特許第5735617号(P5735617)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5735617
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】複数出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 24/12 20060101AFI20150528BHJP
   B43K 24/18 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   B43K24/12
   B43K24/18 D
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-263011(P2013-263011)
(22)【出願日】2013年12月19日
【審査請求日】2013年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】月岡 之博
【審査官】 槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−095014(JP,A)
【文献】 実開昭50−088030(JP,U)
【文献】 特開2001−071679(JP,A)
【文献】 実開昭57−149182(JP,U)
【文献】 実開昭53−056235(JP,U)
【文献】 実公昭39−014761(JP,Y1)
【文献】 実開昭58−038483(JP,U)
【文献】 実公昭27−005015(JP,Y1)
【文献】 実開昭54−166950(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00−27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に、筆記芯の後端側にスライド駒を接続してなるスライド筆記芯が複数具備され、選択的に押動された前記スライド筆記芯がその前端の筆記部を軸筒から突出させるようにした複数出没式筆記具において、
軸筒内で前方へ収縮するように圧縮コイルバネを設け、
複数の前記スライド筆記芯を一つの前記圧縮コイルバネの内周または外周に沿って周方向へ配設するとともに、これらスライド筆記芯の各々を、一つの前記圧縮コイルバネに対し後方から当接させたことを特徴とする複数出没式筆記具。
【請求項2】
前記圧縮コイルバネを軸筒の内周面に沿って配設するとともに、この圧縮コイルバネの内周に沿って複数の前記スライド筆記芯を配設したことを特徴とする請求項1記載の複数出没式筆記具。
【請求項3】
前記圧縮コイルバネの後端に受け部材を当接させ、この受け部材における周方向の一部分に、前記スライド筆記芯を当接させるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の複数出没式筆記具。
【請求項4】
前進して筆記部を突出させた状態の前記スライド筆記芯を係止したり、この係止状態を解除したりする係脱手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の複数出没式筆記具。
【請求項5】
前記係脱手段は、前進したスライド駒を軸筒内側へ沈み込ませて係止する被係止部と、複数のスライド駒の軸筒中心側に設けられた解除部材とを具備し、
先に前進したスライド駒が前記被係止部に係止された状態で他のスライド駒を前進させた場合に、前進する前記他のスライド駒が前記解除部材を押動し、さらに前記解除部材が先に前進したスライド駒を押動して前記被係止部から外すようにしたことを特徴とする請求項4記載の複数出没式筆記具。
【請求項6】
前記解除部材は、軸筒軸方向へ所定量移動するように設けられるとともに、付勢部材によって軸筒後方へ付勢されていることを特徴とする請求項5記載の複数出没式筆記具。
【請求項7】
複数のスライド駒の各々に係合突起を設けるとともに、前記解除部材には前記係合突起によって前後方向へ乗り越えられる被係合突起を設け、
先に前進したスライド駒が前記被係合突起に当接して前記解除部材を所定量前進させた後に前記被係合突起を乗越えることで、前記解除部材が前記付勢部材の付勢力により後退して他のスライド駒の係合突起に当接するようにしたことを特徴とする請求項6記載の複数出没式筆記具。
【請求項8】
前記スライド駒における前記係合突起よりも後側に、前記解除部材の前記被係合突起によって後方から摺接可能な傾斜面を設け、
先に前進したスライド駒が前記被係止部に係止された状態で他のスライド駒を前進させた場合に、前記他のスライド駒の係合突起が前記解除部材の前記被係合突起に当接して前記解除部材を前進させ、前記解除部材が前記被係合突起を先に前進したスライド駒の前記傾斜面に摺接させることで、先に前進したスライド駒が軸筒径外方向へ移動して前記被係止部から外れるようにしたことを特徴とする請求項7記載の複数出没式筆記具。
【請求項9】
前記被係止部から外れて後退したスライド駒が、前記解除部材の前記被係合突起を後方へ乗り越えるようにしたことを特徴とする請求項8記載の複数出没式筆記具。
【請求項10】
軸筒内の後端側に、初期位置にある前記スライド駒に対し離脱可能に嵌合する緩嵌合手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至9何れか1項記載の複数出没式筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒内に複数の筆記芯を装着し、これら筆記芯を選択的に出没させるようにした複数出没式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載のもののように、軸筒(10)と、前端に筆記部(21)を有する筆記芯(リフィール20,20’)と、該筆記芯の後端側に接続されたスライド駒(押子42)と、複数の筆記芯及びスライド駒をそれぞれ後方へ付勢する複数の付勢部材(圧縮バネ52,53)とを備え、選択的に押動された前記スライド駒の前進により筆記部(21)を軸筒から突出させるようにした筆記具がある。複数の前記付勢部材(圧縮バネ52,53)は、それぞれ、筆記芯(リフィール20,20’)に環状に装着され、他の付勢部材との相互の干渉を避けるために、適当な隙間を置いて配設される。
この従来技術では、前記筆記芯を、色違いの複数のボールペン用リフィールや、シャープペン用リフィール、電子入力ペン用リフィール等とすることによって、多機能の筆記具を一本の軸筒でもって実現することができる。
【0003】
しかしながら、上記従来技術によれば、筆記芯(リフィール20,20’)の数を増やそうとした場合、筆記芯の増加数だけ付勢部材(圧縮バネ52,53)の数も増えることになる。そして、付勢部材(圧縮バネ52,53)が増えると、各付勢部材の外径が筆記芯よりも大きいことや、隣接する付勢部材間に確保された前記隙間等によって、軸筒(10)の内外径が大幅に増加してしまうおそれがあり、特に筆記芯の本数が多い場合に顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−119880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものであり、その課題とする処は、筆記芯の数の増加に伴って軸径が太くなるのを抑制することができる複数出没式筆記具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための一手段は、軸筒内に、筆記芯の後端側にスライド駒を接続してなるスライド筆記芯が複数具備され、選択的に押動された前記スライド筆記芯がその前端の筆記部を軸筒から突出させるようにした複数出没式筆記具において、軸筒内で前方へ収縮するように圧縮コイルバネを設け、複数の前記スライド筆記芯を一つの前記圧縮コイルバネの内周または外周に沿って周方向へ配設するとともに、これらスライド筆記芯の各々を、一つの前記圧縮コイルバネに対し後方から当接させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されているので、単数の圧縮コイルバネにより複数のスライド筆記芯を付勢する構造であるため、筆記芯の数の増加に伴って圧縮コイルバネの数も増加するようなことがない。よって、筆記芯の数の増加に伴って軸径が太くなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る複数出没式筆記具の一例を示す内部構造図である。
図2】同複数出没式筆記具の要部分解図である。
図3】同複数出没式筆記具の動作説明図であり、(I)は初期状態を示し、(II)は一方のスライド駒の押動により解除部材を前進させた状態を示す。
図4】同複数出没式筆記具の動作説明図であり、(III)は一方のスライド駒を係止した状態を示し、(IV)は他方のスライド駒の押動により前進する解除部材を先に前進したスライド駒に当接させた状態を示す。
図5】同複数出没式筆記具の動作説明図であり、(V)は一方のスライド駒の係止が外れた直後の状態を示し、(VI)は一方のスライド駒が後退して係合突起を解除部材に干渉させた状態を示す。
図6】同複数出没式筆記具の動作説明図であり、(VII)は一方のスライド駒の係合突起が解除部材の被係合突起を乗越える直前の状態を示し、(VIII)は一方のスライド駒の係合突起が解除部材の被係合突起を乗越えた直後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態の第一の特徴は、軸筒内に、筆記芯の後端側にスライド駒を接続してなるスライド筆記芯が複数具備され、選択的に押動された前記スライド筆記芯がその前端の筆記部を軸筒から突出させるようにした複数出没式筆記具において、軸筒内で前方へ収縮するように圧縮コイルバネを設け、複数の前記スライド筆記芯を一つの前記圧縮コイルバネの内周または外周に沿って周方向へ配設するとともに、これらスライド筆記芯の各々を、一つの前記圧縮コイルバネに対し後方から当接させた。
ここで、前記「筆記芯」には、ボールペン用筆記芯(リフィール)や、シャープペンシル用筆記芯、出没式サインペンや出没式マーカーペンの筆記芯、電子ペン用の筆記芯、修正ペン用の筆記芯等を含む。
また、この複数出没式筆記具には、スライド筆記芯を前進させた状態を手指等の押圧力により保持するようにしたものを含むが、好ましくは、前進した際のスライド筆記芯を軸筒又は軸筒内の部材に係止して保持するようにする。
前記構成によれば、複数のスライド筆記芯のうちの何れかが選択され、このスライド筆記芯が指等により前方へ押し動かされると、該スライド筆記芯は、一つの圧縮コイルバネを収縮させながら前進し、その前端の筆記部を軸筒から突出させる。また、指等による前方への力が解除されると、前記スライド筆記芯は、一つの圧縮コイルバネの弾発力により後退し、その前端の筆記部を軸筒内へ没入させる。そして、このような出没動作中、何れのスライド筆記芯が選択された場合であっても同じ一つの圧縮コイルバネが機能する。
【0010】
第二の特徴としては、前記圧縮コイルバネを軸筒の内周面に沿って配設するとともに、この圧縮コイルバネの内周に沿って複数の前記スライド筆記芯を配設した。
この構成によれば、前記圧縮コイルバネを軸筒内周面に沿わせて安定的に支持できる上、圧縮コイルバネ内のスペースを有効利用して複数のスライド筆記体を配設することができる。
【0011】
第三の特徴としては、前記圧縮コイルバネの後端に受け部材を当接させ、この受け部材における周方向の一部分に、前記スライド筆記芯を当接させるようにした。
この構成によれば、圧縮コイルバネとスライド駒との間の当接状態を安定させることができる。
【0012】
第四の特徴としては、前進して筆記部を突出させた状態の前記スライド筆記芯を係止したり、この係止状態を解除したりする係脱手段を備えた。
前記構成によれば、筆記部を突出状態で係止したりその係止を解除したりすることができる。
なお、前記「係脱手段」の好ましい具体例としては、先に前進したスライド筆記芯を軸筒又は軸筒内の部材に係止し、このスライド筆記芯に、後から前進するスライド筆記芯を直接的又は間接的に干渉させて、前記係止を外すようにする。
【0013】
第五の特徴としては、前記係脱手段は、前進したスライド駒を軸筒内側へ沈み込ませて係止する被係止部と、複数のスライド駒の軸筒中心側に設けられた解除部材とを具備し、先に前進したスライド駒が前記被係止部に係止された状態で他のスライド駒を前進させた場合に、前進する前記他のスライド駒が前記解除部材を押動し、さらに前記解除部材が先に前進したスライド駒を押動して前記被係止部から外すようにした。
この構成によれば、スライド筆記芯の数を比較的多くした場合でも、隣接するスライド駒同士を干渉させるようにした従来構造と比較し、スライド駒と解除部材との間の干渉を確実に行わせて、スライド筆記芯の係脱動作をスムーズに行うことができる。
【0014】
第六の特徴としては、前記解除部材は、軸筒軸方向へ所定量移動するように設けられるとともに、付勢部材によって軸筒後方へ付勢されている。
この構成によれば、スライド筆記芯の係脱動作をスムーズにするための具体的構造を得ることができる。
なお、前記付勢部材には、圧縮バネによる構成と引っ張りバネによる構成とを含む。
【0015】
第七の特徴としては、複数のスライド駒の各々に係合突起を設けるとともに、前記解除部材には前記係合突起によって前後方向へ乗り越えられる被係合突起を設け、先に前進したスライド駒が前記被係合突起に当接して前記解除部材を所定量前進させた後に前記被係合突起を乗越えることで、前記解除部材が前記付勢部材の付勢力により後退して他のスライド駒の係合突起に当接するようにした。
この構成によれば、スライド筆記芯の係脱動作をよりスムーズにするための具体的構造を得ることができる。
【0016】
第八の特徴としては、前記スライド駒における前記係合突起よりも後側に、前記解除部材の前記被係合突起によって後方から摺接可能な傾斜面を設け、先に前進したスライド駒が前記被係止部に係止された状態で他のスライド駒を前進させた場合に、前記他のスライド駒の係合突起が前記解除部材の前記被係合突起に当接して前記解除部材を前進させ、前記解除部材が前記被係合突起を先に前進したスライド駒の前記傾斜面に摺接させることで、先に前進したスライド駒が軸筒径外方向へ移動して前記被係止部から外れるようにした。
この構成によれば、スライド筆記芯の係脱動作をよりスムーズにするための具体的構造を得ることができる。
【0017】
第九の特徴としては、前記被係止部から外れて後退したスライド駒が、前記解除部材の前記被係合突起を後方へ乗り越えるようにした。
この構成によれば、後退したスライド駒が、前記解除部材の前記被係合突起を後方へ乗り越えて、初期状態に戻る。したがって、複数のスライド筆記芯を、被係合突起よりも後方側で初期状態に安定させることができる。
【0018】
第十の特徴としては、軸筒内の後端側に、初期位置にある前記スライド駒に対し離脱可能に嵌合する緩嵌合手段を設けた。
この構成によれば、一つのスライド筆記芯の前進により圧縮コイルバネが収縮した状態で、他のスライド筆記芯が振動等により前進してしまうのを防ぐことができる。
【0019】
なお、後述する実施例では、上記特徴の一部を含まずに、以下の構成要件を必須とした独立した発明も開示している。
すなわち、この独立した発明の一つは、軸筒内に、筆記芯の後端側にスライド駒を接続してなるスライド筆記芯が複数具備され、選択的に押動された前記スライド筆記芯がその前端の筆記部を軸筒から突出させるようにした複数出没式筆記具において、軸筒内の後端側に、初期位置にある前記スライド駒に対し嵌脱可能に嵌り合う緩嵌合手段を設けた。
この構成によれば、一つのスライド筆記芯を指等により前進させた際に、他のスライド筆記芯も前記指等に干渉して前進してしまうようなことを緩嵌合手段によって防ぐことができる。
なお、前記緩嵌合手段の好ましい態様としては、初期位置にある前記スライド筆記芯に対しその軸筒中心側から押し付けられるように嵌脱部材を設けてなる。
さらに、前記緩嵌合手段の好ましい態様としては、少なくとも前記スライド駒に対し軸筒中心側から押し付けられる部分を、弾性材料から形成する。
【実施例】
【0020】
次に、上記特徴を有する好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
なお、本明細書中、軸筒軸方向とは、軸筒の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、軸筒軸方向の一方側であって筆記部の先端方向を意味する。また、「後」とは、軸筒軸方向の前記一方側に対する逆方向側を意味する。また、「軸筒径方向」とは、軸筒軸方向に対し直交する方向を意味する。また、「軸筒径外方向」とは、前記軸筒径方向に沿って軸筒中心から離れる方向を意味する。「軸筒径内方向」とは、前記軸筒径方向に沿って軸筒中心へ近づく方向を意味する。
【0021】
この複数出没式筆記具は、図1に示すように、軸筒10と、該軸筒10内に具備された複数種類のスライド筆記芯21,22と、スライド筆記芯21(又は22)の後端側のスライド駒21a(又は22a)に係合するスライドガイド体30と、複数のスライド筆記芯21,22の軸筒周方向の間隔を保持するデバイダー40と、複数のスライド筆記芯21,22を後方へ付勢する単数の圧縮コイルバネ50と、該圧縮コイルバネ50の後端を環状に受ける受け部材60と、スライド駒21a(又は22a)の係止状態を解除する解除部材70と、解除部材70を後方へ付勢する付勢部材80と、初期位置にあるスライド駒21a,22aに対し離脱可能に嵌合する嵌脱部材90(緩嵌合手段)とを具備している。
【0022】
なお、図示例では、本発明の基本構造を明確に示すために、スライド筆記芯21とスライド筆記芯22をそれぞれ一本のみ図示しているが、本実施の形態の特に好ましい実施例では、スライド筆記芯21(ボールペン用)を5本、スライド筆記芯22(シャープペンシル用)を一本としている。
【0023】
軸筒10は、図示例によれば、前側軸筒11に、後側軸筒12を螺合してなる。
この軸筒10の他例としては、一本の筒体からなる態様や、筒体の先端側に先細り状の先口を接続した態様、3本以上の筒体からなる態様等とすることが可能である。
【0024】
前側軸筒11は、前端側を先細り状に形成した長尺筒状の部材であり、その前端には、スライド筆記芯21,22の筆記部を出没させるための開口部11aを有する。
この開口部11aは、ボールペン用筆記芯21b前端の筆記部(ボールペンチップ)を挿通可能であって、且つ、シャープペンシル用筆記芯22b前端の段付き状の筆記部を突出状態で係止するように、その内径が適宜に設定されている。
【0025】
後側軸筒12は、その前端側を前側軸筒11の後端側に螺合接続している。この後側軸筒12の後端側には、その周壁を径方向へ貫通する複数の窓部12a,12bと、後端部を後方へ貫通する後端開口部12cとが設けられる。
複数の窓部12a,12bは、軸筒周方向に所定間隔を置いて配置される。これらのうち、一方(図1によれば下側)の窓部12aは、スライド駒21a(ボールペン用)を露出させるためのものであり、周方向に間隔を置いて複数(例えば5つ)設けられる。各窓部12aは、スライド駒21a後端側から軸筒径外方向へ突出する操作部21a1を進退可能にするように、軸筒軸方向へ長尺状に形成される。
また、もう一方(図1によれば上側)の窓部12bは、スライド駒22a(シャープペンシル用)を露出させるためのものであり、例えば、単数設けられる。この窓部12bは、スライド駒22a後端側から軸筒径外方向へ突出するクリップ支持部22a1を進退可能にするように、軸筒軸方向へ長尺状に形成される。
また、後端開口部12cは、スライドガイド体30の後端部を後方へ突出するように設けられる。
【0026】
スライド筆記芯21は、スライド駒21aの前端側にボールペン用筆記芯21bを着脱可能に接続してなる。このスライド筆記芯21は、図示例によれば複数(例えば5本)設けられ、それぞれ色違いのボールペン用筆記芯21bを接続している。
【0027】
また、スライド筆記芯22は、スライド駒22aの前端側にシャープペンシル用筆記芯22bを着脱可能に接続してなる。このスライド筆記芯22は、図示例によれば単数設けられる。なお、図1中、符号22cは、スライド駒22aとシャープペンシル用筆記芯22bを接続するためのスペーサであり、シャープペンシル用筆記芯22b又はスライド駒22a前端側を図示よりも長くすることで省くことも可能である。
【0028】
スライド駒21a(ボールペン用)は、その後端側に、軸筒径外方向へ突出する操作部21a1を有する。また、このスライド駒21aにおける軸筒径内方向側(図2によれば上側)の部分には、軸筒中心側へ突出する係合突起21a2と、該係合突起21a2よりも後側に位置する傾斜面21a3とを有する。
また、このスライド駒21aの前端側には、後述する受け部材60に当接可能なように軸筒径外方向へ突出する当接突起21a4が設けられる。
また、図2中、符号21a5は、スライドガイド体30に係合してスライド駒21aの軸筒径外方向への移動を規制する突起である。
【0029】
もう一方のスライド駒22a(シャープペンシル用)は、その後端側に、軸筒径外方向へ突出するクリップ支持部22a1を有し、このクリップ支持部22a1には、付勢部材(例えば、コイルスプリングや板バネ等)を介して開閉操作機能付きクリップ24が装着されている(図1参照)。
また、このスライド駒22aにおける軸筒径内方向側(図2によれば下側)の部分には、軸筒中心側へ突出する係合突起22a2と、該係合突起22a2よりも後側に位置する傾斜面22a3とを有する。
また、このスライド駒22aの前端側には、後述する受け部材60に当接可能なように軸筒径外方向へ突出する当接突起22a4が設けられる。
また、図2中、符号22a5は、スライドガイド体30に係合してスライド駒22aの軸筒径外方向への移動を規制する突起である。
【0030】
係合突起21a2,22a2の各々は、前後に傾斜面を有する山形状の突起であり、後述する解除部材70に対し後方から当接して、該解除部材70を押動したり後方へ乗り越えさせたりする。
【0031】
傾斜面21a3,傾斜面22a3の各々は、スライド駒21a(又は22a)の軸筒径内方向側の面に形成された凹部の前端面である。この傾斜面21a3(又は22a3)は、後述する解除部材70の被係合突起72によって後方から摺接されるように、前方斜め軸筒径内方向へ傾斜している。
【0032】
また、ボールペン用筆記芯21bは、インク収容管の前端にボールペンチップを接続してなり、インク収容管内のインクをボールペンチップ前端から吐出する周知構造のものである。
シャープペンシル用筆記芯22bは、芯タンクの前端側にチャック、クラッチリング、付勢部材等の鉛芯繰出し機構を接続してなり、その前端側の段部を軸筒10前端の開口部11aに係止した状態で後端側が進退されることで、芯タンク内の鉛芯を繰出す周知構造のものである。
【0033】
また、スライドガイド体30は、軸筒10内の後端側に進退可能に収納されるとともに、スライド駒21a,22aをそれぞれ前進位置(詳細には筆記部を突出させた位置)で係脱可能に係止する略筒状の部材であり、例えば、特開2012−200899に開示される押子ガイド体(50)の基本構造を用いればよい。
このスライドガイド体30は、複数のスライド駒21a,22aの各々の進退を案内するガイド部を周方向に間隔を置いて複数有し、各ガイド部の前端側に、前進位置になったスライド駒21a(又は22a)を軸筒径内方向へ沈み込ませて係止する段状の被係止部31(係脱手段)を有する。
そして、スライドガイド体30の軸筒10後端から突出する部分には、消しゴムやキャップ等が着脱可能に装着される。
【0034】
また、デバイダー40は、複数のスライド筆記芯21,22を周方向に所定間隔に保持する筆記芯保持部41と、該筆記芯保持部41の軸筒中心側で解除部材70を進退可能に保持する解除部材保持部42とを一体に有する。
【0035】
筆記芯保持部41は、略円筒状を呈し、ボールペン用筆記芯21b及びシャープペンシル用筆記芯22bをそれぞれ挿通可能な軸方向の孔又は溝を、周壁又は内周面に周方向へ所定間隔置いて配設している。
この筆記芯保持部41の後端面は、後述する圧縮コイルバネ50の前端を受ける受部として機能する。
【0036】
解除部材保持部42は、軸筒中心側に位置するように固定された略筒状の部材であり、後述する解除部材70を、遊びを有する状態で後方側から挿入している。
この解除部材保持部42の内周面には、解除部材70の進退量を規制する規制係合部42aが設けられる。この規制係合部42aは、図示例によれば、解除部材70に対し凹凸状に嵌り合う突起であるが、他例としては、その凹凸関係を逆にすることも可能である。
【0037】
圧縮コイルバネ50は、軸筒10内で前方へ収縮するように該軸筒10の内周面に沿って単数設けられ、後述する付勢部材80よりも大径のコイルバネである。
この圧縮コイルバネ50の前端座部は、軸筒10内の進退不能部位(図示例によればデバイダー40の後端部)に受けられている。また、圧縮コイルバネ50の後端座部には、その後方側から、受け部材60を介して複数のスライド筆記芯21,22の一部分(詳細には、スライド駒21a,22a)が当接している。
すなわち、複数のスライド筆記芯21,22は、一つの圧縮コイルバネ50の内周に沿って、周方向へ所定間隔を置いて配設され、一つの圧縮コイルバネ50の後端座部に対し、受け部材60を介して後方側から間接的に当接している。
【0038】
受け部材60は、圧縮コイルバネ50の後端座部を受ける環状の部材であり、詳細に説明すれば、圧縮コイルバネ50の後端側に挿入される挿入部61と、圧縮コイルバネ50の後端座部に当接する受け部62とから一体に形成される。
挿入部61は、前方へ突出する柱状部材を、周方向に間隔を置いて複数配設してなり、周方向に隣り合う前記柱状部材の間に、ボールペン用筆記芯21b又はシャープペンシル用筆記芯22bを挿通させ、複数の前記柱状部材の外周部を、圧縮コイルバネ50の内周部に近接させている。
受け部62は、図示例によれば、略筒状に形成され、その内周面は、各筆記芯21b(又は22b)の外周面を覆うように、例えば複数の溝状に形成される。
【0039】
解除部材70は、軸筒10内で所定量進退可能且つ径方向へ微動可能な長尺軸状の部材である。
この解除部材70の前端側には、解除部材保持部42の規制係合部42aに係合する被係合部71が設けられる。この被係合部71は、図示例によれば、凸状の規制係合部42aに嵌り合って該規制係合部42aを所定進退させる環状凹部である。前述したように、この被係合部71を凸部とし、前記規制係合部42aを凹部とすることも可能である。
【0040】
また、解除部材70の後端側には、スライド駒21a,22aの係合突起21a2,22a2及び傾斜面21a3,22a3に係合可能な被係合突起72が設けられる。この被係合突起72は、図示例によれば、前方へ向かって縮径する環状傾斜面を有する環状の突起である。
また、解除部材70の前後方向において、被係合部71と被係合突起72の間には、後述する付勢部材80を装着する円柱状の付勢部材装着部74と、付勢部材80の後端を受けるように環状に突出するばね受部73とが設けられる。
【0041】
そして、前記構成の解除部材70は、付勢部材80を装着した状態で、該付勢部材80よりも前側の部分が、デバイダー40の解除部材保持部42内へ遊挿される。
【0042】
付勢部材80は、圧縮コイルバネ50よりも小径の圧縮コイルバネであり、解除部材70の付勢部材装着部74に環状に装着され、解除部材保持部42後端と解除部材70のばね受部73との間に挟まれるようにして、解除部材70を後方へ弾発している。
【0043】
また、嵌脱部材90は、初期位置にあるスライド駒21a,22aに対し離脱可能に嵌合する緩嵌合手段を構成している。
詳細に説明すれば、この嵌脱部材90は、軸筒径方向へ弾性変形可能な合成樹脂材料から筒状に形成され、スライドガイド体30内の後端側に同芯状に固定されている。そして、この嵌脱部材90の外周面は、スライド駒21a,22aに対し軸筒中心側から押し付けられている。
より詳細に説明すれば、嵌脱部材90は、エラストマー樹脂やゴム等の弾性材料から略筒状に形成され、その外周面に、断面山形状の環状突起91を有し、この環状突起91をスライド駒21a,22aに対し軸筒中心側から押し付けるようにして、スライドガイド体30の後端側に嵌合固定されている。
【0044】
上記構成の嵌脱部材90によれば、スライド駒21a,22aは、それぞれ、突起21a5,22a5をスライドガイド体30に当接させて軸筒径外方向への移動を規制された状態で、軸筒中心側から嵌脱部材90によって緩く押圧される。
このため、一つのスライド駒21a(又は22a)が圧縮コイルバネ50を収縮させて前方へ移動するとともに、他のスライド駒22a(又は21a)が圧縮コイルバネ50から後方へ離れている状態において、前記他のスライド駒22a(又は21a)は、嵌脱部材90との緩嵌合によって容易に前方へ移動することはないが、指等によって前方へ押された際には、嵌脱部材90との緩嵌合状態から脱して、前方へ移動する。
【0045】
次に、上記構成の複数出没式筆記具について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。なお、図3〜6中では、スライド駒21aとスライド駒22aと解除部材70との3部材のうち、前の状態から動いた部材を、わかり易いようにハッチングしている。
先ず、図3(I)に示す初期状態では、全てのスライド駒21a,22aが、スライドガイド体30内の最後端側に位置し、これらスライド駒21a,22aの係合突起21a2,22a2に対し、前方側から、付勢部材80により付勢された解除部材70の被係合突起72が当接している。また、スライド駒21a,22aの各々は、その後端部側が軸筒径内方向側から嵌脱部材90によって押圧されている。したがって、この初期状態では、複数のスライド駒21a,22aが、振動や衝撃等で容易に移動することのないように保持される。
この初期状態では、全てのスライド筆記芯21,22の筆記部が、軸筒10内に没入している。
【0046】
次に、図3(II)に示すように、開閉操作機能付きクリップ24に指等が掛けられ、開閉操作機能付きクリップ24と一体のスライド駒22aが前方へ押動されると、該スライド駒22aは、受け部材60と共に圧縮コイルバネ50の付勢力に抗して前進し、該スライド駒22aの係合突起22a2が解除部材70後端側の被係合突起72に当接し、解除部材70を前進させる。
この前進の際、他方のスライド駒21aは、嵌脱部材90によって径外方向へ押圧された状態のまま、受け部材60の後端から相対的に後方へ離れるため、前進することはない。
【0047】
そして、スライド駒22aがさらに前進すると、該スライド駒22aと共に前進する解除部材70が規制係合部42aに係止されて前進不能になり、スライド駒22aの係合突起22a2は、図4(III)に示すように、解除部材70の被係合突起72を前方へ乗り越える。そして、スライド駒22aは、軸筒10内へ沈み込むようにして、スライドガイド体30の被係止部31(図1参照)に係止され、スライド筆記芯22が筆記部を突出させた筆記可能状態に保持される。
一方、他方のスライド駒22aは、付勢部材80の付勢力により後退した解除部材70に当接されて、後退位置に保持される。
【0048】
また、先に前進したスライド駒22aが被係止部31に係止された前記状態で、図4(IV)に示すように、他方のスライド駒21aが指等によって押動され前進した場合には、このスライド駒21aの前進に伴って該スライド駒21aに当接している解除部材70も前進する。
【0049】
そして、前進する解除部材70は、その被係合突起72を、先に前進したスライド駒22aの傾斜面22a3に摺接させることで、先に前進したスライド駒22aを、沈み込み方向に対する逆方向(図示の上方向)へ押し上げて被係止部31から外す。図5(V)は、スライド駒22aが被係止部31から外れた直後の状態である。
【0050】
前記のようにして係止状態から解除されたスライド駒22aは、圧縮コイルバネ50の付勢力によって後方へ移動し、先ず、図5(VI)に示すように、係合突起22a2を、解除部材70の被係合突起72に当接させる。したがって、解除部材70は、その後端側が軸筒径方向において一方のスライド駒22aと逆側へ揺動するとともに、他方のスライド駒21aの係合突起21a2との摺接により若干だけ前進する(図6(VII)参照)。なお、スライド駒22aの前記後方への移動により、スライド筆記芯22の筆記部は没入する。
【0051】
次に、図6(VII)(VIII)に示すように、一方のスライド駒22aは、前記のようにして撓んだ解除部材70の被係合突起72を乗り越えて更に後退する。図6(VII)は、一方のスライド駒22aの係合突起22a2が被係合突起72を乗り越える直前の状態を示し、図6(VIII)は、同係合突起22a2が被係合突起72を乗り越えた直後の状態を示す。図6(VIII)では、解除部材70の後端側の被係合突起72が係合突起22a2によって軸筒径方向へ押されることで、解除部材70の後端側がスライド駒21a側(図示の下方)へ若干撓んでいる。
この後、スライド駒22aから指等が離れると、全てのスライド駒21a,22aは、圧縮コイルバネ50により後方へ付勢されて、図3(I)に示す初期位置に戻る。
【0052】
上記した動作は、複数のスライド筆記芯21,22のうち、何れが選択された場合も、略同様にして行われることになる。
【0053】
よって、上記構成の複数出没式筆記具によれば、複数のスライド筆記芯21,22のうち、何れのスライド筆記芯21(又は22)が前進した場合でも、このスライド筆記芯21(又は22)を、一つの圧縮コイルバネ50により、後方へ付勢するようにしているため、スライド筆記芯をそれぞれ複数のコイルバネにより付勢するようにした従来技術に比べ、コイルバネの設置スペースや干渉防止スペース等を節減でき、ひいては、軸筒径を縮小することが可能になる。
【0054】
そして、前記効果はスライド筆記芯の本数が増えるのにしたがって顕著になり、例えば、本願発明者らは、軸筒10内に計6本のスライド筆記芯21,22を具備した6機能出没式筆記具を制作し、軸筒10の外径を約14mmにすることができた。
【0055】
なお、上記実施例において、スライド筆記芯22(シャープペンシル用)を突出させて、その前端から鉛芯を繰出す操作は、従来技術と同様に、開閉操作機能付きクリップ24又はスライドガイド体30の後端露出部(図示例によればキャップ部分)に対するノック操作により可能である。
【0056】
また、上記実施例によれば、圧縮コイルバネ50の内周側に複数のスライド筆記芯21,22を配設したが、他例としては、圧縮コイルバネ50の外周側に複数のスライド筆記芯21,22を配設した構造とすることも可能である。
【0057】
また、上記実施例によれば、スライド筆記芯の具体的態様として、ボールペン用筆記芯21bを用いたスライド筆記芯21と、シャープペンシル用筆記芯22bを用いたスライド筆記芯22とを例示したが、このスライド筆記芯の他例としては、電子入力ペンを用いたものも可能である。さらに、軸筒10の軸径を適宜に太くすれば、サインペンやマーキングペン、修正ペンの筆記芯を用いて前記スライド筆記芯を構成することも可能である。
【0058】
また、上記実施例によれば、筆記部を突出させた際のスライド筆記芯21,22を係止する係脱手段(被係止部31等)を、軸筒10内で進退可能なスライドガイド体30に具備したが、他例としては、スライドガイド体30を省くとともに前記係脱手段(被係止部31等)を、軸筒10の周壁に設けたり、図示例以外の係脱構造を用いたりすることも可能である。なお、この他例の場合、嵌脱部材90は、軸筒10内の後端側に固定する。
【0059】
また、上記実施例によれば、筆記部を突出させた際のスライド筆記芯21,22を係止する係脱手段(被係止部31等)を備えたが、他例としては、筆記部を突出させた際のスライド筆記芯21,22を指の押圧力により保持し、指を離した際にはスライド筆記芯21,22が後退して筆記部を没入する構造とすることも可能である。
【0060】
また、上記実施例によれば、筆記芯保持部41と解除部材保持部42とをデバイダー40として一体に構成したが、他例としては、筆記芯保持部41と解除部材保持部42を、それぞれ、軸筒内の進退不能部位に固定された別体の部材とすることも可能である。
【0061】
また、上記実施例によれば、軸筒10とは別体の筆記芯保持部41及び解除部材保持部42を軸筒10内周面に嵌合固定しているが、他例としては、これら筆記芯保持部41と解除部材保持部42のうちの一方又は両方を、軸筒10に一体加工することも可能である。
【0062】
また、上記実施例によれば、圧縮コイルバネ50の後方向きの弾発力を、受け部材60を介してスライド筆記芯21,22に伝達するようにしたが、他例としては、受け部材60を省いて、圧縮コイルバネ50の後方向きの弾発力をスライド筆記芯21,22に直接伝達するようにしてもよい。すなわち、この他例では、圧縮コイルバネ50に対しその後方側からスライド筆記芯21,22を直接当接させればよい。
【0063】
また、上記実施例によれば、圧縮コイルバネ50の後端側をスライド駒21a,22aに当接させたが、他例としては、圧縮コイルバネ50の後端側をボールペン用筆記芯21b及びシャープペンシル用筆記芯22bに当接させることも可能である。この場合、具体的には、ボールペン用筆記芯21b及びシャープペンシル用筆記芯22bの外周面に突起を設け、該突起に対し、圧縮コイルバネ50の後端を直接的又は間接的に当接させればよい。
【0064】
また、上記実施例によれば、上記付勢部材80に圧縮コイルバネを用いたが、この付勢部材80の他例としては、解除部材70を後方側から引っ張るバネとしてもよい。さらに、付勢部材80の他例としては、ゴムや板バネ等、コイルバネ以外の弾性体を用いることも可能である。
【0065】
また、上記実施例の嵌脱部材90(緩嵌合手段)は、弾性変形し易い好ましい態様として、弾性材料から筒状に形成したが、他例としては、軸状にした態様や、弾性変形可能な硬質材料から形成した態様等としてもよい。
【0066】
さらに、前記緩嵌合手段の他例としては、嵌脱部材90を硬質材料から形成するとともに、スライド駒21a,22aに、嵌脱部材90の外周面に対し弾性的に接触する弾性部分(例えば、エラストマー樹脂やゴム等)を一体成型した態様とすることも可能である。
【0067】
さらに、前記緩嵌合手段の他例としては、各スライド駒21a(又は22a)の少なくとも一部分を弾性変形可能に構成し、この弾性変形可能な部分を、スライドガイド体30又は軸筒10に対し嵌脱可能に嵌り合うようにした態様とすることも可能である。この態様では、上記構成の嵌脱部材90を省くことができる。なお、前記弾性変形可能な部分は、各スライド駒21a(又は22a)自体を弾性変形可能に形成してもよいし、各スライド駒21a(又は22a)の一部に弾性部分(例えば、エラストマー樹脂やゴム等)を一体成型してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10:軸筒
21,22:スライド筆記芯
21a,22a:スライド駒
21a2,22a2:係合突起
21a3,22a3:傾斜面
21a4,22a4:当接突起
21b:ボールペン用筆記芯
22b:シャープペンシル用筆記芯
30:スライドガイド体
31:被係止部(係脱手段)
40:デバイダー
41:筆記芯保持部
42:解除部材保持部
50:圧縮コイルバネ
60:受け部材
70:解除部材
72:被係合突起
80:付勢部材
90:嵌脱部材(緩嵌合手段)
【要約】
【課題】 筆記芯の数の増加に伴って軸径が太くなるのを抑制する。
【解決手段】 軸筒10内に、ボールペン用筆記芯21b,シャープペンシル用筆記芯22bの後端側にそれぞれスライド駒21a,スライド駒22aを接続してなるスライド筆記芯21,22が複数具備され、選択的に押動されたスライド筆記芯21,22がその前端の筆記部を軸筒から突出させるようにした複数出没式筆記具において、軸筒10内で前方へ収縮するように圧縮コイルバネ50を設け、複数のスライド筆記芯21,22を単数の圧縮コイルバネ50の内周または外周に沿って周方向へ配設するとともに、これらスライド筆記芯21,22の各々を、単数の圧縮コイルバネ50に対し後方から当接させた。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6