(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された構造による耐圧対策を施しても、デバイスのアバランシェ降伏時に、ショットキー電極の終端部に電流集中が起こってデバイスが破壊するという問題がある。
本発明の目的は、アバランシェ降伏時の電流集中を緩和することができ、耐圧およびアバランシェ耐量をともに向上させることができる、SiC半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、第1導電型のSiC半導体層と、前記SiC半導体層の表面
の中央部に形成された活性領域と、前記SiC半導体層の表面に
前記活性領域を囲むように形成され、前記SiC半導体層の前記表面を露出させる開口を有するフィールド絶縁膜と、前記フィールド絶縁膜の前記開口を介して前記SiC半導体層に接合された電極と、前記SiC半導体層の表層部に形成され、前記電極における前記SiC半導体層との接合部分の終端部に接する第2導電型のガードリングと、前記ガードリング内に、
前記SiC半導体層の表面に沿う方向に互いに隣接して形成された第1導電型領域および第2導電型領域とを含み、前記第1導電型領域は、前記電極における
前記ガードリングとの接合部分よりも前記活性領域側に配置されて
おり、前記ガードリングは、2000Å以上の深さを有しており、前記ガードリングにおける前記SiC半導体層の前記表面から1000Åの深さ位置までの部分の前記第2導電型の不純物濃度が、前記SiC半導体層の第1導電型不純物濃度よりも小さい、SiC半導体装置である。
【0007】
この構成によれば、フィールド絶縁膜の開口を介して、電極がSiC半導体層に接合されている。第1導電型のSiC半導体層の表層部には、電極におけるSiC半導体層との
れている。第1導電型のSiC半導体層の表層部には、電極におけるSiC半導体層との接合部分の終端部(開口内における電極の外縁部)に接するように、第2導電型のガード
リングが形成されている。
ガードリング内に、第1導電型領域および第2導電型領域がSiC半導体層の表面に沿う方向に互いに隣接して形成されている。第1導電型領域は、電極におけるガードリングとの接合部分よりも前記活性領域側に配置されている。ガードリングは、2000Å以上の深さを有している。そして、
ガードリングにおけるSiC半導体層の表面から1000Åの深さ位置までの部分の第2導電型の不純物濃度が、前記SiC半導体層の第1導電型不純物濃度よりも小さい。つまり、ガードリング
におけるSiC半導体層の表面から1000Åの深さ位置までの部分では、第2導電型の不純物濃度<
SiC半導体層の第1導電型の不純物濃度となっており、当該表層部は、第2導電型の性質というよりもむしろ第1導電型の性質を示す。
【0008】
これにより、SiC半導体層内に電流が流れたときに、SiC半導体層内における電流密度を分散させることができるか、電流密度の分散とともに、電流密度が比較的高い部分を、電極の終端部よりも内側の位置にシフトさせることができる。その結果、アバランシェ降伏が生じても、電極の終端部へ向かう電流の密度を緩和することができる。よって、アバランシェ降伏によるデバイス破壊を防止することができる。
【0009】
また、SiC半導体層とガードリングとのpn接合により、電極の終端部付近に空乏層
が広がるため、当該空乏層により電極の終端部への電界集中を抑制することができる。よ
って、デバイスの耐圧を向上させることもできる。
また、請求項2に記載のように、前記ガードリング内の前記第2導電型領域の不純物濃度は、前記ガードリングの第2導電型不純物濃度よりも高くてもよい。
【0010】
また、前記電極は、請求項
3に記載のように、前記フィールド
絶縁膜における前記開口の周縁部を覆うように形成されていてもよい
。
【0011】
また、請求項
4記載の発明は、第1導電型のSiC半導体層と、前記SiC半導体層の表面
の中央部に形成された活性領域と、前記活性領域に形成され、前記第1導電型のソース領域と、前記ソース領域に接する第2導電型のボディ領域と、前記ボディ領域に接する前記第1導電型のドリフト領域と、ゲート絶縁膜を介して前記ボディ領域に対向し、前記ドリフト領域と前記ソース領域との間に電流を流すために前記ボディ領域にチャネルを形成するためのゲート電極とを有するMISトランジスタ構造と、前記SiC半導体層の表層部に形成され、前記MISトランジスタ構造を取り囲む第2導電型のガードリングと、前記SiC半導体層の表面に形成され、前記ソース領域および前記ガードリングをそれぞれ露出させる開口を有するフィールド絶縁膜と、前記フィールド絶縁膜の前記開口を介して、前記ソース領域および前記ガードリングにそれぞれ接合されたソース電極と、前記ガードリング内に、
前記SiC半導体層の表面に沿う方向に互いに隣接して形成された第1導電型領域および第2導電型領域とを含み、前記第1導電型領域は、前記ソース電極における前記
ガードリングとの接合部分よりも前記活性領域側に配置されて
おり、前記ガードリングは、2000Å以上の深さを有しており、前記ガードリングにおける前記SiC半導体層の前記表面から1000Åの深さ位置までの部分の前記第2導電型の不純物濃度が、前記SiC半導体層の第1導電型不純物濃度よりも小さい、SiC半導体装置である。
【0012】
この構成によれば、第1導電型のSiC半導体層に、SiCからなるMIS(Metal Insulator Semiconductor)トランジスタ構造が形成されており、このMISトランジスタ構造を取り囲むように第2導電型のガードリングが形成されている。
MISトランジスタ構造(トランジスタ素子)の周囲にガードリングが形成されているため、SiC半導体層とガードリングとのpn接合により、トランジスタ素子の周囲に空乏層が広がる。これにより、素子表面での電界強度を緩和することができる。よって、デバイスの耐圧を向上させることができる。
【0013】
また、MISトランジスタ構造を動作させるためのソース電極が、ソース領域だけでなく、MISトランジスタ構造を取り囲むガードリングにも接合されている。これにより、MISトランジスタにアバランシェ降伏が生じたときに、その降伏電流を、トランジスタの周囲にあるガードリングの方向へ流れるように迂回させることができる。その場合、ソース電極におけるガードリングとの接合部分の終端部(フィールド絶縁膜の開口内におけるソース電極の外縁部)に電流集中が起こってデバイスが破壊するおそれがある。
【0014】
しかしながら、本発明では、
ガードリングは、2000Å以上の深さを有しており、ガードリングにおけるSiC半導体層の表面から1000Åの深さ位置までの部分の第2導電型の不純物濃度が、
SiC半導体層の第1導電
型不純物濃度よりも小さい。つまり、ガードリング
におけるSiC半導体層の表面から1000Åの深さ位置までの部分では、第2導電型の不純物濃度<
SiC半導体層の第1導電型の不純物濃度となっており、当該表層部は、第2導電型の性質というよりもむしろ第1導電型の性質を示す。
これにより、アバランシェ降伏時、ガードリング付近の電流密度を分散させることができるか、電流密度の分散とともに、電流密度が比較的高い部分を、フィールド絶縁膜の開口内におけるソース電極の外縁部よりも内側の位置にシフトさせることができる。その結果、アバランシェ降伏が生じても、ソース電極におけるガードリングとの接合部分の外縁部へ向かう電流の密度を緩和することができる。よって、アバランシェ降伏によるデバイス破壊を防止することができる。
また、請求項5に記載のように、前記ガードリング内の前記第2導電型領域の不純物濃度は、前記ガードリングの第2導電型不純物濃度よりも高くてもよい。
また、請求項6に記載のように、前記ガードリングは、前記ボディ領域を形成する工程と同一の不純物注入工程によって形成されることが好ましい。
また、請求項7に記載のように、前記ボディ領域は、前記ソース電極と接するボディコンタクト領域を含み、前記第1導電型領域は、前記ソース領域を形成する工程と同一の不純物注入工程によって形成され、前記第2導電型領域は、前記ボディコンタクト領域を形成する工程と同一の不純物注入工程によって形成されることが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1(a)(b)は、本発明の
参考例に係るショットキーバリアダイオードの模式図であって、
図1(a)は平面図、
図1(b)は断面図をそれぞれ示す。
このショットキーバリアダイオード1は、SiCが採用されたショットキーバリアダイオード1であり、たとえば、
図1(a)に示すように、平面視正方形のチップ状である。チップ状のショットキーバリアダイオード1は、
図1(a)の紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ数mm程度である。
【0017】
このショットキーバリアダイオード1は、n
+型(たとえば、濃度が1×10
18〜1×10
21cm
−3)のSiC基板2を備えている。SiC基板2の裏面には、その全域を覆うようにカソード電極3が形成されている。カソード電極3は、n型のSiCとオーミック接触する金属(たとえば、Niシリサイド、Coシリサイドなど)からなる。
SiC基板2の表面には、SiC基板2よりも低濃度のn
−型(たとえば、濃度が1×10
15〜1×10
17cm
−3)のSiCエピタキシャル層4(SiC半導体層)が積層されている。SiCエピタキシャル層4の厚さは、たとえば、1μm〜100μmである。
【0018】
SiCエピタキシャル層4の表面には、酸化シリコン(SiO
2)からなるフィールド絶縁膜5が積層されている。フィールド絶縁膜5の厚さは、たとえば、1000Å以上、好ましくは、3000Å〜30000Åである。なお、フィールド絶縁膜5は、窒化シリコン(SiN)など、他の絶縁物からなっていてもよい。
フィールド絶縁膜5には、SiCエピタキシャル層4の中央部を露出させる開口6が形成されている。フィールド絶縁膜5上には、アノード電極7が形成されている。
【0019】
アノード電極7は、フィールド絶縁膜5の開口6内を埋め尽くし、フィールド絶縁膜5における開口6の周縁部8を上から覆うように、当該開口6の外方へフランジ状に張り出している。すなわち、フィールド絶縁膜5の周縁部8は、SiCエピタキシャル層4およびアノード電極7により、全周にわたってその上下両側から挟まれている。フィールド絶縁膜5の周縁部8を覆うアノード電極7の、フィールド絶縁膜5の開口6端からのはみ出し量Xは、たとえば、10μm以上、好ましくは、10μm〜100μmである。
【0020】
アノード電極7は、たとえば、フィールド絶縁膜5の開口6内でSiCエピタキシャル層4に接合された障壁形成電極としてのショットキーメタル9と、このショットキーメタル9に積層されたコンタクトメタル10との2層構造を有している。
ショットキーメタル9は、n型のSiCとの接合によりショットキー接合を形成する金属(たとえば、Ni、Auなど)からなる。SiCに接合されるショットキーメタル9は、SiC半導体との間に、たとえば、0.7eV〜1.7eVの高さのショットキー障壁(電位障壁)を形成する。また、ショットキーメタル9の厚さは、この
参考例では、たとえば、0.01μm〜5μmである。
【0021】
コンタクトメタル10は、アノード電極7において、ショットキーバリアダイオード1の最表面に露出して、ボンディングワイヤなどが接合される部分である。コンタクトメタル10は、たとえば、Alからなる。コンタクトメタル10の厚さは、この
参考例では、ショットキーメタル9よりも大きく、たとえば、0.5μm〜10μmである。
ショットキーバリアダイオード1の最表面には、表面保護膜11が形成されている。表面保護膜11の中央部には、コンタクトメタル10を露出させる開口12が形成されている。ボンディングワイヤなどは、この開口12を介してコンタクトメタル10に接合される。
【0022】
また、SiCエピタキシャル層4の表層部には、アノード電極7のショットキーメタル9に接するようにp型のガードリング13が形成されている。このガードリング13は、平面視において、フィールド絶縁膜5の開口6の内外に跨るように、当該開口6の輪郭に沿って形成されている。したがって、ガードリング13は、開口6の内方へ張り出し、開口6内のショットキーメタル9の終端部としての外縁部14に接する内側部分15と、開口6の外方へ張り出し、フィールド絶縁膜5の周縁部8を挟んでアノード電極7(ショットキーメタル9)に対向する外側部分16とを有している。ガードリング13の内側部分15の幅w1は、1μm〜50μmであり、ガードリング13の外側部分16の幅w2は、1μm〜500μmである。これら、w1とw2との合計であるガードリング13の全体幅Wは、たとえば、5μm〜550μmである。また、ガードリング13のSiCエピタキシャル層4の表面からの深さDは、たとえば、1000Å以上、好ましくは、2000Å〜7000Åである。
【0023】
そして、p型ガードリング13は、その大部分において、n
−型のSiCエピタキシャル層4が本来的に有するn型不純物濃度よりもp型不純物濃度が大きいが、その表層部17において、n型不純物濃度よりもp型不純物濃度が小さくなっている。以下、
図2〜
図4に一例を取り上げて説明する。
図2は、本発明の
参考例のガードリング13におけるn型およびp型不純物濃度それぞれのプロファイルを示す図である(第1例)。
図3は、本発明の
参考例のガードリング13におけるn型およびp型不純物濃度それぞれのプロファイルを示す図である(第2例)。
図4は、ガードリング13におけるn型およびp型不純物濃度それぞれのプロファイルを示す図である(
第3例)。
【0024】
図2を参照して、n
−型のSiCエピタキシャル層4には、n型不純物(N(窒素)、P(リン)、As(ヒ素)など)が、層全体にわたって1.0×10
16cm
−3の濃度(エピ濃度)でほぼ均一に含有されている。
これに対し、p型のガードリング13には、n型不純物に加えて、p型不純物(B(ホウ素)、Al(アルミニウム)など)が含有されている。p型不純物は、ガードリング13全体にわたって均一に含有されているのではなく、SiCエピタキシャル層4の表面からの深さが大きくなるに従って濃度が増加するように含有されている。具体的には、p型不純物は、SiCエピタキシャル層4の表面近傍(深さ0〜約200Å)ではガードリング13にほぼ含有されておらず、約200Å〜1000Åの深さ位置において、ベースとなるSiCエピタキシャル層4の濃度よりも小さな濃度範囲(1.0×10
14cm
−3〜1.0×10
16cm
−3)で増加する。そして、約1000Åの深さ位置において、SiCエピタキシャル層4の濃度(1.0×10
16cm
−3)にほぼ一致し、約1000Åから最深部の4600Åの深さ位置において、SiCエピタキシャル層4の濃度よりも大きな濃度範囲(1.0×10
16cm
−3〜1.0×10
20cm
−3)で増加する。すなわち、
図2の例では、ガードリング13における、SiCエピタキシャル層4の表面から1000Å以下の深さdまで(たとえば、ガードリング13の深さDを100としたときに、0〜30%の深さ位置)の表層部17において、p型不純物濃度がn型不純物濃度よりも小さくなっている。
【0025】
そして、このような濃度プロファイルは、たとえば、層全体にわたってほぼ均一な濃度でn型不純物が含有されたSiCエピタキシャル層4に対して、その表面(深さ0)から1000Åの深さ位置までのアクセプタ密度<ドナー密度となるように、p型不純物を注入(たとえば、ドーズ量が1.0×10
12cm
−2〜1.0×10
15cm
−2、加速エネルギが30keV〜100keV)し、アニール処理によりp型不純物を活性化させることにより実現することができる。
【0026】
一方、
図3の例では、
図2の例とは異なり、p型不純物は、約200Å〜1000Åの深さ位置においても、ベースとなるSiCエピタキシャル層4の濃度よりも大きな濃度範囲で増加している。しかしながら、
図3の例では、約200Å〜600Åの深さ位置に、SiCエピタキシャル層4が本来的に有するn型不純物(SiCエピタキシャル層4形成時に含有されるn型不純物)以外に、
図3の一点鎖線で示すように、n型不純物が導入されている。これにより、約200Å〜600Åの深さ位置においては、SiCエピタキシャル層4のn型不純物が補われ、その結果、p型不純物濃度がn型不純物濃度よりも小さくなっている。
【0027】
そして、このような濃度プロファイルは、たとえば、層全体にわたってほぼ均一な濃度でn型不純物が含有されたSiCエピタキシャル層4に対して、アクセプタ密度>ドナー密度となるように、p型不純物を注入(たとえば、ドーズ量が1.0×10
14cm
−2〜1.0×10
16cm
−2、加速エネルギが80keV〜400keV)し、さらに、p型不純物を注入した領域にn型不純物を注入(たとえば、ドーズ量が1.0×10
12cm
−2〜1.0×10
14cm
−2、加速エネルギが30keV〜100keV)し、その後、アニール処理により、n型およびp型不純物を活性化させることにより実現することができる。
【0028】
また、
図4の例のように、典型的なガードリング13の場合では、
図3と同様に、p型不純物は、約200Å〜1000Åの深さ位置においても、ベースとなるSiCエピタキシャル層4の濃度よりも大きな濃度範囲で増加している。しかも、この
図4の例では、
図3の例とは異なり、n型不純物の追加注入がない。したがって、
図4の例では、ガードリング13における約200Å〜4600Åの深さ位置のほぼ全域において、p型不純物濃度がn型不純物濃度よりも大きくなっている。
【0029】
以上のように、このショットキーバリアダイオード1によれば、フィールド絶縁膜5の開口6の内外に跨るように、ガードリング13が形成されており、ガードリング13の内側部分15が、当該開口6内のショットキーメタル9の外縁部14に接している。
そして、ガードリング13では、
図2および
図3に示す例のように、SiCエピタキシャル層4の表面から1000Å以下の深さdまで(ガードリング13の深さDを100としたときに、0〜30%の深さ位置)の表層部17において、p型不純物濃度がn型不純物濃度よりも小さくなっている。つまり、ガードリング13の表層部17では、p型不純物濃度<n型不純物濃度となっており、当該表層部17は、p型の性質というよりもむしろn型の性質を示す。
【0030】
これにより、ショットキーバリアダイオード1のSiCエピタキシャル層4内に電流が流れたときに、SiCエピタキシャル層4内における電流密度を分散させることができるか、電流密度の分散とともに、電流密度が比較的高い部分を、アノード電極7の中央部にシフトさせることができる。その結果、たとえば、アノード電極7−カソード電極3間に大きな逆電圧が印加され、アバランシェ降伏が生じても、アノード電極7(ショットキーメタル9)の外縁部14へ向かう電流の密度を緩和することができる。よって、アバランシェ降伏によるデバイス破壊を防止することができる。
【0031】
また、SiCエピタキシャル層4とガードリング13とのpn接合により、アノード電極7の外縁部14付近に空乏層が広がるため、当該空乏層によりアノード電極7の外縁部14への電界集中を抑制することができる。よって、デバイスの耐圧を向上させることもできる。
図5(a)(b)は、本発明の
一実施形態に係る電界効果トランジスタの模式図であって、
図5(a)は平面図、
図5(b)は内部拡大図をそれぞれ示す。
図6は、本発明の
一実施形態に係る電界効果トランジスタの模式断面図であって、
図5(b)の切断線VI−VIでの切断面を示す。
【0032】
この電界効果トランジスタ21は、SiCが採用されたDMISFET(Double diffused Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)であり、たとえば、
図5(a)に示すように、平面視正方形のチップ状である。チップ状の電界効果トランジスタ21は、
図5(a)の紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ数mm程度である。
電界効果トランジスタ21の表面には、ソースパッド22が形成されている。ソースパッド22は、四隅が外方へ湾曲した平面視略正方形状であり、電界効果トランジスタ21の表面のほぼ全域を覆うように形成されている。このソースパッド22には、その一辺の中央付近に除去領域23が形成されている。この除去領域23は、ソースパッド22が形成されていない領域である。
【0033】
除去領域23には、ゲートパッド24が配置されている。ゲートパッド24とソースパッド22との間には間隔が設けられており、これらは互いに絶縁されている。
次に、電界効果トランジスタ21の内部構造について説明する。
電界効果トランジスタ21は、n
+型(たとえば、濃度が1×10
18〜1×10
21cm
−3)のSiC基板25を備えている。
【0034】
SiC基板25の表面には、SiC基板25よりも低濃度のn
−型(たとえば、濃度が1×10
15〜1×10
17cm
−3)のSiCエピタキシャル層26(SiC半導体層)が積層されている。SiCエピタキシャル層26の厚さは、たとえば、1μm〜100μmである。
電界効果トランジスタ21には、
図5(a)に示すように、平面視でSiCエピタキシャル層26の中央部に配置され、電界効果トランジスタ21として機能する活性領域27が形成されている。
【0035】
活性領域27において、SiCエピタキシャル層26の表層部には、p型のボディ領域28が、行方向および列方向に一定のピッチで行列状(マトリクス状)に配列されて多数形成されている。各ボディ領域28は、平面視正方形状であり、たとえば、
図5(b)の紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ7.2μm程度である。また、ボディ領域28の不純物濃度は、たとえば、1.0×10
16cm
−3〜1.0×10
19cm
−3である。一方、SiCエピタキシャル層26における、ボディ領域28よりもSiC基板25側の領域は、エピタキシャル成長後のままの状態が維持された、n
−型のドリフト領域29となっている。
【0036】
各ボディ領域28には、その中央部にp
+型のボディコンタクト領域30(たとえば、不純物濃度が1.0×10
18cm
−3〜2.0×10
21cm
−3)が形成されており、このボディコンタクト領域30を取り囲むように、n
+型のソース領域31(たとえば、不純物濃度が1.0×10
18cm
−3〜1.0×10
21cm
−3)が形成されている。ボディコンタクト領域30は、平面視正方形状であり、たとえば、
図5(b)の紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ1.6μm程度である。
【0037】
ソース領域31は、平面視正方形環状であり、たとえば、
図5(b)の紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ5.7μm程度である。
また、活性領域27において、一定のピッチで行列状に配列されたボディ領域28の各間の領域(隣り合うボディ領域28の側面により挟まれるボディ間領域32)は、一定(たとえば、2.8μm)幅を有する格子状である。
【0038】
このボディ間領域32上には、ボディ間領域32に沿って、格子状のゲート絶縁膜33が形成されている。ゲート絶縁膜33は、隣り合うボディ領域28の間に跨っていて、ボディ領域28におけるソース領域31を取り囲む部分(ボディ領域28の周縁部)およびソース領域31の外周縁を覆っている。ゲート絶縁膜33は、酸化シリコン(SiO
2)からなり、その厚さは400Å程度でほぼ一様である。
【0039】
ゲート絶縁膜33上には、ゲート電極34が形成されている。ゲート電極34は、格子状のゲート絶縁膜33に沿って格子状に形成されていて、ゲート絶縁膜33を挟んで、各ボディ領域28の周縁部に対向している。ゲート電極34は、ポリシリコンからなり、たとえば、p型不純物が高濃度に導入されている。また、ゲート電極34の厚さは、たとえば、6000Å程度である。
【0040】
この電界効果トランジスタ21では、ボディ間領域32の幅方向中央に単位セル間の境界が設定されている。各単位セルは、たとえば、
図5(b)の紙面における上下左右方向の長さがそれぞれ10μm程度である。各単位セルでは、ボディ領域28の深さ方向がゲート長方向であり、そのゲート長方向に直交するボディ領域28の周方向がゲート幅方向である。そして、各単位セルでは、ゲート電極34に印加する電圧を制御することにより、各単位セルのボディ領域28の周縁部に環状のチャネルを形成して、ドリフト領域29において各ボディ領域28の4つの側面に沿ってSiCエピタキシャル層26の表面側へ流れるドレイン電流を、ソース領域31に流すことができる。すなわち、単位セルごとにMISトランジスタ構造が構成されている。
【0041】
そして、SiCエピタキシャル層26の表層部には、マトリクス状に配列された単位セル(活性領域27)を取り囲むように、活性領域27から間隔を開けてp型のガードリング35が複数本(この実施形態では、5本)形成されている。これらのガードリング35は、p型のボディ領域28を形成する工程と同一のイオン注入工程で形成することができる。
【0042】
各ガードリング35は、平面視において、電界効果トランジスタ21の外周に沿う平面視四角環状に形成されている。また、ガードリング35のSiCエピタキシャル層26の表面からの深さDは、ボディ領域28とほぼ同じ深さであり、たとえば、2000Å以上、好ましくは、3000Å〜10000Åである。
複数のガードリング35のうち、最も内側のガードリング36(全体幅w3)には、n
+型領域38とp
+型領域39とが互いに隣接して形成されている。これらのn
+型領域38およびp
+型領域39は、当該ガードリング36の全周にわたって平面視四角環状に形成されている。n
+型領域38は、n
+型のソース領域31を形成する工程と同一のイオン注入工程、p
+型領域39は、p
+型のボディコンタクト領域30を形成する工程と同一のイオン注入工程で、それぞれ形成することができる。また、最も内側のガードリング36以外のガードリング37の全体幅w4は、たとえば、1μm〜3μmである。
【0043】
そして、こ
の実施形態においても、p型ガードリング35は、その大部分において、n
−型のSiCエピタキシャル層26が本来的に有するn型不純物濃度よりもp型不純物濃度が大きいが、前述の
参考例の
図2〜
図4で示したように、その表層部40において、n型不純物濃度よりもp型不純物濃度が小さくなっている。とりわけ、最も内側のガードリング36においては、その表層部40にp
+型領域が形成されているので、
図3の例のように、n型不純物を追加注入することにより、SiCエピタキシャル層26のn型不純物を補なうことが好ましい。
【0044】
SiCエピタキシャル層26上には、ゲート電極34を被覆するように、酸化シリコン(SiO
2)からなるフィールド絶縁膜としての層間絶縁膜41が積層されている。層間絶縁膜41には、ソース領域31およびボディコンタクト領域30を露出させるコンタクトホール42、および最も内側のガードリング36を露出させるコンタクトホール43が形成されている。
【0045】
層間絶縁膜41上には、ソース電極44が形成されている。ソース電極44は、各コンタクトホール42,43を介して、すべての単位セルのボディコンタクト領域30およびソース領域31、ならびに最も内側のガードリング36のp
+型領域39に一括して接触している。つまり、ソース電極44は、すべての単位セルに対して共通の配線となっている。そして、このソース電極44上には層間絶縁膜(図示せず)が形成されており、その層間絶縁膜(図示せず)を介して、ソース電極44がソースパッド22(
図5(a)参照)に電気的に接続されている。一方、ゲートパッド24(
図5(a)参照)は、当該層間絶縁膜(図示せず)上に引き回されたゲート配線(図示せず)を介して、ゲート電極34に電気的に接続されている。
【0046】
また、ソース電極44は、SiCエピタキシャル層26との接触側から順にTi/TiN層45と、Al層46とが積層された構造を有している。
SiC基板25の裏面には、その全域を覆うようにドレイン電極47が形成されている。このドレイン電極47は、すべての単位セルに対して共通の電極となっている。ドレイン電極47としては、たとえば、SiC基板25側から順にTi、Ni、AuおよびAgが積層された積層構造(Ti/Ni/Au/Ag)を適用することができる。
【0047】
以上のように、この電界効果トランジスタ21では、マトリクス状の単位セルの周囲にガードリング35が形成されているため、SiCエピタキシャル層26とガードリング35とのpn接合により、活性領域27の周囲に空乏層が広がる。これにより、各単位セルの素子表面での電界強度を緩和することができる。よって、デバイスの耐圧を向上させることができる。
【0048】
また、各単位セルを動作させるためのソース電極44が、ソース領域31およびボディコンタクト領域30だけでなく、活性領域27を取り囲む最も内側のガードリング36にも接合されている。これにより、電界効果トランジスタ21にアバランシェ降伏が生じたときに、その降伏電流を、活性領域27の周囲にある最も内側のガードリング36の方向へ流れるように迂回させることができる。その場合、層間絶縁膜41のコンタクトホール43内におけるソース電極44の外縁部に電流集中が起こってデバイスが破壊するおそれがある。
【0049】
しかしながら、この実施形態では、ガードリング35において、SiCエピタキシャル層26の表面から1000Å以下の深さdまで(ガードリング35の深さDを100としたときに、0〜5%の深さ位置)の表層部40において、p型不純物濃度がn型不純物濃度よりも小さくなっている。つまり、ガードリング35の表層部40では、p型不純物濃度<n型不純物濃度となっており、当該表層部40は、p型の性質というよりもむしろn型の性質を示す。
【0050】
これにより、電界効果トランジスタ21のSiCエピタキシャル層26内に電流が流れたときに、幅広ガードリング36付近の電流密度を分散させることができるか、電流密度の分散とともに、電流密度が比較的高い部分を、コンタクトホール43内におけるソース電極44の中央部にシフトさせることができる。その結果、たとえば、ソース−ドレイン間に大きな逆電圧が印加され、アバランシェ降伏が生じても、ソース電極44の外縁部へ向かう電流の密度を緩和することができる。よって、アバランシェ降伏によるデバイス破壊を防止することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態
および参考例を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、
参考例のショットキーバリアダイオード1において、ショットキーメタル9を、
図7(a)(b)に示すように、ポリシリコン52に置き換えることにより、ポリシリコン52を、SiCエピタキシャル層4に対してヘテロ接合させたヘテロジャンクションダイオード51を構成することができる。SiCに接合されるポリシリコン52は、SiC半導体との間に、たとえば、0.5eV〜1.8eVの高さの電位障壁を形成する。
【0052】
また、ショットキーバリアダイオード1、電界効果トランジスタ21およびヘテロジャンクションダイオード51の各半導体部分の導電型を反転した構成が採用されてもよい。すなわち、ショットキーバリアダイオード1、電界効果トランジスタ21およびヘテロジャンクションダイオード51において、p型の部分がn型であり、n型の部分がp型であってもよい。
【0053】
本発明のSiC半導体装置は、モータ制御システム、電力変換システムなど、各種パワーエレクトロニクス分野におけるシステムに主として使用される。具体的には、自動車用インバータ回路、IPM(Intelligent Power Module)などに組み込まれて使用される。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
下記の実施例1〜3および比較例1は、本発明による電流密度の分散効果を証明するために行ったものである。
<実施例1>
(1)ショットキーバリアダイオードの作製
図1(a)(b)で説明したショットキーバリアダイオードとほぼ同等の構造を有するショットキーバリアダイオードを作製した。
【0055】
具体的には、まず、n
+型SiC基板上に、n
−型のSiCからなるエピタキシャル層を成長させた(n型不純物濃度:1×10
16cm
−3)。n型不純物としては、Pを用いた。
次いで、当該エピタキシャル層に対して、p型不純物(B)を、ドーズ量1.5×10
11cm
−2、加速エネルギ30keVで注入した。続いて、n型不純物(P)を、ドーズ量3.0×10
15cm
−2、加速エネルギ180keVで注入した。次いで、1150℃でアニール処理することにより、n型およびp型不純物を活性化させた。これにより、4500Åの深さのガードリングを選択的に形成した。
【0056】
その後、エピタキシャル層上に、SiO
2からなるフィールド絶縁膜を形成した。このフィールド絶縁膜には、ガードリングの一部が露出するように開口を形成した。次いで、フィールド絶縁膜の開口を介して、ショットキーメタル(Mo)を、ガードリングに接するようにエピタキシャル層に接合した。
<実施例2>
n型不純物のドーズ量および加速エネルギを、それぞれ3.0×10
11cm
−2および30keVとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によりショットキーバリアダイオードを作製した。
<実施例3>
n型不純物のドーズ量および加速エネルギを、それぞれ1.5×10
12cm
−2および30keVとしたこと以外は、実施例1と同様の方法によりショットキーバリアダイオードを作製した。
<比較例1>
ガードリングを形成する際にn型不純物を注入しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法によりショットキーバリアダイオードを作製した。
<電流密度シミュレーション>
実施例1〜3および比較例1により得られたショットキーバリアダイオードのアノード−カソード間に逆電圧(760V)を印加したときの、エピタキシャル層内の電流密度分布をシミュレーションした。結果を
図8〜
図11に示す。なお、
図8〜
図11において、
図1(a)(b)に示された各部の対応部分は同一参照符号で示す。
【0057】
図11に示すように、比較例1のショットキーバリアダイオードでは、ショットキーメタルの外縁部に、大きな電流が集中して流れることが確認できた。
これに対して、
図8に示すように、実施例1のショットキーバリアダイオードでは、ショットキーメタルの外縁部に、他の部分に比べて大きな電流が集中していることが確認されたが、その電流の大きさはデバイス破壊を起こすほどのものではない。すなわち、ショットキーメタルの外縁部へ向かう電流の密度が緩和されていることが確認できた。
【0058】
また、
図9および
図10に示すように、実施例2および実施例3のショットキーバリアダイオードでは、ショットキーメタルの外縁部へ向かう電流の密度が一層緩和されているとともに、電流密度が比較的高い部分が、ショットキーメタルの中央部にシフトしていることが確認できた。