【文献】
上野川 編集,乳の科学,1998年 3月25日,p. 20-21, 44-45, 51
【文献】
〜明日は、今日より、ワンダフル。〜 2013年秋冬「ワンダ」ブランド戦略 「ワンダ」ブランドの更なる成長へ 『ワンダ モーニングショット』『ワンダ 金の微糖』 『ワンダ 特製カフェオレ』 『ワンダ 特製カフェオレ ホット ミルクブレンド』 リニューアル発売! 『ワンダ パワーブレンドコーヒー』10月8日(火) 新発売!,アサヒ飲料株式会社,2013年 9月 2日,URL,http://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2013/pick_0902.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塩基性アミノ酸が、アルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジンおよびトリプトファンからなる群から選択される一または二以上である、請求項1に記載のコーヒー飲料。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係るコーヒー飲料は、塩基性アミノ酸およびカルボン酸を含むものである。そして、本実施形態に係るコーヒー飲料において、当該コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸の濃度をx1、当該コーヒー飲料中のカルボン酸の濃度をx2、としたとき、上記塩基性アミノ酸の濃度と上記カルボン酸の濃度との比x1/x2の値は、0.5以上2.0以下である。こうすることで、品質の経時安定性に優れたコーヒー飲料とすることができる。
【0015】
まず、コーヒーの品質は、一般的に、風味、味および香りのバランスによって決まる。特に、味という観点においてコーヒーの品質を向上させるためには、酸味、苦味およびコクのバランスに優れたものとすることが重要である。また、従来のコーヒー飲料においては、添加成分の種類や含有量、殺菌条件等によってコーヒー本来の品質が劣化するという不都合があった。このため、品質に優れたコーヒー飲料とするためには、添加成分の種類や含有量、殺菌条件等の各因子を制御する必要がある。
【0016】
ここで、塩基性アミノ酸は、苦味を中心とした複雑な呈味質である。それ故、一般的に、塩基性アミノ酸をコーヒー飲料に含有させる場合には、当該コーヒー飲料の酸味、苦味およびコクのバランスを保つべく、塩基性アミノ酸を含有させない場合と比べて、各種添加成分の種類や量等の各種条件を高度に制御する必要がある。
【0017】
特許文献1や2に記載されている従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料においては、塩基性アミノ酸以外の添加成分の種類や、加熱方法の条件等を制御している。そして、従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料は、製造直後の味という観点において品質に優れたものであった。しかしながら、従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料では、製造されてから消費者に喫飲されるまでの、缶などの容器に充填される際、およびその後の輸送中等の流通・保存時に、風味、味および香りのバランスという観点においてコーヒー本来の品質が低下することがあった。この理由は必ずしも明らかではないが、従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料では、容器内に残存している微量の酸素と、コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸との相互作用により、製造直後と比べて、塩基性アミノ酸量とその他の添加成分量のバランスが変化してしまっているためであると考えられる。
【0018】
これに対し、本実施形態に係るコーヒー飲料は、塩基性アミノ酸とともにカルボン酸を必須成分として含み、当該コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸の濃度をx1、当該コーヒー飲料中のカルボン酸の濃度をx2、としたとき、上記塩基性アミノ酸の濃度と上記カルボン酸の濃度との比x1/x2の値が特定の条件を満たすものである。こうすることで、従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料と比べて、より長い期間、コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸量とその他の添加成分量とのバランスを保持することができる。すなわち、本実施形態に係るコーヒー飲料は、従来のコーヒー飲料と比べて、より長い期間、当該コーヒー飲料の風味、味および香りのバランスを保持できるものである。
また、本実施形態に係るコーヒー飲料によれば、理由は必ずしも明らかではないが、従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料において流通・保存時に生じていた、容器内に残存している微量の酸素と、コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸との相互作用についても抑制することができる。それ故、得られるコーヒー飲料は、従来のコーヒー飲料と比べて、より長い期間、風味、味および香りのバランスといった品質の経時安定性に優れるものと考えられる。
【0019】
本実施形態において塩基性アミノ酸の濃度とカルボン酸の濃度との比x1/x2は、0.5以上であり、好ましくは0.6以上である。こうすることにより、特に、風味豊かな品質の経時安定性により一層優れたコーヒー飲料を実現できる。
【0020】
また、本実施形態において塩基性アミノ酸の濃度とカルボン酸の濃度との比x1/x2は、2.0以下であり、好ましくは1.6以下である。こうすることにより、特に、風味豊かな品質の経時安定性により一層優れたコーヒー飲料を実現できる。
【0021】
なお、従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料における上記x1/x2の値は、0.4以下のレベルにあった。
【0022】
以下、本実施形態に係るコーヒー飲料について詳細に説明する。
【0023】
まず、本実施形態に係るコーヒー飲料とは、1977年に制定された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」にも記載されているように、コーヒー豆を原料とした飲料及びこれに糖類、乳製品、乳化された食用油脂その他の可食物を加え容器に密封した飲料のことを指す。一方、「飲用乳の表示に関する公正競争規約」によれば、2013年現在、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものについては、「乳飲料」として扱われることになる。本実施形態に係るコーヒー飲料については、コーヒー豆を原料とした飲料であるため、重量百分率で乳固形分3.0%以上の成分を含有するものであったとしても、コーヒー飲料として扱うこととする。
【0024】
本実施形態に係るコーヒー飲料は、コーヒー豆から抽出したコーヒー分を含むものである。コーヒー分は、コーヒー抽出液であってもよく、インスタントコーヒーやレギュラーコーヒーであってもよい。ここで、本実施形態において使用するコーヒー豆は、特に限定されるものではなく、生豆であっても焙煎豆であってもよい。さらに、使用するコーヒー豆の種類についても、特に限定されるものではなく、たとえば、メキシコ、グアテマラ、ブルーマウンテン、クリスタルマウンテン、コスタリカ、コロンビア、ベネズエラ、ブラジル・サントス、ハワイ・コナ、モカ、ケニア、キリマンジャロ、マンデリン、ロブスタ等が挙げられる。
【0025】
また、コーヒー飲料の品質は、当該コーヒー飲料のpHによっても変化するものである。そして、本実施形態に係るコーヒー飲料は、塩基性アミノ酸とカルボン酸の含有濃度の割合を制御して配合するものであり、当該コーヒー飲料のpHを調整することも可能である。ここで、本実施形態に係るコーヒー飲料のpHは、5.8以上6.8以下であることが好ましく、6.0以上6.6以下であることがさらに好ましい。こうすることで、より一層風味、味および香りのバランスに優れたものとすることができる。
【0026】
<<コーヒー飲料の配合成分とその含有量>>
本実施形態に係るコーヒー飲料は、塩基性アミノ酸およびカルボン酸を必須成分として含むものである。
【0027】
<塩基性アミノ酸>
まず、本実施形態に係るコーヒー飲料に必須成分として含有させている塩基性アミノ酸は、背景技術の項で前述したように、アンチエイジング、生活習慣病の予防、疲労回復、成長ホルモンの分泌等の体内機能改善に役立つ成分として知られている。このような特徴を有した成分をコーヒー飲料に含有させることによって、体内機能改善効果を有したコーヒー飲料とすることができるものと考えられる。
【0028】
ここで、本実施形態に係る塩基性アミノ酸とは、分子構造中に官能基としてカルボキシル基と、2以上のアミノ基を有する有機化合物のことを指す。そして、本実施形態に係る塩基性アミノ酸は、α−アミノ酸であってもよく、β−アミノ酸であってもよいし、γ−アミノ酸であってもよい。また、本実施形態に係る塩基性アミノ酸は、特に限定されないが、たとえば、アルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジンおよびトリプトファンからなる群から選択される一または二以上であることが好ましい。中でも、塩基性アミノ酸として、アルギニンまたはアルギニンを含む二以上を用いた場合、品質の経時安定性により一層優れたコーヒー飲料を得ることができる。なお、上述した塩基性アミノ酸は、いずれも食品添加剤であり、安全性という観点において好適に使用することができる。
【0029】
本実施形態において、当該コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸の濃度x1は、1.0g/L以上であることが好ましく、1.5g/L以上であるとさらに好ましい。こうすることで、品質の経時安定性を向上させることができるだけでなく、体内機能改善効果に優れたコーヒー飲料を実現することができる。
【0030】
また、本実施形態において、当該コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸の濃度x1は、4.0g/L以下であることが好ましく、3.0g/L以下であるとさらに好ましい。こうすることで、品質の経時安定性を向上させることができるだけでなく、体内機能改善効果に優れたコーヒー飲料を実現することができる。
【0031】
<カルボン酸>
次に、本実施形態に係るカルボン酸について説明する。
【0032】
本実施形態に係るカルボン酸は、当該コーヒー飲料において、特に酸味を呈する成分であると考えられている。そして、本実施形態に係るコーヒー飲料は、塩基性アミノ酸とカルボン酸の含有濃度の割合を制御して配合するものであるため、当該コーヒー飲料の味という観点において、酸味、苦味およびコクのバランスに優れたものとすることができる。
【0033】
また、本実施形態に係るコーヒー飲料は、塩基性アミノ酸とカルボン酸を必須成分として含むものである。一般的に、コーヒー飲料のpHが塩基性に傾いた場合、当該コーヒー飲料中に配合されている成分が沈殿してしまうことがある。他方、本実施形態のように塩基性物質と酸性物質とを特定の割合で配合させた場合、pHが塩基性側に傾くことを抑制することができる。これにより、当該コーヒー飲料中に配合した塩基性アミノ酸以外の各成分が沈殿してしまうことを抑制し、製造時に設定した配合成分の含有量比をバランスよく長期間保持することができる。
【0034】
本実施形態において、当該コーヒー飲料中のカルボン酸の濃度x2は、1.6g/L以上であることが好ましく、2.0g/L以上であるとさらに好ましい。こうすることで、品質の経時安定性を向上させることができるだけでなく、より一層酸味、苦味およびコクのバランスに優れたものとすることができる。
【0035】
また、本実施形態において、当該コーヒー飲料中のカルボン酸の濃度x2は、8.0g/L以下であることが好ましく、6.0g/L以下であるとさらに好ましい。こうすることで、品質の経時安定性を向上させることができるだけでなく、より一層酸味、苦味およびコクのバランスに優れたものとすることができる。
【0036】
また、本実施形態に係るカルボン酸は、コーヒー飲料の原料に由来するカルボン酸であり、コーヒー豆由来のカルボン酸(第1のカルボン酸)と、上記第1のカルボン酸とは別に当該コーヒー飲料に添加したカルボン酸(第2のカルボン酸)が主である。そして、本実施形態に係るカルボン酸は、特に限定されないが、第1のカルボン酸とは異なる第2のカルボン酸を含むことが好ましい。こうすることで、品質の経時安定性により一層優れたコーヒー飲料を実現することができる。
【0037】
上記コーヒー豆由来の第1のカルボン酸は、使用するコーヒー豆の種類によって変わるものであるが、たとえば、キナ酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、酢酸、ピログルタミン酸およびリン酸等が挙げられる。
【0038】
上記第2のカルボン酸は、特に限定されるものではないが、疲労回復に有効な成分として知られているクエン酸を含むことが好ましい。こうすることで、品質の経時安定性を向上させることができるだけでなく、より一層酸味、苦味およびコクのバランスに優れたものとすることができる。
【0039】
<その他の配合成分>
また、本実施形態に係るコーヒー飲料は、カフェインを含むものである。本実施形態に係るコーヒー飲料におけるカフェインは、コーヒー豆由来のカフェインであっても、別途添加して含有させたものであってもよい。
【0040】
本実施形態において、コーヒー飲料中のカフェイン含有量は、0.5g/L以上1.5g/L以下であることが好ましく、0.7g/L以上1.3g/L以下であるとさらに好ましい。こうすることで、味という観点だけでなく、風味という観点においても品質の経時安定性に優れたコーヒー飲料を実現することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、1または2以上の乳分を含有させてもよい。コーヒー飲料に含有させる乳分は、特に限定されないが、たとえば、生乳、牛乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、部分脱脂乳、練乳、粉乳、発酵乳等が挙げられる。
【0042】
また、本実施形態においては、1または2以上の甘味成分を含有させてもよい。コーヒー飲料に含有させる甘味成分は、特に限定されないが、砂糖などの糖類、マルチトール、エリスリトールなどの糖アルコール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、サネット、ステビア抽出物、ネオテーム、サッカリン、スクラロース等の高甘味度甘味料等が挙げられる。
【0043】
また、本実施形態においては、1または2以上の香味成分を含有させてもよい。コーヒー飲料に含有させる香味成分は、特に限定されないが、香料、エキス等が挙げられる。
【0044】
また、本実施形態においては、1または2以上の抗酸化剤を含有させてもよい。コーヒー飲料に含有させる抗酸化剤は、特に限定されないが、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0045】
また、本実施形態においては、1または2以上のpH調整剤を含有させてもよい。コーヒー飲料に含有させるpH調整剤は、特に限定されないが、炭酸カリウム、重曹、水酸化カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
また、本実施形態においては、1または2以上の酸味料を含有させてもよい。コーヒー飲料に含有させる酸味料は、特に限定されないが、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、又はそれらの塩類等が挙げられる。
【0047】
以上に説明した成分の他にも、本発明の目的を損なわない範囲で各種栄養成分、抽出物、着色剤、希釈剤等の食品添加物を添加することもできる。
【0048】
<<コーヒー飲料の製造方法>>
次に、本実施形態に係るコーヒー飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係るコーヒー飲料は、塩基性アミノ酸の濃度とカルボン酸の濃度との比x1/x2の値が特定の条件を満たすものである。しかしながら、このようなコーヒー飲料は、従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料を製造する方法により得ることは困難である。具体的に、本実施形態に係るコーヒー飲料は、塩基性アミノ酸およびその他の添加物を添加する順番、および配合成分の添加量等の各因子を高度に制御することで初めて得ることができる。このように、本実施形態に係る品質の経時安定性に優れるコーヒー飲料を得るためには、上記各因子を高度に制御することが特に重要となる。
【0049】
以下、本実施形態に係るコーヒー飲料の製造方法の一例を示す。ただし、本実施形態に係るコーヒー飲料の製造方法は、これらの例に限定されない。
【0050】
コーヒー飲料の製造方法の一例として、水を主成分とする溶媒(以下、「溶媒」ともいう。)に対して、糖、コーヒー分および塩基性アミノ酸をこの順で添加するものについて、以下に説明する。
【0051】
まず、特許文献1や2等に記載されている従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料は、コーヒー分に対して、各成分を添加する方法により製造されている。さらに、従来の製造方法において各成分を添加する順序は、特に限定されておらず、各成分を均一に配合できればどのような順序を採用してもよいものであった。従来の製造方法においては、当該コーヒー飲料のpHが塩基性側に傾いてしまうことがあった。このようにpHが塩基性に傾いてしまった場合、当該コーヒー飲料中に配合されている成分が沈殿してしまうことがあった。
【0052】
これに対し、本実施形態に係る製造方法は、水を主成分とする溶媒に対して、糖、コーヒー分および塩基性アミノ酸をこの順で添加する方法を採用するものである。この製造方法によれば、風味、味および香りのバランスという観点において品質の経時安定性に優れたコーヒー飲料を作製することができる。この理由は必ずしも明らかではないが、水を主成分とする溶媒に対して、塩基性アミノ酸を除く各種成分を特定の順番で添加した後、上記塩基性アミノ酸を添加することによって、コーヒー飲料のpHが塩基性側に傾いてしまうことを抑制できるためであると考えられる。これにより、塩基性アミノ酸以外の添加成分が沈殿することを抑制できるため、より長い期間、コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸量とその他の添加成分量のバランスを保持することができるものと考えられる。
また、この製造方法によれば、上述のように、塩基性アミノ酸以外の添加成分が沈殿することを抑制できるため、理由は必ずしも明らかではないが、従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料において流通・保存時に生じていた、容器内に残存している微量の酸素と、コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸との相互作用も抑制することができる。それ故、得られたコーヒー飲料は、従来のコーヒー飲料と比べて、より長い期間、風味、味および香りのバランス等といった品質の経時安定性に優れたものとすることができる。
【0053】
本実施形態に係る製造方法は、上述したように、水を主成分とする溶媒に対して、糖、コーヒー分および塩基性アミノ酸をこの順で添加するものである。この製造方法においては、コーヒー分を上記溶媒に対して添加した後、カルボン酸を添加する工程をさらに含む。こうすることで、理由は必ずしも明らかではないが、従来の塩基性アミノ酸含有コーヒー飲料において流通・保存時に生じていた、容器内に残存している微量の酸素と、コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸との相互作用をより一層高度に抑制することができる。
【0054】
また、塩基性アミノ酸を添加する前、あるいは同時にカルボン酸を添加しておくことで、中和反応を生じさせることができる。これにより、塩基性アミノ酸がその他の各種添加成分に及ぼす影響を抑制することができる。それ故、塩基性アミノ酸を添加する前、あるいは同時にカルボン酸を添加した場合、塩基性アミノ酸を添加する前、あるいは同時にカルボン酸を添加しない場合と比べて、コーヒー飲料中の塩基性アミノ酸量とその他の添加成分量のバランスを高度に保持することができる。
【0055】
また、塩基性アミノ酸とカルボン酸は、溶媒に対して同時に添加することが好ましく、塩基性アミノ酸とカルボン酸を事前に混合してから、溶媒に対して添加するとさらに好ましい。こうすることで、品質の経時安定性を向上させることができるだけでなく、より一層酸味、苦味およびコクのバランスに優れたものとすることができる。
【0056】
添加するカルボン酸は、特に限定されるものではないが、疲労回復に有効な成分として知られているクエン酸であることが好ましい。
【0057】
また、溶媒に対して糖を添加した後から、塩基性アミノ酸を添加する前までの間に、カフェインを添加する工程をさらに含むことが好ましい。こうすることで、品質の経時安定性により一層優れたコーヒー飲料を作製することができる。
【0058】
また、水を主成分とする溶媒は、乳分を含むものであってもよい。
【0059】
ここで、本実施形態に係るコーヒー飲料は、上述したように、本発明の目的を損なわない範囲で各種栄養成分、抽出物、甘味成分、香料、抗酸化剤(酸化防止剤)、酸味料、着色剤、希釈剤等の食品添加物を添加してもよい。
【0060】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.塩基性アミノ酸およびカルボン酸を含むコーヒー飲料であって、
当該コーヒー飲料中の前記塩基性アミノ酸の濃度をx1、
当該コーヒー飲料中の前記カルボン酸の濃度をx2、
としたとき、前記塩基性アミノ酸の濃度と前記カルボン酸の濃度との比、x1/x2の値が0.5以上2.0以下であるコーヒー飲料。
2.前記塩基性アミノ酸が、アルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジンおよびトリプトファンからなる群から選択される一または二以上である、1.に記載のコーヒー飲料。
3.前記カルボン酸が、クエン酸を含む、1.または2.に記載のコーヒー飲料。
4.当該コーヒー飲料中の前記塩基性アミノ酸の前記濃度x1が、1g/L以上4g/L以下である、1.乃至3.のいずれか一つに記載のコーヒー飲料。
5.当該コーヒー飲料中の前記カルボン酸の前記濃度x2が、1.6g/L以上8.0g/L以下である、1.乃至4.のいずれか一つに記載のコーヒー飲料。
6.当該コーヒー飲料のpHが、5.8以上6.8以下である、1.乃至5.のいずれか一つに記載のコーヒー飲料。
7.当該コーヒー飲料中のカフェイン含有量が、0.5g/L以上1.5g/L以下である、1.乃至6.のいずれか一つに記載のコーヒー飲料。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
各実施例及び各比較例で用いた原料成分を下記に示す。
【0063】
アルギニン(協和発酵バイオ社製、L−アルギニン協和)
無水クエン酸(扶桑化学工業社製、クエン酸フソウ(無水))
インスタントコーヒー(丸紅食料社製、インスタントコーヒーAB−TAI−2B)
牛乳
グラニュー糖
カフェイン(白鳥製薬社製、カフェイン(抽出物))
香料
【0064】
(実施例1)
牛乳340gに対して、グラニュー糖270g、カフェイン1.4g、インスタントコーヒー80g、無水クエン酸4.6gおよびアルギニン8.0g、香料1.4gを、この順で添加して均質化した。このとき、無水クエン酸およびアルギニンは、牛乳に対して同時に添加した。なお、インスタントコーヒーとしては、コーヒー生豆含有量として5.7%w/wとなるように事前に調整したものを用いた。
【0065】
得られた混合液は、水を用いて全量が4Lとなるように調製した後、250cc入りの缶に充填・密封した後、121℃、10分の条件で加熱殺菌を行った。このようにして、実施例1のコーヒー飲料を作製した。
【0066】
(実施例2)
牛乳に対して無水クエン酸を7.3g添加した点、牛乳に対してアルギニンを12.0g添加した点以外は、実施例1と同様の方法により、コーヒー飲料を作製した。
【0067】
(比較例1)
牛乳340gに対して、グラニュー糖270g、カフェイン1.4g、インスタントコーヒー80g、無水クエン酸0.4g、アルギニン2.8gおよび香料1.4gを、同時に添加して均質化した。なお、インスタントコーヒーとしては、コーヒー生豆含有量として5.7%w/wとなるように事前に調整したものを用いた。
【0068】
得られた混合液は、水を用いて全量が4Lとなるように調製した後、250cc入りの缶に充填・密封した後、121℃、10分の条件で加熱殺菌を行った。このようにして、比較例1のコーヒー飲料を作製した。
【0069】
(比較例2)
牛乳に対して無水クエン酸を0.5g添加した点、牛乳に対してアルギニンを17.2g添加した点以外は、比較例1と同様の方法により、コーヒー飲料を作製した。
【0070】
得られたコーヒー飲料中のアルギニン、無水クエン酸、カフェインおよび乳分の含有量は、表1に示す通りである。また、全カルボン酸量を含む各成分量の測定には、液体クロマトグラフを用いた。
【0071】
得られた各コーヒー飲料について、下記に示す評価を行った。なお、評価に用いたコーヒー飲料は、製造直後(保管前)のものと、製造直後に60℃で5日間保存したものを使用した。
【0072】
下記表1の配合比率で得られた各コーヒー飲料に対し、行った評価について以下に詳説する。ここで、以下の表1における全カルボン酸量は、コーヒー飲料の原料に由来するカルボン酸量の合計値である。同様に、表1におけるカフェイン量は、コーヒー飲料の原料に由来するカフェイン量の合計値である。以下の表1における無水クエン酸量は、コーヒー飲料の原料に由来する無水クエン酸量の合計値である。
【0073】
(評価項目)
味の経時安定性:製造直後(保管前)のコーヒー飲料と、製造直後に60℃で5日間保存したコーヒー飲料の味について変化の有無を官能評価した。評価は、○:変化なし、×:変化あり(若干の変化も含む)、とした。
【0074】
香りの経時安定性:製造直後(保管前)のコーヒー飲料と、製造直後に60℃で5日間保存したコーヒー飲料の香りについて変化の有無を官能評価した。評価は、○:変化なし、×:変化あり(若干の変化も含む)、とした。
【0075】
pH:各実施例および各比較例の製造直後に60℃で5日間保存したコーヒー飲料について、それぞれ20℃でのpHを測定した。
【0076】
上記評価項目に関する評価結果を、以下の表1に各成分の配合比率と共に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1からも分かるように、実施例のコーヒー飲料は、いずれも比較例のコーヒー飲料と比べて品質の経時安定性に優れていた。具体的には、実施例のコーヒー飲料は、味、香りのいずれの観点においても、保管前と、60℃で5日間保存後とで、変化がなく品質の経時安定性に優れたものであった。これに対し、比較例のコーヒー飲料は、製造直後(保管前)と比べて60℃で5日間保存後の味が変化していた。これに加えて、比較例のコーヒー飲料を60℃で5日間保存した場合、製造直後(保管前)と比べて、香りという観点においても乳分が酸化した劣化臭が漂うようになっていた。