(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735464
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】電子機器およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/36 20060101AFI20150528BHJP
B41J 29/46 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
B41J2/36 Z
B41J29/46 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-172140(P2012-172140)
(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-30946(P2014-30946A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2013年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】服部 大祐
【審査官】
名取 乾治
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−181165(JP,A)
【文献】
特開2002−103757(JP,A)
【文献】
特開2012−056087(JP,A)
【文献】
特開2009−094886(JP,A)
【文献】
特開平09−300711(JP,A)
【文献】
特開2012−073793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/36
B41J 29/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱印字媒体に対して印字を行うサーマルプリンタに対して印字条件設定用のサンプルコードを印字するコード印字手段と、
前記サーマルプリンタから印字出力された前記サンプルコードを読取装置にて読み取った撮像画像を受信する画像受信手段と、
前記撮像画像より前記サンプルコードの用紙幅方向の印字幅と、前記サンプルコードの用紙送り方向の印字幅と、前記サンプルコードのコントラストと、を評価して印字品質の検証を実施する検証手段と、
前記印字品質の検証に基づいて濃度設定値および印字速度を含む印字パラメータを決定する決定手段と、
決定された前記印字パラメータを前記サーマルプリンタへ出力する出力手段と、
を備え、
前記検証手段は、用紙送り方向の印字幅では前記サンプルコードに尾引が生じて前記サンプルコードが基準より大きく印字され、用紙幅方向の印字幅では前記サンプルコードが基準より小さく印字されている場合、発色特性の低い印字用紙が使用されていると判断し、
前記決定手段は、前記印字パラメータの内、前記印字速度を基準値よりも小さくする、
電子機器。
【請求項2】
コンピュータを、
感熱印字媒体に対して印字を行うサーマルプリンタに対して印字条件設定用のサンプルコードを印字するコード印字手段と、
前記サーマルプリンタから印字出力された前記サンプルコードを読取装置にて読み取った撮像画像を受信する画像受信手段と、
前記撮像画像より前記サンプルコードの用紙幅方向の印字幅と、前記サンプルコードの用紙送り方向の印字幅と、前記サンプルコードのコントラストと、を評価して印字品質の検証を実施する検証手段と、
前記印字品質の検証に基づいて濃度設定値および印字速度を含む印字パラメータを決定する決定手段と、
決定された前記印字パラメータを前記サーマルプリンタへ出力する出力手段と、
として機能させ、
前記検証手段は、用紙送り方向の印字幅では前記サンプルコードに尾引が生じて前記サンプルコードが基準より大きく印字され、用紙幅方向の印字幅では前記サンプルコードが基準より小さく印字されている場合、発色特性の低い印字用紙が使用されていると判断し、
前記決定手段は、前記印字パラメータの内、前記印字速度を基準値よりも小さくする、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
店舗などに設置されるPOS(Point Of Sales)端末においては、売上処理に伴って取引単位でのレシート発行などを行うプリンタ(例えば、サーマルプリンタなど)が内蔵または外部接続されている。
【0003】
サーマルプリンタは、サーマルヘッドに電流を印加することにより発熱させて感熱印字媒体である印字用紙に印字を行う。このような印字を実施する際の各種パラメータ(印加エネルギや印字速度等)は、特定の印字用紙(メーカ認定やメーカ推奨を受けている印字用紙)を基準に設定されている。したがって、メーカ認定やメーカ推奨を受けている印字用紙が使用される場合には、最適な印字結果を得ることができる。
【0004】
近年、このようなPOS端末に内蔵または外部接続されるサーマルプリンタにおいては、メーカ認定やメーカ推奨を受けていない印字用紙が使用されることがある。このような認定外や推奨外の印字用紙は、認定された印字用紙と比較して発色特性が悪いことが多い。このように発色特性が悪いと、印字結果が薄くなる、または濃くなるばかりでなく、濃度が適していてもコードシンボルの印字において歪みが生じてコードスキャナによる読み取りが不能などの印字不良を起こす場合がある。
【0005】
また、サーマルプリンタの中には、複数の印字濃度の段階ごとに通電時間を設定して試し印字を行うことにより、希望する印字濃度を容易に設定することができる濃度調整機能を備えているものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、発色特性が悪い認定外や推奨外の印字用紙を使用する際に、上述のような濃度調整機能を用いてサーマルプリンタの発色濃度を上げることや、印字速度を変更することなどが考えられる。
【0007】
しかしながら、上述のような濃度調整機能においては、目視での判断によって印字濃度を設定するようにしているため、場合によっては発色濃度を上げすぎることとなり、サーマルヘッドに対して過剰にエネルギが印加される事によって、サーマルヘッドを更に劣化させてしまうおそれがある。
【0008】
さらに、サーマルプリンタにおいて印字速度を変更できるような場合であっても、目視での判断によって印字速度を設定するようにしているため、最適な設定値を得ることは難しくなっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の電子機器は、コード印字手段と、画像受信手段と、検証手段と、決定手段と、出力手段と、を備える。前記コード印字手段は、感熱印字媒体に対して印字を行うサーマルプリンタに対して印字条件設定用のサンプルコードを印字する。前記画像受信手段は、前記サーマルプリンタから印字出力された前記サンプルコードを読取装置にて読み取った撮像画像を受信する。前記検証手段は、前記撮像画像より前記サンプルコード
の用紙幅方向の印字幅と、前記サンプルコードの用紙送り方向の印字幅と、前記サンプルコードのコントラストと、を評価して印字品質の検証を実施する。前記決定手段は、前記印字品質の検証に基づいて
濃度設定値および印字速度を含む印字パラメータを決定する。前記出力手段は、決定された前記印字パラメータを前記サーマルプリンタへ出力する。
そして、前記検証手段は、用紙送り方向の印字幅では前記サンプルコードに尾引が生じて前記サンプルコードが基準より大きく印字され、用紙幅方向の印字幅では前記サンプルコードが基準より小さく印字されている場合、発色特性の低い印字用紙が使用されていると判断し、前記決定手段は、前記印字パラメータの内、前記印字速度を基準値よりも小さくする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるPOS端末の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、POS制御部の機能を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、サーマルプリンタの濃度調整および速度調整処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、サンプルコードが印字されたレシート例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる電子機器およびプログラムの最良な実施の形態を詳細に説明する。本実施形態は、電子機器として店舗などに設置されるPOS(Point Of Sales)端末を適用したものである。なお、電子機器としては、POS(Point Of Sales)端末に限るものではなく、サーマルプリンタを内蔵または外部接続する各種の電子機器を適用可能である。
【0012】
図1は、実施形態にかかるPOS端末1の構成を示すブロック図である。POS端末1は、店舗の精算場所に配設されてキャッシャが売上処理を行うためのものであり、
図1に示すような構成とされている。POS端末1は、制御の主体となるPOS制御部2を備え、バス19を介して接続された通信インタフェース20から、LAN(図示せず)を介して相互にオンライン通信を実行し得るように構成されている。
【0013】
POS制御部2には、バス19およびI/O機器制御部21を介して、キーボード12、タッチパネルを併設した表示器14、クレジットカード等の磁気カード(図示せず)の読み取りを行うためのカードリーダ15、例えば2次元コードなどを光学的に読み取るための読取装置であるコードスキャナ16とともに、サーマルヘッド(図示せず)を搭載したサーマルプリンタ22およびハードディスクドライブ装置(HDD)18が接続されている。サーマルプリンタ22は、POS端末1の本体内に内蔵されたレシート/ジャーナルプリンタであり、売上処理に伴い、取引単位で感熱印字媒体である印字用紙に印字してレシートを発行するとともに、並行して印字用紙へのジャーナル印字を行うものである。なお、サーマルプリンタ22は、POS端末1に内蔵されるものであっても良いし、外部接続されるものであっても良い。コードスキャナ16は、撮像方式によって例えば2次元コードなどの撮像画像を出力するものである。
【0014】
POS制御部2は、各部を集中的に制御するCPU(Central Processing Unit)、ファームウェア等の制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えている(いずれも図示せず)。
【0015】
また、HDD18には、POS制御部2のCPUを動作させるOS(Operating System)やプログラムが格納されている。
【0016】
次に、HDD18に格納されたアプリケーションがPOS制御部2のCPUに実行させる機能について説明する。なお、従来から行なわれている処理と同様の処理についてはその説明を省略する。ここでは、サーマルプリンタの濃度調整および速度調整処理について説明する。
【0017】
図2に示すように、POS制御部2のCPUが実行するHDD18に格納されたプログラムは、コード印字手段31,画像受信手段32,検証手段33,決定手段34,出力手段35を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはPOS制御部2のCPUがHDD18からプログラムを読み出して実行することにより上記各部がRAM上にロードされ、コード印字手段31,画像受信手段32,検証手段33,決定手段34,出力手段35がRAMに生成されるようになっている。
【0018】
コード印字手段31は、感熱印字媒体である印字用紙に対して印字を行うサーマルプリンタ22に対して印字条件設定用のサンプルコード(
図4参照)の印字命令を出力する。
【0019】
画像受信手段32は、サーマルプリンタ22から印字出力されたサンプルコードをコードスキャナ16にて読み取った撮像画像を受信する。
【0020】
検証手段33は、撮像画像よりサンプルコードの仕様に従った印字品質の検証を実施する。決定手段34は、印字品質の検証に基づいて印字パラメータを決定する。
【0021】
出力手段35は、決定された印字パラメータをサーマルプリンタ22へ出力する。
【0022】
図3は、サーマルプリンタの濃度調整および速度調整処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示すように、キーボード12のキー操作などにより濃度調整および速度調整モードが選択されると、POS制御部2(コード印字手段31)は、POS端末1に接続されているサーマルプリンタ22の濃度調整機能で設定可能な濃度のサンプルコードを複数種類生成し(ステップS1)、サーマルプリンタ22に対して複数のサンプルコードの印字命令を出力する(ステップS2)。
【0023】
サーマルプリンタ22においては、印字命令に従った複数のサンプルコード(2次元コード)を印字用紙に指定された濃度設定にてそれぞれ印字して、レシートと同様に発行する。
【0024】
なお、発色特性が悪い認定外や推奨外の印字用紙に対する濃度調整を行なう場合には、認定外や推奨外の印字用紙を予めサーマルプリンタ22にセットしておくことは言うまでもない。
【0025】
図4は、サンプルコードが印字されたレシート例を示す平面図である。
図4に示すレシートRには、サーマルプリンタ22の濃度調整機能で設定可能な濃度のサンプルコード(2次元コード)SCが印字されている。なお、精度を高めるために、サンプル数を増やすようにしても良い。また、サンプルコードは1次元のバーコードであっても良い。
【0026】
次いで、POS制御部2(画像受信手段32)は、POS端末1に接続されているコードスキャナ16で印字発行されたレシートRに印字されたサンプルコードSCが読み取られた(サンプルコードSCの撮像画像を受信した)と判断すると(ステップS3のYes)、サンプルコードSCの撮像画像をそれぞれ記憶する(ステップS4)。
【0027】
続いて、POS制御部2(検証手段33、決定手段34)は、サンプルコードSCの撮像画像を使用してサンプルコードSCの仕様に従った印字品質の検証を実施し(ステップS5)、ステップS5での印字品質の検証に基づいて最適な印字パラメータを決定する(ステップS6)。
【0028】
ここで、印字品質の検証手法について説明する。本実施形態においては、印字品質の検証として、例えば印字拡張(X:用紙幅方向の印字幅)、印字拡張(Y:用紙送り方向の印字幅)、コードのコントラストを評価するものとする。コードのコントラストの評価は、コードシンボルの中で明暗が十分明瞭であるか測定するものである。具体的には、グレースケールイメージを用いて、測定エリアの最も高い反射率と最も低い反射率を測定し、その差をコードのコントラストの評価とする。
【0029】
ここで、検証例の一例を示す。
・印刷拡張(X) :−0.2(基準値0)
・印刷拡張(Y) :+0.15(基準値0)
・コードのコントラスト:50(基準値100)
と検証結果を得たとする。この場合、用紙送り方向の印字幅(Y)では2次元コードを構成するセルに尾引が生じて基準より大きく印字され、用紙幅方向の印字幅(X)は熱伝導性が悪く2次元コードを構成するセルが基準より小さく印字されている為、POS制御部2は、発色特性の低い印字用紙(熱の応答特性が悪い印字用紙)が使用されていると判断する。このように判断した場合、POS制御部2は、印字パラメータの内、印字速度を例えば基準値の80%とする。また、上記検証結果では、コードのコントラストが低い為、POS制御部2は、印加エネルギが足りないと判断し、印字パラメータの内、印加エネルギを例えば基準値の110%とする。
【0030】
なお、用紙幅方向の印字幅(X)および用紙送り方向の印字幅(Y)の両方で2次元コードを構成するセルが基準より小さく印字されている場合は、POS制御部2は、印加エネルギが足りないと判断する。また、用紙幅方向の印字幅(X)および用紙送り方向の印字幅(Y)の両方で2次元コードを構成するセルが基準より大きく印字されている場合は、POS制御部2は、印字速度が遅いと判断する。
【0031】
最後に、POS制御部2(出力手段35)は、ステップS6で最適値とされた印字パラメータをサーマルプリンタ22へ出力する(ステップS7)。
【0032】
一方、印字パラメータを受信したサーマルプリンタ22は、受信した印字パラメータを適用して印字を行う。なお、サーマルプリンタ22は、受信した濃度設定値を自動的にパラメータ設定するものに限るものではない。例えば、ステップS6で最適値とされた濃度設定値をサーマルプリンタ22で印字出力し、ユーザが印字出力された濃度設定値を見ながらサーマルプリンタ22に対してパラメータ設定するようにしても良い。
【0033】
このように、実施形態のPOS端末1によれば、目視で読み取ったものではなく、コードスキャナ16が読み取ったコードシンボル(2次元コード)の撮像画像に基づいて印字品質の検証を実施するようにしたので、コードスキャナ16にとって的確な情報を得ることができることにより、認定外や推奨外の印字用紙が使用された場合であってもサーマルプリンタ22の印字パラメータが最適値に設定されるので、最適な印字品質を得ることができるとともに、サーマルプリンタ22のサーマルヘッドに対して過剰なエネルギが印加されることを防止し、サーマルヘッドの劣化を防止することができる。
【0034】
本実施形態のPOS端末1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0035】
また、本実施形態のPOS端末1で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のPOS端末1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0036】
本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 電子機器
16 読取装置
22 サーマルプリンタ
31 コード印字手段
32 画像受信手段
33 検証手段
34 決定手段
35 出力手段
SC1〜SC4 サンプルコード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2004−358785号公報