特許第5735422号(P5735422)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735422
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】自動注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   A61M5/20
【請求項の数】22
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-522554(P2011-522554)
(86)(22)【出願日】2009年8月13日
(65)【公表番号】特表2011-530361(P2011-530361A)
(43)【公表日】2011年12月22日
(86)【国際出願番号】GB2009051016
(87)【国際公開番号】WO2010018411
(87)【国際公開日】20100218
【審査請求日】2012年6月7日
(31)【優先権主張番号】0814747.2
(32)【優先日】2008年8月13日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/095,477
(32)【優先日】2008年9月9日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501410160
【氏名又は名称】オウエン マンフォード リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ウォゼンクロフト,ロバート マイケル
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−503637(JP,A)
【文献】 特表2007−509657(JP,A)
【文献】 特表2006−506185(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/066152(WO,A2)
【文献】 特開平07−222799(JP,A)
【文献】 特開平06−233820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動注射デバイスであって、
本体部および前方体部を備えたハウジングを具備し、前記前方体部は、閉塞位置と、使用時に注射筒をハウジングに装填できるようにアクセス可能にする開放位置との間を長手方向に移動可能であり、前記注射筒は、本体と、プランジャと、前記本体の前方端に位置する注射針とを備えており、
さらに、
駆動部材と前記ハウジングに配置された駆動付勢手段とを具備し、前記駆動部材は前記駆動付勢手段に抗して準備位置に移動可能であって、使用時に前記準備位置から解放されたときに、前記注射筒を、前記ハウジングの前方端から注射針を突出させる注射位置へと前方に駆動するとともに、次いで、前記プランジャが前記注射筒に対して相対的に移動するのに従って、前記注射筒から投与分量を放出するように動作可能であり、
さらに、
前記駆動部材を準備位置に解放可能に保持するトリガ手段を具備しており、
当該自動注射デバイスは、前記本体部および前方体部が閉塞位置に移動されるのに従って、前記駆動部材を準備位置に移動させるように動作可能であり、
前記前方体部および前記駆動部材のうちの少なくとも一方が、前記前方体部の閉塞運動が前記駆動部材との係合を生じさせない非動作形態と、前記前方体部の閉塞運動が後方向きの力を前記駆動部材に直接的または間接的に付与して、前記駆動部材を前記準備位置に移動させる動作形態との間を移動可能であり、
前記前方体部が、前記駆動部材の駆動面と協働して移動されるようになっている駆動面を備えており、
外部から操作可能な作動部材が前記本体部に配置されるとともに、前記前方体部の前記駆動面を、付勢部に抗して前記駆動部材の駆動面と側方において係合させるよう付勢するように作動可能である、自動注射デバイス。
【請求項2】
前記前方体部が力を直接的または間接的に付与し、前記前方体部が前記閉塞位置から後方に移動すると前記トリガ手段を解放するように動作可能である、請求項に記載の自動注射デバイス。
【請求項3】
前記前方体部および前記トリガ手段のうちの少なくとも一方が、
前記前方体部の後方への移動が前記トリガ手段との係合を生じさせない非動作形態と、前記前方体部が前記閉塞位置から後方に移動すると前記トリガ手段を解放する動作形態との間を移動可能である、請求項に記載の自動注射デバイス。
【請求項4】
本体部に配置されていて前記前方体部および前記トリガ手段をそれぞれ前記動作形態へと付勢するよう動作可能な外部から操作可能な作動部材をさらに具備する、請求項に記載の自動注射デバイス。
【請求項5】
準備行程を始動させるとともに前記前方体部によって前記トリガ手段を解放できるようにする外部から操作可能な共通の作動部材が付与される、請求項に記載の自動注射デバイス。
【請求項6】
解放可能な安全係止手段をさらに具備し、該安全係止手段が解放される後まで、前記前方体部が後方に移動して前記トリガ手段を解放するのを防ぐ、請求項2から5のいずれか1項に記載の自動注射デバイス。
【請求項7】
注射を完了してから前記前方体部が前方位置に戻ったときに、前記前方体部を後方への移動に対して係止するロック係止手段をさらに具備する、請求項2から6のいずれか1項に記載の自動注射デバイス。
【請求項8】
解放可能な共通の係止手段が付与されていて、注射前において前記前方体部が後方に移動するのを防いで意図しない注射の開始を防ぐとともに、注射後における前記前方体部の後方への移動を防いで注射針を被覆する、請求項6または7に記載の自動注射デバイス。
【請求項9】
前記作動部材および前記係止手段が共通の部材により形成される、請求項に記載の自動注射デバイス。
【請求項10】
前記ハウジングが、前記注射針の長手方向の軸線の両側に離間した2つの突出部を有する関連付けられた注射箇所接触要素を備えていて、使用時において、前記接触要素が使用者の表皮に対して押圧されて、注射軸線の両側の離間した位置において表皮を圧縮し、それにより前記注射箇所において隆起部を生じさせるようになっている、請求項1から9のいずれか1項に記載の自動注射デバイス。
【請求項11】
前記注射箇所接触要素が2つのみの突出部を備える、請求項10に記載の自動注射デバイス。
【請求項12】
前記接触要素が、中央凹部領域と、その両側に前記突出部を形成する2つの凸部領域とを備えたプロフィルを有する、請求項または10に記載の自動注射デバイス。
【請求項13】
圧力が当該自動注射デバイスに付与されるのに従って、前記2つの突出部が互いに向かって移動するようになっていて、それにより、挟持作用を与えて隆起効果を向上させる、請求項10から12のいずれか1項に記載の自動注射デバイス。
【請求項14】
注射デバイスであって、
本体部および長手方向に相対的に移動可能な前方体部を備えたハウジングを具備し、該ハウジングは、使用時に注射筒が該ハウジング内に装填されうるようにアクセスを提供するよう動作可能であり、前記注射筒は、本体と、プランジャと、前記本体の前方端に位置する注射針とを備えており、
さらに、
前記ハウジング内に配置されていて駆動バネ付勢部に抗して準備位置へと移動可能な駆動部材を具備し、該駆動部材は、使用時において前記準備位置から解放されたときに、前記注射針が前記ハウジングの前方端から突出する注射位置へと前記注射筒を前記ハウジング内において前方に駆動するとともに、次いで、前記プランジャが前記注射筒に対して相対的に移動するのに従って、前記注射針から投与分量を放出させるように動作可能であり、
さらに、
前記駆動部材を準備位置に係止するトリガ部を具備しており、
前記前方体部がハウジングバネ付勢部に抗して閉塞位置から注射開始位置へと後方にさらに移動可能であり、前記注射開始位置において前記前方体部は注射開始用係止部を係止解除して、前記駆動部材が前記駆動バネ付勢部の作用を受けて前方への移動を自由にし、
注射の後に前記ハウジングが前記注射箇所から離れて移動するのに従って、前記注射針を被覆するように前記ハウジングバネ付勢部が前記前方体部を閉塞位置に戻るように前方に付勢し、
さらに、
解放可能な安全係止部を具備し、該安全係止部が解放されるまで、該安全係止部は前記前方体部が閉塞位置から後方に移動するのを防止し、
さらに、
前記前方体部を伸長させた被覆位置に係止する係止部を具備しており、
前記前方体部が駆動面を備えており、該駆動面は、前記駆動部材と協働して移動されるようになっており、前記ハウジングが開放位置から閉塞位置まで移動される際に前記駆動部材を準備位置に移動させるようになっており、
始動部材が前記本体部に配置され、前記駆動面を前記前方体部において付勢し、前記駆動部材と側方に係合させる、注射デバイス。
【請求項15】
前記前方体部が、前記閉塞位置から前記注射筒へのアクセスを提供する開放位置まで前記本体部に対して長手方向に移動可能である、請求項14に記載の注射デバイス。
【請求項16】
前記始動部材が当該注射デバイスの動作の異なる段階においても前記安全係止部を係止解除するよう動作可能であるとともに、前記始動部材が、
前記駆動面を前方駆動部において付勢して前記駆動部材と係合させ、
前記前方体部を解放して前記閉塞位置から注射開始位置に移動できるようにするとともに、
注射が完了すると前記前方駆動部をロックするよう動作可能である、請求項14に記載の注射デバイス。
【請求項17】
前記前方体部が、前記本体部に対して入れ子状に移動する摺動可能に取り付けられた単体の要素を備えた、請求項14から16のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項18】
前記単体の前方体部が、前記注射針を被覆する被覆領域と、前記解放可能な安全係止部と協働する係止面と、弾性的に移動可能であって前記駆動部材に係合する駆動面とを備えた、請求項17に記載の注射デバイス。
【請求項19】
前記駆動部材が前記ハウジング内に長手方向に摺動可能に取り付けられており、前記駆動バネ付勢部が少なくとも1つのバネを備える、請求項1から18のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項20】
前記駆動バネ付勢部が2つの共同作用バネを備える、請求項19に記載の注射デバイス。
【請求項21】
前記駆動バネがそれぞれ定力バネを備える、請求項20に記載の注射デバイス。
【請求項22】
前記ハウジングがその前方端において交換可能な先端要素を備えており、接触する前記先端要素が注射の貫通深さを調節するために交換可能である、請求項1から21のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動注射デバイスに関し、限定されないが、特に複数回の使用が意図された自動注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ての自動注射デバイスが一般的であるが、自動注射デバイスが使用者または臨床医によって再使用されるように設計される場合も多く、環境意識の理由からその頻度はより一層高まっている。自動注射デバイスが再使用されるものである場合には、注射筒の装填、準備、注射開始および注射筒の取外しが、広範な潜在的使用者により簡易かつ堅実になされることと、意図しない操作に対する安全手段が形成されていることとが重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の一態様によれば、自動注射デバイスであって、
本体部および前方体部を備えたハウジングを具備し、前記前方体部は、閉塞位置と、使用時に注射筒をハウジングに装填できるようにアクセス可能にする開放位置との間を長手方向に移動可能であり、前記注射筒は、本体と、プランジャと、前記本体の前方端に位置する注射針とを備えており、
さらに、
駆動部材と前記ハウジングに配置された駆動付勢手段とを具備し、前記駆動部材は前記駆動付勢手段に抗して準備位置に移動可能であって、使用時に前記準備位置から解放されたときに、前記注射筒を注射位置へと前方に付勢するとともに前記注射筒から投与分量を放出するように動作可能であり、
さらに、
前記駆動部材を準備位置に解放可能に保持するトリガ手段を具備しており、
当該自動注射デバイスは、前記本体および前方ハウジング部が閉塞位置に移動されるのに従って、前記駆動部材を準備位置に移動させるように動作可能である、自動注射デバイスが提供される。
【0004】
この態様において当該自動注射デバイスの好適な配列体は、注射筒を挿入するために開放され、次いで駆動機構部を準備するために閉塞されうる。
安全性に係る特徴を付与するために、前記前方ハウジング部および前記駆動部材のうちの少なくとも一方が、前方ハウジング部の閉塞運動が前記駆動部材との係合を生じさせない非動作形態と、前記前方ハウジング部の閉塞運動が後方向きの力を前記駆動部材に直接的または間接的に付与して、前記駆動部材を前記準備位置に移動させる動作形態との間を移動可能であるのが好ましい。
したがって、前記前方ハウジング部が、前記駆動部材の駆動面と協働して移動されるようになっている駆動面を備えてもよい。
【0005】
外部から操作可能な作動部材が本体部に配置されるとともに、前記駆動面を付勢部に抗して側方に係合させるよう付勢するように作動可能であってもよい。
便宜上、前記前方ハウジング部が力を直接的または間接的に付与し、前記前方ハウジング部が前記閉塞位置から後方に移動すると前記トリガ手段を解放するように動作可能である。
再び安全のために、前記前方ハウジング部および前記トリガ手段のうちの少なくとも一方が、前記前方ハウジング部が後方に移動して前記トリガ手段を係合させることを防ぐ非動作形態と、前記前方ハウジング部が前記閉塞位置から後方に移動すると前記トリガ手段を解放する動作形態との間を変更可能であってもよい。
【0006】
外部から操作可能な作動部材が本体部に配置されていて、前記前方ハウジング部および前記トリガ手段をそれぞれ前記動作形態に切り替えるよう動作可能であってもよい。
2つの機能を有する作動部材が形成され、準備行程を始動させるとともに前記前方ハウジング部の後方に向かう動きを自由にして前記トリガ手段を解放するようにしてもよい。
この安全性に係る特徴は、解放可能な安全係止手段を付与することによって与えられてもよく、該安全係止手段が解放される後まで、前記前方ハウジング部が後方に移動して前記トリガ手段を解放するのを防ぐ。
【0007】
さらに、注射後に注射針が被覆されるのを保証するために、注射を完了してから前記前方ハウジング部が前方位置に戻ったときに、前記前方ハウジング部を引込み手段に対して係止するロック係止手段が付与されうる。
両方の係止機能は、共通の解放可能な係止手段によって行われうる。実際に、特に好適な配列体においては、共通の作動部材および係止手段が付与されうる。
【0008】
注射を容易にするために、前記ハウジングが、前記注射針の長手方向の軸線の両側に離間した2つの突出部を有する関連付けられた注射箇所接触要素を備えていて、使用時において、前記接触要素が使用者の表皮に対して押圧されて、注射軸線の両側の離間した位置において表皮を圧縮し、それにより前記注射箇所において隆起部を生じさせるようになっていてもよい。
好ましくは、前記注射箇所接触要素は2つのみの突出部を備えており、前記接触要素が、中央凹部領域と、その両側に前記突出部を形成する2つの凸部領域とを備えたプロフィルを有する。一配列体において、圧力が当該自動注射デバイスに付与されるのに従って、前記2つの突出部が互いに向かって移動するようになっていて、それにより、挟持作用を与えて隆起効果を向上させる。
【0009】
別の態様において、本発明は、自動注射デバイスであって、
本体部を備えていて駆動機構部を含むハウジングと、
閉塞位置と、自動注射サイクルのために注射筒を装填できるようにアクセス可能にされる開放位置との間を長手方向に移動可能な前方体部とを具備し、
前記ハウジングを閉塞することにより前記自動注射サイクルのために前記駆動機構部を付勢するよう動作可能であり、前記前方体部が前記閉塞位置を越えて後方に移動することにより前記駆動機構部を解放する、自動注射デバイスを提供する。
【0010】
当該自動注射デバイスは、外部から操作可能な作動部材をさらに含み、該作動部材が、
前記前方体部と前記駆動機構部内の準備移動体との間における負荷経路の係合および係合解除のうちの少なくとも一方と、
前記前方体部と前記駆動機構部のトリガ部との間における負荷経路の係合および係合解除のうちの少なくとも一方と、
前記トリガ部を解放する前において前記前方体部が後方に移動するのを防止することと、これを可能にすることとのうちの少なくとも一方と、
前記注射動作の完了後において被覆位置から前方駆動部が後方に移動するのを防止することと、これを可能にすることとのうちの少なくとも一方と、
のうちの少なくとも1つに影響を与えるよう動作可能であるのが有利である。
【0011】
他の態様において、本発明は、注射デバイスであって、
本体部および長手方向に相対的に移動可能な前方体部を備えたハウジングを具備し、該ハウジングは、使用時に注射筒が該ハウジング内に装填されうるようにアクセスを提供するよう動作可能であり、前記注射筒は、本体と、プランジャと、前記本体の前方端に位置する注射針とを備えており、
さらに、
前記ハウジング内に配置されていて駆動バネ付勢部に抗して準備位置へと移動可能な駆動部材を具備し、該駆動部材は、使用時において前記準備位置から解放されたときに、前記注射針が前記ハウジングの前方端から突出する注射位置へと前記注射筒を前記ハウジング内において前方に付勢するとともに前記注射針から投与分量を放出させるように動作可能であり、
さらに、
前記駆動部材を準備位置に係止するトリガ部を具備しており、
前記前方体部がハウジングバネ付勢部に抗して閉塞位置から注射開始位置へと後方にさらに移動可能であり、前記注射開始位置において前記前方体部は注射開始用係止部を係止解除して、前記駆動部材が前記駆動バネ付勢部の作用を受けて前方への移動を自由にし、
注射の後に前記ハウジングが前記注射箇所から離れて移動するのに従って、前記注射針を被覆するように前記ハウジングバネ付勢部が前記前方体部を閉塞位置に戻るように前方に付勢し、
さらに、
解放可能な安全係止部を具備し、該安全係止部が解放されるまで、該安全係止部は前記前方体部が閉塞位置から後方に移動するのを防止し、
さらに、
前記前方体部を伸長させた被覆位置に係止する係止部を具備する、注射デバイスを提供する。
【0012】
前記前方体部が、前記閉塞位置から前記注射筒へのアクセスを提供する開放位置まで前記本体部に対して長手方向に移動可能であるのが好ましい。前記前方ハウジング部が駆動面を備えており、該駆動面は、前記駆動部材と協働して移動されるようになっており、前記ハウジングが開放位置から閉塞位置まで移動される際に前記駆動部材を準備位置に移動させてもよい。作動部材が前記本体部に配置され、前記駆動面を前記前方体部において付勢し、前記駆動部材と側方に係合させてもよい。
【0013】
前記作動部材が当該注射デバイスの動作の異なる段階においても前記安全係止部を係止解除するよう動作可能であるとともに、前記作動部材が、
前記駆動面を前方駆動部において付勢して前記駆動部材と係合させ、
前記前方体部を解放して前記閉塞位置から注射開始位置に移動できるようにするとともに、
注射が完了すると前記前方駆動部をロックするよう動作可能であってもよい。
【0014】
前記前方体部が、前記本体部に対して入れ子状に移動する動可能に取り付けられた単体の要素を備えるのが好ましい。前記単体の前方体部が、前記注射針を被覆する被覆領域と、前記解放可能な安全係止部と協働する係止面と、弾性的に移動可能であって前記駆動部材に係合する駆動面とを備えていてもよい。前記駆動部材が前記ハウジング内に長手方向に動可能に取り付けられており、前記駆動バネ付勢部が少なくとも1つのバネを備えるのが好ましい。前記駆動バネ付勢部が2つの共同作用バネを備えるのが好ましく、これら共同作用バネは、それぞれ定力バネを備えるのが有利である。
便宜上、前記ハウジングがその前方端において交換可能な先端要素を備えており、接触する前記先端要素が注射の貫通深さを調節するために交換可能である。
【0015】
他の態様において、本発明は、注射デバイスであって、
注射針を前方端に有する注射筒を使用時に受容するようになっているハウジングと、
バネ付勢部に抗して準備位置に移動可能であるとともに前記注射筒を前方位置に付勢して投与分量を放出させるように使用時に解放可能である、駆動部材と、
前記駆動部材を準備位置に係止するトリガ部と、
前方領域に被覆部を有していて前方位置と後方位置との間を移動可能な作動部材と、
前記作動部材を前方位置に付勢する作動部材付勢手段と、
前記作動部材は、使用時に後方位置に移動されたときに、注射開始用係止部を解放して前記駆動部材の移動を自由にするようになっており、
前記作動部材は、その後に前記作動部材付勢手段の作用を受けて前方位置に戻るように前方に移動可能であり、前記注射針が前記前方位置に在るときに、被覆領域が用いられて前記注射針を被覆する、注射デバイスを提供する。
【0016】
他の態様において、本発明は、注射デバイスであって、
注射針を備えていて、該注射針を通じて投与分量が送達され、
さらに、
前記注射針に隣接する皮膚接触面を備えており、該皮膚接触面は注射針の長手方向の軸線の両側に離間する2つの突出部を備えており、該突出部は、使用時に接触要素が皮膚に対して押圧されるとき、表皮空間位置を圧縮して注射箇所において隆起部を生じさせるようになっている、注射デバイスを提供する。
【0017】
さらに他の態様において、本発明は、自動注射デバイスであって、
注射筒を受容するハウジングを備えており、該ハウジングは、前記注射筒を注射位置へと前方に付勢して投与分量を前記注射筒から放出させるように解放可能な駆動機構部を有しており、該駆動機構部は前記ハウジング内を動するように取り付けられるとともに2つの定力バネ配列体による作用を受ける駆動部材を備える、自動注射デバイスを提供する。
【0018】
以上、本発明について述べたが、本発明は、以上の記載、以下の記載または特許請求の範囲に係る任意の発明の組合せ、または特徴部分に係る下位概念の任意の組合せに及ぶ。
本発明は種々の態様で実施されうるものであり、その実施形態を例示の目的のみのために添付図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】閉塞されているときの注射デバイスの頂部側斜視図である。
図2】注射筒を挿入するために開放されているときの注射デバイスの頂部側斜視図である。
図3】閉塞されているときの底部側斜視図である。
図4】注射デバイスの分解図である。
図5(a)】頂部カバーが取り除かれていて、準備状態において閉塞されているときの注射デバイスを示す図である。
図5(b)】係止機構部を示す詳細図である。
図6】多機能ボタンが押し下げられるとともに引出部の後方部分が駆動部材と係合されるように付勢されている、準備動作を開始する際における注射デバイスを示す図、その詳細図、および詳細断面図である。
図7】注射デバイスの部分組立図である。
図8】下方体が取り除かれていてボタンと引出部との相互作用を示す、注射デバイスを下方から見た図である。
図9】使用者の皮膚に付与されたときにおける、注射デバイスの先端部の広い接触面積による効果を示す概略図である。
図10(a)】注射箇所において挟持動作を能動的に与えるように形成された先端部の変形例の概略断面図である。
図10(b)】注射箇所において挟持動作を能動的に与えるように形成された先端部の変形例の概略断面図である。
図11(a)】図1図8の注射デバイスを操作する際における逐次の段階を表す図である。
図11(b)】図1図8の注射デバイスを操作する際における逐次の段階を表す図である。
図11(c)】図1図8の注射デバイスを操作する際における逐次の段階を表す図である。
図11(d)】図1図8の注射デバイスを操作する際における逐次の段階を表す図である。
図11(e)】図1図8の注射デバイスを操作する際における逐次の段階を表す図である。
図11(f)】図1図8の注射デバイスを操作する際における逐次の段階を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず図1図4を参照すると、本発明の再使用可能な自動注射器は、注射筒および注射針キャップの長さよりもそれほど大きくない長さを有する薄型で小型の閉塞された矩形の形態を有するように形成されている。
符号10により概ね示される自動注射器は、下方ケーシング部14と上方ケーシグ部16とにより構成される本体部12を備えていて、引出部、すなわち前方体部18を動可能に受容するように一端において開放された概ね矩形体を形成している。先端部品20が引出部18の前方端に形成されている。この先端部品は、注射深さについて多数の選択肢を与えるように交換可能であってもよい。典型的には、注射深さは8mm、10mmまたは12mmの貫通深さでありうる。ハウジングの下側には、図3および図4に示されるように、前方に延在する一体のアーム24を有していて下方ケーシング部14において揺動するように取り付けられた多機能ボタン22が形成されている。
【0021】
より具体的に図4を参照すると、引出部18は横向きのメインウェブ26を備えており、円筒部28がこのメインウェブ26から前方に延在している。指パッド32を備えた2つのバネアーム30は、円筒部28の前端からまず側方に、次いで後方に延在しており、これら指パッド32は先端部品20に形成された開口34に対して位置合せされる。バネアーム30の後方端において、バネアーム30は返し部33において終端しており、これら返し部33は、本体部12の内方縁36内部に位置する当接面の後方に係止し、引出部をその閉塞位置において解放可能に係止する。2つの側方ウェブ38がメインウェブ26から後方に延在しており、これら側方ウェブ38の間には、側方ウェブ38の後部まで十分に延在する底面40が形成されている。この実施形態における引出部は単体のプラスチック成形品から一体に形成されている。この底面において側方ウェブ38の後部近傍には、後述する態様で多機能ボタン22のアーム24と協働する係止開口42が形成されている。
【0022】
下方ケーシング部14から直立する回動柱46を受け入れる切欠きが、底面40の後方端に形成されている。上方に突出したリブ48は、底面40の離間した縁部から切欠き部44の両側に直立している。圧縮バネ50は引出部18の円筒部28の内部において動可能に受容されており、一部円筒状の注射筒移動体51の前方端は、後述するように注射筒が導入されうるよう切除されている。引出部18は、下方体ケーシングに形成されたポケット内部に受容されていて引出部のメインウェブ26に対して作用する1対の引出バネ52によって前方に付勢されており、通常、返し33はハウジングに形成された縁部36に係合するように引出部18を前方に押している。
【0023】
駆動部材54が下方ケーシング部14に動可能に取り付けられており、駆動部材54の前方の移動範囲は駆動部材に形成されたホーン(horn)56によって制限されており、これらホーン56は下方ケーシング部14に形成された内部リブ58にそれぞれ当接する。駆動部材は、1対の定力バネ配列体によって下方ケーシング部に対して前方に付勢されている。これら1対の定力バネ配列体は、駆動部材に回転可能に取り付けられたドラム58をそれぞれ備えており、定力バネ60がドラム58の周りに巻かれていて、定力バネ60の穿孔された自由端は、ペグ62により下方ケーシング部14に固定されている。1対の定力バネ配列体を用いることによって、駆動部材にかかる負荷が対称になるとともに要求されるバネの寸法を小さくできるので、それによってより平坦でかつより小型の配列体が得られる。下方ケーシング部14には「投与終了」開口が形成されていてもよく、駆動部材54が完全に前方位置に在るとともにホーン56が当接部58に隣接しているときのみ、駆動部材54の一部がこの開口を通じて視認できる。駆動部材54にはT字形の係止部66と協働する係止開口64が形成されており、係止部66は回動柱46において回動するように取り付けられている。係止開口64に係合する返し付きの係止面が係止部66のT字形の基部に形成されていて、定力バネ60により与えられる付勢部に抗して駆動部材を準備位置に解放可能に保持する。係止部66の交差する肢部のうちの一方が下方ケーシング部14において固定されていて、返し68を係止位置に対して付勢する弾性付勢部70として作用する。係止部の交差する部分の他方は当接面72を有しており、この当接面72は、多機能ボタン22によって適切に上方に変形されたときに引出部の後端に位置するリブ48のうちの一方によって係合可能である。
【0024】
ここで図11(a)〜図11(f)を参照して、注射デバイスの操作について説明する。指パッド32を押し込んで、返し33を縁部36との係合から引き外すとともに、引出部を前方に引っ張ることによって、注射デバイスを図1および図3に示される閉塞位置から開放位置に移動させ、注射筒移動体51にアクセスできるようにする(図11(a))。そして注射筒を移動体51内に挿入するとともに所定の位置に押し込めるようになる(図11(b))。この際に、注射針キャップが先端部品20に形成された鍵穴形の開口21により捕捉され、したがって、注射筒が移動体バネ50の付勢部に抗して引出部において前方に保持される(図11(c))。注射針キャップが取り外されたとき、注射筒がバネ弾性により戻って注射デバイス内部に拘束されるようになって、それにより注射針を被覆するようになる。
【0025】
注射デバイスを準備するために多機能ボタン22を押圧すると、次いで引出部の底面40が下方ケーシング部14の対向する表面から離れて押圧され、それにより、リブ48が駆動部材54の横面に位置合せされるようになる。これと同時に、注射デバイスは平坦面において押し下げられて(図11(d))、引出部18を本体へと押し戻し、それと同時に、駆動部材54が係止部66によって準備位置において係止されるまで駆動部材54を後方に押す。引出部が閉塞位置に戻る際に、返し33が内方縁36を越えて移動し、引出部が前方に移動するのを防ぐ。それと同時に、多機能ボタン22のアーム24が、引出部18の底面40に形成された係止開口42において係止して、後方に移動するのを防ぐ。多機能ボタン22を押圧することと、駆動部材54を後方に移動させて係止するために先端部を安定した表面に対して押すこととの両方を組み合わせた動作なくして注射デバイスが準備されえないことに留意されたい。
【0026】
注射デバイスによる注射を開始するために、注射デバイスを注射箇所まで供給し(図11(e))、2つの機能を働かせるために多機能ボタン22を押し下げる。第1の機能において、アーム24を係止窪み42から起こし、そして引出部が注射開始位置に向かってハウジング内に戻れるようにする。第2の機能において、引出部の底面40を下方ケーシング部の内面から離れて再び起こして、それにより、図4に示される右手の後方リブ48がトリガ部の当接面に位置合せされるようになり、そして引出部が最も後方の位置に到達するのに従って、係止部66を揺動させ、したがって駆動部材54を解放する。駆動部材は定力バネの作用を受けて移動し、まず注射筒を前方に駆動するとともに、その後にプランジャが注射筒に対して移動するのに従って投与分量を放出する。多機能ボタン22が押圧されて引出部の底面40が上方に起こされない限り、リブ48は当接部72の下方を単に通過し、したがって係止解除しないことに留意すべきである。したがって、この実施形態は、注射できるようにするために、引出部が後方に移動するのを解放するためのみならず、リブ48が解放当接部に係合することをも保証するために、多機能ボタン22に持続的な圧力が付与されることを要求する。
【0027】
注射が完了してから使用者が圧力を本体部から解放するとき、引出部18は、引出部バネ52の作用を受けて初期位置へと前方に戻り、その際に、注射筒の注射針を被覆する。停止位置に近づくのに従って、指部24が引出部の係止開口42に再び係止し、したがって引き込む動きに対して引出部を効果的にロックするとともに、注射針が被覆されたままであることを保証する。
最後に、注射デバイスを取り外すために、指パッド32を押圧して引出部を前方に移動させ、除去される注射筒へのアクセスできるようにする。
【0028】
図9および図10を参照すると、注射筒を用いた(自動注射器を用いない)皮下注射を施す従来の注射方法は、注射箇所に位置する表皮を挟持するとともに、挟持された皮膚のひだ(fold)の中央部に注射針を挿入することからなる。こうすることにより、或る深さを皮下層に形成して、注射針が下方の筋肉層に進入しないことを保証するとともに、皮膚下に作用する圧力を和らげて、それにより薬剤を注入し易くする。幾つかの公知のタイプの自動注射器を用いると、注射デバイスのうちの皮膚と接触する表面領域は、典型的には比較的小さく、注射軸線のすぐ隣りに位置する。したがって、かかるデバイスは、圧力によって皮下層を実際に薄くするとともに、特に接触面積が小さい場合において皮膚下の圧力を増大する効果を有しうる。しかしながら、本実施形態においては、先端部20は、先端部20が注射箇所と接触する箇所において湾曲した「w」のプロフィルを有していて、注射軸線の両側に2つの突出部72を形成している点に留意されたい。注射軸線の両側に対して離間した2つの位置に圧力を付与することによって、皮下層に注射するときに一般的に利用される挟持動作に類似した効果を奏する。
この接触面は、本明細書において説明された実施形態以外の異なる注射デバイスの多くの変形例においても使用されうることが認識されるであろう。
【0029】
図10(a)および図10(b)はこの技術の変形例を説明する。この変形例において、注射接触面の突出部は、静的な構成に代えて、可撓性を有するアームの端部に形成されており、これら突出部は、圧力がこれらアームに付与されるのに従って接触面が一体に移動する傾向を有するように構成されており、したがって挟持する効果を向上させる。よって、これらの図面において、内方に向いていて圧力が付与されるのに従って内方に丸まるように形成された湾曲した接触面を備えた2つのL字形の部材がハウジングの前方端に形成されている。
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6
図7
図8
図9
図10(a)】
図10(b)】
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図11(d)】
図11(e)】
図11(f)】