(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
人間又は動物体に挿入可能な医療機器であって、不良導電性を有すると共にマトリクス材と非金属フィラメントとから形成される少なくとも一つのロッド型体を含む機器本体を含む上記医療機器において、
上記ロッド型体はX線マーカー粒子によりドープされ、上記医療機器はMRマーカーを含み、
上記機器本体は、シージングマトリクス及び一つ以上のロッド型体の同時押出により形成される本体であり、上記シージングマトリクスは、熱可塑性エラストマーから形成される
ことを特徴とする医療機器。
上記アクティブMRマーカーは、錯体を用いて、特にキレート錯体を用いて上記表面領域に固定化され、上記錯体は、上記機器本体に共有結合されるか或いは膨張可能であって機器本体の表面に形成された被覆剤に埋め込まれ、アクティブMRマーカーは、ガドリニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムからなるグループからの元素又は元素の組み合わせ或いは元素の化合物から成る
ことを特徴とする請求項2〜5の何れかに記載の医療機器。
上記X線マーカーは、バリウム(Ba)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、オスミウム(Os)、プラセオジム(Pr)、プラチナ(Pt)、金(Au)及び鉛(Pb)などの一以上の元素又は一以上の元素との化合物から成る
ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の医療機器。
上記パッシブMRマーカーは、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、マンガン(Mn)、ルビジウム(Rb)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、クロム(Cr)又は鉄(Fe)を含む金属、合金又は金属化合物から成る
ことを特徴とする請求項9記載の医療機器。
【背景技術】
【0002】
WO2007/000148A2では、カテーテルやカテーテル用のガイドワイヤーなどの医療機器を形成するためのロッド型体が開示されている。このロッド型体は、一又はそれ以上のフィラメントと、当該フィラメントを囲う非強磁性体マトリクス材とから構成される。MRTアーチファクト(人為的な影響)を生成する粒子からなるドープ剤は、マトリクス材に導入される。
【0003】
磁気共鳴断層撮影法(MRT)や磁気共鳴映像法の詳細な説明は、インターネットのhttp:/en.wikipedia.org/wiki/MRTにて見つけることができる。
【0004】
US2003/0055449A1は、バルーンカテーテルを示している。このバルーンカテーテルでは、強磁性体又は常磁性体材料から成る高分子材料からバルーンが形成されていることにより、磁気共鳴検査中にバルーンを視認することができる。
【0005】
US5,154,179では、例えば、押出プラスチックホースから形成されるカテーテルが開示されており、このプラスチックホースのプラスチック材には、強磁性体粒子が含まれている。磁気共鳴断層撮影法において、このカテーテルは視認可能である。さらに、かかるカテーテルに対して、X線を通さない材料を具備させることも示唆されている。好ましくはこれらのX線マーカーのために非鉄材料を用いる。
【0006】
DE101 07 750A1では、磁気共鳴断層撮影法に適しているとされるガイドワイヤーが開示されている。このガイドワイヤーは、金属製のフロント部からなるコアを含む。非導電性のプラスチック材からなる複数のロープが、外側ジャケットとコアとの間に配置されている。このプラスチック材は、グラスファイバーやカーボンファイバーにより補強されるとされている。しかし、カーボンファイバーは、電気的に導体であるため磁気共鳴断層撮影法には用いることができない。
【0007】
さらにEP1 206 945A1により知られている医療機器は、常磁性の金属化合物及び/又は常磁性金属を備え、これにより磁気共鳴映像処理中にこれら金属化合物及び/又は常磁性金属を視認することができる。
【0008】
WO87/02893では、磁気共鳴影像法における画像強調とスペクトル強調のためのポリキレート物質が開示されている。これら物質は種々の錯体から成り、これら錯体には、金属イオン、特にガドリニウムイオン、が固定されている。
【0009】
ガドリニウム(III)錯体の緩和能は、Daniel Storchによる最初の論文の1.6.1章において説明されている。この論文のタイトルは、”Neue, radioaktiv markierte Magnet-Resonanz-aktive Somatostatinanaloga zur besseren Diagnose und zielgerichteten Radionuklid-therapie von neuroendokrinen Tumoren”, Basel, 2005である。ガドリニウム(III)イオンの周辺にある水分子の常磁性緩和は、不対電子により生じた磁気共鳴映像装置の核スピンと変動する局所磁場との間の双極子間相互作用の結果である。常磁性中心、すなわちガドリニウム(III)イオン周辺の磁場が、距離の増加により消滅する。そのため、プロトンを金属イオンの近傍に運ぶことが決定的となる。ガドリニウム(III)錯体について、これは水分子が金属イオンの第1配位圏に運ばれることを意味する。これら“内圏”H
2O分子は周囲の水分子と置換され、このようにして常磁性効果を伝える。
【0010】
DE100 40 381C1では、残留糖分と共にフルオロアルキル含有錯体が開示されている。これら錯体には常磁性金属イオンを具備させることができ、これによりこれら錯体は磁気共鳴映像法において造影剤として機能することができる。これら金属イオンは、特に、原子番号21〜29、42、44及び58〜70の元素の二価及び三価イオンである。適したイオンは、例えば、クロミウム(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)及びイッテルビウム(III)イオンである。ガドリニウム(III)、エルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、鉄(III)及びマンガン(II)イオンは、これらの強い磁気モーメントのため特に好ましい。
【0011】
EP1 818 054A1では、セルを作る目的でガドリニウムキレートの使用が開示されている。
【0012】
US6,458,088B1では、磁気共鳴映像法のために設けられたガイドワイヤーが説明されており、このガイドワイヤーはガラス体を有している。このガラス体には保護層が具備され、この保護層は高分子材料でなり更にファイバーを備えることができる。ガイドワイヤーの遠端部は、ニチノールなどの金属部から形成できる。この金属部は、磁気共鳴場の波長よりも明らかに短い長さにすべきである。
【0013】
WO2005/120598A1では、PEEKコアを有するカテーテルガイドワイヤーが開示されている。このコアには被覆剤が具備されている。この被覆剤には造影剤が具備されている。この造影剤は、10μm未満の粒子サイズを有する鉄粉である。
【0014】
WO97/17622では、非導電体を有する医療機器が開示されている。この非導電体には導電性材料からなる極薄被覆剤が具備されていることにより、画像に対して過度に影響を及ぼすことなく当該医療機器を磁気共鳴断層撮影処理時に視認することができる。
【0015】
WO99/060920A及びWO2002/022186Aのそれぞれでは医療機器用の被覆剤が示されており、この被覆剤は当該被覆剤中で錯体化された常磁性イオンを有している。当該常磁性イオンは、特に、ガドリニウムである。この被覆剤は、MRT検査中に視認可能である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、カテーテル用のガイドワイヤー1に基づき本発明が例示される。ガイドワイヤー1は、如何なるMRTアーチファクトも生成しない材料から作られる。例えばこの種の材料は、PEEK、PEBAX、PE、PP、PU、シリコーン、ポリ乳酸ポリマー、芳香族ポリアミド又はメモリプラスチック材料などのセラミック又はプラスチック材料である。プラスチック材料は、特に、ファイバーにより補強される。上述のプラスチック材料とは別に、またエポキシ樹脂もマトリックス材として使用できる。ファイバーは、グラスファイバー、セラミックファイバー、Kevlar(登録商標)ファイバー、Dacron、又は植物系ファイバー(例えば、絹、サイザル麻、麻など)である。如何なるMRTアーチファクトも生成しない材料は、導電部から離さなくてはいけない。この導電部の長さは、15cm以下、特には10cm以下又は5cm以下、とすべきである。これにより、石炭系やカーボンファイバーなどの導電性ファイバー、若しくは当該部が互いに十分に絶縁されていれば導電性ワイヤーを使用できる。これらは、強磁性、常磁性、フェリ磁性又は反強磁性の材料から形成してはならない。
【0032】
ガイドワイヤーは、円形断面を備え、通常その直径は2mm以下(例えば、0.7mm)の細長体である。その表面2では、アクティブMRマーカー3がガイドワイヤー上に固定化されている。
【0033】
アクティブMRマーカーは、水又は脂質分子などのプロトン含有媒体と相互作用するマーカーであり、このマーカーによって、印加磁場によるそれらの誘発配向の後、該MRマーカーに隣接するプロトンのより速い緩和がもたらされる。かかるMRマーカーは、例えば、ガドリニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムからなるグループからの元素又は元素の組み合わせ、或いは元素の化合物から成る。好ましくは、これら元素は、錯体、特にはキレート錯体を用いて固定化される。またこれらの元素は、塩として又は合金中にも存在し得る。
【0034】
典型的なキレート剤は、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、及びDOTA(1、4、7、10−テトラアザシクロドデカン−N,N’、N’’、N’’’−四酢酸)である。
【0035】
基本的に、化学高分子(特に、ポリリシンやデンドリマー)又は生物高分子(タンパク質、糖、特にはデキストラン)が錯体として適している。
【0036】
好ましい本実施形態では、MRマーカーはガドリニウム(III)キレート錯体であり、該キレート錯体は共有結合によってガイドワイヤー1の表面2に結合されている。好ましくは、スペーサ分子がキレート錯体と表面2との間に設けられ、これにより表面2から間隔をあけてMRマーカーが配置される。例えば、ポリエチレングリコールは、スペーサ分子として用いるのに適している。
【0037】
キレートと、スペーサとポリマーで形成された機器本体との間における共有結合は、アミノ、四級アンモニウム、ヒドロキシル、カルボキシル、スルフィドリル、サルフェート、スルホニウム、チオール基、反応性窒素基など(いずれの場合もキレート剤及びポリマー用に)を介して実現することができる。
【0038】
ガイドワイヤー1は、カテーテルを血管へ挿入するのに用いられる。ガイドワイヤー1を血管内へ挿入している間、ガイドワイヤー1の表面2は血液と接触することになる。血液は、表面2から間隔を空けて配置されているMRマーカー3上やその周囲を流れ、これにより水分子がMRマーカー3の大部分に付着する。MRマーカーは、水分子と相互作用することにより、それらの緩和時間が減少する。MRT検査において、これら水分子は高コントラストの信号を生成する。これにより、MRTにより生成された画像では、ガイドワイヤーがはっきりと視認できるようになる。ガイドワイヤー1の表面2上に固定化されたアクティブMRマーカー3により、全ての周知のシーケンス(例えば、T1強調、T2強調、グラジエントエコーシーケンスなど)において、一様なコントラストが確保される。パッシブ(受動)MRマーカーを備えた従来の医療機器(例えば、WO2007/000148A2)によれば、MRTを用いてこれらのマーカーを即座に検出することも可能である。しかしこのパッシブMRマーカーは、様々なシーケンスにおいて、様々な程度で言明される力線のかく乱をもたらす。そしてこれは多くの場合、ある種のシーケンスによると医療検査に使用できないような大きな又は小さな程度まで画像が乱れるという影響を及ぼす。従って、パッシブMRマーカーが具備された医療機器は、全てのシーケンスとは共に使用ができず、或いはパッシブMRマーカーの濃度が低すぎ又は高すぎて、ある種のシーケンスとはこれ以上視認不可能となり周囲の構造体をそれぞれ覆う過度に強い信号が生じてしまう。
【0039】
上述のガイドワイヤーのようにそれらの表面上にアクティブMRマーカーが設けられた医療機器は、他の潜在的な物理的効果によって、パッシブMRマーカーを備えた機器に比べ、シーケンスに関してかなり柔軟な適用分野を有し、そしてまた、様々なシーケンスと共にMRT検査において一様に視認可能である。
【0040】
図2は、本発明による機器の第2の好ましい実施形態を示しており、これもまた表面2を有するガイドワイヤー1である。ガイドワイヤーの本体は、第1の好ましい実施形態によるガイドワイヤーの本体と同様に構成されている。表面2には、膨張可能な被覆剤4が設けられている。かかる膨張可能な被覆剤は、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)から形成される。かかる膨張能力を有する被覆剤については、BASF AGからのものが利用可能であり、特に商品名Colidone又はCollidoneが利用可能である。
【0041】
アクティブMRマーカーは、膨張能力を備えた被覆剤に埋め込まれる。一例を挙げると、ガドリニウム(III)キレート錯体がMRマーカーとして用いられる。
【0042】
水性又は脂肪質の環境に浸されると、膨張能力を有する被覆剤4は水分子又は脂質分子を吸収し、これにより水又は脂質分子がアクティブMRマーカーに付着する。このMRマーカーは水又は脂質分子中に含まれるプロトンと相互作用し、これによりそれらの緩和時間が減少すると共にそれらをMRT検査中に視認することができる。
【0043】
ガイドワイヤーの本実施形態は、如何なるシーケンスを用いてもMRTで検出することができる。これによりこのガイドワイヤーは、MRTに対して、極めて柔軟な使用範囲を有する。
【0044】
一般的にアクティブMRマーカーは、基本形又は自由形では有毒である。しかしながら、アクティブマーカーは、錯体において結合される場合、通常、人体又は動物体によっては十分に許容される。キレート錯体において結合コントラストが高いほど、MRマーカーの錯化剤からの分離は低下し、従って基本的なMRマーカーが体液中へ自由に移動する危険性がある。本発明では、アクティブMRマーカーは各々の医療機器上に固定化されており、これにより検査後これらアクティブMRマーカーは当該機器と共に人間又は動物体から取り除かれる。従って、毒作用の点で、危険性は最小限である。
【0045】
以上、本発明を二つのガイドワイヤーに基づいて説明してきた。しかしながら、本発明はガイドワイヤーに限定されない。本発明の範囲内で、人体又は動物体内に挿入可能な如何なる機器をも、本発明によれば機器本体の表面領域におけるアクティブMRマーカーを固定化することにより、これらが身体中のプロトンと相互作用し得るように実現することができる。かかる機器は、例えば、カテーテル、ステント又はインプラントである。好ましくは、機器本体は如何なるMRTアーチファクトも生じさせない又は小さなものだけを生じさせる材料から形成され、これによりコントラストは主として表面領域に配置されたアクティブMRマーカーによって生じる。好ましくは、この種の材料はプラスチック材料、特にはグラスファイバー補強プラスチックである。これら材料は、セラミック材料やセラミックとプラスチックとからの複合材料であっても良い。
【0046】
本発明の更なる態様によれば、医療機器にはMR及びX線マーカーの両方が具備される。上述したような方法でアクティブMRマーカーがMRマーカーとして用いられることが好ましい。しかしながら、パッシブMRマーカーもまた使用することができる。パッシブMRマーカーは、常磁性、強磁性、フェリ磁性及び反強磁性の金属、合金、及び金属化合物である。これらパッシブMRマーカーは、粒子の形でプラスチック母材に埋め込まれるのが好ましい。パッシブMRマーカーは、好ましくは、以下の金属又は金属化合物である。つまりパッシブMRマーカーは、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、マンガン(Mn)、ルビジウム(Rb)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、クロム(Cr)又は二酸化クロム(CrO
2)、そして特に鉄(Fe)及び酸化鉄(FeO、Fe
2O
3、Fe
3O
4)である。パッシブMRマーカーの濃度は、これらパッシブMRマーカーが所望のシーケンスと共に視認可能であって少なくとも一つのMRシーケンスにおいて医療機器を良好に再現し、そして本プロセスにおいて周囲の生体組織の結像を重ね合わせたり損わないように選定される。しかしながら、それらをより柔軟に使用するため、表面上に配置されたアクティブMRマーカーが好ましい。
【0047】
しかしながらX線マーカーには、以下の金属や他の元素が用いられる。すなわち、バリウム(Ba)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、オスミウム(Os)、プラセオジム(Pr)、プラチナ(Pt)、金(Au)及び鉛(Pb)である。これらの元素は、基本形で又は硫酸バリウムなどの化合物中でも、X線マーカーとして用いることができる。
【0048】
通常、X線マーカーは、MRT処理中において画像化処理に対して影響を与えることは殆どない。しかしながら、X線検査では、例えばコンピュータ断層撮影又はスクリーニングでは、X線を用いることによりX線マーカーが容易に検出され得る。
【0049】
幾つかのマーカーは、一般的にX線及びパッシブMRマーカーの両方に用いることができる。ここで画像化機能は、いずれの場合もその濃度に依存する。以下に詳細に説明するように、鉄はMRT及びX線検査の両方で画像信号を生成する。しかしながら、X線検査に必要な鉄濃度が高いため、MRTにおいては画像が乱される。X線及びMRマーカーの両方に用いることができるマーカーは、MRT又はX線検査のどちらも乱さない程度の濃度にて用いられる。一般に、これらマーカーの濃度は調節されることにより、当該マーカーは磁気共鳴映像法のみ画像信号を生成し、そしてX線検査中に視認されることは殆どない。プラチナが用いられたとしても状況は同様であるが、ここでは二つの画像化方法間の効果の違いが特に際立つわけではない。
【0050】
X線マーカーは、ロッド型体に埋め込まれている粒子から形成される。ロッド型体は、これら幾つかのロッド型体を有し得る医療機器の一部であり、該幾つかのロッド型体は、同じマーカーを或いはパッシブMRマーカーを含んだ様々なマーカーをも具備し得る。かかるロッド型体は、好ましくは、WO2007/000148A2に記載されているように構成される。この内容については、当該文献を参照されたい。
【0051】
ロッド型体は、非金属フィラメント及び各マーカーの粒子を囲うマトリクス材から形成される。好ましくは、このマトリクス材は、エポキシ樹脂、PEEK、PEBAX,PE、PP、PU、シリコーン、ポリ乳酸ポリマーなどのプラスチック材である。フィラメントは、例えば、グラスファイバー、セラミックファイバー、Dacron、Kevlar(登録商標)、又は植物系ファイバー(例えば、絹、サイザル麻、麻など)である。
【0052】
ロッド型体は、弱導電性を有するように構成される。基本的にマーカーの粒子は、良好な導電性を持ち得る(例えば、鉄又はプラチナ粒子)。しかしこれら粒子は、マトリクス材により互いに絶縁される程度の濃度で与えられる。また少なくともこれら粒子は、15cm以上、好ましくは10cm以下又は5cm以下の長さを有する導電体を形成しない。
【0053】
通常、直径0.1〜0.7mm、好ましくは直径0.1〜0.3mmを有するロッド型体を用いることにより、医療機器を簡易に製造することができる。かかる医療機器は、様々なドーピング剤を具備するロッド型体から形成することにより、様々なマーカーを備えるようにして簡単な方法で実現することができる。ロッド型体は、医療機器を形成するため、更に一次的なマトリクス材に埋め込まれ得る。ロッド型体は、編組によっても医療機器を形成することができる。
【0054】
従って、少なくとも一つのX線マーカーと少なくとも一つのMRマーカーとから成る医療機器は、X線及びMRT検査の両方で用いることができる。また二つのマーカーの一つに起因する画像処理のかく乱を起こすこともなく、いずれの場合も明瞭にマーカーを視認できる。
【0055】
図3には、様々な画像化方法において様々なマーカーを試験する試験装置を示している。この試験装置は、プラスチック板6上に配置された五つの試験ロッド5を備えている。試験ロッドは、それぞれ二液型エポキシ樹脂から形成される。一つの試験ロッド5/1は、エポキシ樹脂のみからなる。二つの試験ロッド5/2及び5/3は、タングステン粉末によってドープされる。更に二つの試験ロッド5/4及び5/5は鉄粉末によってドープされる。この鉄粉末は、the Roth companyから、商品名Eisenrothipuran及び番号3718.1として販売されている。この鉄粉末は、少なくとも99.5%の純度を有する。粒子サイズは、4〜6μmの範囲内にある。タングステン粉末は、Merck KGaA companyからのタングステン微粉末99+であり、番号1.12406.0100として市販されている。このタングステン粉末は、少なくとも99.0%の純度を有する。粒子サイズは、20μm未満である。このタングステン粉末は、常磁性である。試験ロッド5/2は、10重量%のタングステン粉末を有する。試験ロッド5/3は、1重量%のタングステン粉末を有する。試験ロッド5/4は、10重量%の鉄粉末を有する。試験ロッド5/5は、1重量%の鉄粉末を有する。
【0056】
この試験装置は、(37℃の水で満たされた)槽中に、少なくとも5mmの厚さを持つ水層が試験装置の下部に存在し且つ少なくとも25mmの厚さを持つ水層が試験装置の上部に存在するように配置された。
【0057】
この試験装置は、T1強調シーケンス(
図4a、4b)、グラジエントエコーEPIシーケンス(
図4d)、T2強調シーケンス(
図4e)、及びグラジエントエコーシーケンス(
図4f)と共に、MRT処理を施した。さらに試験装置は、X線検査(CT)(
図4c)を施した。
【0058】
図面で明瞭に示したように、鉄粒子は、同等に低濃度としても、MRT処理における実質的なアーチファクトの理由となり、これらアーチファクトは、鉄含有領域の周辺における画像をかく乱する影響を有することにより、当該画像は分析には役立たない。この点は、特に、グラジエントエコーシーケンスを用いたMRT検査に当てはまる(
図4f)。
【0059】
しかしながら、試験ロッド5/2及び5/3が全くドープされていない試験ロッド5/1よりも高いコントラストを生じさせないことから、鉄よりも格段に高い原子番号を有するタングステンは、MRT検査中に視認されることは殆どない。10重量%のタングステン粉末を有する試験ロッド5/2は、X線検査中において良好に視認され得る(
図4c)。極低率のタングステンドーピングが施された試験ロッド5/3であっても、依然としてX線検査中に視認され得る。
【0060】
基本的に、X線マーカーの元素は通常MRマーカーの元素よりも高い原子番号を有することができ、また重複領域も存在する。プラチナ(原子番号78)を除き、好ましいパッシブMRマーカーは、46(パラジウム)より低い原子番号を有する。しかしながら、好ましいX線マーカーは、少なくとも56(バリウム)の原子番号を有する。
【0061】
この結果、MRT及びCTの両方で視認され得ると共に画像において如何なるかく乱も誘発しない医療器具が実現される。
【0062】
図5は、本発明による医療機器の更なる例を示し、該医療機器はガイドワイヤー1である。このガイドワイヤー1は、七つのロッド型体7、8を有する。中央ロッド型体7は、ガイドワイヤー1の中心に配置される。六つの放射状のロッド型体8は、中央ロッド型体7の周りに配置され、互いに等しく間隔が空けられている。全てのロッド型体7、8は、シージングマトリクス9に埋め込まれている。シージングマトリクス9の表面は、ガイドワイヤー1の表面を画定している。
【0063】
上述したように、ロッド型体7、8は、非金属フィラメントを含むマトリクス材から形成されている。ロッド型体に関する上記説明は、特に明記しない限り、以下のロッド型体7、8にも適用される。
【0064】
中央ロッド型体7は、放射状ロッド型体8よりも大きな直径を有する。この結果、中央ロッド型体7は、放射状ロッド型体8よりも高い剛性を有する。中央ロッド型体7はガイドワイヤー1の中央に配置されていることから、その高い剛性が医療機器全体の曲げ剛性に対する及ぼす影響は放射状ロッド型体8よりも小さく、これは中央ロッド型体7が医療機器の曲げ線上に配置されるためである。放射状ロッド型体8はより高い柔軟性を有し、このため放射状ロッド型体8は医療機器の曲げ剛性に対してそれほど大きな影響を及ぼさない。従って、適切な柔軟性を有する医療機器が得られる。
【0065】
図5に示した実施形態は、結果として高い強度と柔軟性とを備えた極細のガイドワイヤーが得られるので非常に有利である。また放射状ロッド型体8の放射状配置によって、ガイドワイヤー1は高いねじれ剛性を有する。
【0066】
さらに、医療機器の強度や柔軟性は、例えば中央ロッド型体無しで、ロッド型体の数を異ならせるまたは配置を変更することによって変更することができる。ガイドワイヤーの柔軟性は、必須の特徴であり、単独で様々な応用法に適応される。ガイドワイヤーの柔軟性は、中央ロッド型体及び/又は放射状ロッド型体の直径を変更しシージングマトリクスの組成を変更することにより変更され得る。医療器具が所望の強度と柔軟性を有するためには、シージングマトリクスによって、全てのロッド型体を完全に囲うようにすると好都合である。
【0067】
放射状ロッド型体8は、中央ロッド型体7と平行に延びることができる。しかし、放射状ロッド型体8は、中央ロッド型体7の周辺にらせん状に配置することも可能である。
【0068】
中央ロッド型体は、0.1〜0.4mm、好ましくは約0.2〜0.3mmの直径を有する。中央ロッド型体は、例えば、タングステンのナノ粒子(粒子サイズは約40〜50nm)によりドープされる。
【0069】
ロッド型体のマトリクス材に関するタングステン粒子の量は50重量%である。本実施形態では、エポキシ樹脂を残りの50重量%に与える。加えてこのロッド型体は、グラスファイバーから成る。
【0070】
かくして、ロッド型体の製造時においてタングステンのナノ粒子は、エポキシ樹脂の流動性に対して有利な影響をもたらすことになる。非ドープのロッド型体は、エーロシルの添加にともなって押し出され、これにより流動性を向上させる。もしタングステン粒子が使用される場合、かかるエーロシルをエポキシ樹脂に添加する必要はない。かくして、粒子が小さいほど、エポキシ樹脂の粘度が向上することになる。
【0071】
量の多いタングステン粒子では、これらタングステン粒子がX線及びMRマーカーの両方に作用する。マトリクス材に関するタングステン粒子の重量比率は、少なくとも1:2〜2:1とすべきである。タングステン粒子の量が多いほど、MRマーカーのそれらの効果は良好となる。MRマーカーのこの効果は、またロッド型体の大きさに依存し、従ってタングステン粒子の絶対量とタングステン粒子の粒子サイズとにも依存する。数μm〜約20μmの大きさのタングステン粒子は、
図4a、4b及び
図4d〜4fに基づいて上述したように、MRマーカーとして適していない。タングステン粒子が小さいほど、MRマーカーのそれらの効果は高くなる。かくして、マトリクス材に関するタングステン粒子の重量比率は、2:1〜3:1の範囲まで調節可能ということになる。
【0072】
放射状ロッド型体8は、0.10〜0.25mm、好ましくは0.15〜0.20mmの直径を有する。本実施形態では、一つの放射状ロッド型体8のみFe
3O
4粒子によりドープされる。この粒子は、約40〜50nmの粒子サイズを有する。この粒子は、100nm以下、好ましくは60nm以下のサイズを有すべきである。ドープされた放射状ロッド型体8では、Fe
3O
4粒子の1重量部が、マトリクス材の約10〜30重量部、好ましくは20〜25重量部に相当し、このマトリクス材は、再度エポキシ樹脂であることが好ましい。Fe
3O
4粒子はパッシブMRマーカーである。
【0073】
本発明の範囲内において、ロッド型体を、他の濃度及び他の粒子サイズによる他のパッシブマーカーでドープすることも勿論可能である。一つのマーカーと共に、好ましくは様々な複数のマーカーと共に、二つ以上のロッド型体を提供することも可能である。ロッド型体の数、配置及び直径も変更可能である。
【0074】
幾つかの様々なマーカーを一つのロッド型体に設けることも可能である。
【0075】
本発明の範囲内において、上述の被覆剤の一つを備えると共にアクティブMRマーカーを含む表面にこのガイドワイヤーを設けることもまた可能である。
【0076】
シージングマトリクス9は、熱可塑性エラストマー、好ましくはポリウレタン、特にはTecoflex(商標)又はMediprene(登録商標)である。
【0077】
Mediprene(登録商標)は、熱可塑性エラストマーであり、主に医療目的で使用される。Medipreneは、スウェーデンのVTC Elastoteknik ABにより提供されている。Mediprene(登録商標)は、Mediprene(登録商標)TO34007を意味すると理解され、これはSEBS(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン−エラストマー)から作られる熱可塑性エラストマーである。
【0078】
図5に示した医療機器は、好ましくは、ロッド型体及びシージングマトリクスの同時押出により製造される。
【0079】
様々なドーピング剤によるロッド型体の使用は、ガイドワイヤーに限定されない。様々なドーピング剤によるロッド型体は、カテーテル、ステント又はインプラントなどの他の医療機器にも使用され得る。
【0080】
上記好ましい実施形態の一つによるガイドワイヤー1に柔軟な先端(
図6)が具備されていることが好ましい。柔軟な先端10は、軸方向のナイロンスレッド11とポリウレタン体12とからなる。柔軟な先端10は、段階的にナイロンスレッドをコーティングすることで生成され、これにより柔軟な先端10は、鈍い(丸い)先端として形成され得る。この柔軟な先端は、接着接合によりガイドワイヤー1の前面に結合される。この柔軟な先端10は、上述したパッシブドーピング剤の一つによりドープされること及び/又はアクティブマーカーによりコーティングされることが好ましい。
【0081】
好ましくは、ガイドワイヤー1の前面と柔軟な先端10の対応接触面とが円錐形になるように研磨することにより、ガイドワイヤー1と柔軟な先端10との間の接触領域が拡大される。
【0082】
柔軟な先端10は、また、二つの接触面を熱することにより、ガイドワイヤー1に結合することも可能である。柔軟な先端10を化学溶媒で(例えば溶解グレードポリウレタンにおいて)可溶化することも可能であり、このようにして柔軟な先端10をガイドワイヤー1に結合することもできる。例えば、ポリウレタンが柔軟な先端10の材料として用いられる場合、適した溶媒は例えばTHFである。柔軟な先端10の材料としては、ポリウレタンに代えて、エポキシ樹脂、PEEK、PEBAX、PE、PP、シリコーン、ポリ乳酸又はMediprene(登録商標)も用いられる。軸方向のポリマースレッドは、他の材料からも形成でき、例えば、PEEK、PEBAX、PE、PP、シリコーン又はポリ乳酸から形成され得る。柔軟な先端は、軸方向のスレッドなしでも実現できる。
【0083】
ナイロンスレッドは、マーカーによりドープされることが好ましい。このナイロンスレッドは、柔軟な先端10の残りの材料のマーカーとは異なるマーカーによってドープされ得る。もしもスレッドなしの場合、柔軟な先端用の材料がマーカーによりドープされ得る。
【0084】
図7a〜7eには、MRT又はX線断層撮影を用いて生成された更なる試験装置を示している。
【0085】
この試験装置によって、一方でロッド型体そして他方で水中のガイドワイヤーが検査された。
【0086】
これらロッド型体は、一般的にグラスファイバーと共にエポキシ樹脂から構成される。以下の様々なロッド型体が検査された。
【0087】
(F)直径0.17mm;ドーピングなし
(G)直径0.17mm;Fe
3O
4ナノ粒子によりドープ;ドーピング剤とエポキシ樹脂との重量比が1:20
(H)直径0.27mm;タングステンナノ粒子によりドープ;ドーピング剤とエポキシ樹脂との重量比が1:1
(J)直径0.27mm;タングステンナノ粒子によりドープ;ドーピング剤とエポキシ樹脂との重量比が2:1
【0088】
検査したガイドワイヤー1は、基本的には
図5に示した構成を有し、この構成は、0.27mmの直径を有し、タングステンナノ粒子によりドープされた中央ロッド型体7と共に
図5に基づいて説明されている。放射状ロッド型体8は、0.17mmの直径を有する。五つの放射状ロッド型体8はドープされていない。放射状ロッド型体8のうちの一つは、Fe
3O
4ナノ粒子によりドープされる。
【0090】
(K)ポリウレタンから生成されたシージングマトリクスであり;タングステンナノ粒子の中央ロッド型体のドーピング量は、エポキシ樹脂との関連において、1:1の重量比であり、一つの放射状ロッド型体8はFe
3O
4によりドープされ、ドーピング剤とエポキシ樹脂との重量比が1:20である;
(L)Mediprene(登録商標)から生成されたシージングマトリクスであり;タングステンナノ粒子の中央ロッド型体のドーピング量は、エポキシ樹脂との関連において、2:1の重量比であり、一つの放射状ロッド型体8はFe
3O
4によりドープされ、ドーピングとエポキシ樹脂との重量比が1:20である。
【0091】
図7aにはT1強調MRTシーケンスを示し、
図7bにはT2強調MRTシーケンスを示し、
図7cにはMRTグラジエントエコーシーケンスを示し、そして
図7dにはMRT Angio TOFシーケンスを示している。
図7eには、ロッド型体及びガイドワイヤーのコンピュータ断層撮影図を示している。
【0092】
これら図面のいずれにおいても、非ドープのロッド型体Fは殆ど視認不可能である。試験装置における水の移動により、部分的に極低コントラストの跡が、MRTにおいて視認可能である。
【0093】
Fe
3O
4によりドープされた放射状ロッド型体は、MRT処理中、様々なコントラストによって視認できる。MRTグラジエントエコーシーケンス及びMRT Angio TOFシーケンスにおいてはコントラストが高く、二つのT1及びT2強調シーケンスにおいてはコントラストが低い。タングステンナノ粒子によりドープされたロッド型体Hは、MRTに関して同様の結果を示し、この場合二つのT1及びT2強調MRTシーケンスとのコントラストはロッド型体Gのコントラストよりも良好である。さらにロッド型体Hは、コンピュータ断層撮影(X線検査)であっても、優れたコントラストを生じさせる。
【0094】
タングステンナノ粒子(粒子サイズが、100nm以下、好ましくは60nm以下)によりドープされたロッド型体は、本発明の別個で独立した発想を示している。しかし、これは医療機器におけるかかるロッド型体の使用自体が、X線及びMRT検査の両方における医療機器の視覚化をもたらすからである。他のマーカーを使用することで、より良好なコントラストを達成することができ、部分的にはこれにより、更なるマーカーとの組み合わせは意味をなすが絶対に必要というわけではない。またタングステンナノ粒子も、ロッド型体において所定の濃度でX線及びMRT検査の両方において良好なコントラストを生じさせるという利点を有する。基本的にまた鉄粒子も、X線及びMR検査の両方においてコントラストを生じさせるのに適している。しかし鉄粒子の場合、該鉄粒子がより高濃度で大きなアーチファクトを生じさせ、これがより大きい周辺領域において、画像に深刻なかく乱を生じさせるという問題点がある。MRTに適した低濃度では、鉄粒子はX線検査において視認されない。
【0095】
さらに
図7a〜7dから、ドープされたロッド型体とドープされたロッド型体を含むガイドワイヤーとが試験されたMRTシーケンスにおいて全てはっきりと視認され得るということが分かる。