特許第5735411号(P5735411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5735411イムノクロマト法によるアレルゲン検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735411
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】イムノクロマト法によるアレルゲン検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20150528BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   G01N33/543 501M
   G01N33/543 501H
   G01N33/543 521
   G01N33/53 Q
   G01N33/543 541Z
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-500539(P2011-500539)
(86)(22)【出願日】2010年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2010001209
(87)【国際公開番号】WO2010095469
(87)【国際公開日】20100826
【審査請求日】2012年12月6日
(31)【優先権主張番号】特願2009-39881(P2009-39881)
(32)【優先日】2009年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2009-79540(P2009-79540)
(32)【優先日】2009年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113067
【氏名又は名称】プリマハム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 重城
(72)【発明者】
【氏名】秋元 政信
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−278773(JP,A)
【文献】 特開平04−262796(JP,A)
【文献】 特開2002−267670(JP,A)
【文献】 特開2000−065820(JP,A)
【文献】 特開2005−106811(JP,A)
【文献】 特開2001−305134(JP,A)
【文献】 特開2004−085425(JP,A)
【文献】 特開2006−071509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体に金コロイドを結合した金コロイド標識抗体と、前記金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識する変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が所定の位置に固定された展開支持体と、食品被検試料から、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を用いて抽出した変性及び未変性のアレルゲンの測定サンプルを含む展開液を用い、展開支持体に展開させた後、金コロイドの集積の有無により、アレルゲンを検出するイムノクロマト法において、ウシ胎児血清(FBS)が少なくとも10重量%含まれている展開液を用いることを特徴とするイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法。
【請求項2】
ウシ胎児血清(FBS)が少なくとも30重量%含まれている展開液を用いることを特徴とする請求項1記載のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法。
【請求項3】
ウシ胎児血清(FBS)が少なくとも50重量%含まれている展開液を用いることを特徴とする請求項2記載のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法。
【請求項4】
変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が、乳アレルゲンの主要成分としてのαs1カゼイン、ホエーアレルゲンの主要成分であるβラクトグロブリン、卵白アレルゲンとしてのオボアルブミンとオボムコイド、小麦アレルゲンの主要成分としてのグリアジン、そばの主要タンパク質である分子量24kDaと76kDaのタンパク質、落花生の主要タンパク質であるArah1から選ばれる変性及び未変性のアレルゲンを特異的に認識する2種類のモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法。
【請求項5】
陰イオン性界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出法。
【請求項6】
非イオン性界面活性剤としてTween20を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出法。
【請求項7】
変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体に金コロイドを結合した金コロイド標識抗体を担持させた金コロイド標識抗体担持体、前記金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識する変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が所定の位置に固定された展開支持体と、食品の被検試料から、変性及び未変性のアレルゲンを抽出するための陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を含有する緩衝液と、食品の被検試料から、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を用いて抽出した変性及び未変性のアレルゲンの測定サンプルを担持させることができるサンプル用担体と、ウシ胎児血清(FBS)又はウシ胎児血清(FBS)を含む展開液とを備えたことを特徴とするイムノクロマト用アレルゲンの検出キット。
【請求項8】
変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が、乳アレルゲンの主要成分としてのαs1カゼイン、ホエーアレルゲンの主要成分であるβラクトグロブリン、卵白アレルゲンとしてのオボアルブミンとオボムコイド、小麦アレルゲンの主要成分としてのグリアジン、そばの主要タンパク質である分子量24kDaと76kDaのタンパク質、落花生の主要タンパク質であるArah1から選ばれる変性及び未変性のアレルゲンを特異的に認識する2種類のモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項7記載のイムノクロマト用アレルゲンの検出キット。
【請求項9】
陰イオン性界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項7又は8記載のイムノクロマト用アレルゲンの検出キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種アレルゲンを含む食品等の被検試料から、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩を用いて、各アレルゲンを抽出し、各アレルゲンが変性/未変性のいかなる状態にあっても陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤で効率よく抽出し、さらに抗体に結合した金コロイドの崩壊に伴う非特異反応を抑え、迅速に検出することのできるイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法やそれに使用することができるイムノクロマト用アレルゲンの検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
自然環境の減少、車や工場などからの排気ガス、住宅事情等、或いは食べ物の変化など様々な因子により、現在では、3人に1人が何らかのアレルギー疾患をもつといわれている。特に、食物アレルギーは、食品中に含まれるアレルギー誘発物質(以下、食物アレルゲンという)の摂取が引き起こす有害な免疫反応であり、皮膚炎、喘息、消化管障害、アナフィラキシーショック等を引き起こし、このような食物アレルギーの患者が増加していることから、医学上及び食品産業上、深刻な問題を生じている。これらの危害は死に至らせることがあり、未然に処置を施す必要がある。そのためには、表示を通じて消費者へ情報提供の必要性も高まっており、FAO/WHO合同食品規格委員会は、アレルギー物質として知られている8種の原材料を含む食品にあっては、それを含む旨の表示について合意し、加盟国で各国の制度に適した表示方法を検討することとした(1999年6月)。日本では過去の健康危害などの程度、頻度を考慮して重篤なアレルギー症状を起した実績のある24品目の食品について、その表示方法が定められた(2002年4月より施行)。アレルギーを引き起こす食品としては、卵類、牛乳類、肉類、魚類、甲殻類及び軟体動物類、穀類、豆類及びナッツ類、果実類、野菜類、ビール酵母若しくはゼラチンなどが知られている。
【0003】
上記のアレルゲンを迅速で簡易に検出するため、抗原−抗体による特異的反応を利用して特定の抗原または抗体よりなる被検出物質を検出する免疫測定法としては、試料中の被検出物質を、微粒子に感作させた抗体または抗原と免疫反応により結合させ、結合によって生じる微粒子の凝集状態を測定する凝集法が簡便な免疫測定法であり、特に目視判定が可能である点で一般的に用いられている方法である。
【0004】
また、試料中の被検出物質に、放射性同位元素、酵素または蛍光物質からなる標識物質により標識した抗体または抗原を免疫反応により結合させ、この結合した標識物質を測定する放射免疫測定法、酵素免疫測定法あるいは蛍光免疫測定法も採用されている。これらの免疫測定法では、競合型反応、サンドイッチ型反応が広く使われている。これらのうち、いわゆるサンドイッチ型反応の測定法として、イムノクロマトグラフィー法が知られており(例えば、特許文献1参照)、抗原抗体反応に起因する高い特異性に加え、簡易、迅速を特徴とする種々のアレルゲン検出キットが販売されている。
【0005】
かかるイムノクロマトグラフィー法に適用される試料としては、生体試料や食品からの抽出物などあるが、試料の種類によっては、検体が存在しないにもかかわらず捕捉部位で淡い呈色を示す所謂非特異反応を生じることがあり、検査における確度の低下をもたらすことがあった。そこで、緩衝液中に、ホスホリルコリン基を有する重合体を、0.005〜0.3w/v%の濃度で含有し、該重合体の数平均分子量は40,000以上であることを特徴とする、測定時の非特異的凝集および非特異反応を防止し、以って、高い確度で測定を可能とする展開溶媒(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0006】
また、上記免疫測定法においては、タンパク質に加熱や加圧などによって変性等が生じた場合、測定結果が低くなったり、測定できないケースが認められていた。特定原材料の検査方法として厚生労働省より通知されている食安発第0122001号に収載されているサンドイッチELISA法では、加熱した被検試料から各アレルゲンを十分に抽出するために、変性剤及び還元剤(2−メルカプトエタノール)を用いた抽出溶液を用いて抽出する方法が採用されている。これは、従来より利用されてきた、タンパク質の分析に用いられるSDS−ポリアクリルアミド電気泳動法のサンプル調製方法が応用されており、被検試料から各アレルゲンの抽出効率を高めるには変性剤と還元剤が必要不可欠であると考えられていた。また、これらをイムノクロマトグラフィー法に適応した場合、多くの非特異反応が見られるために正確な検査ができず、変性タンパク質を測定する際に問題となっていた。
【0007】
本出願人は、変性剤及び還元剤を用いた抽出溶液を用いて抽出し、イムノクロマトグラフィー法に適応した場合でも、金コロイドの崩壊に伴う非特異反応を抑え迅速かつ精度よくアレルゲンを検出することのできるイムノクロマト法を提案している(例えば、特許文献3参照)。当該方法では、加熱した被検試料から各アレルゲンを十分に抽出し、さらに簡便なイムノクロマトグラフィー法により検査が可能となったため、精度と簡便さについて飛躍的に向上することができた。しかし、用いる還元剤(2−メルカプトエタノール)においては特異な臭いがあることと、2−メルカプトエタノールが2008年7月1日より毒物として指定されたことから、食品製造工場などでの簡便な使用が困難となっていた。そこで、より安全で効率の良い抽出方法と、これらをイムノクロマトグラフィー法に適応した場合、非特異反応が見られず、正確な検査が可能なイムノクロマトグラフィー法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−010950号公報
【特許文献2】特開2003−344406号公報
【特許文献3】特開2007−278773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、各アレルゲンを含む食品等の被検試料から、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を用いて、各アレルゲンを抽出し、各アレルゲンが変性/未変性のいかなる状態にあっても陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤で効率よく抽出し、さらに、抗体に結合した金コロイドの崩壊に伴う非特異反応を抑え、迅速かつ精度よくアレルゲンを検出することのできるイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法やそれに用いることができるイムノクロマト用アレルゲンの検出キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、加熱した被検試料から各アレルゲンを十分に抽出するために必要不可欠と考えられていた2−メルカプトエタノールを使用することなく、各アレルゲンが変性/未変性のいかなる状態にあっても陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤で効率よく抽出できること、さらに、簡易に検出することのできるイムノクロマト法において、ウシ胎児血清(FBS:fetal bovine serum)を含む展開液を用いると、前記課題を解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(1)変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体に金コロイドを結合した金コロイド標識抗体と、前記金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識する変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が所定の位置に固定された展開支持体と、食品の被検試料から、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を用いて抽出した変性及び未変性のアレルゲンの測定サンプルを含む展開液を用い、展開支持体に展開させた後、金コロイドの集積の有無により、アレルゲンを検出するイムノクロマト法において、ウシ胎児血清(FBS)が少なくとも10重量%含まれている展開液を用いることを特徴とするイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法や、(2)ウシ胎児血清(FBS)が少なくとも30重量%含まれている展開液を用いることを特徴とする前記(1)記載のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法や、(3)ウシ胎児血清(FBS)が少なくとも50重量%含まれている展開液を用いることを特徴とする前記(2)記載のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法や、(4)変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が、乳アレルゲンの主要成分としてのαs1カゼイン、ホエーアレルゲンの主要成分であるβラクトグロブリン、卵白アレルゲンとしてのオボアルブミンとオボムコイド、小麦アレルゲンの主要成分としてのグリアジン、そばの主要タンパク質である分子量24kDaと76kDaのタンパク質、落花生の主要タンパク質であるArah1から選ばれる変性及び未変性のアレルゲンを特異的に認識する2種類のモノクローナル抗体であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法や、(5)陰イオン性界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを用いることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか記載のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出法や、(6)非イオン性界面活性剤としてTween20を用いることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか記載のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出法に関する。
【0012】
また本発明は、(7)変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体に金コロイドを結合した金コロイド標識抗体を担持させた金コロイド標識抗体担持体、前記金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識する変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が所定の位置に固定された展開支持体と、食品の被検試料から、変性及び未変性のアレルゲンを抽出するための陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を含有する緩衝液と、食品の被検試料から、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を用いて抽出した変性及び未変性のアレルゲンの測定サンプルを担持させることができるサンプル用担体と、ウシ胎児血清(FBS)又はウシ胎児血清(FBS)を含む展開液とを備えたことを特徴とするイムノクロマト用アレルゲンの検出キットや、(8)変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が、乳アレルゲンの主要成分としてのαs1カゼイン、ホエーアレルゲンの主要成分であるβラクトグロブリン、卵白アレルゲンとしてのオボアルブミンとオボムコイド、小麦アレルゲンの主要成分としてのグリアジン、そばの主要タンパク質である分子量24kDaと76kDaのタンパク質、落花生の主要タンパク質であるArah1から選ばれる変性及び未変性のアレルゲンを特異的に認識する2種類のモノクローナル抗体であることを特徴とする前記(7)記載のイムノクロマト用アレルゲンの検出キットや、(9)陰イオン性界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウムを含有することを特徴とする前記(7)又は(8)記載のイムノクロマト用アレルゲンの検出キットに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法によると、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を用いた場合でも、抗体に結合した金コロイドの崩壊に伴う非特異反応を抑え、迅速かつ精度よく各種アレルゲンを検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法としては、変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体に金コロイドを結合した金コロイド標識抗体と、前記金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識する変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が所定の位置に固定された展開支持体と、アレルゲンを含む食品等の被検試料から、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を用いて抽出した変性及び未変性のアレルゲンの測定サンプルを含む展開液を用い、展開支持体に展開させた後、金コロイドの集積の有無により、アレルゲンを検出するイムノクロマト法において、ウシ胎児血清(FBS)が少なくとも10重量%含まれている展開液を用いる方法であれば特に制限されないが、ウシ胎児血清(FBS)が、20〜100重量%含まれている展開液を用いることが好ましく、30〜100重量%含まれている展開液を用いることがより好ましく、40〜100重量%含まれている展開液を用いることが特に好ましく、50〜100重量%含まれている展開液を用いることがより一層好ましい。
【0015】
本発明のイムノクロマト用アレルゲンの検出キットとしては、変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体に金コロイドを結合した金コロイド標識抗体を担持させた金コロイド標識抗体担持体、前記金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識する変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が所定の位置に固定された展開支持体と、アレルゲンを含む食品等の被検試料から、変性及び未変性のアレルゲンを抽出するための陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を含有する緩衝液と、アレルゲンを含む食品等の被検試料から、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を用いて抽出した変性及び未変性のアレルゲンの測定サンプルを担持させることができるサンプル用担体と、ウシ胎児血清(FBS)又はウシ胎児血清(FBS)を含む展開液とを備えた検出キットであれば特に制限されないが、上記展開液として、ウシ胎児血清(FBS)が少なくとも10重量%含まれている展開液、好ましくは少なくとも20重量%含まれている展開液、より好ましくは少なくとも30重量%含まれている展開液、特に好ましくは少なくとも40重量%含まれている展開液、より一層好ましくは少なくとも50重量%、例えば50〜100重量%含まれている展開液を備えたものが望ましい。
【0016】
上記展開液におけるウシ胎児血清(FBS)濃度が10重量%未満の場合、非特異反応を生じやすく好ましくない。また、展開液には、緩衝液中にウシ胎児血清(FBS)の他、必要に応じて他の界面活性剤、防腐剤、無機塩などの各種添加剤を懸濁もしくは乳濁または溶解せしめて調製することができる。緩衝液は、そのpHが4〜10、特にpH6〜8が好ましく、例えば、リン酸緩衝液(PBS)やトリス緩衝液などを好適に例示することができる。
【0017】
上記モノクローナル抗体に金コロイドを結合した金コロイド標識抗体の作製方法は従来公知の方法を含め特に制限されないが、例えば、0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液に、2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)にモノクローナル抗体を溶解した溶液を加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を加え、さらに15分間反応させ、遠心分離する方法を挙げることができる。また、上記金コロイド標識抗体担持体は、上記作製した金コロイド標識抗体を、例えばガラスウール製コンジュゲートパッドに塗布し、乾燥させることにより作製することができる。
【0018】
上記展開支持体は、金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識する変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体を含む緩衝液を、例えば、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた後、ブロッキング処理することにより作製することができる。
【0019】
変性及び未変性のアレルゲンを抽出して測定サンプルを調製する際に用いられる緩衝液における、陰イオン性界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩などを挙げることができ、具体的にはドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を好適に例示することができる。チオ硫酸塩としては、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸アンモニウムなどを挙げることができ、具体的にはチオ硫酸ナトリウムを好適に例示することができる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ソルビタン脂肪酸エステルなどを挙げることができ、具体的にはポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20)を好適に例示することができる。上記陰イオン性界面活性剤の濃度は0.1〜2.0%、好ましくは0.25%〜0.5%であり、チオ硫酸塩の濃度は0.1〜5.0%、好ましくは0.1%〜1.0%であり、非イオン性界面活性剤の濃度は0.01〜1.0%、好ましくは0.05〜0.2%であり、これらの濃度範囲の陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩、又は、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を含む緩衝液を用いると、抽出効率が高く且つ非特異反応を抑制しうる点で好ましい。
【0020】
上記測定サンプルを担持させることができるサンプル用担体としては、ガラスウール製のサンプルパッドを例示することができる。そして、このサンプル用担体、前記金コロイド標識抗体担持体、前記展開支持体、好ましくはこの展開支持体の他端に展開液の吸収する吸収パッド等の吸収体を順次連結することによりイムノクロマト測定用試験片とすることができる。そして、サンプル用担体に測定サンプルをスポットし、ウシ胎児血清を含む展開液に浸漬すると、測定サンプル中のアレルゲンは毛管現象等により移動し、金コロイド標識抗体と結合し、この抗原抗体複合体は展開支持体上をなおも毛管現象等により移動して、金コロイド標識抗体と異なるエピトープを認識する変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体が固定された所定位置で抗原抗体複合体が捕捉されて、所定位置に現れる着色ラインの有無により、アレルゲンを検出することができる。
【0021】
上記変性及び未変性のアレルゲンに対するモノクローナル抗体としては、乳アレルゲンの主要成分としてのαs1カゼイン、ホエーアレルゲンの主要成分であるβラクトグロブリン、卵白アレルゲンとしてのオボアルブミンとオボムコイド、小麦アレルゲンの主要成分としてのグリアジン、そばの主要タンパク質である分子量24kDaと76kDaのタンパク質、落花生の主要タンパク質であるArah1から選ばれる変性及び未変性のアレルゲンを特異的に認識する2種類のモノクローナル抗体を好適に例示することができる。
【0022】
より具体的には、本発明者らにより作製された、抗αs1カゼインモノクローナル抗体として、ハイブリドーマ(FERM−BP−10263)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN1や、ハイブリドーマ(FERM−BP−10264)が産生する抗αs1カゼインモノクローナル抗体Pas1CN2を挙げることができ、抗βラクトグロブリンモノクローナル抗体として、ハイブリドーマ(FERM−ABP−11237)が産生する抗βラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG3や、ハイブリドーマ(FERM−ABP−11238)が産生する抗βラクトグロブリンモノクローナル抗体PβLG4を挙げることができる。ハイブリドーマ(FERM−BP−10263)、及びハイブリドーマ(FERM−BP−10264)は、2005年2月24日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(住所:茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)に受託され、ハイブリドーマ(FERM−ABP−11237)及びハイブリドーマ(FERM−ABP−11238)は、2010年2月22日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(住所:茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)に受領されている。
【0023】
また、ハイブリドーマ(FERM−ABP−11235)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA3や、ハイブリドーマ(FERM−ABP−11236)が産生する抗オボアルブミンモノクローナル抗体PDOA4を挙げることができ、抗オボムコイドモノクローナル抗体として、ハイブリドーマ(FERM−BP−10279)が産生する抗オボムコイドモノクローナル抗体PNOM1や、ハイブリドーマ(FERM−BP−10280)が産生する抗オボムコイドモノクローナル抗体PNOM2や、ハイブリドーマ(FERM−BP−10277)が産生する抗オボムコイドモノクローナル抗体PDOM1や、ハイブリドーマ(FERM−BP−10278)が産生する抗オボムコイドモノクローナル抗体PDOM2を挙げることができる。ハイブリドーマ(FERM−ABP−11235)、及びハイブリドーマ(FERM−ABP−11236)は、2010年2月22日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(住所:茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)に受領され、ハイブリドーマ(FERM−BP−10279)、ハイブリドーマ(FERM−BP−10280)、ハイブリドーマ(FERM−BP−10277)、及びハイブリドーマ(FERM−BP−10278)は、2005年2月24日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(住所:茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)に受託されている。
【0024】
また、抗小麦グリアジンモノクローナル抗体として、ハイブリドーマ(FERM−BP−10267)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL1や、ハイブリドーマ(FERM−BP−10268)が産生する抗小麦グリアジンモノクローナル抗体PGL2を挙げることができる。ハイブリドーマ(FERM−BP−10267)、及びハイブリドーマ(FERM−BP−10268)は、2005年2月24日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(住所:茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)に受託されている。
【0025】
また、抗そばタンパク質モノクローナル抗体として、ハイブリドーマ(FERM−ABP−11241)が産生する抗24kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW5や、ハイブリドーマ(FERM−BP−10273)が産生する抗76kDaタンパク質モノクローナル抗体PBW2を挙げることができる。ハイブリドーマ(FERM−ABP−11241)は、2010年2月22日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(住所:茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)に受領され、ハイブリドーマ(FERM−BP−10273)は、2005年2月24日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(住所:茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)に受託されている。
【0026】
抗落花生Ara h1タンパク質モノクローナル抗体として、ハイブリドーマ(FERM−ABP−11240)が産生する抗未変性Arah1タンパク質モノクローナル抗体PAh1−5や、ハイブリドーマ(FERM−ABP−11239)が産生する抗未変性Ara h1タンパク質モノクローナル抗体PAh1−4を挙げることができる。ハイブリドーマ(FERM−ABP−11240)、及びハイブリドーマ(FERM−ABP−11239)は、2010年2月22日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(住所:茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)に受領されている。
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩で抽出したオボアルブミンの検出]
1.材料及び方法
(1)金コロイド標識抗体の作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPDOA4(FERM−ABP−11236)のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を635μl加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。
【0029】
(2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで4mg/mlとなるようにPDOA3(FERM−ABP−11235)のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%スキムミルクを含むTBSで37℃、1時間ブロッキング後、TBSで洗浄し乾燥させた。
【0030】
(3)イムノクロマトストリップの組立
抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。検出用サンプルには、以下のモデル食肉製品を供試した。
【0031】
1)卵タンパク質の調製
穐山ら(特定原材料(卵)測定の厚生労働省通知ELISA法の複数機関による評価研究.食品衛生学雑誌,44, 2003, 213-219)に従い、市販鶏卵より卵タンパク質を調製した。
【0032】
2)モデル食肉製品
定量試験のためのモデル食品として食肉製品を選択し、表1に示す配合にて各濃度の卵タンパク質を含むモデル食肉製品を作製した。豚赤肉は、豚ロース肉より脂、スジを除去し、5mmで挽肉にしたものを使用した。各配合に従い添加物を計量し、フードプロセッサーにて混合後、塩ビチューブに充填を行った。
【0033】
【表1】
【0034】
3)加熱温度・時間
加熱は、75℃30分加熱したものを用意した。加熱後、フードプロセッサーにて均一としたものを検出用サンプルとした。
【0035】
4)サンプルの前処理
検出用サンプル1gを量り取り、それに抽出液として、0.5%SDSとチオ硫酸ナトリウムが最終濃度で0%〜10.0%含まれるPBSを19ml加え撹拌し、沸騰水中で1時間加熱し、冷却遠心後、上清を測定サンプルとした。
【0036】
(4)イムノクロマトグラフィーによる検出の確認
調製した金コロイド標識抗体を20μl、展開液として牛胎児血清(FBS)を30μl、測定サンプルを50μl加え、イムノクロマトストリップに供試し、検出を確認した。
【0037】
2.結果
次に検出結果を表2に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示すようにチオ硫酸ナトリウム濃度が0%〜5.0%のとき2ppmまで検出され、0.1%〜2.0%では+wと判定され、最も視認性が良かった。0ppmでは非特異反応はなかった。このことから、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例2】
【0040】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤で抽出したオボアルブミンの検出]
1.材料及び方法
1)以下の「加熱温度・時間」、「サンプルの前処理」及び「イムノクロマトグラフィーによる検出の確認」を除いては、実施例1と同様に行った。
2)加熱温度・時間
加熱は、75℃30分と121℃20分加熱したものを用意した。
3)サンプルの前処理
加熱後、フードプロセッサーにて均一としたものを検出用サンプルとした。検出用サンプル1gを量り取り、それに、0.5%SDSを含むPBSを19ml加え撹拌し、沸騰水中で1時間加熱し、冷却遠心後、上清を測定サンプル〔1〕とした。また、測定サンプル〔1〕に最終濃度が0.2%となるようにTween20を加えたものを測定サンプル〔2〕とした。さらに、0.5%SDS及び0.2%Tween20を含むPBSを19ml加え撹拌し、沸騰水中で1時間加熱し、冷却遠心後、上清を測定サンプル〔3〕とした。上記測定サンプル〔2〕は、SDS抽出後にTween20を加えているため、抽出に関与するのではなく、イムノクロマトキットでサンプルを測定する際に、Tween20が存在していることがイムノクトマトキットの感度に関与するかを検討するためのものであり、上記測定サンプル〔3〕は、SDSとTween20を共存させ抽出しているため、抽出効率にTween20が貢献するかを検討するためのものである。
4)イムノクロマトグラフィーによる検出の確認
調製した金コロイド標識抗体を20μl、展開液として牛胎児血清(FBS)を30μl、測定サンプル〔1〕、測定サンプル〔2〕、測定サンプル〔3〕を50μl加え、イムノクロマトストリップに供試し、検出を確認した。
【0041】
2.結果
次に検出結果を表3及び表4に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
表3に示すように75℃30分加熱のモデル食肉製品では全ての測定サンプルで2ppmまで+と判定され、0ppmでは非特異反応はなかった。一方、表4に示すように、121℃20分加熱のモデル食肉製品では測定サンプル〔3〕で2ppmまで+wと判定され、卵タンパク質を2ppmまで検出することができた。0ppmでは非特異反応はなかった。このことから、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例3】
【0045】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩で抽出したカゼインの検出]
1.材料及び方法
(1)金コロイド標識抗体の作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPαs1CN2(FERM−BP−10264)のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を635μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。
【0046】
(2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで4mg/mlとなるようにPαs1CN1(FERM−BP−10263)のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、0.1%牛皮ゼラチンを含むTBSで37℃、1時間ブロッキング後、TBSで洗浄し乾燥させた。
【0047】
(3)イムノクロマトストリップの組立
抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。乳タンパクは穐山らの方法に従い、ホルスタイン種の新鮮乳より調製した。また、検出用サンプルは表5に示す配合のモデル食肉製品を供試し、加熱温度・時間、サンプルの前処理は実施例1と同様の条件で行った。
【0048】
【表5】
【0049】
(4)イムノクロマトグラフィーによる検出の確認
調製した金コロイド標識抗体を20μl、展開液として牛胎児血清(FBS)を30μl、測定サンプルを50μl加え、イムノクロマトストリップに供試し、検出を確認した。
【0050】
2.結果
次に検出結果を表6示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0051】
【表6】
【0052】
表6に示すようにチオ硫酸ナトリウム濃度が0%〜2.0%のとき2ppmまで検出され、0.1%〜1.0%まで+wと判定され、最も視認性が良かった。0ppmでは非特異反応はなかった。このことから、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例4】
【0053】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤で抽出したカゼインの検出]
1.材料及び方法
1)モデル食肉製品の加熱温度・時間、サンプルの前処理、及びイムノクロマトグラフィーによる検出の確認を実施例2と同様の条件で行った他は、実施例3と同様に行った。
【0054】
2.結果
次に検出結果を表7及び表8に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】
表7及び表8に示すように測定サンプル〔3〕で2ppmまで+wと判定され、乳タンパク質を2ppmまで検出することができた。0ppmでは非特異反応はなかった。このことから、測定サンプル〔3〕のように陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を組合わせた抽出方法の場合に最も抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例5】
【0058】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩で抽出したホエーの検出]
1.材料及び方法
(1)金コロイド標識抗体の作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPβLG4(FERM−ABP−11238)のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を635μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。
【0059】
(2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで4mg/mlとなるようにPβLG3(FERM−ABP−11237)のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、0.1%牛皮ゼラチンを含むTBSで37℃、1時間ブロッキング後、TBSで洗浄し乾燥させた。
【0060】
(3)イムノクロマトストリップの組立
抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。乳タンパクは穐山らの方法に従い、ホルスタイン種の新鮮乳より調製した。また、検出用サンプルは表3に示す配合のモデル食肉製品を供試し、加熱温度・時間、サンプルの前処理は前記同様の条件で行った。
【0061】
(4)イムノクロマトグラフィーによる検出の確認
調製した金コロイド標識抗体を20μl、展開液として牛胎児血清(FBS)を30μl、測定サンプルを50μl加え、イムノクロマトストリップに供試し、検出を確認した。
【0062】
2.結果
次に検出結果を表9に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0063】
【表9】
【0064】
表9に示すようにチオ硫酸ナトリウム濃度が0%〜1.0%のとき2ppmまで検出され、0.1%のとき最も視認性が良かった。0ppmでは非特異反応はなかった。このことから、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例6】
【0065】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤で抽出したホエーの検出]
1.材料及び方法
1)モデル食肉製品の加熱温度・時間、サンプルの前処理、及びイムノクロマトグラフィーによる検出の確認を実施例2と同様の条件で行った他は、実施例5と同様に行った。
【0066】
2.結果
次に検出結果を表10及び表11に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0067】
【表10】
【0068】
【表11】
【0069】
表10に示すように、全ての測定サンプルで2ppmまで+wと判定され、乳タンパク質を2ppmまで検出することができた。0ppmでは非特異反応はなかった。表11に示すように、全ての測定サンプルで10ppmまで+と検出することができたが、測定サンプル〔3〕のように陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を組合わせた抽出方法の場合に最も視認性が良かったため、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで、非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例7】
【0070】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩で抽出した小麦タンパク質の検出]
1.材料及び方法
(1)金コロイド標識抗体の作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPGL2(FERM−BP−10268)のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を635μlを加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。
【0071】
(2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで4mg/mlとなるようにPGL1(FERM−BP−10267)のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1.0%牛皮ゼラチンを含むTBSで37℃、1時間ブロッキング後、TBSで洗浄し乾燥させた。
【0072】
(3)イムノクロマトストリップの組立
抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。小麦タンパク質は、穐山らの方法に従い、市販小麦粉末より調製した。また、検出用サンプルは、表12に示す配合のモデル食肉製品を供試し、加熱温度・時間、サンプルの前処理は前記同様の条件で行った。
【0073】
【表12】
【0074】
(4)イムノクロマトグラフィーによる検出の確認
調製した金コロイド標識抗体を20μl、展開液として牛胎児血清(FBS)を30μl、測定サンプルを50μl加え、イムノクロマトストリップに供試し、検出を確認した。
【0075】
2.結果
次に検出結果を表13に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0076】
【表13】
【0077】
表13に示すようにチオ硫酸ナトリウム濃度が0%〜10.0%まで2ppmまで検出され、0%〜5.0%までは+と判定されたが、特に0.1%〜2.0%までが最も視認性が良かった。0ppmでは非特異反応はなかった。このことから、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例8】
【0078】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤で抽出した小麦タンパク質の検出]
1.材料及び方法
1)モデル食肉製品の加熱温度・時間、サンプルの前処理、及びイムノクロマトグラフィーによる検出の確認を実施例2と同様の条件で行った他は、実施例7と同様に行った。
【0079】
2.結果
次に検出結果を表14及び表15に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0080】
【表14】
【0081】
【表15】
【0082】
表14及び表15に示すように全ての測定サンプルで2ppmまで+と判定され、小麦タンパク質を2ppmまで検出することができた。0ppmでは非特異反応はなかった。また、測定サンプル〔3〕のように陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を組合わせた抽出方法の場合に最も視認性が良かったため、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで、非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例9】
【0083】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩で抽出したそばタンパク質の検出]
1.材料及び方法
(1)金コロイド標識抗体の作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPBW2(FERM−BP−10273)のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を635μl加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。
【0084】
(2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで4mg/mlとなるようにPBW5(FERM−ABP−11241)のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%スキムミルクを含むTBSで37℃、1時間ブロッキング後、TBSで洗浄し乾燥させた。
【0085】
(3)イムノクロマトストリップの組立
抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。そばタンパク質は、穐山らの方法に従い、市販そば粉末より調製した。また、検出用サンプルは、表16に示す配合のモデル食肉製品を供試し、加熱温度・時間、サンプルの前処理は前記同様の条件で行った。
【0086】
【表16】
【0087】
(4)イムノクロマトグラフィーによる検出の確認
調製した金コロイド標識抗体を20μl、展開液として牛胎児血清(FBS)を30μl、測定サンプルを50μl加え、イムノクロマトストリップに供試し、検出を確認した。
【0088】
2.結果
次に検出結果を表17に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0089】
【表17】
【0090】
表17に示すようにチオ硫酸ナトリウム濃度が0.1%〜5.0%のとき2ppmまで検出され、特に0.5%と5.0%では+wと判定され最も視認性が良かった。0ppmでは非特異反応はなかった。このことから、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例10】
【0091】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤で抽出したそばタンパク質の検出]
1.材料及び方法
1)モデル食肉製品の加熱温度・時間、サンプルの前処理、及びイムノクロマトグラフィーによる検出の確認を実施例2と同様の条件で行った他は、実施例9と同様に行った。
【0092】
2.結果
次に検出結果を表18及び表19に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0093】
【表18】
【0094】
【表19】
【0095】
表18に示すように75℃30分加熱のモデル食肉製品では測定サンプル〔3〕で2ppmまで+−と判定され、0ppmでは非特異反応はなかった。また、表19に示すように121℃20分加熱のモデル食肉製品では測定サンプル〔3〕で2ppmまで+wと判定され、そばタンパク質を2ppmまで検出することができた。0ppmでは非特異反応はなかった。このことから、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで、非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例11】
【0096】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩で抽出した落花生タンパク質の検出]
1.材料及び方法
(1)金コロイド標識抗体の作製
2mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で1mg/mlとなるようにPAh1−4(FERM−ABP−11239)のMAb溶液を調製した。あらかじめ0.2M炭酸カリウム溶液でpH9.0に調製した金コロイド溶液(シグマ社製)5mlにMAb溶液を500μl加え、室温で30分間反応した後、10%BSA溶液を635μl加え、さらに15分間反応させた。遠心分離を行い、1%BSA溶液でOD525=1.0になるよう調製した。
【0097】
(2)抗体固定化メンブレンの作製
PBSで4mg/mlとなるようにPAh1−5(FERM−ABP−11240)のMAb溶液を調製し、ニトロセルロースメンブレンに直線状に塗布し乾燥させた。その後、1%スキムミルクを含むTBSで37℃、1時間ブロッキング後、TBSで洗浄し乾燥させた。
【0098】
(3)イムノクロマトストリップの組立
抗体固定化メンブレンに加えて、被検液スポット用のガラスウール製サンプルパッド、被検液吸収用のガラスウール製吸収パッドを別途用意し、サンプルパッド、抗体固定化メンブレン、吸収パッドの順にそれぞれ貼り付け、イムノクロマトストリップとした。そばタンパク質は、穐山らの方法に従い、脱脂落花生より調製した。また、検出用サンプルは、表20に示す配合のモデル食肉製品を供試し、加熱温度・時間、サンプルの前処理は前記同様の条件で行った。
【0099】
【表20】
【0100】
(4)イムノクロマトグラフィーによる検出の確認
調製した金コロイド標識抗体を20μl、展開液として牛胎児血清(FBS)を30μl、測定サンプルを50μl加え、イムノクロマトストリップに供試し、検出を確認した。
【0101】
2.結果
次に検出結果を表21に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0102】
【表21】
【0103】
表21に示すようにチオ硫酸ナトリウム濃度が0.1%〜10.0%のとき2ppmまで検出され、特に0.1%〜2.0%までが+wと判定され最も視認性が良かった。0ppmでは非特異反応はなかった。このことから、陰イオン性界面活性剤とチオ硫酸塩を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【実施例12】
【0104】
[イムノクロマトグラフィーによる陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤で抽出した落花生タンパク質の検出]
1.材料及び方法
1)モデル食肉製品の加熱温度・時間、サンプルの前処理、及びイムノクロマトグラフィーによる検出の確認を実施例2と同様の条件で行った他は、実施例11と同様に行った。
【0105】
2.結果
次に検出結果を表22及び表23に示す。判定はラインの強い方から順に+、+w、+−と表記し、陰性を−表記とした。
【0106】
【表22】
【0107】
【表23】
【0108】
表22及び表23に示すように、全ての測定サンプルで2ppmまで+と判定され、落花生タンパク質を2ppmまで検出することができた。0ppmでは非特異反応はなかった。なかでも、測定サンプル〔3〕のように陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を組合わせた抽出方法の場合に最も視認性が良かったため、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤を組合わせた抽出方法の場合に抽出効率が高く、また、展開液にFBSを用いることで、非特異反応がなく、迅速に且つ精度の良いイムノクロマトキットを構築することが可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
乳アレルゲン、卵白アレルゲン、小麦アレルゲン、そばアレルゲン、落花生アレルゲン等の食物アレルゲンを、迅速かつ精度よく検出することのできるイムノクロマト法によるアレルゲンの検出方法やそれに用いることができるイムノクロマト用アレルゲンの検出キットを提供する。