(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
本発明の一実施形態に係る薬剤投与装置11について、
図2〜
図9を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態の薬剤投与装置11は、
図2に示すように、装置本体の外装である筐体12によって覆われている。薬剤投与装置11は、電源ボタン16で薬剤投与装置の電源をON/OFFすることができ、エア抜きボタン17で製剤シリンジ内の空気抜きを行うことができる。また、薬剤投与装置11は、エア抜き動作を行った後や各種表示の確認等、必要な操作を完了した時、次のステップに進むことを可能にする完了ボタン18や、薬剤を投与する準備が完了した後、薬剤投与時に押す薬剤投与ボタン19、充電残量やエア抜き操作等の各種の必要な情報を表示するLCD20を有している。また、薬剤投与装置11は、筐体12の一端に着脱可能な先端キャップ13を有している。先端キャップ13は、製剤シリンジや薬液を注入する穿刺針の着脱時に必要に応じて着脱され、内部確認用の確認窓13aを有している。このため、透明な材料によって形成されたシリンジカバー14を介して製剤シリンジの有無や種類、製剤の量等を確認することができる。
【0011】
さらに、薬剤投与装置11は、
図3に示すように、筐体12の内部に挿入されるシリンジカバー14と、製剤シリンジ15と、ピストンケース26と、を備えている。
(シリンジカバー14)
シリンジカバー14は、
図3に示すように、着脱用突起14aと、シリンジ当接用傾斜部14bと、穿刺針装着部14cと、ハウジング14dと、検出用突起14eと、シリンジ装着爪14fと、を備えている。
【0012】
着脱用突起14aは、筐体12内に設けられたピストンケース26の内周面側に形成された着脱用溝26aと嵌合する。
シリンジ当接用傾斜部14bは、製剤を内包する製剤シリンジ15の一端に設けられているシリンジカバー当接用傾斜部15cと精度良く当接するように形成されている。
穿刺針装着部14cは、皮膚へ薬液を注入する穿刺針を装着可能な部位である。
【0013】
ハウジング14dは、製剤シリンジ15を内部に収納可能な略筒状の部材である。
検出用突起14eは、薬剤投与装置11の筐体12の内部に構成したシリンジカバー検出レバー24aの一端を押圧するために設けられている。
シリンジ装着爪14fは、後述する製剤シリンジ15のシリンジ端面15eを支持しており、シリンジカバー14内からの製剤シリンジ15の落下を防止する。
【0014】
(製剤シリンジ15)
製剤シリンジ15は、シールゴム15a,15bと、シリンジカバー当接用傾斜部15cと、ID(識別片)15dと、シリンジ端面15eと、を有している。
シールゴム15a,15bは、製剤シリンジ15の両端をシールして、内部の製剤を保存するために設けられている。
【0015】
シリンジカバー当接用傾斜部15cは、シリンジカバー14の一端に形成されたシリンジ当接用傾斜部14bに対して高精度に当接する。
ID(識別片)15dは、製剤シリンジ15を判別するための識別片であって、このID15dを読み取ることで、製剤シリンジ15内の製剤の種類等を判別する。なお、識別片としては、IDの代わりにタグやバーコード等を用いてもよい。
【0016】
シリンジ端面15eは、製剤シリンジ15をシリンジカバー14内へ挿入した際に、シリンジカバー14に設けられたシリンジ装着爪14fによって支持される。
(ピストンケース26およびその内部の構成)
ピストンケース26は、筐体12の内壁面に沿って設けられた略円筒形状の部材であって、外周面側に薬剤投与ボタン19、内周面側に、ピストン22、シリンジ検出スイッチ23、シリンジカバー検出部24、ピストン駆動用モータ27、シリンジ識別部31が設けられている。
【0017】
薬剤投与ボタン19は、薬剤投与装置11の側面に設けられており、製剤を投与する際に押下される。
ピストン22は、製剤シリンジ15の後端部に設けられたシールゴム15bに当接しながら前進して投与側に向かって製剤を押し出す。
シリンジ検出スイッチ23は、製剤シリンジ15が装着されたシリンジカバー14がピストンケース26内に挿入されると、製剤シリンジ15のシリンジ端面15eによって押下される。これにより、スイッチが切り替わることで、シリンジカバー14内に製剤シリンジ15が装着されていることを検出することができる。
【0018】
シリンジカバー検出部24は、シリンジカバー検出レバー24a、シリンジカバー検出レバースプリング24b、シリンジカバー検出スイッチ24cを有している。シリンジカバー14がピストンケース26内に挿入されると、シリンジカバー検出スイッチ24cがシリンジカバー検出レバースプリング24bのばね力に反して移動してシリンジカバー検出スイッチ24cを押下する。これにより、シリンジカバー14がピストンケース26内に装着されたことを検出することができる。
【0019】
ピストン駆動用モータ27は、所望の方向へ回転することにより、製剤の投与方向においてピストン22を前後進(伸縮)させる。
シリンジ識別部31は、製剤シリンジ15に付されたID15dを読み取って製剤シリンジ15が挿入されたことを検出するとともに、製剤シリンジ15の種類等を判別する。
<薬剤投与装置11の操作方法>
ここでは、本実施形態における薬剤投与装置11の操作方法について、
図4から
図9を用いて説明する。
【0020】
まず、
図4に示すように、略円筒形状のシリンジカバー14の内周面側に製剤シリンジ15を挿入する。この時、シリンジ装着爪14fが、製剤シリンジ15の後端にあるシリンジ端面15eを支持する。これにより、シリンジカバー14を傾けても製剤シリンジ15をシリンジカバー14内において保持することができる。
この後、
図5に示すように、製剤シリンジ15を保持したシリンジカバー14を、ピストンケース26内に装填する。このとき、着脱用突起14aと着脱用溝26aとが嵌合し、シリンジカバー14がピストンケース26内において固定される。
【0021】
ここで、シリンジカバー14の挿入過程において、製剤シリンジ15のシリンジ端面15eがシリンジ検出スイッチ23を押下する。これにより、スイッチが切り替わることで、薬剤投与装置11は製剤シリンジ15が装着されたことを検出する。
さらに、製剤シリンジ15に付されたID15dを、シリンジ識別部31によって読み取ることで、薬剤投与装置11は挿入された製剤シリンジ15が所望の製剤を含むものであるかどうかを判別する。
【0022】
また、検出用突起14eがシリンジカバー検出レバー24aを押し込んで、シリンジカバー検出スイッチ24cが切り替わる。これにより、薬剤投与装置11はシリンジカバー14が装填されたことを検出することができる。なお、このときシリンジカバー検出レバースプリング24bは、圧縮された状態で保持される。
次に、
図6に示すように、人体等に穿刺され、穿刺先に対して薬液を注入するための穿刺針28が、製剤シリンジ15の先端にある穿刺針装着部14cにセットされる。
【0023】
次に、
図7に示すように、人体の皮膚等に当接する先端キャップ13が、筐体12の薬剤投与側の先端部に装着される。なお、先端キャップ13の中央には、穿刺針28を通過させる開口部13bが形成されている。
以上のように、
図4から
図7に示した工程を経て使用前の準備を行った後、電源ボタン16(
図2参照)を押下して薬剤投与装置11の電源を入れる。この時、薬剤投与装置11は、シリンジ検出スイッチ23やシリンジカバー検出スイッチ24cの状態を確認して、製剤シリンジ15やシリンジカバー14が装着されているか否かの確認を行う。さらには、製剤シリンジ15に付されたID15dをシリンジ識別部31によって情報を読み込み、正しい製剤シリンジ15が装着されているか否かを確認する。これらの確認が全て完了することを条件として、次の操作であるエア抜きボタン17(
図2参照)の押下を受け付ける。
【0024】
次に、エア抜きボタン17を押下すると、図示しないピストンケース駆動モータによってピストンケース26全体が筐体12に対し左方向に約10mmスライドする。次に、ピストン駆動用モータ27が起動し、エア抜きのために、ピストン22が左方向に一定量移動する。このとき、シールゴム15bが穿刺方向(図中左方向)へ押され、製剤シリンジ15内にあるエアが穿刺針28から排出される。その後、ピストンケース駆動モータが反転し、ピストンケース26全体が筐体12に対して穿刺方向とは反対方向(図中右方向)に10mmスライドして元の位置に戻る。
【0025】
次に、
図8に示すように、製剤を投与する工程に移行するが、基本的な動作はエア抜き動作と同じである。
つまり、先端キャップ13を皮膚30に対して当接させて薬剤投与ボタン19を押下すると、図示しないピストンケース駆動モータによってピストンケース26全体が筐体12に対して穿刺方向(図中左方向)に約10mmスライドする。そして、穿刺針28の先端が、先端キャップ13から露出して皮膚30から皮下30aに到達する。
【0026】
次に、ピストン駆動用モータ27が起動して、ピストン22が穿刺方向(図中左方向)に製剤注入のために一定量移動し、シールゴム15bが穿刺方向(図中左方向)に押し込まれる。これにより、製剤シリンジ15内にある製剤29が、穿刺針28から皮下30aに注入される。その後、ピストンケース駆動モータが反転し、ピストンケース26全体が筐体12に対して穿刺方向とは反対方向(図中右方向)に約10mmスライドし元の位置に戻る。このため、穿刺針28は、皮膚30や皮下30aから抜針され、先端キャップ13内に戻される。
【0027】
次に、
図9に示すように、製剤を投与した後、筐体12に対してピストンケース26を後進させて、穿刺針28を皮膚30から抜き取る。
本実施形態では、以上のように、製剤が入った製剤シリンジ15をシリンジカバー14内に装着し、生体等に製剤を投与可能な薬剤投与装置11において、製剤シリンジ15を保持するシリンジカバー14と、シリンジカバー14を着脱自在に装着するピストンケース26を備えている。
【0028】
これにより、ピストンケース26に対して製剤シリンジ15を装着する際、製剤シリンジ15の落下や取付け時の姿勢を気にせず、容易かつ安全確実にシリンジカバー14を装着することができる。
また、本実施形態では、ピストンケース26内にシリンジ検出スイッチ23を設けている。これにより、製剤シリンジ15が確実に装着されたか否かを容易に検出することができる。
【0029】
また、ピストンケース26内にシリンジ識別部31を設けている。これにより、製剤シリンジ15のID15dを読み取って正しい製剤シリンジ15が装着されているかどうかを検出することができる。
さらに、ピストンケース26内にシリンジカバー検出部24を設けている。これにより、シリンジカバー14の装着の有無を容易に検出することができる。
【0030】
よって、これらの検出機能によって、不意に思いがけない箇所で動作を行うことがなくなり、安全な薬剤投与装置11を提供することができる。
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係る薬剤投与装置に使用されるシリンジカバー114の構成について、
図10〜
図13を用いて説明すれば以下の通りである。なお、上述の実施形態1と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0031】
本実施形態のシリンジカバー114では、
図10等に示すように、製剤シリンジ15の後端部を支持する部材として、シリンジ装着アーム14hを用いている点において、上記実施形態1のシリンジカバー14とは異なっている。
より詳細には、本実施形態におけるシリンジカバー114は、
図11に示すように、製剤シリンジ15のシリンジ端面15eを支持して落下を防止するためのシリンジ装着アーム14hを回動可能な状態で有している。
【0032】
これにより、製剤シリンジ15を装着したシリンジカバー114を、上述したピストンケース26内にセットした後、穿刺針28の先端から製剤を投与した後の使用済みの製剤シリンジ15を簡単に取出すことができる。
シリンジカバー114に挿入された製剤シリンジ15を取り出す際には、
図12に示すように、製剤シリンジ15のシリンジ端面15eを支持していたシリンジ装着アーム14hの先端を退避させる。これにより、シリンジ装着アーム14hの回動操作のみによって、製剤シリンジ15をシリンジカバー14内から容易に取り出すことができる。
【0033】
シリンジ装着アーム14hは、
図13に示すように、支軸14iを中心に回動可能な状態で支持されており、装着アームスプリング14gによって時計回り方向(右回転方向)に付勢されている。ストッパ14jは、シリンジ装着アーム14hと一体として構成されており、シリンジカバー114の内周面に対して当接する。
これにより、シリンジ装着アーム14hを反時計回りに回動させることにより、シリンジ装着アーム14hの先端をシリンジ端面15eの正面から退避させることができる。よって、シリンジカバー114内から製剤シリンジ15を簡単に取り出すことができる。
【0034】
(実施形態3)
本発明のさらに他の実施形態に係る薬剤投与装置111について、
図2、
図14〜
図20を用いて説明すれば以下の通りである。なお、上述の実施形態1、2と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
ここで、本実施形態の薬剤投与装置111は、主として、筐体12内にシリンジホルダ21が配置されている点において、シリンジホルダを持たない実施形態1の薬剤投与装置11とは異なっている。
【0035】
本実施形態の薬剤投与装置111は、
図2に示すように、当該装置本体の外装である筐体12によって覆われている。薬剤投与装置111は、電源ボタン16で当該装置の電源をON/OFFすることができ、エア抜きボタン17で製剤シリンジ15(
図14参照)内の空気抜きを行なうことができる。また、薬剤投与装置111は、エア抜き動作を行なった後や各種表示の確認等、必要な操作を完了した時、次のステップに進むことを可能にする完了ボタン18や、薬剤を投与する準備が完了した後、薬剤投与時に押す薬剤投与ボタン19、充電残量やエア抜き操作等の各種の必要な情報を表示するLCD20を有している。また、薬剤投与装置111は、筐体12の一端に、製剤シリンジ15や薬液を注入する穿刺針の着脱時に必要に応じて着脱可能である先端キャップ13を有している。この先端キャップ13には、確認窓13aが設けられており、透明なシリンジカバー14を通して製剤シリンジの有無や種類、製剤の量等を確認することができる。
【0036】
さらに、薬剤投与装置111は、
図14に示すように、主に、筐体12の内部に挿入されるシリンジカバー14と、ピストンケース26と、シリンジホルダ21と、シリンジホルダスプリング(付勢部)25と、シリンジカバー検出部24と、を備えている。なお、薬剤投与装置111には、製剤が入っている製剤シリンジ15が装填される。
シリンジカバー14は、ピストンケース26およびシリンジホルダ21に着脱可能に装着されるものであって、
図14に示すように、着脱用突起14aと、シリンジ当接用傾斜部14bと、穿刺針装着部14cと、ハウジング14dと、検出用突起14eと、を備えている。
【0037】
着脱用突起14aは、シリンジカバー14の外周面上から突出するように形成されており、シリンジカバー14の後端部側に位置している。そして、着脱用突起14aは、シリンジカバー14が当該装置本体に装着されている状態において、ピストンケース26に設けられた着脱用溝26aと嵌まり合う。
シリンジ当接用傾斜部14bは、シリンジカバー14が製剤シリンジ15を内包したときに、製剤シリンジ15の先端部側に設けられているシリンジカバー当接用傾斜部15cと精度良く当接するように形成されている。
【0038】
穿刺針装着部14cは、生体内へ薬液を注入するための穿刺針28(
図17参照)が装着される部分である。
ハウジング14dは、製剤シリンジ15をシリンジカバー14の内部に収納可能にするための略筒状の部分である。
検出用突起14eは、シリンジカバー14が当該装置本体に装着されるときに、ピストンケース26の内部に構成されているシリンジカバー検出レバー24aの一端を後端部方向に押圧するために設けられている。
【0039】
製剤シリンジ15は、製剤29を内部に保持するための部材であって、容器15fと、シールゴム15a,15bと、シリンジカバー当接用傾斜部15cと、ID(識別片)15dと、シリンジ端面15eと、を有している。
容器15fは、円筒形状の部材であって、例えば、ガラスやプラスチックなどの製剤29の圧力によって変形しないもので構成されていればよい。
【0040】
シールゴム15aは、容器15fの先端部側をシールしている。シールゴム15bは、円板形状の部材であって、その円周面が容器15fの内周面に当接しており、製剤シリンジ15の後端部側をシールしている。また、シールゴム15bは、外力によって、容器15fの内周面に沿って、すなわちシールゴム15bの円周面が容器15fの内周面に対し摺動しながら変位することができる。これにより、容器15f内の製剤29を保持および保存しつつ、後述するピストン22によってシールゴム15bが押圧されたときには、製剤29に圧力を付与することが可能になる。
【0041】
シリンジカバー当接用傾斜部15cは、上述のように、製剤シリンジ15がシリンジカバーに保持されている状態において、シリンジカバー14の一端に形成されているシリンジ当接用傾斜部14bに対して高精度に当接する。
ID(識別片)15dは、製剤シリンジ15を判別するための識別片であって、後述するシリンジ識別部31がID15dを読み取ることで、製剤シリンジ15内の製剤29の種類等を判別する。なお、識別片としては、ID15dの代わりにタグやバーコード等を用いてもよい。
【0042】
シリンジ端面15eは、製剤シリンジ15がシリンジホルダ21内に装着されるときに、シリンジ受け面21aに当接して押圧する。
ピストンケース26は、筐体12の内周面側に設けられている筒状の部材であって、その内周面側に着脱用溝26aが形成されている。この着脱用溝26aは、上述のように、シリンジカバー14の外周面に形成されている着脱用突起14aと嵌まり合うように形成されている。
【0043】
シリンジカバー検出部24は、シリンジカバー14の装着を検出するための部材であって、ピストンケース26の内周面側に設置されている。シリンジカバー検出部24は、シリンジカバー検出レバー24aとシリンジカバー検出レバースプリング24bとシリンジカバー検出スイッチ24cとを有している。
シリンジカバー検出レバー24aは、シリンジカバー14が当該装置本体に装着されるときに、シリンジカバー14に設けられている検出用突起14eに一方の端部が当接する位置に設けられている。また、シリンジカバー検出レバー24aは、検出用突起14eに当接する板状の部材から一体的に突出して形成されている突出部24dを含む。シリンジカバー検出レバースプリング24bは、一方の端部が、突出部24dの当該装置の後端部側の面に連結しており、他方の端部が、ピストンケース26内の固定壁に固定されている。つまり、シリンジカバー検出レバースプリング24bは、シリンジカバー検出レバー24aを当該装置の後端部から先端部方向へ付勢することによって、シリンジカバー検出レバー24aの未装着位置を規制している。ここで、未装着位置とは、シリンジカバー14が装着されていない状態の位置である。シリンジカバー検出スイッチ24cは、シリンジカバー14が当該装置に正常に装着された際に、その装着を検出するためのスイッチである。具体的には、シリンジカバー検出スイッチ24cは、シリンジカバー14が装着された場合、シリンジカバー検出レバー24aの上記一方の端部とは反対側の他方の端部によって当該装置の後端部側に押し込まれ、スイッチが切り替わる。
【0044】
シリンジホルダスプリング25は、シリンジホルダ21を当該装置の後端部側から先端部側に向けて付勢するためのものであって、一方の端部は、シリンジホルダ21の後端部に連結されており、他方の端部はピストンケース26内の固定壁に固定されている。
シリンジホルダ21は、製剤シリンジ15を保持するための略円柱形状の部材であって、ピストンケース26の内周面側に内包されている。また、シリンジホルダ21は、その内部にピストン部43と、シリンジ検出スイッチ(シリンジ検出部)23と、シリンジ識別部31と、ガイド孔42と、を有している。
【0045】
ピストン部43は、ピストン22とピストン駆動用モータ27とを含んでいる。ピストン22は、円板状の部材であって、一方の面(当該装置の先端部側の面)が製剤シリンジ15の後端部に設けられたシールゴム15bに当接しながら前進して投与側に向かって製剤29を押し出す。ピストン駆動用モータ27は、所望の方向へ回転することにより、製剤29の投与方向においてピストン22を前後進(伸縮)させる。
【0046】
シリンジ検出スイッチ23は、製剤シリンジ15がシリンジホルダ21に装着されると、製剤シリンジ15のシリンジ端面15eによって押下されるガイド孔42に突き出た突起部を含んでいる。これにより、スイッチが切り替わることで、シリンジホルダ21内に製剤シリンジ15が装着されていることを検出することができる。
シリンジ識別部31は、製剤シリンジ15に付されたID15dを読み取って製剤シリンジ15が挿入されたことを検出するとともに、製剤シリンジ15の種類等を判別する。また、シリンジ識別部31は、一部分がガイド孔42に露出しており、この露出している部分と製剤シリンジ15に設けられているID15dとが接触することによってID15dの識別が可能になる。
【0047】
ガイド孔42は、製剤シリンジ15を装着する際に、製剤シリンジ15の外周面に当接しながら製剤シリンジ15をピストン部43方向にガイドする。このガイド孔42は、シリンジホルダ21の内周面と、ピストン22のシールゴム15bを押圧する面に略平行なシリンジ受け面21aとによって構成されている。また、ガイド孔42は、このガイド孔42に製剤シリンジ15が挿入された場合、
図15に示すように、シリンジ端面15eとシリンジ受け面21aとが当接するように形成されており、かつ、製剤シリンジ15のシールゴム15bとピストン22とが微小な隙間を介して対向するように形成されている。これにより、製剤シリンジ15を装着した瞬間にピストン22がシールゴム15bを不測に押圧してしまうことを防止することができる。
【0048】
また、シリンジホルダ21の外周面は、シリンジカバー14の内周面と当接するように形成されており、シリンジカバー14が当該装置に装着される際にシリンジカバー14を誘導する役割を果たす。この誘導によって、シリンジカバー14は、検出用突起14eがシリンジカバー検出レバー24aに係合し、着脱用突起14aが着脱用溝26aに嵌まり合うように装着することができる。
【0049】
<薬剤投与装置111の操作方法>
ここでは、本実施形態における薬剤投与装置111の操作方法について、
図15から
図20を用いて説明する。
まず、
図15に示すように、シリンジホルダ21のガイド孔42(
図14参照)に製剤シリンジ15を挿入する。この時、製剤シリンジ15の挿入過程において、シリンジ端面15eがシリンジ検出スイッチ23を押下する。これにより、スイッチが切り替わり、薬剤投与装置111は製剤シリンジ15が装着されたことを検出する。
【0050】
さらに、製剤シリンジ15に付されたID15dを、シリンジ識別部31によって読み取ることで、薬剤投与装置111は挿入された製剤シリンジ15が所望の製剤29を含むものであるか否かを判別する。
ただし、ここでは、仮に製剤シリンジ15の挿入が不充分であって、シリンジ検出スイッチ23の切り替わりやシリンジ識別部31の読み取りができない場合であっても、不具合は生じない。以下では、この場合を含めて説明する。
【0051】
次に、
図16に示すように、シリンジカバー14をピストンケース26内に装填する。このとき、着脱用突起14aと着脱用溝26aとが嵌合し、シリンジカバー14がピストンケース26内において固定される。
ここで、着脱用突起14aと着脱用溝26aを嵌合させてシリンジカバー14を固定する際、シリンジカバー14に設けられているシリンジ当接用傾斜部14bが製剤シリンジ15に設けられているシリンジカバー当接用傾斜部15cを後端部方向に押す。このため、シリンジ端面15eがシリンジ受け面21aを押し、シリンジホルダ21を後端部方向(
図16における右向き矢印方向)にスライドさせる。またこのとき、シリンジホルダスプリング25は圧縮された状態で保持される。したがって、前の操作で製剤シリンジ15の挿入が不充分であったとしても、シリンジカバー14を装着することによって、上述したシリンジ検出スイッチ23の切り替わりやシリンジ識別部31の読み取りが確実に行なえるようになる。
【0052】
また、シリンジカバー14の装着によって、検出用突起14eがシリンジカバー検出レバー24aを押し込んで、シリンジカバー検出スイッチ24cが切り替わる。これにより、薬剤投与装置111はシリンジカバー14が装填されたことを検出することができる。なお、このときシリンジカバー検出レバースプリング24bは、圧縮された状態で保持される。
【0053】
次に、
図17に示すように、人体等に穿刺され、穿刺先に対して薬液を注入するための穿刺針28が、製剤シリンジ15の先端にある穿刺針装着部14cにセットされる。
次に、
図18に示すように、人体の皮膚等に接触する先端キャップ13が、筐体12の薬剤投与側の先端部に装着される。なお、先端キャップ13の中央には、穿刺針28を通過させる開口部13bが形成されている。
【0054】
以上のように、
図15から
図18を用いて説明した操作を経て使用前の準備を行った後、使用者は、電源ボタン16(
図2参照)を押下して薬剤投与装置111の電源を入れる。この時、薬剤投与装置111は、シリンジ検出スイッチ23やシリンジカバー検出スイッチ24cの状態を確認して、製剤シリンジ15やシリンジカバー14が装着されているか否かの確認を行う。さらには、薬剤投与装置111は、製剤シリンジ15に付されたID15dをシリンジ識別部31によって情報を読み込み、正しい製剤シリンジ15が装着されているか否かを確認する。これらの確認が全て完了することを条件として、薬剤投与装置111は次の操作であるエア抜きボタン17(
図2参照)の押下を受け付ける。
【0055】
次に、エア抜きボタン17が押下されると、図示しないピストンケース駆動モータによってピストンケース26全体が筐体12に対し左方向(先端部方向)に約10mmスライドする。次に、ピストン駆動用モータ27が起動し、ピストン22が左方向(先端部方向)にエア抜きのために一定量移動する。このとき、シールゴム15bが穿刺方向(図中左方向)へ押され、製剤シリンジ15内にあるエアが穿刺針28から排出される。その後、ピストンケース駆動モータが反転し、ピストンケース26全体が筐体12に対して穿刺方向とは反対の右方向(後端部方向)に10mmスライドして元の位置に戻る。
【0056】
次に、
図19に示すように、製剤を投与する工程に移行するが、基本的な動作は上述したエア抜き動作と同じである。
つまり、先端キャップ13を皮膚30に対して当接させて薬剤投与ボタン19を押下すると、図示しないピストンケース駆動モータによってピストンケース26全体が筐体12に対して穿刺方向(図中左方向)に約10mmスライドする。そして、穿刺針28の先端が、先端キャップ13から露出して皮膚30から皮下30aに到達する。
【0057】
次に、ピストン駆動用モータ27が起動して、ピストン22が穿刺方向(図中左方向)に製剤注入のために一定量移動し、シールゴム15bが穿刺方向(図中左方向)に押し込まれる。これにより、製剤シリンジ15内にある製剤29が、穿刺針28から皮下30aに注入される。
その後、
図20に示すように、ピストンケース駆動モータが反転し、ピストンケース26全体が筐体12に対して穿刺方向とは反対方向(図中右方向)に約10mmスライドし元の位置に戻る。このため、穿刺針28は、皮膚30や皮下30aから抜針され、先端キャップ13内に戻される。
【0058】
以上のように、本実施形態においては、製剤29が入った製剤シリンジ15を装填し、生体等に製剤29を投与可能な薬剤投与装置111が、シリンジホルダ21を一方向から付勢するシリンジホルダスプリング25と、製剤シリンジ15を覆い先端に穿刺針28を着脱自在に装着できるシリンジカバー14と、製剤シリンジ15及びシリンジカバー14が着脱可能に装着されるシリンジホルダ21と、を備えている。
【0059】
これにより、製剤シリンジ15の着脱を容易かつ確実に行なうことができる。
また、本実施形態では、シリンジホルダ21内にシリンジ検出スイッチ23が設けられている。これにより、製剤シリンジ15の装着を確実に検出することができる。
また、本実施形態では、シリンジホルダ21内にシリンジ識別部31が設けられている。これにより、製剤シリンジ15のIDを読み取り、正しい製剤シリンジ15が装着されているか否かを検出することができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、ピストンケース26内にシリンジカバー検出部24が設けられている。これにより、シリンジカバー14の装着を確実に検出することができる。
よって、これらの検出機能により、不意に種々の動作が作動することもなくなり、安全な薬剤投与装置を提供することができる。
(実施形態4)
本発明のさらに他の実施形態に係る薬剤投与装置に使用されるシリンジホルダ212の構成について、
図21を用いて説明すれば以下の通りである。なお、上述の実施形態1〜3と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
本実施形態のシリンジホルダ212では、
図21に示すように、製剤シリンジ15の外周面を保持する外周規制用突起部21d、および製剤シリンジ15の内周面の位置を規制する内周規制用突起部21cが設けられている点が上記実施形態3とは異なっている。
これにより、製剤シリンジ15がガイド孔に挿入された時の位置決めの精度や容易さ、および製剤シリンジ15に対する保持力を高めることができる。また、シリンジホルダ21内に製剤シリンジ15が挿入された場合、外周規制用突起部21dが設けられていない部分では、シリンジホルダ21の内周面と製剤シリンジ15の外周面とが当接しておらず、隙間が形成されていることになる。したがって、シリンジホルダ21内に製剤シリンジ15を挿入する際に、シリンジホルダ21内が密封状態にならないため、製剤シリンジ15の抜き差しを容易にすることが可能になる。
【0062】
さらに、シリンジホルダ212は、製剤シリンジ15の挿入時に製剤シリンジをピストン部方向にガイドしやすいようにテーパ形状になっているガイド用傾斜部(テーパ形状部)21bを有している。これにより、製剤シリンジ15を挿入した時の位置精度を上述の実施形態3の場合よりも、一段と向上させている。
また、本実施形態の薬剤投与装置は、上述した実施形態に係る薬剤投与装置であって、シリンジカバーは、一部または全部が透明または半透明である。
【0063】
これにより、使用者は、シリンジカバーの内部を確認することができるため、シリンジホルダに製剤シリンジを装着し、製剤シリンジをシリンジカバーで覆った状態で、製剤シリンジの有無や種類、あるいは製剤の残量等を目視で確認することができる。
本実施形態の薬剤投与装置は、上述した実施形態に係る薬剤投与装置であって、シリンジカバーが装着されたことを検知するシリンジカバー検出部をさらに備えている。
【0064】
これにより、当該装置本体へのシリンジカバーの装着の有無を確実に検出することができる。したがって、例えば、シリンジカバーが装着されていない状態では薬剤投与装置の動作を行なわないようにすることができる。
この結果、使用者がシリンジカバー(および製剤シリンジ)未装着のまま誤って動作させることを防止して、装置の安全性を向上させることができる。
【0065】
本実施形態の薬剤投与装置は、上述した実施形態に係る薬剤投与装置であって、シリンジカバー検出部は、シリンジカバー検出レバーと、シリンジカバー検出レバースプリングと、シリンジカバー検出スイッチと、を含む。シリンジカバー検出レバースプリングは、シリンジカバー検出レバーを一方向から付勢する。シリンジカバー検出スイッチは、シリンジカバー検出レバーによってON/OFFを切り替える。
【0066】
これにより、簡易な構成によってシリンジカバーの装着の有無を検出することができる。したがって、使用者がシリンジカバーの装着されていない状態で誤って動作させてしまうことを防止することができる。
<参考例1>
従来、製剤を生体に簡易に投与するための薬剤投与装置として、電動で穿刺針を生体に穿刺し、製剤を注入した後に抜針する薬剤投与装置が実用化されている。
【0067】
すなわち、
図22(a)から
図22(c)に示すように、このような薬剤投与装置1301を使用する場合、使用者は、まずフロントケース部1303bに対しシリンジ部1303aを装着し、その後、このフロント部1303を、ピストン1302bを押出すための薬剤投与ボタン1302aを含む本体部1302に装着する。製剤シリンジ1303fは、先端部側と後端部側にシールゴム(図示せず)を有する。シールゴムは、ピストン1302bによって先端部方向へ押圧されて変位し、この変位に伴って製剤が生体内に注入される。また、フロントケース部1303bは、外側を覆うフロントケース1303eとこの内側にあってスライド動作するスライドケース1304等で構成される。
【0068】
シリンジ部1303aは、針部1305が着脱可能な針部装着部1303cと、スライドケース1304のガイド溝1304aに嵌合するダボ1303dと、を有する(例えば、特開2005−287676号公報(平成14年1月22日公開)参照)。
しかしながら、従来の薬剤投与装置1301では、使用者は、まず、
図22(c)に示すように、シリンジ部1303aに設けたダボ1303dをフロントケース部1303bに構成したスライドケース1304のガイド溝1304aに真っ直ぐ挿入した後で回転させ、スライドケース1304に設けた1304bで示す穴A、ダボ押圧部1304cを通過させ、穴B1304dで固定する。次に、製剤を注入するための針部1305を針部装着部1303cに取り付ける。その後、フロント部1303を本体部1302に装着し、フロントキャップ1306をフロントケース部1303bに装着し、フロントキャップ1306の先端を身体に接触させた状態で、薬剤投与ボタン1302aを押して製剤を注入する。
【0069】
上記のような従来の使用方法において、針1305aを針部装着部1303cから外す際、シリンジ部1303aがスライドケース1304から外れると危険なため、しっかりと固定させる必要がある。シリンジ部1303aの着脱の操作には、大きな力が必要であり、操作性が悪かった。また、ダボ1303dがダボ押圧部1304cで強く変形させられて固定されるため、使用時に破損するおそれがあった。
【0070】
以下の実施形態に係る薬剤投与装置は上記課題を解決するものであり、製剤を生体に注入する薬剤投与装置において、シリンジ部の着脱操作が容易で、固定のしっかりした、耐久性のある薬剤投与装置を提供することを目的とする。
(実施形態5)
本発明のさらに他の実施形態に係る薬剤投与装置320について、
図23から
図26(a)を用いて説明すれば以下の通りである。
【0071】
本実施形態の薬剤投与装置320は、
図23に示すように、本体部321と製剤シリンジ322とシリンジカバー323と針部305と先端キャップ部324から主要部分が構成されている。
本体部321は、シリンジカバー323の着脱用ダボ323bを挿入する際の目印用標示となる位置合せマーク321a、製剤を投与する際に使用する薬剤投与ボタン321c、バッテリーの充電残量や操作する上で必要な各種の情報を表示する表示部321b、製剤シリンジ322を一時的に保持するシリンジホルダ326、本体部321に対してスライド動作可能なインナーケース325、シリンジカバー323に設けられた着脱用ダボ323bをガイドするガイド溝であるシリンジカバー着脱用溝325a等により構成されている。
【0072】
本実施形態に係るインナーケースおよびその周辺について、
図24から
図26(a)を用いて説明すれば以下の通りである。
シリンジカバー323は、シリンジホルダ326に一時的に保持される製剤シリンジ322の先端部側からインナーケース325に装着可能で、一端に針部305を装着する針部装着部323aが形成される透明もしくは半透明の部材である。他端には、シリンジホルダを装着する際に作用する装着方向傾斜面323dと脱着する際に作用する脱着方向傾斜面323eを持ち、装着方向傾斜角323fと脱着方向傾斜角323gに示すように両者の傾斜角は異なった角度になっている。また、着脱用ダボ323bがインナーケース325に設けたシリンジカバー着脱用溝325aにガイドされる。さらに、着脱時に保持する外筒部に滑り防止用のリブ323cを設けている。
【0073】
先端キャップ部324は、本体部321に製剤シリンジ322、シリンジカバー323、針部305を順次装着した後に装着する。
インナーケース325は、本体部321に対しスライド動作可能で、内部に製剤シリンジ322を保持するシリンジホルダ326と、これを一方向から付勢するシリンジホルダ付勢バネ327を構成する。
【0074】
シリンジホルダ326は、内部に製剤シリンジ322を保持可能な筒形状をしており、
図25(a)に示すように、シリンジホルダ326の一部に設けられたシリンジホルダ爪326aがインナーケース325に設けられた爪ガイド穴325bに嵌合する。この時、シリンジホルダ付勢バネ327の力でシリンジホルダ326がスライド動作して嵌合した後、保持状態になる。また、シリンジホルダ326は、シリンジカバー323に形成された装着方向傾斜面323dと脱着方向傾斜面323eに当接する略三角形状の山形状凸部326bを有する。
【0075】
シリンジホルダ付勢バネ327は、インナーケース325とシリンジホルダ326間に少し圧縮して組込んでおり、シリンジホルダ326がスライド動作するよう付勢する。
<薬剤投与装置320の操作方法>
ここでは、本発明の一実施形態に係る薬剤投与装置320の操作について、
図23から
図26(a)を用いて説明する。
【0076】
まず、薬剤投与装置320の本体部321に設けられたシリンジホルダ326に製剤シリンジ322を挿入し、シリンジカバー323を装着する。この時、着脱用ダボ323bをインナーケース325に設けたシリンジカバー着脱用溝325aに合わせ、真っ直ぐ挿入後回動させる。
シリンジカバー323によってシリンジホルダ326が装着方向に回動される時、装着方向傾斜面323dが山形状凸部326bを押し、シリンジホルダ付勢バネ327を圧縮させる。この影響で、シリンジホルダ326の回動に負荷がかかるが、
図26(a)に示すように、装着方向傾斜角323fを緩い角度にしており、軽い力で回動してもシリンジホルダ326がスライドして装着できる。
【0077】
シリンジカバー323を装着した位置では、シリンジホルダ付勢バネ327とシリンジホルダ326とによって脱着方向に付勢されているが、
図25(a)に示すように、着脱用ダボ323bがシリンジカバー着脱用溝325aにガイドされて保持される。
シリンジホルダ326を脱着方向に回転させる時、脱着方向傾斜面323eが山形状凸部326bを押し、シリンジホルダ付勢バネ327を圧縮させる。この影響で、シリンジホルダ326の回動に負荷がかかり、脱着方向傾斜角323gを急な角度にすることで、強い力で回転しなければシリンジホルダ326がスライドせず、脱着できない(
図26(a)参照)。
【0078】
針部305の脱着力よりもシリンジカバー323の脱着力を大きくする関係を形成するため、本実施形態では、針部305の脱着力:0.1N・m以下という規格に対し、シリンジカバー323の脱着方向傾斜角とシリンジホルダ付勢バネ327の値を調整し、シリンジカバー323の脱着力:0.13N・m以上を確保している。一方、シリンジカバー323の装着力は、0.05N・m前後であり、シリンジカバー323を軽い力で装着し、重い力でなければ脱着できない構成となっている。
【0079】
つまり、以下の関係が成り立つ。
シリンジカバーの装着力 ≦ 針部の脱着力 ≦ シリンジカバーの脱着力。
次に、シリンジカバー323の一端にある針部装着部323aに針部305を回転させて取り付け、先端キャップ部324を装着し、保護キャップと針キャップとを取り外すことで、薬液を投与する前準備が完了する。
【0080】
以上のように、本実施形態においては、製剤が入った製剤シリンジ322を装填し、生体に対して製剤を投与する薬剤投与装置320が、本体部321と、本体部321を形成するインナーケース325と、インナーケース325内に搭載され、製剤シリンジ322を保持するシリンジホルダ326と、シリンジホルダ326を付勢するシリンジホルダ付勢バネ327と、製剤シリンジ322を覆うシリンジカバー323とを備え、シリンジカバー323は、その端面に傾斜の角度が異なる凹凸面を有し、製剤を投与する針が着脱可能で、インナーケース325と協働して製剤シリンジ322を本体部321へ装着する装置を提供することができる。
【0081】
これにより、シリンジカバー323の着脱操作が容易であり、且つ装着時の固定がしっかりした、耐久性のある薬剤投与装置320を提供することができる。
(実施形態6)
本発明のさらに他の実施形態に係る薬剤投与装置を構成するシリンジカバー323とシリンジホルダ326の構成について、
図26(b)を用いて説明する。
【0082】
本実施形態では、山形状凸部323hが、シリンジカバー323の一端に形成されている。また、シリンジホルダ326に、山形状凸部323hと当接し装着方向傾斜面326c、脱着方向傾斜面326dを持つ形状を形成し、シリンジカバー323が回動する際、山形状凸部323hに押されてスライド動作可能とする。装着方向傾斜角326eは、山形状凸部323hに対し緩い角度にしており、シリンジカバー323を軽く回動させてもシリンジホルダ326のスライド動作が可能である。一方、脱着方向傾斜角326fは、山形状凸部323hに対し急な角度にしており、シリンジカバー323を強く回動させないとシリンジホルダ326のスライド動作ができない。
【0083】
これにより、上述の実施形態5と同様に、シリンジカバー323の着脱操作が容易であり、且つ装着時の固定がしっかりした、耐久性のある薬剤投与装置を提供することができる。
また、本実施形態の薬剤投与装置は、上述した実施形態に係る薬剤投与装置であって、シリンジカバーは、製剤シリンジに内の製剤を視覚的に確認可能な透明部材もしくは半透明の部材で形成される。
【0084】
これにより、シリンジカバーを外すことなく、装着した製剤の種類や薬液の残量を確認することができ、使い勝手を良くすることができる。
本実施形態の薬剤投与装置は、上述した実施形態に係る薬剤投与装置であって、シリンジカバーをインナーケースに装着する際に必要とする第1の力と、シリンジカバーをインナーケースから脱着する際に必要とする第2の力とが異なるように設定されている。
【0085】
これにより、装着する際に必要とする力より、脱着する際に必要とする力の方を大きくすることで、シリンジカバーが、取り付け易く、外れ難いという操作性と信頼性の向上を図ることができる。
本発明の薬剤投与装置によれば、製剤を生体に注入する薬剤投与装置において、シリンジ部の着脱操作が容易、かつしっかり固定でき、耐久性のある薬剤投与装置を提供することが可能である。
【0086】
<参考例2>
従来、製剤を生体に簡易に投与するための薬剤投与装置として、電動で穿刺針を生体に穿刺し、製剤を注入した後に抜針する薬剤投与装置が実用化されている。
すなわち、
図27(a)に示すように、このような薬剤投与装置1401を使用する場合、使用者は、まず、シリンジ部1403aとフロントケース部1403bとがドッキングされる。そして、この両者間は、スライド動作可能に構成されたフロント部1403が本体部1402に装着される。この時、フロントケース部1403bの一端に形成された着脱用溝1403fによって、フロントケース部1403bと本体部1402とが着脱可能となる。そして、シリンジ部1403aに構成された部材と本体部1402に構成された部材とが連結され、シリンジ部1403aのスライド動作が可能になる(図示せず)。本体部1402には、フロント部1403の着脱を検出するスイッチ(図示せず)が設けられており、フロント部検出レバー1403hの操作によってスイッチのON/OFFが切り替えられる。
【0087】
その後、針部装着部1403eに針部1405を回転させて取り付け、フロントキャップ1406をフロントケース部1403bに真っ直ぐ挿入し装着する。フロントキャップ1406の外形は概略円筒形状であり、その一端にある検出レバー押し部1406aによりフロントキャップ検出レバー1403gをスライドさせ、本体部1402にある検出スイッチ(図示せず)を切り替える。
【0088】
ここで、針部1405は、
図27(b)に示すように、針1405a、針キャップ1405b、保護キャップ1405cによって構成されている。針部装着部1403eは、シリンジ部1403aを構成するハウジング1403cの中に装填した製剤シリンジ1403dの一端に設けられる(例えば、特開2005−287676号公報参照)。
しかしながら、従来の薬剤投与装置1401では、使用者は、まず、製剤シリンジ1403dが収納されたフロント部1403の着脱用溝1403fを本体部1402に設けた突起(図示せず)に合わせて装着する。次に、製剤を注入するための針部1405を針部装着部1403eに取り付け、フロントキャップ1406をフロントケース部1403bに装着する。フロントキャップ1406は、安全のため及び皮膚当て部としての役割を有するため、装着する必要がある。その後、フロントキャップ開口部1406bから、保護キャップ1405cと針キャップ1405bとが取り外される。
【0089】
これらの操作を行った後、本体部1402にある薬剤投与ボタン1402aを押すと、シリンジ部1403aがスライド動作し、注射用の針1405aが数ミリメートルだけフロントキャップ1406の先端から露出し皮膚に注射用の針1405aを刺す。針1405aを刺した状態で、製剤シリンジ1403dから必要量の薬剤を注入後、シリンジ部1403aが元の位置までスライド動作し、針1405aがフロントキャップ1406の先端から戻り、皮膚から注射用の針を抜き、投与動作が終了する。
【0090】
ただし、これら一連の動作を行うのは、フロント部1403が本体部1402に確実に装着され、検出レバー1403hが本体部1402にある検出スイッチ(図示せず)がONになり、さらにフロントキャップ1406がフロント部1403に確実に装着され、フロントキャップ検出レバー1403gが本体部1402にある検出スイッチ(図示せず)がONになっている場合である。
【0091】
上記のような従来の使用方法においては、
図27(a)に示すように、フロント部1403の装着が不完全であっても、フロントキャップ1406を装着した後、薬剤投与装置1401の本体部1402にある薬剤投与ボタン1402aを操作して初めてエラーが検出される。再度装着する為には、フロントキャップ1406を取り外したり、フロント部1403を取り外したりする必要があり、手間がかかるという問題があった。
【0092】
以下の実施形態は上記課題を解決するものであり、製剤を生体に注入する薬剤投与装置において、フロント部の装着が不完全であっても、フロントキャップを確実に装着すれば、フロント部が強制的に装着されるため、装着ミスが大幅に改善され、確実性が向上する上に、操作性も向上することが出来る薬剤投与装置を提供することを目的とする。
(実施形態7)
本発明のさらに他の実施形態に係る薬剤投与装置420について、
図28から
図32を用いて以下に説明する。
【0093】
本実施形態の薬剤投与装置420は、
図28に示すように、本体部421と製剤シリンジ422とシリンジカバー423と針部405と先端キャップ部424とを備えている。
本体部421は、薬剤投与装置420の主要な部分で、投与動作の制御を行ったり、表示したり、投与開始ボタンによって操作されたりして、薬剤投与動作および操作の主要機能を有する。
【0094】
また、本体部421は、先端キャップガイド溝421a、位置合せマーク421b、先端キャップ検出レバー421c、表示部421d、薬剤投与ボタン421e、シリンジカバー検出レバー421fを有する。先端キャップガイド溝421aは、先端キャップ部424を着脱する際のガイドになる。位置合せマーク421bは、先端キャップ部424が容易に着脱できるような目印標示となる。先端キャップ検出レバー421cは、先端キャップ部424が確実に装着されたことを検出する。表示部421dは、内蔵するバッテリーの充電残量や操作する上で必要な各種の情報を表示する。薬剤投与ボタン421eは、薬剤を投与する準備が完了した後、薬剤投与時に押下される。シリンジカバー検出レバー421fは、シリンジカバー423が装着されたことを検出する。
【0095】
さらに、本体部421は、薬剤が内部に封入された製剤シリンジ422を挿入可能なシリンジホルダ426、薬剤投与時にシリンジホルダ426と一緒にスライド動作可能なインナーケース425を有する。インナーケース425は、製剤シリンジ422を内蔵し薬剤投与装置420の本体部421に装着されるシリンジカバー423を着脱可能とするシリンジカバー着脱用溝425aを有する。
【0096】
シリンジカバー423は、透明な部材によって作製されており、内蔵した製剤シリンジ422を確認可能となっている。また、シリンジカバー423は、一端に針部405を着脱可能な針部装着部423aを有するとともに、インナーケース425に設けられたシリンジカバー着脱用溝425aに係合する着脱用ダボ423b、カバー検出レバー押し部423cを有する。また、シリンジカバー423は、
図29(a)および
図29(b)に示すように、製剤などの液体が本体内部に侵入するのを防ぐフランジ423d、中心から放射状に突き出た形状の凸部423eを有する。
【0097】
針部405は、生体に刺し込まれて、製剤シリンジ422を投与する注入針の部分であり、従来例で述べた構成と同様であり、ここでは説明を省略する。
先端キャップ部424は、針が露出して生体に刺し込まれ、薬液を注入可能にできる先端開口部424a、本体部421と着脱する際の目印標示となる装着開始位置マーク424b、装着完了位置マーク424cを有する。また、
図31(a)および
図31(b)に示すように、本体部421の先端キャップガイド溝421aを利用して着脱するための先端キャップガイド用突起424d、シリンジカバー423の放射状に突き出た凸部423eと係合する係合用突起424eを有する。
【0098】
また、ここでは、着脱用ダボ423b、放射状に突き出た凸部423e、先端キャップガイド用突起424dおよび係合用突起424eは、それぞれ2個設けられている場合を示したが、これに限定されるものではなく、1個ずつでも、3個ずつ以上でもよい。
<薬剤投与装置420の操作方法>
ここでは、本発明の一実施形態に係る薬剤投与装置420について、
図28から
図32を用いて説明する。
【0099】
まず、薬剤投与装置420の本体部421側に設けられたシリンジホルダ426に製剤シリンジ422が挿入され、シリンジカバー423が装着される。この時、着脱用ダボ423bは、インナーケース425に設けられたシリンジカバー着脱用溝425aに合わせて、真っ直ぐ挿入された後、回動して固定される。シリンジカバー423が正常に装着されると、カバー検出レバー押し部423cがシリンジカバー検出レバー421fを押すことで、本体部421にあるスイッチ(図示せず)をONすることができる。しかし、シリンジカバー423が中途半端な位置であれば、スイッチがONにならないまま、次の操作が行われる。
【0100】
次に、シリンジカバー423の一端にある針部装着部423aに針部405を回転させて取り付け、先端キャップ部424が装着される。この時、本体部421にある位置合せマーク421bと装着開始位置マーク424bとが一致するように真っ直ぐ挿入された後、装着完了位置マーク424cまで時計方向に回転させる。この時、先端キャップガイド用突起424dが本体部421の先端キャップガイド溝421aにガイドされ固定される。先端キャップ424が正常に装着されれば、キャップ検出レバー押し部424fが先端キャップ検出レバー421cを押して、本体部421にあるスイッチ(図示せず)をONすることができる。この時、
図32(a)および
図32(b)に示すように、シリンジカバー423の装着が不完全であっても、係合用突起424eが放射状に突き出た凸部423eと係合し、一体的に回動することができ、シリンジカバー423の装着が行われる。
【0101】
その後、先端開口部424aから針部405の保護キャップが把持されて取り外され、次に、針部405の針キャップが把持されて取り外される。
図32(a)は、シリンジカバー423の装着が不完全な状態を示し、
図32(b)は、先端キャップ424に誘導されて、シリンジカバー423の装着が完全にされた状態を示している。なお、
図32(a)及び
図32(b)とも、先端開口部424a側から製剤シリンジ422方向を見た図である。これらの操作によって、薬液を投与する前準備が完了する。
【0102】
以上のように、本実施形態においては、製剤が入った製剤シリンジ422を装填し、生体等に投与可能な薬剤投与装置420が、製剤シリンジ422を保持する筒状のシリンジカバー423と、シリンジカバー423をガイドし着脱可能に嵌合するインナーケース425と、本体部421をガイドし、着脱可能に嵌合する先端キャップ424と、を備えている。そして、シリンジカバー423に設けられた放射状に突き出た凸部423eと、先端キャップ424に構成した係合用突起424eが係合し、先端キャップ424を回動する動作によってシリンジカバー423も回動可能となる。
【0103】
これにより、シリンジカバー423の装着が不完全であっても、先端キャップ424を確実に装着すれば、シリンジカバー423が強制的に装着される。よって、装着ミスが大幅に改善され、確実性が向上する上に、操作性も向上することが出来る薬剤投与装置を提供することができる。
また、本実施形態の薬剤投与装置では、製剤シリンジをシリンジカバーの内周面側において保持し、インナーケースはシリンジカバーの外周面側をガイドし、先端キャップは、本体部の外周面の一部をガイドする。
【0104】
本実施形態の薬剤投与装置では、製剤シリンジを保持したシリンジカバーは、インナーケースに対して、押し込みながら回動させ、インナーケースのロック位置まで到達した時に、シリンジカバーの装着が完了する。
本実施形態の薬剤投与装置では、本体部は、装着位置を示す標示とガイド溝とを有している。先端キャップには、装着開始位置を示す標示と装着完了位置を示す標示をそれぞれ有し、且つガイド用突起が設けられている。本体部の装着位置を示す標示と、先端キャップの装着開始位置を示す標示とを合わせて先端キャップを押し込み、ガイド溝とガイド用突起とを係合させた後、さらに押し込みながら回動することにより、先端キャップが本体部に装着される。
【0105】
本実施形態の薬剤投与装置では、シリンジカバーは、内部の製剤シリンジが視認できるように、透明または半透明部材で形成されており、外部からの液体の侵入を防止するためにフランジを有している。
本実施形態の薬剤投与装置では、シリンジカバーは、シリンジカバーの中心軸を中心に対象な位置または等間隔に配置された着脱用ダボを複数有している。
【0106】
本実施形態の薬剤投与装置では、シリンジカバーは、シリンジカバーの中心軸を中心に対称な位置または等間隔に配置された凸部を複数有している。
本実施形態の薬剤投与装置では、シリンジカバーの着脱用ダボと凸部との位置関係は、シリンジカバーの中心軸を中心に、同角度位置、または同角度以外の位置に配置されている。
【0107】
本実施形態の薬剤投与装置では、先端キャップが、本体部に装着されるために、押し込みながら回動すると、先端キャップに設けられた係合用突起が、内部に位置するシリンジカバーに設けられた凸部を押圧する。これにより、先端キャップが本体部に装着完了すると同時に、シリンジカバーも、係合用突起に押圧されて回動し、インナーケースに装着完了する。
【0108】
本発明の薬剤投与装置によれば、フロント部分(シリンジカバー等)の装着が不完全であっても、先端キャップを確実に装着すれば、フロント部分が強制的に装着されるため、装着ミスが大幅に改善され、確実性が向上する上に、操作性も向上することが出来る薬剤投与装置を提供することが可能になる。
<参考例3>
従来、製剤を生体に簡易に投与するための薬剤投与装置として、電動で穿刺針を生体に穿刺し、製剤を注入した後に抜針する薬剤投与装置が実用化されている。
【0109】
すなわち、
図33(a)に示すように、このような薬剤投与装置1501を使用する場合、使用者は、まずシリンジ部1503aとフロントケース部1503bとがドッキングされる。そして、両者間では、スライド動作可能に構成されたフロント部1503が本体部1502に装着される。この時、フロントケース部1503bの一端に形成された着脱用溝1503fにより、フロントケース部1503bと本体部1502とが着脱可能となる。そして、シリンジ部1503aに構成された部材と本体部1502に構成された部材とが連結され、シリンジ部1503aのスライド動作が可能になる。(図示せず)
その後、針部1505が針部装着部1503eに回転させて取り付けられ、フロントキャップ1506がフロントケース部1503bに真っ直ぐ挿入され装着される。フロントキャップ1506の外形は、概略円筒形状であって、その先端に形成されたフロントキャップ開口部1506aも概略円形状である。
【0110】
ここで、針部1505は、針1505a、針キャップ1505b、保護キャップ1505cを有している。針部装着部1503eは、シリンジ部3aを構成するハウジング3cの中に装填された製剤シリンジ1503dの一端に設けられる(例えば、特開2005−287676号公報参照)。
しかしながら、従来の薬剤投与装置1501では、使用者は、まず、製剤シリンジ1503dが収納されたフロント部1503の着脱用溝1503fが、本体部1502に設けられた突起(図示せず)に合わせて装着される。次に、製剤を注入するための針部1505が針部装着部1503eに取り付けられ、フロントキャップ1506がフロントケース部1503bに装着される。その後、フロントキャップ開口部1506aから、保護キャップ1505cと針キャップ1505bとが取り外される。
【0111】
これらの操作を行った後、本体部1502にある薬剤投与ボタン1502aが押下されると、シリンジ部1503aがスライド動作し、針1505aが数ミリメートルだけフロントキャップ1506の先端から露出する。そして、必要量の薬剤が注入された後、シリンジ部1503aが元の位置までスライド動作し、針1505aがフロントキャップ1506の先端から戻り、一連の薬剤の投与動作が終了する。
【0112】
上記のような従来の使用方法においては、
図33(b)に示すように、薬剤投与装置1501に装着された針部1505の保護キャップ1505cおよび針キャップ1505bを取り外す操作が、患者にとって扱いにくいという問題があった。
これは、安全上、針1505aを有する針部1505が外部に露出することを防止するために、フロントキャップ1506などの部材より、針1505aの位置は必ず内部にある必要があり、その針1505aの保護キャップ1505cなども実用上、長くすることができない。また、フロントキャップ1506の開口部を大きくして、操作し易くすることはできるが、フロントキャップ1506は皮膚に当接して穿刺するための穿刺距離を一定に保つ役目もある。このため、その開口部を大きくすると、フロントキャップ1506の皮膚への当て方により、皮膚の盛上り方が大きく変化してしまう。この結果、穿刺距離がばらつき、穿刺した時の苦痛が増大する問題があるため、フロントキャップ1506の開口部も、実際上は大きくできない。
【0113】
また、フロント部1503や針部1505の着脱時、薬剤投与装置1501からフロントキャップ1506を取り外した際、フロントキャップ1506が転がり易いという問題があった。
以下の実施形態は、上記課題を解決するものであり、製剤を生体に注入する薬剤投与装置において、針の保護キャップおよび針キャップをはずす操作が容易で、フロントキャップ単独でも転がりにくく、取り扱いやすい薬剤投与装置を提供することを目的とする。
【0114】
(実施形態8)
本発明のさらに他の実施形態に係る薬剤投与装置520について、
図34から
図37を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態の薬剤投与装置520は、
図34に示すように、本体部521と製剤シリンジ522とシリンジカバー523と針部505と先端キャップ部524で構成している。
【0115】
本体部521は、先端キャップガイド溝521a、位置合せマーク521b、先端キャップ検出レバー521c、表示部521d、薬剤投与ボタン521eを有する。先端キャップガイド溝521aは、先端キャップ部524を着脱する際のガイドになる。位置合せマーク521bは、先端キャップ部524が容易に着脱できるような目印となる。先端キャップ検出レバー521cは、先端キャップ部524が確実に装着されたことを検出する。表示部521dは、バッテリーの充電残量や操作する上で必要な各種の情報を表示する。薬剤投与ボタン521eは、薬剤を投与する準備が完了した後、薬剤投与時に押下される。
【0116】
さらに、本体部521は、薬剤が内部に封入された製剤シリンジ522を挿入可能で、薬剤投与時にスライド動作可能なインナーケース525を有する。インナーケース525は、製剤シリンジ522を内蔵し薬剤投与装置520の本体部521に装着されるシリンジカバー523を着脱可能とするシリンジカバー着脱用溝525aを有する。
シリンジカバー523は、透明な部材によって作製されており、内蔵した製剤シリンジ522を確認可能となっている。そして、シリンジカバー523は、一端に針部505を着脱可能な針部装着部523aを有する。さらに、シリンジカバー523は、インナーケース525に設けたシリンジカバー着脱用溝525aに係合する着脱用ダボ523bを有する。
【0117】
針部505については、従来例で述べた構成と同様であり、ここでは説明を省略する。
先端キャップ部524は、両端に開口部を有した略円筒形状をしている。そして、その内周面は、注入のための針505aや製剤シリンジ522を装着したシリンジカバーが移動可能な構造となっている。また、先端キャップは、製剤を注入する時の生体である皮膚に当接する部分であり、針505aと皮膚との距離を一定にすることで、注入のための注射の深さを一定化させる機能も有している。これにより、注射時の痛みを軽減することができる。
【0118】
先端キャップ524は、針505aを突き出して生体を穿刺し、薬液を注入可能にできる先端開口部524a、本体部521と着脱する際の目印となる装着開始位置マーク524b、装着完了位置マーク524cを有する。また、
図35(a)に示すように、先端開口部524aは、概略円形状524kと長穴形状524jとを組み合わせた形状とし、縦幅524hと横幅524gとを異なる長さにしている。これにより、保護キャップや針キャップ505bを把持しやすい場所ができ、取り外す際の使用者の負担を軽減することが可能になる。さらに、皮膚が大きく盛り上がるのを防止でき、穿刺した時の苦痛が増大するのを防止できる。円形状の直径を20mm前後、長い部分を25mm前後とした組み合わせ形状をひとつの目安にしているが、これに限ったものではない。
【0119】
なお、先端開口部524aの形状は、単純な楕円形状または円形状と楕円形状の組合せでもよい。ただし、作業性と確実性においては、
図35(a)に示すように、内面形状において複数の箇所で波打つようなカーブを有する方が有利である。
さらに、
図35(b)に示すように、製剤確認窓524dにより先端キャップ部524を薬剤投与装置520から取り外すことなく、透明なシリンジカバー523を通して内部の製剤シリンジ522の有無や種類、製剤の量等を視覚的に確認することができる。ここでは、確認用の窓524dを設けているが、窓524dの部分を切欠きまたは透明部材で形成してもよいし、先端キャップ524全体を透明または半透明部材で形成してもよい。
【0120】
また、先端キャップ524の外形の断面形状は、を概略三角形に近い形状とされ、単品で机の上等に置いた際、転がりにくい安定する形状になっている。外形の断面形状については、三角形に限ったものではなく、楕円形や多角形にしてもよい。
図36は、先端キャップ524内にある針部505の針キャップ505bを取り出す様子を示す断面図である。
【0121】
図36に示すように、先端キャップ524の先端開口部524aの内側部分は、テーパ形状524eを有している。指527を先端開口部524aの長穴形状524j側(
図35(a)参照)から針キャップ505bが把持され、指527を回転させた際、針キャップ505bが外れる方向に持ち上がることで操作を容易にしている。つまり、針キャップ505bを摘んだ指527を回転させる操作だけで、指527が、先端開口部524aの内部形状に沿って、先端キャップ524の外部に押される。このために、針キャップ505bを引き抜くという操作も連動され、容易に針キャップ505bの取り外しが可能である。これは実用上、非常に有効である。
【0122】
特に、針505aなどの尖ったもの、およびその周辺部分を含めたものを取り扱う場合は、安全上の観点からも、簡単で余分な力が不要である本発明における操作性の良さは非常に有効である。
次に、
図37は、先端キャップ524を先端開口部524aと反対の側から見た外観斜視図である。ガイド用突起524fは、薬剤投与装置520の本体部521に設けられた先端キャップガイド溝521aと係合し、先端キャップ524を薬剤投与装置520に装着・脱着させる動作を行う。
【0123】
<薬剤投与装置520の操作方法>
ここでは、本実施形態における薬剤投与装置520の操作方法について、
図34から
図37を用いて説明する。
まず、薬剤投与装置520の本体部521に設けられたインナーケース525に製剤シリンジ522が挿入され、シリンジカバー523が装着される。この時、シリンジカバー523の着脱用ダボ523bを薬剤投与装置520のインナーケース525に設けられたシリンジカバー着脱用溝525aに合わせて、シリンジカバー523が真っ直ぐ挿入された後、回転させて固定される。
【0124】
次に、シリンジカバー523の一端にある針部装着部523aに針部505を回転させて取り付け、その後、先端キャップ部524が装着される。この時、本体部521にある位置合せマーク521bと装着開始位置マーク524bとが一致するように、真っ直ぐ挿入された後、装着完了位置マーク524cまで時計方向に回転させる。この時、ガイド用突起524fが先端キャップガイド溝521aにガイドされ固定される。
【0125】
その後、先端開口部524aを通して、保護キャップ505cが把持されて取り外され、次に、針キャップ505bが把持されて針部505から取り外される。この時、先端開口部524a内側に形成された上述の形状により、指527が入りやすい方向の長穴形状524j部分から指527を入れ真っ直ぐ引き抜くか、指527を回転させる。これにより、半径の小さい円形状524k部分に指527が移動し、テーパ形状524eに沿って針キャップ505bが引き抜かれる。
【0126】
これらの操作によって、薬液を投与する前準備が完了する。
以上のように、本実施形態においては、製剤が入った製剤シリンジ522が装填されて生体等に製剤を投与可能な薬剤投与装置520が、製剤を投与する針505aが着脱可能で、製剤シリンジ522を本体部521に装着するシリンジカバー523と、シリンジカバー523を覆い本体部521と着脱可能に嵌まり合い生体と当接する先端開口部524aを有する先端キャップ524と、を備えている。そして、先端キャップ524は、先端開口部524aの形状が指を入れやすい部分と、皮膚に当てたときの肉の盛り上がりを防ぐ部分を併せ持つ形状であると共に、単独で置いても転がりにくい形状を有するものである。
【0127】
これにより、針部505を構成する針505aの保護キャップ505cおよび針キャップ505bを取り外す操作が容易で、安全、且つ取り扱いやすい薬剤投与装置を提供することができる。
(実施形態9)
本実施形態に係る薬剤投与装置に使用される先端キャップ624の構成について、
図38を用いて説明する。
【0128】
図38は、先端キャップ624の先端開口部624aの形状を高さ方向で変えたものであり、指が入りやすいように、先端部分がえぐられた形状を有している。えぐられた部分の深さとしては、5mm〜15mm、開口部の直径は20mm前後を目安としているが、これに限ったものではない。
先端キャップ624の装着までは、上述の実施形態8で説明したものと同じであり、ここでは省略する。
【0129】
先端キャップ624の装着が完了後、先端開口部624aを通して、針部505の保護キャップ505cが把持されて取り外される。次に、針キャップ505bが把持され、針部505から取り外される際、先端開口部624aのえぐり形状の箇所から指を入れて回動操作すれば、針キャップ505bが先端方向に移動され、簡単に取り外しができる。
(実施形態10)
本実施形態に係る薬剤投与装置に使用される先端キャップ724の構成について、
図39を用いて説明する。
【0130】
図39は、先端キャップ724の先端に回動可能な別ピース724aを設け、先端部を2重構造としたもので、先端開口部724aaの形状を高さ方向で変えた2種類の部材の位相を変えるように構成されている。また、先端キャップ724の固定側ピース724bと別ピース724aとは、立体的に相似形状をしている。
先端キャップ724の装着が完了後、先端開口部724aaを通して、保護キャップ505c(
図36参照)が把持されて取り外される。次に、針キャップ505b(
図36参照)が把持されて、針部505(
図36参照)から取り外される際、回動可能な別ピース724aを回動させ、固定側ピース724bの先端開口部724baのえぐり形状と一致させる。これにより、指が入りやすい場所ができ、保護キャップ505cと針キャップ505bとを簡単に取り外すことができる。
【0131】
次に、回動可能な別ピース724aを回動させ、固定側ピース724bのえぐり形状と一致させないようにし、平坦な面を構成する。その後、薬剤投与装置により薬液を投与すれば、皮膚の盛り上がりが的確に押さえられ、穿刺した時の苦痛が増大するのを防止できる。
(実施形態11)
本実施形態に係る薬剤投与装置に使用される先端キャップ824の構成について、
図40を用いて説明する。
【0132】
図40は、先端キャップ824の先端に開閉式の別ピース824bを設けたものである。先端キャップ824は、通常は、バネとストッパとで位置規制され、先端キャップ824の外形と同じ径で保持され、指を入れた時だけ外側に広がる構造を有している。
先端キャップ824の装着が完了後、先端開口部824aを通して、保護キャップ505c(
図36参照)が把持されて取り外される。次に、針キャップ505b(
図36参照)が把持され、針部505(
図36参照)から取り外される際、指を開閉式の別ピースを設けた箇所から操作される。
【0133】
これにより、別ピース824bが開いて簡単に取り外しができる。また、指を離せば開閉式の別ピース824bは弾性体の付勢により、自然にストッパ位置まで復帰する。この状態で薬剤投与装置により薬液を投与するため、皮膚の盛り上がりが的確に押さえられ、穿刺した時の苦痛が増大するのを防止できる。
また、本実施形態の薬剤投与装置は、上述した実施形態に係る薬剤投与装置であって、先端キャップは、本体部に装着された際に、シリンジカバーに装着された針の先端が、先端キャップから外部に露出しないような長さを有している。
【0134】
これにより、針を装着した後も、針が先端キャップに覆われていて、外部に食み出ていないために針刺し事故などの危険もなく、安全に操作することができる。
本実施形態の薬剤投与装置は、上述した実施形態に係る薬剤投与装置であって、先端キャップは、生体に当接する部分を有しているため、生体にやさしい樹脂系材料により形成されている。
【0135】
これにより、より安全に快適に使用できる。
本発明の薬剤投与装置によれば、針の保護キャップおよび針キャップをはずす操作が容易で、先端キャップ単独でも転がりにくく、安全で取り扱いやすい薬剤投与装置を提供することが可能になる。