(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した装置では、ワークの交換はできるものの、ワークの種類によってはこれを支持する治具も交換する必要がある。しかしながら、この装置では治具を自動的に交換することはできないため、治具の交換は手動で行うしかなかった。そのため、ワーク及び治具の交換作業についは、効率化の観点から未だ改善の余地があった。本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、ワークのみならず、治具の交換も自動化することが可能な交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、治具を介してワークを取り付け可能な主軸ユニットを備えた加工装置に用いられる交換装置であって、前記治具及びワークに着脱自在に固定される少なくとも1つの固定部を有する、固定機構と、前記固定部を、前記主軸ユニットと平行に延びる軸線に沿って、少なくとも、前記主軸ユニットに取り付けられた前記治具に着脱自在に固定可能な第1の位置、前記治具に取り付けられた前記ワークに着脱自在に固定可能な第2の位置、及び前記軸線方向で前記治具及びワークと干渉しない第3の位置に、移動可能な移動機構と、を備えている。
【0006】
この構成によれば、ワーク及び治具に着脱自在に固定される固定部を有し、この固定部が、少なくとも、治具に着脱自在に固定可能な第1の位置、ワークに着脱自在に固定可能な第2の位置、及び軸線方向で治具及びワークと干渉しない第3の位置に、移動可能となっている。そのため、ワークのみならず、これを支持する治具の交換も可能となる。例えば、固定部を第2の位置でワークに固定し、この状態で第3の位置に移動させれば、ワークを治具から取り外すことができ、この第3の位置で新たなワークに交換することができる。さらに、ワークを治具から取り外した後、固定部を第1の位置に移動させて治具に固定し、これを第3の位置に移動させれば、治具を主軸ユニットから取り外すことができ、この第3の位置で治具の交換が可能となる。このように、本発明では、ワーク及び治具に固定可能な固定具を、軸方向の少なくとも3つの位置に移動可能とすることで、ワーク及び治具の交換を自動化することができる。
【0007】
上記交換装置では、固定部を、軸線周りに回転させる回転機構をさらに設けることができる。このようにすると、固定部を主軸ユニットの軸線から外れた位置に移動させることができる。したがって、主軸ユニットに干渉することなく、固定部からワークや治具を取り外したり、新たなワークや治具を固定部に取り付けることができる。
【0008】
上記固定機構は、種々の構成にすることができる。例えば、2以上の固定部を設けるとともに、これら固定部を支持する支持部をさらに設け、この支持部において、2以上の固定部を、軸周りで互いに異なる位置に配置することができる。このようにすると、次のような利点がある。例えば、一つの固定部が主軸ユニットに取り付けられたワーク又は治具を取り外しているときに、他の固定部に新たなワークや治具を取り付けておくことができる。そして、回転機構により、支持部を回転させれば、新たなワークや治具を主軸ユニットに取り付けることができる。したがって、主軸ユニットに取り付けられたワーク又は治具の取り外しと、新たなワーク又は治具の準備を同時に行うことができるため、交換作業を効率的に行うことができる。
【0009】
上記移動機構は、例えば、次のように構成することができる。まず、伸縮可能な2つの第1及び第2のシリンダを設け、両シリンダが収縮状態にあるとき、固定部が第1の位置に配置され、第1のシリンダが収縮状態にあり、第2のシリンダが伸長状態にあるとき、固定部が第2の位置に配置され、両シリンダが伸長状態にあるとき、固定部が第3の位置に配置されるように、構成することができる。このように、2つのシリンダを設けることで、少なくとも3つの位置の位置決めを正確に行うことができる。したがって、上述した固定部を第1から第3の位置それぞれに正確に配置することができる。
【0010】
上記移動機構及び回転機構は、例えば、次のように構成することができる。ます、固定機構に接続され、軸方向に移動可能で、且つ外周面にスプラインが形成された、移動ロッドを設けることができる。そして、回転機構に、移動ロッドとスプライン結合するナットと、このナットを回転駆動する駆動部と、を設けることができる。これにより、固定機構の軸方向への移動と、軸周りの回転を行うことができる。
【0011】
固定部は、種々の構成にすることができるが、例えば、治具及びワークを挟持可能な一対のアームを設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る交換装置によれば、ワークのみならず、治具の交換を自動化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る交換装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。この交換装置は、ワーク及びこのワークを支持する治具を交換するためのものである。ここでは、この交換装置を、歯車の加工装置に適用した例について説明する。以下では、まず、加工装置について説明し、その後、交換装置について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る加工装置及び交換装置の概略構成を示す正面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る歯車の加工装置1は、内部空間111及びこの内部空間111の上部を塞ぐ蓋部112を有する基台11を備えている。そして、この基台11には、ワークWである歯車を支持する主軸ユニット12と、この主軸ユニット12との間でワークWを挟持する心押しユニット13とが設けられている。さらに、基台11上には、ワークWを加工するためのカッター等の加工具が支持された加工具ユニット14が設けられている。以下、これら各ユニットについて詳細に説明する。
【0016】
図2は、加工装置の主軸ユニット及び交換装置の断面図である。
図2に示すように、主軸ユニット12は、基台11の蓋部112に固定される筒状の基部121と、この基部121の内部に挿通される筒状の回転スリーブ122と、を備えている。基部121の下端部は、蓋部112に固定されており、ここから上方へと延びている。そして、回転スリーブ122は、軸方向に離れて配置された一対の軸受123を介して、基部121の内部に回転自在に取り付けられている。また、回転スリーブ122の上下の両端部は、基部121の上端及び下端からそれぞれ突出している。このうち、回転スリーブ122の下端部は、基台11の内部空間111に突出し、この突出部分に第1プーリー124が固定されている。また、基部11の内部空間111には、回転スリーブ122と平行に延びる回転軸を有する駆動モータ125が配置され、この駆動モータ125の回転軸には第2プーリー126が取り付けられている。そして、第1及び第2プーリー124,126には伝動ベルト127が掛け渡されており、駆動モータ125を駆動することで、回転スリーブ122が軸周りに回転するようになっている。
【0017】
回転スリーブ122の内部には、軸方向に上下動可能な可動ロッド128が設けられている。また、回転スリーブ122の上端部には、治具Zを固定するためのチャック部120が設けられている。このチャック部120には、後述するように、チャック部120の上面及び側面を覆うように配置される治具Zが取り付けられるようになっており、チャック部120が治具Zの内壁面を径方向外方に押圧することで、治具Zをチャック部120に固定するようになっている。具体的には、上述した可動ロッド128が、下方からチャック部120の内部を押圧することで、チャック部120の外周面が治具Zの拘束を解くように構成されており、可動ロッド128が下降すると、チャック部120が治具Zを固定するようになっている。チャック部120としては、公知のコレットチャックなどを用いることができる。
【0018】
可動ロッド128の下端部は、回転スリーブ122の下端から下方に突出しており、この突出部分に支持板129が取り付けられている。支持板129と回転スリーブ122との間には、可動ロッド128の外周面に巻き付くようにバネ1290が配置されており、このバネ1290によって支持板129が下方に押し下げられている。すなわち、このバネ1290により、可動ロッド128は、通常は下方に押し遣られ、チャック部120に力を及ばせないようにしている。また、支持板129には、可動ロッド128を囲むように周方向に上方へ突出する複数の支持棒1291が配置されている。各支持棒1291は、第1プーリー124の下面に形成された穴にそれぞれ挿入され、上下動可能となっている。したがって、第1プーリー124が回転すると、支持棒1291を介して連結された支持板129も回転し、これに伴って可動ロッド128も回転する。すなわち、可動ロッド128は回転スリーブ122とともに軸周りに回転する。
【0019】
支持板129の下方には、支持板129を上方に押し上げるための押し上げ機構15が設けられている。この押し上げ機構15は、支持板129の下方に配置された複数の押し上げ棒151を備えており、これら押し上げ棒151が基板152によって支持されている。基板152の下方には油圧シリンダ153が配置されており、この油圧シリンダ153によって基板152が上方に押し上げられる。これにより、押し上げ棒151が支持板129を上方に押し上げ、可動ロッド128がチャック部120に作用する。すなわち、チャック部120と治具Zの固定状態が解除される。一方、押し上げ棒151が降下すると、可動ロッド128も下降し、チャック部120と治具Zが固定される。押し上げ棒151が降下すると、可動ロッド128はバネ1290によって下方に付勢されているため、チャック部120と治具Zとの固定状態が維持される。なお、押し上げ棒151の上端と支持板129との間には隙間が形成されており、油圧シリンダ153が作動していないときには押し上げ棒151は支持板129に接触しないようになっている。そのため、支持板129は押し上げ棒151と干渉せず、可動ロッド128とともに回転可能となる。
【0020】
また、この主軸ユニット12には、チャック部120に対して空気を供給するための空気供給機構が設けられている。具体的には、以下の通りである。まず、支持板129の下面に、ロータリジョイント16が回転可能に連結されており、このロータリジョイント16を介して、可動ロッド128内にエアを供給できるようになっている。可動ロッド128の内部には、軸方向に延びる貫通孔1281が形成されており、貫通孔1281の下端部が上述したロータリジョイント16に連結されている。この貫通孔1281は、可動ロッド128の上端付近で径方向に延び、回転スリーブ122の内部に開口している。このエアの流通路は、上方に延び、チャック部120の上面で開口している。このように形成されたエアの流通路からはエアが排出され、これによってチャック部120の上面のゴミを吹き飛ばすことができる。したがって、治具Zを正確に取り付けることができる。また、流通路1221とは別の流通路(図示せず)が可動ロッド128に設けられ、チェック部120に治具Zが装着されると、流通路(図示せず)が治具Zによって塞がれ、エアが排出されないようになるため、ロータリジョイント16にエアを供給する供給源(図示省略)が、これを検出することで、治具Zが装着されたことを検知することができる。
【0021】
図1に示すように、心押しユニット13は、基台11上に配置され、上方に延びる支持部131と、この支持部131に沿って上下動可能な心押し部132とを備えている。支持部131の上端には、モータ133が取り付けられており、このモータ133の回転軸に、下方へ延びるボールねじ134が連結されている。ボールねじ134には、ナット135が螺合しており、このナット135に心押し部132が取り付けられている。また、支持部131には、ボールねじ134と平行に、上下方向に延びるガイドレール136が取り付けられており、心押し部132は、このガイドレール136によってガイドされつつ上下動するようになっている。また、心押し部132の下端には、後述するように、治具Zを押圧する棒状の押圧部材1321が取り付けられている。
【0022】
図3は主軸ユニット及びこれに取り付けられた治具及びワークの拡大正面図である。同図に示すように、本実施形態の治具Zは、ワークWを支持するためのものであり、上述したように、主軸ユニット12のチャック部120に取り付けられる。治具Zは、主として3つの部位で構成されている。すなわち、下方から上方へ一体的に構成された、固定部Z1、テーパ部Z2、及び挿通部Z3を備えている。固定部Z1は、概ね円筒状に形成され、その下面にはチャック部120が挿入される開口Z11が形成されている。また、固定部Z1の外周面には、周方向に延びる環状溝Z12が形成されており、後述するように、この環状溝Z12に交換装置2のアームが嵌まるようになっている。そして、固定部Z1の上端には上方に延びるテーパ部Z2が一体的に連結されており、上方にいくにしたがって治具Zの径が小さくなる。テーパ部Z2の上端には、径の小さい挿通部Z3が設けられ、この挿通部Z3がワークWの中心穴W1に挿入される。挿通部Z3には、上方から心押しユニット13の押圧部材1321によって押圧されると、径方向に移動する可動部(図示省略)が設けられており、この可動部がワークWの中心穴W1を内側から押圧することで、ワークWが挿通部Z3に固定される。このような挿通部Z3としては、例えば、公知のコレットチャックを用いることができる。
【0023】
図1に示すように、本実施形態では、ワークWである歯車の面取りを行う加工具141が加工具ユニット14に取り付けられている。この加工具ユニット14は、心押しユニット13の支持部131の側面に、水平方向に移動可能に取り付けられた基部142と、この基部142に回転自在に支持される加工具支持部143とを備えている。基部142は、図示を省略するモータ、ボールねじ、及びナットを有する移動機構によって、主軸ユニット12側に近接離間するようになっている。そして、基部142に取り付けられる加工具支持部143は、円形に形成され、その外周に6個の加工具141が等間隔で設けられている。各加工具141は、歯車の両面の角部に押圧される一対の押圧部材1411と、これら押圧部材1411を回転自在に支持する支持部1412とを備えている。各押圧部材1411は、円板状に形成され、歯車の両面の角部に当接するように所定間隔をあけて平行に配置されている。本実施形態の加工具ユニット14は、歯車の厚みや、面取り形状に合わせて形態の異なる6個の加工具141を備えている。加工を行う際には、加工具支持部143を回転させて、いずれかの加工具141が主軸ユニット12のワークWと対向するように配置し、その後、基部142を主軸ユニット12側に移動させ、押圧部材1411をワークWに押しつけることで、加工を行う。
【0024】
続いて、交換装置について説明する。
図2に示すように、交換装置2は、基台11に固定される筒状の基部20と、この基部20の内部に挿通支持される筒状の回転スリーブ21とを備えている。また、回転スリーブ21内に挿通される昇降ロッド22を有しており、これらは主軸ユニット12と隣接して配置されている。交換装置2の基部20の下端部は、蓋部112に固定されており、ここから上方へ延びている。回転スリーブ21は、基部20の内部で軸周りに回転可能で、その内部に挿通される昇降ロッド22は昇降可能であり、その下半分にはスプライン加工が施されたスプライン部221を構成している。そして、このスプライン部221が基部20の下端から基台11の内部空間111へ延び、その下端部には、ロータリジョイント23が回転可能に取り付けられている。昇降ロッド22の内部には、4つの貫通孔(
図6参照)が軸方向に形成されており、ロータリジョイント23を介して4つの貫通孔にエアが供給されるようになっている。
【0025】
次に、昇降ロッド22を上下方向に移動させる移動機構について説明する。まず、ロータリジョイント23の側面には固定部材231を介して第1エアシリンダ24が取り付けられており、さらに、この第1エアシリンダ24の下端には、第2エアシリンダ25が取り付けられている。両エアシリンダ24,25は、上下方向に伸縮するように構成されており、第2エアシリンダ25の下端部が基台11に固定されている。このような2つのエアシリンダ24,25により、昇降ロッド22は、3つの位置を取り得る。すなわち、第1及び第2エアシリンダ24,25がともに縮んだ第1の位置(1)、第2エアシリンダ25が伸長し第1エアシリンダ24が縮んだ第2の位置(2)、及び第1及び第2エアシリンダ24,25がともに伸長した第3の位置(3)、の3つの位置を取り得る。
【0026】
続いて、昇降ロッド22を軸周りに回転させるための回転機構について、
図2及び
図4を参照しつつ説明する。
図4は、回転機構を下方から見た平面図及び動作図である。昇降ロッド22のスプライン部221には、回転スリーブ21の下方においてスプラインナット222が螺合しており、このスプラインナット222の外周面には歯車が形成されている。また、スプラインナット222には、その約2倍の径の駆動歯車223が噛合している。この駆動歯車223の回転軸224は、基台11の蓋部112の下面に取り付けられている。すなわち、駆動歯車223が蓋部112の下面から回転自在に吊り下げられた状態となっている。また、駆動歯車223の下面には、平面視円形のカム225が一体的に取り付けられている。このカム225には、径方向に延びる切欠き2251が形成されており、この切欠き2251には後述するカムフォロワー226が係合している。また、カム225の径は、駆動歯車223よりもやや大きく、駆動歯車223の外形よりも径方向に突出した部分にスプラインナット222が支持されている。カム225に隣接する位置には、平面視L字型のリンク部材229が設けられている。このリンク部材229は、蓋部112の下面から下方へ延びる回転軸227に回転自在に支持されており、この回転軸227がリンク部材226の屈曲部分に連結されている。リンク部材229の一端部には、上述したカムフォロワー226が取り付けられ、他端部には、油圧シリンダ228が取り付けられている。油圧シリンダ228は、ピストン部2281とこれを収容するシリンダ本体2282によって構成され、シリンダ本体2282は固定部材2283を介して蓋部112の下面に固定されている。また、ピストン部2281の先端は、リンク部材226の他端部に揺動自在に取り付けられている。
【0027】
図4(a)に示すように、油圧シリンダ228のピストン部2281は初期状態で伸長しており、
図4(b)に示すように、ピストン部2281がシリンダ本体2282内に収容されることでリンク部材226が回転軸227周りに約90度揺動する。これに伴って、カムフォロワー226と係合するカム225が約90度回転し、これによってスプラインナット222は昇降ロッド22とともに約180度正回転する。一方、この状態からピストン部2281が伸長すると、昇降ロッド22は、約180度逆回転し、初期状態に復帰する。また、リンク部材229には、初期状態でストッパ220が当接しており、これによって初期状態を維持する。一方、リンク部材229が揺動すると、ストッパ220からリンク部材229が離間し、ピストン部2281の動作端で回転した位置を維持する。
【0028】
次に、昇降ロッドの上端部に設けられた固定機構について、
図5及び
図6も参照しつつ説明する。
図5は固定機構の平面図であり、
図6はこの固定機構を主軸ユニット12側から見た側面図である。この固定機構17は、主軸ユニット12に取り付けられたワークWや治具Zを交換するためのものである。
図6に示すように、この固定機構17は、昇降ロッド22の上端部に取り付けられる支持板171を備えている。この支持板171は、初期状態において、一方の面が主軸ユニット12側を向くように配置されている。以下、この面を第1面1711と称し、反対側の面を第2面1712と称することとする。また、支持板171の両面の構成は同じであるため、ここでは
図6に示す第1面について説明する。但し、以下では、同一部材であっても、第1面に配置された部材にa,第2面に配置された部材にbを付して説明することがある。
【0029】
図6に示すように、支持板171の第1面1711には、上下方向の中央付近に水平方向に延びるガイドレール172が取り付けられている。ガイドレール172には、
図6の左側に第1アーム支持部材174、右側に第2アーム支持部材175が取り付けられ、それぞれがガイドレール172に沿って水平方向に移動可能となっている。各アーム支持部材174,175の下端部には、棒状のアーム176がそれぞれ取り付けられている。各第1アーム176は、支持板171から水平方向に突出しており、両アーム176によってワークWや治具Zを挟持可能となっている。
図5に示すように、各アーム176において互いに対向する面には、平面視三角形状の切欠き1761が形成されており、この切欠き1761によってワークWなどを挟持しやすくなっている。
【0030】
支持板171において、ガイドレール172の上方にはピニオンギア173が回転自在に取り付けられており、第1アーム支持部材174の上端部には、ピニオンギア173に下側から噛み合うラック1741が水平方向に延びるように設けられている。一方、第2アーム支持部材175の上端部には、第1アーム支持部材174側へ水平方向に延びるラック1751が取り付けられている。このラック1751は、ピニオンギア173に上方から噛み合うように配置され、さらに、支持板171には、このラック1751を挟んでピニオンギア173の上方にガイドローラ177が回転自在に取り付けられている。このようにピニオンギア173を上下から挟むように、各アーム支持部材174,175にはラック1741,1751が設けられており、これによって各アーム支持部材174,175は互いに近接離間するようになっている。
【0031】
また、支持板171の上端部には、ピストン部1781と、このピストン部1781を収容するシリンダ本体1782とで構成された複動型のエアシリンダ178が取り付けられている。具体的には、シリンダ本体1782が水平方向に延びるように支持板171に固定され、ピストン部1781の先端が第2アーム支持部材175に固定されている。これにより、ピストン部1781の進退とともに、第2アーム支持部材175が水平方向に移動し、これと同期して第1アーム支持部材174も移動する。これに伴って、上述したように、両アーム176は互いに近接離間するようになっている。なお、両アーム176が最も離れたとき、両者の距離は、治具Zの最大径よりも大きく、治具Zに干渉しないようになっており、両アーム176が近接したときには、後述するように、治具Zの環状溝Z12またはワークWを挟持するようになっている。
【0032】
上述したように、昇降ロッド22の内部には、4つの貫通孔179i〜179ivが形成されているが、
図6に示すように、この貫通孔179i、179iiは、支持板171の内部に形成された4つの流通路1710i〜1710ivに連通している。そのうちの2つ179i,179iiは、流通路1710i(1710ii)及び連結チューブ(図示省略)などを介して、支持板171の第1面1711に設けられたエアシリンダ178aに接続され、残りの2つは、同様に流通路1710iii(1710iv)及び連結チューブ(図示省略)などを介して、支持板171の第2面1712に設けられたエアシリンダ178bに接続されている。すなわち、各エアシリンダ178a,178bには、各々2つの流路からエアが供給され、上述したように複動式のエアシリンダとして機能する。なお、昇降ロッド22の中央に貫通させた通路1710cには、エアシリンダ178a・178bの動作確認用センサに繋がる配線が挿通される。
【0033】
また、昇降ロッド22の上下方向の位置と、アーム176との関係は以下の通りである。
図2も参照して説明する。すなわち、昇降ロッド22が最も低い第1の位置にあるとき、アーム176は、治具Zの環状溝と対向する位置に配置され、両アームが近接することでアームが環状溝Z12に係合し、治具Zを挟持することができる。次に、第2の位置にあるときは、アーム176は、治具Zに取り付けられたワークWと対向する位置に配置される。これにより、アーム176によってワークWを挟持可能になる。そして、第3の位置にあるときは、アーム176はワークWよりも上方で、両アーム176が近接してもワークWとは干渉しない位置に配置される。なお、上述した各機構の操作は、図示を省略する制御部によって行われ、次に説明するように動作する。
【0034】
次に、上記のように構成された歯車加工装置及び交換装置の動作について、
図7及び
図8を参照しつつ説明する。まず、加工装置1の主軸ユニット12に治具Zが取り付けられていない状態で、ロータリジョイント16から可動ロッド128内にエアを注入する。このエアは、可動ロッド128及び回転スリーブ122の流通路を介して、主軸ユニット12の先端にあるチャック部120の上面から噴射され、チャック部120の上面のゴミを吹き飛ばすと共に治具Zの着座確認を待ち受ける。このようにエアの噴射を継続した状態で、治具Z及びワークWの取り付けを行う。
【0035】
最初に、
図7(a)に示すように、支持板171の第2面1712を主軸ユニット12とは反対側に向け、第3の位置(3)において、ロボットアームなどの搬送装置(図示省略)を介して、アーム176bに治具Zを挟持させる。そして、回転機構により、支持板171を180度回転させ、
図7(b)に示すように、第2面1712が主軸ユニット12と対向するようにする。次に、
図7(c)に示すように、支持板171を降下させ、アーム176bに挟持された治具Zを主軸ユニット12のチャック部120に装着する。すなわち、油圧シリンダ153を駆動して、可動ロッド128を上昇させ、チャック部120へ治具Zが装着可能な状態とする。そして、チャック部120の上面への治具Zの着座が確認されると、油圧シリンダ153を駆動し、可動ロッド128を降下させる。これにより、チャック部120が治具Zを径方向外方に押圧し、治具Zがチャック部120に固定される。
【0036】
次に、両アーム176bを離間させ、アーム176bを治具Zから離した後、支持板171を上昇させ、アーム176bを第3の位置(3)に配置する。このとき、上述したロボットアームなどを介して、支持板171の第1面1711にあるアーム176aにワークWを挟持させる。これに続いて、支持板171を180度回転させ、
図8(a)に示すように、第1面1711を主軸ユニット12に対向させる。この状態で、
図8(b)に示すように、支持板171を下降させ、ワークWを挟持した第アーム176aを第2の位置(2)に配置する。これにより、ワークWの中心穴に治具Zの挿通部Z3が挿通される。続いて、心押しユニット14の心押し部132を下降させ、押圧部材1321で治具Zの挿通部Z3を押圧すれば、挿通部Z3が径方向外方にワークWの中心穴を押圧し、ワークWが治具Zに固定される。これに続いて、両アーム176aを互いに離間させ、ワークWから離した後、支持板171を下降させ、
図8(c)に示すように、アーム176aを第1の位置に配置する。その後、回転スリーブ122を軸周りに回転させた状態で、加工具ユニット14の加工具141をワークWに押しつける。これにより、加工具141の押圧部材1411が、ワークWとともに回転しつつ、ワークWの両面の角部の面取りが行われる。
【0037】
こうして、ワークWの加工が完了すると、加工具141をワークWから離間させる。続いて、アーム176aを第2の位置に移動させた後、両アーム176aを互いに近接させてワークWを挟持する。この状態で、心押し部132を上昇させると、挿通部Z3とワークWとの固定状態が解除され、ワークWが治具Zから取り外し可能な状態となる。そして、アーム176aを上昇させ、第3の位置に配置する。このとき、支持板171の第2面1711のアーム176bには次に加工を行うワークWを挟持させておく。そして、支持板171を180度回転させ、アーム176aに挟持された加工後のワークWを、ロボットアームなどで取り外し、新たなワークWをアーム176aに挟持させる。主軸ユニット12に対向した第2面1712のアーム176bのワークWに対しては、上述したように、加工を施す。
【0038】
上記のように、ワークWの加工と交換を繰り返した後、必要に応じて治具Zの交換も行う。治具Zの交換はワークWの交換と同じであり、例えば、アーム176aを第1の位置(1)に移動させて治具Zを挟持し、チャック部120から取り外す。そして、第3の位置(3)までアーム176aを上昇させた後、支持板171を回転させる。このとき、第2面1712のアーム176bには新たな治具Zが挟持されており、支持板171が回転した後、アーム176bを第3の位置(3)まで下降させ、チャック部120に新たな治具Zを取り付ける。こうして、治具Zの交換が行われると、この治具Zに対応したワークWを取り付け、加工を行う。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、ワークW及び治具Zに着脱自在に固定されるアームを有し、このアームが、主軸ユニット12に取り付けられた治具Zを挟持可能な第1の位置、治具Zに取り付けられたワークWを挟持可能な第2の位置(2)、及び軸線方向で治具Z及びワークWと干渉しない第3の位置(3)に、移動可能となっている。そのため、ワークWのみならず、これを支持する治具Zの交換も可能となる。例えば、第2の位置(2)でアームによりワークWを挟持し、この状態で第3の位置(3)に移動させれば、ワークWを治具から取り外すことができる。さらに、ワークWを治具から取り外した後、アームを第1の位置(1)に移動させて治具Zを挟持し、これを第3の位置(3)に移動させれば治具Zを主軸ユニット12から取り外すことができ、治具Zの交換が可能となる。このように、ワークW及び治具Zに固定可能なアームを、軸方向の少なくとも3つの位置に移動可能とすることで、ワークW及び治具Zを自動的に交換することができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。
【0041】
上記実施形態では、ワークとして歯車を例にして説明したが、ワークの種類は特には限定されない。また、治具についても同じであり、主軸ユニット12に取り付けられ、ワークを支持するものであれば、形状などは、特には限定されない。
【0042】
また、上記実施形態では、加工具として歯車の面取りを行うものを例示したが、これも特には限定されない。すなわち、ワークを加工できるものであればよく、加工具の形態、加工具が配置される位置も特には限定されない。また、上記実施形態では、加工の態様に合わせて主軸ユニット12が軸周りに回転したが、このような回転を伴わない加工であってもよい。したがって、本発明に係る交換装置は、ワーク及び治具が取り付けられる主軸ユニットを備えているどのような加工装置にも適用することができる。
【0043】
また、上記実施形態では、本発明の固定部として、一対のアーム176でワークWや治具Zを挟持したが、ワークや治具を着脱自在に固定できるものであれば、その態様は特には限定されない。例えば、1つの固定部をワークや治具に係合させてもよいし、ワークや治具に形成された穴や溝に係合させてもよい。
【0044】
上記実施形態では、主軸ユニット12の軸線が鉛直方向に沿う、いわゆる縦型の加工装置に対応するように交換装置を構成しているが、主軸ユニットが水平方向を向く横型の加工装置に対しても適用することができる。