの鎖状又は環状エステル類;3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸などのアルコキシカルボン酸類;ブチルクロライド、アミルクロライドなどのハロゲン化炭化水素類;メトキシメチルペンタノンなどのエーテルケトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。溶媒は、顔料などの分散性、分散剤の溶解性、顔料分散組成物の塗布性などの観点から、グリコールアルキルエーテルアセテート類、1価又は多価アルコール類であることが好ましい。顔料分散組成物に含まれる溶媒は、1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよい。
【0063】
顔料分散組成物中の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調整することができる。顔料分散組成物中の溶媒の含有量の上限値は、通常99質量%である。また、顔料分散組成物中の溶媒の含有量の下限値は、顔料分散組成物の塗布に適した粘度を考慮して、通常70質量%であり、80質量%であることが好ましい。
【0064】
上記溶媒は、顔料分散組成物から形成される析出物を溶解、除去するための溶媒として使用できる。
【0065】
顔料分散組成物は、顔料、分散剤、バインダー樹脂、溶媒などを、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、ディゾルバー、ニーダーなどの混合分散機を用いて混合することによって得られる。顔料分散組成物は、混合後に濾過することが好ましい。
【0066】
顔料分散組成物は、必要に応じて他の添加剤を含んでいてもよい。他の添加剤としては、例えば、多官能性モノマー、光重合開始剤、顔料誘導体、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤などが挙げられる。
【0067】
多官能性モノマーとしては、バインダー樹脂と相溶性のあるエチレン性不飽和二重結合を少なくとも2つ有する化合物などが好ましい。このような化合物としては、アルカリ可溶性を有し、1分子内に1つ以上の酸性官能基と2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく、1分子内に1つ以上の酸性官能基と3つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物がさらに好ましい。エチレン性不飽和二重結合を少なくとも2つ有する化合物としては、二官能(メタ)アクリレート、三官能以上の(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、三官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。1分子内に1つ以上の酸性官能基と2つ以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、酸性官能基含有多官能性(メタ)アクリレートがより好ましく、三官能以上の酸性官能基含有多官能性(メタ)アクリレートが特に好ましい。酸性官能基としては、アルカリ現像が可能なものであればよく、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。酸性官能基は、アルカリ現像性及び樹脂組成物の取り扱い性の点からカルボキシ基が好ましい。
【0068】
顔料誘導体としては、例えば、上記の顔料の骨格構造に、直接またはアルキル基、アリール基、複素環基などを介して、スルホン酸基、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシル基などが置換したものが挙げられる。上記の顔料と顔料誘導体とを併用することで、顔料の分散性、分散安定性などを向上させることができる。
【0069】
顔料分散組成物の粘度は、25℃において、20mPa・s以下であることが好ましい。顔料分散組成物の粘度が20mPa・s以下であると、顔料分散組成物の塗布膜の形成効率が良好になると共に、塗布膜の厚さのばらつきが抑制される。なお、顔料分散組成物の粘度は、E型粘度計を用いて測定することができる。
【0070】
顔料分散組成物をスピンコート法、ロールコート法、スリットコート法などの方法により基板上に塗布することにより、基板上に顔料分散組成物の塗布膜を形成することができる。顔料分散組成物を基板の上に塗布した後、必要に応じて乾燥(脱溶媒処理)などを施してもよい。
【0071】
上記の通り、ブロック共重合体は、セグメントAとセグメントBとを有し、ブロック共重合体のアミン価は、20mgKOH/g〜150mgKOH/gである。斯かるブロック共重合体を含む顔料分散組成物は、アルカリ現像性及び乾燥再溶解性に優れている。
【0072】
顔料分散組成物を、例えばカラーフィルタのパターニング材などとして用いる場合、顔料分散組成物は、アルカリ現像性に優れるため、現像残りが生じて、カラーフィルタの色度、コントラストや寸法精度が低下することを抑制することができる。
【0073】
また、顔料分散組成物は、乾燥再溶解性に優れるため、顔料分散組成物が塗布装置などに付着して、乾燥し、析出物が発生した場合に、この析出物は、溶媒に速やかに溶解し、溶媒などを用いて析出物を簡便に洗浄することができる。また、この析出物が顔料分散組成物に混入しても、析出物は顔料分散組成物に溶解する。よって、析出物が画像形成に支障を与えることを抑制することができる。
【0074】
本実施形態に係る顔料分散組成物が、アルカリ現像性及び乾燥再溶解性に優れる理由の詳細は定かではないが、例えば、次のように考えることができる。本実施形態に係る顔料分散組成物は、上記のブロック共重合体からなる分散剤を含む。ブロック共重合体において、局在化した一般式(2)で表わされる部分構造の塩基性官能基が顔料の表面に強固に吸着していることから、本実施形態に係る顔料分散組成物の乾燥後においても顔料の凝集力が弱いこと、局在化した一般式(1)で表わされる部分構造の側鎖にエステル結合部分及び末端水酸基を有していることで溶媒やバインダー樹脂と相互作用すること、局在化した一般式(1)で表わされる部分構造の側鎖にエステル結合部分及び末端水酸基を有していることでセグメントAのガラス転移温度が比較的低くいことから、本実施形態に係る顔料分散組成物は乾燥後においても速やかに溶媒やアルカリ水溶液に溶解するものと考えられる。以上のような理由により、顔料分散組成物は、アルカリ現像性及び乾燥再溶解性に優れていると考えられる。
【0075】
顔料分散組成物は、カラーフィルタ用として好適に使用することができる。
【0076】
〔実施例〕
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、分散剤及びバインダー樹脂の重合率、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(PDI)、アミン価及び酸価、並びに顔料分散組成物の粘度、乾燥再溶解性及びアルカリ現像性は、下記の方法に従って評価した。
【0077】
<重合率>
NMR(商品名:AVANCE500、ブルカー・バイオスピン社製)を用いて、H−NMRを測定し、モノマーのビニル基とポリマーのエステル側鎖のピーク面積比から重合率を算出した。
【0078】
<重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(PDI)>
GPC(商品名:GPCV−2000、日本ウォーターズ社製、カラム:TSKgel α−3000、移動相:10mMトリエチルアミン/ジメチルホルムアミド溶液)を用い、標準物質としてポリスチレン(分子量427,000、190,000、96,400、37,400、10,200、2,630、440、92)を使用して検量線を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。この測定値から、分子量分布(PDI=Mw/Mn)を算出した。
【0079】
<アミン価>
アミン価は、固形分1gあたりの塩基性成分と当量の水酸化カリウム(KOH)の重量で表わしたものである。測定サンプルをテトラヒドロフランに溶解し、電位差滴定装置(商品名:GT−06、三菱化学社製)を用いて、得られた溶液を0.1M塩酸/2−プロパノール溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として次式によりアミン価(B)を算出した。
【0080】
B=56.11×Vs×0.1×f/w
B:アミン価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1M塩酸/2−プロパノール溶液の使用量(mL)
f:0.1M塩酸(2−プロパノール性)の力価
w:測定サンプルの重量(g)(固形分換算)
【0081】
<酸価>
酸価は、固形分1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの重量を表わしたものである。測定サンプルをテトラヒドロフランに溶解し、電位差滴定装置(商品名:GT−06、三菱化学社製)を用いて、得られた溶液を0.5M水酸化カリウム/エタノール溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出した。
【0082】
A=56.11×Vs×0.5×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.5M水酸化カリウム/エタノール溶液の使用量(mL)
f:0.5M水酸化カリウム/エタノール溶液の力価
w:測定サンプル重量(g)(固形分換算)
【0083】
<粘度>
E型粘度計(商品名:TVE−22L、東機産業社製)を用い、1°34’×R24のコーンローターを使用して、25℃下、ローター回転数60rpmで粘度を測定した。
【0084】
<乾燥再溶解性>
表面を洗浄した50mm×30mmのガラス板上に、25μmの厚さで顔料分散組成物を塗布し、90℃で10分間乾燥して塗布膜を形成した。次に、ガラス板を溶媒(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に浸漬し、塗布膜の溶媒への溶解性を観察した。その溶解性を以下の基準により評価した。
【0085】
◎:浸漬5分以内に塗布膜がガラス板上から溶離している。
○:浸漬10分以内に塗布膜がガラス板上から溶離している。
×:浸漬10分後に塗布膜がガラス板上に残っている。
【0086】
<アルカリ現像性>
表面を洗浄した50mm×30mmのガラス板上に、25μmの厚さで顔料分散組成物の塗布膜を形成し、90℃で10分間乾燥した。次に、塗布膜を形成したガラス板を1%水酸化カリウム水溶液に浸漬し、塗布膜の1%水酸化カリウム水溶液(アルカリ水溶液)中への溶解性を観察した。その溶解性を以下の基準により評価した。
【0087】
◎:浸漬5分以内に塗布膜がガラス板上から溶離している。
○:浸漬10分以内に塗布膜がガラス板上から溶離している。
×:浸漬10分後に塗布膜がガラス板上に残っている。
【0088】
<重合開始剤の合成>
(合成例1):エチル−2−メチル−2−n−ブチルテラニル−プロピオネート(以下「BTEE」という)の合成
金属テルル(商品名:Tellurium(−40mesh)、Aldrich社製)6.38g(50mmol)をテトラヒドロフラン50mLに懸濁させた。得られた懸濁液にn−ブチルリチウム(Aldrich社製、1.6Mヘキサン溶液)34.4mL(55mmol)を、室温下でゆっくり滴下した(10分間)。得られた反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(20分間)。この反応溶液に、エチル−2−ブロモ−イソブチレート10.7g(55mmol)を室温下で加え、2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で溶媒を濃縮し、続いて減圧蒸留して、黄色油状物8.98g(収率59.5%)のBTEEを得た。
【0089】
(合成例2):ジブチルジテルリド(以下「DBDT」という)合成
金属テルル(商品名:Tellurium(−40mesh)、Aldrich社製)3.19g(25mmol)をテトラヒドロフラン25mLに懸濁させ、n−ブチルリチウム(Aldrich社製、1.6Mヘキサン溶液)17.2mL(27.5mmol)を0℃でゆっくり加えた(10分間)。得られた反応溶液を金属テルルが完全に消失するまで撹拌した(10分間)。次に、塩化アンモニウム溶液20mLを室温で加え、1時間撹拌した。次に、有機層を分離し、水層をジエチルエーテルで3回抽出した。集めた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧濃縮し、黒紫色油状物4.41g(11.93mmol:収率95%)のDBDTを得た。
【0090】
<分散剤の合成>
(合成例3):分散剤Aの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにメタアクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトン5mol付加物(商品名:プラクセルFM5、ダイセル化学社製、以下「PCL5」という)3.00g、メタクリル酸n−ブチル(商品名:アクリエステルB、三菱レイヨン社製、以下「BMA」という)9.00g、アゾビスイソブチニトリル(商品名:AIBN、大塚化学社製、以下「AIBN」という)0.0493g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PMA」という)6.71gを仕込み、アルゴン置換後、BTEE(0.449g)、DBDT(0.277g)を加え、60℃で22時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0091】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したメタクリル酸ジメチルアミノエチル(商品名:GE720(DAM)、三菱ガス化学社製、以下「DMAEMA」という)3.00g、AIBN(0.0245g)、PMA(2.00g)の混合溶液を加え、60℃で29時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0092】
反応終了後、反応溶液にPMA(37.3g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(384mL)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Aを得た。重量平均分子量(Mw)は、11,500、分子量分布(PDI)は、1.52、アミン価は68mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0093】
(合成例4):分散剤Bの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(116.0g)、BMA(84.5g)、AIBN(0.821g)、PMA(133.0g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(7.49g)、DBDT(4.63g)を加え、60℃で12時間反応させた。重合率は、98%であった。
【0094】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(50.0g)、AIBN(0.411g)、PMA(33.3g)の混合溶液を加え、60℃で10時間反応させた。重合率は、95%であった。
【0095】
反応終了後、反応溶液にPMA(583.0g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(6.0L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Bを得た。重量平均分子量(Mw)は、16,000、分子量分布(PDI)は、2.00、アミン価は、68mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0096】
(合成例5):分散剤Cの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(9.03g)、BMA(3.00g)、AIBN(0.0493g)、PMA(4.14g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(0.449g)、DBDT(0.277g)を加え、60℃で22時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0097】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(3.00g)、AIBN(0.0245g)、PMA(2.00g)の混合溶液を加え、60℃で29時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0098】
反応終了後、反応溶液にPMA(37.3g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(384mL)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Cを得た。重量平均分子量(Mw)は、15,900、分子量分布(PDI)は、1.88、アミン価は、65mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0099】
(合成例6):分散剤Dの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(177.5g)、AIBN(0.821g)、PMA(118.3g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(7.49g)、DBDT(4.63g)を加え、60℃で12時間反応させた。重合率は、99%であった。
【0100】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(72.5g)、AIBN(0.411g)、PMA(44.4g)の混合溶液を加え、60℃で10時間反応させた。重合率は、96%であった。
【0101】
反応終了後、反応溶液にPMA(583.0g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(6.0L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Dを得た。重量平均分子量(Mw)は、19,100、分子量分布(PDI)は、2.37、アミン価は、99mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0102】
(合成例7):分散剤Eの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(359.8g)、BMA(260.0g)、AIBN(3.16g)、PMA(300.0g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(31.0g)、DBDT(17.8g)を加え、60℃で19時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0103】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(347.0g)、AIBN(1.58g)、PMA(179.0g)の混合溶液を加え、60℃で23時間反応させた。重合率は、99%であった。
【0104】
反応終了後、反応溶液にPMA(2260.0g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(23.2L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Eを得た。重量平均分子量(Mw)は、11,200、分子量分布(PDI)は、1.64、アミン価は、123mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0105】
(合成例8):分散剤Fの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(103.0g)、BMA(75.0g)、AIBN(0.821g)、PMA(88.9g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(7.49g)、DBDT(4.63g)を加え、60℃で25時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0106】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(72.5g)、AIBN(0.411g)、PMA(44.4g)の混合溶液を加え、60℃で24時間反応させた。重合率は、97%であった。
【0107】
反応終了後、反応溶液にPMA(583.0g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(6.0L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Fを得た。重量平均分子量(Mw)は、13,400、分子量分布(PDI)は、1.67、アミン価は、100mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0108】
(合成例9):分散剤Gの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(124.0g)、BMA(90.8g)、AIBN(0.821g)、PMA(143.0g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(7.49g)、DBDT(4.63g)を加え、60℃で12時間反応させた。重合率は、98%であった。
【0109】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(35.0g)、AIBN(0.411g)、PMA(23.3g)の混合溶液を加え、60℃で9時間反応させた。重合率は、98%であった。
【0110】
反応終了後、反応溶液にPMA(583.0g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(6.0L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Gを得た。重量平均分子量(Mw)は、15,400、分子量分布(PDI)は、1.72、アミン価は、48mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0111】
(合成例10):分散剤Hの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(82.3g)、BMA(147.0g)、AIBN(0.821g)、PMA(117.0g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(7.49g)、DBDT(4.63g)を加え、60℃で14時間反応させた。重合率は、99%であった。
【0112】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(21.0g)、AIBN(0.411g)、PMA(14.0g)の混合溶液を加え、60℃で6時間反応させた。重合率は、98%であった。
【0113】
反応終了後、反応溶液にPMA(583.0g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(6.0L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Hを得た。重量平均分子量(Mw)は、23,100、分子量分布(PDI)は、2.05、アミン価は、27mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0114】
(合成例11):分散剤Iの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(634.9g)、BMA(464.0g)、AIBN(3.94g)、PMA(461.0g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(36.0g)、DBDT(22.2g)を加え、60℃で14時間反応させた。重合率は、98%であった。
【0115】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(101.0g)、AIBN(1.97g)、PMA(67.2g)の混合溶液を加え、60℃で10時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0116】
反応終了後、反応溶液にPMA(2350.0g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(28.8L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Iを得た。重量平均分子量(Mw)は、18,800、分子量分布(PDI)は、2.05、アミン価は、30mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0117】
(合成例12):分散剤Jの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(136.3g)、BMA(99.7g)、AIBN(0.547g)、PMA(98.9g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(5.00g)、DBDT(3.08g)を加え、60℃で24時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0118】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(14.0g)、AIBN(0.274g)、PMA(9.33g)の混合溶液を加え、60℃で22時間反応させた。重合率は、98%であった。
【0119】
反応終了後、反応溶液にPMA(583.0g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(6.0L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Jを得た。重量平均分子量(Mw)は、33,900、分子量分布(PDI)は、2.50、アミン価は、20mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0120】
(合成例13):分散剤Kの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにメタクリル酸2−ヒドロキシエチルのカプロラクトン2mol付加物(商品名:プラクセルFM2D、ダイセル化学社製)6.93g、BMA(5.07g)、AIBN(0.0493g)、PMA(8.00g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(0.449g)、DBDT(0.277g)を加え、60℃で22時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0121】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(3.00g)、AIBN(0.0245g)、PMA(2.00g)の混合溶液を加え、60℃で29時間反応させた。重合率は100%であった。
【0122】
反応終了後、反応溶液にPMA(37.3g)を加え、その溶液を攪拌しているn−ヘプタン(384mL)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Kを得た。重量平均分子量(Mw)は、23,000、分子量分布(PDI)は、2.57、アミン価は、69mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0123】
(合成例14):分散剤Lの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにBMA(200.0g)、AIBN(0.821g)、PMA(147.8g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(3.75g)、DBDT(2.30g)を加え、60℃で20時間反応させた。重合率は、99%であった。
【0124】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(50.0g)、AIBN(0.411g)、PMA(33.3g)の混合溶液を加え、60℃で17時間反応させた。重合率は99%であった。
【0125】
反応終了後、反応溶液にPMA(583.0g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(6.0L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Lを得た。重量平均分子量(Mw)は、19,100、分子量分布(PDI)は、1.47、アミン価は、81mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0126】
(合成例15):分散剤Mの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにDMAEMA(300g)、AIBN(2.46g)、酢酸エチル(300g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(45.0g)、DBDT(27.7g)を加え、60℃で25時間反応させた。重合率は、99%であった。
【0127】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したBMA(1200g)、AIBN(2.46g)、酢酸エチル(700g)の混合溶液を加え、60℃で40時間反応させた。重合率は、98%であった。
【0128】
反応終了後、反応溶液にPMA(3500.0g)を加え、攪拌しているn−ヘプタン(36.0L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Mを得た。重量平均分子量(Mw)は、9,400、分子量分布(PDI)は、1.35、アミン価は、72mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0129】
(合成例16):分散剤Nの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにPCL5(6.93g)、BMA(5.07g)、DMAEMA(3.00g)、AIBN(0.0493g)、PMA(7.03g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(0.449g)、DBDT(0.277g)を加え、60℃で22時間反応させた。重合率は100%であった。
【0130】
反応終了後、反応溶液にPMA(37.3g)を加え、その溶液を攪拌しているn−ヘプタン(384mL)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Nを得た。重量平均分子量(Mw)は、15,200、分子量分布(PDI)は、1.69、アミン価は、67mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0131】
(合成例17):分散剤Oの合成
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにトリエチレングリコールモノエチルエーテルモノメタクリレート(POLYSCIENCES社製)12.7g、BMA(34.0g)、メタクリル酸メチル(三菱レイヨン社製)70.4g、メタクリル酸2−エチルヘキシル(三菱レイヨン社製)32.0g、メタクリル酸ベンジル(三菱ガス化学社製、以下「BzMA」という)23.5g、AIBN(1.17g)、PMA(90.9g)を仕込み、アルゴン置換後、BTEE(10.7g)、DBDT(6.59g)を加え、60℃で14時間反応させた。重合率は、100%であった。
【0132】
得られた溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA(77.4g)、AIBN(0.586g)、PMA(51.6g)の混合溶液を加え、60℃で8時間反応させた。重合率は、99%であった。
【0133】
反応終了後、反応溶液にPMA(583.0g)を加え、その溶液を攪拌しているn−ヘプタン(6.0L)中に注いだ。析出したポリマーを吸引ろ過、乾燥することにより分散剤Oを得た。重量平均分子量(Mw)は、7,600、分子量分布(PDI)は、1.38、アミン価は、108mgKOH/gであった。結果を表1に示す。
【0134】
<バインダー樹脂の合成>
(合成例18)
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにメタクリル酸(三菱レイヨン社製、以下「MAA」という)20.0g、BzMA(80.0g)、PMA(290.0g)を仕込み、アルゴン置換後、AIBN(1.5g)、n−ドデカンチオール(2.0g)、PMA(10.0g)を加え90℃まで昇温した。その溶液を90℃に保ちながら、その溶液にMAA(40.0g)、BzMA(160.0g)、AIBN(3.0g)、n−ドデカンチオール(4.0g)、PMA(25.0g)を1.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから60分後、温度を110℃まで昇温し、AIBN(0.3g)、PMA(5.0g)を加えて1時間反応させ、さらにAIBN(0.3g)、PMA(5.0g)を加え1時間反応させ、さらにAIBN(0.3g)、PMA(5.0g)を加え1時間反応させた。
【0135】
得られた反応溶液を室温に冷却し、PMA(120.0g)を加え、不揮発分40%のバインダー樹脂Aの溶液を得た。バインダー樹脂Aの重量平均分子量(Mw)は、9,800、分子量分布(PDI)は、1.93、酸価は、127mgKOH/gであった。
【0136】
<実施例1〜14及び比較例1〜5>
顔料10質量部、分散剤3質量部、バインダー樹脂3質量部、メトキシプロパノール10質量部、及びPMA74質量部となるように配合を調整し、遊星ボールミル(0.5mmジルコニアビーズ、2時間)で撹拌して、表1に示す実施例1〜14及び比較例1〜5の顔料分散組成物を得た。分散剤としては、合成例3〜17で得た分散剤A〜Оを用い、バインダー樹脂には合成例18で得たバインダー樹脂Aを用い、顔料にはC.I.Pigment Red 254(商品名:BKCF、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)及びC.I.Pigment Green 58(商品名:FASTOGEN Green A110、DIC社製)を用いた。
【0137】
得られた顔料分散組成物の粘度、顔料分散組成物の乾燥溶解性及びアルカリ現像性を評価した。結果を表1に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
表1から明らかなように、セグメントAに一般式(1)で表される部分構造を含み、セグメントBに一般式(2)で表される部分構造を含むブロック共重合体からなる分散剤を用いた実施例1〜14においては、塗布膜のアルカリ現像性及び乾燥再溶解性に優れていた。一方、セグメントAに一般式(1)で表される部分構造を含まないブロック共重合体からなる分散剤を用いた比較例1では、塗布膜のアルカリ現像性が劣っていた。また、セグメントAに一般式(1)で表される部分構造を含まないブロック共重合体からなる分散剤を用いた比較例2,4においては、塗布膜のアルカリ現像性及び乾燥再溶解性に劣っていた。一般式(1)で表される部分構造と一般式(2)で表される部分構造とを含むランダム共重合体からなる分散剤を用いた比較例3,5においては、塗布膜のアルカリ現像性及び乾燥再溶解性に劣っていた。これらの結果から、セグメントAに一般式(1)で表される部分構造を含み、セグメントBに一般式(2)で表される部分構造を有するブロック共重合体を分散剤として用いた顔料分散組成物は、塗布膜のアルカリ現像性及び乾燥再溶解性に優れることがわかる。