(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸部が突設された軸部材と、該軸部材の軸部が挿通されて相対的に回動自在に包持される穴状の軸受部が形成された軸受部材とを備え、上記軸部を軸受部に挿入して上記軸部材と軸受部材とを組付けて構成されるヒンジ装置を製造する方法であって、
上記軸部材と軸受部材とを一つの成形型を用いて成形してヒンジ装置の中間品を得、該ヒンジ装置の中間品を、上記軸部材の軸部の軸線と上記軸受部材の軸受部の軸線とを一致させて該軸部を軸受部に対峙させるとともに、該軸部材と軸受部材とを湯道を形成するランナで連結して構成し、次に、該ヒンジ装置の中間品に対して、上記軸部が軸受部に挿入されるように上記軸線方向に沿う力を付与し、該力の付与により上記ランナを破損すると同時に上記軸部を軸受部に挿入して該軸部材と軸受部材とを組付けるヒンジ装置の製造方法であり、
上記ヒンジ装置の中間品において、上記ランナを、上記力の付与時に破損して該軸部材及び軸受部材から離脱するように形成したことを特徴とするヒンジ装置の製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、自動車の可倒式シートに用いられるヒンジ装置として、車体側に固定される一方部材と、シート側に固定される他方部材とを備え、一方部材及び他方部材に形成した軸受孔に回動軸を挿通し、カシメ加工などによりこの回動軸を取り付けるものが知られている。しかしながら、回動軸を別途設ける分、部品点数が増加するとともに、回動軸の組付け時に軸合わせをして、カシメ加工等でこの回動軸を取り付けることから、作業が煩雑でコスト高になっているという問題があった。
【0003】
これを解決するために、従来においては、例えば、特開平9−202166号公報(特許文献1)に掲載されたヒンジ装置が提案されている。
図17に示すように、このヒンジ装置Haは、軸部100がカシメ加工等で取り付けられた軸部材101と、軸部材101の軸部100が相対的に回動自在に挿通される軸受部102が形成された軸受部材103とを備えている。軸受部材103の軸受部102の一部は、軸部材101の軸部100が軸方向に直交する方向に挿通可能に切欠き形成されて、切欠き部104を構成している。また、軸部100の先端には軸方向への軸部の抜け止めをするための大径部105が形成されている。これにより、軸部100を予め軸部材101に設けて、組付け時に軸部材101の軸部100を軸受部材103の軸受部102の切欠き部104から挿通するだけで、ワンタッチで組付けができるので、組付け作業が簡易になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のヒンジ装置Haにおいては、ワンタッチで軸部材101を軸受部材103に組み付けることはできるが、軸受部材103には切欠き部104があることから、それだけ、軸部100の支持が弱くなっており、支持の安定性に劣るという問題があった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、軸部を穴状の軸受部で包持して軸部の支持の安定性の向上を図るとともに、組付けの際の軸部と軸受部との軸合わせを容易にして組付け作業性の向上を図ったヒンジ装置の製造方法,ヒンジ装置の中間品及びヒンジ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するため、本発明のヒンジ装置の製造方法は、軸部が突設された軸部材と、該軸部材の軸部が挿通されて相対的に回動自在に包持される穴状の軸受部が形成された軸受部材とを備え、上記軸部を軸受部に挿入して上記軸部材と軸受部材とを組付けて構成されるヒンジ装置を製造する方法であって、
上記軸部材と軸受部材とを一つの成形型を用いて成形してヒンジ装置の中間品を得、該ヒンジ装置の中間品を、上記軸部材の軸部の軸線と上記軸受部材の軸受部の軸線とを一致させて該軸部を軸受部に対峙させるとともに、該軸部材と軸受部材とを湯道を形成するランナで連結して構成し、次に、該ヒンジ装置の中間品に対して、上記軸部が軸受部に挿入されるように上記軸線方向に沿う力を付与し、該力の付与により上記ランナを破損すると同時に上記軸部を軸受部に挿入して該軸部材と軸受部材とを組付ける構成としている。
【0007】
これにより、軸部材と軸受部材とは、一つの成形型を用いて成形されるとともに、軸部は軸部材に一体に設けられているので、別々に製造する場合に比較して、製造効率が向上させられる。また、中間品は軸部材と軸受部材とが一体になっているので、持ち運びが容易であり、取り扱いも容易になる。
そして、軸部材を軸受部材に組み付けるときは、ヒンジ装置の中間品に対して、軸部が軸受部に挿入されるように軸線方向に沿う力を付与し、この力の付与によりランナを破損すると同時に軸部を軸受部に挿入する。この場合、軸部材の軸部の軸線と軸受部材の軸受部の軸線とが一致しているので、逐一軸合わせをしなくても良く、極めて簡易な作業で済むので、組付け作業性を向上させることができる。また、軸部は軸部材に一体に設けられているので、それだけ部品点数が少なくなっていることから、この点でも組付け作業性が向上させられる。
【0008】
このヒンジ装置を用いて、例えば、被取付部材として自動車のフードを取り付けるときは、軸部材及び軸受部材の何れか一方を車体に取り付け、何れか他方にフードを取り付ける。取り付けた状態では、軸部が穴状の軸受部に包持されるので、それだけ軸部の支持が確実になり支持の安定化を図ることができる。
【0009】
そして、必要に応じ、上記ヒンジ装置の中間品において、上記ランナを、上記力の付与時に破損して該軸部材及び軸受部材から離脱するように形成した構成としている。これにより、軸部材及び軸受部材の組付け時にこれらからランナが離脱するので、後加工の手間が不要になりあるいは軽減され、この点でも製造効率が向上させられる。
【0010】
また、必要に応じ、上記ヒンジ装置の中間品において、上記軸部の先端の外周縁と上記軸受部の開口端の内周縁とを上記力の付与時に破損して飛散する薄肉部で連結した構成としている。これにより、薄肉部を設けたので、軸部の軸線と軸受部の軸線とを確実に一致させておくことができ、そのため、軸部の軸受部に対する挿入を確実に且つ容易に行うことができる。
【0011】
また、上記の目的を達成するため、本発明のヒンジ装置の中間品は、上記のヒンジ装置の製造方法で用いられるヒンジ装置の中間品にある。
更に、上記の目的を達成するため、本発明のヒンジ装置は、上記のヒンジ装置の製造方法で製造されたヒンジ装置にある。
これにより、上記と同様に、軸部を穴状の軸受部で包持して軸部の支持の安定性の向上を図るとともに、組付けの際の軸部と軸受部との軸合わせを容易にして組付け作業性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軸部材と軸受部材とは、一つの成形型を用いて成形されるとともに、軸部は軸部材に一体に設けられているので、別々に製造する場合に比較して、製造効率を向上させることができる。また、中間品は軸部材と軸受部材とが一体になっているので、持ち運びが容易であり、取り扱いも容易になる。
そして、軸部材を軸受部材に組み付けるときは、ヒンジ装置の中間品に対して、軸部が軸受部に挿入されるように軸線方向に沿う力を付与し、力の付与によりランナを破損すると同時に軸部を軸受部に挿入する。この場合、軸部材の軸部の軸線と軸受部材の軸受部の軸線とが一致しているので、逐一軸合わせをしなくても良く、極めて簡易な作業で済むので、組付け作業性を向上させることができる。また、軸部は軸部材に一体に設けられているので、それだけ部品点数が少なくなっていることから、この点でも組付け作業性を向上させることができる。
また、本発明のヒンジ装置において、軸部が軸受部に支持された状態では、軸受部は穴状に形成され軸部を包持することから、それだけ軸部の支持が確実になり支持の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係るヒンジ装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るヒンジ装置を示す分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係るヒンジ装置を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係るヒンジ装置を示す
図3中A−A線断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係るヒンジ装置の中間品を示し、(a)は斜視図、(b)は組付け時の状態を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係るヒンジ装置の中間品を示し、(a)は
図5(a)中B−B線断面図、(b)は組付け時の状態を示す
図5(b)中C−C線断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係るヒンジ装置の中間品を示す
図6(a)中D部拡大断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係るヒンジ装置が適用される一例を示す斜視図である。
【
図9】本発明の別の実施の形態に係るヒンジ装置を示す斜視図である。
【
図10】本発明の別の実施の形態に係るヒンジ装置を示す分解斜視図である。
【
図11】本発明の別の実施の形態に係るヒンジ装置を示す正面図である。
【
図12】本発明の別の実施の形態に係るヒンジ装置を示す側面図である。
【
図13】本発明の別の実施の形態に係るヒンジ装置の中間品を示し、(a)は斜視図、(b)は組付け時の状態を示す斜視図である。
【
図14】本発明の別の実施の形態に係るヒンジ装置の中間品を示し、(a)は
図13(a)中E−E線断面図、(b)は組付け時の状態を示す
図13(b)中F−F線断面図である。
【
図15】本発明の別の実施の形態に係るヒンジ装置が適用される一例を示す断面図である。
【
図16】本発明の実施の形態に係るヒンジ装置の変形例を示す
図4相当断面図である。
【
図17】従来のヒンジ装置の一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係るヒンジ装置の製造方法,ヒンジ装置の中間品及びヒンジ装置について詳細に説明する。
図1乃至
図4に示すように、本発明の実施の形態に係るヒンジ装置Hの基本的構成は、軸部材1と軸部材1に対して相対的に回動自在に組み付けられた軸受部材10とから構成されている。また、後述もするが、この軸部材1及び軸受部材10は、夫々、金属若しくは樹脂製で、鋳造もしくは射出成形により一体形成される。実施の形態では、金属の鋳物で形成される。金属の種類は、鋳鉄,アルミニウム等どのような材質のものでも適用できる。
【0015】
詳しくは、軸部材1は、被取付部材Waが取り付けられるベースプレート2と、このベースプレート2の一側から直角に立設され軸部面3を有した軸部プレート4と、軸部プレート4の軸部面3から一体に突設される軸部5とを備えて構成されている。
一方、軸受部材10は、被取付部材Wbが取り付けられるベースプレート12と、このベースプレート12の一側から直角に立設され、軸部材1との組付け時に、軸部プレート4の軸部面3が面接触する軸受部面13を有した軸受部プレート14と、軸受部プレート14にその軸受部面13から形成され軸部5が軸線P方向に沿って挿通されて回動自在に包持される穴状の軸受部15とを備えて構成されている。
また、軸部面3の面積は軸部5の横断面積より大きく形成され、軸受部面13の面積も軸受部15の横断面積より大きく形成されている。
【0016】
また、軸部プレート4及び軸受部プレート14のいずれか一方(実施の形態では軸受部プレート14)には、軸部5が軸受部15に挿通された状態で、軸部5がその軸線P方向へ移動して軸受部15から抜けることを阻止する係合部20が設けられている。この係合部20は、軸受部プレート14の軸受部面13であってベースプレート12側の基端部から突設されており、軸部プレート4及び軸受部プレート14のいずれか他方(実施の形態では軸部プレート4)の外周部21に、軸部5の軸受部15に対する相対的な所要の回動範囲(
図3中θ)で係合する。係合部20と係合部20が設けられる軸部プレート4または軸受部プレート14(実施の形態では軸受部プレート14)とは一体形成されている。
【0017】
係合部20は、軸部プレート4及び軸受部プレート14のいずれか一方(実施の形態では軸受部プレート14)から他方(実施の形態では軸部プレート4)へ向けて突出する横突起22と、横突起22の先端から突出し何れか他方(実施の形態では軸部プレート4)の外周部21の外側面23に対峙する縦突起24とを備えて構成されている。単純な構成なので係合部20を容易に形成することができる。また、軸部プレート4及び軸受部プレート14のいずれか他方(実施の形態では軸部プレート4)の外周部21であって、少なくとも係合部20が係合する回動範囲にある外周21aは、対応する軸部5または軸受部15の軸心Oを中心とする円弧に形成されている。
【0018】
更に、軸部プレート4及び軸受部プレート14のいずれか他方(実施の形態では軸部プレート4)の外周部21には、係合部20の係合を無効にして軸部5がその軸線P方向へ移動して軸受部15に対して挿脱可能にする切欠き部30が設けられている。切欠き部30は軸部プレート4の一方側の側端に形成されており、切欠き部30から他方側の側端に向けて、係合部20が係合する外周部21となっている。切欠き部30側の外周21aの円弧の始端は、軸部5の軸受部15に対する相対的な所要の回動範囲(θ)の始端を構成する。
【0019】
更にまた、軸部プレート4及び軸受部プレート14のいずれか他方(実施の形態では軸部プレート4)の外周部21に、係合部20が衝止して軸部5の軸受部15に対する相対的な所要の回動範囲(θ)の回動終端を規定するストッパ31が形成されている。ストッパ31は、切欠き部30と反対側の側端のベースプレート2側に形成されており、係合部20が衝止する傾斜面で形成されている。
【0020】
次に、このヒンジ装置の製造方法及びこの製造方法で用いるヒンジ装置の中間品について説明する。
図5乃至
図7に示すように、ヒンジ装置Hは、上記もしたように金属の鋳物で形成され、軸部材1と軸受部材10とを一つの成形型を用いて、ダイカストマシンや砂型鋳造により成形する。この成形型の成形においては、先ず、軸部材1と軸受部材10とを湯道を形成するランナ40で連結したヒンジ装置Hの中間品Tを得る。
詳しくは、
図5(a)及び
図6(a)に示すように、ヒンジ装置Hの中間品Tを、軸部プレート4の軸部面3と軸受プレートの軸受部面13とを対面させるとともに、軸部材1の軸部5の軸線Pと軸受部材10の軸受部15の軸線Pとを一致させて軸部5を軸受部15に対峙させ、且つ、係合部20を切欠き部30に対応した位置に位置させ、更に、軸部材1と軸受部材10とを湯道を形成するランナ40で連結して形成する。
【0021】
ランナ40は、軸部材1と軸受部材10との左右に夫々設けられ、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、ヒンジ装置Hの中間品Tに対して、軸部5が軸受部15に挿入されるように軸線P方向に沿う力を付与した際、破損して軸部5及び軸受部15から離脱するように形成されている。具体的には、ランナ40は、軸線P方向に沿う主棒41と、主棒41の両端から主棒41に対して直角に連設され、軸部材1及び軸受部材10に夫々連設される一対の従棒42とから構成されている。従棒42と軸部材1との連設部、及び、従棒42と軸受部材10との連設部は、上記の軸線P方向に沿う力を付与した際、折れて破損する強度の太さに形成されている。
【0022】
また、ヒンジ装置Hの中間品Tにおいて、
図7に示すように、軸部5の先端の外周縁と、軸受部15の開口端の内周縁とは、上記の力の付与時に破損して飛散する薄肉部45で連結されている。軸部5の外径は、軸受部15の内径よりも僅かに小径に形成されているので、上記の軸線P方向に沿う力を付与した際、薄肉部45が破損して飛散し、軸部5が軸受部15に挿入される。
【0023】
ヒンジ装置Hの中間品Tを得た後は、
図5(b)及び
図6(b)に示すように、このヒンジ装置Hの中間品Tに対して、例えばハンマーなどを用いて、軸部5が軸受部15に挿入されるように軸線P方向に沿う力を付与する。この力の付与により、ランナ40が破損されて離脱すると同時に、軸部5が軸受部15に挿入されて軸部材1と軸受部材10とが組付けられる。この場合、軸部5の先端の外周縁と軸受部15の開口端の内周縁との間にある薄肉部45が破損して飛散し、軸部5が軸受部15に挿入される。薄肉部45を設けたので、軸部5の軸線Pと軸受部15の軸線Pとを確実に一致させておくことができ、そのため、軸部5の軸受部15に対する挿入が確実に且つ容易に行われる。
【0024】
このため、このヒンジ装置Hの中間品Tに対して、軸部5が軸受部15に挿入されるように軸線P方向に沿う力を付与するだけで、ヒンジ装置Hが組み付けられるので、逐一、軸部5と軸受部15の軸合わせをしなくても良く、極めて簡易に組み付けることができ、それだけ、製造効率が向上させられる。
【0025】
このようにして、組付けられたヒンジ装置Hは、例えば、
図8に示すように、自動車のフードのヒンジとして用いる。このフードの取付けにおいては、
図3及び
図4に示すように、例えば、軸部材1のベースプレート2を車体(被取付部材Wa)に取り付け、軸受部材10のベースプレート12にフード(被取付部材Wb)を取り付ける。係合部20の所要の回動範囲内(
図3中θ)において、フードの回動範囲(
図3中α)が規定される。
【0026】
この場合、軸部5が軸受部15に支持された状態では、軸受部15は穴状に形成され軸部5を包持することからそれだけ軸部5の支持が確実になり支持の安定化を図ることができる。また、軸部5が軸受部15に支持された状態では、軸部プレート4の軸部面3と、軸受部プレート14の軸受部面13とが面接触するので、軸部5が傾こうとしても軸部面3と軸受部面13との面接触により、これを規制することができ、この点でも軸部5の支持が確実になり支持の安定化を図ることができる。特に、軸部面3及び軸受部面13の面積が軸部5の横断面積及び軸受部15の断面積より大きく形成されているので、軸部面3と軸受部面13との面接触面積が大きくなり、軸部5の傾きをより一層確実に規制することができ、軸部5の支持を確実にして支持の安定化を図ることができる。更に、係合部20の所要の回動範囲内において係合部20による抜け止めが行われるが、プレートの外周部21が係合部20に係合するので、係合がしっかりして抜け止めが確実に行われ、この点でも軸部5の支持の安定化を図ることができる。
【0027】
また、この場合、係合部20が軸受部プレート14に一体形成されているので、係合部20の取付け強度も高く、それだけ、係合がしっかりして抜け止めが確実に行われ、この点でも軸部5の支持の安定化を図ることができる。更に、軸部プレート4の外周部21の外周21aが円弧に形成されているので、プレートの回動位置がどこにあっても係合部20と外周部21との関係が一定のものになり、それだけ、係合がしっかりして抜け止めが確実に行われ、この点でも軸部5の支持の安定化を図ることができる。
【0028】
フード(被取付部材Wb)の開閉においては、係合部20の所要の回動範囲内(図中θ)において、フード(被取付部材Wb)の回動範囲(図中α)が規定されるが、これを超えても、係合部20がストッパ31に衝止して回動終端が規定されるので、停止を確実にすることができる。また、係合部20を利用したので、ストッパ機構を簡単にすることができる。
【0029】
次に、本発明の別の実施の形態に係るヒンジ装置の製造方法,ヒンジ装置の中間品及びヒンジ装置について説明する。
図9乃至
図12に示すように、本発明の別の実施の形態に係るヒンジ装置Hの基本的構成は、上記と同様に、軸部材1と軸部材1に対して相対的に回動自在に組み付けられた軸受部材10とから構成され、金属の鋳物で形成される。
【0030】
詳しくは、軸部材1は、被取付部材Waが取り付けられるベースプレート2と、このベースプレート2の一側から直角に立設され軸部面3を有した軸部プレート4と、軸部プレート4の軸部面3から一体に突設される軸部5とを備えて構成されている。
一方、軸受部材10は、被取付部材Wbが取り付けられるベースプレート12と、このベースプレート12の一側から直角に立設され、軸部材1との組付け時に、軸部プレート4の軸部面3が面接触する軸受部面13を有した軸受部プレート14と、軸受部プレート14にその軸受部面13から形成され軸部5が軸線P方向に沿って挿通されて回動自在に包持される穴状の軸受部15とを備えて構成されている。
また、軸部面3の面積は軸部5の横断面積より大きく形成され、軸受部面13の面積も軸受部15の横断面積より大きく形成されている。
【0031】
また、軸部プレート4及び軸受部プレート14の外周部21の上側の外周は、対応する軸部5または軸受部15の軸心Oを中心とする円弧に形成されている。上記と異なって、係合部20は設けられていない。更に、軸部プレート4及び軸受部プレート14のいずれか一方(実施の形態では軸受部プレート14)の外周部には、軸部プレート4及び軸受部プレート14のいずれか他方(実施の形態では軸部プレート4)の外周に対峙する突起50が一体に突設されている。一方、軸部プレート4及び軸受部プレート14のいずれか他方(実施の形態では軸部プレート4)の外周部には、この突起50が衝止して軸部5の軸受部15に対する相対的な所要の回動範囲の回動終端を規定するストッパ51が形成されている。ストッパ51は、軸部プレート4の一側のベースプレート2側に形成されており、突起50が衝止する傾斜面で形成されている。
【0032】
次に、このヒンジ装置の製造方法及びこの製造方法で用いるヒンジ装置の中間品について説明する。
図13及び
図14に示すように、ヒンジ装置Hは、上記と同様に、金属の鋳物で形成され、軸部材1と軸受部材10とを一つの成形型を用いて成形する。この成形型の成形においては、先ず、軸部材1と軸受部材10とを湯道を形成するランナ40で連結したヒンジ装置Hの中間品Tを得る。
図13(a)及び
図14(a)に示すように、ヒンジ装置Hの中間品Tは、上記と同様に、軸部プレート4の軸部面3と軸受プレートの軸受部面13とを対面させるとともに、軸部材1の軸部5の軸線Pと軸受部材10の軸受部15の軸線Pとを一致させて軸部5を軸受部15に対峙させ、更に、軸部材1と軸受部材10とを湯道を形成するランナ40で連結して形成されている。ランナ40は、上記と同様に、軸部材1と軸受部材10との左右に夫々設けられ、
図13(b)及び
図14(b)に示すように、ヒンジ装置Hの中間品Tに対して、軸部5が軸受部15に挿入されるように軸線P方向に沿う力を付与した際、破損して軸部5及び軸受部15から離脱するように形成されている。ランナ40の具体的構成は上記と同様である。また、ヒンジ装置Hの中間品Tにおいては、
図7に示すように、上記と同様に、軸部5の先端の外周縁と、軸受部15の開口端の内周縁とは、上記の力の付与時に破損して飛散する薄肉部45で連結されている。
【0033】
ヒンジ装置Hの中間品Tを得た後は、
図13(b)及び
図14(b)に示すように、このヒンジ装置Hの中間品Tに対して、例えばハンマーなどを用いて、軸部5が軸受部15に挿入されるように軸線P方向に沿う力を付与する。この力の付与により、ランナ40が破損されて離脱すると同時に、軸部5が軸受部15に挿入されて軸部材1と軸受部材10とが組付けられる。この場合、軸部5の先端の外周縁と軸受部15の開口端の内周縁との間にある薄肉部45が破損して飛散し、軸部5が軸受部15に挿入される。薄肉部45を設けたので、軸部5の軸線Pと軸受部15の軸線Pとを確実に一致させておくことができ、そのため、軸部5の軸受部15に対する挿入が確実に且つ容易に行われる。
【0034】
このため、このヒンジ装置Hの中間品Tに対して、軸部5が軸受部15に挿入されるように軸線P方向に沿う力を付与するだけで、ヒンジ装置Hが組み付けられるので、逐一、軸部5と軸受部15の軸合わせをしなくても良く、極めて簡易に組み付けることができ、それだけ、製造効率が向上させられる。
【0035】
このようにして、組付けられたヒンジ装置Hは、例えば、
図15に示すように、被取付部材Wa,Wbに取り付けられる。この取付けにおいては、ヒンジ装置Hを一対用い、軸部5の先端同士が対面するように軸部材1のベースプレート2を一方の被取付部材Waに例えばボルト,ナットで取り付ける。その後、軸受部材10のベースプレート12間に他方の被取付部材Wbを架け渡して例えばボルト,ナットで取り付ける。この場合、上記の係合部20のあるヒンジ装置Hと異なって、この別のヒンジ装置Hは係合部20がないので、軸部5が軸受部15から抜けようとするが、軸受部材10のベースプレート12間に他方の被取付部材Wbが架け渡されているので、抜ける事態は防止される。
【0036】
そして、軸部5が軸受部15に支持された状態では、軸受部15は穴状に形成され軸部5を包持することからそれだけ軸部5の支持が確実になり支持の安定化を図ることができる。また、軸部5が軸受部15に支持された状態では、軸部プレート4の軸部面3と、軸受部プレート14の軸受部面13とが面接触するので、軸部5が傾こうとしても軸部面3と軸受部面13との面接触により、これを規制することができ、この点でも軸部5の支持が確実になり支持の安定化を図ることができる。特に、軸部面3及び軸受部面13の面積が軸部5の横断面積及び軸受部15の断面積より大きく形成されているので、軸部面3と軸受部面13との面接触面積が大きくなり、軸部5の傾きをより一層確実に規制することができ、軸部5の支持を確実にして支持の安定化を図ることができる。また、他方の被取付部材Wbが大きく回動しても、突起50がストッパ51に衝止して回動終端を規定するので、停止を確実にすることができる。
【0037】
尚、上記先の実施の形態において、係合部20を軸受部プレート14側に設けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、軸部プレート4側に設けて軸受部プレート14に係合するように構成しても良く、適宜変更して差し支えない。例えば、
図16に示すように、
図4における軸部5と軸受部15とを互いに逆になるようにした構造のものが考えられる。
また、上記実施の形態では、軸部材1と軸受部材10とを金属の鋳物で形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、射出成形機により樹脂で成形しても良く、適宜変更して差し支えない。
尚また、上記実施の形態では、本発明に係るヒンジ装置Hを、自動車のフードに用いた例で説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、自動車の可倒式のシートやリッド等に用いても良く、また、自動車の部品のみならず、どのような被取付部材に用いてよいことは勿論である。