(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記開口部は、上記第1凸折れ稜線と第2凸折れ稜線の延長上の交点を介して対向する一対の角部から前方に移行するに従って互いに接近する前部側縁及び上記一対の角部から後方に移行するに従って互いに接近する後部側縁を有する略菱形であることを特徴とする請求項1に記載のバンパの衝撃吸収部材。
上記開口部は、上記第1凸折れ稜線と第2凸折れ稜線の延長上の交点を介して対向する一対の側縁を有して前後方向に延在する矩形形状であることを特徴とする請求項1に記載のバンパの衝撃吸収部材。
【背景技術】
【0002】
従来から、歩行者等に接触した際に歩行者に及ぼす障害ダメージを少なくする自動車のバンパが種々提案されている。
【0003】
この種のバンパの一例を
図8に示す要部断面斜視図を参照して説明する。
【0004】
このバンパ100は、左右のサイドフレームに衝撃緩和部材を介して支持されて車幅方向に延在する略矩形中空閉断面構造のバンパビーム101と、衝撃吸収部材102と、バンパフェイス109を有する。
【0005】
衝撃吸収部材102は、比較的薄い金属板製でバンパビーム101と対向する板状の後面103を有し、後面103の上部103a及び下部103bに結合されると共に対向して車幅方向に延在する上側水平面104及び下側水平面105、上側水平面104の前縁に沿って斜め前方下方に延在する上側傾斜面106、下側水平面105の前縁に沿って斜め前方上方に延在する下側傾斜面107、後面103と対向して上縁が上側傾斜面104の前縁に連続しかつ下縁が下側斜面107の前縁に連続する前面108を有する閉断面形状に構成される。バンパフェイス109は合成樹脂製で衝撃吸収部材102を被覆する。
【0006】
そして、バンパ100は車幅方向の中央部範囲100Aが車幅方向に沿う直線状で、この中央部範囲100Aの両端からコーナ部100Cにおいて屈曲して緩やかに斜め後方車外側へ延びる傾斜部範囲100Bを有する。
【0007】
低速走行で中央部範囲100Aが歩行者の脚部等に接触した軽衝突の際には、その衝撃荷重F1がバンパフェイス109を介して衝撃吸収部材102の前面108に伝えられ、衝撃吸収部材102とバンパビーム101との間に荷重が集中して後端縁が後面103で連結された上側水平面104及び下側水平面105が、その中央部範囲100Aの延在方向に沿って前後方向の中央部を第1凸折れ稜線104a及び105aとして突出するように潰れ変形して衝撃荷重F1を吸収することで歩行者に及ぼす障害ダメージを小さくする。一方、低速衝突で傾斜部範囲100Bが歩行者等に接触した際には、その衝撃荷重F2がバンパフェイス109を介して衝撃吸収部材105の前面108に伝えられ、上側水平面104及び下側水平面105がその傾斜範囲100Bの延在方向に沿って中央部を第2凸折れ稜線104b及び105bとして突出するように潰れ変形して衝撃荷重を吸収することで歩行者に及ぼす障害ダメージを小さくする。
【0008】
また、特許文献1に開示されるバンパは、
図10に示すように、左右のサイドメンバ111の先端に設けた金属板からなる中空閉断面の箱状に形成された衝撃緩和部材112を介して取り付けられたバンパリンフォースメント113が、アルミニウム押出成形にて形成された上面部114、底面部115、前面部116、後面部117を備えた矩形閉断面構造で、内部に閉断面内を上下に仕切る補強部118が設けられ、衝撃緩和部材112との結合部近傍に抜き穴119が上面部114、補強部118、底面部115を上下に貫通するように設けてある。これにより、車両の衝突時に、バンパリンフォースメント113の抜き穴119の形成部及び衝撃緩和部材112により衝撃荷重を吸収して衝撃を緩和すると共にサイドメンバ111の変形を抑制する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記バンパ100の衝撃吸収部材102によると、低速走行で中央部範囲100Aが歩行者の脚部等に接触した際には、衝撃吸収部材102の上側水平面104及び下側水平面105がそれぞれ第1凸折れ稜線104a及び105aに沿って突出するように潰れ変形して衝撃荷重を吸収して歩行者への障害ダメージを小さくする。一方、傾斜部範囲100Bが歩行者等に接触した際には、衝撃吸収部材102の上側水平面104及び下側水平面105がそれぞれ第2凸折れ稜線104b及び105bに沿って突出するように潰れ変形して衝撃荷重を吸収することで歩行者に及ぼす障害ダメージを小さくする。
【0011】
しかし、バンパ100はその中央部範囲100A側から傾斜部範囲100B側に移行するコーナ部100C付近が歩行者等に接触した際には、衝撃荷重F3によってバンパフェイス109を介して衝撃吸収部材102の前面108に伝えられ、衝撃吸収部材102とバンパビーム101との間に荷重が集中して上側水平面104及び下側水平面105が中央部範囲100Aにおける第1凸折れ稜線104a及び105aに沿って突出するように潰れ変形し、かつ傾斜部範囲100Bにおける第2凸折れ稜線104b及び105bに沿って突出するように潰れ変形する。
【0012】
ここで、上側水平面104において第1凸折れ稜線104aに沿って突出する潰れ変形が発生すると共に第2凸折れ稜線104bに沿って突出する潰れ変形が発生し、この上側水平面104における第1凸折れ稜線104aと第2凸折れ稜線104bの不一致に起因して第1凸折れ稜線104aに沿って突出する潰れ変形と第2凸折れ稜線104bに沿って突出する潰れ変形が該部において交差して重なり合い、互いに干渉して円滑な潰れ変形が拘束されて上側水平面104の潰れ変形による抗力が増大する。同様に下側水平面105において第1凸折れ稜線105aに沿って突出する潰れ変形が発生すると共に第2凸折れ稜線105bに沿って突出する潰れ変形が発生し、この第1凸折れ稜線105aに沿って突出する潰れ変形と第2凸折れ稜線105bに沿って突出する潰れ変形が交差して重なり合い、互いに干渉して円滑な潰れ変形が拘束されて下側水平面105の潰れ変形による抗力が増大する。
【0013】
これにより衝撃吸収部材102の円滑な潰れ変形が阻害されて上側水平面104及び下側水平面105の潰れ変形による抗力が急激に増大して良好な衝撃吸収が得られず、歩行者に対する衝撃緩和が十分に行われないことが懸念される。このコーナ部100Cにおける衝撃吸収部材102の変形ストロークSと抗力Fの相関図を
図9に示す。
【0014】
特許文献1によると、バンパリンフォース113がアルミニウム押出成形にて形成された上面部114、底面部115、前面部116、後面部117を備えた矩形閉断面構造で、内部に閉断面内を上下に仕切る補強部118が設けられて強度剛性が高く形成されることから、低速走行で歩行者等に接触した比較的軽衝突時にはバンパリンフォース113の潰れ変形による衝撃吸収が得られないことが懸念される。
【0015】
また、バンパリンフォース113は車幅中央部範囲の両端から屈曲して斜め後方車外側へ延びる傾斜部範囲に形成され、抜き穴119が傾斜部範囲に形成されることから、衝突等によりコーナ部に衝撃荷重が入力された際には、上面部114、底面部115及び補強部118における中央部範囲側と傾斜部範囲側の潰れ変形方向の不一致が生じ、中央部範囲側の潰れ変形と傾斜部範囲側の潰れ変形が交差して重なり合い、互いに干渉して円滑な潰れ変形が拘束されて潰れ変形による抗力が増大することが懸念される。
【0016】
従って、かかる点に鑑みなされた本発明の目的は、バンパのコーナ部において中央部範囲及び傾斜部範囲と同様に歩行者等との接触においても確実に衝撃を吸収できて歩行者等へ及ぼす障害ダメージの低減が得られるバンパの衝撃吸収部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成する請求項1に記載のバンパの衝撃吸収部材の発明は、
金属板製で、左右のサイドフレームに支持されて車幅方向に延在するバンパビー
ムの前面に沿って延在する上側水平面及び下側水平面と該上側水平面の前縁と下側水平面の前縁に連続して延在する前面とを有する閉断面形状で車幅方向に沿って延在する中央部範囲の両端からそれぞれコーナ部を介して屈曲して斜め後方車外側へ延在する傾斜部範囲を有し、上記中央部範囲への衝撃荷重により中央部範囲における上記上側水平面及び下側水平面が、該中央部範囲の延在方向に沿って中央部を第1凸折れ稜線として潰れ変形して衝撃荷重を吸収し、傾斜部範囲への衝撃荷重により該傾斜部範囲にける上記上側水平面及び下側水平面が該傾斜部範囲の延在方向に沿って中央部を第2凸折れ稜線として潰れ変形して衝撃を吸収するバンパの衝撃吸収材において、上記コーナ部における上記上側水平面及び下側水平面に上記第1凸折れ稜線と第2凸折れ稜線とを分離する開口部を形成したことを特徴とする。
【0018】
これによると、低速走行でバンパの中央部範囲が歩行者等に接触した軽衝突の際には、衝撃吸収部材の上側水平面及び下側水平面の前端が後方に押圧付与されてその中央部範囲の延在方向に沿って中央部を第1凸折れ稜線として突出するように潰れ変形して衝撃荷重を吸収して歩行者に及ぼす障害ダメージを小さくする。また、低速走行で傾斜部範囲が歩行者等に接触した際には、上側水平面及び下側水平面が、その傾斜部範囲の延在方向に沿って前後方向の中央部を第2凸折れ稜線として突出するように潰れ変形して衝撃荷重を吸収して歩行者に及ぼす障害ダメージを小さくする。
【0019】
一方、バンパのコーナ部が歩行者等に接触した際には、上側水平面及び下側水平面が中央部範囲における第1凸折れ稜線及び傾斜部範囲の第2凸折れ稜線に沿って突出して潰れ変形する。
【0020】
ここで、上側水平面及び下側水平面において第1凸折れ稜線に沿って突出する潰れ変形と第2凸折れ稜線に沿って突出する潰れ変形が発生するが、第1凸折れ稜線の部分と第2凸折れ稜線の部分が開口部によって分断されることから、互いに拘束することなく第1凸折れ稜線及び第2凸折れ稜線に沿って突出するように円滑な潰れ変形する適正な変形モードが得られ、開口部の形成により強度剛性が抑制されることと相俟って潰れ変形による抗力が低減されて円滑な衝撃吸収が行われて歩行者に及ぼす障害ダメージが小さくなる。
【0021】
また、衝撃吸収部材の衝撃に対する変形モードの適正化に伴って、衝撃吸収部材のコンパクト化及び質量の低減が可能になり、バンパの小型化及び製造コストの低減が可能になる。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1に記載のバンパの衝撃吸収部材において、上記開口部は、上記第1凸折れ稜線と第2凸折れ稜線の延長上の交点を介して対向する一対の角部から前方に移行するに従って互いに接近する前部側縁及び上記一対の角部から後方に移行するに従って互いに接近する後部側縁を有する略菱形であることを特徴とする。
【0023】
これによると、開口部によって最大抗力部位となる第1凸折れ稜線の延長線と第2凸折れ稜線の延長線との交点における第1凸折れ稜線及び第2凸折れ稜線が分断されると共に、上側水平面及び下側水平面が開口部の角部を折曲開始起点として中央部範囲における第1凸折れ稜線及び傾斜部範囲の第2凸折れ稜線に沿って突出変形する安定した潰れ変形による抗力低減が得られる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のバンパの衝撃吸収部材において、上記各角部は、それぞれ上記第1凸折れ稜線及び第2凸折れ稜線上に位置することを特徴とする。
【0025】
これによると、折曲開始起点となる角部が第1凸折れ稜線及び第2凸折れ稜線上に位置することで、より効率的に上側水平面及び下側水平面が開口部の角部を折曲開始起点として、中央部範囲における第1凸折れ稜線及び傾斜部範囲の第2凸折れ稜線に沿って安定した潰れ変形による衝撃吸収が行われる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のバンパの衝撃吸収部材において、上記開口部は、上記第1凸折れ稜線と第2凸折れ稜線の延長上の交点を介して対向する一対の側縁を有して前後方向に延在する矩形形状であることを特徴とする。
【0027】
これによると、上側水平面及び下側水平面において第1凸折れ稜線に沿って突出する潰れ変形と第2凸折れ稜線に沿って突出する潰れ変形が発生するが、第1凸折れ稜線の部分と第2凸折れ稜線の部分が開口部によって分断されることから、互いに拘束することなく第1凸折れ稜線及び第2凸折れ稜線に沿って突出するように円滑に潰れ変形し、安定した変形モードによる衝撃吸収が行われて歩行者への障害ダメージを小さくできる。
【0028】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバンパの衝撃吸収部材において、上記上側水平面及び下側水平面の後端縁が後面によって連結されたことを特徴とする。
【0029】
これによると、上側水平面及び下側水平面の後端縁が後面によって連結することで、上側水平面及び下側水平面後端縁が効率的に第1凸折れ稜線及び第2凸折れ稜線に沿って突出するように円滑な潰れ変形による衝撃吸収が行われて歩行者への衝撃が緩和できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、低速走行でバンパの中央部範囲、傾斜部範囲及びコーナ部が歩行者等に接触した際には、その衝撃荷重によって衝撃吸収部材の前面に伝えられ、前面の後退に伴って上側水平面及び下側水平面の前端が後方に押圧付与されて上側水平面及び下側水平面が中央部範囲における第1凸折れ稜線及び傾斜部範囲の第2凸折れ稜線に沿って突出して潰れ変形して衝撃吸収が行われて歩行者に及ぼす障害ダメージを小さくできる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明によるバンパの衝撃吸収部材の実施の形態を図を参照して説明する。
【0033】
(第1実施の形態)
第1実施の形態を
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1は本実施の形態の概要を示すバンパ1の要部断面斜視図、
図2は
図1のII−II線断面図、
図3は衝撃吸収部材の変形状態を示す要部斜視図、
図4は
図3のIV−IV線断面図であり、
図5は衝撃吸収部材の変形ストロークSと抗力Fの相関図である。
【0034】
このバンパ1は、左右のサイドフレームに衝撃吸収部材を介して支持されて車幅方向に延在する前面11、後面12、上面13、下面14を有する略矩形中空閉断面構造のバンパビーム10と、衝撃吸収部材20と、バンパフェイス40を有する。
【0035】
衝撃吸収部材20は、比較的薄い金属板製でバンパビーム10の前面11と対向して前面11に沿って車幅方向に延在する板状の後面21を有し、後面21の上部21a及び下部21bに後端縁部22e、23eがそれぞれ結合されて対向して車幅方向に延在する上側水平面22及び下側水平面23、上側水平面22の前縁に沿って折曲線20aを介して斜め前方下方に延在する上側傾斜面24、下側水平面23の前縁に沿って折曲線20bを介して斜め前方上方に延在する下側傾斜面25、後面21と対向して上縁が折曲線20cを介して上側傾斜面24の前縁に連続しかつ下縁が折曲線20dを介して下側傾斜面25の前縁に連続する前面26を有する閉断面形状に構成される。また、上側水平面22及び下側水平面23の後端縁22e、23eがバンパビーム10に結合される。バンパフェイス40は合成樹脂製で衝撃吸収部材20の前面26を被覆する。
【0036】
そして、バンパ1は車幅方向の中央部範囲1Aが車幅方向に沿う略直線状で、中央部範囲1Aの両端から屈曲して緩やかに斜め後方車外側へ延びる傾斜部範囲1Bを有し、中央部範囲1Aから傾斜範囲1Bに変移する範囲がコーナ部1Cとなる。
【0037】
ここで、低速走行で中央部範囲1Aが歩行者等に接触した軽衝突の際に、その衝撃荷重F1がバンパフェイス40を介して衝撃吸収部材20の前面26に伝えられ、衝撃吸収部材20とバンパビーム10の前面11との間に荷重が集中することで後端縁22e及び23eが後面21によって連結された上側水平面22及び下側水平面23が、その中央部範囲1Aの延在方向に沿って前後方向の中央部を第1凸折れ稜線22a及び23aとして突出するように潰れ変形する。同様に、低速衝突で傾斜部範囲1Bが歩行者等に接触した際には、その衝撃荷重F2がバンパフェイス40を介して衝撃吸収部材20の前面26に伝えられ、上側水平面22及び下側水平面23がその傾斜部範囲1Bの延在方向に沿って前後方向の中央部を第2凸折れ稜線22b、23bとして突出するように潰れ変形する。
【0038】
中央部範囲1A側から傾斜部範囲1B側に変移するコーナ部1Cにおける上側水平面22に開口部32及び下側水平面23に開口部33が形成される。上側水平面22に形成される開口部32は、第1凸折れ稜線22aの延長線と第2凸折れ稜線22bの延長線との交点を介して対向すると共に第1凸折れ稜線22a及び第2凸折れ稜線22c上に離間して折曲誘導部となる一対の角部32a及び32bを有し、角部32a、32bから前方の折曲線20a側に移行するに従って次第に接近する前部側縁32A、32Bを有し、前部側縁32Aと32Bの前端が折曲線20aに沿って延在する前縁32Cによって連結されると共に、角部32a、32bから後方の後端縁22e側に移行するに従って次第に接近する後部側縁32D、32Eを有し、後部側縁32Dと32Eの後端が後端縁22eに沿って延在する後縁32Fによって連結される略菱形に形成される。この開口部32によって最大抗力部位となる第1凸折れ稜線22aの延長線と第2凸折れ稜線22bの延長線との交点における第1凸折れ稜線22aと凸折れ稜線22bが断ち切られる。また、一対の角部32a、32bが第1凸折れ稜線22a及び第2凸折れ稜線22cに離間して折曲変形の誘導部となる。
【0039】
下側水平面23に形成される開口部33は、第1凸折れ稜線23aと第2凸折れ稜線23bと延長線の交点を介して対向する第1凸折れ稜線23a及び第2凸折れ稜線23c上に折曲誘導部となる一対の角部33a及び33bを有し、角部33a、33bから前方の折曲線20b側に移行するに従って次第に接近する前部側縁33A、33Bを有し、前部側縁33Aと33Bの前端が折曲線20bに沿って延在する前縁33Cによって連結されると共に、角部32a、32bから後方の後端縁23e側に移行するに従って次第に接近する後部側縁33D、33Eを有し、後部側縁33Dと33Eの後端が後端縁23eに沿って延在する後縁33Fによって連結される略菱形に形成される。この開口部33によって第1凸折れ稜線23aと第2凸折れ稜線23bとの連続が分断される。
【0040】
次ぎに、このように構成されたバンパ1の衝撃吸収部材20の作用を説明する。
【0041】
低速走行でバンパ1の中央部範囲1Aが歩行者等に接触した軽衝突の際には、その衝撃荷重F1がバンパフェイス40を介して衝撃吸収部材20の前面26に伝えられ、衝撃吸収部材20とバンパビーム10の前面11との間に荷重が集中して前面
26の後退に伴って傾斜する上側傾斜面24及び下側傾斜面25が互いに離反するように押し広げられると共に上側水平面22及び下側水平面23の前端が後方に押圧付与されて後端縁22e、23eが後面21によって連結された上側水平面22及び下側水平面23が、その中央部範囲1Aの延在方向に沿って前後方向の中央部を第1凸折れ稜線22a及び23aに沿って突出するように潰れ変形して衝撃荷重F1を吸収することで歩行者に及ぼす障害ダメージを小さくする。
【0042】
また、低速走行で傾斜部範囲1Bが歩行者等に接触した際には、その衝撃荷重F2がバンパフェイス40を介して衝撃吸収部材20の前面26に伝えられ、衝撃吸収部材20とバンパビーム10の前面11との間に荷重が集中して前面
26の後退に伴って上側傾斜面24及び下側傾斜面25を介して上側水平面22及び下側水平面23の前端が後方に押圧付与されて後端縁22e、23eが後面21によって連結された上側水平面22及び下側水平面23が、その傾斜部範囲1Bの延在方向に沿って前後方向の中央部を第2凸折れ稜線22b及び23bに沿って突出するように潰れ変形して衝撃荷重F2を吸収することで歩行者に及ぼす障害ダメージを低減する。
【0043】
一方、低速走行でバンパ1の中央部範囲1A側から傾斜部範囲1B側に移行するコーナ部1Cが歩行者等に接触した際には、その衝撃荷重F3によってバンパフェイス40を介して衝撃吸収部材20の前面26に伝えられ、衝撃吸収部材20とバンパビーム10の前面11との間に荷重が集中し、前面
26の後退に伴って上側傾斜面24及び下側傾斜面25が互いに離反するように押し広げられると共に上側水平面22及び下側水平面23の前端が後方に押圧付与されて上側水平面22及び下側水平面23が開口部32の角部32a、32bを折曲開始起点として中央部範囲1Aにおける第1凸折れ稜線22a、23a及び傾斜部範囲1Bの第2凸折れ稜線22b、23bに沿って突出して
図3及び
図4に示すように潰れ変形する。
【0044】
ここで、上側水平面22において第1凸折れ稜線22aに沿って突出する潰れ変形と第2凸折れ稜線22bに沿って突出する潰れ変形が発生するが、第1凸折れ稜線22aの部分と第2凸折れ稜線22bの部分が開口部32によって分断されることから、互いに拘束することなく開口部32の角部32a、32bを変形の起点として第1凸折れ稜線22a及び第2凸折れ稜線22bに沿って突出するように円滑な潰れ変形する適正な変形モードが得られると共に、開口部32の形成により剛性が抑制されることと相俟って上側水平面22の潰れ変形による衝撃吸収が行われて変形抗力の低減が得られる。同様に、下側水平面23においても第1凸折れ稜線23aに沿って突出する潰れ変形と第2凸折れ稜線23bに沿って突出する潰れ変形が発生するが、第1凸折れ稜線23aの部分と第2凸折れ稜線23bの部分が開口部33によって分断されることから、互いに拘束することな
く開口部33の角部33a、33bを変形の起点として第1凸折れ稜線23a及び第2凸折れ稜線23bに沿って突出するように円滑な潰れ変形する適正な変形モードが得られると共に、開口部33の形成により剛性が抑制されることと相俟って上側水平面22の潰れ変形による衝撃吸収が行われる。
【0045】
これにより衝撃吸収部材20により衝撃荷重F3の連続的に行われる適正な変形モードの潰れ変形により歩行者等に及ぼす障害ダメージが低減される。この衝撃吸収部材20のコーナ部1Cにおける潰れ変形による変形ストロークSと抗力Fの相関関係を
図5に示す。第1実施の形態の衝撃吸収部材20では、一対の角部32a、32bが折曲開始起点として折曲変形の形成を誘導して、上側水平面22及び下側水平面の車幅方向のより広範囲で潰れ変形による衝撃吸収が行われることから、後述の第2実施の形態と比較すると変形ストロークの後半に渡っても抗力が持続する。
【0046】
また、衝撃吸収部材20の衝撃に対する変形モードの適正化及び開口部32及び33を形成する簡単な構成と相俟って衝撃吸収部材20のコンパクト化及び質量の低減が可能になり、バンパ1の小型化及び製造コストの低減が可能になる。
【0047】
なお、衝撃吸収部材20の上側水平面22及び下側水平面23に開口する開口部32及び33の形状は、変形特性等に応じて幅や長さ等の形状を変更することができる。
【0048】
(第2実施の形態)
第2実施の形態を
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は本実施の形態の概要を示すバンパの要部断面斜視図、
図7は衝撃吸収部材の変形ストロークSと抗力Fの相関図である。なお、本実施の形態は、第1実施の形態の衝撃吸収部材20の水平面22及び下側水平面23に形成される開口部の形状が異なり、他の構成は第1実施の形態と同様の構成であり、
図6において
図1乃至
図4と対応する部分に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略する。
【0049】
このバンパは、第1実施の形態と同様に略矩形中空閉断面構造のバンパビーム10と、衝撃吸収部材20と、バンパフェイス40を有する。
【0050】
比較的薄い金属板製の衝撃吸収部材20は、バンパビーム10の前面11に沿って延在する板状の後面21を有し、後面21の上部21a及び下部21bに後端縁部22e、23eがそれぞれ結合されて対向する上側水平面22及び下側水平面23、上側水平面22の前縁に沿って斜め前方下方に延在する上側傾斜面24、下側水平面23の前縁に沿って斜め前方上方に延在する下側傾斜面25、後面21と対向する前面26を有する閉断面形状に構成される。そして、バンパ1は車幅方向の中央部範囲1Aが車幅方向に沿う略直線状で、この中央部範囲1Aの両端から屈曲して緩やかに斜め後方車外側へ延びる傾斜端部範囲1Bを有し、中央部範囲1Aから傾斜部範囲1Bに変移する範囲がコーナ部1Cとなる。
【0051】
中央部範囲1Aから傾斜部範囲1Bに変移するコーナ部1Cにおける上側水平面22に開口部42及び下側水平面23に開口部43が形成される。
【0052】
上側水平面22に形成される開口部42は、第1凸折れ稜線22aと第2凸折れ稜線22bの延長線の交点を介して対向する側縁42A、42Bを有し、側縁42Aと42Bの前端が折曲線20aに近接すると共に折曲線20aに沿って延在する前縁42Cによって連結され、側縁42Aと42Bの後端が後端縁22eに近接すると共に後端縁22eに沿って延在する後縁42Dによって連結された略矩形溝状に形成される。この開口部42によって第1凸折れ稜線22aと第2凸折れ稜線22bが分断される。
【0053】
下側水平面23に形成される開口部43は、第1凸折れ稜線23aと第2凸折れ稜線23bとの延長線の交点を介して対向する側縁43A、43Bを有し、側縁43Aと43Bの前端が折曲線20bに近接すると共に折曲線20bに沿って延在する前縁43Cによって連結され、側縁43Aと43Bの後端が後端縁23eに近接すると共に後端縁23eに沿って延在する後縁43Dによって連結された略矩形溝状に形成さえる。この開口部43によって第1凸折れ稜線22aと第2凸折れ稜線22bが断ち切られる。
【0054】
次ぎに、このように構成された衝撃吸収部材20の作用を説明する。
【0055】
低速走行でバンパ1の中央部範囲1Aが歩行者等に接触した軽衝突の際には、その衝撃荷重F1がバンパフェイス40を介して衝撃吸収部材20の前面26に伝えられ、衝撃吸収部材20とバンパビーム10の前面11との間に荷重が集中して前面
26の後退に伴って傾斜する上側傾斜面24及び下側傾斜面25が互いに離反するように押し広げられると共に上側水平面22及び下側水平面23の前端が後方に押圧付与されて後端縁22e,23eが後面21によって連結された上側水平面22及び下側水平面23が、その中央部範囲1Aの延在方向に沿って前後方向の中央部を第1凸折れ稜線22a及び23aとして突出するように潰れ変形して衝撃荷重F1を吸収して歩行者に及ぼす障害ダメージの低減が得られる。
【0056】
また、低速衝突で傾斜部範囲1Bが歩行者等に接触した際には、その衝撃荷重F2がバンパフェイス40を介して衝撃吸収部材20の前面26に伝えられ、衝撃吸収部材20とバンパビーム10の前面11との間に荷重が集中して前面
26の後退に伴って上側傾斜面24及び下側傾斜25を介して上側水平面22及び下側水平面23の前端が後方に押圧付与されて後端縁22e,23eが後面21によって連結された上側水平面22及び下側水平面23が、その傾斜部範囲1Bの延在方向に沿って前後方向の中央部を第2凸折れ稜線22b及び23bとして突出するように潰れ変形して衝撃荷重F2を吸収して歩行者へ歩行者への障害ダメージが低減する。
【0057】
一方、バンパ1はその中央部範囲1A側から傾斜部範囲1B側に移行するコーナ部1Cが歩行者等に接触した際には、その衝撃荷重F3によってバンパフェイス40を介して衝撃吸収部材20の前面26に伝えられ、衝撃吸収部材20とバンパビーム10の前面11との間に荷重が集中し、前面
26の後退に伴って上側傾斜面24及び下側傾斜面25が互いに離反するように押し広げられると共に上側水平面22及び下側水平面23の前端が後方に押圧付与されて上側水平面22及び下側水平面23が中央部範囲1Aにおける第1凸折れ稜線22a、23a及び傾斜部範囲1Bの第2凸折れ稜線22b、23bに沿って突出して潰れ変形する。
【0058】
ここで、上側水平面22において第1凸折れ稜線22aに沿って突出する潰れ変形と第2凸折れ稜線22bに沿って突出する潰れ変形が発生するが、第1凸折れ稜線22aの部分と第2凸折れ稜線22bの部分が開口部42によって分断されることから、互いに拘束することなく第1凸折れ稜線22a及び第2凸折れ線22bに沿って突出するように円滑に潰れ変形する適正な変形モードが得られ、開口部32の形成により剛性が抑制されることと相俟って上面22の潰れ変形による衝撃吸収が行われる。同様に、下側水平面23においても第1凸折れ稜線23aに沿って突出する潰れ変形と第2凸折れ稜線23bに沿って突出する潰れ変形が発生するが、第1凸折れ稜線23aの部分と第2凸折れ稜線23bの部分が開口部33によって分断されることから、互いに拘束することなく第1凸折れ稜線23a及び第2凸折れ稜線23bに沿って突出するように円滑に潰れ変形する適正な変形モードが得られ、開口部33の形成により剛性が抑制されることと相俟って上面22の潰れ変形による衝撃吸収が行われる。これにより衝撃吸収部材20により衝撃荷重F3の連続的に行われ良好な衝撃吸収がえられ、歩行者に及す障害ダメージの低減が得られる。この衝撃吸収部材20の変形による変形ストロークSと抗力Fの相関関係を
図7に示す。
【0059】
また、衝撃に衝撃吸収部材20の変形モードの適正化及び開口部42及び43を形成する簡単な構成と相俟って衝撃吸収部材20のコンパクト化が可能になり、バンパの小型化及び衝撃吸収部材の製造コストの低減や質量の低減が可能になる。
【0060】
なお、衝撃吸収材20の上側水平面22及び下側水平面23に開口する開口部42及び43の形状は、要求変形特性等に応じて幅や長さを変更することができる。