(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735549
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】液晶プロジェクタ
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20150528BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20150528BHJP
H04N 5/74 20060101ALI20150528BHJP
G03B 21/16 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/00 E
H04N5/74 Z
G03B21/16
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-556702(P2012-556702)
(86)(22)【出願日】2011年2月9日
(86)【国際出願番号】JP2011052785
(87)【国際公開番号】WO2012108019
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2013年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】乾 真朗
(72)【発明者】
【氏名】松井 信樹
【審査官】
田井 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−282416(JP,A)
【文献】
特開2007−033746(JP,A)
【文献】
特開2005−195824(JP,A)
【文献】
特開平06−281948(JP,A)
【文献】
特開平09−197364(JP,A)
【文献】
特開2002−318340(JP,A)
【文献】
特開2003−207639(JP,A)
【文献】
特開平09−080374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335− 1/13363
G03B 21/00−21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された映像信号を液晶パネルユニットにおいて光信号に変換して投射する液晶プロジェクタであって、
光を発生する光源部と、
該光源部から供給された光が照射され該光を前記映像信号のレベルに応じて通過させる液晶パネルと偏光板を有する液晶パネルユニットと、
該液晶パネルユニットを通過した光を外部に投射する投射レンズと、
前記液晶パネルユニットを冷却するための冷却風を生成して前記偏光板の厚さ方向に対して略直交する方向、即ち前記投射レンズの光軸に対して略直交する方向に送出し、該冷却風を前記液晶パネルユニットに送出する冷却部と、
該冷却部が前記液晶パネルユニットに前記冷却風を送出する側に面した、前記液晶パネルユニットの前記偏光板の端面に当たる前記冷却風を低減して、当該冷却風に含まれる塵埃が当該偏光板の端面に付着することを防ぐためのシェード部材を有しており、
前記シェード部材と偏光板は、前記偏光板の厚さをt、前記シェード部材における前記偏光板の厚さ方向の幅をa、前記シェード部材と前記偏光板の間の距離をbとした場合、
0.9t≦ a ≦1.5t
0.5t≦ b ≦1.5t
の関係にあることを特徴とする液晶プロジェクタ。
【請求項2】
供給された映像信号を液晶パネルユニットにおいて光信号に変換して投射する液晶プロジェクタであって、
光を発生する光源部と、
該光源部から供給された光が照射され該光を前記映像信号のレベルに応じて通過させる液晶パネルと無機偏光板を有する液晶パネルユニットと、
該液晶パネルユニットを通過した光を外部に投射する投射レンズと、
前記液晶パネルユニットを冷却するための冷却風を生成して前記液晶パネルユニットに送出する冷却部と、
該冷却部が前記液晶パネルユニットに前記冷却風を送出する側に面した、前記液晶パネルユニットの前記偏光板の端面に当たる前記冷却風を低減して、当該冷却風に含まれる塵埃が当該偏光板の端面に付着することを防ぐためのシェード部材を有しており、
前記冷却風は、前記無機偏光板における偏光面とは逆の表面を主に冷却することを特徴とする液晶プロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶プロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
画像を投射表示するための液晶プロジェクタにおいては、内蔵する液晶パネルや液晶パネルの直近に位置する偏光板をはじめとする構成要素の温度を、所定の動作保証範囲よりも上昇させないようにするため、冷却機構が必要である。冷却方法としては空冷が一般的であり、内蔵するファンが液晶プロジェクタの外部より空気を取込み、液晶パネルや偏光板に対して下側から冷却風として送込むようにしている。
特許文献1においては、シロッコファンを用いた投射型液晶表示装置の冷却機構を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−52324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したように、外気を取込んで液晶プロジェクタの構成要素を冷却する場合には、塵埃を一緒に取込むことを防ぐ必要があるため、吸気部において防塵用のフィルタが設けられている。しかし、フィルタで塵埃を完全に除去することは困難であるため、時間の経過とともに微細な塵埃が液晶パネルや偏光板に付着するのが実情である。周知のとおり、液晶パネルや偏光板はR(赤)、G(緑)、B(青)の各光に対して別々に設けられている。塵埃の付着の仕方は液晶パネルや偏光板により互いに異なるため、塵埃の付着によって照度が低下するにとどまらず、色バランスが崩れて画像上で色ムラが発生する問題がある。
【0005】
また、従来は偏光板として有機フィルムを使う場合が多かったが、最近ではこれよりも寿命の長い無機偏光板、例えばアルミグリッド無機偏光板が多く使われるようになった。無機偏光板においては、特に水分を含んだ塵埃が端面に付着すると、毛細管現象によってワイヤ溝に沿って塵埃が進行し筋状に付着することによって、投射画面上で縞模様の色ムラを発生させ、さらに最悪の場合はアルミグリッドを腐食させる。特に実装状態でワイヤ溝の長手方向が冷却風の流れ方向と並行となるように配置される偏光板においては、製造時の工程の関係で、前記冷却風を受ける偏光板の端面ではアルミグリッドの断面にコーティングがないため、問題が発生し易い。
本発明の目的は前記した問題に鑑み、塵埃の付着を低減した液晶プロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明は、供給された映像信号を液晶パネルユニットにおいて光信号に変換して投射する液晶プロジェクタであって、
光を発生する光源部と、該光源部から供給された光が照射され該光を前記映像信号のレベルに応じて通過させる液晶パネルと偏光板を有する液晶パネルユニットと、該液晶パネルユニットを通過した光を外部に投射する投射レンズと、前記液晶パネルユニットを冷却するための冷却風を生成して前記液晶パネルユニットに送出する冷却部と、
該冷却部が前記液晶パネルユニットに前記冷却風を送出する側に面した、前記液晶パネルユニットの前記偏光板の一面に当たる前記冷却風を低減するためのシェード部材を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、塵埃の付着を低減した液晶プロジェクタを提供でき、液晶プロジェクタの基本性能の向上に寄与できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】液晶パネルユニット付近の冷却気流を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例につき図面を用いて説明する。まず液晶プロジェクタの全般的な構成を説明する。
図1は、液晶プロジェクタのブロック図であり、特にその光学系に重点を置いて示している。
図1で、光源ユニット101は発光部である管球101aと反射面としてのリフレクタ101bを含んでいる。楕円形状のリフレクタ101bの第1焦点位置に配置された管球101aから出射された光束は、リフレクタ101bの第2焦点位置に集光するように前記反射面から反射される。光束サイズを縮小された集光光束は、平行化作用を有する凹レンズ102により平行光束に変換される。なお、リフレクタ101bを放物面形状とした場合は、平行化作用をするための凹レンズ102は不要となる。
【0010】
凹レンズ102から出射された平行光束は、第1マルチレンズアレイ103aの各セルレンズにより部分光束に分割されて、第1マルチレンズに対応した第2マルチレンズアレイ103bの各セルレンズ上に集光される。集光された各部分光束は、直線偏光化部104で一旦、振動方向が互いに直交する2つに直線偏光に分離され、さらに一方の直線偏光の振動方向を他方の振動方向に合わせることで、振動方向が一方向の直線偏光に変換される。直線偏光化部104を出射した各部分光束は、重畳レンズ105によりRGB各色用の液晶パネルユニット1R,1G,1Bに重畳して照射される。
【0011】
なお、重畳レンズ105と液晶パネルユニット1R,1G,1Bの間の光路には、光路を折り曲げるための反射ミラー106a,106b,106c,106dと、色分解光学部としてのダイクロイックミラー107aと107bが設けられ、さらに各液晶パネルユニット1R,1G,1Bの手前には、投射光束の主光線を平行化するコリメータレンズ108R,108G,108Bが配置される。緑色や青色よりも光路長の長い赤色の光路には、重畳した光束を赤色用の液晶パネルユニット1Rの位置に写像するためのリレーレンズ109と110が配置されている。
【0012】
このようにして液晶パネルユニット1R,1G,1Bに供給された管球101aからの光束は、液晶パネルユニット1R,1G,1Bの各々に別途供給される映像R信号、映像G信号、映像B信号のレベルに応じて液晶パネルを通過できる量を変化される。これにより、前記光束に映像信号の情報が与えられる。このために、液晶パネルユニット1R,1G,1Bは液晶パネルのみならず、所定の振動方向の光束を通過させるための偏光板を備えている。
液晶パネルユニット1R,1G,1Bを通過した各光束は、クロスプリズム2で互いに合成され、投射レンズ3を介して外部に設けられたスクリーン(図示せず)に前記映像信号に応じた映像を表示する。
【0013】
以下、本実施例では、特に液晶パネルユニット1R,1G,1Bが含む液晶パネルや偏光板に係る事項に重点を置いて説明を続ける。液晶パネルユニット1R,1G,1Bは、塵埃の付着や温度変化(特に温度上昇)による特性の変化が特に問題となる構成要素である。この特性変化により、表示画像の明るさや色バランスが変化し、また寿命にも悪影響を与える。このため、液晶プロジェクタは液晶パネルユニット1R,1G,1Bを冷却するための冷却機構を有している。
該冷却機構における冷却ファンは、液晶プロジェクタの外部から取込んだ空気を、
図1の紙面に対して略垂直な方向に送り込むことにより、液晶パネルユニット1R,1G,1Bを冷却している。次に冷却機構について説明する。
【0014】
図2は、液晶プロジェクタの部分見取り図である。ここでは、
図1のブロック図に対して右側の側面より、液晶パネルユニットから投射レンズ周辺を見取った状態を示している。液晶パネルユニットは、
図2においてクロスプリズム2の左側に設けられた緑色の光に対応する液晶パネルユニット1Gのみを示しているが、当然ながらクロスプリズム2の手前には青色の光に対応する液晶パネルユニット1Bが、クロスプリズム2の向かい側には赤色の光に対応する液晶パネルユニット1Rが設けられている。ここでは液晶パネル1Gについて、液晶パネル11Gと偏光板12Gに対し別個の符号を付して示している。
図2では、これらの他に投射レンズ3と冷却部4を示している。冷却部4に関しては図の煩雑化を避けるため、概略図で示している。冷却部4は、冷却風ドライブ部41、ダクト42、冷却風吹出し部43を有している。図中の矢印は冷却風の流れを示している。
【0015】
冷却部4の冷却風ドライブ部41は例えば回転するファンを備えており、液晶プロジェクタの外部から空気を取込んで、図面上で左方向に向け冷却風としてダクト42に送出する。ダクト42に送出された冷却風は、液晶パネルユニット1G(1R,1B)の略下方に到ると図面上で上方向に方向を変え、冷却風吹出し部43から液晶パネルユニット1G(1R,1B)の下部から上部に向けて吹出される。これにより、液晶パネルユニット1G(1R,1B)は温度上昇が抑えられ、所定の動作保証温度範囲で動作できる。
【0016】
図3は、液晶プロジェクタの部分断面図であり、
図2とは異なり
図1のブロック図に対して左手の斜め上側から見た場合の、液晶パネルユニットから投射レンズ周辺の断面図を示している。
【0017】
液晶パネルユニット1Gの略下方に到った冷却風は、ダクト42の内部を図面上で上方向に進み、冷却風吹出し部43から液晶パネル11G(11R,11B)や偏光板12G(12R,12B)に向けて吹出される。しかしながら、前記冷却風は外気から取込まれた微細な塵埃を含んでおり、これら構成要素の表面、特に図面上で下側の細長い面に塵埃を付着堆積させる問題がある。
【0018】
前記したように、特に偏光板12G(12R,12B)がアルミグリッド無機偏光板であって、その下側の細長い面(以下、下端面と記載)に付着堆積した塵埃が水分を吸収した場合、付着した塵埃がグリッドを構成するワイヤ溝に沿ってグリッド表面を進行して筋状に付着して、投射された画像に色ムラを発生させ、最悪の場合はアルミグリッドを腐食させる問題がある。
この問題を解消するため本実施例では、冷却風を受ける偏光板12G(12R,12B)の下端面の図面上で下側(冷却風吹出し側)にシェード部を設け、偏光板12G(12R、12B)の下端面に直接受ける塵埃を含んだ冷却風の量を低減して、前記した塵埃の付着を防ぐことを一つの特徴としている。
【0019】
図4は、液晶パネルユニット付近の断面図であり、
図1のブロック図に対して左側から見た、液晶パネルユニットの下部付近の断面図を示している。前記冷却部4は、前記偏光板12G(12R,12B)の厚さ方向に対して略直交する方向、即ち前記投射レンズ3の光軸に対して略直交する方向に前記冷却風を送出する
液晶パネルユニット1G(1R,1B)が有する偏光板12G(12R,12B)の図面上で下側には、偏光板12G(12R,12B)の下端面に直接受ける冷却風の量を低減するためのシェード部材13G(13R,13B)が設けられている。当然ながら図面の手前側や奥行側に向けて偏光板13Gの下側の面全般にわたって、受ける冷却風の量を低減するようにしている。
【0020】
図5は、液晶パネルユニット付近の冷却気流を示す図であり、
図4と概略同じ方向から見た場合を示している。
図5は、気流に関するシミュレーション結果を示している。冷却風は液晶パネル11、偏光板12の広い表面に沿い、これらを冷却するように流れている。その際、シェード部材13の作用により、冷却風が偏光板12の特に下端面に直接当たらないよう流れる状況にある。即ち、シェード部材13を取付けた場合には、本来必要としていた冷却効果が低下して、液晶パネルユニット1G(1R、1B)の温度上昇を起こすことが懸念されるが、ここではこれが問題とならない範囲で目的を達成できることが分かる。
次に、液晶パネルユニットの冷却効果を損なわない範囲で、冷却風が偏光板12の下側の面に直接当たらないよう流れるための条件を示す。
【0021】
図6は、偏光板付近の断面図である。
図6は
図5と同じ方向から見た場合を示しているが、特にシェード部材13の付近を拡大して示している。ここで、シェード部材13の幅をa、偏光板12からの距離をb、偏光板12の厚さをtとする。
図6はa=1.5t、b=1.5tの場合であるが、図示するように冷却風が偏光板12の下側の面に直接当たらず、液晶パネル11や偏光板12の広い表面に沿い、これらを冷却するよう流れる状況が実現されている。さらにシミュレーションを進めた結果、図中でも示すように次の条件を満たすことが望ましいことが分かっている。
0.9t≦ a ≦1.5t (式1)
0.5t≦ b ≦1.5t (式2)
図6において、シェード部材13は中央に窪みを持つ形状としているが、この形状に応じて冷却風の流れを変えることができる。
図7は、偏光板付近の冷却気流を示す図であり、3つの互いに異なる例を示している。図中で左端の例は、シェード部材13が
図6と類似した丸い窪みを有する場合、中央の例はシェード部材13の断面がV字型の場合であって、ともに偏光板12の両側に沿って同程度の冷却風が通過する。
【0022】
右端の例は、シェード部材13を図面上で右上がりに傾けて設けた場合であって、冷却風は偏光板12の主に右側の面に沿って通過する。偏光板12においては、前記した無機偏光板のアルミグリッドは、図面上で左側の面、即ち前記した液晶パネル11G(11R、11B)に対向する面に設けられている。アルミグリッドに対する塵埃の影響を避けるため、主に図面上で右側の面に沿って冷却風を流す場合には、このようにシェード部材13を設けると良い。なお、先の
図6においては、シェード部材13の断面の中心が、偏光板12の断面の中心よりも図面上で若干左側にずれているが、この配置方法においても同様な効果がある。
【0023】
以上述べたように本実施例によれば、冷却風が含む微細な塵埃が偏光板に付着する問題を、冷却風の冷却効果を損なうことなく解消することができる。また、そのために設けられるシェード部材の大きさに対する解を提供することができる。
ここまで示した実施形態は一例であって、本発明を限定するものではない。例えば、冷却風を流す方向が異なる実施形態や、偏光板以外の構成要素に付着する塵埃を防ぐ実施形態をはじめ、本発明の趣旨に基づきながら異なる実施形態を考えられるが、いずれも本発明の範疇にある。
【符号の説明】
【0024】
1(1R,1G,1B):液晶パネルユニット、11(11R,11G,11B):液晶パネル、12(12R,12G,12B):偏光板、13(13R,13G,13B):シェード部材、2:クロスプリズム、3:投射レンズ、4:冷却部、41:冷却風ドライブ部、42:ダクト、43:冷却風吹出し部。