【実施例】
【0053】
実施例1:
SEQ ID NO:1の配列の固相合成 (手動)
原料と研究試薬:
アミノ酸 原料
Fmoc-L-Ala-OH、Fmoc-L-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-L-Asn(Trt)-OH、Fmoc-L-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-L-Cys(Trt)-OH、Fmoc-L-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-L-Gln(Trt)-OH、Fmoc-L-Gly-OH、Fmoc-L-Ile-OH、Fmoc-L-Leu-OH、Fmoc-L-Lys(Boc)-OH、Fmoc-L-Met-OH、Fmoc-L-Phe-OH、Fmoc-L-Pro-OH、Fmoc-L-Ser (tBu)-OH、Fmoc-L-Thr(tBu)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Tyr (tBu)-OH、Fmoc-His(Trt)-OH、Fmoc-L-Val-OH(Suzhou Tian-ma Medical Group、Final Chemical 社製)
研究試薬:HBTU(Suzhou Tian-ma Medical Group、Final chemical 社製)、HOBT(Suzhou Tian-ma Medical Group、Final chemical 社製)、DIEA(Sinopharm、Shanghai Chemical Reagents有限公司社製)。
【0054】
溶媒:DMF(Dikma社製)、DCM(Dikma社製)、アセトニトリル(Fisher社製)
樹脂:2-クロロトリチルクロリド樹脂(天津南開合成技術有限公司社製)
ピペリジン(Sinopharm、Shanghai Chemical Reagents有限公司社製)
TFA(J.T.Baker社製)、TIS(ALDRICH社製)、EDT 、TIS(ALDRICH社製)
窒素(上海Biou Gas Industrial Co.社製 )
無水エチルエーテル(Shanghai Shiyi Chemical Reagent有限公司社製)
化学はかり(Beijing Saiduoli Balance Co. Ltd.社製)
装置:
SYMPHONY、12チャンネルペプチド合成装置 (機種:SYMPHONY、ソフトウェア:バージョン.201.メーカー:Protein Technologies Inc)
島津 HPLC (ソフトウェア:Class-VP. 直列システム、メーカー:島津)
LABCONCO Lypholize(機種:Freezone Plus. 6、メーカー:LABCONCO、
遠心装置(Shanghai Anting Scientific Equipment Co.、 機種:TDL-40B)
SEQ ID NO:1の配列の固相合成 (手動)
1)樹脂膨張
2-クロロトリチルクロリド樹脂を反応容器に注入し、次に DMF (15ml/g)を添加のうえ30分攪拌。
【0055】
2) 第1アミノ酸の結合
溶媒をサンドフィルターで濾過する。Fmoc-L-Gly-OHを3倍モル過剰、及びDMFを反応容器に添加する。DMFに溶解して30分間攪拌。
【0056】
3) 脱保護
DMFを排出する。20% ピペリジン-DMF溶液(15ml/g)を添加して5分間静置。次に溶媒を排出する。次に20% ピペリジン-DMF溶液(15ml/g)を再度追加、15分間静置。
【0057】
4) モニタリング
ピペリジン溶媒を排出。樹脂ビーズをチューブに移動する。エタノールで3回洗い出す。次に、ニンヒドリン1滴、KCN1滴とフェノール溶液1滴を添加する。105C−110Cで加熱する。濃青に変色(陽性反応)。
【0058】
5) 洗浄
DMF(10ml/g)で2回、メタノールで2回、DMF(10ml/g)で2回洗浄。
【0059】
6) 凝縮
方法 a: 保護アミノ酸(FOMC-Asp-OH)の3倍モル過剰とHBTUをDMFに溶解する。この溶液を反応容器に添加して、直ちにNMM 10倍モル過剰を添加。30分間反応させる。
方法 b: 保護アミノ酸3倍モル過剰(FOMC-Asp-OH)とHOBTをDMFに溶解する。溶液を反応容器に加え、直ちにadd3モル過剰DICを添加する。30分間反応させる。
【0060】
7) 洗浄
DMF (10ml/g) で1回、メタノール (10ml/g)で2回、最後にDMF(10ml/g) で2回洗浄。
【0061】
8) 繰り返し
SEQ ID NO:1の配列に従い、ステップ2 からステップ 7を後続アミノ酸ごとに繰り返す。
【0062】
9) 最終アミノ酸
最終アミノ酸結合と脱保護後の樹脂洗浄方法は、下の通りである。
以下の試薬で洗浄する。
DMF(10ml/g)で2回、メタノール(10ml/g) で2回、 DMF(10ml/g)で2回、DCM(10ml/g)で2回。次に溶媒を排出し、樹脂を真空ろ過により10分間乾燥する。
【0063】
10) 樹脂からのペプチド切断
切断試薬: TFA 94.5%;H
2O 2.5%;EDT 2.5%;TIS 1%
切断時間: 2 時間。
【0064】
11) 乾燥と洗浄
窒素で上記の切断溶液を吹き付け乾燥して、エーテルで6回洗浄。室温で粗ペプチドを空気乾燥する。
【0065】
12) HPLCによる粗生産物の精製
粗ペプチドを水またはアセトニトリル少量に溶解。粗ペプチドは下の手順で精製される。
【0066】
ポンプ A : 0.1% トリフルオロ酢酸を100% 水に溶解。
【0067】
ポンプ B : 0.1% トリフルオロ酢酸を100% アセトニトリルに溶解。
【0068】
総流量: 1.0ml/min
容積: 30μl
波長: 220nm
勾配: 時間(分) A B
0.500 90% 10%
30.00 20% 80%
30.10 停止
<検出装置 A>
カラム: Venusi MRC-ODS C18 30x250mm。
【0069】
13) 精製後に溶液をフリーズドライして最終生産物を得る。
【0070】
14) 検証
最終生産物は、HPLCを用いて純度を検査した (97.1%、
図1)。分子量は、質量分光測定により検査した。理論分子量は 5203.98、実測分子量は 5206.1 (
図2)。最終生産物の配列は、中国科学院上海ライフサイエンス研究所プロテオミクス分析センターにより実施された(
図3)。
【0071】
15) 保管
白いパウダーは密封され−20 Cで保管された。
【0072】
実施例2:自動ペプチド合成装置 (SYMPHONY 合成装置)によるSEQ ID NO:1ペプチド合成
記録:
1〕ソフトウェアで、保護アミノ酸溶液、凝縮試薬、及び切断試薬の必要量を計算する。適量のDMFとDCMを装置の対応するボトルに添加する。
【0073】
2〕 100μmol FMOC- L-Gly-2-クロロトリチルクロリド樹脂を反応容器に添加する。15mg 遠心装置チューブを導管に入れて切断溶液を集積する。
【0074】
3〕プログラムの編集: 樹脂膨張時間は概して30分、脱保護時間は5分と15分 (2回)、凝縮時間が30分、及び切断時間は2時間とする。
【0075】
4〕装置の電源を投入してプログラムを実行する。
【0076】
5〕最後に、切断溶液をエーテルで沈殿させ、次に遠心分離し吹き付け乾燥、次にHPLCで粗ペプチドを精製する。最終生産物は純度をHPLCで検査した (97.1%、
図1)。その分子量 (SEQ ID NO:1) は質量分光測定により測定した。理論分子量は5203.98、実測分子量は5206.1 (
図2)であった。最終生産物の配列は、中国科学院上海ライフサイエンス研究所プロテオミクス分析センターにより確認された(
図3)。
【0077】
実施例3:ペプチドSeq. No.1の 肝臓 HSC 細胞量と活性への効果
材料と方法:
1.オスSDラット5匹、重量(250±25)g、DMEM 培地、パンクレアチン (EDTAを含む)、リポフェクタミン 2000、トリゾール、新生小牛血清(Invitrogenブランド)、プロテイナーゼE (プロナーゼ)、コラーゲナーゼ B、DNA 酵素(Roche社)、Nycodenz (Sigma社)、抗体p-FAK Tyr397、デスミンとα-平滑筋アクチン(α-SMA)、モノクロナール抗体(Santa Cruz 社)。
RT-PCRキット(MBI社)。
【0078】
2.培地HSC
SDラットから得たHSCを、プロナーゼ-コラーゲナーゼとニコデンツにより作成された勾配上で遠心分離した。1.5×10
5/ cm2で HSC細胞を 6ウェルプレート、または培養皿(100 mm径)に設置。培地は、20% 新生小牛血清によるDMEMとした。HSC細胞の純度は、ビタミンA自己蛍光と抗デスミン免疫細胞化学実験により同定した。細胞生存能力は、トリパンブルー染色により同定した。第1世代HSCの純度と生存能力は、それぞれ90%と95%であった。HSCは、無ECM条件下であれば自己活性的である。つまり、HSCは、α-SMAを発現でき、ビタミンA降下が消滅する。細胞融合後、活性化HSCはトリプシンにより開放されて増殖する。
【0079】
3.MTT アッセイ
ペプチド SEQ ID NO:1、(1μM)、24時間、48時間、または72時間。MTT アッセイを使用してHSC細胞の増殖を調べる。
【0080】
4.α-SMA mRNA発現を調べるためのRT-PCR試験
トリゾール試薬を使用して総RNAを抽出、次に2段階RT-PCRをキット説明書に従って実施した。
【0081】
α-SMA上流プライマー: 5’- AAGAGGAAGACA GCA CAG C TC-3’、
下流プライマー: 5’- GATGGATGGGAAAACAGC C-3’、
最終生産物: 101 bp α-SMA cDNA 断片。
【0082】
GAPDH上流プライマー:5’- ACCACAGTCCATGCCATC AC-3’、
下流プライマー: 5’- TCCACCACCCTGTTGCTGTA-3’、
最終生産物: 452bp GAPDH cDNA 断片。
【0083】
5.α-SMA蛋白質発現を試験するためのウエスタンブロット法
細胞を集積して細胞リーシスバッファーを添加し、 総蛋白質を抽出する。総蛋白質量をBradfordアッセイにより同定した。40μg 総蛋白質を10% SDS ポリアクリルアミドジェルを用いて検査した。抗α-SMAモノクロナール抗体を用いてジェルを検査した。
【0084】
6. 統計的計算
結果は x ±s、SPSS 10.0ソフトウェア、P <0.05による。
【0085】
結果
1. ペプチドSEQ ID NO:1 のHSC 細胞の増殖への効果
24 時間後、1μMでのペプチドSEQ ID NO:1の抑制率は、45.5 % ±5.8 %である。48または72 時間後、1μM でのペプチドSEQ ID NO:1の抑制率は、それぞれ、61.8 % ±4.3 %と85.6 % ±5.8 %である。
【0086】
2.α-SMA mRNAの発現へのペプチドSEQ ID NO:1の効果
静止状態HSCとは異なり、α-SMA mRNA発現は、活性化HSCの重要な特性である。RT-PCR実験によれば、48時間後にペプチドSEQ ID NO:1は、α-SMA mRNA発現を抑制する(
図4)。
【0087】
3. α-SMA 蛋白質発現へのペプチドSEQ ID NO:1の効果
ウエスタンブロット法実験によると、ペプチドSEQ ID NO:1は、48 時間にはα-SMA 蛋白質発現を減少させ始め、72 時間にはα-SMA蛋白質発現を著しく減少させる(
図5)。
【0088】
実施例4: 肝線維症の動物モデルにおけるペプチドSEQ ID NO:1の効果実験
肝臓損傷に対するペプチドSEQ ID NO:1の保護的効果を評価するため、効果性評価のため慢性肝線維症モデル(ラットCCl4 モデル) を使用した。
【0089】
結果により実証されたことは、治療高投与量(50μg/mg)と予防低投与量(10μg/mg)でのペプチドSEQ ID NO:1は、ラットCCl4 モデルでは、肝臓損傷パラメーターを著しく減少できる。治療群と予防群では、SEQ ID NO:1は多くの肝臓パラメーター(P<0.01 、P<0.05)を改善した。治療高投与量群(総蛋白質、アルブミン、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ (SGPT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース)、治療低投与量群(総蛋白質、アルブミン、グルコース)、予防高投与量群(総蛋白質、アルブミン、SGPT、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、グルコース)、予防低投与量群(総蛋白質、アルブミン、SGPT、グルコース)。
【0090】
対照群に比較すると、 ヒドロキシプロリンは慢性CCl4 肝臓損傷ネズミモデルで著しく増加する(P<0.05)。ヒドロキシプロリン量は、様々な治療群で低減した。治療高投与量群で最善な効果を得た(P<0.05)。
【0091】
組織学レポートによると、CCl4モデル群の肝組織は、構造の乱れを示した。肝細胞の80%以上に著しい脂肪症が見られ、肝臓細胞に多くの脂肪空洞が見られた。1つのケースでは、肝臓内繊維組織の表皮過形成がある。治療高投与量群では、2ケースで脂肪症と肝細胞(>80%)に脂肪空洞が発現し、2ケースが脂肪症と肝細胞(50-60%)内脂肪空洞が少なくなっており、4ケースはさらに少ない脂肪症と肝細胞(<30%)内脂肪空洞を示した。予防低投与量群全てのケースはより少ない脂肪症と肝細胞(60-80%)内脂肪空洞を示した。予防高投与量群では、5ケースがより少ない脂肪症と肝細胞(60-80%)内脂肪空洞を示し、3ケースはさらに少ない脂肪症と肝細胞(50-60%)内脂肪空洞を示した。
【0092】
まとめると、ペプチドSEQ ID NO:1は、ラット内でCCl4 が引き起こす肝臓損傷を改善し、血清生化学パラメーター、肝臓ヒドロキシプロリン量、及び肝臓の病理学的特徴を改善する。
【0093】
試薬と方法
1〕薬剤
ペプチド SEQ ID NO:1(実施例2);
Zhengda Tianqing社製注射用薬剤。
正の対照薬剤、Jiangsu Zhengda Tianqing Pharmaceutical Co. Ltd.製Gan-li-xin(グリチルリチン酸二アンモニウム)注射、10ml:50mg。
2〕動物
SDラット、180-220g、メスとオス(1:1)
3〕主な試薬
CCl4、Shanghai Lingfeng Chemical Reagents Co., Ltd製。Lot No: 061101;
ゴマ油、精製ピーナツオイル;
ヒドロキシプロリン試験キット(南京建成社)
4〕主装置
BS210S 化学はかり (0.1mg〜10g) (German Sartorius社製);
752C UV-Vis 分光光度計(上海第三分析装置社製) ;
遠心装置 (北京医療遠心装置社);
自動生化学試験装置(OLYMPUS Au 800、日本);
FEJ-200分析天秤(0.1〜200g)(福州Furi Hengzhibao Electric Co. Ltd.社製)
5〕実験
Rat CCl4 肝臓損傷モデル。
【0094】
投与群:
110ラット、重量180-220g、7 群:
(1)対照群: 食塩水、sc、2ml/kg、10ラット
(2)モデル群: 40% CCl4、sc、2ml/kg、17ラット
(3)Gan-li-xin 群: 25mg/kg、iv、10ml/kg、15ラット
(4)予防、高投与量群: 50μgペプチドSEQ ID NO:1 /kg、iv、10ml/kg、17ラット
(5)予防、低投与量群: 10μgペプチドSEQ ID NO:1 /kg、iv、10ml/kg、17ラット
(6)治療、高投与量群: 100μgペプチドSEQ ID NO:1 /kg、iv、10ml/kg、17ラット
(7)治療、高投与量群: 20μgペプチドSEQ ID NO:1 /kg、iv、10ml/kg、17ラット。
【0095】
モデル構成と投与方法
対照群を除き、40% CCl4 を皮下に週2回 (火曜日と金曜日) 群(2)〜(6)に注射、薬剤用量(0.2 ml/100 g、最初に0.5ml/100g)。CCl4 モデル構成は6週間行なった。モデル構成と平行して、50μg/kgと10μg/kgペプチドSEQ ID NO:1を、群(4)と(5)にそれぞれ6週間1日に1回静脈注射した。群 (3)、(6)、(7)については、第 5週からGan-li-xin 25mg/kg、100μg/kgと20μg/kgでペプチドSEQ ID NO:1 をそれぞれ2週間連続して1日1回注射した。
【0096】
試験パラメーター
全てのラットは、モデル構成と薬剤注射中に週に一回体重を測定した。体重に従い、薬剤投与を調整した。最終回CCl4注射から24 時間後に、肝臓重量パラメーターを試験した。
【0097】
血液を大腿動脈から抽出し、血清を分離した。次のパラメーターを試験した: 血清アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ビリルビン (TB)、アルカリホスファターゼ (ALP)、総蛋白質(TP)、アルブミン (ALB)、グロブリン(G)、アルブミン/グロブリン比(A/G)、グルコース (GLU)、総コレステロール(TCH)、トリグリセリド(TG)。
【0098】
肝臓ホモジネート: コレステロール(TCH)、トリグリセリド(TG)、アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を試験する。
【0099】
200g 肝臓。110 Cで乾燥後、ヒドロキシプロリン(HPA)を検査。
肝臓の一部は組織学的実験用にフォルマリン漬けとした。
【0100】
実験結果
1〕ネズミの体重、肝臓重量、および肝臓パラメーターへの薬剤効果
対照群と比較すると、CCl4肝臓損傷群の肝臓パラメーターは著しく増加した (P<0.01)。様々な治療群でこれらのパラメーターは改善し、治療高投与量群と予防低投与量群では統計的有意性の差異があった(P<0.05)。下の表1(*vs 対照群、# vs CCl4 モデル群)を参照されたい。
【表1】
【0101】
2)ネズミ生化学パラメーターへのへの薬剤効果
対照群と比較すると、CCl4肝臓損傷動物モデル群は、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、およびアルカリホスファターゼが増加、総蛋白質、アルブミン、グルコース、およびトリグリセリドが減少した。Gan-li-xin 群 (12.5mg/kg) の上記パラメーターがある程度改善され、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)とグルコース (GLU)(P<0.05)の統計的有意性も改善された。ペプチドSEQ ID NO:1 群 (治療と予防群) でも上記パラメーターは改善され、統計的有意性も改善された (CCl4 モデル群より):治療高投与量群(TP、ALB、ALT、AST、ALP、GLU)、治療低投与量群(TP、ALB、GLU)、予防高投与量群(TP、ALB、ALT、AST、GLU)、予防低投与量群(TP、ALB、AST、GLU)。詳細は表2を参照されたい(*vs 対照群 、# vs CCl4 モデル群)。
【表2】
【0102】
3)ネズミ肝臓内ヒドロキシプロリン量への薬剤効果
対照群と比較すると、ヒドロキシプロリン量はCCl4損傷肝臓モデル群(P<0.05)では著しく増加した。各治療群でヒドロキシプロリン量は減少し、治療高投与量群のそれとは統計的有意性の差異があった(P<0.05)。表3を参照されたい(*vs 対照群、#vs CCl4 モデル群)。
【表3】
【0103】
4)組織学的実験
対照群は、規則正しい構造を示した。CCl4モデル群の肝組織は、構造の乱れを示した。肝細胞の80%以上が脂肪症を示し、肝臓細胞の脂肪空洞を発現した。1つのケースでは、肝臓内繊維組織の表皮過形成がある。治療高投与量群では2ケースで脂肪症と肝細胞(>80%)脂肪空洞が見られ、2ケースでは脂肪症が少なくなったのと肝細胞内脂肪空洞が減少(50-60%)、4ケースはさらに少ない脂肪症と肝細胞内脂肪空洞(<30%)を示した。予防低投与量群の全ケースで、より少ない脂肪症と肝細胞内脂肪空洞(60-80%)が示された。予防高投与量群においては、5ケースがより少ない脂肪症と肝細胞内脂肪空洞(60-80%)を示し、さらに、3つのケースでは肝細胞の脂肪症と脂肪空洞はさらに少なかった(50-60%)。
【0104】
実施例5:ペプチドSEQ ID No:1の生体抗癌効果性評価
装置
デジタルウォーターバス: HH-4 (国華電力社製)
インキュベーター: HERA 細胞150 (Thermo Electron Corporation社製)
顕微鏡: BDS200-PH (重慶 Aote 光学装置社製)
卓上遠心装置: TGL-16G (Shanghai Surgical Device Co.社製)
クリーンベンチ: SW-CJ-IFD (蘇浄集団Antai社製)
ボーテックス: XW-80A (上海医科大学装置社製)
逆位の位相差顕微鏡: XSZ-D2 (重慶光学装置社製)
マイクロプレートリーダー:モデル-550 (Bio-Rad社製)
天秤: HC-TP-12 (Tianjin Balance 装置社製)
1.
細胞株
ヒト肝臓癌細胞株(SMMC-7721、 BEL-7402、 BEL-7402)は国家医療科学院細胞バンクと中国科学院上海細胞株研究所から購入した。
【0105】
1.
細胞培養
全細胞株は37C、5% CO2、飽和湿度中のインキュベーターで培養した。培地は、10%加熱失活FBS、ペニシリン100μ/ml、ストレプトマイシン 100 μ/mlを含むRPMI1640媒地とした。48 時間後に培地を交換した。細胞は、0.25%トリプシンで遊離されて増殖した。実験で使用した細胞は対数期であった。細胞生存能力は、トリパンブルー染色により同定された。
【0106】
2.
方法
対数期細胞を採取し、 0.125%トリプシン+ 0.01% EDTAで遊離させ、細胞を2-4 X 10
4 細胞/mlまで希釈する。細胞は96 ウェルプレート(180 μl/ウェル)に設置され、37 C CO2 インキュベーターで24時間培養された。培地を交換後、ペプチドSEQ ID No:1 をウェルに添加(20μl/ウェル)して、72時間培養した。MTTを96 ウェルプレート(20 μl/ウェル)に添加し、4 時間培養した。培地を除去し、DMSO (150μl/ウェル)を添加した。プレートは10分間振とうした。7つの濃度点 (0.1〜10 μM) を検査した。570 nMでの吸光度をウェル毎に測定し、IC50を計算した。
【0107】
IC50 = (ペプチド無しのウェルにおけるO.D.−ペプチド有りのウェルにおけるO.D.)/ペプチド無しのウェルにおけるO.D.
3.
結果
実施例1 からのペプチド SEQ ID No:1 は、SMMC-7721、BEL-7402、およびBEL-7404において、それぞれ1.25、1.78、および2.33μMにおけるIC50では著しく肝臓癌細胞の増殖を阻害した。
【0108】
実施例6: 生体での抗癌効果実験
実験動物: メス BALB/cA ヌードマウス、35-40 日齢、重量18-22 g。上海Silaike実験動物 Co. Ltd. 認証番号: SCXK(Shanghai)2007-0005から供給された。
【0109】
異種移植ヌードマウスの腫瘍は、100〜300mm
3 まで成長した。腫瘍マウスを異なる群に分け、薬剤比較試験を実施した。下の実験では、負の対照群に12匹のヌードマウス、試験薬剤を投与する6匹ヌードマウス群として行なった。腫瘍直径は毎週3回計測され、マウス重量も同時に測定した。
【0110】
T/C (相対的腫瘍抑制率)%を下の通り計算した。
【0111】
(1)腫瘍容積TVを下の通り計算した。
TV = 1/2×a×b
2
aとbは長さと幅である。
【0112】
(2)相対的腫瘍量RTVを下の通り計算した。
RTV = TV
t/TV
0
TV
0は薬剤使用開始時の腫瘍量 (d
0)、TV
t は後の時点での腫瘍の量。
【0113】
(3)相対的腫瘍抑制率T/C(%)を下の通り計算した。
【0114】
T/C(%)= T
RTV/C
RTV×100
T
RTV:治療グループRTV 、C
RTV:負の対照RTV
1)肝臓癌
実施例1および2からのペプチドSEQ ID No:1は、異種移植肝臓癌ヌードマウスモデル(H22) を1 mg/kgでは抑制率67.8%により抑制した。これは、正の対照であるタキソールの抑制率(10 mg/kg)に近い。1 mg/kgでは、実施例1のペプチドSEQ ID No:1は、異種移植肝臓癌ヌードマウスモデル(BEL-7402)を39.7%で抑制した。
【0115】
ペプチドSEQ ID No:1は、尾静脈(IV)を通して投与され、投与量は0.5mg/kg、0.25mg/kg、0.125mg/kg、および0.0625mg/kgを一週間に6回とした。ドセタキセルを正の対照として、投与率は20mg/kg、週に一回とした。負の対照は食塩水とした。異種移植ヌードマウスを3週間治療した。
【0116】
ヒト肝臓癌BEL-7402ヌードマウスにおけるペプチドSEQ ID No:1 0.5mg/kg、0.25mg/kg、0.125mg/kg でのT/C(%)は、それぞれ64.90、69.06、62.10となった。最善のT/C (%)は、投与量0.0625mg/kgで58.56%を得た。このことから、ペプチドSEQ ID No:1は肝臓癌のインビボでの増殖を抑制できる。
【0117】
2)胃癌
ペプチド SEQ ID No:1は、尾静脈(IV)を通して、投与量1mg/kg、0.5mg/kg、0.25mg/kg、0.125mg/kg、および0.0625mg/kgで一週間に6回注入された。5-FUを正の対照として、投与量25mg/kgで週に一回投与した。負の対照には食塩水を与えた。異種移植ヌードマウスを3週間治療した。
【0118】
ヒト胃癌SGC-7901 ヌードマウスにペプチドSEQ ID No:1を 0.125mg/kg で投与したT/C(%)は、47.66%であった。5-FUでのT/C(%)は、68.71%であった。このことから、ペプチドSEQ ID No:1 はインビボでの胃癌増殖を強く抑制する。
【0119】
3)乳癌
ペプチドSEQ ID No:1を尾静脈(IV)から投与量2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kgで、一週間に6回投与した。ドセタキセルを正の対照とし、投与量は20mg/kg、週に一回投与した。負の対照は食塩水を与えた。異種移植ヌードマウスは、4週間治療された。
【0120】
ヒト乳癌MDA-MB-435 ヌードマウスにおいて、0.5mg/kg でペプチドSEQ ID No:1を投与したT/C(%) は、49.40%であった。ドセタキセルでの T/C(%) は、16.51%であった。以上から、ペプチドSEQ ID No:1は、インビボでの乳癌増殖を強く抑制しうる。
【0121】
4)肺癌
ペプチド SEQ ID No:1を、尾静脈(IV)を通して投与量0.5mg/kg、0.25mg/kg、0.125mg/kgで、一週間に6回投与した。ドセタキセルを正の対照として、投与率は20mg/kgで週に一回投与した。負の対照は食塩水を与えた。異種移植ヌードマウスが3週間治療された。
【0122】
ヒト肺癌A549ヌードマウスでペプチドSEQ ID No:1を0.25mg/kg、0.125mg/kgで投与したT/C(%)は、47.98および48.96%になった。ドセタキセルでのT/C(%)は、18.60%であった。このことから、ペプチドSEQ ID No:1は、インビボでの肺癌成長を強く抑制できる。
【0123】
異種移植腫瘍マウスモデルの全てにおいて、マウスの体重は異なる濃度のペプチドSEQ ID No:1の影響を受けなかった。これにより、ペプチドSEQ ID No:1の安全なプロファイルが実証された。正の対照である化学療法剤により、マウスの体重は大きく影響された。
【0124】
実施例7: 肝臓癌細胞遊走能力の抑制
実施例1のペプチド SEQ ID No:1は、ヒト肝臓癌細胞BEL-7402の基底膜からの遊走を 0.01、0.1、または1 mg/ml (12時間培養)で抑制する。
【0125】
図6の示すところは、ペプチドと癌細胞を混ぜて12 時間培養した後、ペプチドSEQ ID No:1が基底膜への癌細胞付着を抑制したことである。
図7は、ペプチドと癌細胞を混ぜて12時間培養した後、ペプチドSEQ ID No:1 基底膜を通る癌細胞の遊走能力を抑制する様子を示す。
【0126】
実施例8: PDGFRの細胞間Ras-Raf 信号伝達経路におけるペプチドSEQ ID No:1の阻害効果
様々な濃度のペプチドSEQ ID No:1をヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)とともに6時間培養した。蛋白質をこれらの細胞から抽出して、ウエスタンブロット法で処理した。p-stat1 用抗体: 対リン酸化-Tyr701抗体; p-MEK1/2用抗体: リン酸化-Ser217/221 ペプチド抗体; p-Erk1/2用抗体: リン酸化-Ser202/204 抗体。すべてのレーンに同量のタンパク質を負荷するために、ベータアクチンを対照とした。ウエスタンブロット法により、濃度10μg/ml (2μM)ではペプチドSEQ ID No:1が大きくErk1/2 のリン酸化反応を抑制したことが示された。これは、Ras-Raf経路の下流である。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
SEQ ID NO:1の配列を含むペプチド、その変異体またはその活性誘導体。
[2]
[1]に記載のペプチドであって、下記からなる群より選択されるペプチド:
(i)SEQ ID NO:2の配列、
(ii)SEQ ID NO:2の配列(任意のシステイン残基がセリン残基に変化している)、
(iii)SEQ ID NO: 3の配列、または
(vi)SEQ ID NO:3の配列(任意のシステイン残基がセリン残基に変化している)。
[3]
[2]に記載のペプチドであって、前記ペプチドは、組換型ペプチド、天然ペプチドおよび合成ペプチドからなる群より選択されるペプチド。
[4]
[1]に記載のペプチドをコードするヌクレオチド配列。
[5]
ヒトまたは動物の組織線維症の予防または治療のための医薬の調製における、[1]または[2]に記載のペプチドの使用。
[6]
[5]に記載の使用であって、前記組織は、ヒトまたは動物の肝臓、腎または肺を含む使用。
[7]
ヒトまたは動物の原発性癌および癌転移の予防または治療のための医薬の調製における、[1]または[2]に記載のペプチドの使用。
[8]
ヒトまたは動物の組織線維症の予防および治療のための医薬組成物であって、該医薬組成物は、[1]または[2]に記載のペプチドと薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
[9]
[8]に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、ヒトまたは動物の組織線維症を予防および/または治療するその他の医薬をさらに含む医薬組成物。
[10]
[8]に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、経口投与、皮下注射投与、皮内注射投与、筋肉内注射投与、血管内注射投与、または経鼻投与のようないずれかのその他の投与の形態である医薬組成物。
[11]
ヒトまたは動物の癌を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、[1]または[2]に記載のペプチドと薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
[12]
[11]に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、ヒトまたは動物の癌を治療するその他の医薬をさらに含む医薬組成物。
[13]
[11]に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、Gleevec等のその他の化学療法剤をさらに含む医薬組成物。
[14]
[8]または[11]に記載の医薬組成物の投与方法であって、[1]または[2]に記載のペプチドを投与するステップを含み、前記ペプチドは、筋肉内、静脈内、皮下、経口、直腸挿入、及び経皮からなる群より選択される態様で投与される投与方法。