特許第5735215号(P5735215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5735215壁パネルの固定具及びそれを用いた間仕切り壁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735215
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】壁パネルの固定具及びそれを用いた間仕切り壁
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/82 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   E04B2/82 511J
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-19203(P2010-19203)
(22)【出願日】2010年1月29日
(65)【公開番号】特開2011-157709(P2011-157709A)
(43)【公開日】2011年8月18日
【審査請求日】2012年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000135335
【氏名又は名称】株式会社ノザワ
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】西山 佳伸
(72)【発明者】
【氏名】駒井 孝信
(72)【発明者】
【氏名】野澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】三浦 竜一
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−057794(JP,A)
【文献】 特開平07−286390(JP,A)
【文献】 実開平05−038123(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンカーボルトの貫通孔を有する基板の上面に前記貫通孔から離れた位置に脚部を連結し、該脚部の上端に、壁パネルの空洞部の両側内面に接触されて、該壁パネルの位置を規制する弾性変形可能な弾性保持部材を設け
前記弾性保持部材が前記壁パネルの端部の空洞部に配置された場合に、前記壁パネルに隣接する他の壁パネルの空洞部内となる位置に前記貫通孔を配置したことを特徴とする壁パネルの固定具。
【請求項2】
請求項1において、前記貫通孔は複数箇所に設けられていることを特徴とする壁パネルの固定具。
【請求項3】
請求項2において、前記基板の両端部に貫通孔がそれぞれ形成され、基板の中央部に前記脚部が設けられており、
少なくとも一方の端部に形成された貫通孔を、前記壁パネルに隣接する他の壁パネルの空洞部内となる位置に配置したことを特徴とする壁パネルの固定具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、前記基板には該基板よりも肉厚の板材よりなる脚部が溶接部によって連結され、該脚部の上面には、弾性変形可能な板材を縦長U字状に形成された弾性保持部材の底板が溶接部によって連結されていることを特徴とする壁パネルの固定具。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項において、前記脚部と弾性保持部材は板材によって一体に形成されていることを特徴とする壁パネルの固定具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の壁パネルの固定具を用いて複数枚の壁パネルの下端部を床面に固定し、各壁パネルの上端部を上部躯体に固定したことを特徴とする間仕切り壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として間仕切り用の壁パネルの下端部を床面の所定位置に保持するための壁パネルの固定具及びそれを用いた間仕切り壁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部屋を区画するための間仕切り用の壁パネルとして、図8に示すような押出し成形セメント板と呼ばれる壁パネル11が用いられている。この壁パネル11の本体12の内部には、空洞部13が複数箇所に互いに平行に、かつ上下方向に指向するように貫通成形されている。前記本体12の一側端面には係合溝14が形成され、本体12の他側端面には突条部15が形成されている。
【0003】
図8及び図9に示すように、前記壁パネル11の係合溝14に他の壁パネル11の突条部15を係合した状態で、各壁パネル11の下端部は、固定具16によって図10に示す床面Fに固定される。前記固定具16は、図8に示すように、基板17と、該基板17の上面に溶接部18によって連結された縦長U字状の弾性保持板19とを備えている。この弾性保持板19は底板19aと、該底板19aの両側部に一体に上方向に折り曲げ形成された側板19bと、該側板19bの上端部に一体に屈曲形成された傾斜板部19cとによって形成されている。
【0004】
前記基板17にはアンカーボルト21を貫通するための貫通孔20が形成されている。図10に示すように床面Fにはアンカーナット22が埋設され、該アンカーナット22に前記アンカーボルト21を螺合することにより固定具16の基板17が床面Fの所定位置に取り付けられる。床面Fに取り付けられた固定具16の弾性保持板19に前記壁パネル11の空洞部13を嵌合することにより、図8及び図9に示すように相隣接する壁パネル11の下端部を床面Fの所定位置に保持する。
【0005】
また、特許文献1には、前記従来構成とほぼ同様な構成の固定具が開示されている。床面上に壁パネルを固定するための固定具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平5−38123号公報(明細書の段落0009〜0010及び図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来の壁パネル11の固定具16は、基板17の上面に溶接部18によって弾性保持板19が連結されていたので、次のような問題があった。即ち、図10(b)に示すように、壁パネル11の側面にP矢印方向に強い力が加わると、壁パネル11の下端縁12aが弾性保持板19の側板19bの下端縁に押し付けられ、基板17と弾性保持板19の底板19aとの間の溶接部18が損傷され、壁パネル11を固定具16によって所定位置に保持することができないことになる。
【0008】
又、前記壁パネル11の固定具16は基板17にアンカーボルト21を貫通させる貫通孔20が一箇所のみに形成されていたので、図9において、左側の壁パネル11の側面にP矢印方向に力が加わると、固定具16の基板17が前記アンカーボルト21を中心にQ矢印方向に回動される。このように基板17が回動されると、それに伴い、壁パネル11も移動し、壁パネル11を所定位置に安定して保持することができない。そして、壁パネル11が移動すると、弾性保持板19に対して曲げモーメントが作用し、このため、溶接部18に対してさらに外力が作用して、その溶接部18が損傷し易くなる。
【0009】
また、特許文献1の構成も図8及び図9とほぼ同様な構成であるため、前述した問題点と同様な問題点を有する。
本発明は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、壁パネルの側面に強い力が作用した場合に、破損を防止することができる壁パネルの固定具を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、上記目的に加えて、壁パネルの側面に強い力が作用した場合に、基板が床面上で水平方向に回動されるのを防止することができる壁パネルの固定具及びそれを用いた間仕切り壁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、アンカーボルトの貫通孔を有する基板の上面に前記貫通孔から離れた位置に脚部を連結し、該脚部の上端に、壁パネルの空洞部の両側内面に接触されて、該壁パネルの位置を規制する弾性変形可能な弾性保持部材を設け、前記弾性保持部材が前記壁パネルの端部の空洞部に配置された場合に、前記壁パネルに隣接する他の壁パネルの空洞部内となる位置に前記貫通孔を配置したことを要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記貫通孔は複数箇所に設けられていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記基板の両端部に貫通孔がそれぞれ形成され、基板の中央部に前記脚部が設けられており、少なくとも一方の端部に形成された貫通孔を、前記壁パネルに隣接する他の壁パネルの空洞部内となる位置に配置したことを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記基板には該基板よりも肉厚の板材よりなる脚部が溶接部によって連結され、該脚部の上面には、弾性変形可能な板材を縦長U字状に形成された弾性保持部材の底板が溶接部によって連結されていることを要旨とする。
【0013】
求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか一項において、前記脚部と弾性保持部材は板材によって一体に形成されていることを要旨とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の壁パネルの固定具を用いて複数枚の壁パネルの下端部を床面に固定し、各壁パネルの上端部を上部躯体に固定したことを要旨とする。
【0015】
(作用)
本発明は、基板の上面に脚部を設け、該脚部の上部に弾性保持部材を設けたことにより、固定具の使用状態において、壁パネルに横方向からの力が作用した場合に、壁パネルの空洞部の内側面によって脚部より上方の弾性保持板の側面が押圧される。このため、基板と脚部の下端部との連結部に応力が集中して作用するのを抑制し、基板と脚部の連結部の破損が未然に防止される。
【0016】
又、基板にアンカーボルトの貫通孔が複数箇所に設けられていると、壁パネルに横方向からの力が作用した場合に、弾性保持板及び脚部を介して基板が水平方向に回動されるのを防止し、壁パネルの移動を防止する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、壁パネルに横方向からの力が作用した場合に、基板と脚部の連結部の破損を防止することができ、壁パネルを床面の所定位置に適正に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の壁パネルの固定具の斜視図。
図2】(a),(b)は壁パネルの固定具の使用状態を示す部分縦断面図。
図3】固定具の使用状態を示す平面図。
図4】二枚の壁パネルの連結状態を示す斜視図。
図5】この発明の別の実施形態を示す固定具の斜視図。
図6】この発明の別の実施形態を示す固定具の側面図。
図7】この発明の別の実施形態を示す固定具の側断面図。
図8】壁パネル及び従来の固定具を示す分離状態の斜視図。
図9】壁パネルの従来の固定具の使用状態を示す平面図。
図10】(a),(b)は壁パネルの従来の固定具の使用状態を示す部分縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した壁パネルの固定具及びそれを用いた間仕切り壁の一実施形態を図1図4に従って説明する。
図4に示すように、本実施形態で使用される壁パネル11は、押出し成形セメント板であり、背景の技術で述べた壁パネル11と同様に、本体12に空洞部13が形成されるとともに、係合溝14及び突条部15が形成されている。
【0020】
図1に示すように、壁パネル11の固定具16を構成する金属材料よりなる平面視長四角形状の基板17の一端部寄り上面には、脚部23が溶接部24によって連結されている。該脚部23の上端面には弾性保持板19と同様に形成された弾性保持部材としての弾性保持板25が溶接部26によって連結されている。前記弾性保持板25は、帯状の板材を湾曲することにより形成されている。該弾性保持板25は、前記脚部23の上端面に前記溶接部26によって連結された底板25aと、該底板25aの左右両側部に一体に上方向に湾曲形成された一対の側板25bと、該側板25bの上端部に互いに接近するようにそれぞれ屈曲形成された一対の傾斜板部25cとによって構成されている。
【0021】
基板17には、二本のアンカーボルト21を貫通するための貫通孔20が二箇所に形成されている。
次に、前記のように構成された壁パネル11の固定具16を用いて、壁パネル11の下端部を床面Fの所定位置に保持する方法について説明する。
【0022】
最初に、固定具16の基板17の2つの貫通孔20にアンカーボルト21を貫通し、床面Fに埋設された2つのアンカーナット22に前記アンカーボルト21をそれぞれ螺合し、基板17を床面Fの所定位置に締付固定する。なお、前記固定具16は床面Fの複数箇所に設置されるが一箇所のみ図示する。
【0023】
次に、固定具16の弾性保持板25に、壁パネル11の突条部15側に形成された1つの空洞部13の下端部を図2(a)及び図3に示すように嵌合するとともに、前記2つのアンカーボルト21の頭部21aを、隣接する他の壁パネル11の係合溝14側に形成された空洞部13に位置させる。弾性保持板25が空洞部13に嵌入される際に、両側板25bが互いに接近する方向に弾性変形され、その弾性復元力により壁パネル11が床面F上の所定位置に保持される。
【0024】
図3に示すように、壁パネル11の係合溝14には、隣接する他の壁パネル11の突条部15が嵌合され、該突条部15の両側面と係合溝14の両側面との間にゴムよりなるクッション材27が介在されている。
【0025】
前記壁パネル11の上端部は、図示しないがスラブや梁等の上部躯体に取り付けられた例えばライナーの係合溝に収容されて位置規制されている。複数の固定具16によって、複数枚の壁パネル11の下端部が床面に固定されるとともに、各壁パネル11の上端部が前記ライナーの係合溝に係合されることによって、上部躯体に保持されることにより居住室を区画する間仕切り壁が構築される。
【0026】
さて、壁パネル11に対して、図2(b)に示すようにP矢印方向に強い力が作用すると、本体12の空洞部13の一方の内側面13aが弾性保持板25の一方の側板25bの外側面に押し付けられる。このため、脚部23を介して基板17は床面Fから浮き上がる方向への力が作用する。このとき、基板17の上面は本体12の下端面によって上方向に変位するのが規制される。又、前記側板25bの弾性変形によって、外部衝撃が吸収される。さらに、基板17と弾性保持板25との間の溶接部は前記基板17と脚部23の溶接部24及び脚部23と弾性保持板25の溶接部26として二箇所に配置されている。このため、外部からの力が一箇所に集中して作用することがないので、溶接部24,26の損傷が防止される。
【0027】
しかも、弾性保持板25が脚部23を介して基板17から上方向に離隔したところに位置しているため、弾性保持板25に作用するモーメントは小さく、このモーメントが弾性保持板25の弾性変形によって吸収される。このため、前記と同様に溶接部24,26等の損傷を防止できる。
【0028】
加えて、基板17が二本のアンカーボルト21によって固定されているため、基板17が床面F上において回転されることはない。このため、壁パネル11の移動を防止できるとともに、弾性保持板25や脚部23に対して曲げモーメントが作用することを防止でき、溶接部24,26等の損傷を防止できる。
7 上記実施形態の壁パネル11の固定具16によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0029】
(1)上記実施形態では、前記基板17の上面に脚部23を溶接部24によって連結し、脚部23の上端面に弾性保持板25を溶接部26によって連結した。このため図2(b)に示すように壁パネル11にP矢印で示す横方向からの力が作用した場合に、基板17と弾性保持板25との間の溶接部24,26に大きな応力集中が作用することはなく、それらの損傷を防止することができて、壁パネル11を所定位置に適正に保持することができる。
【0030】
(2)上記実施形態では、基板17に2つの貫通孔20を形成し、二本のアンカーボルト21を貫通孔20からアンカーナット22に螺合するようにした。このため、図3に示すように壁パネル11に横方向からの力が作用した場合に、壁パネル11の固定具16の基板17が床面F上で水平方向に回動されるのを防止することができ、壁パネル11を所定位置に安定して保持することができる。
【0031】
(3)上記実施形態では、基板17の床面F上における回動を防止できるため、弾性保持板25に対する曲げモーメントの作用を阻止できる。このため、弾性保持板25等の損傷や壁パネル11の移動を防止できる。
【0032】
(4)上記実施形態では、壁パネル11と壁パネル11を接合する係合溝14と突条部15の隙間に弾性材料よりなるクッション材27を介在したので、壁パネル11に外部からの衝撃が、特に横方向からの衝撃が作用した場合に、その衝撃力を吸収することができる。
【0033】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
図5に示すように、前記基板17の中央部に脚部23を溶接部24によって連結し、前記基板17の長手方向の両端部に前記貫通孔20をそれぞれ形成してもよい。このようにすれば、前記実施形態と同様に、壁パネル11に横方向の力が作用した場合に、壁パネル11の変位を抑制することができる。
【0034】
図6に示すように、脚部23と弾性保持板25を一体に形成し、弾性保持板25の傾斜板部25cの上端部を互いに連結するようにしてもよい。この場合には、溶接部26を省略することができるので、加工の工数を低減して、固定具16の製造を容易に行うことができる。
【0035】
図7に示すように、基板17に対し脚部23及び弾性保持板25を一体に形成しても良い。この場合には、工数をさらに低減できるとともに、部品点数を少なくできて、製造を一層容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0036】
11…壁パネル、13…空洞部、17…基板、21…アンカーボルト、23…脚部、24,26…溶接部、25a…底板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10