【実施例】
【0154】
実施例
実施例1:分化カクテルを変化させることによるhES細胞のmDCへの分化
本実施例において、まずpPS細胞を分化カクテルと共に培養してimDCを得、次いでimDCを成熟カクテルと共にさらに培養することにより、pPS細胞をmDCに分化させた。分化カクテルは外因性サイトカインからなり、これらは細胞がimDCステージに分化するにつれ、実験の経過中に変化させた。(
図1a)。ヒトES細胞株H1(Thomson et al., (1998)Science 282:1145)を、動物由来産物を含まない規定の無血清培地中、フィーダーフリーで培養した(Xu et al., (2001)Nat Biotechnol 19:971;Li et al., (2005)Biotechnol Bioeng 91:688)(
図1b)。細胞を分化および成熟プロトコルの間、ストローマ細胞フリーでも培養した。
【0155】
hES細胞を胚様体(EB)の形成を許容する条件下で培養した。簡単に言うと、H1細胞をコラゲナーゼD(Invitrogen, Carlsbad, CA)で処理し、1×PBSで1回洗浄し、プレートを細胞スクレイパー(Corning Life Sciences, Corning, NY)で緩やかにかき取った。次いで、細胞を6穴超低接着プレート(Corning Life Sciences, Corning, NY)に、1mMピルビン酸Na(Invitrogen, Carlsbad, CA)、1×非必須アミノ酸(Invitrogen, Carlsbad, CA)、2mM L-グルタミン(Invitrogen, Carlsbad, CA)、5×10
-5M 2-メルカプトエタノール(Sigma, St Louis, MO)、および10mM HEPES(Invitrogen, Carlsbad, CA)を補充したX-VIVO 15培地(Lonzo, Walkersville, MD)中、3百万細胞/ウェルで播種し、胚様体を形成させた。以下の増殖因子を培地に加えた:SCF(20ng/ml)、VEGF(50ng/ml)、BMP-4(50ng/ml)、およびGM-CSF(50ng/ml)。すべての増殖因子はR&D Systems(R&D Systems, Minneapolis MN)から購入した。各ウェルは4mlの培地を含んでいた。細胞を2〜3日に1回、1:3の培地交換を行ってフィードした。
【0156】
第5日にBMP-4を増殖因子カクテルから除去し、第10日にVEGFを増殖因子カクテルから除去し、第15日にSCFを増殖因子カクテルから除去した(
図1A)。第17〜第25日あたりで、丸くて光沢のある造血系前駆細胞が見られた(
図2)。約100,000から約百万の浮遊して光沢のある前駆細胞がウェルの中に見られ、これらを回収し、遠心し、元の6穴超低接着プレートに再度播種し、GM-CSF(50ng/ml)およびIL-4(50ng/ml)(R&D Systems, Minneapolis, MN)を含むX-VIVO 15(Lonzo, Walkersville, MD)中で培養してimDCを生成した。元のEBを新しい6穴超低接着プレートに約40〜50日間移し、2〜3日に1回GM-CSF(50ng/ml)を含む培地をフィードし(1:3培地交換)、光沢のある造血細胞を産生し続け、これらを回収し、次いでGM-CSFおよびIL-4と共に培養し、分化させて、さらなるimDCを産生させた。
【0157】
hES細胞のフローサイトメトリー分析を以下のとおりに実施した:細胞を50μlのフロー緩衝液(PBS+0.1%BSA+2mM EDTA)に再懸濁し、抗FC受容体抗体(Miltenyi, Aurburn, CA)を用いて4℃で10分間ブロックし、次いで標的マーカーに対する抗体を加えた(抗体は以下の表Iに示す)。4℃で20分間インキュベートした後、細胞をフロー緩衝液で2×洗浄し、試料分析の5分前に1試料あたり2ulの7AAD(0.25ug/1×10
6細胞)(BD Bioscience, San Jose, CA)を加えて、細胞生存度を評価した。試料データをFACSCalibur(商標)(Becton Dickinson, San Jose, CA)を用いて収集し、FlowJo(登録商標)ソフトウェア(Treestar, Ashland, OR)を用いて解析した。細胞内Oct-4染色のために、細胞を細胞内固定緩衝液(eBioscience, San Diego, CA)を用いて固定し、透過化緩衝液(eBioscience, San Diego, CA)を製造者の指示に従い用いて透過性とした。予想通り、細胞はいずれもhES細胞のマーカーであるOct-4およびSSEA-4を発現した。加えて、細胞はいずれもVEGFの受容体であるFlt-1およびFlk-1、ならびにSCFの受容体であるCD117も発現した。GM-CSF受容体のCD116は検出されなかった(
図1C)。
【0158】
imDCをフローサイトメトリー(前述のとおり)で下記のマーカーについて分析した:CD14、HLA-I、HLA-II、CD83、CD205およびCD11b。細胞はHLA-I、HLA-II、CD83、およびCD11bについて陽性であることが判明した(
図4A)。4〜6日後、これらの未熟DCを遠心し、下記のサイトカインを含むX-VIVO 15培地に再懸濁した:IFN-γ(25ng/ml)、IL-1-β(10ng/ml)、TNF-α(10ng/ml)、PGE2(1μg/ml)およびGM-CSF(50ng/ml)(成熟カクテル)。細胞を培養中でさらに48時間維持して、成熟DCを生成した。mDCをFACS(前述のとおり)で分析し、下記のマーカーを発現することが判明した:HLA-I、HLA-II、CD40、CD86、CD83、CD205、CD11c
hi、およびCCR7。細胞はCD14については陰性であった(
図4B)。CD83は樹状細胞成熟のマーカーである。CCR7はDC遊走に関与するケモカイン受容体である。発現特性は末梢血単核球(PBMC)由来のDCに匹敵していた。細胞をリアルタイム定量的PCRにより下記の転写因子の発現についても分析した:NF-κB、CIITAおよびSpi-B(
図4C)。Spi-BはPBMC由来のDCで発現されることが明らかにされている(Schotte et al., (2003)Blood 101(3):1015;Rissoan et al., (2002)Blood 100(9):3295;Schotte et al., (2004)J. Exp. Med. 200(11):1503;Chicha et al., (2004)J. Exp. Med. 200(11):1519。NF-κBは共刺激分子発現に関連し、DC活性化プロセスにとって必須である。CIITAはHLA-II発現の主調節因子である。
【0159】
細胞を形態学的に分析し、DCに典型的な形態を有することが判明した(
図4D)。mDCの形態をさらに試験するために、細胞をメイ-グリュンワルド染色剤により染色した。細胞を1×PBSで洗浄し、50ulの1×PBSに再懸濁し、サイトスピン装置で調製したガラススライド上に加えた。10ulの細胞懸濁液をスライドに載せた。スライドを1200rpmで5分間、ShandonCytospin3(Thermo Scientific, Waltham MA)を用いて遠心した。次いで、細胞をメイ-グリュンワルド染色剤溶液(Sigma, St Louis, MO)を用いて、25℃で5分間染色し、dH
2Oで3×洗浄し、終夜風乾した。試料領域をPermount(登録商標)(Sigma, St Louis, MO)でコーティングし、カバーグラスを載せ、スライドを終夜乾燥させた。直立顕微鏡により100×の平面対物レンズおよび40×のPlan-Neofluar対物レンズ(Zeiss, Peabody, MA)で画像を取った。
図4Eに示す結果は、mDCが、細胞から発出する分岐した突出物または樹状突起を含む、PBMCから単離した樹状細胞に典型的な形態を有することを示していた。細胞をフローサイトメトリー(前述のとおり)でCD19、CD3、CD235aおよびCD41(それぞれB細胞、T細胞、赤血球、および血小板、巨核球を示す)についても分析したが、これらのマーカーすべてについて検出できないことが判明した。標本は5〜20%の顆粒球および5〜20%の前駆細胞を有することが判明した。細胞集団は約50%から約90%DCの範囲であった。
【0160】
実施例2:分化中の細胞培養物の時間経過分析
pPSをimDCに分化させるプロセスの間に生じる前駆細胞集団を特徴づけるために、実施例1に記載の細胞培養物を、RT PCRおよびリアルタイム定量的PCR(以下に記載のとおり)を用いて転写因子発現について経時的に評価し、フローサイトメトリー(前述のとおり)により細胞表面マーカーの発現について経時的に評価した。
【0161】
リアルタイム定量的PCRのために、標的細胞を回収し、全RNAを標準のQiagen RNeasy(登録商標) Mini Prepプロトコル(Qiagen, Valencia, CA)に従って単離した。Qiagen QiaShredder(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、溶解産物をホモジナイズした。単離したRNAを-80℃で保存した。cDNA合成のために、1μgのRNA試料をDNアーゼ(Ambion, Austin, TX)で処理して、RNA調製からの任意のゲノムDNA不純物を除去した。逆転写酵素PCR(RT-PCR)をSuperscript II(商標)(Invitrogen, Carlsbad, CA)第一鎖合成システムを用いて実施し、cDNAを作成した。cDNA生成物を水で1:5に希釈し、Taqman(登録商標) PCR Cycle Threshold(CT)Real Time Quantitation(Applied Biosystems, Foster City, CA)の鋳型として用いた。試料をApplied BioSystems 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems, Foster City, CA)にかけた。標的シグナルを第0日の標的シグナルに対して標準化することにより、データを相対的発現レベルについて解析した。
図3aおよび3bに結果を示す。第5日までに、Oct-4の発現は20分の1に低下した。第5日までのブラキュリの5倍増大は、細胞が中胚葉に分化したことを示していた。Flk-1は造血系幹細胞で見いだされる。Flk-1の発現増大は、造血細胞集団の分化を示唆していた。Tie-2の発現は血管芽細胞の分化を示唆していた。血管芽細胞は造血系および内皮系の両方の可能性を有する細胞からなる。
【0162】
図3bは、さらなる転写因子の経時的な発現レベルを示す。HoxB4およびGata2両方の発現レベルの増大は、細胞が造血細胞集団に分化したことを示唆していた。HoxB4は造血系幹細胞の再生および生存において役割を果たす(Antonchuk et al., (2002)Cell 109(1):39。Gata2は、GMPでも発現される早期造血系転写因子である。
【0163】
フローサイトメトリーを実施例1に記載のとおりに実施した。すべてのフローサイトメトリー実験で用いた抗体を以下の表1に示す。
【0164】
(表1)
【0165】
図3cおよび3dは、経時的なCD45およびCD34の発現についてのフローサイトメトリー試験の結果を示す。第5日までのCD34の発現は、早期造血を示すものであった。第5日までに、培養物の形態は嚢胞性胚様体の外観を呈した(
図3e)。第15日までに、汎造血細胞マーカーであるCD45の発現が明らかであった。同時に、転写因子PU.1が、リアルタイム定量的PCRにより検出された(
図3b)。PU.1発現は早期造血細胞において見いだされ、その発現レベルは細胞が樹状細胞へと分化するにつれて増大する(Guerriero et al., (2000)Blood 95(3):879;Nutt et al., (2005 J Exp. Med. 201(2):221)。骨髄系統マーカーのCD13発現は、第15日までに明らかとなった(
図3F)。これは、分化カクテルからSCFを除去した時点までに、細胞はすでに造血および骨髄系統に入っていたことを示唆していた。単球マーカーのCD14は第20日までに発現された(
図3F)。CD13およびCD14両方の発現は時間と共に増大した(
図3F)。
【0166】
第20日までに、培養物中に2つのCD45+集団:CD45
hiおよびCD45
loがあることが明らかとなった(
図3G)。CD14の発現はCD45
hi集団において経時的に増大した。第32日までに、細胞の65%がCD14およびCD45を発現した。CD14発現はCD45
lo集団では見られなかった(
図3G)。前方散乱と側方散乱プロットで、CD45
hi集団は(R1)と称する単球/樹状細胞ゲートの細胞と相関し、一方、CD45
lo集団は(R2)と称する顆粒球前駆細胞ゲートと相関する(
図3G)。CD45
hi集団を分化プロトコルの第32日にさらに特徴づけ、CD11c、CD11b、HLA-I、HLA-II
lo/negおよびCD86について陽性であることが判明し(
図3H)、これらはすべて細胞がimDCであることを示唆していた。CD86はT細胞活性化に関与する共刺激分子であり、一方、CD83はmDCマーカーである。CD83発現の欠如は細胞がmDCではないことを示していた。
【0167】
実施例3:抗原の処理と提示
hES由来imDCの抗原を処理する能力を試験するために、蛍光色素DQ-OVA(Invitrogen, Carlsbad, CA)をPBSに1mg/mlで溶解し、実施例1に記載のhES由来imDCに100μg/mlで加えた。タンパク質をpH非感受性BODIPY-Fl色素で標識した。色素は、タンパク質が完全な状態であれば自己消光するが、タンパク質が変性されているか、またはタンパク質分解を受けていれば、明るい緑色蛍光を発する。細胞を37℃または4℃(背景蛍光のための対照として)のいずれかでインキュベートし、フロー緩衝液で2×洗浄した。データをFL1においてFACSCalibur(商標)(Becton Dickinson, San Jose, CA)で収集した。処理した細胞は蛍光を発することが判明し、タンパク質がimDCによってタンパク質分解されたことを示していたが、対照細胞は蛍光を発しなかった(
図5a)。
【0168】
機能検定を次に実施して、実施例1の方法に従って作成したDCが、適応免疫応答の1つの証明である、IFNγの抗原特異的リンパ球分泌を刺激しうるかどうかを調べた。おたふく風邪タンパク質を刺激抗原として用いた(Biodesign, Saco, ME)。タンパク質を、実施例1に記載のhES由来imDCに100ug/mlで1時間加えた。次に前述の成熟カクテルIFN-γ(25ng/ml)、IL-1-β(10ng/ml)、TNF-α(10ng/ml)、PGE2(1μg/ml)およびGM-CSF(50ng/ml)を加えた。24時間後、未処理またはおたふく風邪タンパク質で処理した成熟DCを回収し、AIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)で2×洗浄した。DCを1×10
4細胞/ウェルで、1×10
5 PBMC/ウェルと共に播種した(Cellular Technologies LTD, Shaker Heights, OH)。IFNγ ELISPOTプレートを読み出しに用いた(Millipore Corp. Bedford, MA)。ELISPOTプレートを抗IFNγ Ab(Mabtech, Mariemont, OH)により10ug/mlで終夜(16〜24時間)コーティングした。検定プレートを37℃および5%CO
2で16〜24時間放置し、Mabtechが提供する説明書に従って展開した。スポットをCTL Analyzer(Cellular Technology Limited, Decatur, IL)を用いてカウントした。結果を
図5Bに示し、これらは本発明のmDCによるIFNγ産生が未処理対照に比べて3倍の差があることを示している。
【0169】
実施例4:サイトカイン産生
定性的サイトカインアレイ分析を、Human Cytokine Array IIIおよびVキット(Raybiotech, Norcross, GA)を用いて、実施例1記載の方法に従って得たimDCおよびmDC両方で実施した。検定を製造者の説明書に従って実施した。mDCは以下の炎症誘発性サイトカインを産生することが判明した:IL-6、IL-7、IL-8、およびIL-10。IL-7はT細胞生存にとって重要であると考えられる。IL-8は走化性刺激であると考えられる。サイトカインIL-6、IL-10、およびIL-12を、BD Cytometric Bead Array(BD Biosciences, San Jose, CA)を用い、製造者の説明書に従って定量した。hES由来の未熟および成熟DCからの上清を回収し、Amicon Ultra-15 10,000 NMWL(Millipore, Bedford, MA)遠心チューブを用いて濃縮した。上清をヒトIL-6、IL-10、およびIL-12ビーズフレックスセット(BD Biosciences, San Jose, CA)に加え、25℃で1時間インキュベートした。PE(BD Biosciences, San Jose, CA)に結合した抗体検出試薬を加え、室温でさらに2時間インキュベートした。試料を1×洗浄し、洗浄緩衝液(BD Biosciences, San Jose, CA)に再懸濁し、FACSCaliber(商標)(Becton Dickinson, San Jose, CA)でのフローサイトメトリーにより回収した。サイトカイン濃度をFCAP Array Software(BD Biosciences, San Jose CA)を用いて定量した。結果を
図6Aに示し、これは3つのサイトカインすべての顕著なレベルがmDCによって産生されることを示していた。
【0170】
実施例5:mDCの走化性分析
AIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、孔径8.0uMのインサートを含むTranswell 24穴プレート(Corning, Corning, NY)の上部および下部チャンバーに加え、37℃、5%CO
2で終夜インキュベートした。各ウェルから培地を除去した後、ケモカインMIP3β(100ng/ml)を含む、または含まないAIM-V培地0.6mlを下部チャンバーに加えた。hES由来成熟DC(実施例1に記載のとおり)を回収し、AIM-V培地で2×洗浄した。細胞をAIM-V培地に2.0×10
6細胞/mlで再懸濁し、0.1mlを上部チャンバーに加えた。トランスウェルプレートを37℃、5%CO
2で2時間インキュベートした。下部チャンバーに遊走した細胞の数を、血球計数器を用いて求めた。結果を
図6Dに示し、これらは本発明のmDCがMIP3βに応答して遊走することを示していた。
【0171】
実施例6:樹状細胞の免疫刺激能力
実施例1の方法に従って産生したmDCの、免疫応答を刺激する能力を特徴づけるために、いくつかの検定を実施した。第一に、mDCが強い未処置アロ応答を刺激する能力を有することを示すために、混合リンパ球反応(MLR)検定を行った。
【0172】
PBMC由来DCを、新鮮な健常供与者軟膜調製物からの末梢血単核細胞(PBMC)を単離することにより調製した。PBMCをAIM-V培地中、組織培養フラスコに2時間接着させ、次いで温PBSで洗浄して非付着細胞を除去した。残った付着細胞はほとんど単球からなり、これらを1000U/mlの組換えヒトインターロイキン4(rhIL-4)(R&D Systems, Minneapolis MN)および組換えヒトGM-CSF(rhGM-CSF)(R&D Systems, Minneapolis MN)と共に37℃、5%CO
2で6日間インキュベートして、imDCを生成した。次いで、imDCをAIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)中、800U/ml rhGM-CSF、10ng/ml TNFα、10ng/ml IL1-β、ならびに10ng/ml IL-6および1.0ug/ml PGE2(R&D Systems, Minneapolis MN)で24時間成熟させた。
【0173】
MLR検定のために、PBMCを健常志願者から得た軟膜(Stanford Blood Bank)から、細胞をFicoll-Paque交配(Amersham Pharmacia Biotech AB, Buckinghamshire, UK)で遠心することにより単離した。単離細胞を洗浄し、10%FBS(Clonetech, Mountain View, CA)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含む完全RPMI 1640培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)中に再懸濁した。96穴U底プレート(Becton Dickinson, San Jose, CA)中、5×10
4 PBMCおよび異なる数の放射線照射した刺激細胞(hESC、単球由来DCおよびhES由来DCのために2000rad)を96穴U底プレート(Becton Dickinson, San Jose, CA)中で混合し、5%CO
2、37℃で5日間インキュベートした。次いで、細胞に1uCi
3Hチミジン/ウェルを、5%CO
2、37℃で18時間適用した。細胞をUniFilter-96 GF/C(PerkinElmer, Waltham, MA)上にFiltermate Harvester(Perkin Elmer, Waltham, MA)を用いて回収し、
3Hチミジン取り込みをTopCountシンチレーション計数器(Perkin Elmer, Waltham, MA)を用いて計数した。結果は実施例1に従って産生したmDCが良好な同種刺激活性を有することを示していた(
図7A)。
【0174】
次に、mDCの抗原特異的エフェクターT細胞を刺激する能力を調査した。CMVペプチドpp65(アミノ酸配列495〜503)を用いて、CD8+リンパ球に対するDC抗原提示を示した。pp65ペプチドを特異的に認識する、CD8リンパ球を含む特徴づけられたPBMC応答細胞を用いた。CD8 Tリンパ球およびDCは共通のHLA-A2対立遺伝子を有していた。CMV特異的抗原提示のために、成熟PBMC-DCおよびhES由来DCを、10μg/mlのCMV pp65ペプチドを補充した、または補充なしの無血清AIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)150ulに再懸濁した。細胞を37℃、5%CO
2で2時間インキュベートし、次いでAIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)で2×洗浄した。DCをELISPOTプレートに1×10
4細胞/100ul/ウェル、応答細胞と刺激細胞の比10:1で播種した。CMVに特異的な、特徴づけられたPBMC応答細胞(Cellular Technologies Limited, Decatur, IL)を37℃の水浴中で解凍し、2回洗浄し、AIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)中に再懸濁し、ELISPOTプレート(Millipore, Bedford MA)に1×10
5細胞/100ul/ウェルで播種した。ELISPOTプレートを10ug/mlの抗IFNγAb(Mabtech, Mariemont, OH)で終夜(16〜24時間)コーティングした。検定プレートを37℃、5%CO
2で16〜24時間放置し、Mabtechが提供する説明書に従って展開した。スポットをCTL Analyzer(Cellular Technology Limited, Decatur, IL)を用いてカウントした。
図7bに示す結果は、mDC(図中でES-DCと表示)はIFNγ産生を刺激し、これはPBMC-DCに匹敵することを示していた。
【0175】
次に、mDCのインビトロでT細胞拡大を刺激する能力を試験した。CMV T細胞株(67%特異性)(ProImmune, Bradenton, FL)を37℃で解凍し、1mM ピルビン酸Na、非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン、5×10
-5M 2-メルカプトエタノール、およびHEPESを補充した1640 RPMI培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)+5%FBS(Invitrogen, Carlsbad, CA)で2×洗浄した。次いで、T細胞を37℃、5%CO
2で2時間インキュベートした。5mM CellTrace CFSE保存溶液(Invitrogen, Carlsbad, CA)を使用直前にDMSO(Invitrogen, Carlsbad, CA)に溶解した。T細胞をあらかじめ温めたPBS/0.1%BSAに1×10
6/mlで再懸濁した。色素を細胞に最終濃度2uMで加え、37℃で10分間インキュベートした。Celltrace色素を5×氷冷培地の添加により消光させた。細胞を2×洗浄した後、検定を準備した。
【0176】
hES由来のDCに10μg/mlのCMV495-503 pp65ペプチド(Anaspec, San Jose, CA)(HPLCにより純度>95%)を37℃で2時間あらかじめ適用し、2×洗浄した後、2×10
4/ウェルで96穴U底Falcon(商標)プレート(BD, San Jose, CA)に播種した。CFSE標識T細胞を2×10
5細胞/ウェルで播種した。第5日に、細胞を回収し、百万細胞あたり5μlのAPC(ProImmune, Bradenton, FL)で標識したCMV495-503特異的ペンタマーにより25℃で10分間染色した。これはCMVペプチド495〜503に特異的なT細胞を認識した。これはCFSE分析のためにこの特異的細胞集団においてFACSをゲートすることを可能にする。細胞をフロー緩衝液で2×洗浄し、7AADで5分間染色した後、試料をFACSCalibur(商標)(Becton Dickinson, San Jose, CA)にかけた。死滅細胞を7AADによる分析から除外した。色素標識(複数のピーク)の希釈はT細胞増殖を示している。
図7Cに示すとおり、実施例1に従い作成したDC(図のES-DC)はPBMC-DCに匹敵するT細胞増殖を引き起こした。CD8 Tリンパ球および樹状細胞は共通のHLA-A2を有していた。
【0177】
実施例7:分化カクテルの比較
hES細胞をimDCおよびmDCに増殖および分化させるための培養条件を、様々な外因性サイトカインを含む分化カクテルを比較するために、用いる分化カクテルを変える以外は、実施例1に記載のとおりに実施した。hES細胞をimDCに分化させる能力について、7、5、4および3つのサイトカイン(増殖因子)の様々な組み合わせを試験した。表IIは、分化カクテルが7、5、および4つの外因性サイトカインを含む実験の詳細を示す(プラス記号は因子の存在を示し、マイナス記号はその因子を使用しなかったことを示す)。表の下半分の数値は、パーセンテージの真上に示す対応するカクテルで得られた、各細胞マーカーのパーセンテージを示す。表IIIは、分化カクテルが4および3つの外因性サイトカインを含む実験の詳細を示す(プラス記号は因子の存在を示し、マイナス記号はその因子を使用しなかったことを示す)。対応するカクテルについて得られたマーカーのパーセンテージに関する一式を表の下半分に示し、パーセンテージは数値データの上に示すカクテルに対応している。表IV〜VIは、実験の時間経過中の分化カクテルの組成(表IIおよび表IIIに記載のとおり)に関する詳細を示す(「X」は因子が明記された期間存在したことを示す)(「d」はこれらの表では「日」の略語として用いる)。
【0178】
imDCを2つの異なる成熟カクテルを用いてmDCに成熟させた。表IIに記載の実験では、GM-CSF、Il-1β、IFN-γ、CD40LおよびIFNαを含む成熟カクテルを用いた。表IIIに記載の実験では、TNFα、IL1β、IFNγおよびPGE2を含む成熟カクテルを用いた。表VIIは、試験した各サイトカイン(増殖因子)の濃度および供給源を示す。
【0179】
(表2)増殖因子削減実験
全集団の陽性細胞%
平均はn=4で、平均標準誤差と共に示す。
*分化を超低接着6穴プレートで行った。
#n=2の平均。
【0180】
(表3)増殖因子削減実験
全集団の陽性細胞%
*分化を超低接着6穴プレートで行った。
平均はn=3で、平均標準誤差と共に示す。
【0181】
(表4)
【0182】
(表5)
【0183】
(表6)
【0184】
(表7)試薬
【0185】
実施例8:成熟カクテルの比較
本発明の様々な態様に従ってimDCに分化させたpPS細胞を、サイトカイン/因子の異なる組み合わせを用いてmDCに成熟させた。細胞濃度0.05×10
6細胞/ウェルを96穴プレートに播種し、表VIIIに示すサイトカイン/因子の様々な組み合わせを補充したX VIVO-15培地中で24時間培養した。用いた因子の濃度は上の表VIIに示したとおりであった。Poly I:Cには10ug/mlを用い;PGE2には1ug/mlを用い;iL-6には10ng/mlを用いた。試験したすべての成熟カクテルは50ng/mlのGM-CSFを含んでいた。imDCのmDCへの成熟の指標として、24時間の時点の上清からのIL-12およびIL-10のレベルを、BD(商標) Cytometric Bead Array(BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ)を用いて測定した。結果は、4つという少ないサイトカインでimDCのmDCへの成熟を刺激しうることを示唆するものであった。
【0186】
(表8)
【0187】
6穴プレートで0.2×10
6細胞/ウェルの細胞濃度を用いて実験を繰り返したが、今回は異なる一連のサイトカインを試験した。サイトカイン濃度は以下のとおりであった:TNFα 10ng/ml;IL-1β 10ng/ml;IFNγ 20ng/ml PGE2 1ug/ml;IL-6 10ng/ml。上清をAmicon Ultra-15 10,000 NMWL遠心チューブ(Millipore Corp, Bedford, MA)を用いて濃縮し、様々な成熟カクテルに48時間曝露した後、DC成熟の指標としてのIL-12およびIL-6産生について分析した。前の実験のとおり、すべての成熟カクテルは50ng/mlのGM-CSFを含んでいた。陽性対照としてヒトPBMCから生成した単球由来DCも含んでいた。結果を以下の表IXに示す。
【0188】
(表9)
【0189】
実施例9:hTERT T細胞株の生成
PBMCを健常ヒト供与者のHLA-A2+軟膜から、Ficoll Plaque-Plus(GE Healthcare Bioscience AB, Piscataway, NJ)分離法を用いて単離した。imDCを生成するために、HLA-A2+PBMCからの単球をCD14+マイクロビーズ(Miltenyi, Aurburn, CA)を用いて単離し、rhGM-CSF(1000U/ml)(Berlex, Richmond, CA)およびrhIL-4(1000U/ml)(R&D systems, Minneapolis, MN)を含む無血清AIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)に移し、37℃、5%CO
2で5日間インキュベートした。DCをTNFα(10ng/ml)(R&D systems)、IL1β(10ng/ml)(R&D systems)、IL-6(10ng/ml)(R&D systems)、およびPGE2(1ug/ml)(R&D systems)を含むサイトカインカクテルを加えることにより24時間成熟させた。mDCを回収し、AIM-V培地で2×洗浄し、200ulのAIM-V培地に再懸濁し、hTERTタンパク質のアミノ酸540で始まる九量体である540 hTERTペプチド(100ug/ml)(AnaSpec Inc, San Jose, CA)を37℃、5%CO
2で2時間適用した。
【0190】
自己CD8+ T細胞をPBMCから、CD8+ T細胞磁気分離キット(Miltenyi, Aurburn, CA)を用いて非CD8+細胞を枯渇させることにより単離した。CD8+細胞を10%ヒトAB血清(Valley Biomedical, Winchester, VA)を含むAIM-V培地に再懸濁し、24穴プレートに1.0〜2.0×10
6細胞/mlの濃度で移した。540 hTERTを適用したDCをウェルに刺激細胞と応答細胞の比1:10で加え、37℃、5%CO
2でインキュベートした。翌日、組換えヒトIL-7(10ng/ml)(R&D systems)およびIL-2(10U/ml)(R&D systems)を培養物に加えた。
【0191】
ペプチドhTERT 540による再刺激を7〜10日ごとに行った。再刺激のために、自己PBMCを用いて抗原を提示した。自己PBMCを、無血清AIM-V培地およびhTERT 540ペプチド(10ug/ml)を含む24穴プレートに2.0〜3.0×10
6細胞/ウェルの濃度で移した。PBMCを37℃、5%CO
2で2時間維持し、細胞のプレートへの接着を促進した。非付着細胞をAIM-V培地で2×洗浄して除去した。付着PBMCに540 hTERTペプチド(10ug/ml)をさらに2時間適用し、次いで2000radで放射線照射した。
【0192】
540 hTERTを適用したDCによる初回抗原刺激からのCD8+ T細胞を回収し、1×洗浄し、540 hTERTを適用した放射線照射付着PBMCを含むウェルに移した。IL-12(10ng/ml)(R&D systems)を培養物に加えた。翌日、組換えヒトIL-7(10ng/ml)および/またはIL-2(10U/ml)を培養物に加えた。3〜4日ごとに、培地の半分を除去し、適宜IL-7および/またはIL-2を含む新鮮な培地を加えた。少なくとも3回の、540 hTERTを適用した放射線照射自己付着PBMCを用いての再刺激を実施した。
【0193】
陽性540 hTERT特異的CD8+ T細胞のパーセントを、FlowJoソフトウェア(Tree Star, Ashland, OR)を用いてAPC(ProImmune, Bradenton, FL)および抗ヒトCD8 FITC結合Ab(Proimmune, Bradenton, FL)で標識した540五量体で細胞を染色することによりもとめた。TERT特異的CD8+細胞を、FACSCaliber(商標)(Becton Dickinson, San Jose, CA)を用いてフローサイトメトリーにより回収し、後の実験で用いた。
【0194】
実施例10:540 hTERT T細胞株のELISpot IFNγ検定
hES由来mDC(実施例1)を200ulの無血清AIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)に再懸濁し、540 hTERTペプチド(100ug/ml)を37℃、5%CO
2で2時間適用した。非適用mDCを対照として用いた。非適用hES由来mDCを対照として用いた。mDCをAIM-V培地で2×洗浄し、AIM-V培地に再懸濁し、抗IFN-γAb(10ug/ml)(Mabtech, Mariemont, OH)でコーティングしたELISpotプレートに540 hTERT T細胞株と共に刺激細胞と応答細胞の比1:10で播種した。検定プレートを37℃、5%CO
2で16〜24時間放置し、製造者が提供する説明書に従って展開した。スポットをCTL Analyzer(Cellular Technology Limited, Decatur, IL)を用いてカウントした。結果を
図8に示し、これらはhESから分化したmDCがhTERT抗原に対する特異的T細胞応答を刺激することを示している。
【0195】
実施例11:540 hTERT T細胞株の増殖
540 hTERT T細胞株をあらかじめ温めたPBS/0.1%BSAに1.0×10
6/mlで再懸濁した。CFSE(Invitrogen, Carlsbad, CA)を細胞に、最終濃度2uMで加え、37℃で10分間インキュベートした。染色を、10%FBS(Clonetech, Mountain View, CA)を含む、あらかじめ冷却したAIM-V培地を加えることにより停止した。細胞を2×洗浄した後、検定の準備をした。成熟hES由来DC(実施例1)に10μg/mlの540 hTERTペプチド(Anaspec, San Jose, CA)を37℃、5%CO
2で2時間適用し、AIM-V培地で2×洗浄した後、96穴U底Falcon(商標)プレート(BD, San Jose, CA)に2×10
4/ウェルで播種した。CFSE標識540 hTERT T細胞株を2×10
5細胞/ウェルで播種した。非適用hES由来mDCを対照として用いた。第4日に、細胞を回収し、APC(ProImmune, Bradenton, FL)に結合した540五量体試薬で染色した。細胞をFACS緩衝液で2×洗浄し、7AADで染色した後、FACSCaliber(商標)(Becton Dickinson, San Jose, CA)を用いて回収した。分析をFlowJoソフトウェア(Tree Star, Ashland, OR)を用いて行った。結果を
図9に示し、これらはhES細胞から分化したmDCがHLA-A2に関連してhTERT抗原を提示し、抗原特異的T細胞増殖を刺激しうることを示している。
【0196】
実施例12:放射線照射したmDCの免疫刺激能力
成熟樹状細胞を、実施例1に記載の方法に従い、インビトロでpPS細胞から分化させた。インビトロでhES細胞から分化させた樹状細胞(hESC-DC)における放射線照射の効果について取り組むために、放射線照射および非放射線照射hESC-DCのT細胞の抗原特異的エフェクター応答を刺激する能力を比較した。CMVペプチドpp65(アミノ酸配列495〜503)を用いて、CD8+リンパ球へのhESC-DC抗原提示を示した。HLA-A2に複合したpp65を認識するCD8+T細胞を含む、特徴づけられたPBMC応答細胞(Cellular Technology Limited, Decatur, IL)を応答細胞として用いた。pp65特異的抗原提示のために、成熟hESC-DCを10μg/ml pp65ペプチドを補充した、または補充なしの無血清AIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)150ulに再懸濁した。細胞を37℃、5%CO
2で2時間インキュベートし、次いでAIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)で2回洗浄した。pp65適用および非適用hESC-DCの一部に、Torrex 150D X線検査システム(EG&G Astrophysics Research Corporation, Long Beach, CA)を用いて、2,000radで4分14秒間X線照射した。X線照射および非照射hESC-DCをELISPOTプレートに1×10
4細胞/100ul/ウェル、応答細胞と刺激細胞の比10:1で播種した。特徴づけられたPBMC応答細胞を37℃の水浴中で解凍し、2回洗浄し、AIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)中に再懸濁し、ELISPOTプレート(Millipore, Bedford MA)に1×10
5細胞/100ul/ウェルで播種した。ELISPOTプレートを10ug/mlの抗IFNγAb(Mabtech, Mariemont, OH)で終夜(16〜24時間)コーティングした。検定プレートを37℃、5%CO
2で16〜24時間放置し、Mabtechが提供する説明書に従って展開した。スポットをCTL Analyzer(Cellular Technology Limited, Decatur, IL)を用いてカウントした。
図10に示す結果は、放射線照射hESC-DCが抗原特異的様式でIFNγ産生を刺激する能力を維持していたことを示している。
【0197】
実施例13:放射線照射したmDCの走化性遊走
成熟樹状細胞を実施例12で用いたものと同じプロトコルに従って分化させた。放射線照射および非放射線照射mDC(hESC-DC)の走化性リガンドMIP3β(
図11のMIP3b)存在下で遊走する能力を、インビトロトランスウェル検定を用いて調査した。AIM-V培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、孔径8.0uMのインサートを含むTranswell 24穴プレート(Corning, Corning, NY)の上部および下部チャンバーに加え、37℃、5%CO
2で終夜インキュベートして膜を平衡化した。mDCを回収し、AIM-V培地で2回洗浄した。細胞をAIM-V培地に1.5×10
6細胞/mlで再懸濁し、これらの細胞の一部に、Torrex 150D X線検査システム(EG&G Astrophysics Research Corporation, Long Beach, CA)を用いて、2,000radでX線照射した。トランスウェルから培地を除去した後、ケモカインMIP3β(100ng/ml)を含む、または含まないAIM-V 0.6mlを下部チャンバーに加えた。X線照射および非照射mDC(0.15×10
6細胞)の0.1ml量を上部チャンバーに加えた。トランスウェルプレートを37℃、5%CO
2で2時間インキュベートした。下部チャンバーに遊走した細胞の数を、血球計数器を用いて求めた。結果を
図11に示し、これらは放射線照射がmDCのMIP3βに応答して遊走する能力に影響をおよぼさないことを示していた。
【0198】
実施例14:市販の培地から産生した細胞の比較
2つの市販の培地、mTeSR(商標)無血清培地(Stem Cell Technologies, Vancouver, BC, Canada)およびXVIVO-10(商標)(Lonza, Walkersville, MD)のmDC細胞収量に対する影響を調べた。H1 hESC培養方法及び分化方法を実施例1に記載のとおりに実施した。各回収時の成熟DCの数を、XVIVO-10またはmTeSR培養物から生成したhESCの間で比較した、
図12。最初の分化から合計3回の回収を実施した。培地はいずれもインビトロでhESから分化したmDCをうまく産生したが、結果はmTeSR中で培養したhESCはX VIVO-10よりも良好な細胞収量を提供することを示唆している。
【0199】
実施例15:市販の培地中で培養したhESC由来DCの成熟
成熟DCはT細胞応答を刺激する能力を有し;したがって、hESC由来DCの成熟プロセスを最適化することが望ましい。(例えば、Chiara et al, 2007参照)。本発明者らは実施例1に記載のとおりにH1 hESCを分化させたが、未熟および成熟hESC由来DCを生成する段階の間、Cellgro DC培地を用いた。24時間の成熟後、細胞を回収し、1)細胞表面マーカー発現、2)遊走、および3)IL-12発現に基づき、成熟DC表現型の存在について評価した。
【0200】
実施例2に記載のフローサイトメトリーを用いて、DC関連マーカー:MHCクラスII、CD83、CD86、およびCCR7の細胞表面発現を分析した。Cellgro(商標) DC培地中で培養した成熟hESC由来DCは、XVIVO-15(商標)で培養したDCと比べて、MHCクラスII、CD83、およびCCR7の陽性細胞パーセント(%)および発現レベル(MFI)両方で上昇を示した、
図13。CD86を発現する細胞の%は変化しないままであったが、平均蛍光強度(MFI)はCellgro(商標) DC培地を用いる方が高かった。このデータは、Cellgro(商標) DC培地はより強い成熟DC表面表現型の生成を促進することを示唆している。
【0201】
次に、Cellgro(商標) DCおよびXVIVO-15(商標)培地中で培養したhESC由来成熟DCの遊走効率を、実施例5に記載のTranswell検定を用いて試験した。XVIVO-15(商標)中で培養したhESC由来DCは、有効な遊走のために少なくとも48時間成熟させることが必要であった。これに対して、Cellgro(商標) DC培地中で培養し、成熟させたhESC由来成熟DCは、24時間の時点でXVIVO-15(商標)に比べてMIP3ベータに応答して遊走する高い能力を有する(
図14)。これらのデータは、Cellgro(商標) DC培地中で培養したhESC由来DCは成熟後24時間で遊走が改善されていることを示唆している。
【0202】
IL-12はTh1型免疫応答を促進するのを助け;したがって、成熟hESC由来DCからのIL-12の発現を最適化することは有用であろう。IL-12発現レベルを実施例4に記載のとおりに検出した。Cellgro(商標) DC中で培養したhESC由来成熟DCは、XVIVO-15(商標)で培養したDCに比べて高いIL-12発現レベル(3.4倍)を有していた(
図15)。成熟カクテルへのIL-4の添加は、DCからのIL-12発現を増強することができる(例えば、Ebner et al, (2001)J. Immunology 166:633参照)。IL-4は両方の培地条件からIL-12の発現を増大させたが、Cellgro(商標) DC培地中で培養したhESC由来成熟DCは顕著に高いレベルのIL-12産生(5.6倍)を有していた、(
図15)。まとめると、これらのデータは、Cellgro(商標) DC培地中で培養したhESC由来成熟DCはXVIVO-15(商標)中で培養したDCよりも高いレベルでIL-12を発現する能力を有することを示唆している。
【0203】
実施例16:hTERT-LAMPをコードするRNAをトランスフェクトしたhESC由来DCによる540 hTERT T細胞株の刺激
H1 hESCを、hESCを培養するためにmTeSR(商標)を用い、hESC由来未熟および成熟DCを生成するためにCellgro(商標) DCを用いる以外は、実施例1に記載の方法に従って分化させた。2.0〜4.0e6の間のhESC由来成熟DCに、0.4cmキュベット(Biorad, Hercules, CA)中、Biorad Gene Pulser Xcell(Biorad, Hercules, CA)を用い、以下のパラメーターを用いて、hTERT-LAMPまたはGFPをコードするRNAを電気穿孔した:300V、150uF、および100Ω。電気穿孔した細胞をCellgro(商標) DC培地で1×洗浄し、細胞を成熟培地にさらに6時間移した。実施例9および10に記載のとおり、GFP-およびhTERT-LAMP RNAを電気穿孔したhESC由来成熟DCを回収し、540 hTERT T細胞株と同時インキュベートして、IFNγの発現を検出した。結果は、hTERT-LAMP RNAを電気穿孔したhESC由来成熟DCは、GFP-RNAをトランスフェクトしたhESC由来DCと比べて、540 hTERT特異的T細胞株からのIFNγの高いレベルを刺激することを示した(
図16)。このデータは、hESC由来DCはhTERT抗原を処理および提示する能力を有することを示唆している。
【0204】
当業者には明らかであるとおり、本発明の多くの改変および変更を、その範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に記載の特定の態様は、例示のために提供するにすぎず、いかなる様式でも限定を意味するものではない。本明細書および実施例は例示のみと考えられ、本発明の真の範囲および精神は添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。