(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ジメチルシランの熱分解が層(102)におけるものであり、当該層(102)は第1部分(104)と第2部分(106)を含み、当該第1部分と第2部分は当該層(102)内の分子により画定されている、請求項1記載のコーティング(101)。
前記官能化した層(110)が前記不飽和炭化水素に結合したR基を含み、当該R基が炭化水素、置換された炭化水素、カルボニル、カルボキシル、エステル、アミン、アミド、スルホン酸、有機金属錯体、及びエポキシドからなる群より選択される、請求項7記載のコーティング(101)。
前記官能化(206)を、前記ジメチルシランの熱分解(204)によりもたらされた当初のカルボシランの被着から残存している水素化ケイ素部分と表面を反応させることにより行う、請求項16記載の方法(200)。
【背景技術】
【0003】
基材の表面に所望の性能特性がないということはよくあることである。所望される特定の性能特性がないと、一部の環境において表面が劣化すること、一定の性能要件を満たすことができないこと、あるいはそれらを併発することになりかねない。例えば、一部の環境において、金属、ガラス及びセラミックの表面は、例えば化学吸着、触媒活性、腐食性の攻撃、酸化、副生物の蓄積又は付着、及び/又はその他の不所望の表面活性といったような、不所望の表面活性の影響を受けやすい。
【0004】
不所望の表面活性は、他の分子の化学吸着、他の分子の可逆的及び不可逆的物理吸着、他の分子との触媒反応性、外来種からの攻撃、表面の分子崩壊、あるいはそれらの組み合わせを引き起こしかねない。
【0005】
不所望の表面活性から表面を保護するために、コーティングを適用することがある。表面にコーティングを付着させる一つの既知の方法が、化学気相成長である。化学気相成長は、管理された雰囲気と温度条件のもとで蒸気から固体物質を所定時間被着させてコーティングを形成する。化学気相成長は、所定の分子を追加するために、一次処理とそれに続く官能化(表面反応)を含むことができる。
【0006】
一定の所望される性能特性を提供するために、表面に非晶質の水素化ケイ素を被着させることができ、そして不飽和炭化水素反応物を反応させて基材表面を改質することができる。しかし、非晶質ケイ素を基にした化学気相成長材料は高pHの苛性媒体による溶解の影響を受けやすく、それによりそれらの用途が制限される。これらの材料は、衝撃又は滑動摩耗を伴う環境で効果的に使用するのに十分耐摩耗性でなく、あるいは硬質でない。その上、不飽和炭化水素でのケイ素材料の官能化には、大抵の場合金属触媒の使用が必要である。このような方法は、処理された系からこの触媒を完全に除去するのが多くの場合困難であり、且つ触媒が存在することは不所望の表面活性を再びもたらしかねないという欠点に悩まされる。
【0007】
ケイ素、炭素及び水素を含む分子は、これまで化学気相成長の前駆物質として使用するのには好ましくないと考えられており、あるいは、例えばプラズマ及びマイクロ波の作用する場などの追加の被着エネルギーの存在下で他の化学気相成長の前駆物質とともに利用されてきた。よって、そのような分子に関連した特性は、熱化学気相成長技術を通じてこれまで知られていなかった。
【発明を実施するための形態】
【0023】
従来技術の欠点に悩まされることのない化学気相成長コーティング、化学気相成長物品、及び化学気相成長方法が提供される。例えば、コーティング、物品、及び方法の実施形態は、ケイ素、炭素及び水素を含む分子を利用することができる。一つの実施形態では、追加の金属触媒なしに、追加の残留触媒活性なしに、及びそれらの組み合わせなしに、方法を使用することができる。一つの実施形態では、方法は、不活性、耐薬品性、及び/又はその他の望ましい特性を実質的に低下させることなく、硬さを増加させる。本開示により形成された代表的なコーティングは、官能性、不活性、適応性、疎水性、耐腐食及び/又は耐付着性、硬さ、耐摩耗性、又はそれらの組み合わせを変更することができる。
【0024】
図1を参照すれば、代表的実施形態による基材100は、基材100に所望の表面効果を付与する層102を制御下に被着させることにより得られた改善された表面特性を有する表面105、コーティング101、物品103、又はそれらの組み合わせを含むことができる。コーティング101は、化学気相成長(例えば、ジメチルシランの分解でカルボシランを生成する)とそれに続く酸化(例えば、空気酸化でカルボシランを生成する)及び/又は官能化(例えば、ヒドロシランと不飽和炭化水素とで官能化カルボシランを生成する)によって形成される。
【0025】
所望の表面効果の付与は、層102及び/又はコーティング101の基材100の表面105への拡散により表面105の性能を向上させることができる。層102は、任意の適当な基材に適用することができる。例えば、基材100は金属基材(鉄の又は非鉄の)、ガラス基材、あるいはセラミック基材であることができる。
【0026】
代表的な実施形態では、層102はジメチルシランの熱分解により形成される。ジメチルシランを熱的に分解させることによって、層102は、活性部位であることができるケイ素、炭素及び水素原子を含む分子を含む。層102内のこれらの分子は第1部分104と第2部分106を含むことができる。一般に、第1部分104と第2部分106は空間的に分離することができない(例えば、第1部分104と第2部分106は層102に被着した分子により画定され、そしてこれらの分子は層102の全体にわたり散在することができる)。更に、「第1」及び「第2」との用語を用いることは、2つの部分間の何らかの逐次性、量の違い、大きさの違い、あるいはそのほかの区別を意味することを意図するものではない。例えば、一つの実施形態において、第1部分104はケイ素を含み、そして第2部分106は炭素を含む。一つの実施形態において、第1部分104と第2部分106は層102の全体にわたりランダムに一緒に結びつけられている。
【0027】
図2は、代表的実施形態による層102及び/又はコーティング101の基材100への拡散を説明するものである。予め選択された表面へジメチルシランを適用することによって、耐薬品性が向上し、不活性が向上し、非拡散コーティングへの密着性が向上した。
図2は、炭素を含む第1部分104とケイ素を有する第2部分106とを有する層102に対応している。具体的には、
図2は、基材100及び/又は物品103内の層102の構成を、層102のオージェ電子分光の測定によって示している。
【0028】
一つの実施形態では、ジメチルシランを15時間熱的に分解させて非晶質カルボシランとして被着させる。この実施形態において、層102は約130nmまで達し、そしてOの濃度が上昇しCとSiの濃度が低下していること(例えば少なくとも4倍だけ)を基に特定可能な拡散領域108の一部分を含む。層102の範囲は、約0.1μm〜約3.0μmの間であることができる。拡散領域108は、約5nmと500nmの間であることができる。一つの実施形態では、拡散領域108は約20nmである。層102の組成は、約1:0.95:0.12の比のC:Si:Oである(5nmから120nmまでの深さに酸素が少量存在するのはバックグラウンドノイズと微量の汚染物のせいと思われる)。対照的に、化学気相成長室へ導入されたジメチルシランの組成は、C:Si比が約2:1である。CH
x(x=0〜3)部分が保持され、そしてSi−C結合が切れて、層102がSi−C結合の非晶質の配列及び/又は多結晶微細構造を含むことを示しているものと思われる。非晶質の配列は、減少した割れ又は剥離(例えば基材100に作用する張力又は圧縮力による)及び/又は増加した密着性などのような追加の利点を提供する。一つの実施形態においては、多層のコーティング101又は同様のコーティングを、より厚い層として又は所望の特性のために被着させる。
【0029】
図3は、官能化した層110を有する代表的実施形態を示している。官能化した層110は、水素化ケイ素の部分を不飽和炭化水素(例えば式H
2C=CH−R及び/又はHC≡C−Rを有する)と熱的に反応させることで形成され、層102の第1部分の全部又は一部に結合したR基を含む。R基は、1以上の不飽和炭化水素基を有する任意の好適な有機反応物により生成させることができる。R基は、炭化水素、置換炭化水素(例えばハロゲン化した)、カルボニル、カルボキシル、エステル、アミン、アミド、スルホン酸、有機金属錯体、及び/又はエポキシドにより生成させてもよい。
【0030】
図4は、基材を用意すること(工程202)とジメチルシランを熱的に分解すること(工程204)を含む層102を形成するための代表的な化学気相成長法200を示している。基材を用意する(工程202)のは、任意の好適な処理方法により行うことができる。例えば、
図5を参照すると、基材を用意すること(工程202)は、化学気相成長室内に基材を隔離すること(副次工程208)、基材を予熱すること(副次工程210)、成長室を不活性ガスでフラッシュすること(副次工程212)、そして成長室を排気すること(副次工程214)を含むことができる。
【0031】
基材を隔離すること(副次工程208)は、成長室内の不活性雰囲気中で行われる。ガスの流動及び/又は室内の真空の維持が、管理された雰囲気をもたらすことができる。熱源が成長室内の温度を制御して、基材表面から水を脱着し残留している汚染物質を除去することができる(副次工程210)。例えば、処理すべき基材を、ガスが化学気相成長室に流入しそこから流出するのを可能にするための管継手を備えた化学気相成長室内に入れることができる。成長室は、複数のガスの流れを供給し取り出すように構成された複数の管理された入口と出口を含むことができる。真空を1以上の出口管に接続してもよい。
【0032】
基材の清浄度に応じて、約100℃より高い温度、約1気圧未満の圧力で、数分から約15時間までの範囲の間加熱すること(副次工程210)によって基材を準備してもよい。一般に、加熱の温度は基材100の特性に対応する。一つの実施形態では、時間は約0.5〜約15時間である。別の実施形態では、基材を約450℃で約2時間加熱する。真空下での準備後に、成長室を不活性ガスで選択的にフラッシュし(副次工程212)、排気(副次工程214)することができる。
【0033】
方法200は、ジメチルシランを熱的に分解させること(工程204)を含む。一般に、ジメチルシランは需要が少ないため簡単には入手できない。ジメチルシランは、炭素を含むため、一部の化学気相成長用途では好ましくないと見なされている。それは、通常の技術により適用されると耐摩耗性がより小さいコーティングを生じさせることが分かっており、またシランよりもはるかに高価である。シランと、ジメチルシランのモノメチル類縁物質、すなわちメチルシランは、ともに自然性であり、空気中で爆発することがある。ジメチルシランは、可燃性ではあるが、自然性ではない。よって、ジメチルシランを使用することは安全性のリスクを低減することができる。その上、ジメチルシランを用いるとコーティングの不活性及び/又は耐薬品性が増加する結果となって、基材の表面を保護することができる。
【0034】
図6を参照すると、ジメチルシランの熱分解(工程204)は、ジメチルシランを分解するのに十分な所定の圧力と温度でジメチルシランを成長室内へ導入すること(副次工程216)、分解に由来する成分を基材100上に被着させること(副次工程217)、所定の時間基材をコーティングして所定の厚さを得ること(副次工程218)、及び/又は成長室からジメチルシランをパージすること(副次工程220)、を含む。参照することによりその全体がここに組み入れられる、米国特許第6444326号明細書に記載されているように、典型的な処理条件は、約0.01psia〜約200psiaの間である圧力を含むことができる。温度は約200℃と600℃の間でよい。時間は約10分〜約24時間でよい。
【0035】
一つの実施形態では、導入(副次工程216)されるジメチルシランは気体の形のジメチルシランを含む。一つの実施形態では、基材をジメチルシランガスに、約
1.0psia
(絶対圧6.9kPa)と約100psia
(絶対圧690kPa)の間の圧力、約300℃と600℃の間の温度で、約30分〜約24時間の間、暴露する。代表的実施形態では、基材100をジメチルシランガスに約400℃と約500℃の間の温度で約15時間暴露する。ジメチルシランガスの圧力は約5psia
(絶対圧34kPa)と約40psia
(絶対圧280kPa)の間でよい。
【0036】
その後ジメチルシランを熱分解させて、H、C、Si、及びそれらの組み合わせを含む分子フラグメントにし、これらの成分を基材100上に被着させて(副次工程217)、それによりジメチルシランの分解に由来するケイ素、炭素、及び水素を含む材料でコーティング102を形成する(副次工程218)。ジメチルシランガスは、減圧下で又は、分圧希釈剤としての例えば窒素、ヘリウム及び/又はアルゴンなどの不活性ガスとともに、反応室へ導入することができる。理論に束縛されることを意図するわけではないが、ジメチルシランは熱分解してカルボシリルフラグメントを生じさせ、それらが再結合して基材表面に結びつくものと思われる。その結果得られたコーティングは、基材表面でも、そしてまた成長室の露出表面でも、炭素、ケイ素及び水素を有する非晶質のカルボシランを含むものと考えられる。被着された物質はまた、オージェ電子分光法の深さ方向のプロファイル(
図2、拡散領域108)でもって例示されているように基材100の表面105へ拡散して、基材100への密着の様式を支援する。より厚い付着層が求められる場合には、被着条件を変更する。これは、温度、圧力、時間、又はそれらの組み合わせを変更することによりなされる。工程204を繰り返すことにより複数の層を適用することもできる。
【0037】
層102(
図1と
図2を参照して更に説明される)を形成したなら、追加の工程を行うことができる。一つの実施形態では、層102は次に、
図7を参照して下記で更に説明するように官能化されて(工程206)、官能化した層110を形成する。一つに実施形態では、層102(例えば非晶質カルボシラン)を、
図8を参照して下記で更に説明するように酸化して(工程205)、酸化した層802(例えば非晶質カルボキシシラン)を形成する。一つの実施形態では、官能化した層110(例えば官能化した非晶質カルボシラン)を、
図9を参照して下記で更に説明するように酸化して、官能化しその後酸化した層804(例えば官能化した非晶質カルボキシシラン)を形成する。一つの実施形態では、酸化した層802を官能化する。
【0038】
一つの実施形態において、方法200は、
図3を参照して先に簡単に検討したように、基材100の層102を官能化して(工程206)官能化した層110を形成することを更に含む。
図7を参照すると、基材100の層102を官能化する(工程206)のは、最初のカルボシランの分解に起因して残存している水素化ケイ素部分との反応によって行うことができる。基材上へのカルボシランの被着(工程204)に続いて、系を不活性ガスでパージし(これは副次工程220のパージでもよく、あるいは別のパージ工程でもよい)、その間に反応室を所定の官能化温度に設定することができる(副次工程232)。このパージでは、基材表面に結合していない気体のカルボシラン部分及び/又は未反応のジメチルシラン部分を除去する。パージと温度の設定(副次工程232)後に、成長室を排気する(副次工程234)。
【0039】
次に、結合剤を、成長室内の所定の温度及び圧力で成長室へ導入する(副次工程236)。一つの実施形態では、推進力として熱を用いることで、結合剤がカルボシリル表面と反応し水素化ケイ素部分を介してそこに結合する。結合剤の例は、エチレン、プロピレン、及び置換された不飽和有機分子である。水素化ケイ素の残留部分は、加熱下で(例えば約400℃で)H
2C=CH−R及び/又はHC≡C−Rと反応させることができる。R基は、炭化水素、置換炭化水素(例えばハロゲン化したもの)、カルボニル、カルボキシル、エステル、アミン、アミド、スルホン酸、有機金属錯体、及び/又はエポキシドにより生成させることができる。
【0040】
一つの実施形態では、結合剤分子をその後基材に結合させる(副次工程240)。コーティングは、R基との炭素−ケイ素共有結合を含むことができる。R基を変性して表面の特性を調整することができる。例えば、R基を変性して表面の疎水性を調整することができる。表面の疎水性を調整するために、R基はフッ素化炭化水素であることができる。フッ素化炭化水素は、疎水性及び/又は親油性の表面を形成することができる。その上に又はそれとは別に、R基は、触媒又は殺菌特性をもたらす有機金属置換基を含むことができる。理論により束縛されることを意図するわけではないが、水素化ケイ素の部分は不飽和炭化水素基とヒドロシリル化のメカニズムにより熱的に反応して、コーティングした基材の表面に共有結合するものと考えられる。反応室内の全ての露出表面上に結果として生じたコーティングは、R基と炭素、ケイ素及び水素の部分とを含む共有結合したR基を含む。
【0041】
一つの実施形態では、方法200は更に、
図3を参照して先に簡単に説明したように、基材100の層102を酸化して(工程205)酸化した層802を形成することを含む。別の実施形態では、官能化した層110を酸化させる。層102は、所定の酸化条件下で反応性の酸素種を層102へ提供することができる任意の好適な化学種へ暴露することにより酸化される。例えば、その化学種は水、酸素、空気、亜酸化窒素、オゾン、過酸化物、及びそれらの組合せでよい。一般に、酸化はコーティング101の大部分に影響を及ぼすバルク反応である。この酸化は、成長室内の温度を上昇又は降下させ、成長室内での露出時間を増減し、希釈ガスの種類及び/又は量、圧力、及び/又はその他の処理条件を変更することで制御することができる。酸化の制御は、酸化の量及び/又は深さを増減することができ、かくして表面の耐摩耗性及び/又は硬さを増減することができる。一つの実施形態では、層102を水に暴露する(例えば、約100〜200psiaの圧力、約450℃の不活性ガス中で約2時間)。一つに実施形態では、官能化した層110を水に暴露する(例えば、約100〜200psiaの圧力、約450℃の不活性ガス中で約2時間)。
【0042】
酸化は、酸化を制御することにより鉄系金属表面、非鉄系金属表面、及び/又はガラス表面のカルボシラン及び官能化したカルボシランを基礎材料とする化学気相成長法材料の硬さ及び/又は耐摩耗性を向上させる。
図8を参照すると、一つの実施形態では、層102は、酸化されて酸化された層802としてのカルボキシシランの非晶質層を形成するカルボシランの非晶質層である。
図9を参照すると、一つの実施形態では、官能化した層110は、酸化されて官能化したカルボシランの非晶質層を形成し、それが酸化されて酸化された層802としての官能化したカルボキシシランの非晶質表面を形成する、官能化したカルボシランの非晶質層である。
【0043】
一つの実施形態では、酸化(工程205)は亜酸化窒素(N
2O)を用いて行われる。具体的に言うと、カルボシランでコーティングした試料を入れた容器内にて加熱下(例えば約450℃)でN
2Oを実質的に純粋なN
2Oの圧力で適用する。この実施形態では、酸化(工程205)は過剰に酸化して、この過剰の酸化により約60°の接触角が得られ、N−H、Si−OH、及び/又はC−OH原子団の量が増加し、比較的弱い耐引っかき性を有するに至る。
【0044】
一つの実施形態では、酸化(工程205)はオゾンを用いて行われる。この実施形態においては、酸化(工程205)は耐摩耗性を低下させ、耐薬品性を低下させ、耐引っかき性を低下させ、硬さを低下させ、そして耐酸性/耐食性を増加させるものと考えられる。
【0045】
一つに実施形態では、酸化された層802は、酸化剤として水(のみ)を用いて形成される(例えば、約100℃〜約600℃の温度範囲内で、約300℃〜約600℃の温度範囲内で、又は約450℃の温度で)。この実施形態においては、酸化(工程205)は、Siウエハ上で約86.6°の接触角をもたらし、摩擦を低下させ(空気及び水の酸化用反応物を使用するのと比較して)、耐摩耗性を低下させ(例えば、空気及び水の酸化用反応物を使用するのと比較して)、そしてSi−O−Si原子団を生成する。
【0046】
もう一つに実施形態では、酸化層802を空気と水を含む酸化用反応物を用いて形成する(例えば、約100℃〜約600℃の温度範囲内で、約300℃〜約600℃の温度範囲内で、又は約450℃の温度で)。この実施形態においては、酸化(工程205)は過剰に酸化して、C−H原子団の量を減少させ(例えば、酸化用反応物として水だけを使用するのと比較して)、Si−C原子団の量を減少させ(例えば、酸化用反応物として水だけを使用するのと比較して)、そしてSi−OH/C−OH原子団の量を増加させる(例えば、酸化用反応物として水だけを使用するのと比較して)。
【0047】
もう一つに実施形態では、酸化層802を空気(のみ)を用いて形成する(例えば、約100℃〜約600℃の温度範囲内で、約300℃〜約600℃の温度範囲内で、又は約450℃の温度で)。この実施形態においては、酸化(工程205)は摩擦を低下させ、耐摩耗性を増加させ(例えば、水の酸化用反応物を使用するのと比較して)、そしてSi−O−Si及びSi−OH原子団を生成する。
【0048】
一つの実施形態では、層102は所定の接触角(例えば、約98.3°の前進接触角)を有し、官能化した層110はより大きな接触角(例えば、約100°の前進接触角)を有する。一つの実施形態では、層102は所定の接触角(例えば、約95.6°の前進接触角)を有し、官能化しその後酸化した層804はより小さな接触角(例えば、約65.9°の後退接触角)を有する。この実施形態においては、酸化(工程205)はSi−O−Si原子団を生じさせ、Si−H原子団の量を減少させる(例えば、官能化した層110と比較して)。
【0049】
一つに実施形態において、層802は、層102についての大きな摩擦係数(例えば約0.97)よりも小さい摩擦係数(例えば約0.84)を有する。同様に、一つに実施形態において、酸化した層802は、層102についての大きな摩耗速度(例えば4.73×10
-4mm
3/N/m)よりも小さい摩耗速度(例えば6.75×10
-5mm
3/N/m)を有する。
【0050】
図11は、代表的実施形態による水で酸化した層802の基材100(例えばステンレス鋼)への拡散を説明するものである。具体的に言うと、
図11は、オージェ電子分光法による基材100、コーティング101、及び物品103内の水で酸化した層802の組成を示している。図示のとおり、酸化は、Si−H部分が酸化を受けて消失しSi−O−Si結合を生じていることによって、また一部のSi−C及び/又は結合していない炭素種が消失していることによっても、説明される。一つの実施形態では、酸化した層802は約1600オングストロームに達し、そしてCとSiの濃度が低下していることに基づいて特定可能である、約250オングストロームの拡散領域108を含む。水で酸化した層の範囲は、約0.1μmと約3.0μmの間であることができる。拡散領域108は、約5nmと500nmの間であることができる。水で酸化した層802の組成は、基材100上の予め存在する酸化物層のため酸素が増加して、およそ1.0:1.22:0.91(C:Si:O)である。
【実施例】
【0051】
〔例1〕
第1の例は、ジメチルシランを基材100へ8psiaのガス圧力、450℃で2時間供給して層102を形成することを含んでいた。第1の例では、層102は、鏡面研磨した316ステンレス鋼のクーポン(わずかに黄ばんでいる)上ではほとんど検出できなかった(すなわち視覚的に識別するのが困難であった)。測定により、被着処理前の水の接触角データがおよそ60°であることが示された。ジメチルシランでの被着処理後は、接触角はおよそ102°に増加した。層102は目に見えないとは言え、このデータから、表面105の層102上にカルボシリル物質が有意の密度で極めて薄く被着していることが示された。層102の厚さは、利用できる分光技術がコーティングを検出するのに十分な感度ではなかったので、約100オングストロームと推定された。
【0052】
〔例2〕
第2の例は、ジメチルシランを基材100へ8psiaのガス圧力、450℃で15時間供給して層102を形成することを含んでいた。第2の例では、層102に目に見える発光性の虹色配列があった。測定により、鏡面研摩の316ステンレス鋼表面と研磨したシリコンウエハ表面についておよそ100°の平均脱イオン水接触角データが示された。FT−IRからは、2950cm
-1における測定値に基づくC−Hの存在、792cm
-1における測定値に基づくSi−Cの存在、そして2102cm
-1における測定値に基づくSi−Hの存在が示された。層102の厚さは、分光器により約800オングストロームと測定された。オージェ電子分光法を利用する更なる測定も行った。測定値から、層102上のSi及びC原子の濃度が上昇していることが示された。測定値からは更に、Fe、Cr及びNi原子の濃度の上昇により説明される拡散層108に達するとSi及びC原子濃度が減少することが示された。測定値から、拡散層108を越える点に達するとSi及びC原子の濃度がゼロに漸近することが示された。測定値からはまた、拡散層108をO原子濃度が上昇すること(被着前の基材100の表面105の表面酸化物の結果)に基づいて特定できることも示された。
【0053】
〔例3〕
第3の例は、ジメチルシランを基材100へ8psiaのガス圧力、450℃で15時間供給して層102を形成し、続いて基材100の層102を不活性ガス中の水で約100〜200psiaのガス圧力、450℃にて2時間酸化して酸化した層802を形成することを含んでいた。FT−IRデータでは、表面改質化学反応についてのいずれの官能性部分(Si−OH又はSi−H)も有意の存在を明らかにすることができなかった。得られたカルボキシシラン物質は、本来のカルボシランよりも向上した硬さと耐磨耗性を示した。酸化した層802は、Siウエハ上での接触角が86.6°であり、Si−O−Si原子団の存在が増加していた。
【0054】
〔例4〕
第4の例は、ジメチルシランを基材100へ8psiaのガス圧力、450℃で15時間供給して層102を形成し、続いて基材100の層102を酸化用反応物の混合物で約100〜200psiaのガス圧力、300℃にて2時間酸化して酸化した層805を形成することを含んでいた。酸化用反応物の混合物は空気と水を含んでいた。FT−IRデータによると、酸化した層805ではC−H原子団が減少し(例3と比較して)、Si−C原子団が減少し(例3と比較して)、Si−OH原子団が増加(例3と比較して)していた。
【0055】
〔例5〕
第5の例は、ジメチルシランを基材100へ8psiaのガス圧力、450℃で15時間供給して層102を形成し、続いて基材100の層102を空気で約100〜200psiaのガス圧力、300℃にて2時間酸化して酸化した層805を形成することを含んでいた。第5の例では、FT−IRデータ(ブロード、3414cm
-1)で有意のSi−OH伸縮が観測される酸化したカルボシラン物質が作られた。接触角は、脱イオン水について50.9°と測定された。電気化学インピーダンス分光法から、低周波数でのインピーダンスZ
If=約7.27kΩであることが示された。当該物質の耐磨耗性を摩擦計(CSM Instruments S/N 18−343)で標準の100 Cr6ボールと3.00cm/sの循環線速度により0.5Nの力をかけて分析して、4.141e
-03の摩耗(mm
3/Nm)が示された。酸化した層805は、摩擦が小さく(例3と比較して)、耐磨耗性が高く(例3と比較して)、Si−O−Si原子団が存在していた。
【0056】
〔例6〕
第6の例は、例2で形成した層102をエチレンで官能化して官能化した層110を形成することを含んでいた。官能化した層110は、水の前進接触角が98.3°、後退接触角が85.1°であった。
図10に示したように、Ft−IRデータからは、Si−O−Si原子団がないこと(1027cm
-1での伸縮に基づく)により酸化がほとんど起きていないこと、Si−H原子団の量が減少していること(2091cm
-1での伸縮に基づく)が示された。
【0057】
〔例7〕
第7の例は、例2で形成した層102をエチレンで官能化して官能化した層110を形成することを含んでいた。その後、官能化した層110を、5mlの脱イオン水(DI)を反応室に加えることで酸化した。反応室を窒素で数回フラッシングし、軽く真空にさらして密閉容器から空気を除去した。反応室の温度を450℃で約2時間保持し、次いで室温に戻した。官能化した層110の酸化により、官能化しその後酸化した層804を形成した。この官能化しその後酸化した層804は、水の前進接触角が95.6°、後退接触角が65.9°であった。
図10に示したように、FT−IRにより、例6で形成した官能化した層110との比較で、酸化によってSi−O−Si原子団の量が増加し(1027cm
-1での伸縮に基づく)、Si−H原子団の量が減少(2091cm
-1での伸縮に基づく)したことが示された。
【0058】
本発明の特定の構成要件と実施形態のみを示し、説明してきたとは言え、当業者は、特許請求の範囲に記載した発明対象の新規な教示と利点から実質的に逸脱することなく、多くの改変や変更を思いつくことができよう(例えば、種々の構成要素の大きさ、寸法、構造、形状及び割合や、パラメーターの値(例えば、温度、圧力など)、取り付け方法、材料の使用、色、幾何学的配置などの変更)。いずれの処理又は方法の工程の順番あるいは順序を、別の実施形態により変更しあるいは組み立て直してもよい。従って、特許請求の範囲は本発明の真の趣旨の範囲内に入る全てのそのような改変や変更を網羅することを意図するものであることを理解すべきである。更に、代表的実施形態を簡潔に説明することを目的として、現実に実施する全ての構成要件を説明することはできていない(すなわち、本発明を実施する上で現在考えられる最良の様式に関係ないもの、あるいは特許請求の範囲に記載した発明を可能にするのに関係のないもの)。いずれのそのような現実の実施の開発に当たっても、あらゆる工学的又は設計事業計画におけるように、数々の実施について具体的決定を行うことができる。このような開発の取り組みは複雑であり時間がかかるであろうが、それでもなおこの開示を利用できる当業者は、必要以上の実験をすることなしに、設計、組み立て、及び製造を日常的に行うことになろう。