(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の圧縮コイルばね20を内蔵したステッキ1cは、圧縮コイルばね20が着地時に縮んだ後しばらく振動するため、着地後はステッキの長さが安定せず、使用者がバランスを取り難いという欠点がある。このため、かかるステッキは、衝撃吸収が重視される登山や山歩き目的のステッキでは多く採用されているが、安定性が重視される高齢者や肢体障害者用のステッキには余り採用されていない。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、衝撃吸収性に優れ、なおかつ、安定性にも優れたステッキの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、杆状のステッキ本体に把持部を配設してなるステッキにおいて、ステッキ本体は、外筒と中筒を入れ子状に嵌合してなるテレスコピック式の伸縮管を備えており、前記伸縮管の内部には、伸縮管を伸長方向に付勢する圧縮コイルばねと、外筒と中筒の相対摺動を減衰させる速度依存性のダンパーとが接続されており、該ダンパーは、外筒と中筒の一方に連結されるシリンダと、外筒と中筒の他方に連結されるピストンロッドとを備えており、前記圧縮コイルばねは、前記ダンパーに同芯状に外嵌しており、前記圧縮コイルばねと前記ダンパーが、外筒と中筒に対して並列に接続されていることを特徴とするステッキである。かかる構成にあっては、従来構成同様に、着地時にステッキに負荷が加わると圧縮コイルばねが縮んで衝撃を吸収することができる。そして、本構成では、圧縮コイルばねに並列接続されたダンパーが、縮んだ圧縮コイルばねの振動を抑えることにより、着地後速やかにステッキの長さが安定することとなる。
【0007】
本発明に係る速度依存性のダンパーは、接続対象物の相対速度に依存して減衰力を強めるものであり、オイルダンパーやガス式ダンパー、電磁ダンパーなどが挙げられる。
【0008】
また、本発明にあって、前記シリンダ及びピストンロッドは、外側に突出する鍔部を夫々具備しており、前記圧縮コイルばねは、前記ダンパーに同芯状に外嵌し、その一端を前記シリンダの鍔部に当接し、他端を前記ピストンロッドの鍔部に当接していることが提案される。かかる構成にあっては、細長いステッキ本体の内部で、圧縮コイルばねとダンパーを外筒と中筒に対して無理なく並列接続することができ、本発明のステッキを既存のステッキと同サイズで実現可能となる。
【0009】
また、本発明の別の態様として、杆状のステッキ本体に把持部を配設してなるステッキにおいて、ステッキ本体は、外筒と中筒を入れ子状に嵌合してなるテレスコピック式の伸縮管を備えており、前記伸縮管の内部には、ガス圧により伸縮管を伸長方向に付勢するとともに、外筒と中筒の相対摺動に対して減衰作用を発揮する速度依存性のガス式ダンパーが配設されていることを特徴とするステッキが提案される。かかる構成にあっては、着地時にステッキに負荷が加わるとガス式ダンパーが負荷に反発しながら縮んで衝撃を吸収する。このガス式ダンパーは、自らの減衰作用によって縮んだ後も振動せずに安定するため、本構成にあっても、着地後速やかにステッキの長さが安定することとなる。また、本構成では、ガス式ダンパーをばねとして兼用することができるから、ばねを省略することで伸縮管のスリム化、軽量化が可能となる。
【0010】
また、前記ガス式ダンパーとしては、例えば、外筒と中筒の一方に連結されるシリンダと、外筒と中筒の他方に連結されるピストンロッドとを備えており、前記シリンダには、圧縮ガスを充填したガス室と、オイルを充填したオイル室と、該ガス室とオイル室を隔てるフリーピストンとが設けられており、前記ピストンロッドは、前記シリンダの端部を貫通して前記オイル室内に保持されたピストンと連結され、前記圧縮ガスのガス圧によって前記シリンダから突出する方向に付勢されるとともに、前記オイル室のオイルの粘性によって前記シリンダに対する移動速度を減衰させるよう構成されたものを採用することができる。
【0011】
また、本発明にあって、日常歩行の補助に用いられるステッキであって、ステッキ本体の下端にはゴム製の石突が配設されており、該石突は、ステッキ本体と密嵌する嵌合部と、滑り止め形状が形成された略円形の下底面を有する接地部とを、可撓性の頸部を介して一体的に連成してなるものである構成が提案される。かかる構成にあっては、石突の頸部が撓むことによって、ステッキが傾いた状態でも接地部の下底面を地面と接触させることができ、ステッキを地面に着いてから離すまでの間、ステッキの先端を地面にしっかりと保持可能となる。
【0012】
また、本発明にあって、前記外筒の一部又は全部が透明な材質で構成されて、外筒内を外部から視認可能となっていることが提案される。かかる構成にあっては、伸縮管の内部機構を使用者に見せることで、ステッキの優れた衝撃吸収性と安定性を使用者にアピールできる。
【発明の効果】
【0013】
以上に述べたように、本発明のステッキは、着地時に伸縮管が収縮することで、着地時の衝撃を吸収するとともに、伸縮管は着地後速やかに長さが安定するから、優れた衝撃吸収性と安定性を併せ持つものとなる。したがって、本発明を高齢者や肢体障害者用のステッキに採用すれば、十分な安定性を確保しつつ、高齢者や肢体障害者の手を着地時の衝撃から守ることができる。また、登山や山歩き用のステッキに採用すれば、衝撃吸収性を損なうことなく、安定性を向上させることができる。また、スキー用のステッキ(ストック)に採用しても、同様の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
本実施例のステッキ1は、高齢者や肢体障害者などの日常歩行の補助に用いられるものであり、
図1に示すように、杆状をなすステッキ本体2と、該ステッキ本体2の上端に配設されるT字状の把持部3と、ステッキ本体2の下端に配設される石突4とで構成される。
【0016】
ステッキ本体2は、金属パイプからなる長尺な主管部材5と、該主管部材5の下端に連結される伸縮管6とで構成される。伸縮管6は、
図2に示すように、外筒10と中筒11の二本の金属パイプを入れ子状に嵌合してなるテレスコピック式のものであり、外筒10の上端に装着された連結金具12を介して主管部材5の下端に螺着され、中筒11の下端には石突4が装着される。具体的には、外筒10は、前記主管部材5と同径の金属パイプであり、中筒11は外筒10よりも細径な金属パイプであり、中筒11が外筒10の下端から内嵌して外筒10に対して摺動することにより、伸縮管6が伸縮するよう構成されており、また、中筒11は、外筒10の下端に螺着された円管状の係止金具14によって外筒10から脱落不能に係止される。そして、この伸縮管6は、後述するように、衝撃吸収装置によって伸長方向に付勢され、
図2に示すように、ステッキ1に負荷が加わると縮むよう構成されている。
【0017】
前記石突4は、
図1,2に示すように、中筒11の下端に密嵌する嵌合部30と、滑り止め形状が形成された下底面33を有する接地部31とを、可撓性の頸部32で一体的に連成してなるゴム製部材である。かかる石突4は、
図3に示すように、着地時の衝撃や負荷によって頸部32が撓むことで、ステッキ1が傾いた状態でも、接地部31の下底面33を地面に着けることができる。したがって、本実施例のステッキ1によれば、地面に着いてから離すまでの間、滑り止め形状を有する下底面33を地面に接触させておくことで、ステッキ1の先端を地面にしっかりと固定しておくことができる。
【0018】
以下に、本発明の要部に係る構成について説明する。
上記伸縮管6にあっては、
図4,5に示すように、中筒11は、外筒10の下端に内嵌し、外筒10に摺動可能に保持される。また、中筒11は、外筒10の下端に螺着された円管状の係止金具14と、中筒11の上端外周部に膨設された係止部13との係合によって外筒10から脱落不能に係止される。そして、外筒10の内部には、本発明にかかる衝撃吸収装置15が収納され、該衝撃吸収装置15が中筒11を外筒10から押し出す方向に付勢することで伸縮管6は伸長方向に付勢され、通常は、係止部13と係止金具14が係合する伸長状態に保持される。
【0019】
衝撃吸収装置15は、
図4,5に示すように、圧縮コイルばね20とオイルダンパー21とを同芯状に組み付けてなるものである。オイルダンパー21は、オイルが封入されたシリンダ22と、該オイルの粘性に抗して上下するピストンロッド23を備えてなる一般的な速度依存性のダンパーである。すなわち、ピストンロッド23は、シリンダ22の下端部を貫通してシリンダ22内部のピストン26と連結することで、シリンダ22に対して出没方向に摺動可能に保持されるとともに、シリンダ22内のオイルがピストン26の動きを妨げることによって、出没方向の移動速度に応じた減衰力が働くよう構成されたものである。このオイルダンパー21は、既知のオイルダンパーを好適に採用し得るため詳細な説明は省略する。そして、このオイルダンパー21のシリンダ22の上端と、ピストンロッド23の下端には、外側に突出する円板状の鍔部24,25が夫々螺着される。圧縮コイルばね20は、オイルダンパー21の本体部よりも幅広で、鍔部24,25よりも幅狭な内径を有しており、オイルダンパー21の本体部に同芯状に外嵌した状態で、その両端を前記鍔部24,25に弾接している。
【0020】
衝撃吸収装置15は、
図4に示すように、圧縮コイルばね20がある程度収縮した状態で外筒10の内空部に収納され、上端の鍔部24を外筒10上端の連結金具12に弾接するとともに、下端の鍔部25を中筒11の上端部に弾接しており、これにより、圧縮コイルばね20とオイルダンパー21が外筒10と中筒11に対して並列接続される。そして、かかる収納状態では、圧縮コイルばね20によって外筒10が上方へ、中筒11が下方へ付勢され、
図4(a)に示すように、伸縮管6は、通常は伸長状態に保持される。
【0021】
そして、伸縮管6の伸長状態にあって、伸縮管6を収縮させる方向に一定の力が加わると、
図4(b)に示すように、圧縮コイルばね20がさらに縮み、外筒10と中筒11が相対摺動して伸縮管6が収縮状態となる。この時、オイルダンパー21が外筒10と中筒11の相対移動を抑える減衰作用を発揮することにより、圧縮コイルばね20は殆ど振動することなく、加えられた力と釣り合う長さに速やか収束することとなる。
【0022】
かかる伸縮管6によれば、使用者が、歩行時にステッキ1の先端を地面に着くと、衝撃吸収装置15の圧縮コイルばね20が縮み、着地時の衝撃が圧縮コイルばね20の弾性エネルギーに変換され、これにより、把持部3に伝わる衝撃が軽減されることとなる。そして、着地後は、オイルダンパーの減衰力によって、圧縮コイルばね20は殆ど振動することなく、把持部3に加わる重みと釣り合う長さで停止して、ステッキ1の長さは速やかに安定する。したがって、使用者は、ステッキ1を地面に着いた直後から、安定した支持を得ることができる。
【0023】
また、着地後に伸縮管6の長さが一旦安定すると、把持部3に加わる重みが多少変動しても、オイルダンパー21の減衰作用によって伸縮管6の伸縮が最低限に抑えられ、ステッキ1の長さは安定したものとなる。そして、ステッキ1の先端が地面から離れると、伸縮管6は圧縮コイルばね20の付勢力によって伸長状態に復帰することとなる。
【0024】
このように、本実施例のステッキ1によれば、衝撃吸収装置15の圧縮コイル
ばね20によって着地時の衝撃を吸収することができる。また、一方で、着地後速やかに伸縮管6の長さが安定するため、使用者は、着地直後から安定した支持を得ることができる。
【0025】
次に、上記実施例から、衝撃吸収装置の構成を変更した変形例について説明する。なお、かかる変形例のステッキ1aは、衝撃吸収装置以外の構成は、上記実施例と同じであるため、図中の符号を共通させて説明を省略する。
【0026】
本変形例のステッキ1aは、
図6,7に示すように、伸縮管6に内蔵する衝撃吸収装置15aをガス式ダンパー27のみによって構成したものである。かかるガス式ダンパー27は、シリンダ22の内部のガス圧により、ばね作用と速度依存性の減衰作用を同時に発揮するものである。
【0027】
本変形例に用いるガス式ダンパー27としては、
図8に示すように、圧縮ガスを充填したガス室43と、オイルを充填したオイル室44と、ガス室43とオイル室44を隔てるフリーピストン45とを具備するシリンダ22と、該シリンダ22の下端部を貫通してシリンダ22内部のピストン26と連結することで、シリンダ22に対して出没方向に摺動可能に保持されるピストンロッド23とからなるものが挙げられる。かかるガス式ダンパー27では、オイルがピストン26の動きを妨げることによって、ピストンロッド23の出没方向に移動速度に応じた減衰力が働くとともに、圧縮ガスのガス圧によってピストン26を押圧することでピストンロッド23が突出方向に付勢される。なお、かかるガス式ダンパー27は既存一般のものであり、また、本発明に係るガス式ダンパーは、
図8に示すものには限定されないため詳細な説明は省略する。
【0028】
図6〜8に示すように、ガス式ダンパー27のシリンダ22の上端と、ピストンロッド23の下端には、外側に突出する円板状の鍔部24,25が夫々配設される。そして、ガス式ダンパー27は、ある程度収縮した状態で外筒10の内空部に収納され、上端の鍔部24を外筒10上端の連結金具12に弾接するとともに、下端の鍔部25を中筒11の上端部に弾接している。そして、かかる収納状態では、ガス式ダンパー27のばね力によって外筒10が上方へ、中筒11が下方へ付勢され、
図6に示すように、伸縮管6は、通常は係止部13と係止金具14が係合する伸長状態に保持される。
【0029】
そして、伸縮管6の伸長状態にあって、ガス式ダンパー27の反発力を超える力が収縮方向に加わると、外筒10と中筒11が相対摺動して伸縮管6が収縮状態となる。この時、ガス式ダンパー27が、外筒10と中筒11の相対移動を抑える減衰作用を発揮することにより、伸縮管6は、加えられた力と釣り合う長さに速やか収束することとなる。
【0030】
かかる伸縮管6によれば、使用者が、歩行時にステ
ッキ1aの先端を地面に着くと、ガス式ダンパー27を反発させながら収縮し、これにより、把持部3に伝わる衝撃が軽減される。そして、収縮した伸縮管6は、ガス式ダンパー27の減衰作用によって殆ど振動せずに把持部3に加わる重みと釣り合う長さで停止して、ステ
ッキ1aの長さは速やかに安定する。したがって、かかる変形例にあっても、使用者は、ステ
ッキ1aを地面に着いた直後から、安定した支持を得ることができる。
【0031】
また、着地後に伸縮管6の長さが一旦安定すると、把持部3に加わる重みが多少変動しても、ガス式ダンパー27の減衰作用によって伸縮管6の伸縮が最低限に抑えられ、ステ
ッキ1aの長さは安定したものとなる。そして、ステ
ッキ1aの先端が地面から離れると、伸縮管6はガス式ダンパー27のばね力によって伸長状態に復帰することとなる。
【0032】
このように、本実施例のステ
ッキ1aによれば、ガス式ダンパー27のみによって、着地時の衝撃を吸収できるとともに、着地直後から安定した支持を得ることができる。そして、このように、衝撃吸収装置15aをガス式ダンパー27のみで構成すれば、上記実施例よりも衝撃吸収装置を小型化することができ、ステッキのさらなる小型軽量化が可能となる。
【0033】
次に、上記実施例から、伸縮管の外筒の構成を変更した変形例について説明する。なお、かかる変形例のステッキ1bは、外筒以外の構成は、上記実施例と同じであるため、図中の符号を共通させて説明を省略する。
【0034】
本変形例のステッキ1bでは、
図9に示すように、外筒10aを構成する金属パイプの外周面に矩形状の開口部38が形成され、該開口部38が樹脂製の透明板39によって覆われている。このように、外筒10の一部又は全部を透明素材に置き換えた場合には、使用者は、
図9に示すように、伸縮管6の内部で圧縮コイルばね20やダンパー21が伸び縮みする様子を、開口部38を介して外部から視認可能となる。
【0035】
なお、本発明におけるステッキは、上記実施例の形態に限らず本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。例えば、実施例では、伸縮管にダンパーと圧縮コイルばねが一つずつ配設されていたが、伸縮管にはダンパーや圧縮コイルばねを複数配設してもかまわない。また、ステッキ本体に二本以上の伸縮管を配設してもかまわない。また、伸縮管にオイルダンパーやガス式ダンパーを配設する場合には、使用者の体重などに応じてダンパーの減衰力を調整可能とすることも提案される。また、本発明に係るステッキは、折畳み式や組立て式であってもかまわない。また、上記実施例では、オイルダンパー21の両端の鍔部24,25を、圧縮コイルばね20の付勢力によって外筒10及び中筒11に連結しているが、かかる構成に限らず、別途ネジ等によって鍔部24,25を外筒10と中筒11に固定してもかまわない。また、上記実施例のステッキ1は、日常歩行の補助に用いられるものであるが、登山や山歩き、スキー用のステッキに対しても、上記実施例同様に伸縮管を配設することで本発明を適用できる。