【実施例】
【0022】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。
【0023】
<植物成長調整剤の調製>
以下の表1に記載の処方にて、植物成長調整剤(検体)を調製した。各成分は順次攪拌下添加し溶解した。調製後、
図1に示したような徐放性容器1(HDPE(High Density Polyethylene)製の本体11とPP(Polypropylene)製のキャップ13からなる筒状容器)に1.4ml充填した。
尚、検体中のアリルイソチオシアネートは主に徐放性容器1の本体11を透過して徐々に揮散し、当該容器1を用いた場合、常温常圧下、空気中では6ヶ月程度で充填された植物成長調整剤が全量放出される。
【0024】
【表1】
【0025】
<揮散量確認試験>
縦65cm×横23cm×高さ18.5cmのプランター(PP製650型プランター)を7個用意し、それぞれに表2に示す土を15リットル入れた。それぞれのプランターに表1に示す植物成長調整剤を充填した
図1の徐放性容器1を3本ずつ、等間隔に差し込み、18±3℃の室内に24日間放置した。日に一度、1リットルの散水を行った。
【0026】
【表2】
【0027】
対照として、植物成長調整剤を充填した
図1の徐放性容器1を徐放状態とするため同じ空間に放置した。各土に対する24日後のアリルイソチオシアネートの揮散量を精密天秤による重量測定により測定した。尚、アリルイソチオシアネートの揮散量は3本の平均値とした。その結果を
図2に示す。
【0028】
図2に示したグラフからわかるように、徐放状態においては空間中でのアリルイソチオシアネートの揮散量を1本につき一日当り約3.0mg放出する徐放性容器を使用した場合、各土壌に対しては、1本につき、一日当り約1.5〜2.5mgのアリルイソチオシアネートを揮散できることがわかった。
【0029】
次に、上記植物成長調整剤の植物体に対する効果についての試験を行った。
【0030】
(実施例1)
<供試植物体>
植物体として、花弁の付いたペチュニアを用いた。65cm×横23cm×高さ18.5cmのプランターを2個用意し、それぞれに赤玉土(自然応用科学株式会社製、赤玉土小粒)と培養土(自然応用科学株式会社製、花と野菜の培養土)の28:10混合土15〜16リットルを入れた。それぞれのプランターにペチュニアの花弁のついた状態の株を2株ずつ移植した。尚、混合土は以下の実施例においても同様である。
【0031】
<試験方法>
一方のプランターには、
図3(a)に示すように、植物体(ペチュニア)6を移植したプランター2の両端にプラスチック製の支柱5を立て、全体をナイロン袋4で覆った。各支柱5に表1に示した植物成長調整剤を充填した
図1の徐放性容器1を吊り下げ、室温25℃前後のビニールハウス内に静置して植物成長調整剤処理区(以下、単に「検体処理区」という。)とした。他方のプランターには植物成長調整剤を施用することなくビニールハウス内の場所に静置し、これを無処理区(対照区)とした。1日に一度、1リットル程度散水し、通常の生育を促すために約10日に一度の間隔で、500倍希釈した液肥(商品名「ハイポネックス5−10−5」、株式会社ハイポネックスジャパン製)を1リットル与えた。試験開始からの花弁について、それぞれのプランターごとに咲いている花数と枯れた花数の累計とをカウントした。尚、カウント数はそれぞれ2株の平均値とした。
結果を
図4に示す。
【0032】
図4(a)の結果より、無処理区(対照区)に比べて、検体処理区の方が5月10日では同程度であったが、5月19日の時点では咲いている花数が多くなった。また、
図4(b)の結果より、枯れて落下した花数にはほとんど変化が見られなかった。これらのことから、検体処理区の方が開花数を増加し、花の開花期間が延長する効果が得られることがわかった。
【0033】
(実施例2)
<供試植物体>
植物体として、花弁の付いたキンギョソウを用いた。縦65cm×横23cm×高さ18.5cmのプランターを2個用意し、それぞれに赤玉土(自然応用科学株式会社製、赤玉土小粒)と培養土(自然応用科学株式会社製、花と野菜の培養土)の28:10混合土15〜16リットルを入れた。それぞれのプランターにキンギョソウの花弁の付いた状態の株を3株ずつ移植した。
【0034】
<試験方法>
一方のプランターには、
図3(b)に示すように、植物体(キンギョソウ)6を移植したプランター2の土壌の該植物体6どうしの間(2カ所)に表1に示した植物成長調整剤を充填した
図1の徐放性容器1を差し込み、室温25℃前後のビニールハウス内に静置して植物成長調整剤処理区(以下、単に「検体処理区」という。)とした。他方のプランターには植物成長調整剤を施用することなくビニールハウス内の場所に静置し、これを対照区とした。1日に一度、1リットル程度散水し、約10日に一度の間隔で、500倍希釈した液肥(商品名「ハイポネックス5−10−5」、株式会社ハイポネックスジャパン製)を1リットル与えた。試験開始からの花弁について、それぞれのプランターごとに咲いている花数と枯れた花数の累計とをカウントした。尚、カウント数はそれぞれ3株の平均値とした。
結果を
図5に示す。
【0035】
図5(a)の結果より、5月19日の時点で検体処理区の方が対照区に比べて咲いている花数が多くなり、また、その数も経時的に安定していた。そして、
図5(b)および(c)の結果より、枯れて落下した花の数が少なく、観測期間における累積落花数がほぼ同じであったことから、検体処理区の方が、開花期間が延長し一度の開花数が増加したことがわかった。
【0036】
(実施例3)
<供試植物体>
植物体として、花弁の付いたカーネーションを用いた。縦65cm×横23cm×高さ18.5cmのプランターを2個用意し、それぞれに赤玉土(自然応用科学株式会社製、赤玉土小粒)と培養土(自然応用科学株式会社製、花と野菜の培養土)の28:10混合土15〜16リットルを入れた。それぞれのプランターにカーネーションの花弁の付いた状態の株を3株ずつ移植した。
【0037】
<試験方法>
一方のプランターには、
図3(b)に示したように、プランター2の中央のカーネーション(植物体6)の根本付近の土壌に表1に示した植物成長調整剤を充填した
図1の徐放性容器1を1本差し込み、室温25℃前後のビニールハウス内に静置して植物成長調整剤処理区(以下、単に「検体処理区」という。)とした。他方のプランターには植物成長調整剤を施用することなくビニールハウス内の場所に静置し、これを対照区とした。1日に一度、1リットル程度散水し、約10日に一度の間隔で、500倍希釈した液肥(商品名「ハイポネックス5−10−5」、株式会社ハイポネックスジャパン製)を1リットル与えた。試験開始からの花弁について、それぞれのプランターごとに咲いている花数と枯れた花数の累計とをカウントした。尚、カウント数はそれぞれ3株の平均値とした。
結果を
図6に示す。
【0038】
図6(a)の結果より、5月24日の時点で対照区と比べて検体処理区の開花数は増加していた。また、
図6(b)および(c)の結果より、枯れて落下した花の数が減少し、観察期間を通じた累積落花数がほぼ同じであった。このことから、検体処理区では開花数の増加作用、開花期間の延長作用が認められた。
【0039】
(実施例4)
<供試植物体>
植物体として、花弁の付いたテルスターを用いた。縦65cm×横23cm×高さ18.5cmのプランターを2個用意し、それぞれに赤玉土(自然応用科学株式会社製、赤玉土小粒)と培養土(自然応用科学株式会社製、花と野菜の培養土)の28:10混合土15〜16リットルを入れた。それぞれのプランターにテルスターの花弁の付いた状態の株を4株ずつ移植した。
【0040】
<試験方法>
一方のプランターには、
図3(b)に示したように、プランター2の中央付近の土壌に表1に示した植物成長調整剤を充填した
図1の徐放性容器1を1本差し込み、室温25℃前後のビニールハウス内に静置して植物成長調整剤処理区(以下、単に「検体処理区」という。)とした。他方のプランターには植物成長調整剤を施用することなくビニールハウス内の場所に静置し、これを対照区とした。1日に一度、1リットル程度散水し、約10日に一度の間隔で、500倍希釈した液肥(商品名「ハイポネックス5−10−5」、株式会社ハイポネックスジャパン製)を1リットル与えた。試験開始からの花弁について、それぞれのプランターごとに咲いている花数と枯れた花数の累計とをカウントした。尚、カウント数はそれぞれ4株の平均値とした。
結果を
図7および
図8に示す。
【0041】
図7(a)〜(c)の結果より、6月21日の時点で枯れて落下した花の数、試験期間を通じた落花数はほぼ同等であるが、対照区と比べて検体処理区の開花数が増加していることがわかった。これにより、検体処理区の開花期間の延長作用が認められた。また、
図8(a)に示した対照区の観察結果と
図8(b)に示した検体処理区の観察結果より、検体処理区の方が開花数が増えていることが明らかである。
【0042】
(実施例5)
<供試植物体>
植物体として、花弁の開いていないミニトマトを用いた。縦65cm×横23cm×高さ18.5cmのプランターを2個用意し、それぞれに赤玉土(自然応用科学株式会社製、赤玉土小粒)と培養土(自然応用科学株式会社製、花と野菜の培養土)の28:10混合土15〜16リットルを入れた。それぞれのプランターにミニトマトの花芽の付いていない状態の株を3株ずつ移植した。
【0043】
<試験方法>
一方のプランターには、
図3(b)に示したように、中央のミニトマト(植物体6)の根本付近の土壌に表1に示した植物成長調整剤を充填した
図1の徐放性容器1を1本差し込み、室温25℃前後のビニールハウス内に静置して植物成長調整剤処理区(以下、単に「検体処理区」という。)とした。他方のプランターには植物成長調整剤を施用することなくビニールハウス内の場所に静置し、これを対照区とした。1日に一度、1リットル程度散水し、約10日に一度の間隔で、500倍希釈した液肥(商品名「ハイポネックス5−10−5」、株式会社ハイポネックスジャパン製)を1リットル与えた。試験開始からの花弁について、それぞれのプランターごとに咲いている花数と結実した果実数とをカウントした。尚、カウント数はそれぞれ3株の平均値とした。
結果を
図9に示す。
【0044】
図9(a)および(b)の結果より、5月24日の時点で対照区と比べて検体処理区の方が開花時期が早くなっていることがわかった。処理区では開花の観察された5月10日の時点では検体処理区、無処理区共に結実は見られなかったことから、開花の促進に伴い結実の時期も早まっていることがわかった。また、検体処理区の一定期間内の開花数、結実数が増加していることがわかった。
【0045】
(実施例6)
<供試植物体>
植物体として、花弁の付いたサルビアを用いた。縦65cm×横23cm×高さ18.5cmのプランターを2個用意し、それぞれに赤玉土(自然応用科学株式会社製、赤玉土小粒)と培養土(自然応用科学株式会社製、花と野菜の培養土)の28:10混合土15〜16リットルを入れた。それぞれのプランターにサルビアの一部花弁のついた状態の株を3株ずつ移植した。
【0046】
<試験方法>
一方のプランターには、
図3(b)に示したように、中央のサルビア(植物体6)の根本付近の土壌に表1に示した植物成長調整剤を充填した
図1の徐放性容器1を1本差し込み、室温25℃前後のビニールハウス内に静置して植物成長調整剤処理区(以下、単に「検体処理区」という。)とした。他方のプランターには植物成長調整剤を施用することなくビニールハウス内の場所に静置し、これを対照区とした。日に一度、1リットル程度散水し、約10日に一度の間隔で、500倍希釈した液肥(商品名「ハイポネックス5−10−5」、株式会社ハイポネックスジャパン製)を1リットル与えた。試験開始からの花弁について、それぞれのプランターごとに咲いている花数と枯れて落下した花数とをカウントした。尚、カウント数はそれぞれ3株の平均値とした。
結果を
図10に示す。
【0047】
図10(a)および(b)の結果より、花弁のつき始める段階から対照区と比べて検体処理区の開花数はわずかに増加していることがわかった。また、2週間経過後(5月24日時点)における枯れた花の数が減少していることがわかった。これにより、検体処理区の開花期間の延長効果が認められた。
【0048】
(実施例7)
<供試植物体>
植物体として、花弁の付いたラベンダーを用いた。縦65cm×横23cm×高さ18.5cmのプランターを2個用意し、それぞれに赤玉土(自然応用科学株式会社製、赤玉土小粒)と培養土(自然応用科学株式会社製、花と野菜の培養土)の28:10混合土15〜16リットルを入れた。それぞれのプランターにラベンダーの花弁がついた状態の株を2株ずつ移植した。
【0049】
<試験方法>
一方のプランターには、
図3(b)に示したように、プランター2の中央付近の土壌に表1に示した植物成長調整剤を充填した
図1の徐放性容器1を1本差し込み、室温25℃前後のビニールハウス内に静置して植物成長調整剤処理区(以下、単に「検体処理区」という。)とした。他方のプランターには植物成長調整剤を施用することなくビニールハウス内の場所に静置し、これを対照区とした。1日に一度、1リットル程度散水し、約10日に一度の間隔で、500倍希釈した液肥(商品名「ハイポネックス5−10−5」、商品名、株式会社ハイポネックスジャパン製)を1リットル与えた。試験開始からの花弁について、それぞれのプランターごとに咲いている花数と枯れた花数とをカウントした。尚、カウント数はそれぞれ2株の平均値とした。
結果を
図11に示す。
【0050】
図11の結果より、6月14日の時点で対照区に比べて検体処理区の方が咲いている花数は多く、一度の開花数が増加することがわかった。
【0051】
(実施例8)
<供試植物体>
植物体として、花弁の付いたカルセオラリアを用いた。縦65cm×横23cm×高さ18.5cmのプランターを2個用意し、それぞれに赤玉土(自然応用科学株式会社製、赤玉土小粒)と培養土(自然応用科学株式会社製、花と野菜の培養土)の28:10混合土15〜16リットルを入れた。それぞれのプランターにカルセオラリアの花弁がついた状態の株を1株ずつ移植した。
【0052】
<試験方法>
図3(b)に示したように、一方のプランター2には、カルセオラリア(植物体6)の根本付近の土壌に表1に示す植物成長調整剤を充填した
図1の徐放性容器1を1本差し込み、室温25℃前後のビニールハウス内に静置して植物成長調整剤処理区(以下、単に「検体処理区」という。)とした。他方のプランターには植物成長調整剤を施用することなくビニールハウス内の場所に静置し、これを対照区とした。1日に一度、1リットル程度散水し、約10日に一度の間隔で、500倍希釈した液肥(商品名「ハイポネックス5−10−5」、株式会社ハイポネックスジャパン製)を1リットル与えた。試験開始からの花弁について、それぞれのプランターごとに枯れて落下した花数をカウントした。
結果を
図12および
図13に示す。
【0053】
図12の結果より、3月15日の時点で対照区に比べて検体処理区の方が枯れて落下した花の数が少なく、開花期間が延長されることがわかった。また、
図13(a)に示した対照区の観察結果と
図13(b)に示した検体処理区の観察結果より、対照区では観察開始(2月22日)から約3週間後(3月15日)で多くの花弁が枯れて落下したのに対し、検体処理区では観察開始と約3週間後とでほとんど花数の変化が見られない。このことから、検体処理区の方が、開花期間が延長されていることは明らかである。