特許第5734963号(P5734963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5734963
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】回転子積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20150528BHJP
   H02K 15/03 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   H02K1/27 501D
   H02K15/03 Z
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-515789(P2012-515789)
(86)(22)【出願日】2011年4月1日
(86)【国際出願番号】JP2011058452
(87)【国際公開番号】WO2011145399
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2014年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2010-114552(P2010-114552)
(32)【優先日】2010年5月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144038
【氏名又は名称】株式会社三井ハイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】長井 亮
(72)【発明者】
【氏名】荒添 萌
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4414417(JP,B2)
【文献】 特開2009−303485(JP,A)
【文献】 特開2007−068356(JP,A)
【文献】 特開2002−247784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄心片を積層して形成され、複数の磁石挿入部が形成された鉄心本体の前記各磁石挿入部に永久磁石を挿入した後、該鉄心本体を挟持する上型及び下型のいずれか一方の金型(A)に設けられた樹脂溜め部から、前記磁石挿入部に樹脂を充填して前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の製造方法であって、
前記鉄心本体と前記樹脂溜め部を有する前記金型(A)の間に、前記磁石挿入部の1又は複数を個別に覆い、前記磁石挿入部に連通する樹脂注入孔がそれぞれ形成された複数の分割ダミー板を配置する第1工程と、
前記分割ダミー板の前記樹脂注入孔を介して、前記金型(A)の前記樹脂溜め部から樹脂を、対応する前記磁石挿入部に注入する第2工程と、
前記磁石挿入部に充填した樹脂が硬化した後、前記分割ダミー板を余剰樹脂と共に除去する第3工程とを有することを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜め部からの樹脂は、前記金型(A)の前記分割ダミー板への当接面に形成された樹脂流路を介して、前記対応する磁石挿入部に充填されることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜め部からの樹脂は、前記分割ダミー板に形成された樹脂流路及び該樹脂流路に続く前記樹脂注入孔を介して、前記対応する磁石挿入部に充填されることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の回転子積層鉄心の製造方法において、平面視して、前記樹脂溜め部と前記磁石挿入部は一部ラップし、前記樹脂溜め部からの樹脂は、前記分割ダミー板に形成された前記樹脂注入孔を介して、前記対応する磁石挿入部に直接充填されることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型(A)に、前記分割ダミー板を収納するダミー板収納部が設けられ、該分割ダミー板は前記対応する磁石挿入部の一部を覆い、該磁石挿入部の他部は前記金型(A)で覆うことを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板は、前記対応する磁石挿入部の全部を覆うことを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板は、前記鉄心本体から突出する突出部を有し、該突出部には該分割ダミー板の除去時に使用する掛止孔が設けられていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板の前記樹脂注入孔には、前記鉄心本体から前記金型(A)に向けて開くテーパー部が形成されていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板に設けられている前記樹脂注入孔は、平面視して該分割ダミー板を介して樹脂を注入しようとする前記磁石挿入部の半径方向内側に形成されていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板は円形板であることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板は、半径方向外側に幅広となった非円形板であることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板は、前記鉄心本体を構成する鉄心片とは異なる材料で形成され、しかも該分割ダミー板の片面又は両面に、剥離性を向上させるコーティング材が被覆されていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の磁石挿入部に挿入された永久磁石を樹脂固定する回転子積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータに使用する回転子積層鉄心(ロータコア)の鉄心本体に永久磁石(マグネット)を固定する方法として、マグネットモールド工法がある。この工法は、磁石挿入部(磁石挿入孔)内に永久磁石が配置された鉄心本体を加熱し、これが一定温度に達した後に、磁石挿入部にモールド樹脂を注入し、これを加熱し硬化させることで、永久磁石を鉄心本体に固定させる方法である。
しかし、この工法では、注入後に硬化した樹脂が、鉄心本体の表面に固着して残るため、この残留樹脂を除去する工程が必要となり、リードタイムの短縮を妨げる要因となっていた。
【0003】
そこで、図13に示すように、鉄心本体90の表面側(樹脂注入側)に、例えば金属製のダミー板(プレート)91を配置し、このダミー板91に形成した樹脂注入孔であるゲート(注入用の小孔)92からモールド樹脂(以下、単に樹脂ともいう)93を注入する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、注入後に硬化した樹脂93が、鉄心本体90の表面ではなくダミー板91の表面に固着して残留するため、鉄心本体90の表面からダミー板91を取り外すことで残留樹脂も一緒に除去することができ、従来に比べて、リードタイムの大幅な短縮が可能となった。
なお、符号94は永久磁石、符号95は磁石挿入部、符号96、97は、鉄心本体90を挟持する上型と下型、符号98は樹脂溜めポット、符号99は樹脂溜めポット98内の樹脂93を磁石挿入部95に注入するためのプランジャである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4414417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダミー板を使用して回転子積層鉄心を製造する場合、以下の問題があった。
ダミー板は、鉄心本体の軸孔を除く表面全体を覆うように、鉄心本体より径大の一体物として作製されているため、鉄心本体をモールド型(樹脂封止装置)にセットした際に、ダミー板で鉄心本体の表面のうねり(起伏)を完全に吸収することができない(追従できない)。このため、鉄心本体とダミー板との間に微小な隙間を生じさせ、この隙間から樹脂漏れを起こすことがあった。なお、ダミー板のサイズが大きいため、その反り管理も必要であった。
また、鉄心本体とダミー板との間の隙間の発生を抑えるため、型締圧(締め付け力)を上げることも考えられるが、この場合、鉄心本体の平坦度が悪くなるだけでなく、モールド後に、鉄心本体を構成する各鉄心片のスプリングバック(元に戻ろうとする力)で樹脂が割れ、積層方向に隣り合う鉄心片間に隙間を発生させることがあった。
【0006】
そして、ダミー板を繰り返し使用するとゲート付近が磨滅するため、例え全てのゲートが磨滅しなくてもダミー板を交換する必要があり、ダミー板の寿命や交換サイクルが短くなるといった問題もあった。このため、ダミー板を予め熱処理して、その硬度を上げておくことが考えられるが、この場合、ダミー板全体にうねりや反りが生じて樹脂漏れが発生する(特に、ダミー板のサイズが大きいほど顕著)。また、ダミー板の厚みを増して剛性を上げることも考えられるが、この場合、ゲート内に溜まる樹脂の量が増えて廃棄する樹脂量も増える。
なお、樹脂注入後、鉄心本体とダミー板とは、ゲート内に残存する樹脂で接続されているが、鉄心本体からダミー板を取り外す際に、複数のモールド箇所(磁石挿入部)のうち数箇所で樹脂が深さ方向にめくれ(えぐれ)、永久磁石の表面が外部へ露出してしまうこともあった。これは、ダミー板を取り外す際に加える力の方向が、全てのモールド箇所で同一方向であることによる。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、残留樹脂の除去工程を不要とし、樹脂漏れを抑制しながら、作業性よく経済的に製造可能な回転子積層鉄心の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に沿う本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片を積層して形成され、複数の磁石挿入部が形成された鉄心本体の前記各磁石挿入部に永久磁石を挿入した後、該鉄心本体を挟持する上型及び下型のいずれか一方の金型(A)に設けられた樹脂溜め部から、前記磁石挿入部に樹脂を充填して前記永久磁石を固定する回転子積層鉄心の製造方法であって、
前記鉄心本体と前記樹脂溜め部を有する前記金型(A)の間に、前記磁石挿入部の1又は複数を個別に覆い、前記磁石挿入部に連通する樹脂注入孔がそれぞれ形成された複数の分割ダミー板を配置する第1工程と、
前記分割ダミー板の前記樹脂注入孔を介して、前記金型(A)の前記樹脂溜め部から樹脂を、対応する前記磁石挿入部に注入する第2工程と、
前記磁石挿入部に充填した樹脂が硬化した後、前記分割ダミー板を余剰樹脂と共に除去する第3工程とを有する。
【0009】
本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜め部からの樹脂は、前記金型(A)の前記分割ダミー板への当接面に形成された樹脂流路及び前記樹脂注入孔を介して、又は前記分割ダミー板に形成された樹脂流路及び該樹脂流路に続く前記樹脂注入孔を介して、前記対応する磁石挿入部に充填することができる。また、場合によっては、平面視して、前記樹脂溜め部と前記磁石挿入部は一部ラップし、前記樹脂溜め部からの樹脂は、前記分割ダミー板に形成された前記樹脂注入孔を介して、前記対応する磁石挿入部に直接充填することもできる。
【0010】
本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法において、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型(A)に、前記分割ダミー板を収納するダミー板収納部が設けられ、該分割ダミー板は前記対応する磁石挿入部の一部を覆い、該磁石挿入部の他部は前記金型(A)で覆うことができる。
また、本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板は、前記対応する磁石挿入部の全部を覆ってもよい。
ここで、前記樹脂溜め部が設けられた前記金型(A)に、前記分割ダミー板を収納するダミー板収納部を設けるのがよい。
【0011】
本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板は、前記鉄心本体から突出する突出部を有し、該突出部には該分割ダミー板の除去時に使用する掛止孔が設けられていることが好ましい。
また、本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板の前記樹脂注入孔には、前記鉄心本体から前記金型(A)に向けて開くテーパー部が形成されているのがよい。
更に、本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板に設けられている前記樹脂注入孔は、平面視して該分割ダミー板を介して樹脂を注入しようとする前記磁石挿入部の半径方向内側に形成されているのがよい。
【0012】
本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板は円形板にすることができる。
また、本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板は、半径方向外側に幅広となった非円形板にしてもよい。
【0013】
本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法において、前記分割ダミー板は、前記鉄心本体を構成する鉄心片とは異なる材料で形成され、しかも該分割ダミー板の片面又は両面に、剥離性を向上させるコーティング材が被覆されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法は、鉄心本体と金型(A)との間に、複数の磁石挿入部の1又は複数を個別に覆う複数の分割ダミー板を配置するので、鉄心本体の表面に対する各分割ダミー板の設置領域を狭くできる。これにより、全磁石挿入部を覆う一体物に比べて、鉄心本体の表面が受ける分割ダミー板の反りの影響を少なくでき、また各分割ダミー板が受ける鉄心本体の表面のうねりの影響も小さくできるので、鉄心本体と分割ダミー板との間の隙間の発生を抑制でき、その結果、樹脂漏れも抑制できる。また、分割ダミー板のサイズを小さくできるので、反りの管理工数も低減できる。
そして、隙間の発生を抑制できるため、型締圧を低く設定でき、従来、型締圧が原因で発生していた鉄心本体の平坦度の悪化や、モールド後の各鉄心片のスプリングバックによる樹脂割れを抑制でき、積層方向に隣り合う鉄心片間の隙間の発生を防止できる。
更に、分割ダミー板を繰り返し使用するに際しても、樹脂注入孔付近が磨滅した分割ダミー板のみを個別に交換すればよい。なお、小型の分割ダミー板を使用することで、例えば、熱処理によってその硬度が上げられるため、樹脂注入孔の磨滅速度を遅くでき、分割ダミー板の寿命も伸びて、交換サイクルも遅くできる。また、反りを考慮して剛性を上げる必要もなくなるため、分割ダミー板の板厚を薄くすることができ、樹脂注入孔内に残存する樹脂量を削減できる。
そして、分割ダミー板を使用することで、鉄心本体から分割ダミー板を取り外す際に、分割ダミー板ごとに任意の方向に力がかけられるため、樹脂が深さ方向でめくれないように、鉄心本体から分割ダミー板を取り外すことができる。
以上のことから、残留樹脂の除去工程を不要とし、樹脂漏れを抑制しながら、作業性よく経済的に、回転子積層鉄心を製造できる。
【0015】
また、樹脂溜め部からの樹脂を、金型(A)の分割ダミー板への当接面に形成された樹脂流路を介して、又は分割ダミー板に形成された樹脂流路及びこれに続く樹脂注入孔を介して、対応する磁石挿入部に充填する場合、樹脂溜め部の形成位置の自由度が増す。
そして、分割ダミー板が、対応する磁石挿入部の一部を覆う場合、分割ダミー板の更なるコンパクト化が図れ、鉄心本体と分割ダミー板との間の隙間の発生を更に抑制できる。なお、磁石挿入部の一部を覆う分割ダミー板は、樹脂溜め部が設けられた金型(A)のダミー板収納部に収納されるため、磁石挿入部の他部は金型(A)で覆われ、樹脂漏れを抑制できる。
また、分割ダミー板が、対応する磁石挿入部の全部を覆う場合、各磁石挿入部を分割ダミー板のみで塞ぐことができ、各磁石挿入部からの樹脂漏れを抑制できる。
ここで、樹脂溜め部が設けられた金型(A)に、磁石挿入部の全部を覆う分割ダミー板を収納するダミー板収納部を設ける場合、金型(A)が鉄心本体の表面に当接し、鉄心本体の表面を均等な力で押圧できる。
【0016】
また、分割ダミー板が突出部を有し、この突出部に掛止孔が設けられている場合、鉄心本体からの分割ダミー板の除去作業が容易になる。
そして、分割ダミー板の樹脂注入孔にテーパー部が形成されている場合、鉄心本体と分割ダミー板とを接続する樹脂の切断が容易になる。
【0017】
更に、分割ダミー板を、鉄心本体を構成する鉄心片とは異なる材料、例えば、高強度の金属材料で形成した場合、分割ダミー板の表面に残存する樹脂を除去することで、分割ダミー板を繰り返し使用することができ、省資源化が図れる。また、分割ダミー板を、安価な金属材料又はスクラップを再利用した金属材料で形成した場合は、省資源化を図ることができると共に、製造コストの低減も図れる。そして、分割ダミー板を樹脂材料や耐熱性プラスチック材料等で形成した場合、安価に製造でき、しかも形状加工も容易にできる。
ここで、鉄心本体と接触する側の分割ダミー板の表面に、剥離性を向上させるコーティング材を被覆した場合、鉄心本体からの分割ダミー板の剥ぎ取りが容易になる。また、樹脂が注入される側の分割ダミー板の表面に、剥離性を向上させるコーティング材を被覆した場合には、分割ダミー板の表面に付着した樹脂を容易に除去することができ、分割ダミー板を繰り返し使用する際に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法により製造した回転子積層鉄心の斜視図である。
図2】同回転子積層鉄心の製造方法により樹脂の注入が行われている鉄心本体の一部切欠き側面図である。
図3】(A)は同回転子積層鉄心の製造方法による樹脂注入後の鉄心本体の平面図、(B)は部分側面図である。
図4】(A)は同樹脂注入後の鉄心本体の部分平面図、(B)〜(D)はそれぞれ同鉄心本体からの分割ダミー板の取り外し方法を示す説明図である。
図5】(A)、(B)はそれぞれ分割ダミー板の取り外し方法を示す説明図である。
図6】本発明の第2の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法により樹脂の注入が行われている鉄心本体の一部切欠き側面図である。
図7】(A)は同回転子積層鉄心の製造方法による樹脂注入後の鉄心本体の平面図、(B)は部分側面図である。
図8】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第3の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法に使用する分割ダミー板の平面図、及び部分側面図である。
図9】(A)、(B)はそれぞれ本発明の第4の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法に使用する分割ダミー板の平面図、及び部分側面図である。
図10】(A)は本発明の第5の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法に使用する分割ダミー板を鉄心本体に配置した状態を示す部分側断面図、(B)は同分割ダミー板の取り外し状況を示す説明図である。
図11】本発明の第6の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法により樹脂の注入が行われている鉄心本体の一部切欠き断面図である。
図12】本発明の第7の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法により樹脂の注入が行われている鉄心本体の一部切欠き断面図である。
図13】従来例に係る回転子積層鉄心の製造方法により樹脂の注入が行われている鉄心本体の部分側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、図1図2を参照しながら、本発明の第1の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法により製造した回転子積層鉄心(以下、単に回転子鉄心ともいう)10について説明する。
回転子鉄心(ロータ)10は、複数の鉄心片11を積層して形成され、中央の軸孔12の周囲に複数の磁石挿入孔(磁石挿入部の一例)13が形成された鉄心本体14の磁石挿入孔13に、永久磁石15を挿入したものである。
【0020】
鉄心本体14を構成する鉄心片11は、厚みが、例えば、0.5mm以下(具体的には0.15〜0.5mm)程度の電磁鋼板を環状に打ち抜いたものである。なお、鉄心本体は、連続する複数の円弧状のセグメント鉄心片を、連結部で折り曲げながら螺旋状に巻回し積層して製造してもよく、また、1枚ごとに分離された複数のセグメント鉄心片を環状に積層して製造してもよい。
ここで、複数の鉄心片11の積層方法としては、かしめ、溶接、及び接着のいずれか1又は2以上を組み合わせて使用できるが、単に平積みするだけでもよい。
軸孔12は、図示しないシャフト(軸)の装着孔であり、その内側には、回転子鉄心10の回り止め(突起)16が設けられている。
【0021】
磁石挿入孔13は、鉄心本体14の半径方向の外側領域に、上下方向に貫通して複数(ここでは、2×8=16個)形成されている。具体的には、平面視してハ字状となった断面長方形の一対の磁石挿入孔13が、軸孔12を中心として等間隔に8組(複数組)配置されているが、磁石挿入孔の配置位置(個数)及び形状は、これに限定されるものではなく、例えば、従来公知の配置位置(個数)又は形状でもよい。
この磁石挿入孔13には永久磁石15が挿入され、永久磁石15の挿入後、これに樹脂17を充填して固化させている。ここで、樹脂としては、例えば、従来半導体装置の製造に使用しているエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を使用できる。
【0022】
また、鉄心本体14に形成された軸孔12と磁石挿入孔13との間位置(鉄心本体14の半径方向内側領域)には、鉄心本体14の軽量化のための軽量孔18が複数(ここでは、8個)形成されている。この軽量孔18の形状は、断面円形となっているが、これに限定されるものではなく、例えば、断面多角形や断面楕円形等でもよい。また、軽量孔の個数も、上記した個数に限定されるものではない。
なお、軽量孔は形成しなくてもよい。
以上に示した回転子鉄心10をモータに使用する。
【0023】
続いて、本発明の第1の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法について説明する。
まず、図1図2に示すように、厚みが、例えば、0.5mm以下程度の電磁鋼板(図示しない)を環状に打ち抜き、この打ち抜かれた複数の鉄心片11を順次積層して、鉄心本体14を形成する。
これにより、鉄心本体14の中央に軸孔12が形成され、この軸孔12の周囲に、上下方向に貫通した磁石挿入孔13が複数形成される。そして、各磁石挿入孔13に、この磁石挿入孔13より断面が小さい無励磁の永久磁石15を挿入する。なお、各磁石挿入孔13には、励磁済みの永久磁石を挿入してもよい。
【0024】
次に、第1工程について説明する。
図2図3に示すように、樹脂溜めポット(樹脂溜め部の一例)19を有する上型20に当接する鉄心本体14の表面(樹脂17の注入側)に、複数(ここでは8個)の分割ダミー板21を配置する。この各分割ダミー板21は、鉄心本体14の製造後、上型20と下型22(上型20及び下型22を総称して金型という)とで挟持される(挟み込まれる)前に、鉄心片11の表面に載置して、鉄心本体14と上型20との間に配置されている。
【0025】
各分割ダミー板21は、円形板であって、図2図3(A)に示すように、複数の磁石挿入孔13のうち、それぞれ平面視して対応する2つの磁石挿入孔13の一部(ここでは、一対の磁石挿入孔13の両端部を除く部分)を個別に覆っている。この分割ダミー板21の厚みは、鉄心片11の厚みの例えば、0.5倍以上10倍以下程度である。
なお、分割ダミー板21は、軽量孔18を覆っていないが、覆うようにしてもよく、このように配置することで、軽量孔の影響を受けることなく、樹脂溜め部を自由に形成することができる。
この分割ダミー板は、複数の磁石挿入孔13のうちの1つを、それぞれ個別に覆ってもよく、また、磁石挿入孔の個数や形成位置に応じて、複数の磁石挿入孔のうちの複数(例えば、3つ又は4つ以上)を、それぞれ個別に覆ってもよい。そして、分割ダミー板は、円形板に限定されるものではなく、例えば、三角形板(逆三角形板)や四角形板等の多角形板、又は楕円形板にすることもできる。
【0026】
この分割ダミー板21は、図2に示すように、樹脂溜めポット19が設けられた上型20に形成されたダミー板収納部23内に、分割ダミー板21の下面24と上型20の下面25とが、同一高さレベルとなるように、収納(収容)されている。このダミー板収納部23は、上型20の半径方向外側に、その周方向に等ピッチで複数形成された凹部であって、その形状は、分割ダミー板21よりも僅かに大きくした形状である。また、分割ダミー板21の周囲側面26と、ダミー板収納部23の内側面27とは、樹脂17の漏れ出しを抑制できる範囲(例えば、40μm以下程度)で、隙間を有している。
これにより、分割ダミー板21で覆われない磁石挿入孔13の部分(他部)は、上型20の下面25で覆われることになる。
【0027】
また、分割ダミー板21には、図2に示すように、磁石挿入孔13に連通する樹脂注入孔(小孔)28が形成されている。
この樹脂注入孔28は、樹脂17を注入しようとする磁石挿入孔13の平断面の面積より小さく、平面視して磁石挿入孔13と重なる領域内の半径方向内側に形成されている。しかし、例えば、磁石挿入孔13に挿入する永久磁石15の配置位置、又は樹脂溜めポット19の位置に応じて、磁石挿入孔13と重なる領域内の半径方向外側又は場合によっては中央に配置することもできる。
【0028】
そして、樹脂注入孔28は、樹脂17の流動性を保ちつつ充填を安定に行うため、磁石挿入孔13と平面視して重なる。
ここで、樹脂注入孔28の大きさは、永久磁石15の断面積より小さく設定されているので、回転子鉄心10の製造に際しては、鉄心本体14の磁石挿入孔13に永久磁石15を挿入した後、この鉄心本体14の最上部に、樹脂注入孔28が形成された分割ダミー板21を配置したり、また、分割ダミー板21とは反対の端面側(鉄心本体14の下型22に当接する側)から、磁石挿入孔13に永久磁石15を挿入してもよい。なお、樹脂注入孔を、鉄心本体14に形成される磁石挿入孔13と平面視して同一形状とすることで、この樹脂注入孔を介して磁石挿入孔13に永久磁石15を挿入することもできる。
【0029】
また、分割ダミー板21は、平面視して鉄心本体14の半径方向外側に突出する突出部29を有し、この突出部29には、鉄心本体14からの分割ダミー板21の除去時に使用する断面長方形の掛止孔30が設けられている。ここで、突出部29の半径方向の最大突出代は、例えば、3〜10mm程度である。なお、掛止孔の形状は、これに限定されるものではなく、例えば、例えば、三角形状等の多角形状、又は楕円状にすることもできる。
分割ダミー板21は、鉄心片11と同じ金属材料で構成してもよく、また鉄心片11と異なる金属材料で構成してもよい。なお、金属材料は、熱処理可能な材料が好ましい。
【0030】
ここで、分割ダミー板を鉄心片と異なる金属材料、例えば、ステンレス材、鋼材、又はアルミニウム合金で構成する場合、分割ダミー板の片面又は両面に、剥離性を向上させるコーティング材を被覆する。なお、コーティング材としては、フッ素系やポリテトラフルオロエチレン系(テフロン(登録商標)系)のほか、Cr(クロム)めっきやNi(ニッケル)めっき等を使用できる。この分割ダミー板の繰り返し使用を考えた場合は、安価なNiめっきが好ましい。また、分割ダミー板の厚みを鉄心片の厚みよりも厚く(例えば、鉄心片の1.2倍以上10倍以下程度)することで、その強度を向上させることもできる。
更に、分割ダミー板を、エポキシ樹脂等の樹脂材料や耐熱性プラスチック材料等で構成することもでき、この場合、分割ダミー板を安価に製造でき、形状加工も容易にできる。
【0031】
続いて、第2工程について説明する。
ここでは、鉄心本体14を、図2に示すように、樹脂封止装置31の上型20と下型22で挟んだ状態で予熱して、上型20に設けられた樹脂溜めポット19から、各磁石挿入孔13に液状の樹脂17を充填して硬化させ、磁石挿入孔13内に永久磁石15を固定する。なお、鉄心本体14は、樹脂封止装置31の上型20と下型22で挟む前に、予め予熱装置で予熱するのがよい。
使用する樹脂封止装置31の上型20には、樹脂17の原料(ペレット状)を加熱して液状にする樹脂溜めポット19が、分割ダミー板21に当接する上型20の端部まで延在した状態(即ち、上型20を上下に貫通した状態)で設けられている。
【0032】
また、樹脂封止装置31には、樹脂溜めポット19内を上下方向に昇降可能なプランジャ32が設けられている。このプランジャ32により、樹脂溜めポット19から押し出された溶融状態の樹脂17は、樹脂溜めポット19の下流側端部に連通し、上型20の分割ダミー板21との当接面に形成された樹脂流路33を通り、樹脂注入孔28を介して磁石挿入孔13内の永久磁石15の半径方向内側に向けて注入され、最終的に磁石挿入孔13に充填される。この樹脂17には、熱硬化性樹脂の一例であるエポキシ樹脂を使用しているが、他の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。なお、エポキシ樹脂を使用する場合は、溶融温度が170℃程度であるため、鉄心本体14を、予熱により、又は金型により、170℃程度、又はこれより±20℃の範囲で高い温度又は低い温度に加熱しておく。
【0033】
そして、全ての磁石挿入孔13内に、樹脂17を注入した後は、金型により、鉄心本体14を更に加熱することで、樹脂17を硬化させ、磁石挿入孔13内に挿入された永久磁石15を樹脂17で固定できる。
ここで、樹脂溜めポット19は、平面視して、上型20に当接する分割ダミー板21に設けられた樹脂注入孔28とは重ならない位置に配置しているが、重なる位置に配置してもよい。この場合、上型に樹脂流路を設ける必要はない。
【0034】
なお、樹脂の注入は、下型に樹脂の原料(ペレット状)を加熱して液状にする樹脂溜めポットが形成された樹脂封止装置を使用して行うこともできる。
この場合、樹脂注入孔28が形成された分割ダミー板21は、鉄心本体14の下端面側に配置されるため、下型と当接することになる。これにより、鉄心本体14に形成される磁石挿入孔13は、上方へ向けて開口するため、分割ダミー板21とは反対の端面側に位置する鉄心片11側から、各磁石挿入孔13に永久磁石15を挿入できる。そして、プランジャにより、樹脂溜めポットから押し出された液状の樹脂が、樹脂溜めポットの下流側端部に連通し、下型の分割ダミー板との当接面に形成された樹脂流路を通り、樹脂注入孔28を介して最終的に各磁石挿入孔13に充填される。
【0035】
図2図3(A)に示すように、上型20に設けた樹脂溜めポット19は、1個の樹脂溜めポット19から2個の磁石挿入孔13に、樹脂17を充填できるように、周方向に等間隔に複数設けられている。
これにより、樹脂溜めポット19から磁石挿入孔13に、樹脂溜めポット19に連通して上型20の底部に設けられた樹脂流路33と分割ダミー板21の樹脂注入孔28を介して、液状の樹脂17を供給できる。
【0036】
最後に、第3工程について説明する。
図3(A)、(B)、図4(A)、(B)に示すように、磁石挿入孔13に充填した樹脂17が硬化した後、分割ダミー板21を余剰樹脂(残留硬化樹脂)34と共に除去する。ここで、余剰樹脂34とは、樹脂溜めポット19、樹脂注入孔28、及び樹脂流路33内に残留して硬化したものである。
分割ダミー板21の除去に際しては、機械を使用して剥がしてもよいが、特別な工程と設備を要することなく、作業者の手作業のみで剥ぎ取ってもよい。
【0037】
例えば、図4(B)に示すように、L字状に曲がった剥ぎ取り治具35を使用し、その先部を、分割ダミー板21の掛止孔30に引っ掛け、剥ぎ取り治具35を、鉄心本体14の半径方向外側へ向けて水平方向に引っ張る。
また、図4(C)に示すように、剥ぎ取り治具35の角部を、分割ダミー板21の突出部29の下面に押し当て、分割ダミー板21を、鉄心本体14の表面から押し上げる。
そして、図4(D)に示すように、剥ぎ取り治具35の先部を、分割ダミー板21の掛止孔30に引っ掛け、分割ダミー板21を、鉄心本体14の周方向へねじりながら引っ張る。
【0038】
また、図5(A)に示すように、両端部を直角に曲げた剥ぎ取り治具36を使用し、その両端部を、軸孔12を中心として対向配置された分割ダミー板21の掛止孔30にそれぞれ引っ掛け、剥ぎ取り治具36を、その中央部を中心として回動させることで、各分割ダミー板21を、鉄心本体14の周方向へねじりながら引っ張る。
更に、図5(B)に示すように、棒材37の両側に直角状態で引っ掛け部38を設けた剥ぎ取り治具39を使用し、その引っ掛け部38を、軸孔12を中心として対向配置された分割ダミー板21の掛止孔30にそれぞれ引っ掛け、剥ぎ取り治具39を、鉄心本体14の直径方向の一方側から他方側へ向けて水平方向に引っ張る。
【0039】
以上の方法により、磁石挿入孔13に充填した樹脂17と、各分割ダミー板21の樹脂注入孔28内の樹脂17とが切断される。
なお、鉄心本体14から除去した各分割ダミー板21は、上記した第3工程が終了した後、そのまま廃棄してもよいが、繰り返し使用することが好ましい。この場合、樹脂注入孔28内に樹脂17が残存した分割ダミー板21を上下反転させ、この分割ダミー板21に対して押圧部材(図示しない)を下降させて樹脂注入孔28内に挿入し、各樹脂注入孔28内の樹脂17を押出す。これにより、各分割ダミー板21に付着した余剰樹脂34が除去されるため、この分割ダミー板21を繰り返し使用できる。
【0040】
以上に示したように、分割ダミー板21を使用することで、鉄心本体14から分割ダミー板21を取り外す際に、分割ダミー板21ごとに任意の方向に力がかけられる。これにより、各分割ダミー板21の表面に付着し残存した余剰樹脂34(例えば、ランナーとカル)を、磁石挿入孔13内の樹脂17が深さ方向でめくれないように、分割ダミー板21と共に鉄心本体14から除去できる。
従って、本発明の第1の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法を使用することで、良好な品質の回転子積層鉄心を、製造時間の短縮を図りながら経済的に製造できる。なお、平面視して円形の分割ダミー板の周囲に凸部又は凹部を設け、この分割ダミー板を装着する金型にこれらに係合する凹部又は凸部を設けることによって、分割ダミー板の位置決めが容易に行える(以下の実施例においても同様)。
【0041】
続いて、本発明の第2の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法について、以上に記載した製造方法との相違点について説明する(以下の実施例の説明も同様)。
図6図7(A)、(B)に示すように、余剰樹脂34の除去には、分割ダミー板50を使用することもできる。ここでも、複数の分割ダミー板50を使用して、鉄心本体14に形成された全ての磁石挿入孔13を覆っているが、図6図7(A)、(B)については、1つの分割ダミー板50のみを示し、他は省略している(以下の実施例についても同様)。
この分割ダミー板50は、半径方向外側に幅広となっており、複数の磁石挿入孔13のうち、それぞれ平面視して対応する2つの磁石挿入孔13の全部を個別に覆う非円形板である。詳細には、軽量孔18を塞ぐことなく、2つの磁石挿入孔13の全部を覆うように形成され、しかも平面視して鉄心本体14の半径方向外側に突出する突出部51(突出部29と同様の作用効果を備えるもの)を有している。
【0042】
この分割ダミー板50は、その上面52が、樹脂溜めポット19が設けられた上型53(上型20と略同様)の下面54に当接しているが、樹脂溜めポットが設けられた上型に、分割ダミー板50を収納するダミー板収納部を設けてもよい(図2参照)。この場合、分割ダミー板の下面と上型の下面とが、同一高さレベルとなるように収納(収容)する。これにより、全ての磁石挿入孔13は複数の分割ダミー板50で覆われ、鉄心本体14の上面には上型の下面が当接するため、金型から鉄心本体14にかかる力を均一にできる。
【0043】
図8を参照しながら、本発明の第3の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法について説明する。
図8(A)、(B)に示すように、余剰樹脂34の除去に、分割ダミー板60を使用することもできる。
この分割ダミー板60は、鉄心片11を周方向に複数分割した円弧状(扇状)のものであり、平面視して鉄心本体14の半径方向の内側端から外側端までの全てを覆っている。なお、各分割ダミー板60は、平面視して対応する2つの磁石挿入孔13の全体を、個別に覆っている。ここで、分割ダミー板60の設置個数は、全磁石挿入孔13の個数の半分であるため、全ての磁石挿入孔13が複数の分割ダミー板60で覆われている。
なお、鉄心本体14の周方向に隣り合う分割ダミー板60は当接状態となるが、僅少の隙間(例えば、2mm以下程度)を有してもよい。
【0044】
各分割ダミー板60は、平面視して鉄心本体14の半径方向外側に突出する2つ(複数でもよい)の突出部61を有し、各突出部61には、分割ダミー板60の除去時に使用する円形の掛止孔62が設けられている。なお、2つの突出部61は、鉄心本体14の周方向に、間隔を有して設けられている。
また、各分割ダミー板60は、全ての軽量孔18を塞ぐように配備されるため、鉄心本体14の表面に対する樹脂溜めポット19の配置位置の自由度が高まり、磁石挿入孔13に効率よく樹脂17を注入することが可能になる。
【0045】
上記した各分割ダミー板60を、鉄心本体14の表面に設置するに際しては、掛止孔62に位置決めピンを挿入して行うことができる。
また、鉄心本体14から各分割ダミー板60を除去するに際しては、掛止孔62を用いて、各分割ダミー板60を、鉄心本体14の半径方向外側へ向けて水平方向に引っ張る。
【0046】
図9を参照しながら、本発明の第4の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法について説明する。
図9(A)、(B)に示すように、余剰樹脂34の除去に、分割ダミー板70を使用することもできる。なお、分割ダミー板70は、上記した分割ダミー板60とは、突出部の形状が異なるのみである。
分割ダミー板70は、鉄心片11を周方向に複数分割した円弧状のものであり、鉄心本体14の半径方向の内側端から外側端までの全てを覆っており、その周方向両側には、鉄心本体14の上方へ突出する突出部71が設けられている。
【0047】
突出部71は、鉄心本体14の表面からの突出高さが、例えば、1〜10mm程度である。
また、突出部71は、鉄心本体14の半径方向に沿って、内側端(軸孔12)から外側端(外周位置)に渡って設けられているが、半径方向に間隔を有して複数箇所設けてもよい。更に、突出部に掛止孔を設けることもできる。なお、突出部71が設けられた分割ダミー板70を介して、鉄心本体14を上型と下型で挟み込むに際しては、上型の突出部71との接触位置に、突出部71よりも大きな凹部を形成するのがよい。これにより、上型の下面を分割ダミー板70の上面に当接させることができる。
この場合、鉄心本体14からの分割ダミー板70の除去は、突出部71を挟持して引き上げることにより実施できるが、例えば、突出部71を鉄心本体14の周方向に回動させてもよい。
【0048】
図10を参照しながら、本発明の第5の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法について説明する。
図10(A)、(B)に示すように、余剰樹脂34の除去を容易にするため、分割ダミー板80を使用することもできる。
この分割ダミー板80の樹脂注入孔81には、鉄心本体14から上型に向けて開く(拡径する)テーパー部が形成され、平面視して、磁石挿入孔13に対し、樹脂注入孔81の一部(例えば半分程度)がオーバーラップ(重複)している。テーパー部の先(下端)によって、硬化した樹脂17にノッチを与えるので、後の余剰樹脂34の除去が容易となる。このオーバーラップ量は、注入する樹脂の流動性や硬化時間を考慮して決定される。なお、テーパー部は、樹脂注入孔81の全部に形成しているが、一部でもよい。
これにより、樹脂の切断を容易に行うことができ、鉄心本体14の表面に、樹脂が突出することを抑制、更にはなくすことができる。
【0049】
図11を参照しながら、本発明の第6の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法について説明する。
図11に示すように、この実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法においては、各分割ダミー板83には、上型(金型の一例)84に設けられた樹脂溜めポット19からの樹脂17を鉄心本体14の磁石挿入孔13に導く樹脂流路85と樹脂注入孔86が設けられている。これによって、上型84に樹脂流路を形成することがなく、従って、複数種類の鉄心本体に対して分割ダミー板を変えて、樹脂を注入できる。ここで、分割ダミー板83に対してその設置位置を決めるガイド部材を上型84と鉄心本体14との間に配置することもできる。なお、87は下型を示す。
【0050】
続いて、図12を参照しながら、本発明の第7の実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法について説明する。
図12に示すように、この実施例に係る回転子積層鉄心の製造方法においては、上型89に設けられている樹脂溜めポット19は、平面視して磁石挿入孔13の位置とラップする。従って、分割ダミー板90の直上に樹脂溜めポット19が、分割ダミー板90の直下に磁石挿入孔13があり、これらは樹脂注入孔91によって連結され、樹脂溜めポット19から磁石挿入孔13に樹脂注入孔91を介して、樹脂17を直接充填している。これによって、上型89及び分割ダミー板90のいずれにも樹脂流路を形成する必要がなく、樹脂の使用量を最小限にすることができる。樹脂注入孔91は樹脂溜めポット19の断面積より小さく、かつ磁石挿入孔13の断面積より小さい断面積を有する。なお、92は下型である。
【0051】
以上、本発明を、実施例を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施例に記載の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施例や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の回転子積層鉄心の製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施例においては、分割ダミー板を、鉄心本体の表面に配置した場合について説明したが、分割ダミー板を昇降手段(図示しない)を介して上型(又は下型)に設け、上型(又は下型)に対して昇降可能にして、繰り返し使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法は、例えば、自動車や家電製品に使用するモータに用いる回転子の製造に適用され、回転子への永久磁石の樹脂封止が確実、容易となる他、樹脂封止後の付着樹脂の剥離が容易となり、樹脂漏れを抑制しながら、作業性よく経済的に回転子積層鉄心の製造が可能となる。
【符号の説明】
【0053】
10:回転子積層鉄心、11:鉄心片、12:軸孔、13:磁石挿入孔(磁石挿入部)、14:鉄心本体、15:永久磁石、16:回り止め、17:樹脂、18:軽量孔、19:樹脂溜めポット(樹脂溜め部)、20:上型、21:分割ダミー板、22:下型、23:ダミー板収納部、24、25:下面、26:周囲側面、27:内側面、28:樹脂注入孔、29:突出部、30:掛止孔、31:樹脂封止装置、32:プランジャ、33:樹脂流路、34:余剰樹脂、35、36:剥ぎ取り治具、37:棒材、38:引っ掛け部、39:剥ぎ取り治具、50:分割ダミー板、51:突出部、52:上面、53:上型、54:下面、60:分割ダミー板、61:突出部、62:掛止孔、70:分割ダミー板、71:突出部、80:分割ダミー板、81:樹脂注入孔、83:分割ダミー板、84:上型、85:樹脂流路、86:樹脂注入孔、87:下型、89:上型、90:分割ダミー板、91:樹脂注入孔、92:下型
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13