特許第5735531号(P5735531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735531
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】眼内移植片挿入器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20150528BHJP
【FI】
   A61F2/16
【請求項の数】20
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-542289(P2012-542289)
(86)(22)【出願日】2011年4月6日
(65)【公表番号】特表2013-523193(P2013-523193A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2011059131
(87)【国際公開番号】WO2011126144
(87)【国際公開日】20111013
【審査請求日】2014年3月17日
(31)【優先権主張番号】特願2010-89186(P2010-89186)
(32)【優先日】2010年4月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100119312
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 栄松
(74)【代理人】
【識別番号】100121153
【弁理士】
【氏名又は名称】守屋 嘉高
(74)【代理人】
【識別番号】100178445
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 淳二
(74)【代理人】
【識別番号】100133639
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】ディーマス,サンガー
【審査官】 宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−210498(JP,A)
【文献】 特開平05−103809(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/058929(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
A61F 9/007 − A61F 9/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向の軸を規定する本体と、
前記本体に対して移動可能であり、ロッド部及び当該ロッド部に回転可能に取り付けられた操作部を有するプランジャーと、を備える眼内移植片挿入器具において、
前記本体と前記操作部の一方が、らせん状の溝と、当該らせん状の溝と交差する少なくても1つの長手方向に延びる逃げ溝とを有し、
前記本体と前記操作部の他方が、前記らせん状の溝と前記少なくとも1つの長手方向に延びる逃げ溝内に収まる寸法に形成された少なくとも1つの突起部を有することを特徴とする眼内移植片挿入器具。
【請求項2】
前記本体と連動して眼内移植片を保持する様に構成された移植片設置部を、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項3】
前記移植片設置部は、前記本体に固着されることを特徴とする請求項2に記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項4】
前記移植片設置部がカードリッジを備えることを特徴とする請求項2に記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項5】
前記操作部が、前記ロッド部に対して所定の距離を長手方向に移動可能である様に、前記ロッド部に取り付けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項6】
前記所定の距離は前記らせん状の溝のピッチと等しいことを特徴とする請求項5に記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項7】
前記少なくても1つの長手方向に延びる逃げ溝は、第一及び第二の逃げ溝を備え、
前記少なくても1つの突起部は、第一及び第二の突起部を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項8】
前記少なくても1つの長手方向に延びる逃げ溝は、第一及び第二の逃げ溝を備え、
前記少なくても1つの突起部は、軸方向に延びる第一及び第二の突起部の列を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項9】
前記操作部に第一の表示部及び前記本体に第二の表示部をさらに備え、前記第一及び前記第二の表示部の位置が合致する場合に、前記少なくとも1つの逃げ溝及び前記少なくとも1つの突起部の位置が合致するように配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項10】
前記操作部を通して延設し、前記少なくとも1つの逃げ溝と合致した時に前記少なくとも1つの逃げ溝及び前記少なくとも1つの突起部の位置が合致するように配置された窓をさらに備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項11】
前記らせん状の溝が軸方向の長さ及びピッチを規定し、前記ピッチは前記軸方向の長さに亘って実質的に一定であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項12】
前記らせん状の溝が軸方向の長さ及びピッチを規定し、前記ピッチは前記軸方向の長さに亘って実質的に一定ではないことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項13】
前記少なくとも1つの突起部が、部分的なねじ山に相当する形状を規定することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項14】
前記少なくとも1つの突起部が曲線形状を規定することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項15】
前記らせん状の溝及び前記少なくとも1つの長手方向に延びる逃げ溝が、それらの交点で複数の曲線状の角部を規定することを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項16】
前記少なくとも1つの突起部が前記少なくても1つの逃げ溝内にある時に、前記操作部が、当該操作部へ軸方向に加わる力に応じて、軸方向に移動することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項17】
前記少なくても1つの突起部が、前記らせん状の溝内にある時に、当該操作部へ回転方向に加わる力に応じて、前記操作部が回転方向及び軸方向に移動することを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項18】
前記少なくても1つの突起部が、前記らせん状の溝の部分の間において、前記少なくても1つの逃げ溝内にある時に、前記操作部が当該操作部に加えられた回転力に応じて、回転方向に移動しないことを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項19】
前記眼内移植片はレンズであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の眼内移植片挿入器具。
【請求項20】
前記レンズは、眼内レンズであることを特徴とする請求項19に記載の眼内移植片挿入器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に眼内移植片を眼に挿入するための器具及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
眼内移植は、眼の、前房、後房、角膜、硝子体液部、そして/又は、その他の部分に眼内移植片が挿入される様々な事例がある。一例としての眼内移植片はレンズ、水晶体嚢テンションリング、義眼、そして表層角膜移植を含むが、これらに限定されない。例えば、眼内レンズ(IOL)が白内障の手術を受けた無水晶体眼に挿入されることもあり、あるいは屈折矯正手術中に眼内レンズが有水晶体眼に挿入されることもある。レンズの一種に折り畳み可能なレンズがある。折り畳み可能なレンズは、シリコン、軟質のアクリル樹脂、又はハイドロゲルの様な軟性材料から形成され、小さい切開創から眼内に挿入される。折り畳み可能なレンズを、小さな直径の挿入筒を通して眼内に押し出すために使用されるレンズ挿入器具は、一般にプッシュ式の器具とスクリュー式の器具を含む。両方の場合でそのレンズ挿入器具は、挿入筒を通してそのレンズを押し出すために使用されるロッドを有するプランジャーと、当該ロッドを駆動するために使用される操作部とを備える。
【0003】
プッシュ式レンズ挿入器具の使用中、眼内レンズと挿入筒内壁の摩擦などの抵抗に抗して操作者が操作部を押圧し、挿入筒内にロッドとレンズを進行させる。この様な器具の一例が特許文献1に開示される。この様なプッシュ式の器具は片手で操作され得るという利点がある一方、操作者により操作部に加えられる圧力は摩擦抵抗との釣り合いを保つ必要があるので、挿入筒に通してのレンズの移動の正確な制御は達成することが困難である。特に当該レンズの光学部分が厚いか、もしくは当該挿入筒が比較的小さい内径を持つ場合に、折り畳まれたレンズが挿入筒を貫通して押し込まれて行き、当該レンズが当該挿入筒から抜け出る際に、当該レンズが元の形状に弾性復元するために、折り畳まれたレンズに大きい荷重が付加されるので、この困難性が問題となる。レンズが眼内へ突発的に放出される結果、眼の組織に損傷を与えてしまう可能性がある。例えば特許文献2に開示される様な一部のプッシュ式のレンズ挿入器具は、レンズが先端に押されるにつれてその抵抗が増加する様に構成されている。
【0004】
スクリュー式のレンズ挿入器具では、操作部と本体とを接続するためにねじが用いられる。操作部の回転が、プランジャーのロッドやレンズの先端方向(もしくはレンズ進行方向)への直線運動をもたらす。一例が特許文献3に開示されるこの様な器具では、プランジャーのロッドの移動量が容易に制御可能であり、その結果レンズの眼内への突発的な放出を防止する。しかしながらスクリュー式のレンズ挿入器具は、当該器具の操作が両手を必要とするので、プッシュ式のレンズ挿入器具よりも操作することがさらに困難である。またスクリュー式のレンズ挿入器具は、構造的にさらに複雑でもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2000−516487号公報(米国特許第5,766,181号)
【特許文献2】特表平11−510711号公報(国際公開公報WO96/37152号)
【特許文献3】特表平11−506357号公報(国際公開公報WO96/28122号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単独の器具で上記のプッシュ式及びスクリュー式のレンズ挿入器具の欠点を避けて利点を利用するための、試みもまた行われている。例えば特開平5−103809号公報に開示された器具では、プッシュ式の器具でプランジャーの移動量を制御するために回転する機構が用いられる。しかしながらプッシュ式の操作からスクリュー式の操作に切り替えるというその器具の能力は、そのレンズのノズル内での挙動によって左右され、所望のタイミングで利用できない。特表2003−210498号公報に開示された(そして米国特許第6,666,871号として公開された)スクリュー式のレンズ挿入器具は、片手及び両手で操作され得るが、しかし意図しない回転を防止するために、プランジャーを前方に推進させる操作部もしくはその部品を注意深く操作する必要がある。操作部が先端に押されるにつれて操作部もまた回転するが、本発明者は、この回転動作を無視し、不必要であると判断した。
【0007】
そこで、プッシュ式の操作及びスクリュー式の操作の両方を備えることができるレンズ挿入器具が望ましいと考えるが、現在利用できるレンズ挿入器具は改善の余地があると、本発明者は判断した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一例としての挿入器具は、長さ方向軸を規定する本体と、当該本体に対して移動可能でありロッド部と当該ロッド部に回転可能に取り付けられた操作部とを有するプランジャーとを有する。前記本体と前記プランジャーの操作部の一方は、らせん状の溝と、当該らせん状の溝と交差して長手方向に延びる少なくとも1つの逃げ溝を有し、前記本体と前記操作部の他方は、前記らせん状の溝や前記長手方向に延びる少なくとも1つの逃げ溝にちょうど収まる寸法に形成された少なくとも1つの突起部を有する。この様な器具には多くの利点がある。例えば、この様な器具は、操作者の所望時に、プッシュ式の操作とスクリュー式の操作を切り替えることができる。
【0009】
本願発明の上記、及び多くの他の特徴、そして付随する利点は、添付している図面と共に熟考された以下の詳細な説明への言及により、本発明を深く理解するにつれて明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付している図面を参照して、本発明の望ましい実施形態の詳細な説明を行う。
図1】本願発明の一例としての実施形態に従ったレンズ挿入器具の透視図である。
図2図1に図示された一例としてのレンズ挿入器具におけるプランジャーの透視図である。
図3図1に図示された一例としてのレンズ挿入器具における操作部の断面図である。
図4図1に図示された一例としてのレンズ挿入器具におけるプランジャーのロッドの基端部の側面図である。
図5図1に図示された一例としてのレンズ挿入器具におけるプランジャーの基端部の部分断面図である。
図6図1に図示された一例としてのレンズ挿入器具におけるプランジャーの基端部の別の部分断面図である。
図7】プランジャーを先端に移動した状態での、図1に図示された一例としてのレンズ挿入器具の透視図である。
図8】本願発明の一例としての実施形態に従ったレンズ挿入器具の透視図である。
図9図8に図示された一例としてのレンズ挿入器具における本体の透視断面図である。
図10図8に図示された一例としてのレンズ挿入器具におけるプランジャーの透視図である。
図11図8に図示された一例としてのレンズ挿入器具におけるプランジャーのロッドの基端部の側面図である。
図12図8に図示された一例としてのレンズ挿入器具における操作部の側面図である。
図13】本願発明の一例としての実施形態に従ったレンズ挿入器具の部分断面図である。
図14図13に図示された一例としてのレンズ挿入器具の別の部分断面図である。
図15図13に図示された一例としてのレンズ挿入器具における操作部の断面図である。
図16】本願発明の一例としての実施形態に従ったレンズ挿入器具の分解・透視・部分断面図である。
図17】本願発明の一例としての実施形態に従ったレンズ挿入器具の透視図である。
図18図17に図示された一例としてのレンズ挿入器具の操作部の透視断面図である。
図19】操作部がスクリュー式の操作を可能にする状態にある、図17に図示された一例としてのレンズ挿入器具の透視図である。
図20】操作部がプッシュ式の操作を可能にする状態にある、図17に図示された一例としてのレンズ挿入器具の透視図である。
図21】本願発明の一例としての実施形態に従ったレンズ挿入器具の部分断面図である。
図22】本願発明の一例としての実施形態に従った操作部の断面図である。
図23】本願発明の一例としての実施形態に従った本体と操作部の部分断面図である。
図24】本願発明の一例としての実施形態に従った操作部の断面図である。
図25】本願発明の一例としての実施形態に従った操作部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための、現在知られている最適の形態を詳細に説明する。この説明は限定的意味を有すると考えてはならない。ただ単に本発明の一般的原理を説明する目的で作成したに過ぎない。本願発明は、各種の眼内移植片に対しても適用可能であって、本発明において使用される様に、どのような眼の構造、またはどのような眼の部位にも収納される、いかなる構造、手段、または機器に関連する眼内移植に適用可能である。眼用レンズ、水晶体嚢テンションリング、義眼、及び表層角膜移植は、眼内移植片の例である。その一実施例が眼内レンズ(IOL)に関連して以下に記載されるが、本願発明はまだ開発されていない眼内移植片を含む他の種類の眼内移植片にも適応可能である。例えば、本願発明は他の種類の眼用レンズにも適応可能である。この様なレンズは眼内コンタクトレンズ、有水晶体眼内レンズ、及び眼に挿入される他のレンズを含むが、これらに限定されない。
【0012】
本願発明の少なくとも一部に関連するレンズ挿入器具の一例の概略を図1の参照番号1Aに表す。その一例としてのレンズ挿入器具1Aは、レンズ2(例えばIOL)を眼に挿入するために使用され、レンズ設置部3A、先細の挿入部4A、本体5A、及びプランジャー6Aを有する。レンズ2はレンズ設置部3Aに装填される。一例としてのプランジャー6Aは、レンズ2と操作部8Aと係合するロッド7Aを有する。一例としてのプランジャー6Aもまた、操作部8Aの手動操作によって、ロッド7Aを先端方向(矢印Xで確認される)及び基部方向にA軸に沿って移動させる様に構築される。先細の挿入部4Aは、先端にノズル9を有し、そしてレンズ設置部3Aと連通した貫通穴10を有する。挿入手順中に、レンズ2はレンズ設置部3Aを通って押され、折り畳まれもしくは圧縮されて、先細の挿入部4Aでコンパクトな状態になり、そしてノズル9の先端を通って眼内に開放される。レンズ2は、実施方法により、挿入部4A及びノズル9を通って眼に押し込まれ、もしくは別な実施方法では、レンズ設置部3Aから眼までの全範囲に亘って押し込まれる。
【0013】
本願発明はこの様な方法に限定されないが、一例としてのレンズ挿入器具1Aはレンズ先行装填型注入器である。その注入器1Aは、レンズ設置部3A内にレンズ2を内蔵した状態で出荷される。
【0014】
一例としての実施形態でのレンズ設置部3Aは、本体5Aの先端に位置する。さらに具体的には、本体5Aは円筒部材から形成され、先細の挿入部4Aはレンズ設置部3Aを経由して本体の先端と連結される。一例としての挿入器具1Aもまた、レンズ制御機構とロック機構を有する長手方向に移動可能なスライダー11を有する。レンズ制御機構(図示せず)は挿入手順の第一段階中にレンズ2を移動、変形させ、一方でロック機構(図示せず)は、スライダー11を先端に移動するまで、プランジャー6Aが先端に移動することを防ぐ。レンズ制御及びロック機構を有するスライダーを有する、レンズ先行装填型注入器の詳細は、例えば米国特許出願公開第2010/0217273号公報から入手可能である。
【0015】
一つ以上の突起部12Aは、一例としての本体5Aの基端近くに位置する。図1から図7に図示された実施形態では、2つの突起部12A(ただ一方だけが視認可能である)がある。図5及び図6を参照すると、第一の突起部は本体5Aの側壁14Aの一方に位置し、A軸に対して角度が付いている。そして第二の突起部12Aは反対側の側壁14Aに位置する。突起部12Aが不連続の雄ねじのねじ山(もしくは部分的なねじ)を規定し、そして本体側壁14Aに関連する表面がそのねじ山の谷底部を規定する。以下に記載される様に、操作部8A上のらせん状の溝25Aと組み合う突起部12Aは、らせん状の溝25Aのピッチの半分と等しい距離によりお互いに軸方向にずらされる。
【0016】
図1から図7に図示された一例としての挿入器具1Aもまた、本体5Aの外部表面から外に突出している(フランジの)フック部13(図1)を有する。本体5Aの半分の基部に位置するフック部13は、挿入器具1Aのプッシュ式の操作の間に指をかけるために使用される。
【0017】
以下に記載される様に、本体5Aとプランジャー操作部8Aの相対的な位置が、操作者がプッシュ式の操作からスクリュー式の操作に、あるいはスクリュー式の操作からプッシュ式の操作に切り替えることができる様な場合を示す表示部を、図1から図7に図示された一例としての挿入器具1Aは備える。図1を参照すると、その表示部は、操作部8A上の第一の表示部15と、本体5A上の第二の表示部16Aで構成される。第一の表示部15は、操作部8Aの外側の先端表面上に位置する。第二の表示部は、基端近くの本体5Aの外面上に設けられる。図示した実施例では、第一の表示部15は三角形状であり、第二の表示部16Aは長手方向に延びる直線状の記号である。第一及び第二の表示部15及び16Aの機能は以下に説明する。もう一組の第一及び第二の表示部15及び16Aが、本体5A及び操作部8Aの反対側(つまりA軸に関して180度ずれた位置)に位置することが注目される。
【0018】
次に図2を参照すると、操作部8Aに加えられた力がロッド7Aに伝達されてレンズ2を先端方向に押し出す様に、一例としてのプランジャー6Aは構成される。ロッド7Aはロッド先端部20及びロッド基端部21を有する。ロッド先端部20は、挿入手順中にレンズ2の外縁と係合する当接面19を先端に有する。ロッド先端部20及びロッド基端部21は、(図の様に)一体的に形成されるか、あるいは、組み立て中にお互い固定される分離構造である。以下に極めて詳細に記載される様に、操作部がロッドに対して軸方向に移動するとともに回転する様に、操作部8Aはロッド7Aのロッド基端部21に軸方向に支持される。
【0019】
一例としての本体5A及び操作部8Aのそれぞれの構造は、その2つの間の関係と同様に、操作部の回転動作の結果、軸方向の(あるいは「長手方向の」)駆動力を生じて、操作部の回転方向に応じて、基端方向又は先端方向にロッド7Aを移動させるものである。以下に説明される所定の場合では、操作部に加えられた軸方向の(あるいは「長手方向の」)力は、その力の方向に応じて基端方向又は先端方向にロッド7Aを駆動する。
【0020】
そのため、図3を参照すると、一例としての挿入器具1Aの操作部8Aは、操作体24、当該操作体の内面のらせん状の溝25A、1つ以上の逃げ溝26A、及び軸受部27Aを有する。一例としての操作体24は、一般に円筒形状である。その先端操作体24は開口しており、軸受部27Aは基端に位置する。らせん状の溝25Aは雌ねじのねじ山を規定する。本体突起部12A及び操作体のらせん状の溝25Aのそれぞれの大きさ、形状、及び位置は、当該らせん状の溝が当該突起部との螺合部にねじ込まれ、螺合された時点で、操作部8Aの回転が当該操作部の軸方向の動作をもたらすことができる様に構成される。本実施例においては、1つ以上の逃げ溝26Aはレンズ進行軸Aと並行であり、(軸方向に測定して)少なくともらせん状の溝25Aの全長に亘って長手方向に延びる。逃げ溝26Aの個数は本体の突起部12Aの個数と一致し、その結果、操作体24の内面に2つの逃げ溝26Aがある。その2つの逃げ溝は同一寸法・形状であり操作体24の反対側の両側に位置し、すなわちA軸に関してお互いに180度ずれている。逃げ溝26Aもまた、らせん状の溝25Aを貫通、すなわち、らせん状の溝25Aと繰り返し交差する。本体突起部12A及び操作体の逃げ溝26Aのそれぞれの大きさ、形状、及び位置は、当該逃げ溝及び当該突起部の位置がお互いに合致する時、操作部8Aがその回転無しに長手方向に移動し得る様に構成される。
【0021】
図3及び図4を参照すると、軸受部27Aは、ロッド基端部21上に位置する軸方向支持部36(以下に説明する)と接続する様に構成される。一例としての軸受部27Aは、挿通穴30、内向きに突き出ている係止部31、及び筒状の管32を有する。当該内向きに突き出ている係止部31は、当該挿通穴30と当該筒状の管32の間に位置する。筒状の管32の端部は、当該筒状の管32よりも直径が小さい開口端33を別にすれば、通常閉口される。
【0022】
軸方向支持部36は、ロッド7Aのロッド基端部21の基端面37に位置する。図1から図7に図示された一例としての実施形態では、軸方向支持部36は、軸部38と、当該軸部の基部から外向きに延びる係合部39とを有する(図4に注目)。軸部38の長さ、すなわち基端面37から係合部39までの距離が、本体の突起部12Aが逃げ溝26Aの中に位置する時に係止部31、ひいては操作体24がロッド基端部21に対して移動し得る軸方向距離を決める(図5及び図6に注目)。
【0023】
図4及び図5を参照すると、軸方向支持部36を挿通穴30経由で軸受部27Aに挿入することにより、操作部8Aがロッド7Aに取り付けられる。軸部38は係合部39が係止部31を通過する際に縮み、そして元の広がった状態に戻り、その結果、軸方向支持部36が軸受部27Aから離脱することを防ぐ。図5及び図6に図示される様に、ロッド7Aの軸方向支持部36に一旦取り付けられると、操作部8Aは、軸部38に沿って、基端面37及び係合部39により決められた範囲に亘って、基端から先端方向に向かって軸方向に移動可能であり、当該ロッドに対してもまた回転可能である。操作体24の筒部32は、操作部8Aのこの様な動作に適応する様な大きさに形成される。さらに、開口端33の直径は筒部32及び係合部39の直径よりも小さいので、軸方向支持部36が操作体24の端部から突出しない。
【0024】
それぞれ軸受部27A及び軸方向支持部36は、操作部8Aがロッド7Aに対して回転すること、及び当該ロッドに対して軸方向に所定の距離を移動することの、双方が可能な構造となっている。当該所定の距離は、操作部の回転に起因して突起部12Aがらせん状の溝25Aから逃げ溝26Aへ移動するので、少なくとも操作部8Aが軸方向で基端部まで進む必要の有る最大の距離である。その距離は突起部12A及び逃げ溝26Aの個数と共に、らせん状の溝25Aのピッチの関数である。
【0025】
突起部12Aは一例としての本体5Aの反対側の両側に位置し、すなわちA軸に関してお互いに180度ずれている。そして、逃げ溝26Aは一例としての操作体24の反対側の両側に位置し、すなわちA軸に関してお互いに180度ずれている。結果として、逃げ溝26Aの位置を突起部12Aの位置と合致する様に移動させるために、操作部8Aの半回転かそれ以下の回転が必要とされる。従って上記の所定の距離は、少なくてもネジ部25Aのピッチの半分の長さを必要とする。
【0026】
一例としてのレンズ挿入器具1Aは以下の様に操作される。最初に、通常平坦部に元の状態で保管されるレンズ2を最初から格納しているレンズ設置部3Aに、粘弾性物質を充填する。その次にスライダー11を前方に移動させ、レンズ2をレンズ設置部3Aから先端方向に押し、所定の形に変形させる。その後、操作部8Aの操作によって先端に移動させる。この様な操作は、突起部12Aがらせん状の溝25内に位置する(すなわちスクリュー式において)間の操作部8Aを回転することであり、突起部12Aが逃げ溝26A内に位置する(すなわちプッシュ式において)時の当該操作部を先端方向に押し出すことである。
【0027】
操作部8Aのスクリュー式の操作に関して、らせん状の溝25が突起部12Aに当接するまで、当該操作部を先端まで移動する。この位置で、ロッド7Aの当接面19はレンズ2の外縁に当接しない。その後、操作部8Aを時計回りに回転して、らせん状の溝25を、突起部12Aに係合させる。その後操作部8Aを回転すると、操作部8Aとロッド7Aは軸方向に移動する。操作部8Aとロッド7Aが軸方向に移動する距離は、らせん状の溝25Aのピッチと当該回転量の関数である。操作部8Aが回転し続けるにつれて、その後ロッド7Aはレンズ2と係合して、当該レンズを先細の挿入部4Aの内部を通って前進させ、その結果当該レンズを圧縮する。もしプッシュ式の操作が望ましくないなら、ロッド7Aがレンズ2をノズル経由で眼に押し込むまでスクリュー式の操作を継続しても良い。
【0028】
次にプッシュ式の操作について考えると、上記の様に、突起部12Aが逃げ溝26A内に位置する時に、プッシュ式の操作を行う。スライダー11を前に移動させた直後もしくはある程度スクリュー式の操作が行われた後に、利用者は突起部12Aの位置と逃げ溝26Aの位置を合致させ、そしてプッシュ式の操作を行う。スクリュー式の操作からプッシュ式の操作に切り替えるため、本体5Aに対しての操作部8Aの位置は、逃げ溝26Aの位置を突起部12Aの位置と合致させる様にする必要がある。これは、操作部8Aを反時計回りもしくは時計回りに回転させることで達成されるが、しかし、反時計回りの回転はレンズをさらなる先端へ前進させないので、反時計回りの回転を行うことが好ましい。そして以下に説明される様に、ロッド7Aが基端方向へ向って軸方向に移動しないので、反時計回りが望ましい。逃げ溝26Aの位置を突起部12Aの位置と合致させると、当該操作部の回転無しで当該操作部に押す力を単に加えることにより、操作部8A(及びロッド7A)を先端に前進させる。操作部8Aは自然に回転しないだろう。突起部12Aが溝と逃げ溝との交点の間にある時は、利用者もまた操作部8Aを回転させることができない。レンズ2がノズル9の先端を通って眼に挿入されるまで、もしくは利用者がスクリュー式の操作へ切り替えることを望むまで、その押す力は加えられ、そしてロッド7Aを前方に移動させる。
【0029】
突起部12Aの位置がらせん状の溝25Aの一部の位置と合致し、合致したちょうどその時に、操作部に回転力を加えることにより利用者がスクリュー式操作へ切り替える意図を明らかにするまで、逃げ溝26Aもまた操作部8Aの回転を防ぐ。突起部12Aの位置がらせん状の溝25Aの一部の位置と合致する時に操作部8Aへ回転力を与えない限り、逃げ溝26Aは突起部12A(及び操作部8A)を軸方向に導き、当該操作部は回転しない。
【0030】
上記のごとく検討した様に、図5及び図6で図示される様に、軸受部27A及び軸方向支持部36のそれぞれの構造は、ロッド7Aを移動すること無しに操作部8Aが基部方向に所定の距離を移動する構成であることが、ここで注目される。その所定の距離は、逃げ溝26Aの位置を突起部12Aの位置と合致させるために必要な回転の量(すなわち、図1から図7に図示された実施形態では半回転かそれ以下)を提供するのに十分な距離である。そのため、利用者がスクリュー式の操作からプッシュ式の操作に切り替える間、ロッド7Aとレンズ2との間の接触が維持される。さらに一例としての逃げ溝26Aはレンズ進行軸Aと並行にらせん状の溝25Aの全長に亘って形成されるので、利用者が望む時にいつでもスクリュー式の操作からプッシュ式の操作に、あるいはプッシュ式の操作からスクリュー式の操作に切り替えることが可能である。
【0031】
第一及び第二の表示部15及び16Aは、お互いの位置が合致する時に一例としてのレンズ挿入器具がプッシュ式の操作の影響を受けやすいことを示す。図7を参照すると、第一及び第二の表示部15及び16Aは、当該第一及び第二の表示部の位置がお互いに合致する時に逃げ溝26Aの位置が突起部12Aの位置と合致する様に、本体5A及び操作部8A上に位置する。言い換えると、利用者がプッシュ式の操作の使用を望む時、利用者は(もし必要なら)第一及び第二の表示部15及び16Aの位置が合致するまで操作部8Aを回転させるだけで良い。一例としての第二の表示部の長さ及び位置は、操作部8Aの位置に関わらず当該第二の表示部を確実に視認可能にしている。
【0032】
他の一例としてのレンズ挿入器具は、図8の参照番号1Bにより概略を表す。挿入器具1Bは挿入器具1Aと多くの点で類似しており、同様の要素は同様の参照番号により表される。例えば、挿入器具1Bは、フック部51を有する本体5Bと、ロッド7B及び操作部8Bを有するプランジャー6B(図10)を有する。しかしながら、ここでは、挿入器具1Bは先行装填型挿入器具の代わりにカードリッジ式の挿入器具である。そのために、一例としてのカードリッジ40は、レンズ設置部3B、先細の挿入部4B、及びノズル9を有する。挿入段階時、レンズ2(例えばIOL)はカードリッジ40の中に折り畳まれ及び充填され、それから本体5Bの先端近くに設置された取付部50へ固定される。プランジャー6Bはレンズ2を、レンズ設置部から、レンズ2がさらに圧縮される先細の挿入部を通過し、ノズル9経由で眼に押し込む。カードリッジ40は、その段階後に取付部50から取り外される。
【0033】
次に図9を参照すると、一例としての本体の内面は、1つ以上の突起部12Bと、1つ以上のリブ52を有する。図示された実施例では、本体側壁14Bの内面に180度離れて設置された2つの突起部12Bがある。突起部12Bが部分的な雌ねじのねじ山を規定し、そして関連した本体側壁14Bの表面がそのねじ山の谷底部を規定する。上記の突起部と操作部と同様の方法で、突起部12Bは操作部8Bと組み合う。図示された実施例では、本体側壁14Bの内面に180度離れて設置された2つのリブ52もある。図示された実施例では、リブ52の長さ方向はレンズ進行軸Aと平行である。下記に説明する様に、ロッド7Bにレンズ進行軸Aと平行に移動させる間、リブ52は当該ロッド7Bの回転を防ぐ。
【0034】
図10及び図11に図示される様に、一例としてのプランジャーロッド7Bは、ロッド先端部20及びロッド基端部53を有する。1つ以上のリブ52が存在する1つ以上のガイド溝54はロッド基端部53の外側に設置される。図示された実施では、本体側壁14Bの内面に180度離れて設置された2つのガイド溝54がある。ロッド7Bを基端及び先端方向へ軸方向に移動させる間、リブ52と溝54との間の相互作用は当該ロッド7Bの回転を防ぐ。軸方向支持部36はロット基端部53の基端に設置される。
【0035】
図12を参照すると、一例としての操作部8Bは、ディスク形状の操作体56及びロッド形状体57を有する。操作体56とロッド形状体57は、(図示される様に)一体的に形成されるか、あるいはお互いに固定される分離構造である。ロッド形状体57の外径は、ロッド基端部53の外径と実質的に同じである(図10及び図11)。らせん状の溝25B及び1つ以上の逃げ溝26Bはロッド形状体57の外面に形成され、軸受部27Bは当該ロッド形状体の先端に設置される。らせん状の溝は雌ねじのねじ山を規定する。そして、突起部12B及びらせん状の溝25Bのそれぞれの大きさ、形状、及び位置は、当該らせん状の溝が当該突起部との螺合部にねじ込まれて螺合し、螺合された時点で、操作部8Bが回転することにより、プランジャー6Bが軸方向に移動する構成になっている。1つ以上の逃げ溝26Bは、レンズ進行軸Aと平行であり、図示された実施形態では、少なくてもらせん状の溝25Bの全長(軸方向に測定して)に亘って長手方向に延びる。逃げ溝26Bの個数は本体の突起部12Bの個数と一致し、従ってロッド形状体57の外面に2つの逃げ溝26Bがある。図示された実施形態の逃げ溝26Bは、ロッド形状体57の反対側の両側に設置され、すなわち、A軸について180度お互いからずれている。逃げ溝26Bもまた、らせん状の溝25Bを貫通して、すなわち、らせん状の溝25Bと繰り返し交差する。本体の突起部12B及び操作部の逃げ溝26Bのそれぞれの大きさ、形状、及び位置は、当該逃げ溝及び当該突起部の位置がお互いに合致する時、操作部8Bがその回転無しに長手方向に移動し得る様に構成される。
【0036】
一例としての軸受部27Bは、上記の様な、挿通穴30、係止部31、及び筒部32を有する。軸受部27B(図12)及び軸方向支持部36(図11)は、ロッド7Bに対して操作部8Bの軸方向動作を容易にするために、図5及び図6を参照した上記の様な方法で作動する。やはり上記の様に、操作者が所望する場合は何時でも、この様な軸方向動作は、今度はスクリュー式の操作からプッシュ式の操作へ、もしくはプッシュ式の操作からスクリュー式の操作へ切替動作を容易にする。そのために、図8を参照すると、一例としての挿入器具1Bは、これもまた上記の様な方法で、本体の突起部12Bの位置及び逃げ溝26Bの位置を合致させるために使用される第一及び第二の表示部15及び16Bを、本体5B及び操作部8B上に備える。ある実施例では、もう一組の第一及び第二の表示部15及び16Bが、本体5B及び操作部8Bの反対側の両側(すなわち、A軸について180度お互いからずれる位置)に設置される。あるいは、逃げ溝26Bが使用中に視認可能であり、第二の表示16Bの位置と合致させることができるなら、その第一の表示部は省略しても良い。
【0037】
次に図13から図15を参照すると、例えば形状及び操作が図1から図7に図示されるレンズ挿入器具1Aと別の点で同じである他のレンズ挿入器具は、1つ以上の突起部、1つ以上の逃げ溝、及びらせん状の溝の位置が反対になる様に構成される。図13から図15に図示される一例としてのレンズ挿入器具1Cは、例えば、本体5C及びプランジャー6Cを有する。プランジャー6Cはロッド7C及び操作部8Cを有する。ロッド7Cは、ロッド先端部(図示せず)、ロッド基端部21、及び軸方向支持部36を有する。操作部8Cは、操作体24及び軸受部27Cを有する。挿入器具1Cもまた、図示されないレンズ設置部、先細の挿入部、及びノズルを有する。
【0038】
しかしながら、ここで、操作部8Cは1つ以上の突起部12Cを有する。図示された実施では、操作体24の内面に180度離れて設置された2つの突起部12Cがある。突起部12Cは部分的な雄ねじのねじ山を規定し、操作体24の内面はそのねじ山の谷底部を規定する。らせん状の溝25C及び1つ以上の逃げ溝26Cは本体5Cの外面に形成される。らせん状の溝は雌ねじのねじ山を規定する。そして、突起部12C及び当該らせん状の溝のそれぞれの大きさ、形状、及び位置は、当該突起部が当該らせん状の溝との螺合部にねじ込まれ、螺合された時点で、操作部8Cの回転がプランジャー6Cの軸方向の動作をもたらすことができる様に構成される。1つ以上の逃げ溝26Cはレンズ進行軸Aと平行であり、図示された実施形態では、少なくてもらせん状の溝25Cの全長(軸方向に測定して)に亘って長手方向に延びる。逃げ溝26Cの個数は、本体の突起部12Cの個数と一致し、従って、本体5Cの外面に2つの逃げ溝26Cがある。図示された実施形態の逃げ溝26Cは、本体5Cの反対側の両側に設置され、すなわち、A軸について180度お互いからずれている。逃げ溝26Cもまた、らせん状の溝25Cを貫通し、すなわち、らせん状の溝25Cと繰り返し交差する。操作部の突起部12C及び本体の逃げ溝26Cのそれぞれの大きさ、形状、及び方向は、当該逃げ溝及び当該突起部の位置がお互いに合致する時、操作部8Cがその回転無しに長手方向に移動し得る様に構成される。
【0039】
他の一例としてのレンズ挿入器具は、図16の参照番号1Dにより通常表される。レンズ挿入器具1Dは、図8から図12に図示されたレンズ挿入器具1Bと形状及び操作では実質的に類似であり、同様の要素は同様の参照番号により表される。例えば、挿入器具1Dはカードリッジ式であり、フック部51を有する本体5D、そしてロッド7D及び操作部8Dを有するプランジャー6Dを有する。しかしながら、ここで、一例としての本体5Dの内面は、らせん状の溝25D、1つ以上の逃げ溝26D、及び1つ以上のガイド溝54Dを有する。逃げ溝26D及びガイド溝54Dは単独の溝(図示する様に)に結合され、もしくは別々の溝である。プランジャー6Dに関して、ロッド7Dは、ロッド先端部20、及びガイド溝54Dに存在する1つ以上のリブ52Dを有するロッド基端部53を有する。操作部8Dは、ディスク状の操作体56、及び上記の方法で(すなわち軸受部及び軸方向支持部と)接続されるロッド形状体57とを有する。1つ以上の突起部12Dは、当該ロッド形状体の外面に維持される。操作体56とロッド形状体57は、(図示される様に)一体的に形成されるか、あるいはお互いに固定される分離構造である。
【0040】
図示された実施形態では、180度離れて設置された2つのリブ(もしくは「レール」又は「メカニカル・キー」)52Dがあり、そして180度離れて設置された2つのガイド溝54Dがあり、それらは共にロッド7Dにレンズ進行軸Aと平行に移動させる間、当該ロッドを回転することから防ぐ。180度離れて設置された2つの突起部12Dもまたある。突起部12Dは部分的な雄ねじのねじ山を規定し、ロッド形状体57の表面は、そのねじ山の谷底部を規定する。らせん状の溝25Dは、雌ねじのねじ山を規定し、そして、突起部12D及びらせん状の溝25Dのそれぞれの大きさ、形状、及び位置は、当該突起部が当該らせん状の溝との螺合部にねじ込まれ、螺合された時点で、操作部8Dの回転がプランジャー6Bの軸方向の動作をもたらす様に構成される。1つ以上の逃げ溝26Dは、レンズ進行軸Aと平行であり、図示された実施形態では、少なくてもらせん状の溝25Dの全長(軸方向に測定されて)に亘って長手方向に延びる。図示された実施形態では2つの逃げ溝26Dがあり、180度お互いからずれている。逃げ溝26Dもまた、らせん状の溝25Dを貫通、すなわち繰り返し交差する。本体の突起部12D及び逃げ溝26Dのそれぞれの大きさ、形状、及び位置は、当該逃げ溝及び当該突起部の位置がお互いに合致する時、操作部8Dがその回転無しに長手方向に移動し得る様に構成される。
【0041】
図1から図16に図示された実施形態はそれぞれ、180度離れた2つの突起部、及び180度離れた2つの逃げ溝を有する。しかしながら、本願発明はそれに限定されない。例えば、それらがそれぞれ1つ、3つ、4つ、又はそれ以上であっても良い。例えば関連したらせん状の溝のピッチをたどる、90度離れて4つの間隔で配置された突起部であっても良い。
【0042】
次に図17から図20を参照すると、そこに図示されたレンズ挿入器具1Eは、図1から図7を参照して上述された挿入器具1Aと形状及び操作では実質的に類似である。類似点に関しては、挿入器具1Eは特に、本体5Eと、ロッド7E及び操作部8Eを有するプランジャー6Eとを有する。本体5Eは、フック部13E、環状壁14E、及び複数の突起部12Eを有する。図示されないレンズ設置部、先細の挿入部、及びノズルもまた備える。ロッド7Eは、ロッド先端部(図示せず)及びロッド基端部21を有する。操作部8Eは、操作体24E、らせん状の溝25E、逃げ溝26E、及び上記の様に軸方向支持部と接続される軸受部27Eとを有する。
【0043】
次に、レンズ挿入器具1Aとレンズ挿入器具1Eとの間の違いを参照すると、レンズ挿入器具1Eは、本体5E上で円周方向及び軸方向に間隔を空けられた複数の突起部12Eを有する。当該突起部は雄ねじのねじ山を規定する。突起部12Eは軸方向に4列に並べられ、それはA軸と平行であり、そして隣接した列は円周方向に90度ずれている。操作部8Eの内面は、軸方向に延びる突起部28Eにより分けられた4つの逃げ溝26Eを有する。レンズ挿入器具8Eのスクリュー式の操作中、突起部12Eがらせん状の溝内にある間に当該操作部を回転させると、当該操作部及びロッド7Eの軸方向の動作に変換される。逃げ溝26Eを突起部12Eの列と同列に並べることにより、利用者はプッシュ式の操作に切り替える。それに応じて、操作部8Eもまた、突起部28Eの1つの位置と合致する窓29Eを有し、その窓により、逃げ溝26E及び突起部12Eの列の位置が合致したかどうかを利用者は決定することができる。図19に図示された位置では、例えば本体の突起部12Eの位置は操作部の突起部28Eの位置と合致し、その結果、操作をスクリュー式の操作に限定し、そしていくつかの当該本体の突起部は、窓29Eから視認できる。スクリュー式の操作中に、窓29Eにより操作部8Eの状態が容易に把握できる。反対に、図20に図示される位置は、図19に図示された位置から90度ずれている。ここで、4つの逃げ溝26Eの位置は突起部12Eの4つの列の位置と合致し、その結果プッシュ式の操作が可能であり、窓29Eを通して突起部12Eが視認できない。
【0044】
さらに他の一例としてのレンズ挿入器具は、図21の参照番号1A−1により概略が表される。挿入器具1A−1は、基本的に図1から図7を参照して上述された挿入器具1Aと同じである。ここで、しかしながら、本体5Aの片側あるいは両側に軸方向に間隔を空けられた複数の突起部12Aがある。当該間隔は、関連するらせん状の溝25Aのピッチに等しい。この器具及び図17から図20に図示された器具の両方で、軸方向に間隔を空けられた多数の突起部12Aの列を使用する1つの利点は、それがスクリュー式及びプッシュ式の操作中での操作部の動作の安定性を増加させるということである。
【0045】
上記で説明された一例としての突起部は、ねじ山の一部に相当する形状を有する。上記した実施形態のいずれかに、別の点で一致する他の実施形態では、突起部は例えば半円、楕円、もしくは他の曲線形状などの他の形状であっても良い。例として、図22に図示された一例としての操作部8C−1は、1つ以上の半球状の突起部12C−1を有し、図23に図示された一例としての本体は一つ以上の半円状の突起部12A−1を有する。この様な曲線形状は、一方のタイプの操作(例えばスクリュー式)から他方のタイプの操作(例えばプッシュ式)への移行を容易にかつ円滑にする。代案として、あるいは追加分として、上記したいずれかの実施形態と別の点で同じ実施形態では、らせん状の溝と1つ以上の逃げ溝との交点は、曲線状の角部を有していても良い。例えば図24に図示される様に、操作部8A−2は、らせん状の溝25Aと1つ以上の逃げ溝26Aとの交点に曲線状の角部41を有する。ここでも、当該曲線形状は、一方のタイプの操作から他方のタイプの操作への推移を容易にかつ円滑にする。
【0046】
本願発明は上記の一例としての実施形態に制限されない。例として、しかし制限するものではないが、突起部(もしくは突起部の列)の個数は、逃げ溝の個数と同じであっても良いし、あるいは同じでなくても良い。その個数が同じではない場合には、逃げ溝の個数が突起部の個数よりも多数であっても良い。上記の実施形態では、らせん状の溝のピッチもまた一定であるが、当該ピッチは当該溝の軸方向の長さに沿って変化しても良い。例えばレンズが挿入部の先端を通り抜けるにつれて、当該操作部がレンズの移動距離をより正確に制御できる様に、当該溝の当該ピッチは操作部の基部に近くなるにつれて小さくなっても良い。例えば、図25の操作部8A−3は、当該操作部の基部に近くなるにつれて狭いピッチを持つらせん状の溝25A−3を有する。らせん状の溝の方向もまた、反時計回りに操作部を回転させると先端方向へ移動させる様に反転されても良い。
【0047】
恐らく当業者は上記の好適な実施形態に対する多数のその他の改良及び/又は追加が容易に発見するだろう。本願発明の範囲が全てのこの様な改良及び/又は追加にまで及ぶことを目的とするものである。
図1
図2
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図5
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