特許第5735514号(P5735514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735514
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】コイル冷却を伴う水力発電タービン
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20150528BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   H02K9/19 Z
   H02K7/08 Z
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-530296(P2012-530296)
(86)(22)【出願日】2010年9月29日
(65)【公表番号】特表2013-506393(P2013-506393A)
(43)【公表日】2013年2月21日
(86)【国際出願番号】EP2010064477
(87)【国際公開番号】WO2011039267
(87)【国際公開日】20110407
【審査請求日】2013年9月9日
(31)【優先権主張番号】09171671.2
(32)【優先日】2009年9月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511144343
【氏名又は名称】オープンハイドロ アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】アイヴズ,ジェームス
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−544265(JP,A)
【文献】 特表2009−543971(JP,A)
【文献】 特表2012−512354(JP,A)
【文献】 特開2009−161003(JP,A)
【文献】 特開2006−189014(JP,A)
【文献】 特開2008−274787(JP,A)
【文献】 特表2003−501996(JP,A)
【文献】 特開2009−185770(JP,A)
【文献】 実開昭56−027366(JP,U)
【文献】 特開平10−178754(JP,A)
【文献】 特開2008−014246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力発電タービンであって、前記タービンが、それらの間に隙間を画定するように配置されたステータおよびロータと、1つ以上のベアリングと、前記ステータまたは前記ロータの一方に固定されたある配列の磁石と、前記ステータまたは前記ロータの他方に固定された対応する配列のコイルと、前記タービンの動作中に前記コイルを冷却するための冷却手段とを備え、前記ベアリングが、軸方向荷重を支承するための円形配列のベアリング・ブロックを備え、前記ベアリング・ブロックのうちの1つ以上の前縁または前面が、前記ロータと前記ステータとの間の相対的な回転の間に前記隙間を通る水流を促進するように特殊輪郭形状になっている、水力発電タービン。
【請求項2】
前記冷却手段が、前記コイルを冷却するために前記ステータおよび前記ロータの間の隙間に存在する水を利用するように適合されている、請求項1に記載の水力発電タービン。
【請求項3】
前記冷却手段が、前記コイルから熱を伝達するために、前記コイルに接触する水流を促進するように適合されている、請求項1または2に記載の水力発電タービン。
【請求項4】
前記ステータおよび前記ロータの間の隙間の両側に対向するように前記コイルおよび前記磁石が配置され、前記冷却手段が、前記隙間を通る水流を促進するための1つ以上のガイドを備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の水力発電タービン。
【請求項5】
前記1つ以上のガイドが前記ロータに固定されている、請求項4に記載の水力発電タービン。
【請求項6】
前記1つ以上のガイドが、前記1つ以上のベアリングと一体形成される、請求項5に記載の水力発電タービン。
【請求項7】
前記コイルが、前記ステータに取り付けられ、前記冷却手段が、前記ステータ内で前記コイルを貫通するように形成された1つ以上のチャネルを備え、前記1つ以上のチャネルが、水が貫通することができるように両端で前記ステータおよび前記ロータの間の隙間に存在する水に開口している、請求項1乃至6のいずれかに記載の水力発電タービン。
【請求項8】
前記水力発電タービンが潮流中に配置され、前記1つ以上のチャネルが、前記潮流の方向に沿って延びるように方向付けされる、請求項に記載の水力発電タービン。
【請求項9】
前記1つ以上のチャネルの両端が、前記ステータの同じ側または同じ面に配置される、請求項に記載の水力発電タービン。
【請求項10】
前記磁石配列の隣接する磁石間に隙間が設けられる、請求項1乃至9のいずれかに記載の水力発電タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電タービン、詳細には、潮汐エネルギーを利用して電気を発生させるために潮汐のある場所に配設する、性能および/または信頼性を向上させるように改変された水力発電タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーの領域では、近年、地球温暖化および関連する他の問題による脅威により、大幅な進歩が見られ、大規模な資源および投資が、新規のまたは改良された形態の再生エネルギーを開発するように向けられている。将来性が大きいある特定の領域は、潮汐エネルギーの利用、具体的には海底に配設した水力発電タービンを使用することによる潮汐エネルギーの利用にある。これらのタービンは、環境への影響も他の欠点もなく、安定したエネルギーを運ぶために本質的に1日24時間運転することができる。
【0003】
しかし、潮汐エネルギーの利用には、独自の難点、具体的には、潮汐力ジェネレータの、例えば、水力発電タービンの設置およびメンテナンスに関する難点がある。水力発電タービンは、その動作の本来の性質により、潮流が比較的速い位置に、高い確率で海底に配置しなければならない。さらに、経済的に存続可能であるためには、これらのタービンを大規模に構築しなければならない。その結果、タービンおよび関連のベース/支持体は、大型で扱いにくい構成要素になり、配設およびメンテナンスのための回収を実行するには非常に重い持上げ輸送設備が必要になる。こうした重い持上げ設備の使用は、通常、危険を伴う作業であり、この設備が海で困難かつ不安定な状況で動作するときはさらに危険になる。その結果、回収プロセスは、完了するのに時間がかかることがある。さらに、タービンを海底に配置するので、タービンの損傷をチェックするためにタービンの継続的な視覚モニタリングを実装することは、通常不可能であるか、または少なくとも経済的に適していない。したがって、これらの水力発電タービンが比較的単純な機械であり、したがって信頼性が高く、その作動構成要素の作動寿命が非常に長いことが非常に望ましい。
【0004】
最も損傷を受け易い構成要素の一つは、電磁回路に使用されるコイルであり、コイルは、いくつかの理由で過熱し不具合が生じる恐れがあり、タービンの電磁回路および場合によっては他の領域の両方に損傷を与える可能性がある。それにより、少なくともタービンの出力が低下し、タービンが全体的に停止するかまたは動作不能になることがあり、したがって、タービンの回収および修理が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記で言及した問題を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、ステータおよびロータと、ステータまたはロータの一方に固定されたある配列の磁石と、ステータまたはロータのもう一方に固定された対応する配列のコイルと、タービンの動作中にコイルを冷却する手段とを備える水力発電タービンが提供される。
【0007】
好ましくは、冷却手段は、コイルを冷却するために周りの水を利用するように適合されている。
【0008】
好ましくは、冷却手段は、コイルから熱を伝達するために、コイルを通り越すかまたはそれに近接する水流を促進するように適合されている。
【0009】
好ましくは、ステータおよびロータは、それらの間に隙間を画定するように互いに関して配置され、その隙間の両側に対向するようにコイルおよび磁石が配置され、冷却手段は、隙間を通る水流を促進するようにように適合されたガイドを1つまたは複数備える。
【0010】
好ましくは、1つまたは複数のガイドはロータに固定されている。
【0011】
好ましくは、1つまたは複数のガイドは、タービンの1つまたは複数のベアリングと一体形成される。
【0012】
好ましくは、それらのベアリングは、軸方向荷重を支承する円形配列のベアリング・ブロックを備え、1つまたは複数のベアリング・ブロックの前縁または前面は、ロータとステータとの間の相対的な回転の間に隙間を通る水流を促進するように特殊輪郭形状になっている。
【0013】
好ましくは、コイルは、ステータに取り付けられ、冷却手段は、ステータ内でコイルに近接して通り越すように形成された1つまたは複数のチャネルを備え、1つまたは複数のチャネルは、水が貫通できるように両端で周りの水に開口している。
【0014】
好ましくは、水力発電タービンが潮流に配置され、1つまたは複数のチャネルは、実質的に潮流の方向に沿って延びるように方向付けされる。
【0015】
好ましくは、1つまたは複数のチャネルの両端が、ステータの同じ側または同じ面に配置される。
【0016】
好ましくは、磁石配列の隣接する磁石間に隙間が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1の実施形態による水力発電タービンの概略断面図を示す。
図2図1に示すタービンの斜視図を示す。
図3】本発明によるタービンの代替的実施形態の概略図を示す。
図4】本発明による水力発電タービンのさらなる代替的実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、添付の図面の図1および図2を参照すると、全体を10で示す、水力発電タービンの第1の実施形態が示されており、これは、タービン10の電磁回路の一部を成す電磁石コイル(図示せず)を冷却するように適合されている。
【0019】
タービン10の主な構成要素はステータ12であり、ステータ12内にはロータ14が回転するように取り付けられている。当技術分野でよく知られているように、タービン10は、通常、ステータ12およびロータ14のうちのいずれかに、ある配列のコイル(図示せず)が設けられ、ステータ12およびロータ14のうちのもう一方に、対応する配列の磁石(図示せず)が設けられるように構成されている。コイルおよび磁石は、ステータ12とロータ14との間の隙間16の両側に対向して配置される。ロータ14は外側リム18および内側リム20を備え、それらの間に、ある配列のブレード22が取り付けられている。外側リム18は、事実上ステータ12に囲繞され、したがって、隙間16の分だけ離間している。タービン10の動作中には、ステータ12とロータ14との間の相対移動により、磁石およびコイルが互いを通り過ぎてコイルに電流を誘導し、次いでその電流が任意の適切な手法でタービン10から抽出される。タービン10のコイルを電流が流れることでコイルに熱が発生し、熱レベルが高いと、コイルの効率が低くなり、コイルまたは周りの構成要素の損傷するリスクが高くなる。
【0020】
したがって、本発明のタービン10は、コイルを冷却するために、したがって確実に安定して効率的に動作させるために、上記で言及したコイルを通り越してまたはそれに近接する水流を誘導するように適合されている。外側リム18に、ある配列のベアリング・ブロック24が設けられ、それらのベアリング・ブロック24は互いに協働して、動作中のステータ12とロータ14との間の接触を防止するために、それらの間に径方向の主なベアリングを画定する。ベアリング・ブロック24のうちの少なくとも一部、好ましくは全てが、タービン10の冷却手段を成し、したがって、ステータ12に関してロータ14が回転する間は、コイルを冷却するために水が隙間16を通るように適合されている。ベアリング・ブロック24は、傾斜したまたは特殊輪郭形状の前縁26を備え、その前縁26は、周りの水を上に押しやってベアリング・ブロック24上を通って隙間16を通るように促すように働く。タービン10の外側リム18または任意の他の部分に追加のベーン(図示せず)または面の構成を、ベアリング・ブロック24のこうした機能を改善または強化するために設けることができる。さらに、磁石配列の隣接する磁石は、互いにわずかに離間しており、隣接する磁石間のこの隙間が、隙間16を通る水流の促進を助ける。
【0021】
次に図3に移ると、全体を110で示す、本発明による水力発電タービンの代替的実施形態が示されている。この代替的実施形態では、同様の構成要素は、同様の参照番号が付されており、別段の指定がない限り同様の機能を実行する。タービン110はこの場合もステータ112およびロータ114を備え、そのロータ114は、ステータ112に関して回転するように取り付けられている。ステータ112およびロータ114は隙間116の分だけ離れており、その隙間は周囲の水に開口している。ロータ114は外側リム118および内側リム120を備え、それらの間には、円形配列のブレード122が取り付けられている。ある配列のコイル30が、ステータ112に取り付けられ、隙間116を介して外側リム118に面している。したがって、対応する配列の磁石(図示せず)が、外側リム118に取り付けられる。
【0022】
タービン110はさらに、ステータ112に形成されたチャネル32の形態の冷却手段を備え、そのチャネル32は、水が内部を貫通できるようにステータ112の一方の側からもう一方の側に延びる。チャネル32は、コイル30から熱を引き抜くために水がチャネル32を貫通できるように、コイルの後面に近接するように配置される。したがって、この実施形態は、水がチャネル32を通して押しやられず、単純に潮流の影響でチャネル32を通るときに、コイル30のパッシブ冷却を行う。しかし、チャネル32を通して水を能動的に押しやるかまたはポンプ輸送する手段を設けることもできることが理解されよう。こうしたポンプ輸送手段に、タービン110によって生成された動力から、機械式にまたは電気的に動力を供給することもできる。
【0023】
次に図4に移ると、全体を210で示す水力発電タービンのさらなる代替的実施形態が示されている。やはりこの実施形態でも、同様の構成要素は、同様の参照番号が付されており、別段の指定がない限り同様の機能を実行する。タービン210はステータ212およびロータ214を備え、それらは互いに隙間216の分だけ離れている。ロータ214は外側リム218および内側リム220を備え、それらの間に、円形配列のブレード222が取り付けられている。
【0024】
ステータ212内には1対のチャネル232が形成されており、そのチャネル232は実質的にU字形であり、各チャネル232の両端が、ステータ212の同じ面に開口している。チャネル232は、コイル(図示せず)の後ろに近接した位置まで延びて、タービン210の動作中のコイルからの熱伝達を最大にする。チャネル232は、チャネル232の有効長さを増大し、したがってその熱伝達能力を改善するために、部分的にまたは完全に形状が螺旋形でよい。
【0025】
したがって、本発明のタービン10、110、210が、単純であるが効果的な、動作中にコイルから熱を引き抜く手段を提供することが理解されよう。冷却手段は、概して、追加の可動部品を必要とせず、したがって、タービン10、110、210の単純さ、よってその信頼性が維持される。
図1
図2
図3
図4