特許第5735614号(P5735614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5735614無線電力伝送システム、送電ユニットおよび受電ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5735614
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】無線電力伝送システム、送電ユニットおよび受電ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02J 17/00 20060101AFI20150528BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20150528BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20150528BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20150528BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   H02J17/00 B
   H02J17/00 X
   H02J7/00 P
   H02J7/00 301D
   B60L11/18 C
   B60M7/00 X
   B60L5/00 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-251588(P2013-251588)
(22)【出願日】2013年12月5日
(62)【分割の表示】特願2009-98478(P2009-98478)の分割
【原出願日】2009年4月14日
(65)【公開番号】特開2014-79161(P2014-79161A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2013年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】富士通テン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上原 稔
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸信
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 規
【審査官】 赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−043773(JP,A)
【文献】 特開2008−158578(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/014125(WO,A1)
【文献】 特開2010−093957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 17/00
B60L 5/00
B60L 11/18
B60M 7/00
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電ユニットから受電ユニットへ、無線伝送により電力を伝送する無線電力伝送システムにおいて、
乗員の乗車中検知を行う乗車中検知手段と、
前記乗車中検知手段の検出結果に基づき乗員の乗車中には無線電力伝送を行わない制御手段と、を備え
前記制御手段は、乗員乗車中の検出による無線電力伝送停止状態で、前記乗車中検知手段により乗員の乗車が検知されなくなった場合、送電を再開させることを特徴とする無線電力伝送システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記乗車中検知手段により乗員の乗車が検知されなくなってから所定時間経過した後に送電を再開させることを特徴とする請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項3】
送電ユニットから受電ユニットへ、無線伝送により電力を伝送する無線電力伝送システムにおける送電ユニットであって、
受電ユニットからの乗員乗車中データに基づき、乗員の乗車中には送電を行わない制御手段を備え
前記制御手段は、乗員乗車中の検出による無線電力伝送停止状態で、前記乗車中検知手段により乗員の乗車が検知されなくなった場合、送電を再開させることを特徴とする送電ユニット。
【請求項4】
前記制御手段は、前記乗員乗車中データにより乗員の乗車が検知されなくなってから所定時間経過した後に送電を再開させることを特徴とする請求項3に記載の送電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線電力伝送に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上輸送の分野においては、大気汚染や化石燃料の枯渇に対する懸念から、電力を使って走行する自動車の研究開発が盛んに行われている。電力を使って走行する自動車としては、例えば、二次電池に蓄えた電力で走行するタイプのものがある。自動車に搭載されている二次電池を充電する技術として、走行路に設けられた給電部から非接触で給電を受けて充電するもの(例えば、特許文献1を参照)がある。また、電力を無線伝送する技術として、磁気共鳴により離間している機器へ高い伝送効率で電力を送るものがある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−120357号公報
【特許文献2】特開2008−301918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、コイル間の電磁誘導による無線電力伝送技術がある。但し、電磁誘導による送電方式では、送電側と受電側の接点を露出させる必要がないという利点があるものの、コイル間隔が長くなるに従って伝送効率が極端に落ちてしまうため、実用においてはコイルを近接させた状態で用いられることが殆どであった。
【0005】
このような電磁誘導方式に加えて、従来、共振周波数を合わせたコイル間における磁界共鳴(Magnetic Resonance。磁気共鳴、磁場共鳴、磁界共振とも。)を利用した無線電力伝送技術がある。磁界共鳴による送電方式では、電磁誘導方式に比べてコイル間隔をより長くすることが出来る。しかし、磁界共鳴による送電方式では、電磁誘導に比べてコイル間隔を柔軟に設定可能であるために、電界・磁界内に物(動物を含む)が侵入する虞があり、このために、装置の電力伝送効率や、安全性に影響を与える可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に鑑み、無線電力伝送において安全性に対して適切な対処を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、送電ユニットから受電ユニットへ、無線伝送により電力を伝送する無線電力伝送システムにおいて、乗員の乗車中検知を行う乗車中検知手段と、前記乗車中検知手段の検出結果に基づき乗員の乗車中には無線電力伝送を行わない制御手段と、を備え、前記制御手段は、乗員乗車中の検出による無線電力伝送停止状態で、前記乗車中検知手段により乗員の乗車が検知されなくなった場合、送電を再開させることを特徴とする無線電力伝送システムである。
【0008】
本発明は、前記制御手段は、前記乗車中検知手段により乗員の乗車が検知されなくなってから所定時間経過した後に送電を再開させることを特徴とする無線電力伝送システムである。
【0009】
本発明は、送電ユニットから受電ユニットへ、無線伝送により電力を伝送する無線電力伝送システムにおける送電ユニットであって、受電ユニットからの乗員乗車中データに基づき、乗員の乗車中には送電を行わない制御手段を備え、前記制御手段は、乗員乗車中の検出による無線電力伝送停止状態で、前記乗車中検知手段により乗員の乗車が検知されなくなった場合、送電を再開させることを特徴とする送電ユニットであり、また、前記制御手段は、前記乗員乗車中データにより乗員の乗車が検知されなくなってから所定時間経過した後に送電を再開させることを特徴とする送電ユニットである。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乗員の乗車中には送電が行われないので、乗員の安全性を確実に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す図である。
図2】実施形態において用いられる送電コイルおよび受電コイルの構成を示す図である。
図3】実施形態における3コイル構成の概要を示す図である。
図4】実施形態に係る無線電力伝送システムにおいて行われる侵入検知処理の流れを示すフローチャートである。
図5】ユニットの背面側に金属板のみを配置した場合の渦電流が発生する様子と、ユニット背面側の金属板に磁気シールドシートを配置した場合の渦電流の発生が抑制される様子とを比較した図である。
図6】地面に設置される送電コイルの背面、および車両に設置される受電コイルの背面に、磁気シールドシートを設けた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る無線電力伝送装置および無線電力伝送方法の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態に係る無線電力伝送システム1は、車載バッテリに充電される電力を車両側に送電するためのシステムであり、送電ユニットは車両が停止する位置の地面側に、受電ユニットは車両側に設けられる。但し、本発明に係る送電システムは車両用途に限定されず、家電、情報機器、玩具等、電力を用いる様々な機器に適用することが可能である。
【0013】
<無線電力伝送システムの構成>
図1は、本実施形態に係る無線電力伝送システム1の構成を示す図である。無線電力伝送システム1は、大きく分けて送電ユニット10および受電ユニット20の、2つの無線電力伝送装置を備える。このうち、送電ユニット10は、車両が停止する位置(例えば、駐車スペース)の地面側に設けられ、送電コントローラ17、コンバータ13、送電アンプ14、送電コイル15、共振制御ユニット16、発振回路18、侵入センサ11、方向性結合器19、進行波電力計測器19a、反射波電力計測器19b、負荷整合器19cおよびデータ送受信ユニット12を備える。ここで、送電コイル15は、例えば、駐車スペースの車止めを基準とした所定位置等、車両が停止した場合の位置合わせが容易な位置に、車両底面に設けられた受電コイル25に対向するように設けられることが好ましい。
【0014】
送電コントローラ17は、記憶装置に接続され、制御プログラムを実行することで、送電ユニット10を、情報保持手段、パラメータ取得手段、および侵入判定手段を備える送電ユニット10として動作させるコンピュータである。送電コントローラ17は、予め設定された送電用の設定内容、データ送受信ユニット12による受電ユニット20とのデータ送受信結果、および送電アンプ14から得られた送電電力モニタ結果に従って、発振回路18、共振制御ユニット16、コンバータ13を制御する。データ送受信ユニット12は、アンテナに接続された、無線通信のための通信インターフェースである。また、コンバータ13は、供給された交流または直流の電力を直流電流へ変換し、送電アンプ14へ送る。なお、コンバータ13による出力電圧は、送電コントローラ17によって制御される。また、送電アンプ14は、コンバータ13から送られた電力を、発振回路18から与えられた周波数で、送電コイル15へ入力する。ここで、発振回路18によって与えられる周波数は、送電コントローラ17によって制御される。
【0015】
共振制御ユニット16は、送電コントローラ17による指示に従って、送電コイル15に設けられたコンデンサ(キャパシタ)の容量を制御する等の方法で、送電ユニット10の共振周波数を、発振回路18の発振周波数と一致するように制御する。また、発振回路18は、送電コントローラ17による指示に従って、送電コイル15へ発振される周波数を、所定の値となるように制御する。
【0016】
方向性結合器19は、送電アンプ14から送電コイル15に入力される電力の進行波と反射波とを取り出す。進行波電力計測器19aおよび反射波電力計測器19bは、方向性結合器19によって取り出された進行波の電力と、反射波の電力とを計測し、計測結果を、送信電力モニタ値および反射電力モニタ値として送電コントローラ17へ通知する。なお、負荷整合器19cは、送電アンプ14と負荷との整合を行う。
【0017】
また、受電ユニット20は、車両に設けられ、受電コントローラ27、受電コイル25、共振制御ユニット26、整流回路28、DC/DCコンバータ29、侵入センサ21およびデータ送受信ユニット22を備える。共振制御ユニット26は、前記共振制御ユニット16と同様に、受電コントローラ27による指示に従って受電ユニット20の共振周波数を発振回路18の発振周波数と一致するように制御する。その結果、送電ユニット10の共振周波数と受電ユニット20の共振周波数とは一致するように制御され、磁界共鳴による無線電力伝送が可能となる。ここで、受電コイル25は、車両底面の、地面に設置された送電ユニット10と対向する位置に設けられることが好ましい。また、受電ユニット20は、車載の充放電制御装置31を介して、車載バッテリ33と接続されている。なお、充放電制御装置31は、アクセル操作に応じて車載バッテリ33から車両駆動用の電力を放電させ、また、ブレーキが操作された場合には、モータ32によって発電された電力が車載バッテリ33に充電されるように制御される。
【0018】
受電コントローラ27は、記憶装置に接続され、この記憶装置に接続された制御プログラムを実行することで、受電ユニット20を、情報保持手段、パラメータ取得手段、および侵入判定手段を備える受電ユニット20として動作させるコンピュータである。受電コントローラ27は、予め設定された受電用の設定内容、データ送受信ユニット22による送電ユニット10とのデータ送受信結果、および整流回路28から得られた受電電力モニタ結果に従って、共振制御ユニット26、整流回路28およびDC/DCコンバータ29を制御する。データ送受信ユニット22は、アンテナに接続された、無線通信のための通信インターフェースである。また、受電コイル25には、送電コイル15との間の磁界共鳴によって電流が流れる。ここで、受電コントローラ27は、送電コイル15との間で磁界共鳴を発生させるために、受電コイル25の共振周波数が送電ユニット10と一致するように共振制御ユニット26を制御する。
【0019】
整流回路28(AC/DCコンバータ)およびDC/DCコンバータ29は、充放電制御側による取り出し電力を一定に保つことで、送電側の電圧変更による受電側の見かけの負荷抵抗の制御を可能とする。
【0020】
侵入センサ11、21は、車両周辺や車両の下部空間、受電コイル25の下部空間、送電コイル15の上部空間への物体の進入を、カメラ撮像された映像を解析する方式や、音波や電波の反射を用いる方式、光線の遮断を用いる方式、赤外線検知方式、等の手段を用いて検出するためのセンサである。本実施形態では、無線電力伝送に係るパラメータまたはパラメータ変化内容とプロファイル情報とを比較することで侵入検知を行う方法について主に説明するが、この方法に加えて、侵入センサ11、21による侵入検知が補助的に、または別途独立して用いられてもよい。例えば、コントローラ17、27は、侵入センサ11、21を用いて、車両周辺や車両の下部空間、受電コイル25の下部空間、送電コイル15の上部空間にある物体を検知すると同時に、この物体への、侵入検知のための所定の基準(例えば、送電コイル15または受電コイル25)からの距離を取得し、この物体への距離が所定の閾値以下となった場合や、この物体への距離が所定の閾値以下となった状態が所定時間以上継続した場合に、侵入が発生したと判定することとしてもよい。なお、本実施形態では、無線電力伝送に係るパラメータ等とプロファイル情報との比較による侵入検知以外の侵入検知方式についても説明しているが、侵入センサ11、21を補助的にまたは独立して侵入検知に用いない場合には、侵入センサ11、21は省略されてもよい。
【0021】
図2は、本実施形態において用いられる送電コイル15および受電コイル25の構成を示す図である。図2に示したコイルは、送電コイル15として第一送電コイル15aおよび第二送電コイル15bを用い、受電コイル25として第一受電コイル25aおよび第二受電コイル25bを用いる、4コイル構成のコイルである。なお、ここで、第一送電コイル15aは、直径170mm、2ターンのコイルであり、第二送電コイル15bおよび第一受電コイル25aは、直径250mm、10ターンのコイルであり、第二受電コイル25bは、直径157mm、1ターンのコイルである。
【0022】
ここで、第一送電コイル15aは、送電アンプ14から直接電力が与えられるコイルである。送電アンプ14によって第一送電コイル15aに電流が流されると、第一送電コイル15aと第二送電コイル15bとの間で電磁誘導が発生し、第二送電コイル15bに電流が流れる。そして、電磁誘導によって第二送電コイル15bに電流が流れると、共振周波数が合わせられた第二送電コイル15bと第一受電コイル25aとの間で磁界共鳴が発生し、第一受電コイル25aに電流が流れる。更に、磁界共鳴によって第一受電コイル25aに電流が流れると、第一受電コイル25aと第二受電コイル25bとの間で電磁誘導が発生し、第二受電コイル25bに電流が流れる。図2に示した例では、送電アンプ14から電流が直接流されるコイルおよび受電側の負荷抵抗に直接接続されたコイル(ここでは、第一送電コイル15aおよび第二受電コイル25b)と、磁界共鳴による電力伝送に用いられるコイル(ここでは、第二送電コイル15bおよび第一受電コイル25a)と、を物理的に接続せず、電磁誘導によって接続することで、送電アンプ14や負荷抵抗等の構成が、磁界共鳴に用いるコイルの共振周波数等に与える影響を抑えることとしている。
【0023】
なお、図2では、代表的な例として、送電側2コイル、受電側2コイルの4コイル構成を図示したが、本発明は、送電コイル15と受電コイル25との間での磁界共鳴による無線電力伝送を用いたシステムに適用可能なものであり、コイル数は上記4コイル構成に限定されない。例えば、送電側1コイル、受電側1コイルの2コイル構成が採用されてもよいし、送電側1コイル、受電側2コイルの3コイル構成が採用されてもよい。なお、3コイル構成における受電側の2コイルは、電磁誘導で接続される上記第一受電コイル25aおよび第二受電コイル25bである。図3は、本実施形態における3コイル構成の概要を示す図である。
【0024】
<侵入検知処理>
図4は、本実施形態に係る無線電力伝送システム1において行われる侵入検知処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートに示された処理は、車両側に設けられた受電コイル25と駐車場等に設けられた送電コイル15とが位置合わせされ、また、共振周波数を合わせる処理等が完了して、送電準備が完了したことを契機として開始される。なお、本フローチャートに示された処理の具体的な内容および順序は一例であり、処理内容および順序には、実施の形態に適したものが適宜採用されることが好ましい。
【0025】
ステップS101では、送受電が開始される。送電コントローラ17は、予め設定されている内容か、またはデータ送受信ユニット12、22を介した受電側との通信結果に従って発振回路18を制御し、決定された周波数および電圧でコイルに電流を流す。この周波数は送電ユニット10および受電ユニット20の共振周波数であるため、この送電によって送電コイル15と受電コイル25との間で磁界共鳴が起き、受電ユニット20は電力を受電することが出来る。その後、処理はステップS102へ進む。
【0026】
ステップS102では、無線電力伝送に係る各種パラメータが取得される。送電コントローラ17および受電コントローラ27は、無線電力伝送システム1に設けられた各種センサから、無線電力伝送に係るパラメータを取得する。ここで、無線電力伝送システム1に設けられた各種センサおよびコントローラ17、27は、本発明に係るパラメータ取得手段に相当する。具体的には、送電コントローラ17は、コンバータ13から入力電力を取得し、送電アンプ14から送電電力を取得し、進行波電力計測器19aから進行波の電力を取得し、反射波電力計測器19bから反射波の電力を取得する。また、受電コントローラ27は、整流回路28から、受電周波数、および受電電力を取得する。ここで、受電コントローラ27で取得されたパラメータは、データ送受信ユニット12、22を介して、送電コントローラ17へ送られ、送電コントローラ17で取得されたパラメータは、データ送受信ユニット12、22を介して、受電コントローラ27へ送られる。本実施形態では、送電コントローラ17および受電コントローラ27がデータ送受信ユニット12、22を介してパラメータを送受信することで、コントローラ17、27の何れにおいても、送電コイル15と受電コイル25との間の空間に対する侵入検知を行うことを可能としている。
【0027】
更に、送電コントローラ17および受電コントローラ27は、取得された一次的なパラメータに基づいて、(1)送電コイル15における送電効率、(2)入力電力に対する送電ユニット10全体の送電能力、および(3)送電コイル15と受電コイル25との間の電力の伝送効率、等の二次的なパラメータを、センサ類から取得された一次的なパラメータに基づいて算出することで取得する。
【0028】
(1)送電コイル15における送電効率
より具体的には、コントローラ17、27は、送電コイル15において進行波電力計測器19aおよび反射波電力計測器19bによって検出された進行波の電力と反射波の電力とに基づいて、送電コイル15における送電効率を算出する。なお、算出される送電効率は、送電コイル15に入力された電力のうち、実際に受電側へ送電された割合(送電の効率)を把握可能な情報であればよいが、例えば、送電効率として、進行波の電力と反射波の電力とに基づく定在波比が算出されてもよい。
【0029】
(2)入力電力に対する送電ユニット10全体の送電能力
また、コントローラ17、27は、外部電源からの入力電力に対する、送電アンプ14から実際に送電コイル15へ送られた電力の割合を算出することで、入力電力に対する送電ユニットの送電能力を算出する。
【0030】
(3)送電コイル15と受電コイル25との間の電力の伝送効率
また、コントローラ17、27は、送電アンプ14でモニタされた送電電力に対する、整流回路28でモニタされた受電電力の割合を算出することで、伝送効率を算出する。なお、送電コントローラ17は、データ送受信ユニット12、22を介して、受電ユニット20側から受電電力を取得することが出来、受電コントローラ27は、データ送受信ユニット12、22を介して、送電ユニット10側から送電電力を取得することが出来る。
【0031】
このようにして算出されたパラメータについても、送電コントローラ17および受電コントローラ27間で、データ送受信ユニット12、22を介して送受信される。なお、取得されたパラメータは、パラメータの変化の内容を継続的に監視するため、少なくとも一定期間、記憶装置に保持される。また、本実施形態では、侵入検知に用いられるパラメータとして、少なくとも上記例示したパラメータを取得することとしているが、取得されるパラメータは、実施の形態に応じて適宜選択されることが好ましい。侵入検知に用いられるパラメータが全て取得されると、処理はステップS103へ進む。
【0032】
ステップS103では、パラメータの変化の内容が取得される。送電コントローラ17および受電コントローラ27は、ステップS102で取得された各種パラメータと、以前に取得された各種パラメータとの差分や、パラメータの時間当たりの変化量、複数のパラメータ間のバランス、パラメータの変化の傾向等を算出することで、パラメータの変化の内容を取得する。例えば、コントローラ17、27は、受電コイル25において受電した電流の、時間の経過に伴う位相の変化(ズレ)を取得することで、磁界共鳴の共鳴状態の変化の内容を取得する。また、コントローラ17、27は、同様に、時間の経過に伴う送電効率や送電ユニット送電能力の変化、伝送効率の変化、等を、パラメータの変化の内容として取得する。その後、処理はステップS104へ進む。
【0033】
ステップS104およびステップS105では、取得されたパラメータおよびパラメータの変化内容がプロファイル情報と比較され、侵入検知が行われる。コントローラ17、27は、ステップS102およびステップS103で取得された、パラメータおよびパラメータの変化内容を、記憶装置から読み出されたプロファイル情報と比較する。ここで、コントローラ17、27は、本発明に係る侵入判定手段に相当する。
【0034】
本実施形態において、プロファイル情報は、無線電力伝送システム1における送電コイル15と受電コイル25の間の空間等、無線電力伝送に影響を与える空間に対する物の侵入が、無線電力伝送に係る一または複数のパラメータに与える影響の内容を示す情報である。また、プロファイル情報は、予め侵入物および侵入態様毎に実験またはシミュレーションを行うことで計測されたパラメータまたはパラメータの変化内容が、マップまたは関係式として、侵入物または侵入態様に関連付けられた状態で記憶装置に保持されている。即ち、記憶装置およびコントローラ17、27は、本発明に係る情報保持手段に相当する。このため、コントローラ17、27は、ステップS102およびステップS103で得られたパラメータおよびパラメータの変化内容に近似または一致するプロファイル情報を特定することで、侵入の検知に併せて、侵入物または侵入態様についても特定する。なお、コントローラ17、27は、取得されたパラメータ等(パラメータまたはパラメータの変化内容)が、プロファイル情報を基準とした所定の範囲内にあるか否かを判定することで、取得されたパラメータ等と、プロファイル情報とが近似または一致するか否かを判定することが出来る。
【0035】
パラメータ等がプロファイル情報に近似または一致することで、侵入が発生したと判定された場合、処理はステップS106へ進む。侵入が発生していないと判定された場合、処理はステップS102へ進む。即ち、本フローチャートに示された処理では、送受電の開始後、ステップS102からステップS105に示された処理が繰り返し実行されることで、送受電中の侵入の有無が監視される。
【0036】
ステップS106では、安全制御が実行される。コントローラ17、27は、無線電力伝送システム1の各要素に対して、安全を確保するために必要な制御を行う。具体的には、送電の停止、送電電力の抑制、警告・警報の出力、不具合からの復帰方法の指示、等が行われる。例えば、送電の停止が行われる場合、コントローラ17、27は、コンバータ13または送電アンプ14に対して指示を与えることで、外部電源からの電力供給を遮断する、または送電コイル15への電力の入力を停止する、等の制御を行い、送電を停止する。ここで、コントローラ17、27は、本発明に係る伝送停止手段に相当する。
【0037】
なお、本実施形態では、侵入物または侵入態様が特定可能であるため、特定された侵入物または侵入態様に応じた安全制御が行われる。例えば、検知された侵入物が金属等であり、受電側の電圧または電流が安全な動作のために問題のない規定値を超えていることが検知された場合には、受電側の回路等を保護するために、送電が停止されるか、送電電力が抑制されることが好ましい。送電電力の抑制が行われる場合には、コントローラ17、27は、送電アンプ14に対して指示を与えることで、送電コイル15に対して入力される電力を下げ、受電側の受電電力を規定値以内に収まるようにし、受電側の回路等を保護する。なお、送電電力の抑制は、急速充電中において侵入が検知された場合に、充電モードを急速充電から通常充電に切り替えることで行われてもよい。
【0038】
また、警告・警報出力、および不具合からの復帰方法の指示は、独立して行われてもよいが、上記説明した送電の停止または送電電力の抑制と併せて行われてもよい。コントローラ17、27は、無線電力伝送システム1に接続されたディスプレイやスピーカ等の警告出力装置34、44に対して、警告・警報出力指示信号または復帰方法出力指示信号を与えることで、カーナビゲーションシステムやダッシュボードのディスプレイ等おける警告・警報の表示および復帰方法の表示、カーオーディオシステムのスピーカ等における警告・警報音の出力および復帰方法の音声出力を行う。ここで、コントローラ17、27および警告出力装置34、44は、本発明に係る警告出力手段に相当する。その他、警告・警報は、車両下部に進入した動物や人間に対して出力されてもよい。警告・警報は、音声や画像等の、動物や人間が知覚可能な方法で出力される。
【0039】
また、コントローラ17、27は、送電の停止を行った場合、所定の条件が満たされた場合に送電を再開させる。例えば、コントローラ17、27は、侵入が検知されなくなってから時間の経過カウントを開始し、経過時間を所定の閾値と比較することで、侵入が検知されなくなってから所定時間が経過した後に、送電を再開させることが出来る。但し、実施の形態によっては、侵入が検知されなくなった直後に送電が再開されてもよい。ここで、コントローラ17、27は、本発明に係る伝送再開手段に相当する。また、送電が再開される際には、コントローラ17、27は、警告出力装置34、44に対して、ユーザや侵入者に対して送電再開の報知を行うための指示を出力してもよい。ここで、コントローラ17、27および警告出力装置34、44は、本発明に係る報知出力手段に相当する。送電が再開される前に送電再開の報知が行われることで、再度の侵入による送電停止を抑制することが出来る。
【0040】
なお、本実施形態に係る無線電力伝送システム1では、上記説明したプロファイル比較による侵入検知以外にも、不具合状態を検知し、送電の停止、送電電力の抑制、警告・警報の出力、不具合からの復帰方法の指示、等の対処を行うこととしている。例えば、送電コイル15と受電コイル25との位置のズレや、受電回路の不具合、異物や動物等の侵入、想定された対象(本実施形態では、車両)以外に設けられた受電装置(共振周波数が一致するもの)による受電、送電装置の故障、データ送受信ユニット12、22間の通信途切れ、等が不具合状態として検知されることが好ましい。
【0041】
このような不具合状態は、例えば、伝送効率や、送電効率、送電ユニット送電能力、受電側情報、入力電力等を取得し、取得された値を閾値と比較する等して評価することで、検知することが出来る。ここで、伝送効率、送電効率および送電ユニット送電能力等の算出方法は、上記説明した通りであるため、説明を省略する。なお、伝送効率については、算出された現在の伝送効率が予め設定された所定の伝送効率(閾値)以下である場合に、送電効率については、算出された現在の送電効率が予め設定された所定の送電効率(閾値)以下である場合に、送電ユニット送電能力については、算出された現在の送電ユニット送電能力が予め設定された所定の送電ユニット送電能力(閾値)以下である場合に、不具合状態であると判定することが出来る。例えば、送電ユニット送電能力によれば、送電装置の故障を検知することが出来る。
【0042】
受電側情報は、送電コントローラ17が、受電ユニット20側からのデータ送受信ユニット12、22を介した通信の途絶を検出することで、取得することが出来る。また、入力電力については、コンバータ13から取得された現在の入力電力が予め設定された所定の入力電力(閾値)以上である場合に、不具合状態であると判定することが出来る。また、不具合状態は、送電周波数を所定の周波数前後で掃引し、そのときの進行波電力、反射波電力の変化の状況を予め想定された変化の状況(プロファイル情報)と比較することによって検知されてもよい。
【0043】
また、不具合状態は、車両下部等の領域への物体の進入を、遮光式や赤外線検知式等の手段で検出する侵入センサ11、21によって検知されてもよい。更に、シートセンサ、ドアセンサ等を用いて乗車中検知を行うことで、乗車中には無線電力伝送を行わないこととしてもよい。
【0044】
本実施形態に係る無線電力伝送システム1によれば、無線電力伝送において電力伝送に用いられる空間への異物の侵入や、無線電力伝送において発生する可能性がある不具合状態を検知し、無線電力伝送における安全性を向上させることが出来る。特に、無線電力伝送に係るパラメータ等とプロファイル情報とを比較する侵入検知方式によれば、別途侵入検知用のセンサを設けることなく、侵入検知を行うことが可能である。
【0045】
ところで、ワイヤレス送電を行うための送電側ユニットおよび受電側ユニットを、受電側装置および送電側設備に取り付けた場合、ユニット背面側等に鉄板等の磁性体が存在する場合がある。例えば、自動車に受電側ユニットを設置した場合、どうしても自動車のシャーシやボディ等の磁性体(鉄板)が受電側ユニットの背面等に存在することになる。この場合、磁性体に送電による磁気が達することになって磁性体内に渦電流が発生し、結果渦電流によるエネルギー喪失を招いて送電効率が低下することになる。
【0046】
そこで、本実施形態においては、ワイヤレス送電を行う送電側、受電側のそれぞれのコイルの近傍、具体的には背面に磁気シールドシートを配置している。尚、この磁気シールドシートとしては、偏平状軟磁性粉末を含んだ合成ゴムシート(例えば、大同特殊鋼株式会社製フレキシブルノイズ抑制シート「DPR」等)等を用いることができる。図5は、ユニットの背面側に金属板のみを配置した場合の渦電流が発生する様子と、ユニット背面側の金属板に磁気シールドシートを配置した場合の渦電流の発生が抑制される様子とを比較した図である。
【0047】
具体的には、例えば、図6のように送受電のそれぞれのコイルを対面配置させ、送電側は送電コイルの背面に磁気シールドシート、受電側である車側は受電コイル、磁気シールドシート、車(BODY)の順に配置することが好ましい。磁気シールドシートの大きさはコイルを覆うことができるようにコイルの直径よりも十分大きいことが好ましい。また、コイル及び磁気シールドシートの方向、配置、距離等は、送電効率を考慮して、例えば実験で確かめながら適宜設定されることが好ましい。もちろん、効率を考慮し、シートの折り曲げ(コイルの覆い方)、及び形状、厚み、大きさ等も、実験等を通して適宜設計されることが好ましい。
【0048】
また、このような実施形態によれば、磁気シールドシート背後への磁気は遮蔽されるため、受電する車両側の乗客及び電子機器への送電エネルギーの影響が殆どなくなるといった効果を得ることも可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 無線電力伝送システム
10 送電ユニット
15 送電コイル
17 送電コントローラ
20 受電ユニット
25 受電コイル
27 受電コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6