特許第5734957号(P5734957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5734957ドーパミンレセプターのオクタヒドロベンゾイソキノリンモジュレーター及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734957
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】ドーパミンレセプターのオクタヒドロベンゾイソキノリンモジュレーター及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 221/10 20060101AFI20150528BHJP
   A61K 31/473 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20150528BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   C07D221/10CSP
   A61K31/473
   A61P43/00 111
   A61P25/16
   A61P25/18
   A61P25/14
   A61P25/28
【請求項の数】12
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2012-507354(P2012-507354)
(86)(22)【出願日】2010年4月21日
(65)【公表番号】特表2012-524796(P2012-524796A)
(43)【公表日】2012年10月18日
(86)【国際出願番号】US2010031916
(87)【国際公開番号】WO2010124005
(87)【国際公開日】20101028
【審査請求日】2013年4月19日
(31)【優先権主張番号】61/171,273
(32)【優先日】2009年4月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598063203
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】PURDUE RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ニコルス,デイヴィッド,アール
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ,ヴァル,ジョセフ
【審査官】 砂原 一公
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1996/038435(WO,A1)
【文献】 特表平04−505619(JP,A)
【文献】 特開昭61−254565(JP,A)
【文献】 特開平04−235167(JP,A)
【文献】 特開平03−128356(JP,A)
【文献】 CANNON, Joseph G. et al,Congeners of the α conformer of dopamine derived from octahydrobenz[h]isoquinoline,Journal of Medicinal Chemistry,1980年,Vol.23, No.5,p.502-505
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】


〔式中、
は7,8−ジヒドロキシあり、;
は、水素であるか、或いはRは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ任意に置換されていてもよく、;
は、水素あるか、或いはRは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ任意に置換されていてもよく;
キラル炭素が、以下の相対的に表された立体異性構造:
【化2】


を有する〕
で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
が、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、へテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ任意に置換されていてもよい、請求項記載の化合物。
【請求項3】
が、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、それぞれ任意に置換されていてもよい、請求項記載の化合物。
【請求項4】
が、アリール又はヘテロアリールであり、それぞれ任意に置換されていてもよい、請求項記載の化合物。
【請求項5】
が、フェニル又は単環式へテロアリールであり、それぞれ任意に置換されていてもよい、請求項記載の化合物。
【請求項6】
が水素である、請求項1〜のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
1つ以上の請求項1〜のいずれか1項記載の化合物又はその薬学的に許容される塩と、1つ以上のその薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
【請求項8】
パーキンソン病、統合失調症、記憶障害、認知障害又は運動障害のいずれかである、ドーパミン機能不全により生じる疾病を治療するための、請求項1〜のいずれか1項記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む、医薬組成物。
【請求項9】
パーキンソン病、統合失調症、記憶障害、認知障害又は運動障害のいずれかである、ドーパミン機能不全により生じる疾病を治療するための薬剤の製造のための、請求項1〜のいずれか1項記載の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の使用方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項記載の化合物を調製する方法であって、
下記の工程(a)〜工程(c)のいずれかを含む、方法:
(a)下記式:
【化3】


で示される化合物を、2,4,4−トリメチル−2−オキサゾリジンのアニオンと接触させて、下記式:
【化4】


で示される化合物を調製する工程;
(b)下記式:
【化5】


で示される化合物を還元剤と接触させて、下記式:
【化6】


で示される化合物を調製する工程;又は、
(c)下記式:
【化7】


で示される化合物を酸と接触させて、下記式:
【化8】


で示される化合物を調製する工程
〔式中、Rは、オキサゾリンであり、
、R、Rは、それぞれ請求項1〜のいずれか1項に記載のR、R、Rであり、
キラル炭素は、以下の相対的に表された立体異性構造:
【化9】


を有する〕
【請求項11】
請求項10記載の方法あって、還元剤がCoCl及びKBHを含む、方法
【請求項12】
請求項10記載の方法あって、前記酸がプロトン性溶媒に含まれる、方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される発明は、ドーパミンレセプターのアゴニスト及びアンタゴニストを含むモジュレーターに関する。特に、本明細書に記載される発明は、ドーパミンレセプターのオクタヒドロベンゾイソキノリンモジュレーターに関する。
【背景技術】
【0002】
ドーパミン(DA)は、運動制御、報酬回路、認知機能、プロラクチン放出及び多様な他の主な生理学的機能において重要な神経伝達物質である。ドーパミン作動不全は、パーキンソン病、統合失調症、嗜癖、注意欠陥多動障害(ADHD)及び特定の生機能不全に関与している。
【0003】
ドーパミンレセプターには少なくとも2つの薬理学的サブタイプ(D及びDレセプターサブタイプ)があり、それぞれ幾つかの分子形態からなることが報告されている。Dレセプターは、フェニルテトラヒドロベンゾアゼピンを優先的に認識し、一般に酵素のアデニレートシクラーゼの刺激をもたらし、一方、Dレセプターは、ブチロフェノン及びベンズアミドを認識し、多くの場合にアデニレートシクラーゼに陰性に結合するか又はこの酵素に全く結合しない。少なくとも5つのドーパミンレセプター遺伝子が、D、D、D、D及びDレセプターアイソフォーム又はサブタイプをコードすることも報告されている。しかし、D様の部類がD(D1A)及びD(D1B)レセプターサブタイプを含み、一方、D様の部類がD、D及びDレセプターサブタイプからなるので、ドーパミンレセプターサブタイプの伝統的な分類は依然として有用である。ドーパミンDレセプターのアゴニスト刺激は、アデニレートシクラーゼを活性化して、環状AMP(cAMP)を形成し、次に細胞内タンパク質をリン酸化すると考えられる。Dドーパミンレセプターのアゴニスト刺激は、cAMP形成の減少をもたらすと考えられる。レセプターの両方のサブタイプに対するアゴニストは、臨床的に有用である。加えて、レセプターの両方のサブタイプに対するアンタゴニストは、臨床的に有用である。
【0004】
ドーパミンレセプターアゴニストは、多様な理由で治療上興味深いものである。例えば、Dドーパミンレセプターサブタイプの過剰刺激が、統合失調症と関連しうると仮定されている。加えて、中枢神経系における過剰又は不十分なドーパミン作動活性が、高血圧、睡眠発作及びパーキンソン病を含む他の行動、神経、生理及び運動障害を引き起こしうることが一般に認識されている。例えば、統合失調症は、とりわけ、最も一般的で最も罹患している精神疾患である。現在の推定は、人口の0.5〜1%の統合失調症有病率を示唆する。
【0005】
統合失調症、並びに精神病、双極性障害、不安状態及び精神病エピソードを伴ううつ病などの他の神経及び精神障害を有する患者は、妄想、幻覚、認知機能障害及び激越を含む「陽性」症状と同様に、感情不応答、記憶障害及び認知機能障害を含む「陰性」症状の両方を有することができる。これらの精神病の徴候及び症状を有する患者を、典型的な抗精神病薬及び非定型の抗精神病薬の一般的な部類に入る薬剤で治療することができる。典型的な抗精神病剤には、フェノチアジン、ブチロフェノン、並びにロクサピン及びモリンドンのような他の非フェノチアジンが含まれる。非定型の抗精神病剤には、クロザピン、オランザピン、クエチアピン、ジプラシドンなどのようなクロザピン様薬剤、並びにリスペリドン、アリピプラゾール及びアミスルピリドなどを含む幾つかの他のものが含まれる。これらの典型的及び非定型の両方の抗精神病剤は、本明細書に記載される神経障害の陽性症状を治療するのに有用であるが、患者は、これらの抗精神病剤に不随しうる陰性症状からの完全な解放を見出さない場合がある。加えて、最近の研究は、統合失調症の陽性症状を治療する現在の抗精神病療法は、幾つかの場合においてそのような陰性症状の発症を悪化又は促進しうることを示唆している。
【0006】
ドーパミンアゴニスも、レボドパ療法の幾つかの制限を回避する試みとしてパーキンソン病を治療するために開発され、それはレボドパ療法が例えば特定の後期障害においていつも成功している治療というわけではないからである。加えて、シナプス後ドーパミンレセプターに直接作用することによって、選択的ドーパミンアゴニストは、変性シナプス前ニューロンを迂回する。更に、これらの薬剤は、レボドパの活性のために必要な同じ酵素変換に依存せず、線条体ドーパデカルボキシラーゼの下降レベルに関連する問題を回避する。加えて、アゴニストは、レボドパよりも長い半減期の可能性を有し、ドーパミンレセプターの予め決定された亜集団に対して特異的に相互作用するように設計することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、Dレセプターアンタゴニストの投与は、Dレセプターを下方制御することが示されている。そのような下方制御は、記憶及び認知の合併症を引き起こす又は増加する全体的な効果を有することが示された。D及び/又はDレセプターmRNAの下方制御は、特定の抗精神病治療薬による慢性治療の後、ヒト以外の霊長類の前頭前及び側頭皮質において観察されているが、新線条体では観察されていない。
【0008】
加えて、多数の報告は、完全DアゴニストがDレセプター脱感作、さらにはドーパミンDレセプター発現の下方制御も引き起こしうることを伝えている。部分Dアゴニストは、脱感作を引き起こしうるが、一般にレセプター発現の下方制御を引き起こさない。加えて、Dレセプターアンタゴニストの投与によって生じた記憶又は認知合併症の後でのDレセプターアゴニストの短期投与は、そのような記憶又は認知合併症の症状を緩和したことも示している。
【0009】
したがって、ドーパミンレセプターの追加的なアゴニスト及びアンタゴニストに対する必要性が依然として存在する。加えて、ドーパミンレセプターに対する完全アゴニストも必要である。加えて、ドーパミンレセプターサブタイプ選択性を示すアゴニスト及びアンタゴニストも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に記載される化合物が、ドーパミンレセプターのアゴニスト及びアンタゴニストを含む、ドーパミンレセプターのモジュレーターであることが発見された。加えて、本明細書に記載される化合物は、ドーパミンレセプターに対する完全アゴニストである。加えて、本明細書に記載される化合物は、ドーパミンレセプターサブタイプ選択性が必要であることを示す、アゴニスト及びアンタゴニストである。一つの実施態様において、D及び/又はD様ドーパミンレセプターに選択的なアゴニストである、化合物が記載される。
【0011】
別の実施態様において、オクタヒドロベンゾ〔h〕イソキノリン化合物が、本明細書に記載され、これは、例えば、その薬学的に許容される塩を含む、以下の式で示される化合物である:
【化1】
〔式中、
は、水素であるか、或いはRは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ、及びそれらの誘導体、アルキル及びヘテロアルキル(それぞれ場合により置換されていてもよい)からなる群より選択される、1〜4つの置換基を表し、ここで2つの隣接する置換基は場合により、結合している炭素と一緒になって、場合により置換されていてもよい複素環を形成してもよく;
は、水素であるか、或いはRは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ場合により置換されていてもよく;そして
は、水素又はアミノプロドラッグ基であるか、或いはRは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ場合により置換されていてもよい〕。
【0012】
別の実施態様において、神経、精神及び/又は精神医学障害を治療する組成物が、本明細書に記載される。本組成物は、本明細書に記載される1つ以上の化合物の治療量を含み、これを神経、精神及び/又は精神医学障害からの解放を必要とする又はこれらを罹患している患者又は被験者に投与することができる。本明細書に記載される組成物は、薬学的に活性な担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含むことができる。
【0013】
別の実施態様において、神経、精神及び/又は精神医学障害を治療する方法が、本明細書に記載される。本方法は、神経、精神及び/又は精神医学障害からの解放を必要とする又はこれらを罹患している患者又は被験者に、本明細書に記載される1つ以上の化合物の治療量を投与する工程を含む。
【0014】
別の実施態様において、神経、精神及び/又は精神医学障害を治療する薬剤を製造するための使用方法が、本明細書に記載される。薬剤は、本明細書に記載される1つ以上の化合物の治療量を含み、これを、神経、精神及び/又は精神医学障害からの解放を必要とする又はこれらを罹患している患者又は被験者を治療するために、使用することができる。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
下記式:
【化1】
〔式中、 Rは、水素であるか、或いはRは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ及びその誘導体、アルキル及びヘテロアルキル(それぞれ場合により置換されてもよい)からなる群より選択される、1〜4つの置換基を表し、ここで2つの隣接する置換基は場合により、結合している炭素と場合により一緒になって、置換されていてもよい複素環を形成してもよく; Rは、水素であるか、或いはRは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ場合により置換されていてもよく、;そして Rは、水素又はアミノプロドラッグ基であるか、或いはRは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ場合により置換されていてもよい〕で示される化合物、又はその薬学的に許容される塩。
(項目2)
が、ハロ、ヒドロキシ及びアミノ、C〜Cアルキル及びヘテロアルキル(それぞれ場合により置換されていてもよい)からなる群より選択される、1〜4つの置換基を表す、項目1記載の化合物。
(項目3)
が、ハロ、ヒドロキシ、アミノ及びその誘導体からなる群より選択される、1〜4つの置換基を表す、項目1記載の化合物。
(項目4)
が、ハロ、ヒドロキシ、アミノ及びその誘導体からなる群より選択される、1〜4つの置換基を表し、2つの隣接する置換基が、結合している炭素と一緒になって、場合により置換されていてもよい複素環を形成する、項目1記載の化合物。
(項目5)
が、少なくとも1つのヒドロキシ又はヒドロキシ誘導体を含む、項目1記載の化合物。
(項目6)
が少なくとも1つのヒドロキシ又はヒドロキシプロドラッグを含む、項目1記載の化合物。
(項目7)
がC7ヒドロキシを含む、項目1記載の化合物。
(項目8)
がC8ヒドロキシを含む、項目1記載の化合物。
(項目9)
がC7,C8ヒドロキシを含む、項目1記載の化合物。
(項目10)
がC7ハロを含む、項目1記載の化合物。
(項目11)
がC8ハロを含む、項目1記載の化合物。
(項目12)
が、7,8−ジヒドロキシ又はその誘導体を含む、項目1記載の化合物。
(項目13)
が、7,8−メチレンジオキシ又は7,8−エチレンジオキシを含む、項目1記載の化合物。
(項目14)
が、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、へテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ場合により置換されていてもよい、項目1〜13のいずれか1項記載の化合物。
(項目15)
が、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、それぞれ場合により置換されていてもよい、項目1〜13のいずれか1項記載の化合物。
(項目16)
がアダマンチルである、項目1〜13のいずれか1項記載の化合物。
(項目17)
が、アリール又はヘテロアリールであり、それぞれ場合により置換されていてもよい、項目1〜13のいずれか1項記載の化合物。
(項目18)
が、フェニル又は単環式へテロアリールであり、それぞれ場合により置換されていてもよい、項目1〜13のいずれか1項記載の化合物。
(項目19)
が、置換フェニル又は置換単環式ヘテロアリールであり、置換基が、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される、項目1〜13のいずれか1項記載の化合物。
(項目20)
が、水素又はアミノプロドラッグである、項目1〜13のいずれか1項記載の化合物。
(項目21)
キラル炭素が、以下の相対立体化学:
【化2】
を有する、項目1〜13のいずれか1項記載の化合物。
(項目22)
項目1〜13のいずれか1項記載の1つ以上の化合物と、1つ以上のその薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤とを含む、医薬組成物。
(項目23)
ドーパミン機能不全により生じる疾患から解放される必要のある患者を治療する方法であって、項目1〜13のいずれか1項記載の化合物、又はその医薬組成物、の治療有効量を患者に投与する工程を含み、前記医薬組成物が、項目1〜13のいずれか1項記載の1つ以上の化合物と、その化合物のための、1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む、方法。
(項目24)
化合物がドーパミンレセプターアゴニストである、項目23記載の方法。
(項目25)
化合物がDドーパミンレセプターアゴニストである、項目23記載の方法。
(項目26)
化合物が選択的Dドーパミンレセプターアゴニストである、項目23記載の方法。
(項目27)
化合物が完全アゴニストである、項目23記載の方法。
(項目28)
化合物がドーパミンレセプターアンタゴニストである、項目23記載の方法。
(項目29)
疾患がパーキンソン病である、項目23記載の方法。
(項目30)
疾患が統合失調症である、項目23記載の方法。
(項目31)
疾患が記憶障害である、項目23記載の方法。
(項目32)
記憶障害が薬剤誘発性である、項目31記載の方法。
(項目33)
記憶障害が年齢関連性である、項目31記載の方法。
(項目34)
記憶障害が、統合失調症における作業記憶欠陥である、項目31記載の方法。
(項目35)
疾患が認知障害である、項目23記載の方法。
(項目36)
認知障害が、統合失調症における認知欠陥である、項目35記載の方法。
(項目37)
疾患が運動障害である、項目23記載の方法。
(項目38)
項目1〜13のいずれか1項記載の化合物を調製する方法であって、下記式:
【化3】
で示される化合物を、2,4,4−トリメチル−2−オキサゾリジンのアニオンと接触させて、下記式:
【化4】
で示される化合物を調製する工程を含む、方法。
(項目39)
項目1〜13のいずれか1項記載の化合物を調製する方法であって、下記式:
【化5】
で示される化合物を還元剤と接触させて、下記式:
【化6】
〔式中、Rは、カルボン酸又はその誘導体である〕で示される化合物を調製する工程を含む、方法。
(項目40)
還元剤がCoCl及びKBHを含む、項目39記載の方法。
(項目41)
Rがオキサゾリンである、項目39記載の方法。
(項目42)
項目1〜13のいずれか1項記載の化合物を調製する方法であって、下記式:
【化7】
で示される化合物を酸と接触させて、下記式:
【化8】
〔式中、Rは、カルボン酸又はその誘導体である〕で示される化合物を調製する工程を含む、方法。
(項目43)
酸がプロトン性溶媒の中に含まれる、項目42記載の方法。
(項目44)
Rがオキサゾリンである、項目42記載の方法。
(項目45)
キラル炭素が、以下の相対立体化学:
【化9】
を有する、項目42記載の方法。
【0015】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国仮出願第61/171,273号、2009年4月21日出願(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)の特許法119条(e)に基づく利益を請求する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
オクタヒドロベンゾイソキノリ化合物であって、その対応する薬学的に許容される塩、水和物、及び/又は溶媒和物を含み、式(I):
【化2】
〔式中、
は、水素であるか、或いはRは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ及びその誘導体、アルキル及びヘテロアルキル(それぞれ場合により置換されていてもよい)からなる群より選択される、1〜4つの置換基を表し、ここで2つの隣接する置換基は場合により、結合している炭素と一緒になって、場合により置換されていてもよい複素環を形成してもよく;
は、水素であるか、或いはRは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ場合により置換されていてもよく;そして
は、水素又はアミノプロドラッグ基であるか、或いはRは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ場合により置換されていてもよい〕
で示され、場合により置換されていてもよい、オクタヒドロベンゾイソキノリ化合物が、本明細書に記載される。
【0017】
別の実施態様において、
は、水素であるか、又は、Rは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード若しくは場合により置換されていてもよいC〜Cアルキル、場合により置換されていてもよいヘテロアルキル、アミノ(NH、RNH、RNを含み、ここでRは同一若しくは異なっていることができる)、若しくは式:−ORの基からなる群より選択される、1〜4つの置換基であり、式中、Rは、水素であるか、又は、C〜Cアルキルを含むアルキル、アシル、アリールアルキル、C〜Cアルカノイルを含むアルカノイル、ベンゾイル、ピバロイル、若しくは場合により置換されていてもよいフェニル若しくはフェノキシ保護基であり、それぞれ場合により置換されているか、或いは2つの隣接する置換基Rが、本明細書に定義される式:−OR又は−NRの基である場合、基Rは、場合により一緒になって複素環を形成することができ;
は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ場合により置換されていてもよく、そしてRは、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ場合により置換されていてもよい。
【0018】
別の実施態様において、Rは、ハロ、ヒドロキシ及びアミノ、C〜Cアルキル及びヘテロアルキル(それぞれ場合により置換されていてもよい)からなる群より選択される、1〜4つの置換基を表す。別の実施態様において、Rは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ及びその誘導体からなる群より選択される、1〜4つの置換基を表す。別の実施態様において、Rは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ及びその誘導体からなる群より選択される、1〜4つの置換基を表し、ここで2つの隣接する置換基は、結合している炭素と一緒になって場合により置換されていてもよい複素環を形成する。別の実施態様において、Rは、少なくとも1つのヒドロキシ又はヒドロキシ誘導体を含む。別の実施態様において、Rは、少なくとも1つのヒドロキシ又はヒドロキシプロドラッグを含む。別の実施態様において、RはC7ヒドロキシを含む。別の実施態様において、RはC8ヒドロキシを含む。別の実施態様において、RはC7,C8ジヒドロキシを含む。別の実施態様において、RはC7ハロを含む。別の実施態様において、RはC8ハロを含む。別の実施態様において、置換ヒドロキシは、C〜Cアルコキシを含むアルコキシ、C〜Cアルカノイル、ピバロイル、ベンゾイルなどを含むアリールアルコキシ及びアシルオキシ(それぞれ場合により置換されていてもよい)及びフェノキシ保護基からなる群より選択される。別の実施態様において、Rは、7,8−ジヒドロキシ又はその誘導体である。別の実施態様において、Rは、7,8−メチレンジオキシ又7,8−エチレンジオキシである。
【0019】
別の実施態様において、2つの隣接する置換基Rが、本明細書において定義される式:−OR又は−NRの基である場合、2つの基Rは、場合により一緒になって、−CH−又は−(CH−基を形成することができる。
【0020】
別の実施態様において、Rは、アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、へテロアリール、アリールアルキル又はヘテロアリールアルキルであり、それぞれ場合により置換されていてもよい。別の実施態様において、Rは、シクロアルキル、シクロへテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであり、それぞれ場合により置換されていてもよい。別の実施態様において、Rはアダマンチルである。別の実施態様において、Rは、アリール又はヘテロアリールであり、それぞれ場合により置換されていてもよい。別の実施態様において、Rは、フェニル又は単環式ヘテロアリールであり、それぞれ場合により置換されていてもよい。別の実施態様において、Rは、置換フェニル又は置換単環式ヘテロアリールであり、ここで置換基は、ヒドロキシ、アミノ、カルボン酸及びその誘導体からなる群より選択される。
【0021】
別の実施態様において、Rは、水素又はアミノプロドラッグである。
【0022】
別の例示的な実施態様において、式(I)のオクタヒドロベンゾイソキノリン化合物には、RがC7〜C8ジハロを含む化合物が含まれる。別の例示的な実施態様において、式(I)のオクタヒドロベンゾイソキノリン化合物には、RがC8ハロを含む化合物が含まれる。更に別の例示的な実施態様において、式(I)のオクタヒドロベンゾイソキノリン化合物には、RがC7ハロを含む化合物が含まれる。
【0023】
別の例示的な実施態様において、式(I)のオクタヒドロベンゾイソキノリン化合物には、Rが、水素であるか、又は、Rが、場合により置換されていてもよいアルキル、ヘテロアルキル、アリール、へテロアリール、アリールアルキル若しくはヘテロアリールアルキルなどである、化合物が含まれる。
【0024】
前記の実施態様をそれぞれ、化学的に関連する方法で、制限なく組み合わせうることが理解されるべきである。例えば、例示的な代替実施態様において、Rは、ハロ、ヒドロキシ、アミノ及びその誘導体からなる群より選択される、1〜4つの置換基を表し、Rは、アリール又はヘテロアリールであってそれぞれ場合により置換されていてもよく、そしてRは、水素又はアミノプロドラッグである。別の例示的な代替実施態様において、Rは、C7,C8ジヒドロキシを含み、Rは、シクロアルキル、シクロへテロアルキル、アリール又はヘテロアリールであってそれぞれ場合により置換されていてもよく、そしてRは、水素又はアミノプロドラッグである。前記実施態様のそれぞれの追加的な組み合わせも、更なる実施態様として、本明細書に暗黙的に記載される。
【0025】
別の例示的な実施態様において、式(I)のオクタヒドロベンゾイソキノリン化合物には、それぞれの可能な立体異性体(例えば、鏡像異性体及び/又はジアステレオマー)が含まれ、それらは場合により光学的に純粋な形態であってもよく、又は、鏡像異性体若しくはジアステレオマーの多様な混合物であってもよい。加えて、これらの立体異性体の多様な混合物には、一対の鏡像異性体から形成されるラセミ混合物も含まれる。式(I)の化合物の例示的な光学的に純粋な化合物又は混合物は、キラル中心が以下の相対立体化学を有する化合物又は化合物の混合物である。
【0026】
別の実施態様において、前記実施態様のそれぞれにおけるキラル炭素は、以下の相対立体化学を有する。
【化3】
【0027】
別の実施態様において、前記実施態様のそれぞれにおけるキラル炭素は、以下の絶対立体化学を有する。
【化4】
【0028】
別の実施態様において、本明細書に記載される1つ以上の化合物と、その化合物のための1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む、医薬組成物が記載される。本組成物は、神経、精神及び/又は精神医学障害を治療するための、1つ以上の本化合物の治療有効量を含む。
【0029】
別の実施態様において、ドーパミン機能不全により生じる疾患から解放される必要のある患者を治療する方法が本明細書に記載される。本方法は、本明細書に記載される1つ以上の化合物、又はその医薬組成物、の治療有効量を患者に投与する工程を含み、そのような医薬組成物は、1つ以上の本化合物と、その化合物のための1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む。本方法は、神経、精神及び/又は精神医学障害を治療するために、1つ以上の本化合物の治療有効量を投与することを含む。
【0030】
本明細書で使用されるとき、用語「D様レセプター」は、あらゆるD及びD様レセプターの単独のもの、又はそれらを様々に組み合わせたものを意味し、例えば、ヒトにおけるD及びDレセプター、ラットにおいて見出されるD1A及びD1Bレセプター、並びに他のD様レセプターを含む。
【0031】
本明細書に記載される化合物、組成物、及び方法は、部分及び/又は完全ドーパミンDレセプターアゴニスト及びアンタゴニストを含む、ドーパミンレセプター結合性の化合物の、投与及び/又は共投与に有用である。ドーパミンDレセプターアゴニストは、選択的Dレセプターアゴニスト活性を有する化合物からD及びDドーパミンレセプターとその多様なサブタイプの両方に影響を与える強力な活性を有する化合物までの範囲の生物学的活性を有することができる。本明細書に記載される方法及び組成物によると、神経障害の症状を低減するために(例えば、統合失調症のような神経障害の陽性及び陰性の両方の症状を低減するために)神経障害を有する患者に、部分及び/又は完全Dレセプターアゴニスト又はアンタゴニストの有効量を、単独で投与することができるし、同一の又は異なる組成物若しくは複数の組成物中の、別の部分及び/又は完全Dレセプターアゴニスト又はアンタゴニストと共に共投与することもできる。同様に、本明細書に記載される方法及び組成物によると、部分及び/又は完全Dレセプターアゴニストの有効量を、神経障害を有する患者に、同一の又は異なる組成物若しくは複数の組成物中のDレセプターアンタゴニストの有効量と共に共投与して、神経障害の症状を低減することができる。
【0032】
一つの実施態様において、本明細書に記載される化合物は、D(D1A)及びD(D1B)レセプターのようなドーパミンD様レセプターに対して選択的である。別の実施態様において、明細書に記載される化合物は、ドーパミンDレセプターに対して選択的である
【0033】
神経、精神及び/又は精神医学障害を治療するための、本明細書に記載される方法及び組成物に有用な化合物には、部分及び/又は完全ドーパミンDレセプターアゴニスト及び/又はアンタゴニストが含まれる。部分及び/又は完全Dレセプターアゴニスト及び/又はアンタゴニストを、単独で投与することができるし、同時存在的に若しくは同時に、共投与することができる。本明細書に記載される方法及び組成物によると、部分及び/又は完全Dレセプターアゴニスト及び/又はアンタゴニストの有効量を、神経障害を有する患者に単独で投与又は共投与して、神経、精神及び/又は精神医学障害の症状を低減することができる。部分及び/又は完全Dレセプターアゴニスト又はアンタゴニストを、神経障害を有する患者に単独で投与することができる、或いは同じ又は異なる組成物若しくは複数の組成物により共投与することができる。同時に共投与することは、部分及び/又は完全Dレセプターアゴニスト及びアンタゴニストの両方を含む単位又は単位状投与形態により促進されることが理解される。本明細書に記載される化合物は、1つ以上のドーパミンレセプターに対して機能的選択性を示しうることも理解される。
【0034】
別の実施態様において、本方法は、ドーパミンレセプターアゴニストである本明細書に記載される化合物を投与することを含む。別の実施態様において、本方法は、Dドーパミンレセプターアゴニストである本明細書に記載される化合物を投与することを含む。別の実施態様において、本方法は、選択的Dドーパミンレセプターアゴニストである本明細書に記載される化合物を投与することを含む。
【0035】
別の実施態様において、本方法は、ドーパミンレセプター部分アゴニストである本明細書に記載される化合物を投与することを含む。別の実施態様において、本方法は、ドーパミンレセプター完全アゴニストである本明細書に記載される化合物を投与することを含む。別の実施態様において、本方法は、ドーパミンレセプター部分アゴニストである本明細書に記載される化合物を投与することを含む。別の実施態様において、本方法は、ドーパミンレセプターアンタゴニストである本明細書に記載される化合物を投与することを含む。別の実施態様において、本方法は、Dドーパミンレセプターアンタゴニストである本明細書に記載される化合物を投与することを含む。別の実施態様において、本方法は、選択的Dドーパミンレセプターアンタゴニストである本明細書に記載される化合物を投与することを含む。
【0036】
例示的な選択性は、DレセプターよりもDレセプターに対して、及び/又はD様レセプターよりもD様レセプターに対して、少なくとも約2、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約20、少なくとも約25又は少なくとも約50の親和性比率を示す化合物である。
【0037】
別の実施態様において、本明細書に開示されるものは、ドーパミン機能不全により生じる疾患から解放される必要のある患者を治療する方法であって、式Iの化合物の混合物又はその医薬組成物の治療有効量と、そのための1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを、該患者に投与する工程を含む方法である。一つの例示的な例において、化合物の混合物は2つ以上のドーパミンレセプターアゴニストを含むことができる。別の例示的な例において、化合物の混合物は2つ以上のドーパミンレセプターアンタゴニストを含むことができる。更に別の例示的な例において、化合物の混合物は、1つ以上のドーパミンレセプターアゴニスト及び1つ以上のドーパミンレセプターアンタゴニストを含むことができる。更に別の例示的な例において、ドーパミンレセプターアゴニスト又はアンタゴニストは、Dドーパミンレセプターアゴニスト又はアンタゴニストである。
【0038】
別の実施態様において、本明細書に開示されるものは、ドーパミン機能不全により生じる疾患から解放される必要のある患者を治療する方法であって、1つ以上の式Iの化合物又はその医薬組成物の治療有効量を、患者に投与する工程を含む方法であり、ここで、医薬組成物は、1つ以上の式Iの化合物と、そのための1つ以上の薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含み、化合物はドーパミンレセプターアゴニストである。例示的な例において、1つ以上の化合物には、Dドーパミンレセプターアゴニスト及び/又はDドーパミンレセプターアンタゴニストが含まれる。別の例示的な例において、式IのDドーパミンレセプターアゴニスト及び/又はDドーパミンレセプターアンタゴニストは、光学的に活性である。更に別の例示的な例において、ドーパミン機能不全により生じる疾患には、パーキンソン病、統合失調症、記憶障害、認知障害、又は運動障害が含まれる。
【0039】
別の実施態様において、パーキンソン病を治療する方法が本明細書に記載される。別の実施態様において、統合失調症を治療する方法が本明細書に記載される。別の実施態様において、記憶障害を治療する方法が本明細書に記載される。別の実施態様において、薬剤誘発の記憶障害を治療する方法が本明細書に記載される。別の実施態様において、年齢関連の記憶障害を治療する方法が本明細書に記載される。別の実施態様において、統合失調症における作業記憶欠陥を治療する方法が本明細書に記載される。別の実施態様において、統合失調症患者の作業記憶を改善する方法が本明細書に記載される。別の実施態様において、前頭前皮質の血流を増加する方法が本明細書に記載される。前頭前皮質の血流を増加することは、前頭前皮質による酸素及びグルコースの要求を誘発することができ、増強された皮質機能を間接的に実証できることが理解されるべきである。別の実施態様において、認知障害を治療する方法が本明細書に記載される。別の実施態様において、統合失調症における認知欠陥を治療する方法が本明細書に記載される。別の実施態様において、統合失調症患者の認知を改善する方法が本明細書に記載される。別の実施態様において、運動障害を治療する方法が本明細書に記載される。
【0040】
本明細書に記載される方法、化合物及び組成物により治療することができる追加的な例示的神経障害には、統合失調症、統合失調症様障害、病気の期間にうつ病エピソードを生じることにより特徴付けられるものを含む統合失調感情障害、双極性障害、精神病エピソードを伴ううつ病、及び、精神病を含む他の障害のような、神経障害が含まれる。治療することができる統合失調症の種類には、妄想型統合失調症、解体型統合失調症、緊張型統合失調症、未分化型統合失調症、残遺型統合失調症、統合失調症様障害、統合失調感情障害、うつ病型統合失調感情障害、及び精神病性特徴を有する大うつ病性障害が含まれる。典型的には、治療することができる神経障害は、「陽性」症状(例えば、妄想、幻覚、認知機能障害及び激越)と「陰性」症状(例えば、感情不応答)の両方を有する。
【0041】
多様な形態の統合失調症が、本明細書に記載される方法及び組成物を使用して治療可能であってもよいことが理解されるべきである。本明細書に記載される精神病の状態には、統合失調症、統合失調症様疾患、急性躁病、統合失調感情障害、及び精神病の特徴を有するうつ病が含まれることも理解される。これらの状態に付けられる名称は、複数の疾患状態を表す場合がある。例示的には、疾患状態は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th Edition, published by the American Psychiatric Association (DSM)による分類を参照することができる。幾つかの疾患状態のDSMコード番号には、妄想型統合失調症295.30、解体型統合失調症295.10、緊張型統合失調症295.20、未分化型統合失調症295.90、残遺型統合失調症295.60、統合失調症様障害295.40、統合失調感情障害295.70、うつ病型統合失調感情障害及び精神病性特徴を有する大うつ病性障害296.24、296.34が含まれる。精神病は、多くの場合に他の疾患及び状態と関連するか、又は神経状態、内分泌状態、代謝状態、体液若しくは電解質の平衡失調、肝若しくは腎疾患及び中枢神経系が関与する自己免疫性障害を含む他の状態により引き起こされ、また、コカイン、メチルフェニデート、デキサメタゾン、アンフェタミン及び関連する物質、カンナビス、幻覚発現薬、吸入薬、オピオノイド、フェンシクリジン、鎮静薬、睡眠薬及び抗不安薬が含まれるが、これらに限定されない、特定の物質の使用若しくは乱用により引き起こされる。精神病性障害も、特定の物質の退薬に関連して生じる場合がある。これらの物質には、鎮静薬、睡眠薬及び抗不安薬が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載される方法及び組成物により治療可能な別の疾患状態には、統合失調型人格障害、遺伝学的、現象学的及び神経生物学的に、並びに、薬理学的に関連するものから慢性統合失調症までの統合失調症スペクトル障害が含まれ、統合失調症の多くの認知欠陥を共有するが、典型的には重篤度の程度は低い。
【0042】
治療することができる精神病成分及びうつ病成分を有する他の障害には、月経前症候群、神経性食欲不振症、物質乱用、頭部損傷、及び精神遅滞が含まれる。加えて、精神病成分及びうつ病成分を有する内分泌状態、代謝状態、体液又は電解質の平衡失調、肝又は腎疾患、及び中枢神経系が関与する自己免疫性障害を、本明細書に記載される方法及び組成物により治療することができる。
【0043】
別の例示的な実施態様において、部分及び/又は完全Dドーパミンレセプターアゴニストは、ヒトにおけるD〜Dレセプターサブタイプ又は齧歯類におけるD1A若しくはD1Bレセプターサブタイプのなどのレセプターサブタイプのような、あるドーパミンDレセプターのサブタイプに対して選択的であってもよい。別の実施態様において、部分及び/又は完全Dドーパミンレセプターアゴニストは、DとDの両方のドーパミンレセプターサブタイプに対して活性を示すことができる。例えば、完全Dドーパミンレセプターアゴニストは、D及びDのドーパミンレセプターサブタイプに対してほぼ等しく選択的であってもよいし、Dのドーパミンレセプターサブタイプと比較してDに対してより活性であってもよい。別の実施態様において、部分及び/又は完全Dドーパミンレセプターアゴニストは、特定の組織に関連するDドーパミンレセプター又はレセプターサブタイプに対して選択的であってもよい。別の実施態様において、部分及び/又は完全Dドーパミンレセプターアゴニストは、Dドーパミンレセプターアゴニストとの機能的選択性を示すことができるDドーパミンレセプター又はレセプターサブタイプに対して、選択的であってもよい。
【0044】
レセプター選択性に対する参照には、ドーパミンレセプターに対する機能的選択性が含まれることが、更に理解されるべきである。そのような機能的選択性は、予め確定された症状のより特定的な治療を可能にする、本明細書に記載されている化合物及び組成物の活性を更に特徴付ける。例えば、特定のドーパミンレセプター、例示的にはDレセプター、に選択的である化合物及び組成物は、さらに第2層の選択性を示してもよく、ここでそのような化合物又は組成物は、1つ以上の組織においてドーパミンDレセプターに対して機能的活性を示すが、他の組織では示さない。そのような機能的選択性の例示は、シナプス前ニューロンよりもシナプス後ニューロンへのジヒドレキシジンの報告されている選択性である。他の機能的選択性も、本明細書において考慮される。
【0045】
例えば、ジヒドレキシジン、(+)−トランス−10,11−ジヒドロキシ−5,6,6a,7,8,12b−ヘキサヒドロベンゾ〔a〕フェナントリジン塩酸塩は、ドーパミンD/Dレセプターアゴニストであり、ナノモル親和性を有し、DレセプターよりもDに対して約12倍から約60倍の選択性(それぞれ、2.2nM及び183nM)を有する。齧歯類及び非ヒト哺乳類における薬物動態研究は、有意な血中レベルが、静脈内(iv)、皮下(sc)及び経口(po)投与後に測定されうることを示した。これらの研究は、この薬剤が血漿から素早く除去されることも示す。しかし、薬物動態研究は、ジヒドレキシジンの血漿半減期から予測されうるよりもはるかに長時間の作用が、sc経路の投与により示されることを実証している。
【0046】
本明細書に記載される化合物、組成物及び方法は、例えば投与量、投与形態などの日常的な最適化などについて、従来の動物認知モデルを使用して評価することができる。例示的には、動物モデルには、放射状迷路(radial arm maze)における参照記憶(Packard et al., J. Neurosci. 9:1465-72 (1989)); Packard and White, Behav. Neural. Biol. 53:39-50 (1990)); Colombo et al., Behav. Neurosci. 103:1242-1250 (1989))、能動的回避(Kirby & Polgar, Physiol. Psychol. 2:301-306 (1974))及び受動的回避(Packard & White, Behav. Neurosci. 105:295-306 (1991)); Polgar et al., Physiol. Psychol. 9:354-58 (1981))、遅延反応動作(Arnsten et al., Psychopharmacol. 116:143-51 (1994))、モリス水迷路(Wishaw et al., Behav. Brain Res. 24:125-138 (1987))、並びに分岐T字型迷路(split-T maze)(Colombo et al. (1989))の評価が含まれる。6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)を有する黒質線条体路の病変は、回避条件付け(Neill et al., Pharmacol. Biochem. Behav. 2:97-103 (1974))、モリス水迷路(Wishaw & Dunnett, Behav. Brain. Res. 18:11-29 (1985); Archer et al., Pharmacol. Biochem. Behav. 31:357-64 (1988))を含む多様な学習タスクを損なうことが理解され、それぞれを使用して、本明細書に記載される化合物、組成物及び方法を評価することができる。前述のそれぞれの開示は参照として本明細書に組み込まれる。
【0047】
本明細書に記載される化合物は、1つ以上のキラル中心を含有することもできるし、そうでなければ複数の立体異性体として存在することもできる。一つの実施態様において、本明細書に記載される発明は、あらゆる特定の立体化学要件に限定されないこと、また、本化合物、並びにそれを含む組成物、方法、使用、及び薬剤は、光学的に純粋であってもよいし、鏡像異性体のラセミ及び他の混合物、ジアステレオマーの他の混合物などを含む、多様な立体異性体混合物のいずれかであってもよいことが理解されるべきである。立体異性体のそのような混合物は、1つ以上のキラル中心に単一の立体化学配置を含みつつ、同時に、1つ以上の他のキラル中心に立体化学配置の混合物を含んでもよいことも理解されるべきである。
【0048】
同様に、本明細書に記載される化合物は、シス、トランス、E及びZ二重結合のような幾何的中心を含むことができる。別の実施態様において、本明細書に記載される発明は、特定の幾何異性体要件に限定されないこと、化合物、並びにそれを含む組成物、方法、使用及び薬剤は純粋であってもよいし、多様な幾何異性体混合物のいずれかであってもよいことが理解されるべきである。幾何異性体のそのような混合物は、1つ以上の二重結合に単一の配置を含み、同時に、1つ以上の他の二重結合に幾何的配置の混合物を含みうることも理解されるべきである。
【0049】
特に、本明細書に記載されるオクタヒドロベンゾイソキノリン化合物は、不斉炭素原子又はキラル中心を有すること、それぞれの立体異性体(例えば、鏡像異性体及び/又はジアステレオマー)を、又は鏡像異性体若しくはジアステレオマーの多様な混合物として調製しもよいし、光学的に純粋な形態に単離してもよいことが理解される。前述の個別の立体化学的に純粋な異性体のそれぞれが、本明細書に考慮される。加えて、一対の鏡像異性体から形成されるラセミ混合物が含まれるが、これらに限定されない、そのような立体化学的に純粋な異性体の、多様な混合物も考慮される。
【0050】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキル」には、場合により分岐鎖であってもよい炭素原子の鎖が含まれる。アルキルは、有利には、C〜C24、C〜C12、C〜C、C〜C、C〜C及びC〜Cを含む限定された長さのものであることが、更に理解されるべきである。
【0051】
本明細書で使用されるとき、用語「シクロアルキル」には、場合により分岐鎖であってもよい炭素原子の鎖であって、鎖の少なくとも一部が環状である鎖が含まれる。シクロアルキルアルキルは、シクロアルキルのサブセットであることが、理解されるべきである。シクロアルキルは多環式であってもよいことが、理解されるべきである。例示的なシクロアルキルには、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2−メチルシクロプロピル、シクロペンチルエト−2−イル、アダマンチルなどが含まれるが、これらに限定されない。シクロアルキルを形成する鎖は、有利には、C〜C24、C〜C12、C〜C、C〜C及びC〜Cを含む限定された長さのものであることが、更に理解されるべきである。
【0052】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロアルキル」には、炭素と少なくとも1個のヘテロ原子の両方を含み、場合により分岐鎖であってもよい原子の鎖が含まれる。例示的なヘテロ原子には、窒素、酸素及び硫黄が含まれる。特定の変形において、例示的なヘテロ原子には、リン及びセレニウムも含まれる。本明細書で使用されるとき、ヘテロシクリル及び複素環を含む用語「シクロへテロアルキル」には、ヘテロアルキルのように、炭素と少なくとも1個のヘテロ原子の両方を含み、場合により分岐鎖であってもよい原子の鎖が含まれ、ここで、鎖の少なくとも一部は環状である。例示的なヘテロ原子には、窒素、酸素及び硫黄が含まれる。特定の変形において、例示的なヘテロ原子には、リン及びセレニウムも含まれる。例示的なシクロへテロアルキルには、テトラヒドロフリル、ピロリジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、キヌクリジニルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
本明細書で使用されるとき、用語「アリール」には、芳香族炭素環式及び芳香族複素環式基を含む、単環式及び多環式の芳香族基が含まれ、それぞれ場合により置換されていてもよい。本明細書に記載される例示的な芳香族炭素環式基には、フェニル、ナフチルなどが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロアリール」には、芳香族複素環式基が含まれ、それぞれ場合により置換されていてもよい。例示的な芳香族複素環式基には、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、テトラジニル、キノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用されるとき、用語「アミノ」には、基NH、アルキルアミノ及びジアルキルアミノが含まれ、ここでジアルキルアミノの2つのアルキル基は、同一又は異なっていてもよく、すなわちアルキルアルキルアミノであってもよい。例示的には、アミノにはメチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノなどが含まれる。加えて、アミノアルキル又はアシルアミノのように、アミノが別の用語を修飾する又は別の用語で修飾されるとき、用語アミノの上記の変形が本明細書に含まれることが理解されるべきである。例示的には、アミノアルキルにはHN−アルキル、メチルアミノアルキル、エチルアミノアルキル、ジメチルアミノアルキル、メチルエチルアミノアルキルなどが含まれる。例示的には、アシルアミノにはアシルメチルアミノ、アシルエチルアミノなどが含まれる。
【0055】
本明細書で使用されるとき、用語「アミノ及びその誘導体」には、本明細書に記載されたアミノ、及び、アルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、ヘテロアルケニルアミノ、ヘテロアルキニルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルケニルアミノ、シクロへテロアルキルアミノ、シクロへテロアルケニルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、アリールアルケニルアミノ、アリールアルキニルアミノ、アシルアミノ、などが含まれ、それぞれ場合により置換されていてもよい。用語「アミノ誘導体」には、尿素、カルバメートなども含まれる。
【0056】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロキシ及びその誘導体」には、OH、及び、アルキルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、ヘテロアルケニルオキシ、ヘテロアルキニルオキシ、シクロアルキルオキシ、シクロアルケニルオキシ、シクロへテロアルキルオキシ、シクロへテロアルケニルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、アリールアルケニルオキシ、アリールアルキニルオキシ、アシルオキシ、などが含まれ、それぞれ場合により置換されていてもよい。用語「ヒドロキシ誘導体」には、カルバメートなども含まれる。
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「アシル」には、ホルミル、及び、アルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルキニルカルボニル、ヘテロアルキルカルボニル、ヘテロアルケニルカルボニル、ヘテロアルキニルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、シクロアルケニルカルボニル、シクロへテロアルキルカルボニル、シクロへテロアルケニルカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アリールアルケニルカルボニル、アリールアルキニルカルボニル、アシルカルボニル、などが含まれ、それぞれ場合により置換されていてもよい。
【0058】
本明細書で使用されるとき、用語「カルボキシレート及びその誘導体」には、基COH、その塩、そのエステル及びアミド、並びにCNが含まれる。
【0059】
用語「場合により置換されている」には、本明細書で使用されるとき、場合により置換されていてもよい基における、他の官能基による水素原子の置き換えが含まれる。そのような他の官能基には、例示的にはアミノ、ヒドロキシル、ハロ、チオール、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールへテロアルキル、ニトロ、スルホン酸及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体などが含まれるが、これらに限定されない。例示的には、アミノ、ヒドロキシル、チオール、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールへテロアルキル及び/又はスルホン酸のいずれかは、場合により置換されていてもよい。
【0060】
本明細書で使用されるとき、用語「場合により置換されているアリール」には、場合により置換されていてもよいアリールにおける、他の官能基による水素原子の置き換えが含まれる。そのような他の官能基には、例示的にはアミノ、ヒドロキシル、ハロ、チオール、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールへテロアルキル、ニトロ、スルホン酸及びその誘導体、カルボン酸及びその誘導体などが含まれるが、これらに限定されない。例示的には、アミノ、ヒドロキシル、チオール、アルキル、ハロアルキル、ヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、アリールへテロアルキル及び/又はスルホン酸のいずれかは、場合により置換されていてもよい。
【0061】
例示的な置換基には、基−(CHが含まれるが、これに限定されず、ここで、xは、0〜6の整数であり、そしてZは、ハロゲン、ヒドロキシ、C〜Cアルカノイルオキシを含むアルカノイルオキシ、場合により置換されていてもよいアリールオキシ、C〜Cアルキルを含むアルキル、C〜Cアルコキシを含むアルコキシ、C〜Cシクロアルキルを含むシクロアルキル、C〜Cシクロアルコキシを含むシクロアルコキシ、C〜Cアルケニルを含むアルケニル、C〜Cアルキニルを含むアルキニル、C〜Cハロアルキルを含むハロアルキル、C〜Cハロアルコキシを含むハロアルコキシ、C〜Cハロシクロアルキルを含むハロシクロアルキル、C〜Cハロシクロアルコキシを含むハロシクロアルコキシ、アミノ、C〜Cアルキルアミノ、(C〜Cアルキル)(C〜Cアルキル)アミノ、アルキルカルボニルアミノ、N−(C〜Cアルキル)アルキルカルボニルアミノ、アミノアルキル、C〜Cアルキルアミノアルキル、(C〜Cアルキル)(C〜Cアルキル)アミノアルキル、アルキルカルボニルアミノアルキル、N−(C〜Cアルキル)アルキルカルボニルアミノアルキル、シアノ、及びニトロから選択されるか;又はZは、−CO及び−CONRから選択され、ここでR、R及びRは、水素、C〜Cアルキル、及びアリール−C〜Cアルキルから、それぞれの場合においてそれぞれ独立して選択される。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「プロドラッグ」は、生体系に投与されたとき、1つ以上の自発的化学反応、酵素触媒化学反応及び/若しくは代謝化学反応又はこれらの組み合わせの結果として生物学的に活性な化合物を生じる、任意の化合物を一般に意味する。インビボでは、プロドラッグは、典型的には、酵素(例えば、エラストラーゼ、アミダーゼ、ホスファターゼなど)、単純な生化学反応、又は他のインビボプロセスによる作用を受けて、より薬理学的に活性な薬剤を遊離若しくは再生する。この活性化は、内在性宿主酵素の作用を介して生じてもよいし、プロドラッグの投与の前、後、又は間に宿主に投与された非内在性酵素の作用を介して生じてもよい。プロドラッグの使用についての追加的な詳細は、米国特許第6,527,165号及びPathalk et al., Enzymic protecting group techniques in organic synthesis, Stereosel. Biocatal. 775-797 (2000)に記載されている。プロドラッグは、有利なことに、標的送達、安全性、安定性などのような目標が達成されると直ぐに元の薬剤に変換され、続いて、プロドラッグを形成する放出された残りの基を急速に排除することが理解される。
【0063】
プロドラッグは、インビボで最終的に切断される基を、OH及びNRのような、化合物上に存在する1つ以上の官能基に結合することによって、本明細書に記載される化合物から調製することができる。例示的なプロドラッグには、基がアルキル、アリール、アラルキル、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニルオキシアルキルであるようなカルボン酸エステル、並びに、結合した基がアシル基、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、ホスフェート、又はスルフェートであるようなヒドロキシル、チオール、及びアミンのエステル、が含まれるが、これらに限定されない。活性エステルとも呼ばれる例示的なエステルには、1−インダニル、N−オキシスクシンイミド;アセトキシメチル、ピバロイルオキシメチル、β−アセトキシエチル、β−ピバロイルオキシエチル、1−(シクロヘキシルカルボニルオキシ)プロパ−1−イル、(1−アミノエチル)カルボニルオキシメチルなどのようなアシルオキシアルキル基;エトキシカルボニルオキシメチル、α−エトキシカルボニルオキシエチル、β−エトキシカルボニルオキシエチルなどのようなアルコキシカルボニルオキシアルキル基;ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノメチル、ジエチルアミノエチルなどのようなジ−低級アルキルアミノアルキル基を含むジアルキルアミノアルキル基;2−(イソブトキシカルボニル)ペンタ−2−エニル、2−(エトキシカルボニル)ブタ−2−エニルなどのような2−(アルコキシカルボニル)−2−アルケニル基;及びフタリジル、ジメトキシフタリジルなどのようなラクトン基が含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
更なる例示的なプロドラッグは、本明細書に記載される化合物の可溶性及び/又は安定性を増加するように機能する、アミド又はリン基のような化学部分を含有する。アミノ基の更なる例示的なプロドラッグには、(C〜C20)アルカノイル;ハロ−(C〜C20)アルカノイル;(C〜C20)アルケノイル;(C〜C)シクロアルカノイル;(C〜C)シクロアルキル(C〜C16)アルカノイル;非置換アロイル又はハロゲン、シアノ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、(C〜C)アルキル及び(C〜C)アルコキシ(それぞれ場合により1〜3個のハロゲン原子の1個以上で更に置換されていてもよい)からなる群より選択される、1〜3つの置換基で置換されているアロイルのような、場合により置換されていてもよいアロイル;非置換であるか、又はハロゲン、(C〜C)アルキル及び(C〜C)アルコキシ(それぞれ1〜3個のハロゲン原子で場合により更に置換されていてもよい)からなる群より選択される、1〜3つの置換基で置換されているアリール基のような、場合により置換されていてもよいアリール(C〜C16)アルカノイル;並びに、非置換であるか、又はハロゲン、シアノ、トリフルオロメタンスルホニルオキシ、(C〜C)アルキル及び(C〜C)アルコキシ(それぞれ1〜3個のハロゲン原子で場合により更に置換されていてもよい)からなる群より選択される1〜3つの置換基で置換されているヘテロアリール基のような、ヘテロアリール部分にO、S及びNから選択される、1〜3個のヘテロ原子及びアルカノイル部分に2〜10個の炭素原子を有する、場合により置換されていてもよいヘテロアリールアルカノイル、が含まれるが、これらに限定されない。例示された基は、例示的であって、網羅的ではなく、従来の方法により調製することができる。
【0065】
プロドラッグそれ自体は、有意な生物学的活性を有さなくてもよく、代わりに、インビボへの投与の後、1つの以上の自発的な化学反応、酵素触媒化学反応、及び/若しくは代謝化学反応、又はこれらの組み合わせを受けて、生物学的に活性な化合物であるか又は生物学的に活性な化合物の前駆体である、本明細書に記載されている化合物を生成してもよいことが理解される。しかし、幾つかの場合において、プロドラッグは生物学的に活性であることが理解される。プロドラッグは、多くの場合に、改善された経口バイオアベイラビリティ、薬力学的半減期などを介して、薬剤の効能又は安全性を改善するために役立ちうることも理解される。プロドラッグは、単純に望ましくない薬剤特性を遮蔽する基又は薬剤送達を改善する基を含む、本明細書に記載される化合物の誘導体も意味する。例えば、本明細書に記載される1つ以上の化合物は、有利に阻止し得る又は最小限に抑え得るような、低い経口薬剤吸収、部位特異性の欠如、化学的不安定性、毒性及び不十分な患者許容性(嫌な味、臭気、注射部位の疼痛など)等の、臨床薬物適用において薬理学的、薬学的又は薬物動態的な障壁になりかねない望ましくない特性を有してもよい。プロドラッグ又は可逆的誘導体を使用する他の戦略は、薬剤の臨床適用の最適化に有用でありうることが、本明細書において理解される。
【0066】
用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書で使用されるとき、有機又は無機塩を使用して形成される塩であって、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応などを伴うことなくヒト及び下等動物の組織との接触に使用するのに適しているような塩を意味する。アミン官能基を有する生物学的に活性な化合物の、薬学的に許容される塩を形成するのに適した酸は、当該技術においてよく知られている。塩は、従来の方法に従って、本発明の化合物の最終単離及び精製の際にその場で調製することもできるし、遊離塩基形態の単離された化合物を、適切な塩形成酸と反応させることにより別個に調製することもできる。
【0067】
薬学的に許容される塩は、当該技術においてよく知られており、例えば、J. Pharm. Sci., 66: 1-19, 1977において薬学的に許容される塩を詳細に記載しているS. M. Bergeらにより例示されている。塩は、式(I)の化合物の最終単離及び精製の際にその場で調製することもできるし、遊離塩基官能基を適切な有機、無機、スルホン酸などと反応させることによって別個に調製することもできる。代表的な酸付加塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、アスコルビン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩などが含まれる。
【0068】
本明細書で使用されるとき、用語「組成物」は、特定の成分を特定の量で含む任意の生成物、並びに、特定の成分の特定の量の組み合わせから直接的又は間接的にもたらされる任意の生成物、を一般に意味する。本明細書に記載される組成物を、本明細書に記載される単離化合物から又は本明細書に記載される化合物の塩、溶液、水和物、溶媒和物、及び他の形態から調製できることが理解されるべきである。本組成物を、本明細書に記載される化合物の多様な非晶質、非−非晶質、部分結晶質、結晶質及び/又は他の形態学的形態で調製できることも、理解されるべきである。本組成物を、本明細書に記載される化合物の多様な水和物及び/又は溶媒和物から調製できることも理解されるべきである。したがって、本明細書に記載される化合物を列挙するそのような医薬組成物は、それぞれ又は任意の組み合わせで、本明細書に記載される化合物の多様な形態学的な形態及び/又は溶媒和物若しくは水和物形態を含むことが理解されるべきである。例示的には、組成物は1つ以上の担体、希釈剤及び/又は賦形剤を含むことができる。本明細書に記載される化合物又はそれらを含有する組成物を、本明細書に記載される方法に適した任意の従来の投与形態により治療有効量で配合することができる。本明細書に記載される化合物又はそのような製剤を含む、それらを含有する組成物を、本明細書に記載される方法のための多種多様な通常の投与経路により、既知の手順を利用して(一般に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, (21st ed., 2005)を参照すること)多種多様な投与様式で投与することができる。
【0069】
用語「投与する」は、本明細書で使用されるとき、経口(po)、静脈内(iv)、筋肉内(im)、皮下(sc)、経皮、吸入、口腔内、眼内、舌下、膣内、直腸内などが含まれるが、これらに限定されない、本明細書に記載される化合物及び組成物を患者に導入する全ての方法が含まれる。本明細書に記載される化合物及び組成物を、従来の非毒性で薬学的に許容される担体、佐剤、及びビヒクルを含有する単位投与形態及び/又は製剤で投与することができる。
【0070】
用語「薬学的に許容される」には、健全な医療判断の範囲内であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応などを伴うことなくヒト及び下等動物の組織と接触させて使用するのに適しており、利益/リスク比が妥当に釣り合っていて、精神障害、神経障害、心血管障害及び嗜癖行動障害の治療における、意図される使用が有効であるような、塩、担体、希釈剤、及び賦形剤が含まれる。
【0071】
用語「薬学的に許容される担体」には、任意の種類の非毒性で不活性な固体、半固体、又は液体の、充填剤、希釈剤、封入材料、又は製剤補助剤が含まれる。薬学的に許容される担体として機能することができる材料の例示的な例は、ラクトース、グルコール及びスクロースのような糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンのようなデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロースのようなセルロース及びその誘導体;粉末トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;カカオバター及び坐剤ロウのような賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油のような油;プロピレングリコールのようなグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールのようなポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルのようなエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質無含有水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール及びリン酸塩緩衝液、並びに医薬製剤に使用される他の非毒性で適合性のある物質である。ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムのような湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、並びに着色剤、放出剤、被覆剤、甘味剤、風味剤及び香料、防腐剤及び酸化防止剤も、配合者の判断に従って組成物に存在することができる。薬学的に許容される酸化防止剤の例示的な例には、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどのような水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アルコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどのような油溶性酸化防止剤;及びクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などのような金属キレート剤が含まれる。一つの態様において、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤は、一般に安全であると考慮されているもの(GRAS)である。
【0072】
用語「治療有効量」は、本明細書で使用されるとき、治療される疾患又は障害の症状の緩和を含む、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医により探求される組織系、動物、又はヒトにおいて生物学的又は医学的反応を誘発するような、活性化合物又は医薬品の量を意味する。一つの態様において、治療有効量は、任意の医学的治療に適用可能な妥当な利益/リスク比のもとで疾患又は疾患の症状を治療又は緩和することができるものである。しかし、本明細書に記載される化合物及び組成物の1日の総使用量は、健全な医療判断の範囲内で、担当医により決定されてもよいことが理解されるべきである。特定の患者に対する特定の治療有効用量レベルは、通常の技能を有する研究者、獣医、医師又は他の臨床医に周知の多様な要因、例えば、治療される障害及び障害の重篤度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物;患者の年齢、体重、身体全体の健康状態、性別及び食事;用いられる特定の化合物の投与時間、投与経路及び排出速度;治療期間;用いられる特定の化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬剤、などに応じて決まる。
【0073】
一つの実施態様において、本明細書に記載される化合物及び方法により治療可能なドーパミン関連機能不全には、運動制御に関与する哺乳類の脳の領域である大脳基底核内の線条体ドーパミンの欠損が含まれる。そのようなドーパミン欠乏は、パーキンソン病の基本的欠陥として並びにその疾患状態及び他の運動障害の主な病因として確立されている。D選択性アゴニストを含むドーパミンアゴニスト及びシナプス後レセプターに対して選択的であるアゴニストは、線条体ドーパミンレベルを増加し、パーキンソン病の治療をもたらしうることが理解される。
【0074】
別の実施態様において、本明細書に記載されている化合物及び方法により治療可能なドーパミン関連機能不全には、思考過程の撹乱、幻覚、及び現実感の欠損が関わる精神病である統合失調症の原因として同定されている、脳におけるドーパミンの過剰が含まれる。加えて、脳においてドーパミン活性を増強することが知られているアンフェタミンのような刺激薬の慢性乱用は、伝統的な妄想型統合失調症と臨床的に区別することができない妄想性精神病をもたらす可能性があり、統合失調症におけるこのドーパミン理論を更に支持している。ドーパミンアンタゴニストは、脳においてドーパミンレベルを減少し、統合失調症及び他の精神病の治療をもたらすことが理解される。
【0075】
別の実施態様において、本明細書に記載されている化合物及び方法により治療可能なドーパミン関連機能不全には、脳の報酬系における過剰ドーパミンが含まれる。コカインを自己投与するように訓練された動物は、D又はDのいずれかのドーパミンレセプターアンタゴニストによる治療の後、おそらくコカインの陶酔及び強化特性が原因で上昇したドーパミンのレベルを維持するために、この薬剤の消費を増加させることが報告されている。同様に、ドーパミンDアゴニストは、おそらく神経摂食機構に対する薬剤の直接的な作用により、ラットの食餌摂取量を減少させることが報告されている。このドーパミンと脳の報酬系との相関関係は、本明細書に記載されているドーパミン作動剤の投与によって、物質乱用や、コカイン嗜癖、ニコチン嗜癖を含む他の嗜癖行動障害、及び摂食障害を治療するために有用でありうることが理解される。
【0076】
別の実施態様において、本明細書に記載されている化合物及び方法により治療可能なドーパミン関連機能不全には、ドーパミン、ノルアドレナリン、及びセロトニンのような特定の生体アミン神経伝達物質の中枢神経系における低減が含まれ、この低減は、主な臨床症状発現として気分の変化が特徴付けられる、成人における最も一般的な精神医学的障害である、情動障害を引き起こしうる。本明細書に記載されているドーパミンアゴニストは、そのような情動障害の治療に有用でありうることが理解される。
【0077】
別の実施態様において、本明細書に記載されている化合物及び方法により治療可能なドーパミン関連機能不全には、認知及び注意障害が含まれる。動物研究は、探索及び探求活動、転導性、反応率、識別能力、及び注意の切替えに関与する注意関連行動における、ドーパミンの役割を支持する。本明細書に記載されている化合物は、そのような認知及び注意障害の治療に有用でありうることが理解される。
【0078】
用語「情動障害」には、主な臨床症状発現として気分の変化が特徴付けられる障害、例えば、うつ病が含まれる。
【0079】
用語「注意欠陥障害」には、不注意、衝動性、転導性、並びに、時々、活動過多症候群、多動性症候群、微細脳機能障害、及び特定学習障害といったあまり正式ではない診断に代わる機能亢進、により特徴付けられる、小児神経精神障害が含まれる。障害は、思春期直前の小児において蔓延しており、学業不振及び社会的行動の不足に反映されており、知覚、認知及び運動機能障害が実験報告において記載されている。
【0080】
用語「認知障害」には、知覚、思考及び記憶の認知(情報処理)機能のあらゆる局面における欠乏が含まれる。
【0081】
用語「ドーパミン関連心血管障害」には、ドーパミン又はドーパミン作動剤の単独又は他の部類の心血管作用物質との併用療法による投与によって、逆転又は改善することができるような状態が含まれる。心血管疾患における、例えばショック及びうっ血性心不全の治療におけるドーパミン作動剤の有用性は、心血管系における既知であるが完全に理解されていないドーパミンの役割、特に、心臓に対するドーパミンの効果、並びに血管収縮を生じ、同時に腎臓及び腸間膜層中の血流を維持するドーパミンの能力に基づいている。この用語に更に含まれるものとしては、例えば腎不全における使用を含む、ドーパミン作動剤の他の関連する潜在的用途がある。
【0082】
用語「ドーパミン関連神経及び精神障害」には、以下のような傷害:精神病及び嗜癖行動障害のような行動傷害;大うつ病のような情動障害;並びにパーキンソン病、ハンチントン病及びジルドラトゥレット症候群のような運動障害、が含まれ、これらは、CNSにおける不十分又は過剰な機能的ドーパミン作動活性に薬理学的に及び/又は臨床的に関連している。この用語に更に含まれるものとしては、ドーパミン作動剤が臨床的に有用であることが見出されているその他の適応症がある。そのような適応症の例には、尿毒症、胃腸炎、癌腫瘍、放射線宿酔及び多様な薬剤により引き起こされる嘔吐のような嘔吐、難治性しゃっくり、並びに、アルコール性幻覚症により特徴付けられる障害が含まれる。
【0083】
用語「物質乱用」には、医学的適応症の不在下で、神経活性物質を、その物質の連続的使用により引き起こされるか悪化しうる、本人が自覚しており持続性又は再発性であって社会的、職業的、精神的、又は身体的な問題が存在するにもかかわらず、周期的又は定期的に自己投与すること、が含まれる。
【0084】
一つの実施態様において、本明細書に記載される化合物の総1日用量は、単回又は分割用量で患者に投与され、例えば、0.01〜50mg/kg体重以上又は0.1〜30mg/kg体重の量であってもよい。一つの態様において、単回用量組成物は、そのような量、又は、合計すると1日用量になるようなその約数、を含有してもよい。別の態様において、本明細書に記載される治療レジメンは、そのような治療を必要とする患者に1日あたり約1mg〜約1000mgの化合物を多回用量又は単回用量で投与することを含む。
【0085】
本明細書に記載される化合物を、従来の薬剤投与形態に配合することができる。本発明の化合物の好ましい用量は、治療される適応症、投与経路、及び患者の全体的な状態を含む、多くの要因に応じて決まる。経口投与では、例えば、本発明の化合物の有効用量は、約0.1〜約50mg/kg、より典型的には約0.5〜約25mg/kgの範囲であると予測される。有効な非経口用量は、約0.01〜約15mg/kg体重、より典型的には約0.1〜約5mg/kg体重の範囲であってもよい。一般に、本発明の化合物を利用する治療レジメンは、1日あたり約1mgから約500mgの化合物を多回用量又は単回用量で投与することを含む。
【0086】
本明細書に記載される化合物は、経口投与のために液体投与形態に配合されてもよく、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液及びシロップ、並びに水のような従来の不活性希釈剤を含有するエキシキルを含んでもよい。そのような組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤及び風味剤のような佐剤を含むこともできる。本発明の化合物の注射用調合剤は、有効用量の化合物を、水又はより好ましくは等張塩化ナトリウム溶液のような非経口的に許容される希釈剤に分散又は溶解する当該技術で確認されている手順を利用して、配合することができる。非経口製剤は、従来の精密濾過技術を使用して滅菌することができる。
【0087】
本明細書に記載される化合物を固体組成物に配合することができる。経口投与用の固体投与形態には、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉末剤、及び顆粒剤が含まれうる。そのような固体投与形態において、活性化合物を、スクロース、ラクトース又はデンプンのような少なくとも1つの不活性希釈剤と混合することができ、そのような投与形態は、通常行われるように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えばステアリン酸マグネシウム及び微晶質セルロースのような錠剤化潤滑剤、及び他の錠剤化助剤、結合剤、並びに/又は崩壊剤、を含むこともできる。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合では、投与形態は緩衝剤を含むこともできる。錠剤及び丸剤を、腸溶剤皮及び他の放出制御被覆により追加的に調製することもできる。場合により更に、本発明の活性化合物と、例えばデンプン又は糖担体とを含む、粉末組成物を、経口投与のためにゼラチンカプセルに充填することもできる。本発明の化合物の他の投与形態は、当該技術で認められた技術を使用して、特定の投与様式に適合した形態に配合することができる。固体投与形態は、ラクトース又は乳糖のような賦形剤、並びに高分子量ポリエチレングルコースなどを使用して、充填剤により軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル剤として調製することができる。
【0088】
別の実施態様において、非経口調合剤が記載される。用語「非経口」には、静脈内、筋肉内、腹腔内、幹内(intrastemal)、皮下、並びに関節内への、注射及び注入技術が含まれる。
【0089】
別の実施態様において、注射用調合剤が記載される。例示的には、滅菌注射水性又は油性懸濁剤は、適切な分散又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、従来の技術に従って配合することができる。滅菌注射用調合剤は、また、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の滅菌された注射用の、液剤、懸濁剤、又は乳剤(例えば1,3−ブタンジオール中の液剤)であってもよい。用いることができる許容されるビヒクル及び溶媒のうちには、水、リンゲル液、U.S.P.及び等張塩化ナトリウム溶液がある。加えて、滅菌の固定油が溶媒又は懸濁媒質として慣用的に用いられる。このために、合成モノ−又はジグリセリドを含む任意の無刺激固定油を用いることができる。また、オレイン酸のような脂肪酸が、注射用の調製に使用される。
【0090】
注射用製剤は、滅菌してもよく、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって滅菌することができるし、使用直前に滅菌水若しくは他の滅菌注射用媒質に溶解若しくは分散することができるような、滅菌固体組成物の形態へ滅菌剤を組み込むことによっても、滅菌することができる。
【0091】
薬剤の効果を延長するために、皮下又は筋肉内注射による薬剤の吸収を遅延することができる。例示的には、水溶性の高くない結晶質又は非晶質の物質状である薬剤の懸濁液を注射する。薬剤の吸収速度は、薬剤の溶解速度によって左右され、次に、薬剤の物理的状態、例えば薬剤の結晶の大きさ及び結晶形態によって左右される。薬剤の吸収を遅延する別の手法は、薬剤を油中の液剤又は懸濁剤として投与することである。薬剤と、ポリアクチド−ポリグリコシドのオリゴマー及びポリマーのような生分解性ポリマーとの、マイクロカプセルマトリックスを形成することにより、注射用デポ形態を作製することもできる。この方法により、薬剤とポリマーとの比、及びポリマーの組成物に応じて、薬剤放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリオルトエステル及びポリ無水物が含まれる。デポ注射用剤は、薬剤を、体組織に適合性があるリポソーム又はマイクロエマルションに捕捉することにより作製することもできる。
【0092】
薬剤の直腸投与用の坐剤は、薬剤を、カカオバター及びポリエチレングリコールのような適切な非刺激性賦形剤(どちらも、通常の温度で固体であるが、直腸温度で液体であり、したがって直腸で融解し、薬剤を放出する)と混合することによって、調製することができる。
【0093】
カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合では、投与形態は緩衝剤も含んでもよい。錠剤及び丸剤を、腸溶剤皮及び他の放出制御被覆により、追加的に調製することができる。
【0094】
望ましい場合、本明細書に記載されている化合物を、ポリマーマトリックス、リポソーム又は微小球のような徐放又は標的送達系に組み込むことができる。
【0095】
活性化合物を、上記に示した1つ以上の賦形剤によりマイクロカプセル化形態にすることもできる。錠剤、糖衣剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤の固体投与形態を、腸溶剤皮及び医薬製剤技術において周知の他の被覆のような、被覆及びシェルにより調製することができる。これらは場合により乳白剤を含有することができ、腸の特定の部分においてのみ又は優先的に、活性成分を放出するような組成のものでもあってもよく、放出は場合により遅延様式であってもよい。使用することができる包埋用の組成物の例には、ポリマー物質及びロウが含まれる。
【0096】
本発明の化合物の局所又は経皮投与のための投与形態には、更に軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、粉末剤、液剤、噴霧剤、吸入剤又は経皮パッチ剤が含まれる。活性成分は、必要に応じて、薬学的に許容される担体及び必要とされる任意の防腐剤又は緩衝剤と、滅菌条件下で混合される。眼科製剤、点耳剤、眼軟膏剤、粉末剤及び液剤も、本発明の範囲内であることが考慮される。上記の投与形態の1つ以上による舌下投与も、本発明の化合物の適切な投与様式として考慮される。
【0097】
軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、及びゲル剤は、本発明の活性化合物に加えて、賦形剤を含有してもよく、その例として、動物性及び植物性脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物がある。
【0098】
粉末剤及び噴霧剤は、本発明の化合物に加えて、賦形剤を含有してもよく、その例として、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物がある。噴霧剤は、追加的に、クロロフルオロヒドロカーボン又は環境的及び薬学的に許容される物質のような慣用の噴射剤を含有することができる。
【0099】
経皮パッチ剤は、化合物の身体への制御された送達を提供できる追加的な利点を有しうることが理解される。そのような投与形態は、化合物を適切な媒質に溶解又は分散することにより作製することができる。吸収促進剤を、皮膚全体にわたる化合物の流れを増加するために使用することもできる。速度は、速度制御膜を提供すること又は化合物をポリマーマトリックス若しくはゲルに分散することにより制御することができる。
【0100】
本発明の化合物は、単独で投与してもよいし、ドーパミン作動系に影響を与える他の作用物質、例えばL−ドパ、アマンタジン、アポモルフィン、若しくはブロモクリプチン、と共に;また、コリン作動剤、例えばベンズトロピン、ビペリデン、エトプロマジン、プロシクリジン、トリヘキシルフェニジルなど、と共に、組み合わせ若しくは同時療法により投与してもよい。本発明の化合物は、例えばCNSの外側で代謝変換を阻止する酵素インヒビターといった薬剤と共投与することもできる。本発明の化合物を他の抗精神病剤と共投与することもできる。用語「抗精神病剤」には、全形態の統合失調症、器質精神病、躁うつ病の躁病期、及び他の急性突発性の病気の対症管理において広く使用され、うつ病又は重篤な不安において時折使用される薬剤が含まれる。
【0101】
別の実施態様において、化合物を調製する方法が本明細書に記載される。一つの例示的な方法は、下記式:
【化5】
で示される化合物を、2,4,4−トリメチル−2−オキサゾリジンのアニオンと接触させて、下記式:
【化6】
で示される化合物を調製する工程を含む。
【0102】
別の例示的な方法は、下記式:
【化7】
で示される化合物を還元剤と接触させて、下記式:
【化8】
〔式中、Rは、カルボン酸又はその誘導体である〕で示される化合物を調製する工程を含む。一つの実施態様において、還元剤は、CoCl及びKBHを含む。別の実施態様において、Rはオキサゾリンである。
【0103】
別の例示的な方法は、下記式:
【化9】
で示される化合物を酸と接触させて、下記式:
【化10】
〔式中、Rは、カルボン酸又はその誘導体である〕で示される化合物を調製する工程を含む。一つの実施態様において、酸はプロトン性溶媒の中に含まれる。別の実施態様において、Rはオキサゾリンである。別の実施態様において、キラル炭素は以下の相対立体化学を有する。
【化11】
【0104】
前述の方法を、対応する光学的に活性な化合物を調製するように適合できることが理解される。
【0105】
別の実施態様において、式(I)の化合物の調製に有用な、以下の中間体化合物が記載される:
【化12】
〔式中、R、R及びRは、本明細書の多様な実施態様において記載されたとおりである〕。
【0106】
別の実施態様において、以下のような、化合物を調製する方法が本明細書に記載される:
【化13】
(a)TMSCN、BFEtO、トルエン;(b)n−BuLi、2,4,4−トリメチル−2−オキサゾリン、THF;(c)CoCl 6HO、KBH又はNaBH、MeOH;(d)1.EtOH中10%濃HCl、2.6N NaOH;(e)1.BH、THF、2.2N HCl
〔式中、R、R及びRは、本明細書に記載されたとおりであり、そしてRは、カルボン酸又はその誘導体である〕。別の実施態様において、Rは、4,4−ジメチル−2−オキサゾリニルである。
【0107】
別の実施態様において、以下のような、化合物を調製する方法が本明細書に記載される:
【化14】
〔式中、R、R及びRは、本明細書に記載されたとおりであり、そしてRは、カルボン酸又はその誘導体である〕。別の実施態様において、Rは、4,4−ジメチル−2−オキサゾリニルである。Rが水素である場合、工程(c)において付加される基RCHの相対立体化学が形成されてもよいことが理解される。あるいは、多様な量のシン及びアンチ化合物を含む、化合物の混合物が形成されてもよいことが理解される。あるいは、Rが水素ではない場合、工程(c)において形成される主要生成物は、基RCHのアンチ相対立体化学を有することが理解される。シン及びアンチ化合物を、クロマトグラフィー、結晶化などのような任意の従来の技術により分離することができる。
【0108】
以下の式:
【化15】
で示される化合物は、以下の文献:米国仮出願第61/171,273号;Schoenleber, R. W., "Dopamine Agonists," WO9638435, (1996); Elmore & King, "Synthesis of 8-Isopropylpodocarpane-6,7-Diol (6-Hydroxytotarol) and of 7,8-Dimethoxypodocarpane," J. Chem. Soc., p. 4425 (1961);及び、Oka et al., "Synthesis of Conformationally Rigid Catecholamine Derivatives," Chem. Pharm. Bull., 25:632-639 (1977)(これらの文献の開示は参照として本明細書に組み込まれる)、に記載されている手順に従って調製される。
【0109】
<実施例>
以下の例示的な実施例は、特定の実施態様を記載する。しかし、これらは例示にすぎず、明細書又は請求項の範囲を制限するものとして考慮されるべきではない。
【0110】
実施例1.
全ての試薬は、市販されており(Aldrich、Alfa Aesar)、特に指定のない限り、更に精製することなく使用した。乾燥THFは、使用直前に、ベンゾフェノン−ナトリウムからアルゴン下で蒸留した。カラムクロマトグラフィーは、SiliCycle SiliaFlash P60シリカゲル(230〜400メッシュ)を使用して実施した。J.T. Bakerフレキシブル薄層クロマトグラフィーシート(シリカゲルIB2-F)を使用して、反応の進行をモニタリングした。融点は、Mel-Temp装置を使用して決定し、未修正値として報告する。NMRスペクトルは、示されているように、300 MHz Bruker ARX300 NMRスペクトロメーター又は500 MHz Bruker DRX500 NMRスペクトロメーターを使用して記録した。化学シフトは、示されている場合を除いて、CDCl中のテトラメチルシラン(TMS)の内部基準(0.03%、v/v)に対するδ値(ppm)で報告される。NMRピークの報告に使用される略語は、以下である:bs=広帯一重項、d=二重項、dd=二重項の二重項、m=多重項、q=四重項、s=一重項、t=三重項。キャリヤーガスとしてイソブタンを使用する化学イオン化質量スペクトル(CIMA)は、Finnigan 4000スペクトロメーターにより得た。元素分析は、Purdue University Microanalysis Laboratory又はMidwest Microlabsにおいて実施され、全ての化合物は、特に示されていない限り、95%以上の純度を有すると報告された。全ての反応は、特に示されていない限り、アルゴン雰囲気下で実施した。
【0111】
実施例2.
2−(2,3−ジメトキシフェニル)−5−オキソ−テトラヒドロフラン−3−カルボン酸(4)。冷却器及び添加漏斗を取り付けた火炎乾燥三つ首フラスコの中に、25.0g(0.184mol)の無水粉末ZnClを入れた。次に、100mLのCHClを加え、続いて15.3g(0.092mol)の2,3−ジメトキシベンズアルデヒド及び13.8g(0.138mol)の無水コハク酸を加えた。トリエチルアミン(25.6mL、0.184mol)を、急速に撹拌しながらフラスコに滴加し、反応物を4日間加熱還流した。反応物を室温に冷却し、氷と濃HClの混合物に注いだ。混合物をEtOAc(3×250mL)で抽出し、次に2N HCl(1×250mL)及びブライン(1×250mL)で洗浄した。生成物を、TLCが有機層に生成物が残っていないことを示すまで、飽和NaHCO(4×200mL)で抽出した。水層を、CHCl(1×200mL)で洗浄し、濃HClで酸性化した。白色の乳状溶液をCHCl(3×250mL)で抽出し、有機抽出物をNaSOで乾燥し、真空下で蒸発させて、18.0g(0.068mol、73.6%)の淡黄色の固体を生じ、それをEtOAc/ヘキサンから再結晶させた;融点239〜130℃(文献34の融点132℃)。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 7.01 (t, 1H, J = 7.5 Hz, ArH); 6.89 (dd, 1H, J = 8.1 Hz, J = 2.5 Hz, ArH); 6.82 (dd, 1H, J = 8.1 Hz, J = 2.5 Hz, ArH); 5.73 (d, 1H, J = 6.6 Hz, ArCH); 3.81 (s, 3H, ArOCH3); 3.80 (s, 3H, ArOCH3); 3.44 (dt, 1H, J = 8.5 Hz, J = 6.6 Hz, CHCOOH); 2.90 (d, 2H, J = 8.5 Hz, COCH2)。EIMS (M+) = 266。追加的な詳細は、Stevens et al., "A New Synthetic Route to Furofuranoid Lignans Via the Intramolecular Mukaiyama Reaction," J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 185-190 (1992)(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0112】
実施例3.
4−(2,3−ジメトキシフェニル)ブタ−3−エン酸(5)。再結晶パラコン酸4(8.6g、0.032mol)を一つ首丸底フラスコに入れ、固体を油浴により180℃で6時間加熱した。二酸化炭素が、暗褐色の液体から泡立っているのを観察することができた。反応物を室温に冷却し、CHClに溶解した。生成物及び未反応出発材料を、2N NaOH(3×100mL)に抽出した。ブテン酸のpKaはおよそ4.2であり、一方、パラコン酸のpKaはおよそ3.6であるので、2つの化合物を滴定により分離した。塩基性の水性抽出物を、目盛り付きpHメーターによりモニタリングしながら、2N HClにより注意深く酸性化した。pHが4.5に達すると、溶液は僅かに曇り始めた。溶液のpHを4.0に調整し、水溶液をCHClで抽出した。抽出した後、水層のpHはおよそ5に上昇し、滴定を、pH4.0で曇りがなくなるまで繰り返した。出発材料を、pH3.0に酸性化することにより回収し、CHClで抽出した。最初の有機抽出物をNaSOで乾燥し、減圧下で蒸発させて、純粋な5を得て、減圧下で凝固させて、黄色の固体(4.7g、0.021mol、65.2%)とし、これを更に精製することなく使用した;融点84〜86℃(文献35で融点は報告されず)。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 7.08 (dd, 1H, J = 1.2, 8.0 Hz, ArH); 6.99 (t, 1H, J = 8.0 Hz, ArH); 6.80 (m, 2H, ArH and ArCH=CH); 6.29 (dt, 1H, J = 7.2, 15.9 Hz, ArCHCH); 3.84 (s, 3H, ArOCH3); 3.78 (s, 3H, ArOCH3); 3.32 (dd, 2H, J = 1.2, 7.2 Hz, CH2COOH)。ESIMS (M+Na+) = 245。
【0113】
実施例4.
4−(2,3−ジメトキシフェノキシ)ブタン酸(6)。酸5(3.7g、0.017mol)を25mLの無水EtOHに溶解し、0.6gの10%Pd/Cを含有するParr水素化ボトルに加えた。次にボトルを25psiのHで加圧し、2時間振とうした。次に内容物をセライトで濾過し、溶媒を蒸発させ、得られた油状物を高真空下で乾燥して、灰色の固体(3.7g、0.017mol、定量収率)を得た。固体を、EtOAc/ヘキサンから再結晶させて、白色の微細針を生じた;融点58〜59℃(文献27の融点58.5〜60℃)。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 6.97 (t, 1H, J = 8 Hz, ArH); 6.76 (d, 1H, J = 8 Hz, ArH); 6.75 (d, 1H, J = 8 Hz, ArH); 3.84 (s, 3H, ArOCH3); 3.80 (s, 3H, ArOCH3); 2.67 (t, 2H, J = 7 Hz, HO2CCH2CH2); 2.37 (t, 2H, J = 7 Hz, ArCH2); 1.92 (p, 2H, J = 7 Hz, HO2CCH2CH2)。ESIMS (M+Na+) = 247。
【0114】
実施例5.
5,6−ジメトキシ−3,4−ジヒドロナフタレン−1(2H)−オン(7)。ポリリン酸(15g)を、機械的撹拌を与えつつ乾燥フラスコに加え、油浴で60℃に加熱した。粉末酸6(1.0g、4.46mmol)を、撹拌渦の中心に少量ずつ加えた。30分後、反応はさび色になり、出発材料は残っていなかった。反応物を、激しく撹拌しながら氷に注ぐことにより停止させ、所望の生成物が結晶化した。結晶を濾過により収集して、真珠光沢でオフホワイトの板状物(900mg、4.37mmol、97.9%)を得た;融点103〜104℃(文献27の融点104〜105℃)。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 7.79 (d, 1H, J = 8.7, ArH); 6.81 (d, 1H, J = 8.7, ArH); 3.86 (s, 3H, ArOCH3); 3.75 (s, 3H, ArOCH3); 2.89 (t, 2H, J = 6.3 Hz, ArCH2); 2.53 (t, 2H, J = 6.3 Hz, COCH2); 2.05 (p, 2H, J = 6.3 Hz, CH2CH2CH2)。EIMS (M+) = 206。
【0115】
実施例6.
5,6−ジメトキシ−3,4−ジヒドロナフタレン−1ーカルボニトリル(9)。テトラロン7(1.7g、8.25mmol)を、新たに蒸留したトルエン(25ml)中のスラリーとして、磁気撹拌機を備えた乾燥フラスコに加えた。TMSCN(1.42mL、10.7mmol)を滴加した。10分間撹拌した後、BF・OEt(1.57mL、12.38mmol)をシリンジで加えた。反応物を、出発材料が残らなくなるまで室温で3時間撹拌した。反応物を、30mLの氷水を注ぎ、激しく撹拌することによって停止させた。この水性混合物に、20mLのEtOを加え、層を分離した。水層を、更にEtOで2回、EtOAcで1回抽出した。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、減圧下で蒸発させて、黄褐色の固体(1.7g、7.9mmol、96%)を得て、これをMeOHから再結晶させて、無色の微細針を得た;融点138〜140℃(文献36の融点137〜139℃)。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 7.18 (d, 1H, J = 8 Hz, ArH); 6.80 (d, 1H, J = 8 Hz, ArH); 6.75 (t, 1H, J = 4.6 Hz, ArCH2CH2CH); 3.88 (s, 3H, ArOCH3); 3.76 (s, 3H, ArOCH3); 2.87 (t, 2H, J = 8 Hz, ArCH2); 2.44 (m, 2H, ArCH2CH2)。EIMS (M+) = 215。
【0116】
実施例7.
シス−及びトランス−2−((4,4−ジメチル−4,5−ジヒドロオキサゾール−2−イル)メチル)−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボニトリル(11a、11b)。ドライアイス/アセトン浴に設置したフラスコ中の蒸留THF(50mL)中2,4,4−トリメチル−2−オキサゾリン(1.80mL、14.2mmol)の溶液に、7.55mL(15.1mmol)のシクロヘキサン中n−BuLiの2.0M溶液をシリンジで加えた。溶液はゆっくりと鮮黄色になり、−78℃で1時間撹拌した。ニトリル9(2.03g、9.44mmol)を、蒸留THF(50mL)に溶解し、リチオ化オキサゾリンの溶液に滴加した。黄色は退色し、混合物を−78℃で2時間、続いて周囲温度で1時間撹拌した。反応物を、50mLの飽和NHCl水溶液中10%NHOHの添加により停止させた。溶液をEtO(3×25mL)で抽出し、次に有機層を合わせ、2N HCl(4×25mL)で抽出した。水層をNaHCOで塩基性化し、EtOで抽出し、NaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させた。この残渣をカラムクロマトグラフィー(7:1のEtOAc:ヘキサン)により分離して、シス(高R,0.990g、3.02mmol、31.9%)及びトランス(低R、1.10g、3.35mmol、35.5%)付加生成物を得た。シス付加生成物は無色の油状物であったが、トランス生成物は、放置すると無色の針状結晶を形成した;融点92〜94℃。1H NMR: (300 MHz, CDCl3):<シス−11a> δ 6.96 (d, 1H, J = 8.7 Hz, ArH); 6.77 (d, 1H, J = 8.7 Hz, ArH); 4.18 (d, 1H, J = 4.5 Hz (cis), ArCHCN); 3.93 (s, 2H, OCH2C(CH3)2); 3.83 (s, 3H, ArOCH3); 3.77 (s, 3H, ArOCH3); 3.00 (ddd, 1H, J = 2.4, 5.7, 18.0 Hz, ArCH2); 2.72-2.60 (m, 1 H, ArCH2); 2.60-2.52 (dd, 1H, J = 8.4, 15.9 Hz, CH2C(N)O); 2.51-2.44 (dd, 1H, J = 6.3, 15.9 Hz, CH2C(N)O); 2.46-2.32 (m, 1H, ArCH2CH2); 1.99-1.90 (m, 1H, ArCH(CN)CH); 1.83-1.68 (m, 1H, ArCH2CH2); 1.28 (s, 3H, C(CH3)2); 1.26 (s, 3H, C(CH3)2)。EIMS: (M+) = 328。<トランス−11a> δ 7.11 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 6.80 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 3.93 (s, 2H, OCH2C(CH3)2); 3.85 (d, 1H, J = 9.3 Hz (trans), ArCHCN); 3.83 (s, 3H, ArOCH3); 3.77 (s, 3H, ArOCH3); 2.90 (dt, 1H, J = 5.1, 17.7 Hz, ArCH2); 2.75-2.63 (m, 1 H, ArCH2); 2.62-2.56 (dd, 1H, J = 4.8, 13.5 Hz, CH2C(N)O); 2.50-2.33 (m, 2H, ArCH2CH2, CH2C(N)O); 2.16-2.07 (m, 1H, ArCH(CN)CH); 1.59-1.45 (m, 1H, ArCH2CH2); 1.27 (s, 3H, C(CH3)2); 1.26 (s, 3H, C(CH3)2)。EIMS: (M+) = 328。
【0117】
実施例8.
シス−(2−((4,4−ジメチル−4,5−ジヒドロオキサゾール−2−イル)メチル)−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)メタンアミン(13a)。MeOH(30mL)中のシスニトリル11a(0.880g、2.68mmol)の溶液をフラスコに入れ、氷浴において撹拌した。固体CoCl−6HO(1.28g、5.36mmol)を加え、固体が溶解するまで撹拌した。次にKBH(1.45g、0.0268mol)を、3分割で10分間かけて注意深く加えた。黒色の溶液を冷却浴から取り出し、周囲温度で1時間撹拌した。次に反応物を、10mLの濃HClの添加により停止させ、鮮青色の溶液をほぼ乾固するまで蒸発させた。残渣をHO(50mL)に再溶解し、EtO(10mL)で1回洗浄した。水層をNHOHにより塩基性化し、CHCl(3×20mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、所望の生成物(0.813g、2.45mmol、91.2%)を白色の固体として得た;融点208℃(分解)。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 6.82 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 6.76 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 3.84 (s, 3H, ArOCH3); 3.79 (s, 3H, ArOCH3); 3.59 (dd, 1H, J = 6.0, 15.6 Hz, CH2NH2); 3.50 (s, 2H, OCH2C(CH3)2); 3.22 (dd, 1H, J = 10.8, 15.6 Hz, CH2NH2); 3.04-2.95 (m, 1H, ArCH2); 2.88-2.79 (m, 1H, ArCH); 2.72-2.55 (m, 2H, CH2C(N)O); 2.22-2.13 (m, 1H, ArCH2CH2CH); 2.11-2.01 (m, 1H, ArCH2); 1.77-1.65 (m, 2H, ArCH2CH2); 1.28 (s, 3H, C(CH3)2); 1.26 (s, 3H, C(CH3)2)。EIMS (M+) = 332。
【0118】
実施例9.
トランス−(2−((4,4−ジメチル−4,5−ジヒドロオキサゾール−2−イル)メチル)−5,6−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)メタンアミン(13b)。同一の手順を使用して、0.500gのトランスニトリル11b(1.52mmol)を所望のアミン(0.480g、1.45mmol、94.1%)に変換し、白色の固体として回収した;融点181℃(分解)。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 6.93 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 6.78 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 4.18 (dd, 1H, J = 5.1, 15.3 Hz, CH2NH2); 3.84 (s, 3H, ArOCH3); 3.80 (s, 3H, ArOCH3); 3.53 (d, 1H, J = 17.4 Hz, OCH2C(CH3)2); 3.49 (d, 1H, J = 17.4 Hz, OCH2C(CH3)2); 3.22-3.13 (dd, 1H, J = 11.1, 15.3 Hz, CH2NH2); 3.08-2.98 (dd, 1H, J = 3.9, 17.4 Hz, ArCH2); 2.70-2.56 (m, 1H, ArCH2); 2.54-2.43 (dt, 1H, J = 5.1, 11.1 Hz, ArCH); 2.35-2.25 (dd, 1H, J = 4.2, 15.9, CH2C(N)O); 2.09-1.98 (dd, 1H, J = 12.0, 15.9, CH2C(N)O); 1.94-1.87 (m, 1H, ArCH2CH2); 1.77-1.62 (m, 1H, ArCH2CH2CH); 1.45-1.30 (dq, 1H, J = 3.0, 12.6 Hz, ArCH2CH2); 1.27 (s, 3H, C(CH3)2); 1.25 (s, 3H, C(CH3)2)。EIMS (M+) = 332。追加的な詳細は、Nichols & Dyer, "Lipophilicity and serotonin agonist activity in a series of 4-substituted mescaline analogues," J. Med. Chem., 20:299-301 (1977)(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0119】
実施例10.
シス−7,8−ジメトキシ−1,2,4,4a,5,6−ヘキサヒドロベンゾ〔h〕イソキノリン−3(10bH)−オン(15a)。シスアミン13a(0.530g、1.60mmol)を、30mLの無水EtOH中10%HSO4に溶解し、溶液を85℃で48時間加熱した。反応物を室温に冷却し、30mLのHOを加え、続いて、白色の固体が形成され、反応pHが>12になるまで、撹拌しながら6N NaOHを滴加した。塩基性混合物を15分間撹拌し、固体を濾過により収集して、所望のラクタムをオフホワイトの固体(0.234g、0.870mmol、54.5%)として得た。濾液をEtOAcで抽出して、追加の0.100g(0.372mmol、23.3%)の生成物を回収した;融点185〜187℃。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 6.83 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 6.75 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 5.91 (bs, 1H, NH); 3.84 (s, 3H, ArOCH3); 3.80 (s, 3H, ArOCH3); 3.42-3.37 (m, 2H, CH2NH); 3.19-2.99 (m, 2H, ArCH, ArCH2); 2.80-2.63 (m, 2H, ArCH2, COCH2); 2.35-2.29 (d, 1H, J = 17.1 Hz, COCH2); 2.32-2.21 (m, 1H, ArCH2CH2CH); 1.90-1.59 (m, 2H, ArCH2CH2)。ESIMS (M+H) = 262。
【0120】
実施例11.
トランス−7,8−ジメトキシ−1,2,4,4a,5,6−ヘキサヒドロベンゾ〔h〕イソキノリン−3(10bH)−オン(15b)。同一の様式によって、1.24g(3.73mmol)のトランスアミン13bを、0.656g(2.51mmol、67.2%)のトランスラクタム、白色の固体に変換した;融点240℃(分解)。δ 6.86 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 6.78 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 6.09 (bs, 1H, NH); 3.98-3.91 (dt, 1H, J = 4.1, 11.4 Hz, CH2NH); 3.85 (s, 3H, ArOCH3); 3.81 (s, 3H, ArOCH3); 3.18 (t, 1H, J = 11.4, CH2NH); 3.13-3.04 (dd, 1H, J = 3.9, 17.7 Hz, ArCH2); 2.84-2.72 (dt, 1H, J = 5.4, 11.4, ArCH); 2.71-2.59 (m, 1H, ArCH2); 2.64-2.57 (dd, 1H, J = 4.8, 17.4, COCH2); 2.24-2.14 (dd, 1H, J = 12.3, 17.4, COCH2); 2.03-1.93 (m, 1H, ArCH2CH2); 1.90-1.74 (m, 1H, ArCH2CH2CH); 1.50-1.34 (dq, 1H, J = 5.4, 12.4 Hz, ArCH2CH2)。ESIMS (M+H) = 262。
【0121】
実施例12.
シス−7,8−ジメトキシ−1,2,3,4,4a,5,6,10b−オクタヒドロベンゾ〔h〕イソキノリンHCl(17a)。火炎乾燥一つ首フラスコに、50mLの蒸留THFを投入し、0.130g(0.498mmol)のシスラクタム15aを加えた。THF中BHの1.0M溶液(2.49mL、2.49mmol)をフラスコに滴加し、反応物を一晩加熱還流した。次に反応物を室温に冷却し、HOで注意深く停止させ、蒸発させて約三分の一の容量にした。10mLの2N HClの添加に続いて、溶液を周囲温度で4時間撹拌した。水溶液をEtOで1回洗浄し、NHOHで塩基性化し、CHCl(3×25mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥し、濾過し、蒸発させて、無色の残渣を得て、それをEtOに溶解し、EtOH中の6N HClで酸性化した。形成された固体を濾過により収集して、0.084g(0.297mmol、59.6%)のイソキノリンHCl 17aを白色の粉末として得た;融点186℃(分解)。1H NMR: (500 MHz, DMSO): δ 8.80 (bs, 2H, NH2); 6.87 (m, 2H, ArH); 3.75 (s, 3H, ArOCH3); 3.66 (s, 3H, ArOCH3); 3.18-3.15 (dd, 1H, J = 4.2, 12.4 Hz, ArCHCH2NH2); 3.12-3.05 (m, 2H, CH2NH2CH2); 2.99-2.82 (m, 3H, ArCHCH2NH2CH2, ArCH2); 2.59-2.48 (m, 1H, ArCH2); 2.10-1.89 (m, 3H, ArCH2CH2CHCH2); 1.76-1.68 (bd, 1H, J = 11.8 Hz, NH2CH2CH2); 1.62-1.54 (m, 1H, ArCH2CH2)。ESIMS (M+H) = 248。
【0122】
実施例13.
トランス−7,8−ジメトキシ−1,2,3,4,4a,5,6,10b−オクタヒドロベンゾ〔h〕イソキノリンHCl(17a)。同一の手順を使用して、0.500g(1.92mmol)のトランスラクタム15bを0.325g(1.15mmol、60.0%)のトランスイソキノリンHCl 17b、白色の粉末に変換した;融点228℃(分解)。1H NMR: (300 MHz, DMSO): δ 8.91 (bs, 2H, NH2); 6.95 (d, 1H, J = 8.7 Hz, ArH); 6.86 (d, 1H, J = 8.7 Hz, ArH); 3.96 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArCHCH2NH2); 3.76 (s, 3H, ArOCH3); 3.66 (s, 3H, ArOCH3); 3.30 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArCHCH2NH2CH2); 2.94-2.81 (m, 2H, ArCHCH2NH2CH2CH2); 2.74-2.55 (m, 3H, ArCH2, ArCHCH2); 1.90-1.79 (m, 2H, ArCH2CH2CHCH2); 1.56-1.30 (m, 3H, ArCH2CH2CH)。ESIMS (M+H) = 248。
【0123】
実施例14.
シス−1,2,3,4,4a,5,6,10b−オクタヒドロベンゾ〔h〕イソキノリン−7,8−ジオールHBr(1)。火炎乾燥単首フラスコの中の無水CHCl(15mL)中の17a(0.050g、0.177mmol)の溶液を、−78℃に冷却し、0.55mLのCHCl中BBr 1.0M溶液をフラスコに滴加した。反応物を−78℃で2時間、次に室温で2時間撹拌した。反応物をドライアイス/アセトン浴に戻し、3mLの無水MeOHの添加により注意深く停止させた。反応を停止させたものを、水浴が40℃未満を保持するように注意しながら蒸発乾固した。固体残渣をMeOHに再溶解し、再び蒸発させ、この過程を合計4回繰り返した。得られた黄褐色の固体を高真空下で一晩乾燥し、次にMeOH−EtOから結晶化させて、白色の微細粉末(0.043g、0.144mmol、81.1%)を得た;融点>250℃。1H NMR: (500 MHz, DMSO): δ 9.08 (s, 1H, ArOH); 8.47 (m, 1H, NH2); 8.34 (m, 1H, NH2); 8.19 (s, 1H, ArOH); 6.60 (d, 1H, J = 8.0 Hz, ArH); 6.43 (d, 1H, J = 8.0 Hz, ArH); 3.18-3.06 (m, 2H, ArCHCH2NH2CH2); 2.99-2.88 (m, 3H, ArCHCH2NH2CH2); 2.79 (dd, 1H, J = 3.5, 17.5 Hz, ArCH2); 2.45-2.33 (m, 1H, ArCH2); 2.04-1.87 (m, 3H, ArCH2CH2CHCH2); 1.71 (bd, 1H, J = 16.0 Hz, ArCH2CH2CHCH2); 1.58-1.52 (m, 1H, ArCH2CH2)。ESIMS (M+H) = 220。
【0124】
実施例15.
トランス−1,2,3,4,4a,5,6,10b−オクタヒドロベンゾ〔h〕イソキノリン−7,8−ジオールHBr(2)。同じ手順を使用して、0.076g(0.269mmol)のトランスイソキノリン17bを0.056g(0.187mmol、70.0%)のトランスカテコールHBr塩2に変換し、MeOH−EtOからオフホワイトの微細粉末として結晶化させた;融点>250℃。δ 9.10 (bs, 1H, ArOH); 8.81 (bd, 1H, J = 10.5 Hz, NH2); 8.46 (bd, 1H, J = 10.5 Hz, NH2); 8.19 (bs, 1H, ArOH); 6.59 (d, 1H, J = 8.3 Hz, ArH); 6.49 (d, 1H, J = 8.3 Hz, ArH); 3.90 (d, 1H, J = 10.5 Hz, ArCHCH2NH2); 3.31 (d, 1H, J = 10.5 Hz, ArCHCH2NH2CH2); 3.00-2.81 (m, 1H, ArCHCH2NH2CH2); 2.79-2.73 (dd, 1H, J = 5.5, 17.5 Hz, ArCHCH2NH2); 2.70-2.60 (q, 1H, J = 11.0 Hz, ArCH2CH2CHCH2); 2.59-2.48 (m, 2H, ArCH2, ArCH); 1.88-1.77 (m, 2H, ArCH2CH2CHCH2); 1.51-1.40 (m, 2H, ArCH2CH2CH); 1.39-1.29 (m, 1H, ArCH2CH2)。ESIMS (M+H) = 220。
【0125】
実施例16.
5,6−ジメトキシ−3−フェニル−3,4−ジヒドロナフタレン−1ーカルボニトリル(10)。TMSCN(1.20mL、9.22mmol)を、無水トルエン(100mL)中のフェニルテトラロン830(2.00g、7.09mmol)の溶液に加えた。次にBF・OEt(1.34mL、10.6mmol)をシリンジでゆっくりと加え、反応物を周囲温度で一晩撹拌した。混合物を冷HO(100mL)に注ぎ、EtOAC(3×50mL)で抽出した。カラムクロマトグラフィー(2:1 EtOAc:ヘキサン)を使用して、生成物を精製し、0.674g(2.39mmol)の未反応の出発材料テトラロンを回収した。不飽和ニトリル(1.31g、4.50mmol、63.6%、95.6%BRSM)を、白色の粉末として得た;融点106〜107℃。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 7.36-7.21 (m, 6H, PhH, ArH); 6.84 (d, 1H, J = 8.7 Hz, ArH); 6.78 (d, 1H, J = 3.9 Hz, C=CH); 3.90 (s, 3H, ArOCH3); 3.81 (ddd, 1H, J = 3.9, 7.2, 11.4 Hz, ArCH2CH); 3.71 (s, 3H, ArOCH3); 3.35 (dd, 1H, J = 7.2, 16.5 Hz, ArCH2); 2.92 (dd, 1H, J = 11.4, 16.5 Hz, ArCH2)。EIMS: (M+) = 291。
【0126】
実施例17.
トランス−2−((4,4−ジメチル−4,5−ジヒドロオキサゾール−2−イル)メチル)−5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−カルボニトリル(12)。上記の11の合成と類似の方法において、ニトリル10(0.770g、2.65mmol)を表記化合物に変換した。トランス異性体を、1:1のEtOAc:ヘキサンを使用して粗混合物から結晶化させて、0.262g(0.649mmol、24.5%)の白色の粉末を得た。母液をカラムクロマトグラフィー(1:1 EtOAc−ヘキサン)により更に精製して、0.378g(0.936mmol)の、所望の生成物のシス及びトランス異性体の混合物を単離し、それから、追加の0.029g(0.0718mmol、2.7%)のトランス異性体を結晶化させた;融点131〜133℃。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 7.39-7.19 (m, 6H, PhH, ArH); 6.88 (d, 1H, J = 8.7 Hz, ArH); 4.57 (d, 1H, J = 10.5 Hz (trans), ArCHCN); 3.87 (s, 3H, ArOCH3); 3.88-3.75 (m, 2H, OCH2C(CH3)2); 3.74 (s, 3H, ArOCH3); 3.22 (dd, 1H, J = 4.5, 16.8 Hz, ArCH2); 3.03 (dt, 1H, J = 4.5, 11.4 Hz, ArCH2CH); 2.81 (dd, 1H, J = 11.4, 16.8 Hz, ArCH2); 2.72-2.61 (m, 1H, ArCH(CN)CH); 2.55 (dd, 1H, J = 3.9, 16.2 Hz, CH2C(N)O); 2.55 (dd, 1H, J = 6.3, 16.2 Hz, CH2C(N)O); 1.27 (s, 3H, C(CH3)2); 1.22 (s, 3H, C(CH3)2).EIMS: (M+) = 404。
【0127】
実施例18.
トランス−(2−((4,4−ジメチル−4,5−ジヒドロオキサゾール−2−イル)メチル)−5,6−ジメトキシ−3−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)メタンアミン(14)。13の合成と同様に、ニトリル12(0.157g、0.389mmol)を表記化合物(0.149g、0.365mmol、93.7%)に白色の固体として変換した;融点213℃(分解)。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 7.40-7.22 (m, 5H, PhH); 7.01 (d, 1H, J = 8.7 Hz, ArH); 6.83 (d, 1H, J = 8.7 Hz, ArH); 4.25 (dd, 1H, J = 5.4, 15.0 Hz, ArCHCH2NH2); 3.86 (s, 3H, ArOCH3); 3.77 (s, 3H, ArOCH3); 3.73 (bs, 2H, NH2); 3.51-3.42 (m, 2H, OCH2C(CH3)2); 3.30-3.21 (m, 2H, ArCH2, ArCHCH2NH2); 2.85-2.46 (m, 3H, ArCHCH2NH2, ArCH2CH); 2.01 (dq, 1H, J = 5.4, 11.1 Hz, ArCH2CH(Ph)CH); 1.89-1.74 (m, 2H, CH2C(N)O); 1.20 (s, 3H, C(CH3)2); 1.16 (s, 3H, C(CH3)2)。ESIMS (M+H) = 409。
【0128】
実施例19.
7,8−ジメトキシ−5−フェニル−1,2,4,4a,5,6−ヘキサヒドロベンゾ〔h〕イソキノリン−3(10bH)−オン(16)。上記の15の合成のように、アミン14(0.200g、0.490mmol)を所望のラクタムに白色の固体(0.110g、0.326mmol、66.7%)として変換した。濾液をEtOAcで抽出して、追加の0.032g(0.0950mmol、19.4%)の生成物を回収した;融点>250℃。1H NMR: (300 MHz, CDCl3): δ 7.38-7.19 (m, 5H, PhH); 6.93 (d, 1H, J = 8.7 Hz, ArH); 6.82 (d, 1H, J = 8.7 Hz, ArH); 5.98 (bs, 1H, NH); 4.00 (dt, 1H, J = 4.6, 11.4 Hz, CH2NH); 3.86 (s, 3H, ArOCH3); 3.78 (s, 3H, ArOCH3); 3.37-3.21 (m, 2H, CH2NHCOCH2); 3.20 (dt, 1H, J = 5.1, 10.5 Hz, ArCHCH2); 2.83 (dd, 1H, J = 12.3, 17.4 Hz, NHCOCH2); 2.66 (dt, 1H, J = 4.2, 10.5 Hz, ArCH2CH(Ph)CH); 2.23 (dd, 1H, J = 4.2, 17.1 Hz, ArCH2); 2.17-2.04 (m, 1H, ArCH2CH); 1.94 (dd, 1H, J = 12.6, 17.1 Hz, ArCH2)。ESIMS (M+H) = 338。
【0129】
実施例20.
7,8−ジメトキシ−5−フェニル−1,2,3,4,4a,5,6,10b−オクタヒドロベンゾ〔h〕イソキノリンHCl(18)。17の手順と同様に、ラクタム16(0.190g、0.564mmol)を表記化合物(0.169g、0.471mmol、83.7%)に白色の粉末として変換した;融点>250℃。1H NMR: (500 MHz, DMSO): δ 9.15 (bs, 1H, NH2); 8.88 (bs, 1H, NH2); 7.39-7.20 (m, 5H, PhH); 7.04 (d, 1H, J = 9.0 Hz, ArH); 6.92 (d, 1H, J = 9.0 Hz, ArH); 4.04 (bd, 1H, J = 11.0 Hz, CHCH2NH); 3.78 (s, 3H, ArOCH3); 3.64 (s, 3H, ArOCH3); 3.21 (bd, 1H, J = 11.5 Hz, CH2CH2NH); 3.03 (d, 1H, J = 12.5 Hz, ArCH2); 2.90 (bt, 1H, J = 11.0 Hz, ArCH); 2.85-2.68 (m, 4H, ArCH2CH, CH2NH2CH2); 1.91-1.83 (m, 1H, ArCH2CH(Ph)CH); 1.39-1.31 (m, 1H, CH2NH2CH2CH2); 1.29-1.19 (m, 1H, CH2NH2CH2CH2)。ESIMS (M+H) = 324。
【0130】
実施例21.
5−フェニル−1,2,3,4,4a,5,6,10b−オクタヒドロベンゾ〔h〕イソキノリン−7,8−ジオールHBr(3)。1と同様の手順において、イソキノリン18(0.070g、0.195mmol)を、MeOH−EtOから再結晶させ、白色の微細粉末として単離して、表記化合物に変換した。(0.044g、0.117mmol、60.3%);融点>250℃。1H NMR: (300 MHz, DMSO): δ 9.14 (s, 1H, ArOH); 8.81-8.72 (m, 1H, NH2); 8.50-8.35 (m, 1H, NH2); 8.26 (s, 1H, ArOH); 7.38-7.20 (m, 5H, PhH); 6.64 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 6.58 (d, 1H, J = 8.4 Hz, ArH); 3.97 (bd, 1H, J = 9.6 Hz, CHCH2NH); 3.22 (bd, 1H, J = 10.8 Hz, CH2CH2NH); 2.95 (d, 1H, J = 11.7 Hz, ArCH2); 2.89-2.55 (m, 5H, ArCH2CH, ArCHCH2NH2CH2); 1.91-1.80 (m, 1H, ArCH2CH(Ph)CH); 1.40-1.32 (bd, 1H, J = 12.6 Hz, CH2NH2CH2CH2); 1.28-1.12 (m, 1H, CH2NH2CH2CH2)。ESIMS (M+H) = 296。
【0131】
方法実施例1:
化学薬品及び試薬。
H〕−SCH−23390(81Ci/mmol)は、Amersham Biosciences(Piscataway, NJ, USA)から購入する。〔H〕−環状AMP(30Ci/mmol)は、PerkinElmer(Boston, MA, USA)から購入する。ドーパミン、SCH−23390、ブタクラモール、イソブチル−メチルキサンチン、フォルスコリン及び大部分の他の試薬は、Sigma-Aldrich Chemical Company(St. Louis, MO, USA)から購入する。増殖培地及び抗生物質を含む大部分の細胞培養試薬は、Gibco Invitrogen Corporation(Carlsbad, CA, USA)から購入する。
【0132】
方法実施例2.
細胞株の産生。
リポフェクタミン2000を製造会社の説明書に従って使用して、ヒトD(hD)レセプターをコードする遺伝子を有するHEK293細胞を、pcDNA3.1/V5−His−TOPOベクターに形質移入する。G418(600μg/)を使用して、安定して発現する細胞を選択する。選択培地中で4週間経過後、細胞を分割して、細胞株のプールを作り、〔H〕−SCH−23390結合及びcAMP蓄積を測定することにより、Dレセプター発現及び機能について個別にアッセイする。
【0133】
方法実施例3.
細胞培養。
全ての細胞は、5%胎児クローン血清、5%仔牛血清、0.05μg/mLのペニシリン、50μg/mLのストレプトマイシン及び300μgのG418を含有するDMEM中で維持する。細胞を6%COの加湿インキュベーターにおいて37℃で増殖させる。
【0134】
方法実施例4.
環状AMP蓄積アッセイ。
アッセイを、96ウエルプレート中でコンフルエントな細胞の単層培養上で実施する。全ての薬剤をアール平衡塩類溶液(EBSS)アッセイ緩衝液(2%仔牛血清、0.025%アスコルビン酸及び15mMのヘペス、pH7.4を含有するEBSS)で希釈し、氷に三重に加える。環状AMP刺激アッセイは、HEK hD細胞をアゴニストと共に37℃で15分間インキュベートすることによって実施する。全てのアッセイを、500μMのイソブチル−メチルキサンチン(IBMX)の存在下で実施し、3%トリクロロ酢酸により停止させる。
【0135】
方法実施例5.
環状AMP結合アッセイ。
蓄積アッセイは、以前に記載されたプロトコールを使用して定量化する。細胞溶解産物を、〔H〕−環状AMP(最終濃度1nM)及びウシ副腎cAMP結合タンパク質(500μlの緩衝液中100〜150μg)を含有するアッセイ管の中で、cAMP結合緩衝液(100mMのトリス−HCl、pH7.4、100mMのNaCl、5mMのEDTA)に加える。これらを氷上において4℃で2〜3時間インキュベートし、96ウエルPackard Filtermate細胞採取機を使用して、氷冷洗浄緩衝液(10mMのトリス、0.9%NaCl)で採取することにより停止させる。30μlのPackard Microscint Oを、乾燥した後にそれぞれのウエルに加える。放射能を、Packard Topcountシンチレーションカウンターを使用してカウントする。0.01〜300pmolのcAMPの範囲の標準曲線を使用して、それぞれの試料におけるcAMPの濃度を決定する。
【0136】
方法実施例6.
競合結合実験。
ブタ線条体組織を、Purdue Butcher Blockから得て、文献に記載されたとおりに調製する。線条体組織を、ポッター型ホモジナイザーを使用して均質化し、均質化緩衝液(20mMのヘペス、0.32Mのスクロース、pH7.4)に懸濁し、4℃で10分間、1,000gで遠心する。ペレット(P1)を廃棄し、上澄みを4℃で10分間、30,000gで遠心分離する。得られたペレット(P2)を、Kinematicaホモジナイザーを短時間使用して50mMのトリス緩衝液(pH7.4)に再懸濁し、次に4℃で30分間、30,000gで遠心分離する。このペレットを、再び50mMのトリス緩衝液に再懸濁し、1mLのアリコートに分配し、4℃で10分間、13,000gで遠心分離する。BASタンパク質アッセイを使用して、ペレットの最終重量を決定する。上澄みを吸引し、ペレットを、使用するまで−80℃で凍結する。
【0137】
レセプター及び競合結合実験を文献に記載されたとおりに実施する。ペレットを、レセプター結合緩衝液(50mMのヘペス、4mMのMgCl、pH7.4)に再懸濁し(1mL/mg)、75μgのタンパク質を1ウエルあたりに使用する。レセプター等温線を、〔H〕−SCH−23390及び〔H〕−スピペロンにより実施して、D様及びD様レセプター部位のBmax及びKをそれぞれ決定する(〔H〕−SCH−23390では760fmol/mg及び0.44nM、〔H〕−スピペロンでは250fmol/mg及び0.75nM)。全てのD様レセプター結合アッセイを、5−HT2A部位を遮蔽するための50nMのケタンセリン存在下で実施する。非特異的結合を5μMのブタクラモールにより決定する。競合結合実験のための薬剤希釈を、レセプター結合緩衝液により行い、1nMの〔H〕−SCH−23390又は0.15nMの〔H〕−スピペロンのいずれか及び75μgのタンパク質を含有するウエルに加える。全ての結合実験を37℃で30分間インキュベートし、cAMP結合アッセイと同様の様式で停止させ、カウントした。
【0138】
本明細書に記載される例示の化合物の、ブタ線条体結合におけるレセプター結合親和性(K、nM)を以下の表に示す(DOXは、米国特許出願第12/195,141号の実施例24を意味する)。
【0139】

【0140】
方法実施例7.
データ分析。GraphPad Prismソフトウエアを使用して、用量反応レセプター等高線及び競合結合曲線を生成し、統計分析を実施する(GraphPad Software, San Diego, CA)。機能実験では、Hillの傾きを1に固定する。競合結合分析では、データポイントがラジオリガンドとの完全な競合に達しない場合、曲線の底部を非特異的値に対して規準化する。K値は、Cheng-Prusoff方程式を使用してIC50から計算する。
【0141】
方法実施例8.
パーキンソン病被験者のモデルとしてのMPTP処置サル及び行動試験。
2匹の成体雄カニクイザル(初期体重4.7及び5.7kg)及び1匹の雌ブタオザル(初期体重5.0kg)を、遅延反応タスクを実行するように訓練する。簡潔には、動物を音減衰改変Wisconsin General Test Apparatusの中に置いた拘束椅子に座らせて、遅延反応について訓練及び試験する。サルを、不透明スクリーンの後に座らせるが、このスクリーンは、上げたときに、同一の滑り白色プレキシグラスカバーを有する埋込型食餌ウエルを含む滑りトレイを利用することが可能になり、カバーは、報酬(例えば、干しぶどう)を得るために動物によりはずすことができる刺激小板として機能する。サルを、実験者が餌をウエルに置いたのを観察させた後に、食餌ウエルの1つから干しぶどうを取り出すように訓練する。右側及び左側ウエルに、餌を無作為に均衡のとれた順番で置く。動物を、制限食で1週間維持し、絶食させて試験する。
【0142】
訓練は、0秒の遅延から始まり5秒の遅延まで進む、非修正手順により達成される。動物を、5秒遅延の動作が、少なくとも5日間連続して90%正確又はそれ以上であるまで訓練する。毎日のセッションはそれぞれ25回の試験から構成される。サルが報酬の餌ではないウエルに反応選択した場合、反応を「失敗」とスコア付けする。サルが30秒以内で試験に反応するのを失敗した場合、「反応なし」の誤りとスコア付けする。
【0143】
毒素投与。
動物が規準レベルで行動するようになれば、MPTP投与を始める。MPTP−HCl(滅菌食塩水中)を、1週間あたり2〜3回静脈内投与し、その間、動物を、一方の足の動きを制限する足錠をして拘束椅子に座らせる。試験者が一方の足を保持することができ、伏在静脈に静脈内注射をする際に暴れないように、サルを訓練する。MTPTを投与する担当者は、使い捨てガウン、ラテックス手袋及びスプラッシシールドのついたフェイスマスクを着用する。毒素を投与した後、使用したシリンジに(残留MPTPを酸化するため)過マンガン酸カリウムの飽和溶液を充填し、キャップを付け、有害廃棄物として廃棄する。動物のケージの下に位置する汚物受け皿及びこれら受け皿に位置する排泄物に、排泄物を廃棄する前に過マンガン酸カリウム溶液を噴霧する。実験動物飼育担当者は、ケージ洗浄の際に噴霧質が発生しないように注意する。
【0144】
MPTPを、研究の開始時は、0.05mg/kgから0.20mg/kgまでの範囲の用量でそれぞれの動物に投与する。動物は、それぞれ346日、188日、及び341日にわたる多様な投与スケジュールにおいて、64.7mg、23.9mg、及び61.7mgの蓄積MPTP用量を摂取する。投与されたMPTPの異なる総量は、個別の動物の毒素に対する感受性及び反応における差異を反映している。動物は、異なる期間にわたって毒素の異なる総量を摂取するが、認知欠陥の性質は、全ての動物において同様である。
【0145】
薬剤投与。
薬理データは、動物が遅延反応において少なくとも15%の動作欠陥を一貫して示した後に得る。本明細書に記載される化合物及び/又は組成物を、0.2%アスコルビン酸塩を含有する生理食塩水に溶解し、皮下投与することにより、試験する。例示的には、本明細書に記載される化合物及び/又は組成物を、適切な場合、遊離塩基として計算して、0.3、0.6、及び0.9mg/kgの用量で使用する。用量投与の順番を無作為に決定する。それぞれの用量をそれぞれの動物において少なくとも2回試験する。幾つかの試験において、本明細書に記載される化合物及び/又は組成物を、SCH−23390のようなドーパミンDレセプターアンタゴニスト(0.0075又は0.015mg/kg)と組み合わせて投与する。そのような試験では、SCH−23390を、本明細書に記載される化合物及び/又は組成物の投与の15分前に投与する。
【0146】
遅延反応試験を、化合物及び/又は組成物の投与の8分後に始める。薬剤試験日には、動物を、遅延反応動作について試験し、化合物及び/若しくは組成物(又は食塩水)を投与し、遅延反応タスクについて再試験する。食塩水での対照試験を、3番目の試験セッション毎にほぼ1回実施する。食塩水注射は、1日の2番目に試験されるので、注射を受ける効果及び動作における可能な変化を制御する。任意の特定の動物における化合物及び/又は組成物試験において、最低3日間の間隔を空ける。化合物及び/又は組成物の試験セッションは、被験者が任意の特定日において15%以上の動作欠陥要件を満たす場合にのみ実施される。
【0147】
データ分析。
化合物及び/又は組成物の投与後の遅延反応動作を、薬剤投与前の同じ日に得られた対応対照動作と比較する。正確な反応の総数、並びに間違い及び「反応なし」の誤りの数を、それぞれの試験セッションで表にまとめる。次にデータを平均(±標準偏差)動作として表す。全ての動物は、自身の対照として機能し、統計分析は、変数の分析、反復測定設計、事後比較(ボンフェローニt検定)から構成される。
【0148】
方法実施例9.
パーキンソン病の片側6−OHDA病変モデル。
概要。パーキンソン病のラット片側6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)回転モデルにおいて、6−OHDAを、内側前脳束、黒質又は線条体の片側に注入する。この処置は、ドーパミン末端及びニューロンの破壊、線条体ドーパミンの欠損、並びに病変側に顕著な機能性ドーパミン作動性過感受性の発生をもたらす。直接作用するドーパミンレセプターアゴニストで攻撃したとき、片側6−OHDAラットは、病変側のシナプス後ドーパミンレセプターの感受性の増加によって対側性になる(病変の側から離れる)。下記に記載される実験は、6−OHDAモデルを使用して化合物及び/又は組成物により誘導される耐性を検査する。
【0149】
被験者。
体重280〜320グラムの成体雄スプレーグ・ドーリーラット(Hilltop Laboratories, Chatsworth, Calif.)を被験者として使用する。動物を個別に収容し、食餌及び水は下記に示された以外は適宜に入手可能である。明:暗スケジュールは、12時間:12時間であり、試験は明サイクルで実施する。全ての方法は、国立衛生研究所(Pub. 85-23, 1985)により発表された実験動物の飼育及び使用のガイド(the Guide for the Care and Use of Experimental Animals)の指針に従う。
【0150】
手術。
ラットを、25mg/kgのデシプラミン(s.c.)により、手術のおよそ30分間に前処置する。ラットにイソフルラン(1.5〜4.0%)の吸入により麻酔をかけ、定位固定装置に配置する。注入カニューレを、Paxinos及びWatsonの図解書(1986)に従って、前頂に対してA.P.−3.8mm、M.L.−1.5mm及びD.V.−3.8mmの座標で内側前脳束に配置する。4μLの容量中10マイクログラムの6−OHDA(6-ヒドロキシドーパミン;Sigma Chemical Co., St. Louis, Mo.)を、0.01%アスコルビン酸塩のビヒクルにより0.5μL/分の速度で注入する。14日の回復期間の後、ラットを、d−アンフェタミン(5mg/kg)に対する反応、1週間後のアポモルフィン(0.3mg/kg)に対する反応における回転についてプレスクリーンする。d−アンフェタミン(3時間で>800回転)及びアポモルフィン(1時間で>100回転)の両方に対して反応した動物を更なる研究のために保持する。
【0151】
化合物の試験は、それぞれの場合において手術後28日目から始める。新たな群の6−OHDA病変ラットを、それぞれの新たな研究に使用する。幾つかの研究において、ラットには、流量が5μL/時間の皮下14日間浸透圧ミニポンプ(2ML2型、Alza, Palo Alto, Calif.)を移植する。ラットに1.5〜4%イソフルランで再び麻酔をかけ、頸に背側に小さな切開を作り、ミニポンプを空洞に皮下配置する。切開を滅菌創傷クリップで閉じる。移植する前に、ミノポンプを滅菌食塩水(37℃)とインキュベートして、移植時の流出を確実にする。ミニポンプを使用して、ジナプソリン又はビヒクル(50%ジメチルスルホキシド(DMSO)、12.5%アスコルビン酸)を投与する。
【0152】
線条体ドーパミン含有量。動物のサブセットにおいて、線条体ドーパミン含有量を測定して、6−OHDA病変の程度を確認する。研究の終了時に、動物をCO吸入により深く麻酔をかけ、ギロチンを使用して迅速に断頭する。脳を素早く取り出し、氷上に保持しながら、右側及び左側の線条体を単離し、取り出し、0.5mLの均質化緩衝液(0.22N過塩素酸、0.5%EDTA、0.15%メタ重亜硫酸ナトリウム)を含有する個別の無フィルターマイクロ遠心分離管で計量する。試料を10秒間の超音波処理により均質化し、次に14,000gで20分間遠心分離する。上澄みを、フィルター(0.2μm)を有するマイクロ遠心分離管に移し、14,000gで2分間遠心分離する。試料を−80で凍結して、HPLC分析を待つ。
【0153】
HPLC分析。
解凍試料を、確立された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)−電気化学検出法を使用して、ドーパミン含有量について分析する。簡潔には、50μLの試料を、酢酸塩緩衝液移動相(17%メタノール)を使用するHPLC系の試料ループに、0.4mL/分でポンプにより注入する。ピークを、C−18逆相カラム(直径3mm、MD-180、ESA, Chelmsford, Mass)で分離し、二重電量分析セル(5014B、ESA)及び検出器(Coulochem II、ESA)で検出する。ドーパミンを、連続還元(−100mV)及び酸化(350mM)により分析し、後者の電極で定量化する。それぞれの試料におけるドーパミン濃度を、基準で計算して標準曲線を確立し、線条体組織の1ミリグラムあたり1ピコモルとして表す。枯渇は、非病変側に対する病変側のドーパミン含有量の率として計算する。
【0154】
装置、手順、及び統計。
ラットは、自動回転チャンバ(Rotoscan、Accuscan, Columbus, Ohio)の回転により試験する。装置は、直径が30cmの円筒状プレキシグラスチャンバから構成され、そこでは動物に、回転マイクロスイッチに連結しているフレキシブルロッドに接合しているハーネスが取り付けられている。動物を、それぞれの場合の薬剤処置の30分前に、チャンバに慣れさせる。データを、注射の1〜12時間後に15分の時間ビンを使用して収集する。処置は、適切であれば変数の一方向及び反復方法の分析(ANOVA)を使用して比較し、事後分析は、ダネット試験により実施する。
【0155】
急性の化合物及び/又は組成物投与。
アポモルフィンのスクリーニング用量の1週間後から始めて、被験者(n=12匹)を、平衡設計を使用して、化合物及び/若しくは組成物(0.02、0.2若しくは2mg/kg)又はビヒクル(s.c.)により1週間に1回試験し、回転行動を10時間モニターする。試験日の最終日の後、ラットを安楽死させ、脳を、後のドーパミン枯渇の評価のために取り出す。経口投与実験において、被験者の別の群(n=8匹)は、平衡設計を使用して、化合物及び/若しくは組成物(0.02、0.2若しくは2mg/kg)又はビヒクルを1週間に1回摂取する。ラットを経口胃管栄養投与による投与の16時間前に絶食させ、回転行動を10時間モニターする。
【0156】
急性アンタゴニスト投与を含む実験において、被験者(n=8匹/群)を、DアンタゴニストSCH−23390(0.5mg/kg s.c)、Dアンタゴニストラクロプリド(2mg/kg s.c)又はビヒクルのいずれかにより前処置する。30分後、これらに、化合物及び/又は組成物(0.2又は2mg/kg s.c.)を注射し、回転を3時間モニターする。短時間の評価時間が選択されるが、それはDアンタゴニストSCH−23390がアッセイにおいて比較的短い作用時間(およそ3時間)を有することが知られているからである。