特許第5734827号(P5734827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5734827中間金属層を含む積層構造の包装材料のシール良否検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734827
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】中間金属層を含む積層構造の包装材料のシール良否検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/00 20060101AFI20150528BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   G01M3/00 Z
   G01N21/84 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-279539(P2011-279539)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-130451(P2013-130451A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100085707
【弁理士】
【氏名又は名称】神津 堯子
(72)【発明者】
【氏名】鶴澤 勝男
(72)【発明者】
【氏名】三好 康伸
(72)【発明者】
【氏名】大塚 淳弘
【審査官】 高橋 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−236855(JP,A)
【文献】 特開2000−153882(JP,A)
【文献】 特開昭49−004587(JP,A)
【文献】 特開平05−302696(JP,A)
【文献】 特開2010−236896(JP,A)
【文献】 特開2004−069458(JP,A)
【文献】 特開平06−148121(JP,A)
【文献】 米国特許第04187798(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0267534(US,A1)
【文献】 米国特許第05033287(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0129081(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00
G01N 21/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間金属層を含む積層構造の包装材料の熱溶着によりシールしたシール部分の適否を検査する方法であって、
前記シール部分の端面から前記金属層を露出した当該シール部分を酸溶液又は塩基溶液の中に浸漬して金属層を溶かすことを特徴とする中間金属層を含む積層構造の包装材料のシール部分の良否を検査する方法。
【請求項2】
前記金属層を溶かしたシール部分に着色液をアクセスさせる工程を更に含む、請求項1に記載の中間金属層を含む積層構造の包装材料のシール部分の良否を検査する方法。
【請求項3】
前記包装材料が、前記金属層の内側に位置する最内層のシーラント層と、前記金属層の外側に位置する基材層とを含む、請求項1又は2に記載の中間金属層を含む積層構造の包装材料のシール部分の良否を検査する方法。
【請求項4】
前記包装材料が食品を収容するための袋である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の中間金属層を含む積層構造の包装材料のシール部分の良否を検査する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間金属層を含む積層構造の包装材料のシール不良を検査する方法に関し、典型的には金属層としてアルミニウム層を備えた積層構造の包装材料のシール不良を検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中間金属層を含む積層構造の包装材料は、遮光性、気密性を必要とされるレトルト食品、お菓子、インスタントラーメンの粉末スープ及び具材、化成品などの包装袋やラミネートチューブあるいはインスタント食品の容器の蓋シートに多用されている。
【0003】
この金属層を含む積層構造の包装材料は、金属層が光を通さないためシール部分の不良を目視で検査することができないという問題を有している。この問題に対して、特許文献1は、従来例として、(1)真空チャンバー内に密封した密封容器を入れ、この密封容器からエアーが抜けることに伴う真空チャンバー内の真空圧の変化を測定する方法、(2)真空室内で密封容器に一定の荷重を加えて、蓋材又はフィルムの位置変化を磁気センサなどで検出する方法、(3)撮像装置を使ってフィルムのピンホールや傷を画像処理により検査する方法などを挙げた上で、接地電極をアルミニウム箔に接触させる一方で、検出電極を密封容器の表面に接触又は接近させた状態で電圧を印加して放電電流の有無によりシール部分の不良を検出することを提案している。
【0004】
特許文献2は、オレフィン系樹脂をシーラント剤として用いたアルミニウム箔層入りラミネートチューブに除毛剤クリームを充填したときに白色の除毛剤クリームが変色するという問題を解決するために、ラミネートチューブに界面活性剤を充填し、この状態でテスターの一方の電極棒を界面活性剤の中に浸漬すると共に他方の電極棒に接続した針をアルミ層入りラミネートフィルムに突き刺して、テスターで抵抗値を測定することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−69458号公報
【特許文献2】特開平6−148121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
工場管理において生産ラインの定期検査や新設又は修理した生産設備の試運転の際に、密封した包装材料のシールが適切に行われているか否かの検査が行われる。
【0007】
本発明の目的は、中間金属層を含む積層構造の包装材料のシールの良否を目視で検査することのできる方法を提供することにある。
【0008】
本発明の更なる目的は、中間金属層を含む積層構造の包装材料のシールの良否を検査する際に特別の検査装置を必要としない検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
中間金属層を含む積層構造の包装材料のシールに関して、その目視検査を阻む要因は金属層であり、金属層が存在しなければシール部分の目視検査が可能になる。本願発明者はこの点に着目して本発明を案出するに至ったものである。すなわち、中間金属層を含む積層構造の包装材料は、金属層が上下の合成樹脂層で挟まれているため、包装材料の表面からアクセスする酸又は塩基に対して一般的に比較的強い材料ということができる。しかし、この包装材料を切断して、その切断端面に金属層を露出させたとき、この金属層は直接的に酸又は塩基の攻撃を受け易い状態になる。本願発明者は包装材料の端面に着目し、包装材料の端面から酸又は塩基で攻撃させることで金属層だけを溶解させることができるという点に着目して本発明を案出したものである。この観点から多くの包装材料を観察すると、シール部分の端が切りっぱなし端で構成されている場合が多い。仮にシール部分の端が切りっぱなし端で構成されていない場合であっても、ハサミやナイフでシール部分の端を切断することで容易にシール部分の端面に金属層を露出させることができる。
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
中間金属層を含む積層構造の包装材料の熱溶着によりシールしたシール部分の適否を検査する方法であって、
前記シール部分の端面から前記金属層を露出した当該シール部分を酸溶液又は塩基溶液の中に浸漬して金属層を溶かすことを特徴とする中間金属層を含む積層構造の包装材料のシール部分の良否を検査する方法を提供することにより達成される。
【0011】
本発明は、典型的には、金属層を溶解させたシール部分に着色液をアクセスさせる工程を更に含む。シール不良箇所に着色液が侵入することでシール不良を簡単に目視できる。また、シール部分に侵入した着色液の形状によってシール不良の状態を目視で確認できる。
【0012】
中間金属層を含む積層構造の包装材料は、典型的には、最内層のシーラント層と、外層の基材層と、中間層の金属層を含む。金属層を構成する典型的な金属としてアルミニウムを挙げることができる。アルミニウム層は蒸着膜又はアルミニウム箔で構成される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
以下に実施例を説明する。
【0014】
第1実施例
油で揚げたスナック食品の包装袋を用意し、この内袋を6N(規定度)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に浸けて経時的な変化を観察した。この包装袋は最内層から最外層まで5層構造を有している。最外層が二軸延伸ポリプロピレン(OPP)で構成され、第2の外層がポリエチレン(PE)で構成され、中間層がアルミニウム箔層で構成され、第2の内層がポリエチレン(PE)で構成され、最内層が無延伸ポリプロピレン(CPP)で構成された積層構造のシートから作られている。
【0015】
すなわち、スナック食品の包装袋の構成は次のとおりである。
(1)基材層(最外層) :二軸延伸ポリプロピレン(OPP)(厚み20μm);
(2)第2の外層 :ポリエチレン(PE) (厚み13μm);
(3)中間金属層 :アルミニウム箔(厚み6.5μm);
(4)第2の内層 :ポリエチレン(PE) (厚み13μm);
(5)シーラント層(最内層):無延伸ポリプロピレン(CPP) (厚み20μm)。
【0016】
包装袋は、上記の5層構造の積層シートを2つ折りし、そして2つの辺を熱溶着させることで一端を開放した袋を構成し、食品製造ラインでは、この一端を開放した袋にスナック食品を入れ、次いで開口端を熱溶着させることにより密封包装袋入りのスナック食品が作られる。
【0017】
食品製造ラインの熱溶着機(シール装置)で密封した包装袋を6N-水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して、その状態の変化を観察したところ次の通りであった。水酸化ナトリウム水溶液に包装袋を浸漬した後、2日が経過した時点では包装袋の3つの辺つまりシール部分からアルミニウム層が無くなりシール部分は透明になったが、包装袋の中央部分にはアルミニウム層が残っていた。塩酸溶液に浸漬して5日が経過した時点では、アルミニウム層の存在が目で確認できず、包装袋が全体的に透明の状態となって内部を観察できるようになった。
【0018】
シール辺からアルミニウム層を除去することで、これよりも外側に位置している第2の外層及び内側に位置している内層は互いに剥離した状態になる。この外層の二軸延伸ポリプロピレンには印刷が施されているが、アルミニウム層を除去することで、このアルミニウム層よりも外層は第2の内層(PE)から剥離した状態となる。このことから、シール部分の目視において印刷層に邪魔されることなく、シーラント層の熱溶着の状態を外部から目視で観察することができる。この目視検査においてシール部分の不良部分が色付きであると都合がよい。
【0019】
意図的にシール不良の包装袋を作り、この包装袋を6N-水酸化ナトリウム水溶液に浸漬する。この浸漬は、3つのシール辺のうち、少なくとも、食品を入れた後にシールするシール部分だけでもよい。浸漬したシール部分が透明になった時点で包装袋を水酸化ナトリウム水溶液から取り出し、水洗した後にシール部分を更に着色液に浸漬した。意図的に不完全にシールしたシール部分には赤い着色液が侵入して、当該シール不良のシール部分において、どういう形状のシール不良が発生しているのかが赤い着色液によって目視で鮮明に観察することができた。
【0020】
シール部分の着色は、アルミニウム層を除去した後に包装袋を例えば赤色の着色液に浸漬する、予め着色液を充填して密封する、アルミニウム層を除去した包装袋に着色液を入れ、そして検査対象のシール部分を下にした状態で包装袋を吊るすなど、シール部分の内側又は外側から着色液がアクセスし易い状態にすることで、シール不良の部分に着色液を短時間で侵入させることができる。
【0021】
第2実施例
第1実施例の包装袋を用意し、この包装袋を6N(規定度)の塩酸水溶液に浸けて経時的な変化を観察した。
【0022】
塩酸水溶液に包装袋を浸漬した後、2日が経過した時点では包装袋の3つの辺つまりシール部分からアルミニウム層が無くなりシール部分は透明になったが、包装袋の中央部分にはアルミニウム層が残っていた。塩酸溶液に浸漬して5日が経過した時点では、アルミニウム層の存在が目視で確認できず、包装袋が全体的に透明の状態となって内部を観察できるようになった。
【0023】
比較例として、同じ包装袋の3つのシール辺の端部に合成ゴム系接着剤を塗布して、この3つのシール辺を合成ゴム系接着剤で封じ込めた後に6Nの塩酸水溶液に浸漬した。この比較例は、3つのシール辺に合成ゴム系接着剤を塗布した以外は上記の実施例と同じ条件であった。浸漬した後、2日が経過した時点では殆ど変化は見られなかった。浸漬後5日が経過した時点でシール辺の一部及び中央部分のアルミ蒸着層が消失したが、その消失は部分的であった。
【0024】
着色液を充填した後、意図的にシール不良の包装袋を作って6N-塩酸水溶液に浸漬し、少なくとも3つのシール辺の部分が透明になった時点で内袋を塩酸水溶液から取り出し、水洗した後に、シール部分を更に着色液に浸漬した。意図的に不完全にシールしたシール部分には赤い着色液が侵入して、当該シール不良のシール部分において、どういう形状のシール不良が発生しているのかが赤い着色液によって目視で鮮明に観察することができた。
【0025】
この比較例から、第2実施例ではシール辺の端面から塩酸水溶液が中間層のアルミニウム層に侵入してアルミニウムが溶解したと結論付けることができる。
【0026】
第3実施例
粉末シチューの包装袋を用意し、この包装袋を6N(規定度)の水酸化ナトリウム水溶液に浸けて経時的な変化を観察した。この包装袋は最内層から最外層まで4層構造を有している。最外層がナイロン(NY)で構成され、次の第2の外層がポリエチレン(PE)で構成され、次の第3の層がアルミニウム層で構成され、最内層がポリエチレン(PE)で構成された積層構造のシートから作られている。
【0027】
すなわち、粉末シチューの包装袋の構成は次のとおりである。
(1)基材層(最外層) :ナイロン (NY)(厚み15μm);
(2)第2の外層 :ポリエチレン(PE) (厚み13μm);
(3)中間金属層 :アルミニウム箔(厚み6.5μm);
(4)シーラント層(最内層):ポリエチレン(PE) (厚み13μm)。
【0028】
包装袋は、上記の4層構造のシートを2つ折りし、そして2つの辺を熱溶着させることで一端を開放した袋を構成し、食品製造ラインでは、この一端を開放した袋に粉末シチューを入れ、次いで開口端を熱溶着させることにより密封した包装袋入りの粉末シチューが作られる。
【0029】
水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した後、2日が経過した時点で包装袋からアルミニウム層が無くなり、包装袋が全体的に透明の状態となって内部を観察できるようになった。
【0030】
比較例として、上記粉末シチュー用の包装袋の切りっぱなし端の3つのシール辺のシール端部に合成ゴム系接着剤を塗布して、この3つのシール辺を合成ゴム系接着剤で封じ込めた後に6Nの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に浸漬した。この比較例は、3つのシール辺に合成ゴム系接着剤を塗布した以外は上記の実施例と同じ条件であった。浸漬した後、5日が経過した時点でも包装袋に変化は見られなかった。
【0031】
意図的にシール不良の粉末シチュー用の包装袋を作って、これを6N-水酸化ナトリウム水溶液に密封した包装袋を浸漬し、少なくとも3つのシール辺の部分が透明になった時点で包装袋を塩酸水溶液から取り出し、水洗した後に赤い着色液に1時間浸漬したところ、意図的に不完全にシールしたシール部分には赤い着色液が侵入し、その着色液の形状からシール不良の状態を目視で鮮明に観察することができた。
【0032】
第4実施例
上記の第3実施例と同じ粉末シチューの包装袋を用意し、この包装袋を6N(規定度)の塩酸水溶液に浸けて経時的な変化を観察した。
【0033】
塩酸水溶液に浸漬した後、2日が経過した時点で包装袋からアルミニウム層が無くなり、包装袋の一部が白化したがシール部分の観察には支障がなかった。
【0034】
比較例として、上記粉末シチュー用の包装袋の切りっぱなし端の3つのシール辺のシール端部に合成ゴム系接着剤を塗布して、この3つのシール辺を合成ゴム系接着剤で封じ込めた後に6Nの塩酸水溶液に浸漬した。この比較例は、3つのシール辺に合成ゴム系接着剤を塗布した以外は上記の第3実施例と同じ条件であった。浸漬した後、2日目から局部的にアルミニウム層が消失し、5日後はアルミニウム層が消失したが基材層のナイロン(NY)は酸に弱いため白化していた。
【0035】
意図的にシール不良の粉末シチュー用の包装袋を作って、6N-塩酸水溶液に密封した包装袋を浸漬し、少なくとも3つのシール辺の部分が透明になった時点で包装袋を塩酸水溶液から取り出し、水洗した後に赤い着色液に1時間浸漬したところ、意図的に不完全にシールしたシール部分には赤い着色液が侵入し、その着色液の形状からシール不良の状態を目視で鮮明に観察することができた。
【0036】
第5実施例
インスタントラーメンの粉末スープの包装袋を用意し、この包装袋を6N(規定度)の塩酸水溶液に浸けて経時的な変化を観察した。この包装袋は最内層から最外層まで4層構造を有している。最外層がポリエチレンテレフタレート(PET)で構成され、次の第2の外層がポリエチレン(PE)で構成され、次の中間層がアルミニウム層構成され、最内層がポリエチレン(PE)で構成された積層構造のシートから作られている。
【0037】
すなわち、粉末スープの包装袋の構成は次のとおりである。
(1)基材層(最外層) :ポリエチレンテレフタレート(PET)(厚み12μm);
(2)第2の外層 :ポリエチレン(PE) (厚み13μm);
(3)中間金属層 :アルミニウム箔(厚み6.5μm);
(4)シーラント層(最内層):ポリエチレン(PE) (厚み13μm)。
【0038】
包装袋は、上記の4層構造のシートを2つ折りし、そして2つの辺を熱溶着させることで一端を開放した袋を構成し、食品製造ラインでは、この一端を開放した袋に粉末スープを入れ、次いで開口端を熱溶着させることにより密封した包装袋入りの粉末スープが作られる。
【0039】
塩酸水溶液に浸漬した後、2日が経過した時点で包装袋の中央部分を除く部分からアルミニウム層が無くなり、包装袋の3つのシール片はその全てが透明の状態となってシール部を観察できるようになった。
【0040】
比較例として、上記粉末スープ用の包装袋の切りっぱなし端の3つのシール辺のシール端部に合成ゴム系接着剤を塗布して、この3つのシール辺を合成ゴム系接着剤で封じ込めた後に6Nの塩酸水溶液に浸漬した。この比較例は、3つのシール辺に合成ゴム系接着剤を塗布した以外は上記の実施例と同じ条件であった。浸漬した後、5日が経過した時点でも包装袋に変化は見られなかった。
【0041】
意図的にシール不良の粉末スープ用の包装袋を作って、6N-塩酸水溶液に密封した包装袋を浸漬し、少なくとも3つのシール辺の部分が透明になった時点で包装袋を塩酸水溶液から取り出し、水洗した後に、赤い着色液に1時間浸漬したところ、意図的に不完全にシールしたシール部分には赤い着色液が侵入して、当該シール不良のシール部分において、どういう形状のシール不良が発生しているのかが赤い着色液によって目視で鮮明に観察することができた。
【0042】
第6実施例
第5実施例と同じインスタントラーメンの粉末スープの包装袋を用意し、この包装袋を6N(規定度)の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に浸けて経時的な変化を観察した。
【0043】
水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した後、2日が経過した時点で包装袋の中央部分を除く部分からアルミニウム層が無くなり、包装袋の3つのシール片はその全てが透明の状態となってシール部を観察できるようになった。浸漬した後5日が経過した時点では、包装袋からアルミニウム層の全てが消失した。
【0044】
第7実施例
成形スナック食品の包装袋を用意し、この包装袋を6N(規定度)の塩酸水溶液に浸けて経時的な変化を観察した。この包装袋は最外層から最内層まで5層構造を有している。
【0045】
この包装袋の積層包装材料は、最外層が二軸延伸ポリプロピレン(OPP)で構成され、第2の外層がポリエチレン(PE)で構成され、中間層がアルミニウム蒸着層で構成され、第2の内層がポリエチレン(PE)で構成され、最内層が無延伸ポリプロピレン(CPP)で構成された積層構造のシートから作られている。なお、金属層であるアルミニウム蒸着層は、ポリエチレンテレフタレートにアルミニウムを蒸着したフィルム(VMPET)で構成されている。
【0046】
すなわち、成形スナック食品の包装袋の構成は次のとおりである。
(1)基材層(最外層) :二軸延伸ポリプロピレン(OPP)(厚み20μm);
(2)第2の外層 :ポリエチレン(PE) (厚み13μm);
(3)中間金属層 :アルミニウム蒸着フィルム(VMPET)(厚み12μm);
(4)第2の内層 :ポリエチレン(PE) (厚み13μm);
(5)シーラント層(最内層):無延伸ポリプロピレン(CPP) (厚み20μm)。
【0047】
包装袋は、上記の5層構造のシートの両側を折り込んで、背面の中央部分で互いに熱溶着させることで両端を開放した袋を構成し、次いで、一端を熱溶着させることで、成形スナック食品を収容する包装袋を作り、この包装袋の開放端から成形スナック食品を入れた後に、この開放端を熱溶着させることで密封袋入りの成形スナック食品が作られる。
【0048】
塩酸水溶液に浸漬した後、2日が経過した時点で包装袋の中央部分を除く部分からアルミニウム層が無くなり、包装袋の3つのシール片はその全てが透明の状態となってシール部を観察できるようになった。
【0049】
意図的にシール不良の成形スナック食品用の包装袋を作って、上記実施例と同じ条件で6N-塩酸水溶液に包装袋を浸漬し、少なくとも3つのシール部分の部分が透明になった時点で包装袋を塩酸水溶液から取り出し、水洗した後に、赤い着色液に1時間浸漬してシール部分を観察したところ、意図的に不完全にシールしたシール部分には赤い着色液が侵入して、この着色液の輪郭形状によって目視で鮮明にシール不良の状態を観察することができた。
【0050】
以上、本発明の実施例を説明したが、シール辺の端面から金属層が露出していない場合には、シール辺の端縁をナイフやハサミで切断することでシール辺の端面から金属層を露出させることができ、この前処理を行った後に塩基や酸の溶液にシール辺を浸漬すればよい。また、先述した説明から当業者であれば容易に理解可能なように、金属層を含む積層構造の包装材料のシール不良の検査に本発明は効果的に適用可能であり、任意に形態の包装材料に対して本発明を適用することができる。具体的には上述した密封袋に限らず、チューブの形態であってもよいし、熱湯を注ぐだけで食べることのできるインスタント食品の蓋シートであってもよい。