【実施例】
【0055】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、未延伸糸及び延伸糸の評価方法を以下に示す。
【0056】
(1)乾熱収縮率
未延伸糸100mを枠周1mの巻返し機にかせ上げし、得られたかせの一端を固定し、他端に20gの分銅をかけて、かせ長さLを測定した。次に、分銅を外し、100℃の乾熱炉中に吊り下げて30分間放置した後、室温まで冷却した。その後、再び、かせの一端を固定し、他端に20gの分銅をかけて、かせ長さL
HTを測定し、次式により乾熱収縮率(%)を算出した。
【0057】
乾熱収縮率(%)=(L−L
HT)/L×100
ここで、Lは熱処理前のかせ長さ(m)、L
HTは熱処理後のかせ長さ(m)を示す。
【0058】
(2)引張強度および引張伸度
タイヤコード用引っ掛けチャックを備えた精密万能試験機((株)エーアンドディー製「テンシロン」)に、長さ120mmの未延伸糸または長さ250mmの延伸糸を装着し、クロスヘッド速度300mm/分で引張試験を行い、糸が破断したときの強度および伸度を測定した。この測定を5本の未延伸糸または延伸糸について行い、その平均値を引張強度および引張伸度とした。なお、測定環境は温度23℃、相対湿度50%RHに管理した。
【0059】
(3)解じょ性
未延伸糸を巻きつけたボビンを
図2に示す延伸装置に装着し、未延伸糸を解じょしてボビン9からフィードローラー11を介して温度65℃、周速100m/分の第1加熱ローラー12で引き出し、前記第1加熱ローラー12と温度90℃の第2加熱ローラー13の間で延伸し、第3加熱ローラー14を介してボビン15に巻き取り、延伸糸を得た。このときの未延伸糸の解じょ性を以下の基準で判定した。
A:糸切れは観察されず、解じょ性は均一且つ良好であった。
B:糸切れは観察されなかったが、糸同士が密着し、解じょ性に部分的なムラがあった。
C:糸切れが多発し、未延伸糸を解じょして延伸することは困難であった。
【0060】
(4)単糸繊度
未延伸糸90mを枠周1mの巻返し機にかせ上げし、絶乾質量Mを測定し、次式により単糸繊度を算出した。
【0061】
単糸繊度(デニール)=100×M/H
ここで、Mは延伸糸の絶乾質量(g)、Hは紡糸口金の穴数(=24穴)を示す。
(5)紡糸性
紡糸口金から吐出された樹脂が第1引き取りローラーに引き取られるまでの状態を以下の基準で判定した。
A:糸切れは観察されず、安定的に製造可能であった。
B:60分間に部分的なものを含め、糸切れした回数が5回未満であり、安定した製造に問題がある。
C:60分間に部分的なものを含め、糸切れした回数が5回以上であり、製造性に非常に問題がある。
【0062】
(実施例1)
<PGA樹脂未延伸糸(a)の製造とその評価>
図1に示す溶融紡糸装置を用いて、PGA樹脂未延伸糸を作製した。前記溶融紡糸装置の紡糸口金4の直下には、長さ150mm、内径100mmの温度制御可能な加熱マントル5を装着した。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0063】
先ず、ペレット状のPGA樹脂((株)クレハ製、重量平均分子量:20万、溶融粘度(温度240℃、剪断速度122sec
−1):700Pa・s、ガラス転移温度:43℃、融点:220℃、サイズ:径3mmφ×長さ3mm)を、原料ホッパー1からシリンダー径25mmφの一軸押出機2に投入し、210〜250℃で溶融させた。なお、前記押出機2のシリンダーは4区間に分けて加熱できるものであり、その温度はホッパー側から210℃、220℃、235℃、250℃に設定した。また、ヘッド温度、ギアポンプ温度およびスピンパック温度は250℃に設定した。
【0064】
この溶融PGA樹脂を、ギアポンプ3を用いて24穴紡糸口金4(孔径:0.40mm)から1穴あたり0.42g/分の速度で吐出させて繊維状のPGA樹脂を形成した後、120℃に設定した加熱マントル5中を通過させた。その後、繊維状のPGA樹脂を空冷し、得られたPGA樹脂未延伸糸に繊維用油剤GOULSTON社製「Lurol」を塗布し、周速300m/分の第1引き取りローラー7で引き取り、第2引き取りローラー8を介してPGA樹脂未延伸糸(a−1)を30000mごとにボビン9に巻き取った。得られたPGA樹脂未延伸糸(a−1)の100℃における乾熱収縮率、引張伸度および解じょ性を、製造後直ぐに前記評価方法に従って測定した。これらの結果および紡糸性の評価結果を表1に示す。
【0065】
<PGA樹脂延伸糸(A)の製造とその評価>
PGA樹脂未延伸糸(a−1)の製造後直ぐに、PGA樹脂未延伸糸(a−1)を巻きつけたボビンを
図2に示す延伸装置に装着し、PGA樹脂未延伸糸(a−1)を解じょしてボビン9からフィードローラー11を介して第1加熱ローラー12および第2加熱ローラー13を用いて延伸し、第3加熱ローラー14を介してPGA樹脂延伸糸(A−1)をボビン15に巻き取った。なお、延伸温度は65℃に設定し、延伸倍率は、第1および第2の加熱ローラーの周速を調整して、6.5倍に設定した。得られたPGA樹脂延伸糸(A−1)の単糸繊度、引張強度および引張伸度を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表1に示す。
【0066】
<PGA樹脂未延伸糸(a)の高温高湿保管とその評価>
PGA樹脂未延伸糸(a−1)を巻きつけたボビンを恒温恒湿槽(ISUZU(株)製「HPAV−120−20」)に入れ、温度40℃、相対湿度80%RHの雰囲気下で24時間保管した。保管後のPGA樹脂未延伸糸(b−1)の引張伸度および解じょ性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表1に示す。
【0067】
<PGA樹脂延伸糸(B)の製造とその評価>
また、PGA樹脂未延伸糸(a−1)の代わりに高温高湿保管後のPGA樹脂未延伸糸(b−1)を用いた以外は、PGA樹脂延伸糸(A−1)の場合と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(B−1)を作製した。このPGA樹脂延伸糸(B−1)の単糸繊度、引張強度および引張伸度を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表1に示す。
【0068】
<保持時間、紡糸時間、PGA樹脂未延伸単糸の質量の算出>
実施例および比較例において、紡糸口金出口から110.5℃以上の地点Pまでの最長距離を「有効加熱マントル長」と定義し、以下のようにして求めた。すなわち、先ず、120℃に設定した加熱マントル内のPGA樹脂吐出中の温度分布を、赤外線レーザー温度計を用いてPGA樹脂の吐出方向について測定した。その結果、紡糸口金出口からの距離が10mm、60mm、120mmの地点でそれぞれ200℃、170℃、130℃であった。次に、この温度分布に基づいて、吐出方向において、加熱マントル内の110.5℃以上の地点のうち、紡糸口金出口から最も離れた地点Pを決定した。そして、紡糸口金出口と前記地点Pとの間の距離を求め、これを「有効加熱マントル長」とした。実施例1における有効加熱マントル長は150mmであった。
【0069】
第1引き取りローラーの周速(300m/分)を紡糸速度として、前記有効加熱マントル長に基づいて、繊維状のPGA樹脂が紡糸口金から吐出してから110.5℃以上PGA樹脂の融点以下の温度雰囲気中に保持されていた時間(秒)を算出した。その結果を表1に示す。
【0070】
さらに、紡糸口金出口からボビンまでの距離(2m)と紡糸速度から、紡糸時間(秒)を算出し、また、1穴あたりのPGA樹脂の吐出量と紡糸速度から、PGA樹脂未延伸単糸の単位長さ当たりの質量(g/m)を算出した。これらの結果も表1に示す。
【0071】
(実施例2〜4)
第1引き取りローラー7の周速(紡糸速度)をそれぞれ600m/分、900m/分、1100m/分に変更した以外は実施例1と同様にしてPGA樹脂未延伸糸(a−2)、(a−3)、(a−4)を作製し、製造直後のPGA樹脂未延伸糸(a−2)、(a−3)、(a−4)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(a−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(a−2)、(a−3)、(a−4)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(A−2)、(A−3)、(A−4)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表1に示す。
【0072】
さらに、PGA樹脂未延伸糸(a−2)、(a−3)、(a−4)を実施例1と同様にして温度40℃、相対湿度80%RHの雰囲気下で24時間保管し、保管後のPGA樹脂未延伸糸(b−2)、(b−3)、(b−4)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(b−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(b−2)、(b−3)、(b−4)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(B−2)、(B−3)、(B−4)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表1に示す。
【0073】
なお、加熱マントル内のPGA樹脂吐出中の温度分布は実施例1の場合と同じものであった。各実施例において、実施例1と同様にして、繊維状のPGA樹脂が所定の温度雰囲気中に保持されていた時間、紡糸時間、PGA樹脂未延伸単糸の単位長さ当たりの質量を算出した。これらの結果も表1に示す。
【0074】
(実施例5)
加熱マントルの設定温度を180℃に変更した以外は実施例1と同様にしてPGA樹脂未延伸糸(a−5)を作製し、製造直後のPGA樹脂未延伸糸(a−5)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(a−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(a−5)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(A−5)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表1に示す。
【0075】
さらに、PGA樹脂未延伸糸(a−5)を実施例1と同様にして温度40℃、相対湿度80%RHの雰囲気下で24時間保管し、保管後のPGA樹脂未延伸糸(b−5)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(b−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(b−5)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(B−5)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表1に示す。
【0076】
なお、加熱マントル内のPGA樹脂吐出中の温度分布を実施例1と同様にして測定したところ、紡糸口金出口からの距離が10mm、60mm、120mmの地点でそれぞれ220℃、195℃、150℃であった。この温度分布から、実施例1と同様にして有効加熱マントル長を求めたところ、150mmであった。この値から、実施例1と同様にして繊維状のPGA樹脂が所定の温度雰囲気中に保持されていた時間を算出した。また、実施例1と同様にして、紡糸時間、PGA樹脂未延伸単糸の単位長さ当たりの質量を算出した。これらの結果も表1に示す。
【0077】
(実施例6〜8)
第1引き取りローラー7の周速(紡糸速度)をそれぞれ600m/分、900m/分、1100m/分に変更した以外は実施例5と同様にしてPGA樹脂未延伸糸(a−6)、(a−7)、(a−8)を作製し、製造直後のPGA樹脂未延伸糸(a−6)、(a−7)、(a−8)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(a−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(a−6)、(a−7)、(a−8)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(A−6)、(A−7)、(A−8)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表1に示す。
【0078】
さらに、PGA樹脂未延伸糸(a−6)、(a−7)、(a−8)を実施例1と同様にして温度40℃、相対湿度80%RHの雰囲気下で24時間保管し、保管後のPGA樹脂未延伸糸(b−6)、(b−7)、(b−8)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(b−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(b−6)、(b−7)、(b−8)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(B−6)、(B−7)、(B−8)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表1に示す。
【0079】
なお、加熱マントル内のPGA樹脂吐出中の温度分布は実施例5の場合と同じものであった。各実施例において、実施例1と同様にして、繊維状のPGA樹脂が所定の温度雰囲気中に保持されていた時間、紡糸時間、PGA樹脂未延伸単糸の単位長さ当たりの質量を算出した。これらの結果も表1に示す。
【0080】
(比較例1)
加熱マントルを装着しなかった以外は実施例1と同様にしてPGA樹脂未延伸糸(a−c1)を作製し、製造直後のPGA樹脂未延伸糸(a−c1)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(a−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(a−c1)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(A−c1)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表2に示す。
【0081】
さらに、PGA樹脂未延伸糸(a−c1)を実施例1と同様にして温度40℃、相対湿度80%RHの雰囲気下で24時間保管し、保管後のPGA樹脂未延伸糸(b−c1)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(b−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(b−c1)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(B−c1)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表2に示す。
【0082】
なお、加熱マントルを装着していないため、紡糸口金出口付近の雰囲気温度は室温(23℃)である。したがって、繊維状のPGA樹脂が所定の温度雰囲気中に保持されていた時間は0秒とした。また、実施例1と同様にして、紡糸時間、PGA樹脂未延伸単糸の単位長さ当たりの質量を算出した。これらの結果を表2に示す。
【0083】
(比較例2〜4)
第1引き取りローラー7の周速(紡糸速度)をそれぞれ600m/分、900m/分、1100m/分に変更した以外は比較例1と同様にしてPGA樹脂未延伸糸(a−c2)、(a−c3)、(a−c4)を作製し、製造直後のPGA樹脂未延伸糸(a−c2)、(a−c3)、(a−c4)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(a−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(a−c2)、(a−c3)、(a−c4)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(A−c2)、(A−c3)、(A−c4)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表2に示す。
【0084】
さらに、PGA樹脂未延伸糸(a−c2)、(a−c3)、(a−c4)を実施例1と同様にして温度40℃、相対湿度80%RHの雰囲気下で24時間保管し、保管後のPGA樹脂未延伸糸(b−c2)、(b−c3)、(b−c4)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(b−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(b−c2)、(b−c3)、(b−c4)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(B−c2)、(B−c3)、(B−c4)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表2に示す。
【0085】
なお、加熱マントルを装着していないため、比較例1と同様に、繊維状のPGA樹脂が所定の温度雰囲気中に保持されていた時間は0秒とした。また、実施例1と同様にして、紡糸時間、PGA樹脂未延伸単糸の単位長さ当たりの質量を算出した。これらの結果を表2に示す。
【0086】
(比較例5)
加熱マントルの設定温度を100℃に変更した以外は実施例1と同様にしてPGA樹脂未延伸糸(a−c5)を作製し、製造直後のPGA樹脂未延伸糸(a−c5)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(a−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(a−c5)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(A−c5)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表2に示す。
【0087】
さらに、PGA樹脂未延伸糸(a−c5)を実施例1と同様にして温度40℃、相対湿度80%RHの雰囲気下で24時間保管し、保管後のPGA樹脂未延伸糸(b−c5)の各物性を前記評価方法に従って測定した。また、PGA樹脂未延伸糸(b−1)の代わりにPGA樹脂未延伸糸(b−c5)を用いた以外は実施例1と同様に延伸してPGA樹脂延伸糸(B−c5)を作製し、各物性を前記評価方法に従って測定した。これらの結果を表2に示す。
【0088】
なお、加熱マントル内のPGA樹脂吐出中の温度分布を実施例1と同様にして測定したところ、紡糸口金出口からの距離が5mm、10mm、60mm、120mmの地点でそれぞれ111℃、95℃、75℃、40℃であった。この温度分布から、実施例1と同様にして有効加熱マントル長求めたところ、5mmであった。この値から、実施例1と同様にして繊維状のPGA樹脂が所定の温度雰囲気中に保持されていた時間を算出した。また、実施例1と同様にして、紡糸時間、PGA樹脂未延伸単糸の単位長さ当たりの質量を算出した。これらの結果も表2に示す。
【0089】
(比較例6)
加熱マントルの設定温度を280℃に変更した以外は実施例1と同様にしてPGA樹脂未延伸糸(a−c6)を作製したが、紡糸口金から吐出された樹脂が引き取られる間に糸切れが起こり、安定してPGA樹脂未延伸糸を得ることが困難であったため、紡糸性Cと判断した。なお、紡糸口金出口付近の温度はPGA樹脂の融点(220℃)を超える温度であった。したがって、紡糸口金から吐出されたPGA樹脂は吐出直後に所定の温度雰囲気に保持されていないため、保持時間は0秒とした。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の製造方法によりPGA樹脂未延伸糸を製造した場合(実施例1〜8)には、製造直後において、100℃における乾熱収縮率が小さく(55%以下)、引張伸度が高く(150%以上)、解じょ性に優れたPGA樹脂未延伸糸が得られることが確認された。また、実施例1〜8で得られたPGA樹脂未延伸糸を製造後直ぐに延伸した場合には、単糸繊度が低く(1.7デニール以下)、引張強度が高く(7.0gf/デニール以上)、引張伸度が高い(20%以上)PGA樹脂延伸糸が得られることがわかった。
【0093】
さらに、実施例1〜8で得られたPGA樹脂未延伸糸は、高温高湿下に曝された場合であっても、解じょ性に優れたものであり、このような高温高湿下に曝されたPGA樹脂未延伸糸を延伸した場合でも、単糸繊度が低く(1.7デニール以下)、引張強度が高く(6.0gf/デニール以上)、引張伸度が高い(20%以上)PGA樹脂延伸糸が得られることがわかった。
【0094】
また、加熱マントル内の温度分布が同じ条件で製造されたPGA樹脂未延伸糸であっても、PGA樹脂未延伸単糸の単位長さ当たりの質量が6.0×10
−4g/m以上のPGA樹脂未延伸糸(実施例1〜2、5〜6)は、6.0×10
−4g/m未満のPGA樹脂未延伸糸(実施例3〜4、7〜8)に比べて、製造直後において100℃での乾熱収縮率が小さくなり、製造直後および高温高湿保管後のいずれにおいても引張伸度が高くなることがわかった。
【0095】
さらに、実施例1〜2、5〜6で得られたPGA樹脂未延伸糸を延伸した場合には、実施例3〜4、7〜8で得られたPGA樹脂未延伸糸を延伸した場合に比べて、製造直後および高温高湿保管後のいずれにおいても引張強度および引張伸度が高いPGA樹脂延伸糸が得られることがわかった。
【0096】
一方、表2に示した結果から明らかなように、本発明にかかる温度雰囲気下に繊維状のPGA樹脂を保持しなかった場合(比較例1〜4)には、得られたPGA樹脂延伸糸は、引張伸度が低い(19%以下)ものであった。特に、PGA樹脂未延伸単糸の単位長さ当たりの質量が6.0×10
−4g/m未満のPGA樹脂未延伸糸(比較例3〜4)は、解じょ性も劣るものであった。また、本発明にかかる温度雰囲気下に保持された時間が0.0012秒未満のPGA樹脂未延伸糸(比較例5)も解じょ性に劣るものであった。