特許第5734856号(P5734856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5734856癌及び線維症疾患の治療に使用される医薬及び組成物ならびにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734856
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】癌及び線維症疾患の治療に使用される医薬及び組成物ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20150528BHJP
   C07K 14/49 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   C07K14/49ZNA
   A61K37/02
   A61K45/00
   A61P1/16
   A61P7/00
   A61P11/00
   A61P9/00
   A61P13/12
   A61P35/00
   A61P35/04
   A61P43/00 111
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-530354(P2011-530354)
(86)(22)【出願日】2009年9月21日
(65)【公表番号】特表2012-504941(P2012-504941A)
(43)【公表日】2012年3月1日
(86)【国際出願番号】CN2009074048
(87)【国際公開番号】WO2010040305
(87)【国際公開日】20100415
【審査請求日】2012年9月21日
(31)【優先権主張番号】200810200937.8
(32)【優先日】2008年10月9日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511091128
【氏名又は名称】ファン、ラン
【氏名又は名称原語表記】HUANG, Lan
(73)【特許権者】
【識別番号】511091139
【氏名又は名称】ジョウ、ファ
【氏名又は名称原語表記】ZHOU, Hua
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ラン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ、ファ
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、シェンタオ
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−525086(JP,A)
【文献】 特表2006−517586(JP,A)
【文献】 国際公開第00/037641(WO,A1)
【文献】 J Biol Chem,2005年,vol.280, no.29,p.26856-26862
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは動物の組織線維症および肝臓癌の予防または治療のためのペプチドであって、該ペプチドはSEQ ID NO:1の配列からなるペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドであって、前記ペプチドは、組換型ペプチド、天然ペプチドおよび合成ペプチドからなる群より選択されるペプチド。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド
【請求項4】
ヒトまたは動物の組織線維症の予防または治療のための医薬の調製における、請求項1に記載のペプチドの使用。
【請求項5】
請求項4に記載の使用であって、前記組織は、ヒトまたは動物の肝臓、腎または肺を含む使用。
【請求項6】
ヒトまたは動物の原発性癌および癌転移の予防または治療のための医薬の調製における、請求項1に記載のペプチドの使用。
【請求項7】
ヒトまたは動物の組織線維症の予防および治療のための医薬組成物であって、該医薬組成物は、請求項1に記載のペプチドと薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、ヒトまたは動物の組織線維症を予防および/または治療するその他の医薬をさらに含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、経口投与、皮下注射投与、皮内注射投与、筋肉内注射投与、血管内注射投与、または経鼻投与のようないずれかのその他の投与の形態である医薬組成物。
【請求項10】
ヒトまたは動物の癌を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、請求項1に記載のペプチドと薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、ヒトまたは動物の癌を治療するその他の医薬をさらに含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、Gleevec等のその他の化学療法剤をさらに含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線維症疾患、原発性癌、癌転移の予防及び治療に使用する同じ3−D構造を持つペプチドとその活性誘導体の組成物に関する。このペプチドとその活性誘導体は、細胞外レベルでPDGFがそのレセプターと結合するのを阻止することにより、PDGFR信号伝達を阻害する。
【背景技術】
【0002】
1)線維症疾患とPDGF及びPDGFRファミリー
外的因子により刺激または損害を受けると、器官(または組織)肝線維症、心筋、腹膜線維症、椎間線維症、骨髄線維症、肺線維症、腎線維症等の異常な線維症を形成する。異常線維症は多くの病気を引き起こす。例えば、肝線維症は肝硬変、肝臓癌の原因となり、腎線維症は様々な尿細管や尿細管間質性病変の悪性転換をもたらし、後期腎不全の主要な原因である。肺線維症は肺コンプライアンス疾患、肺容量の減少、増殖性機能障害疾患、VA/VQ不均衡、さらには肺不全に至らせ、5年以内生存確率は50%より少ない。
【0003】
研究によると、肝線維症、骨髄線維症、肺線維症、及び腎線維症の原因は、PDGFファミリー及びPDGFRの過剰発現と関わっている。
【0004】
慢性肝疾患の三段階は、1) 肝炎、2) 肝線維症、及び3) 肝硬変と進む。慢性線維症は肝洞様毛細血管の重要な構造に障害を発生させ、肝機能障害を発生させ、場合により肝硬変まで進行する。肝線維症を治療できないと、場合により肝硬変にまで進行する。
【0005】
炎症により肝細胞が死ぬか影響されると、肝線維症が細胞外基質(ECM)の不均衡により形成され、内皮下Disse腔内部には繊維性コラーゲンI型が堆積する傾向を示す。ウィルス肝炎、化学的傷害、及び脂肪肝は、全て破壊的肝臓病である肝線維症に至る場合がある。伝染病研究報告によると、ウィルス感染した肝炎患者の1/4は慢性肝炎患者になる。慢性肝炎患者全体のうち、5-20%が肝硬変を発病する。肝硬変患者のうち、50%は場合によっては肝臓癌となる。このため肝線維症が形成されると、普通の条件で逆転させるのは極めて困難である。肝線維症は肝機能障害に至り、人体の健康に損害を与える。
【0006】
多くの異なる種類の肝細胞が肝線維症に影響するとはいえ、肝星細胞(HSC)が病気の進展に中心的機能を果たしている。
【0007】
健康な肝臓では、HSCの量は極めて小さく、HSC対正常な肝細胞の比率は1:20、HSCの容積は肝臓の容積の1.4%である。HSCには主として次の機能がある。1) ビタミンAの貯蔵と代謝、2) 主にタイプI、III、及びVIコラーゲンのECM堆積物の少量合成及び分泌、3) SEC(類洞内皮細胞)を囲むように突発、内皮細胞を補助し、類洞の大きさを調節、 4)非コラーゲン糖蛋白質及び蛋白質炭水化物を合成する。
【0008】
研究によると、肝線維症は、肝組織内でのHSC活性化が原因である。mRNAと蛋白質レベルでのPDGF-CとPDGFレセプター(PDGFR)の過剰発現は、初期事象のひとつである。活性化HSCと筋繊維芽細胞は、数種類の前線サイトカインと成長因子を生成し、これらがパラクリンと自己分泌効果により線維症プロセスを永続させる線維化プロセスである。PDGF-BB とTGF-β1は、線維形成の2つの主因子である。両方の成長因子の発現が増大すると、コラーゲンとTIMP-1とTIMP-2分泌の過剰発現を誘発してコラーゲン分解を阻害する。これらの全ての事象は、肝組織内のECM堆積とコラーゲンの大量堆積の不均衡を発生させる。これが、HSCを筋線維芽細胞状(MFB)に変える。このため、周囲の肝細胞がコラーゲンで包囲され、これらの肝細胞が正常に機能できなくなる。
【0009】
肝線維症が進展すると、肝組織充血と脂肪肝の形成に至り、肝臓癌となることもある。このため、肝線維症を予防または治療できる薬品は、肝臓癌のためのよい補助治療である。
【0010】
血小板由来成長因子(PDGF)ファミリーには4種類あり(PDGF-A、 -B、 -C、 -D)、さらに2つのレセプター: PDGFR-αと-βを持つ。傷の治癒、アテローム硬化症、線維症、及び悪性腫瘍で重要な役割を果たす。PDGF-Cは、最近発見されたサイトカインである。ホモ二量体PDGF-CCを形成し、間葉細胞に対して、PDGF−AA、PDGF−AB、及び、PDGF−BBよりも強力な生体活性がある (Gilbertson その他 JBC 276(29)、 27406 (2001))。
【0011】
リアルタイムPCRテクノロジーを使用して、Breitkopfのチームは初代培養された分化転換HSC細胞におけるPDGF-Cの発現特性を分析した。これは、PDGF-BB またはTGF-β1による細胞の刺激があるかないかを見る肝線維形成の試験管内モデルシステムである。HSC細胞がMFBに分化転換すると、PDGF-C mRNAが強く誘発された。2日目から8日目まで PDGF-Cが最大5倍増となった。この研究によると、PDGF-Cは肝線維形成で特定の機能を果たすようである (Breitkopf その他、サイトカイン 31、 349 (2005))。
【0012】
PDGF-Cは、多ドメイン蛋白質(345個の アミノ酸)であり、N末端ドメイン (残基46−163)を構成し、ニューロピリン-1のCUBドメイン、NP-1 及び C末端ドメイン (残基235-245、 GFD、成長因子ドメイン)とは相同性であり、他のPDGFメンバーとの間には23%の相同性がある。これら2つのドメインは、血液中でプロテアーゼ消化により分離されることができる。PDGF-Cは、PDGFR-αとPDGFR-βに直接結合することができる。拮抗実験と免疫原性析出実験によると、PDGF−CC (PDGF-C ホモ二量体)は、PDGFR-α とPDGFR-βによく結合する。 (Gilbertson その他 JBC 276(29)、 27406 (2001))。さらに、PDGF-CCは、PDGFR -αとPDGFR-βのチロシン リン酸化反応を強力に活性化する。PDGF-CCのGFD ドメインは、PDGFR α/βまたはPDGFRβ/βホモ二量体、及びPDGFRα/βヘテロニ量体によく結合できる。
【0013】
腎線維症は、腎尿細管と細胞間物質の病理的変化の結果である。腎線維症は、あらゆる腎疾患と大規模な腎不全の一般的経路である。病理的特性は、ECM堆積と糸球体細胞の損失に見られる。腎疾患の開始と進展は複雑であり、PDGF、TGF-β、結合組織増殖因子(CTGF)等の多くの因子が関わる。PDGFは、メサンギウム細胞増殖や腎尿細管と細胞間物質の線維症を誘発することにより腎疾患に影響する。健全なラットにPDGF-AAを腎乳頭状部に追加したところ、細胞移動に影響する。PDGF-BBは、腎尿細管と細胞間物質で若干発現し、DNA 合成と有糸分裂を誘発する。PDGF-CCは、糸球体内皮細胞、糸球体内皮細胞s、血管平滑筋細胞、糸球体毛細管内皮細胞に発現する。糸球体間質細胞、腎上皮細胞、及び間質性細胞が損傷を受けると、PDGF-CC発現が高まる。PSGF-CCの有糸分裂活性作用は、PDGF-AAより強くPDGF-BBより弱い。
【0014】
慢性腎炎症プロセス中には、間質線維芽細胞細胞が増殖し、その活性化形態は筋線維芽細胞 (MyoF)である。MyoFは、α-平滑筋アクチン(α-SMA)を発現することができ、尿細管間質性線維症に寄与する。PDGF-AAまたはPDGF-BBをマウス尿細管間質性物質に7日間連続して注入したところ、PDGF-AAは効果が無いがPDGF-BBが尿細管間質性線維症を注入量に依存して誘発する。Liその他は、PDGF-CCが繊維芽細胞細胞の増殖原因であることを発見した。研究データの実証するところによると、PDGF-CC異常発現が尿細管間質性線維症に連関することがわかっている。
【0015】
抗Thy1.1腎炎マウスでは、PDGFRチロシンキナーゼ阻害因子が、糸球体間質細胞増殖、活性化糸球体間質細胞量及びType IVコラーゲン堆積を相当減少させた。そのメカニズムは、STI571がATPのチロシンキナーゼへの結合を阻害するため、リン酸化反応と生体情報伝達が抑制される。上記のデータが実証したところでは、PDGFR経路への阻害因子は、糸球体硬化を相当容易にする。
【0016】
病理的状態のもとでは、PDGF発現は増大する。過剰発現したPDGFは、尿細管間質性腎細胞形質転換、炎症性細胞浸潤、及びサイトカイン生成を引き起こし、尿細管間質性線維症と悪性腎疾患に至らせる。PDGF合成または活性の減少または抑制は、腎線維症の治療にある影響がある。
【0017】
PDGF-BまたはPDGF-Dの注入または過剰発現は、血管糸球体間質増殖及び腎線維症を誘発する。干渉実験では、PDGF-Cが尿細管間質性線維症を誘発することが実証された。PDGF-B、-Dは、血管糸球体間質増殖と腎線維症の主要因である。従って、PDGFファミリーは、腎疾患の成長因子であり、糸球体間質細胞の増殖を強く刺激する。
【0018】
今のところ、この分野は、肝線維症、腎線維症、及び肺線維症等の線維症疾患の予防と治療のための効果的な製品を必要としている。
【0019】
2)癌
PDGFRの二量体化と自己リン酸化反応は、レセプター-リガンド相互作用により発生する。リン酸化チロシン残基は、特定アミノ酸残基と結合すると、細胞間信号伝達分子のSrc 相同2ドメイン(SH2)と相互作用する。これらに含まれるものには、ホスホリパーゼγ(PLC-γ)、Ras GTPase活性化蛋白質(Ras-GAP)、PI3Kのp85サブユニット、成長因子レセプター結合蛋白質2 (Grb 2)、Syp (チロシン固有 ホスファターゼ)、Src相同及びコラーゲン蛋白質(Shc)、さらにSrcがある。なかでも、ミトーゲン活性化蛋白質キナーゼファミリーの一種 (ERKやJNK)、及びフォーカルアドヒージョンキナーゼ (FAK、 インテグリン信号伝達 経路の仲介者)等の下流信号伝達分子を活性化することにより、これらの信号伝達分子がさらに生体情報伝達経路に伝達する。これらの信号は、核に入り、1組の即時初期応答遺伝子の発現を刺激する。この遺伝子は、PDGF誘発プロセスを仲介する。このプロセスには細胞周期、細胞移動、転換がある。
【0020】
これまでの20年間の研究を見ると、PDGFがヒト腫瘍で主な役割を果たすことが判明した。生体でのv-sis発癌遺伝子産物の過剰発現(p28v-sis)またはこれらのレセプターを発現する細胞内PDGF-Bは、転換を推進する。このため、自己分泌メカニズムが腫瘍発生にあることを示している。最近の研究では、癌発生時パラクリンPDGF信号伝達が重要な役割を果たすことがわかっている。これは、上皮-間質相互作用が調節されることによる。ヌードマウスを使い実証されたことは、間質細胞のPDGF活性化が不死ヒトケラチン生成細胞の腫瘍発生変換に帰結することである。PDGF免疫染色の増加は、軟組織主用と後期乳腫瘍で検出された。
【0021】
PDGF-またはPDGFR欠如マウスの致死フェノ種類には、心臓血管と血液学的欠陥がある。血管内皮細胞で生産されたPDGFは、PDGFRを発現する血管平滑筋細胞/血管周囲細胞前駆体の補充および増殖を推進する。PDGF/PDGFRパラクリン信号伝達ループが仲介する走化性及びミトーゲン活動は、血管の形成、支脈、維持には欠かせない。胚形成と同様、PDGFは、ヒト腫瘍では血管形成に重要な役割を果たす。腫瘍成長と転移に必要とされる腫瘍血管形成は、細胞種類と細胞外因子を多くともなう複雑な高度に調整されたプロセスである。PDGFも、血管形成と腫瘍転移に関わっている。このため、PDGF信号伝達経路を阻害すると、原発性と転移性癌を軽減する可能性がある。(Yu その他、 J of Biochem and Mol Bio、 36(1)、 49 (2003))。
【発明の概要】
【0022】
本発明の目的は、PDGFR-αまたは-βの細胞外ドメインに結合する活性があるが、それ自体はニ量体化しないペプチドの成分またはその断片またはその相同(homologous)ペプチド、またはその誘導体を提供し、その用途はヒトと動物における線維症疾患と癌(原発性と転移性癌)を予防し治療することにある。
【0023】
この特許の発明者らは、一連のペプチド配列を発見した。これらはPDGF-C (PDGF-CのC末端)のGFD ドメインにあるペプチド配列断片であり、PDGF-CのGFDドメインにあるペプチド配列を基質として用いる一部のアミノ酸変成を伴う一連のペプチドである。これらのペプチドは3-D構造を持ち、PDGFR-αまたは-βに結合でき、PDGFファミリーメンバーの活性を持たないものである(二量体化不可)。このことから、これらのペプチドは、PDGFファミリーとPDGFRの結合を阻害し下流信号伝達経路を遮断するため、ヒトと動物の線維症疾患と癌(原発性と転移性癌)の予防と治療のための機能を実現できる。
【0024】
本発明は、同じ3-D 構造を持つペプチドまたはその変異体またはその他の活性誘導体を提供する。本発明によるペプチドには、SEQ ID NO:1の配列が含まれる。
【0025】
本発明による実施例の一つは、ペプチドを下から構成されるグループから選択する。
【0026】
(i)SEQ ID NO:2の配列、
(ii)SEQ ID NO:2の配列(任意のシステイン残基がセリン残基に変化している);
(iii)SEQ ID NO:3の配列、または
(vi)SEQ ID NO:3の配列(任意のシステイン残基がセリン残基に変化している)。
【0027】
本発明の実施例の一つにおいて、上記のペプチドは、天然材料、または化学的合成により精製された遺伝子組換源から得られる。
【0028】
本発明はさらに、本発明によるペプチドをコード化するヌクレオチド配列を提供する。
【0029】
本発明はさらに、ヒトまたは動物組織の線維症および癌の予防または治療のための医薬の製造における本発明によるペプチドの使用を提供する。
【0030】
本発明の実施例の一つにおいて、前記組織は、ヒトと動物の肝臓、腎、または肺を含む。
【0031】
本発明の実施例の一つにおいて、前記癌は、ヒトと動物の原発性と転移性癌を含む。
【0032】
本発明はさらに、ヒトまたは動物組織の線維症および癌の予防および治療のための医薬組成物を提供する。その構成は、本発明によるペプチドと薬学的に許容可能な担体、例えばBSA、 PEG、アルブミンを含む。
【0033】
本発明の実施例の一つにおいて、医薬組成物は、Gleevecに限らず、その他の化学療法剤をさらに含む。
【0034】
本発明の実施例の一つにおいて、医薬組成物は、経口投与、皮下注射投与、皮内注射投与、筋肉内注射投与、血管内注射投与および任意のその他の投与、例えば経鼻投与のかたちをとる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施例1のペプチドのHPLCグラフ。
図2】実施例1のペプチドの質量分光測定グラフ。
図3】実施例1のペプチドの配列決定結果。
図4】実施例1のペプチドのHSC α-SMA mRNA に対する発現抑制を示す電気泳動グラフ。
図5】実施例1のペプチドのα-SMA タンパク質に対する蛋白質発現抑制を示す電気泳動グラフ。
図6】実施例1のペプチドの基底膜への腫瘍細胞付着抑制効果。
図7】実施例1のペプチドの基底膜を通した腫瘍細胞の遊走能力抑制効果。
図8】PDGFR細胞間Ras-Raf信号伝達経路における実施例1のペプチドの抑制活性。
図9】実施例1のペプチドの3-D構造シミュレーション及びそのPDGFR細胞外ドメインへの結合。
【発明を実施するための形態】
【0036】
PDGF-Cの活性ドメインの位置は、C末端GFD (成長因子ドメイン、 113 アミノ酸)にある。この特許の発明者らは、1次配列アラインメント、2-Dと3-D構造コンピュータシミュレーションを用いて、一連のペプチド配列を設計した。これらのペプチドは、ニ量体を形成しないが、まだPDGFR細胞外ドメインには結合できる特性を持つ。このため、PDGFとPDGFR 信号伝達トランスダクション経路を遮断し、線維症疾患と癌(原発性と転移性癌)を予防し治療も可能になる。
【0037】
この発明は、SEQ ID NO:1の配列を含むペプチドを提供する。
【0038】
本発明によるペプチドは、組換型、天然、または合成型のいずれでもよい。詳細には、ペプチドは、原核生物または真核生物源(例えば、細菌、イースト、植物、昆虫、または哺乳類細胞)からの天然材料、または化学的合成、遺伝子組換源をもとに精製したものである。
【0039】
この発明は、アミノ酸SEQ ID NO:1 ペプチドのアミノ酸配列を提供する。さらに、SEQ ID NO:1 (PDGFRの細胞外ドメインと結合するがニ量体は形成しない)と同じ機能を果たすペプチド配列を提供する。これらの突然変異ペプチドには、これらに限られないが、以下のものが含まれる:ペプチド N末端および/またはC末端での1個または複数の(1-20、 1-10、 1-5、または1-3)アミノ酸欠失、1個または複数の(20以内、10以内、または 5以内)アミノ酸の挿入、置換および/または付加、配列の従来型突然変異。例えば、この分野では、同様の活性アミノ酸(疎水性残基で置換された疎水性残基または酸性残基で置換された酸性残基または塩基性残基で置換された塩基性残基)によるアミノ酸突然変異は、ペプチドの機能を変えない。ペプチドN末端および/またはC末端への1個または複数の残基の付加は、普通はペプチドの特性を変えない。請求されるペプチド配列も、SEQ ID NO:1 ペプチドの活性誘導体を含む。
【0040】
本特許の実施例では、ペプチド配列は下のペプチドから選択され、これらを含む。
【0041】
(i)SEQ ID NO:2の配列、
(ii)SEQ ID NO:2の配列(任意のシステイン残基がセリン残基に変化している)、
(iii)SEQ ID NO:3の配列、または
(vi)SEQ ID NO:3の配列(任意のシステイン残基がセリン残基に変化している)。
【0042】
この特許はさらに、ヒトと動物の線維症疾患と癌(原発性と転移性癌)の予防と治療のためのこれらのペプチドの使用を提供する。
【0043】
この発明は、半減期とその他の活性を増加させるために適切な医薬結合、例えばBSA、PEG、アルブミンを持つペプチド製剤を提供する。これらの新しいペプチド結合物は、ヒトと動物の線維症疾患と癌(原発性と転移性癌)を予防し治療するために使用できる。
【0044】
さらに、この発明は、次の(a)と(b)を含む製剤を提供する。(a)本特許におけるペプチド、結合体、またはその他の組合せの安全かつ薬学的な有効量;(b)薬学的に許容可能な担体。上記ペプチドの投与量は、一回に普通は10 マイクログラムから100ミリグラム/投与、または、100マイクログラムから50ミリグラム/投与以内、または、1000マイクログラムから10ミリグラム/投与、または、3000マイクログラムから5000マイクログラム/投与である。
【0045】
1つの実施例では、本発明にいう「有効投与量」は、標的疾患または状態の治療、軽減、または予防を目的とする投与量、あるいは治療または予防効果を示す投与量を意味する。患者ごとの正確な有効投与量は、患者の肉体の性質、健康状態、疾患特性と付随する治療の組合せに従って判断されることとなる。このことから、前もって正確な投与量は確定できない。個別の状況について、医師が適切な実験と計算を用いて特定の患者に対して最終的な有効投与量を決める。
【0046】
本特許の目的のためには、検体ごとの上記のペプチドの有効投与量は、約1マイクログラムから100ミリグラム/kg/日または100マイクログラムから50ミリグラム/kg/日である。 さらに、上記のペプチドは、Gleevecに限らないが、その他の化学療法剤と組合わせて治療に使用できる。
【0047】
医薬組成物は、さらに薬学的に許容可能な担体も含む。「薬学的に許容可能な担体」はそれ自体が危険な抗体を誘発せず、または、検体に過剰な毒性を誘発しないものとする。これらの担体は、この技術を熟知する技術者には周知である。Remingtonの Pharmaceutical Sciences (Mark Pub. Co.、N.J.1991)では、これらの担体が詳しく論じられている。これらの担体には、限定するものではないが、食塩水、バッファー、グルコース、水、グリセロール、エタノール、補助剤およびその他の組合せが含まれる。
【0048】
製剤中の薬学的に許容可能な担体には、液体、例えば、水、食塩水、グリセロール、及び、エタノールがある。さらに、これらの担体は、界面活性剤、乳化剤、またはpH バッファーのような機能を有してよい。
【0049】
普通は、製剤は注射でありえる。例えば、液体投与または服用前に液体担体を追加する固形投与が挙げられる。
【0050】
上記のペプチドが最適組成であると、線維症疾患と癌の治療および予防のために検体に投与できる。検体は、ヒトと動物でありうる。
【0051】
この特許では、投与方法は経口、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、血管内注射とその他の投与方法、例えば経鼻投与がありうる。投与ペースは、1回投与または複数回投与でありうる。
【0052】
下では例を用いてこの発明を詳しく説明する。これらの例は、この特許を説明するためのみであり、これらに限定されない。実験記録が含まれない場合、実験は普通の条件下でメーカーの指示の下に行なわれた。
【実施例】
【0053】
実施例1:SEQ ID NO:1の配列の固相合成 (手動)
原料と研究試薬:
アミノ酸 原料
Fmoc-L-Ala-OH、Fmoc-L-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-L-Asn(Trt)-OH、Fmoc-L-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-L-Cys(Trt)-OH、Fmoc-L-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-L-Gln(Trt)-OH、Fmoc-L-Gly-OH、Fmoc-L-Ile-OH、Fmoc-L-Leu-OH、Fmoc-L-Lys(Boc)-OH、Fmoc-L-Met-OH、Fmoc-L-Phe-OH、Fmoc-L-Pro-OH、Fmoc-L-Ser (tBu)-OH、Fmoc-L-Thr(tBu)-OH、Fmoc-L-Trp(Boc)-OH、Fmoc-L-Tyr (tBu)-OH、Fmoc-His(Trt)-OH、Fmoc-L-Val-OH(Suzhou Tian-ma Medical Group、Final Chemical 社製)
研究試薬:HBTU(Suzhou Tian-ma Medical Group、Final chemical 社製)、HOBT(Suzhou Tian-ma Medical Group、Final chemical 社製)、DIEA(Sinopharm、Shanghai Chemical Reagents有限公司社製)。
【0054】
溶媒:DMF(Dikma社製)、DCM(Dikma社製)、アセトニトリル(Fisher社製)
樹脂:2-クロロトリチルクロリド樹脂(天津南開合成技術有限公司社製)
ピペリジン(Sinopharm、Shanghai Chemical Reagents有限公司社製)
TFA(J.T.Baker社製)、TIS(ALDRICH社製)、EDT 、TIS(ALDRICH社製)
窒素(上海Biou Gas Industrial Co.社製 )
無水エチルエーテル(Shanghai Shiyi Chemical Reagent有限公司社製)
化学はかり(Beijing Saiduoli Balance Co. Ltd.社製)
装置:
SYMPHONY、12チャンネルペプチド合成装置 (機種:SYMPHONY、ソフトウェア:バージョン.201.メーカー:Protein Technologies Inc)
島津 HPLC (ソフトウェア:Class-VP. 直列システム、メーカー:島津)
LABCONCO Lypholize(機種:Freezone Plus. 6、メーカー:LABCONCO、
遠心装置(Shanghai Anting Scientific Equipment Co.、 機種:TDL-40B)
SEQ ID NO:1の配列の固相合成 (手動)
1)樹脂膨張
2-クロロトリチルクロリド樹脂を反応容器に注入し、次に DMF (15ml/g)を添加のうえ30分攪拌。
【0055】
2) 第1アミノ酸の結合
溶媒をサンドフィルターで濾過する。Fmoc-L-Gly-OHを3倍モル過剰、及びDMFを反応容器に添加する。DMFに溶解して30分間攪拌。
【0056】
3) 脱保護
DMFを排出する。20% ピペリジン-DMF溶液(15ml/g)を添加して5分間静置。次に溶媒を排出する。次に20% ピペリジン-DMF溶液(15ml/g)を再度追加、15分間静置。
【0057】
4) モニタリング
ピペリジン溶媒を排出。樹脂ビーズをチューブに移動する。エタノールで3回洗い出す。次に、ニンヒドリン1滴、KCN1滴とフェノール溶液1滴を添加する。105C−110Cで加熱する。濃青に変色(陽性反応)。
【0058】
5) 洗浄
DMF(10ml/g)で2回、メタノールで2回、DMF(10ml/g)で2回洗浄。
【0059】
6) 凝縮
方法 a: 保護アミノ酸(FOMC-Asp-OH)の3倍モル過剰とHBTUをDMFに溶解する。この溶液を反応容器に添加して、直ちにNMM 10倍モル過剰を添加。30分間反応させる。
方法 b: 保護アミノ酸3倍モル過剰(FOMC-Asp-OH)とHOBTをDMFに溶解する。溶液を反応容器に加え、直ちにadd3モル過剰DICを添加する。30分間反応させる。
【0060】
7) 洗浄
DMF (10ml/g) で1回、メタノール (10ml/g)で2回、最後にDMF(10ml/g) で2回洗浄。
【0061】
8) 繰り返し
SEQ ID NO:1の配列に従い、ステップ2 からステップ 7を後続アミノ酸ごとに繰り返す。
【0062】
9) 最終アミノ酸
最終アミノ酸結合と脱保護後の樹脂洗浄方法は、下の通りである。
以下の試薬で洗浄する。
DMF(10ml/g)で2回、メタノール(10ml/g) で2回、 DMF(10ml/g)で2回、DCM(10ml/g)で2回。次に溶媒を排出し、樹脂を真空ろ過により10分間乾燥する。
【0063】
10) 樹脂からのペプチド切断
切断試薬: TFA 94.5%;H2O 2.5%;EDT 2.5%;TIS 1%
切断時間: 2 時間。
【0064】
11) 乾燥と洗浄
窒素で上記の切断溶液を吹き付け乾燥して、エーテルで6回洗浄。室温で粗ペプチドを空気乾燥する。
【0065】
12) HPLCによる粗生産物の精製
粗ペプチドを水またはアセトニトリル少量に溶解。粗ペプチドは下の手順で精製される。
【0066】
ポンプ A : 0.1% トリフルオロ酢酸を100% 水に溶解。
【0067】
ポンプ B : 0.1% トリフルオロ酢酸を100% アセトニトリルに溶解。
【0068】
総流量: 1.0ml/min
容積: 30μl
波長: 220nm
勾配: 時間(分) A B
0.500 90% 10%
30.00 20% 80%
30.10 停止
<検出装置 A>
カラム: Venusi MRC-ODS C18 30x250mm。
【0069】
13) 精製後に溶液をフリーズドライして最終生産物を得る。
【0070】
14) 検証
最終生産物は、HPLCを用いて純度を検査した (97.1%、 図1)。分子量は、質量分光測定により検査した。理論分子量は 5203.98、実測分子量は 5206.1 (図2)。最終生産物の配列は、中国科学院上海ライフサイエンス研究所プロテオミクス分析センターにより実施された(図3)。
【0071】
15) 保管
白いパウダーは密封され−20 Cで保管された。
【0072】
実施例2:自動ペプチド合成装置 (SYMPHONY 合成装置)によるSEQ ID NO:1ペプチド合成
記録:
1〕ソフトウェアで、保護アミノ酸溶液、凝縮試薬、及び切断試薬の必要量を計算する。適量のDMFとDCMを装置の対応するボトルに添加する。
【0073】
2〕 100μmol FMOC- L-Gly-2-クロロトリチルクロリド樹脂を反応容器に添加する。15mg 遠心装置チューブを導管に入れて切断溶液を集積する。
【0074】
3〕プログラムの編集: 樹脂膨張時間は概して30分、脱保護時間は5分と15分 (2回)、凝縮時間が30分、及び切断時間は2時間とする。
【0075】
4〕装置の電源を投入してプログラムを実行する。
【0076】
5〕最後に、切断溶液をエーテルで沈殿させ、次に遠心分離し吹き付け乾燥、次にHPLCで粗ペプチドを精製する。最終生産物は純度をHPLCで検査した (97.1%、 図1)。その分子量 (SEQ ID NO:1) は質量分光測定により測定した。理論分子量は5203.98、実測分子量は5206.1 (図2)であった。最終生産物の配列は、中国科学院上海ライフサイエンス研究所プロテオミクス分析センターにより確認された(図3)。
【0077】
実施例3:ペプチドSeq. No.1の 肝臓 HSC 細胞量と活性への効果
材料と方法:
1.オスSDラット5匹、重量(250±25)g、DMEM 培地、パンクレアチン (EDTAを含む)、リポフェクタミン 2000、トリゾール、新生小牛血清(Invitrogenブランド)、プロテイナーゼE (プロナーゼ)、コラーゲナーゼ B、DNA 酵素(Roche社)、Nycodenz (Sigma社)、抗体p-FAK Tyr397、デスミンとα-平滑筋アクチン(α-SMA)、モノクロナール抗体(Santa Cruz 社)。
RT-PCRキット(MBI社)。
【0078】
2.培地HSC
SDラットから得たHSCを、プロナーゼ-コラーゲナーゼとニコデンツにより作成された勾配上で遠心分離した。1.5×105/ cm2で HSC細胞を 6ウェルプレート、または培養皿(100 mm径)に設置。培地は、20% 新生小牛血清によるDMEMとした。HSC細胞の純度は、ビタミンA自己蛍光と抗デスミン免疫細胞化学実験により同定した。細胞生存能力は、トリパンブルー染色により同定した。第1世代HSCの純度と生存能力は、それぞれ90%と95%であった。HSCは、無ECM条件下であれば自己活性的である。つまり、HSCは、α-SMAを発現でき、ビタミンA降下が消滅する。細胞融合後、活性化HSCはトリプシンにより開放されて増殖する。
【0079】
3.MTT アッセイ
ペプチド SEQ ID NO:1、(1μM)、24時間、48時間、または72時間。MTT アッセイを使用してHSC細胞の増殖を調べる。
【0080】
4.α-SMA mRNA発現を調べるためのRT-PCR試験
トリゾール試薬を使用して総RNAを抽出、次に2段階RT-PCRをキット説明書に従って実施した。
【0081】
α-SMA上流プライマー: 5’- AAGAGGAAGACA GCA CAG C TC-3’、
下流プライマー: 5’- GATGGATGGGAAAACAGC C-3’、
最終生産物: 101 bp α-SMA cDNA 断片。
【0082】
GAPDH上流プライマー:5’- ACCACAGTCCATGCCATC AC-3’、
下流プライマー: 5’- TCCACCACCCTGTTGCTGTA-3’、
最終生産物: 452bp GAPDH cDNA 断片。
【0083】
5.α-SMA蛋白質発現を試験するためのウエスタンブロット法
細胞を集積して細胞リーシスバッファーを添加し、 総蛋白質を抽出する。総蛋白質量をBradfordアッセイにより同定した。40μg 総蛋白質を10% SDS ポリアクリルアミドジェルを用いて検査した。抗α-SMAモノクロナール抗体を用いてジェルを検査した。
【0084】
6. 統計的計算
結果は x ±s、SPSS 10.0ソフトウェア、P <0.05による。
【0085】
結果
1. ペプチドSEQ ID NO:1 のHSC 細胞の増殖への効果
24 時間後、1μMでのペプチドSEQ ID NO:1の抑制率は、45.5 % ±5.8 %である。48または72 時間後、1μM でのペプチドSEQ ID NO:1の抑制率は、それぞれ、61.8 % ±4.3 %と85.6 % ±5.8 %である。
【0086】
2.α-SMA mRNAの発現へのペプチドSEQ ID NO:1の効果
静止状態HSCとは異なり、α-SMA mRNA発現は、活性化HSCの重要な特性である。RT-PCR実験によれば、48時間後にペプチドSEQ ID NO:1は、α-SMA mRNA発現を抑制する(図4)。
【0087】
3. α-SMA 蛋白質発現へのペプチドSEQ ID NO:1の効果
ウエスタンブロット法実験によると、ペプチドSEQ ID NO:1は、48 時間にはα-SMA 蛋白質発現を減少させ始め、72 時間にはα-SMA蛋白質発現を著しく減少させる(図5)。
【0088】
実施例4: 肝線維症の動物モデルにおけるペプチドSEQ ID NO:1の効果実験
肝臓損傷に対するペプチドSEQ ID NO:1の保護的効果を評価するため、効果性評価のため慢性肝線維症モデル(ラットCCl4 モデル) を使用した。
【0089】
結果により実証されたことは、治療高投与量(50μg/mg)と予防低投与量(10μg/mg)でのペプチドSEQ ID NO:1は、ラットCCl4 モデルでは、肝臓損傷パラメーターを著しく減少できる。治療群と予防群では、SEQ ID NO:1は多くの肝臓パラメーター(P<0.01 、P<0.05)を改善した。治療高投与量群(総蛋白質、アルブミン、血清グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ (SGPT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコース)、治療低投与量群(総蛋白質、アルブミン、グルコース)、予防高投与量群(総蛋白質、アルブミン、SGPT、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、グルコース)、予防低投与量群(総蛋白質、アルブミン、SGPT、グルコース)。
【0090】
対照群に比較すると、 ヒドロキシプロリンは慢性CCl4 肝臓損傷ネズミモデルで著しく増加する(P<0.05)。ヒドロキシプロリン量は、様々な治療群で低減した。治療高投与量群で最善な効果を得た(P<0.05)。
【0091】
組織学レポートによると、CCl4モデル群の肝組織は、構造の乱れを示した。肝細胞の80%以上に著しい脂肪症が見られ、肝臓細胞に多くの脂肪空洞が見られた。1つのケースでは、肝臓内繊維組織の表皮過形成がある。治療高投与量群では、2ケースで脂肪症と肝細胞(>80%)に脂肪空洞が発現し、2ケースが脂肪症と肝細胞(50-60%)内脂肪空洞が少なくなっており、4ケースはさらに少ない脂肪症と肝細胞(<30%)内脂肪空洞を示した。予防低投与量群全てのケースはより少ない脂肪症と肝細胞(60-80%)内脂肪空洞を示した。予防高投与量群では、5ケースがより少ない脂肪症と肝細胞(60-80%)内脂肪空洞を示し、3ケースはさらに少ない脂肪症と肝細胞(50-60%)内脂肪空洞を示した。
【0092】
まとめると、ペプチドSEQ ID NO:1は、ラット内でCCl4 が引き起こす肝臓損傷を改善し、血清生化学パラメーター、肝臓ヒドロキシプロリン量、及び肝臓の病理学的特徴を改善する。
【0093】
試薬と方法
1〕薬剤
ペプチド SEQ ID NO:1(実施例2);
Zhengda Tianqing社製注射用薬剤。
正の対照薬剤、Jiangsu Zhengda Tianqing Pharmaceutical Co. Ltd.製Gan-li-xin(グリチルリチン酸二アンモニウム)注射、10ml:50mg。
2〕動物
SDラット、180-220g、メスとオス(1:1)
3〕主な試薬
CCl4、Shanghai Lingfeng Chemical Reagents Co., Ltd製。Lot No: 061101;
ゴマ油、精製ピーナツオイル;
ヒドロキシプロリン試験キット(南京建成社)
4〕主装置
BS210S 化学はかり (0.1mg〜10g) (German Sartorius社製);
752C UV-Vis 分光光度計(上海第三分析装置社製) ;
遠心装置 (北京医療遠心装置社);
自動生化学試験装置(OLYMPUS Au 800、日本);
FEJ-200分析天秤(0.1〜200g)(福州Furi Hengzhibao Electric Co. Ltd.社製)
5〕実験
Rat CCl4 肝臓損傷モデル。
【0094】
投与群:
110ラット、重量180-220g、7 群:
(1)対照群: 食塩水、sc、2ml/kg、10ラット
(2)モデル群: 40% CCl4、sc、2ml/kg、17ラット
(3)Gan-li-xin 群: 25mg/kg、iv、10ml/kg、15ラット
(4)予防、高投与量群: 50μgペプチドSEQ ID NO:1 /kg、iv、10ml/kg、17ラット
(5)予防、低投与量群: 10μgペプチドSEQ ID NO:1 /kg、iv、10ml/kg、17ラット
(6)治療、高投与量群: 100μgペプチドSEQ ID NO:1 /kg、iv、10ml/kg、17ラット
(7)治療、高投与量群: 20μgペプチドSEQ ID NO:1 /kg、iv、10ml/kg、17ラット。
【0095】
モデル構成と投与方法
対照群を除き、40% CCl4 を皮下に週2回 (火曜日と金曜日) 群(2)〜(6)に注射、薬剤用量(0.2 ml/100 g、最初に0.5ml/100g)。CCl4 モデル構成は6週間行なった。モデル構成と平行して、50μg/kgと10μg/kgペプチドSEQ ID NO:1を、群(4)と(5)にそれぞれ6週間1日に1回静脈注射した。群 (3)、(6)、(7)については、第 5週からGan-li-xin 25mg/kg、100μg/kgと20μg/kgでペプチドSEQ ID NO:1 をそれぞれ2週間連続して1日1回注射した。
【0096】
試験パラメーター
全てのラットは、モデル構成と薬剤注射中に週に一回体重を測定した。体重に従い、薬剤投与を調整した。最終回CCl4注射から24 時間後に、肝臓重量パラメーターを試験した。
【0097】
血液を大腿動脈から抽出し、血清を分離した。次のパラメーターを試験した: 血清アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、ビリルビン (TB)、アルカリホスファターゼ (ALP)、総蛋白質(TP)、アルブミン (ALB)、グロブリン(G)、アルブミン/グロブリン比(A/G)、グルコース (GLU)、総コレステロール(TCH)、トリグリセリド(TG)。
【0098】
肝臓ホモジネート: コレステロール(TCH)、トリグリセリド(TG)、アラニンアミノトランスフェラーゼ (ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を試験する。
【0099】
200g 肝臓。110 Cで乾燥後、ヒドロキシプロリン(HPA)を検査。
肝臓の一部は組織学的実験用にフォルマリン漬けとした。
【0100】
実験結果
1〕ネズミの体重、肝臓重量、および肝臓パラメーターへの薬剤効果
対照群と比較すると、CCl4肝臓損傷群の肝臓パラメーターは著しく増加した (P<0.01)。様々な治療群でこれらのパラメーターは改善し、治療高投与量群と予防低投与量群では統計的有意性の差異があった(P<0.05)。下の表1(*vs 対照群、# vs CCl4 モデル群)を参照されたい。
【表1】
【0101】
2)ネズミ生化学パラメーターへのへの薬剤効果
対照群と比較すると、CCl4肝臓損傷動物モデル群は、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、およびアルカリホスファターゼが増加、総蛋白質、アルブミン、グルコース、およびトリグリセリドが減少した。Gan-li-xin 群 (12.5mg/kg) の上記パラメーターがある程度改善され、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)とグルコース (GLU)(P<0.05)の統計的有意性も改善された。ペプチドSEQ ID NO:1 群 (治療と予防群) でも上記パラメーターは改善され、統計的有意性も改善された (CCl4 モデル群より):治療高投与量群(TP、ALB、ALT、AST、ALP、GLU)、治療低投与量群(TP、ALB、GLU)、予防高投与量群(TP、ALB、ALT、AST、GLU)、予防低投与量群(TP、ALB、AST、GLU)。詳細は表2を参照されたい(*vs 対照群 、# vs CCl4 モデル群)。
【表2】
【0102】
3)ネズミ肝臓内ヒドロキシプロリン量への薬剤効果
対照群と比較すると、ヒドロキシプロリン量はCCl4損傷肝臓モデル群(P<0.05)では著しく増加した。各治療群でヒドロキシプロリン量は減少し、治療高投与量群のそれとは統計的有意性の差異があった(P<0.05)。表3を参照されたい(*vs 対照群、#vs CCl4 モデル群)。
【表3】
【0103】
4)組織学的実験
対照群は、規則正しい構造を示した。CCl4モデル群の肝組織は、構造の乱れを示した。肝細胞の80%以上が脂肪症を示し、肝臓細胞の脂肪空洞を発現した。1つのケースでは、肝臓内繊維組織の表皮過形成がある。治療高投与量群では2ケースで脂肪症と肝細胞(>80%)脂肪空洞が見られ、2ケースでは脂肪症が少なくなったのと肝細胞内脂肪空洞が減少(50-60%)、4ケースはさらに少ない脂肪症と肝細胞内脂肪空洞(<30%)を示した。予防低投与量群の全ケースで、より少ない脂肪症と肝細胞内脂肪空洞(60-80%)が示された。予防高投与量群においては、5ケースがより少ない脂肪症と肝細胞内脂肪空洞(60-80%)を示し、さらに、3つのケースでは肝細胞の脂肪症と脂肪空洞はさらに少なかった(50-60%)。
【0104】
実施例5:ペプチドSEQ ID No:1の生体抗癌効果性評価
装置
デジタルウォーターバス: HH-4 (国華電力社製)
インキュベーター: HERA 細胞150 (Thermo Electron Corporation社製)
顕微鏡: BDS200-PH (重慶 Aote 光学装置社製)
卓上遠心装置: TGL-16G (Shanghai Surgical Device Co.社製)
クリーンベンチ: SW-CJ-IFD (蘇浄集団Antai社製)
ボーテックス: XW-80A (上海医科大学装置社製)
逆位の位相差顕微鏡: XSZ-D2 (重慶光学装置社製)
マイクロプレートリーダー:モデル-550 (Bio-Rad社製)
天秤: HC-TP-12 (Tianjin Balance 装置社製)
1.細胞株
ヒト肝臓癌細胞株(SMMC-7721、 BEL-7402、 BEL-7402)は国家医療科学院細胞バンクと中国科学院上海細胞株研究所から購入した。
【0105】
1.細胞培養
全細胞株は37C、5% CO2、飽和湿度中のインキュベーターで培養した。培地は、10%加熱失活FBS、ペニシリン100μ/ml、ストレプトマイシン 100 μ/mlを含むRPMI1640媒地とした。48 時間後に培地を交換した。細胞は、0.25%トリプシンで遊離されて増殖した。実験で使用した細胞は対数期であった。細胞生存能力は、トリパンブルー染色により同定された。
【0106】
2.方法
対数期細胞を採取し、 0.125%トリプシン+ 0.01% EDTAで遊離させ、細胞を2-4 X 104 細胞/mlまで希釈する。細胞は96 ウェルプレート(180 μl/ウェル)に設置され、37 C CO2 インキュベーターで24時間培養された。培地を交換後、ペプチドSEQ ID No:1 をウェルに添加(20μl/ウェル)して、72時間培養した。MTTを96 ウェルプレート(20 μl/ウェル)に添加し、4 時間培養した。培地を除去し、DMSO (150μl/ウェル)を添加した。プレートは10分間振とうした。7つの濃度点 (0.1〜10 μM) を検査した。570 nMでの吸光度をウェル毎に測定し、IC50を計算した。
【0107】
IC50 = (ペプチド無しのウェルにおけるO.D.−ペプチド有りのウェルにおけるO.D.)/ペプチド無しのウェルにおけるO.D.
3.結果
実施例1 からのペプチド SEQ ID No:1 は、SMMC-7721、BEL-7402、およびBEL-7404において、それぞれ1.25、1.78、および2.33μMにおけるIC50では著しく肝臓癌細胞の増殖を阻害した。
【0108】
実施例6: 生体での抗癌効果実験
実験動物: メス BALB/cA ヌードマウス、35-40 日齢、重量18-22 g。上海Silaike実験動物 Co. Ltd. 認証番号: SCXK(Shanghai)2007-0005から供給された。
【0109】
異種移植ヌードマウスの腫瘍は、100〜300mm3 まで成長した。腫瘍マウスを異なる群に分け、薬剤比較試験を実施した。下の実験では、負の対照群に12匹のヌードマウス、試験薬剤を投与する6匹ヌードマウス群として行なった。腫瘍直径は毎週3回計測され、マウス重量も同時に測定した。
【0110】
T/C (相対的腫瘍抑制率)%を下の通り計算した。
【0111】
(1)腫瘍容積TVを下の通り計算した。
TV = 1/2×a×b2
aとbは長さと幅である。
【0112】
(2)相対的腫瘍量RTVを下の通り計算した。
RTV = TVt/TV0
TV0は薬剤使用開始時の腫瘍量 (d0)、TVt は後の時点での腫瘍の量。
【0113】
(3)相対的腫瘍抑制率T/C(%)を下の通り計算した。
【0114】
T/C(%)= TRTV/CRTV×100
TRTV:治療グループRTV 、CRTV:負の対照RTV
1)肝臓癌
実施例1および2からのペプチドSEQ ID No:1は、異種移植肝臓癌ヌードマウスモデル(H22) を1 mg/kgでは抑制率67.8%により抑制した。これは、正の対照であるタキソールの抑制率(10 mg/kg)に近い。1 mg/kgでは、実施例1のペプチドSEQ ID No:1は、異種移植肝臓癌ヌードマウスモデル(BEL-7402)を39.7%で抑制した。
【0115】
ペプチドSEQ ID No:1は、尾静脈(IV)を通して投与され、投与量は0.5mg/kg、0.25mg/kg、0.125mg/kg、および0.0625mg/kgを一週間に6回とした。ドセタキセルを正の対照として、投与率は20mg/kg、週に一回とした。負の対照は食塩水とした。異種移植ヌードマウスを3週間治療した。
【0116】
ヒト肝臓癌BEL-7402ヌードマウスにおけるペプチドSEQ ID No:1 0.5mg/kg、0.25mg/kg、0.125mg/kg でのT/C(%)は、それぞれ64.90、69.06、62.10となった。最善のT/C (%)は、投与量0.0625mg/kgで58.56%を得た。このことから、ペプチドSEQ ID No:1は肝臓癌のインビボでの増殖を抑制できる。
【0117】
2)胃癌
ペプチド SEQ ID No:1は、尾静脈(IV)を通して、投与量1mg/kg、0.5mg/kg、0.25mg/kg、0.125mg/kg、および0.0625mg/kgで一週間に6回注入された。5-FUを正の対照として、投与量25mg/kgで週に一回投与した。負の対照には食塩水を与えた。異種移植ヌードマウスを3週間治療した。
【0118】
ヒト胃癌SGC-7901 ヌードマウスにペプチドSEQ ID No:1を 0.125mg/kg で投与したT/C(%)は、47.66%であった。5-FUでのT/C(%)は、68.71%であった。このことから、ペプチドSEQ ID No:1 はインビボでの胃癌増殖を強く抑制する。
【0119】
3)乳癌
ペプチドSEQ ID No:1を尾静脈(IV)から投与量2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kgで、一週間に6回投与した。ドセタキセルを正の対照とし、投与量は20mg/kg、週に一回投与した。負の対照は食塩水を与えた。異種移植ヌードマウスは、4週間治療された。
【0120】
ヒト乳癌MDA-MB-435 ヌードマウスにおいて、0.5mg/kg でペプチドSEQ ID No:1を投与したT/C(%) は、49.40%であった。ドセタキセルでの T/C(%) は、16.51%であった。以上から、ペプチドSEQ ID No:1は、インビボでの乳癌増殖を強く抑制しうる。
【0121】
4)肺癌
ペプチド SEQ ID No:1を、尾静脈(IV)を通して投与量0.5mg/kg、0.25mg/kg、0.125mg/kgで、一週間に6回投与した。ドセタキセルを正の対照として、投与率は20mg/kgで週に一回投与した。負の対照は食塩水を与えた。異種移植ヌードマウスが3週間治療された。
【0122】
ヒト肺癌A549ヌードマウスでペプチドSEQ ID No:1を0.25mg/kg、0.125mg/kgで投与したT/C(%)は、47.98および48.96%になった。ドセタキセルでのT/C(%)は、18.60%であった。このことから、ペプチドSEQ ID No:1は、インビボでの肺癌成長を強く抑制できる。
【0123】
異種移植腫瘍マウスモデルの全てにおいて、マウスの体重は異なる濃度のペプチドSEQ ID No:1の影響を受けなかった。これにより、ペプチドSEQ ID No:1の安全なプロファイルが実証された。正の対照である化学療法剤により、マウスの体重は大きく影響された。
【0124】
実施例7: 肝臓癌細胞遊走能力の抑制
実施例1のペプチド SEQ ID No:1は、ヒト肝臓癌細胞BEL-7402の基底膜からの遊走を 0.01、0.1、または1 mg/ml (12時間培養)で抑制する。
【0125】
図6の示すところは、ペプチドと癌細胞を混ぜて12 時間培養した後、ペプチドSEQ ID No:1が基底膜への癌細胞付着を抑制したことである。図7は、ペプチドと癌細胞を混ぜて12時間培養した後、ペプチドSEQ ID No:1 基底膜を通る癌細胞の遊走能力を抑制する様子を示す。
【0126】
実施例8: PDGFRの細胞間Ras-Raf 信号伝達経路におけるペプチドSEQ ID No:1の阻害効果
様々な濃度のペプチドSEQ ID No:1をヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)とともに6時間培養した。蛋白質をこれらの細胞から抽出して、ウエスタンブロット法で処理した。p-stat1 用抗体: 対リン酸化-Tyr701抗体; p-MEK1/2用抗体: リン酸化-Ser217/221 ペプチド抗体; p-Erk1/2用抗体: リン酸化-Ser202/204 抗体。すべてのレーンに同量のタンパク質を負荷するために、ベータアクチンを対照とした。ウエスタンブロット法により、濃度10μg/ml (2μM)ではペプチドSEQ ID No:1が大きくErk1/2 のリン酸化反応を抑制したことが示された。これは、Ras-Raf経路の下流である。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
SEQ ID NO:1の配列を含むペプチド、その変異体またはその活性誘導体。
[2]
[1]に記載のペプチドであって、下記からなる群より選択されるペプチド:
(i)SEQ ID NO:2の配列、
(ii)SEQ ID NO:2の配列(任意のシステイン残基がセリン残基に変化している)、
(iii)SEQ ID NO: 3の配列、または
(vi)SEQ ID NO:3の配列(任意のシステイン残基がセリン残基に変化している)。
[3]
[2]に記載のペプチドであって、前記ペプチドは、組換型ペプチド、天然ペプチドおよび合成ペプチドからなる群より選択されるペプチド。
[4]
[1]に記載のペプチドをコードするヌクレオチド配列。
[5]
ヒトまたは動物の組織線維症の予防または治療のための医薬の調製における、[1]または[2]に記載のペプチドの使用。
[6]
[5]に記載の使用であって、前記組織は、ヒトまたは動物の肝臓、腎または肺を含む使用。
[7]
ヒトまたは動物の原発性癌および癌転移の予防または治療のための医薬の調製における、[1]または[2]に記載のペプチドの使用。
[8]
ヒトまたは動物の組織線維症の予防および治療のための医薬組成物であって、該医薬組成物は、[1]または[2]に記載のペプチドと薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
[9]
[8]に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、ヒトまたは動物の組織線維症を予防および/または治療するその他の医薬をさらに含む医薬組成物。
[10]
[8]に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、経口投与、皮下注射投与、皮内注射投与、筋肉内注射投与、血管内注射投与、または経鼻投与のようないずれかのその他の投与の形態である医薬組成物。
[11]
ヒトまたは動物の癌を治療するための医薬組成物であって、該医薬組成物は、[1]または[2]に記載のペプチドと薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物。
[12]
[11]に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、ヒトまたは動物の癌を治療するその他の医薬をさらに含む医薬組成物。
[13]
[11]に記載の医薬組成物であって、前記医薬組成物は、Gleevec等のその他の化学療法剤をさらに含む医薬組成物。
[14]
[8]または[11]に記載の医薬組成物の投与方法であって、[1]または[2]に記載のペプチドを投与するステップを含み、前記ペプチドは、筋肉内、静脈内、皮下、経口、直腸挿入、及び経皮からなる群より選択される態様で投与される投与方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]