特許第5735618号(P5735618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大阪瓦斯株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5735618-貯湯式熱源装置 図000002
  • 特許5735618-貯湯式熱源装置 図000003
  • 特許5735618-貯湯式熱源装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5735618
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月17日
(54)【発明の名称】貯湯式熱源装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20060101AFI20150528BHJP
   H01M 8/00 20060101ALI20150528BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20150528BHJP
【FI】
   H01M8/04 Y
   H01M8/00 Z
   F24H1/00 631A
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-269740(P2013-269740)
(22)【出願日】2013年12月26日
【審査請求日】2013年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】早川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】東口 誠作
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅士
(72)【発明者】
【氏名】前田 和茂
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 裕一
(72)【発明者】
【氏名】牧 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 一夫
【審査官】 久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−040350(JP,A)
【文献】 特開2010−040349(JP,A)
【文献】 特開2010−262834(JP,A)
【文献】 特開2011−003327(JP,A)
【文献】 特開2012−233637(JP,A)
【文献】 特開2013−219041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04
F24H 1/00
H01M 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯湯する貯湯槽と、湯水を加熱する燃料電池と、前記貯湯槽の下部の湯水の温度を測定する貯湯温度センサとを備えた貯湯式熱源装置であって、
前記燃料電池の周囲の環境状態に基づいて前記燃料電池の発電停止温度を可変設定する発電停止温度変更手段と、前記貯湯温度センサの測定結果が前記発電停止温度変更手段にて設定された前記発電停止温度以上となった時に前記燃料電池の発電を停止する発電停止手段とを備え
前記発電停止温度変更手段は、気温を測定する気温センサ又は給水温を測定する水温センサの測定結果に基づいて、測定温度が高温側であるほど前記発電停止温度を高温側へ可変設定する貯湯式熱源装置。
【請求項2】
前記発電停止温度変更手段は、前記気温センサ又は前記水温センサの測定結果として、所定期間の前記気温センサ又は前記水温センサの出力値の平均値を使用する請求項に記載の貯湯式熱源装置。
【請求項3】
前記発電停止温度変更手段が、気温を測定する気温センサ又は給水温を測定する水温センサの測定結果に基づいて前記発電停止温度を可変設定する際に、
前記発電停止温度変更手段にて現在設定されている前記発電停止温度が中間期の発電停止温度で、且つ前記気温センサ又は前記水温センサの測定結果が、第1閾値以上となった場合に、夏期の発電停止温度を設定し、
前記発電停止温度変更手段にて現在設定されている前記発電停止温度が夏期の発電停止温度で、且つ前記気温センサ又は前記水温センサの測定温度が、前記第1閾値より小さい第2閾値以下となった場合に、中間期の発電停止温度を設定し、
前記発電停止温度変更手段にて現在設定されている前記発電停止温度が冬期の発電停止温度で、且つ前記気温センサ又は前記水温センサの測定温度が、前記第2閾値より小さい第3閾値以上となった場合に、中間期の発電停止温度を設定し、
前記発電停止温度変更手段にて現在設定されている前記発電停止温度が中間期の発電停止温度で、且つ、前記気温センサ又は前記水温センサの測定温度が、前記第3閾値より小さい第4閾値以下となった場合に、冬期の発電停止温度を設定する請求項1又は2に記載の貯湯式熱源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水を貯湯する貯湯槽と、湯水を加熱する燃料電池と、前記貯湯槽の下部の湯水の温度を測定する貯湯温度センサとを備えた貯湯式熱源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、貯湯式熱源装置としては、特許文献1に示されているように、湯水循環路を循環する湯水を加熱する熱源としての燃料電池と、当該加熱された湯水を貯湯する貯湯槽と、当該貯湯槽の高さ方向で異なる位置で湯水の温度を測定する複数の貯湯温度センサとを備えたものが知られている。
当該貯湯式熱源装置では、循環水による排熱回収が行えなくなり、燃料電池が過熱されることを防止すべく、複数の貯湯温度センサの測定値が、夫々に対して各別に設定される設定停止温度以上になった場合に、燃料電池を停止する制御手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−349965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような貯湯式熱源装置では、設定停止温度が、燃料電池の周囲の温度等の環境状態に関わらず一定の値に固定されていたため、気温や給水温の高い夏期等に発電時間を延ばすことが困難であった。これは、停止動作開始時の燃料電池内の温度と、停止動作終了時の燃料電池内の温度の差が大きい場合に、燃料電池内に結露が発生して改質器の触媒劣化の原因となるため、停止動作中の温度降下が大きい冬期を前提に燃料電池の停止温度を低い側の一定温度に設定していたことによるものである。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料電池の内部での結露を防止して改質触媒等の劣化を防止しながらも、燃料電池の停止時間を短縮して発電時間を延ばすことができる貯湯式熱源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の貯湯式熱源装置は、
湯水を貯湯する貯湯槽と、湯水を加熱する燃料電池と、前記貯湯槽の下部の湯水の温度を測定する貯湯温度センサとを備えた貯湯式熱源装置であって、その特徴構成は、
前記燃料電池の周囲の環境状態に基づいて前記燃料電池の発電停止温度を可変設定する発電停止温度変更手段と、前記貯湯温度センサの測定結果が前記発電停止温度変更手段にて設定された前記発電停止温度以上となった時に前記燃料電池の発電を停止する発電停止手段とを備え
前記発電停止温度変更手段は、気温を測定する気温センサ又は給水温を測定する水温センサの測定結果に基づいて、測定温度が高温側であるほど前記発電停止温度を高温側へ可変設定する点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、発電停止温度変更手段は、燃料電池の周囲の季節等の環境状態に基づいて燃料電池の発電停止温度を可変設定するように構成され、発電停止手段は、貯湯温度センサの測定結果が発電停止温度変更にて設定された発電停止温度以上となった時に燃料電池の発電を停止するように構成しているから、例えば、夏期の発電停止温度を冬期の発電停止温度よりも高く設定することができ、一義的に低い側の一定温度に設定することにより生ずる燃料電池の不必要な発電停止を回避して、発電時間を延ばすことができる。
しかも、当該構成では、例えば、発電停止開始時から発電停止終了時までに燃料電池内での温度差が大きくなり、燃料電池内にて結露が発生する可能性が高い冬期においては、発電停止温度を低めに設定して、結露の発生を抑制できるから、結露による燃料電池の改質触媒が劣化することを防止できる。
【0009】
また、上記特徴構成によれば、発電停止温度変更手段は、燃料電池の周囲の環境状態を代表する指標として、気温を測定する気温センサ、又は給水温を測定する水温センサの測定結果を採用し、当該測定結果に基づいて発電停止温度を可変設定しているから、貯湯式熱源装置に予め設けられている測定機器等の構成を用いた簡易な構成で、発電停止温度を適切なものに設定できる。
そして、気温を測定する気温センサ、又は給水温を測定する水温センサの測定温度が高温側であるほど発電停止温度を高温側へ可変設定するように構成しているから、特に、測定温度が高温側となる夏期(又は中間期)において、発電停止時間を短縮することができる。
【0010】
本発明の貯湯式熱源装置の更なる特徴構成は、
前記発電停止温度変更手段は、前記気温センサ又は前記水温センサの測定結果として、所定期間の前記気温センサ又は前記水温センサの出力値の平均値を使用する点にある。
【0011】
通常、気温センサ又は水温センサにて測定される出力値は、天気等の気象状況によって変動する。上記特徴構成によれば、気温センサ又は水温センサの測定結果として、所定期間(例えば数日間)の気温センサ又は水温センサの出力値の平均値を使用するから、気象状況等の変動により気温センサ又は水温センサの出力値が変動したときでも、発電停止温度変更手段により可変設定される発電停止温度が、短時間の間に何度も変更設定される、所謂、ハンチングを防止できる。
【0012】
本発明の貯湯式熱源装置の更なる特徴構成は、
前記発電停止温度変更手段が、気温を測定する気温センサ又は給水温を測定する水温センサの測定結果に基づいて前記発電停止温度を可変設定する際に、
前記発電停止温度変更手段にて現在設定されている前記発電停止温度が中間期の発電停止温度で、且つ前記気温センサ又は前記水温センサの測定結果が、第1閾値以上となった場合に、夏期の発電停止温度を設定し、
前記発電停止温度変更手段にて現在設定されている前記発電停止温度が夏期の発電停止温度で、且つ前記気温センサ又は前記水温センサの測定温度が、前記第1閾値より小さい第2閾値以下となった場合に、中間期の発電停止温度を設定し、
前記発電停止温度変更手段にて現在設定されている前記発電停止温度が冬期の発電停止温度で、且つ前記気温センサ又は前記水温センサの測定温度が、前記第2閾値より小さい第3閾値以上となった場合に、中間期の発電停止温度を設定し、
前記発電停止温度変更手段にて現在設定されている前記発電停止温度が中間期の発電停止温度で、且つ、前記気温センサ又は前記水温センサの測定温度が、前記第3閾値より小さい第4閾値以下となった場合に、冬期の発電停止温度を設定する点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、発電停止温度変更手段は、現在設定されている発電停止温度と、気温センサ又は水温センサの測定温度と所定の閾値との関係との双方に基づいて、発電停止温度の変更設定を行うから、例えば、気温センサ又は水温センサの測定温度と所定の閾値との関係のみに基づいて発電停止温度を変更設定する場合よりも、発電停止温度のハンチングを抑制できる。
更に、発電停止温度の変更設定において、例えば、夏期と中間期との間での発電停止温度の変更に関し、第1閾値と第2閾値とを異なる値で設けてヒステリシスを持たせているので、発電停止温度が頻繁に変更設定されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】貯湯式熱源装置の概略構成図
図2】発電停止温度を可変設定する制御フロー図
図3】気温センサの測定結果に基づいて可変設定される発電停止温度を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る貯湯式熱源装置100について、熱源機としての燃料電池20の内部での結露を防止して改質触媒の劣化を防止しながらも、燃料電池20の停止時間を短縮して発電時間を延ばすことができるものに関する。
以下、本発明に係る貯湯式熱源装置100について、図1〜3に基づいて説明する。
【0016】
本発明に係る貯湯式熱源装置100は、図1に示すように、湯水を貯湯する貯湯槽10と、熱電併給装置としての燃料電池20と、燃料電池20にて発生する熱を回収して貯湯槽10に蓄熱するべく貯湯槽10と燃料電池20との間で湯水を循環する湯水循環路Cと、当該湯水循環路Cを循環する湯水の流量を調整可能な循環ポンプPと、貯湯式熱源装置100の運転を制御する制御装置30を備えている。当該湯水循環路Cは、燃料電池20においては、その冷却の用を果たす。
当該貯湯式熱源装置100には、貯湯槽10に蓄熱された熱を図示しない熱負荷端末で消費するべく、貯湯槽10の上部に貯湯される湯水を熱負荷端末まで導く湯水往き路L4を備えると共に、熱負荷端末を通過した後の湯水を貯湯槽10へ戻す湯水戻り路L1を備えている。当該湯水戻り路L1を通流する湯水は、三方弁Vを通過した後、貯湯槽10の下部に連結する下部流路L2を介して貯湯槽10の下部に戻される。
また、湯水往き路L4には、図示しない給湯栓に繋がる給湯流路(図示せず)が接続されると共に、三方弁Vには給水を通流する給水路L3が接続されている。これにより、給湯栓が開放されると、給水路L3を通流する給水が、三方弁V及び下部流路L2を介して貯湯槽10の下部へ流入すると共に、貯湯槽10の上部の湯水が、湯水往き路L4、給湯路(図示せず)を介して給湯栓(図示せず)から送出される。
【0017】
上記構成の貯湯槽10では、燃料電池20から排熱回収した湯水が、貯湯槽10の上部から下部へ向かって成層貯湯される。従って、貯湯槽10の下部の湯水が所定の温度以上となった状態で、それ以上貯湯槽10に貯湯することができない。
当該貯湯式熱源装置100では、湯水循環路Cを介して燃料電池20へ導かれる湯水の温度が所定温度以上になり、燃料電池20の冷却ができず燃料電池20が過熱することを防止するため、発電停止温度を規定し燃料電池20へ導かれる湯水の温度が発電停止温度以上になると燃料電池20による発電を停止するように構成されている。
ここで、通常、発電停止温度は、発電停止開始時から発電停止終了時までの燃料電池20の内部の温度差が大きくなり、燃料電池20にて結露が発生して、燃料電池20の内部の改質触媒が劣化することを防止すべく、特に、燃料電池20の内部にて結露が発生し易い冬期における発電停止開始時から発電停止終了時までの温度が、結露が発生しない温度差となるように、一定の温度に設定される。
しかしながら、このように発電停止温度を設定すると、外気温度が高く、発電停止開始時から発電停止終了時までの温度降下が少ない夏期にあっては、燃料電池20の内部において結露が発生する虞がないにも関わらず、発電停止温度が低めに設定されていたため、燃料電池20の運転時間が短くなるという問題が生じる。
そこで、本願に係る貯湯式熱源装置100は、燃料電池20の停止時間を短縮を図るべく、燃料電池20の周囲の環境状態に基づいて燃料電池20の発電停止温度を可変設定する発電停止温度変更手段30bと、貯湯槽10の下部の湯水の温度を測定する貯湯温度センサT1の測定結果が発電停止温度変更手段30bにて設定された発電停止温度以上となった時に燃料電池20の発電を停止する発電停止手段30cと、発電停止温度変更手段30bが発電停止温度を変更する際に必要とする情報を記憶する記憶部30aとを設けた制御装置30が備えられている。
【0018】
当該実施形態にあっては、発電停止温度変更手段30bは、燃料電池20の周囲の環境状態を代表する指標として、燃料電池20の近傍に設けられる気温センサT2の測定結果を抽出可能に構成されている。
説明を追加すると、発電停止温度変更手段30bは、気温センサT2の測定結果と記憶部30aに記憶される複数の閾値との比較結果、及び記憶部30aに記憶される現在の発電停止温度に基づいて、燃料電池20の周囲の環境状態を決定し、それに基づいて発電停止温度を設定する。
尚、燃料電池20の発電開始については、例えば、制御装置30が、貯湯槽10の上下方向で複数設けられる温度センサ(図示せず)の出力に基づいて貯湯槽10の蓄熱状態を判定し、蓄熱状態に余裕がある場合に、燃料電池20の発電を開始する制御を実行するような構成が採用されており、当該構成は、従来のものと変わるところがない。
【0019】
以下、燃料電池20の発電停止温度を可変設定すると共に、当該発電停止温度に基づいて、燃料電池20の発電を停止する制御について説明を加える。尚、以下の制御では、燃料電池20は、発電停止状態から発電状態へ移行して発電を行っている状態であるものとする。
また、記憶部30aは、発電停止温度変更手段30bが可変設定する発電停止温度として、夏期の発電停止温度(例えば、39℃)、中間期(春期又は秋期)の発電停止温度(例えば、37℃)、冬期の発電停止温度(例えば、35℃)を記憶していると共に、閾値として、第1閾値(例えば、22℃)>第2閾値(例えば、19℃)>第3閾値(例えば、15℃)>第4閾値(例えば、12℃)の関係を有する、第1閾値〜第4閾値を記憶している。
【0020】
図2は、発電停止温度変更時の処理フローを示したものであり、同図に示すように、発電停止温度変更手段30bは、発電停止温度変更に係る制御を開示すると、まず、発電停止温度として、中間期の発電停止温度を設定すると共に(S0)、気温センサT2の出力値を1時間毎に抽出する(S1)。
発電停止温度変更手段30bは、気温センサT2の出力値に基づいて、発電停止温度の変更に係る制御の指標となる「気温」を設定するのであるが、気温センサT2の出力値をそのまま「気温」とすると、発電停止温度が短時間のうちに何度も変更設定される、所謂、ハンチングが発生する虞がある。
そこで、当該制御にあっては、図2のS2に例示される式に示されるように、それまでに設定された「気温」と、現在の気温センサT2の出力値とを、重み付けをして足し合わせた値を、現在の「気温」として設定する。尚、制御の初回は、それまでに設定された「気温」として、現在の気温センサT2の出力値を採用する(S2)。
【0021】
発電停止温度変更手段30bは、現在が中間期の発電停止温度で、且つ現在の「気温」が第1閾値以上となった場合(S3)、発電停止温度として、夏期の発電停止温度を設定する(S4)と共に、それ以外の場合、現在の発電停止温度を維持する。
【0022】
更に、発電停止温度変更手段30bは、現在が夏期の発電停止温度で、且つ現在の「気温」が第1閾値より小さい第2閾値以下となった場合(S5)、発電停止温度として、中間期の発電停止温度を設定する(S6)と共に、それ以外の場合、現在の発電停止温度を維持する。
【0023】
更に、発電停止温度変更手段30bは、現在が冬期の発電停止温度で、且つ現在の「気温」が第2閾値より小さい第3閾値以上となった場合(S7)、発電停止温度として、中間期の発電停止温度を設定する(S8)と共に、それ以外の場合、現在の発電停止温度を維持する。
【0024】
更に、発電停止温度変更手段30bは、現在が中間期の発電停止温度で、且つ現在の「気温」が第3閾値より小さい第4閾値以下となった場合(S9)、発電停止温度として、冬期の発電停止温度を設定する(S10)と共に、それ以外の場合、現在の発電停止温度を維持する。
【0025】
発電停止手段30cは、貯湯槽10の下部の湯水の温度を検出する貯湯温度センサT1の出力値を抽出すると共に、当該出力値が発電停止温度変更手段30bにて設定された発電停止温度以上となった場合(S11)、発電を停止する信号を燃料電池20へ出力する。
【0026】
制御装置30は、燃料電池20の発電中にあっては、常時あるいは定期的に、上述したS1〜S11の制御を実行して、発電停止温度の更新を繰り返すと共に、S12にて燃料電池20へ発電を停止する信号を出力した後で、燃料電池20の発電を停止中であっても、S1〜S11の制御を実行して、発電停止温度の更新を繰り返されるように構成されており、燃料電池20が再度起動したときに、適切な発電停止温度で停止できるようになっている。
以上の制御を実行することにより、図3に示すように、発電停止温度は、発電停止温度変更手段30bにて設定される「気温」の変化に略対応する形態で、昇温又は降温することになる。即ち、「気温」が高温側ほど、発電停止温度を高温側へシフトすることになる。これにより、本願の貯湯式熱源装置100では、夏期及び中間期の発電停止温度を、冬期の発電停止温度(従来の貯湯式熱源装置で採用されていた発電停止温度)よりも高い発電停止温度に設定することができ、夏期及び中間期における発電停止時間を短縮して、発電時間を延ばすことができる。
【0027】
〔実施例〕
貯湯式熱源装置100に関し、燃料電池20として固体高分子型燃料電池、貯湯槽10として容量200Lのものを用いて、夏期の一週間において、通常想定される熱負荷があったときに、従来の如く発電停止温度を35℃(本願の冬期の発電停止温度に相当する温度)で一定にした場合と、上述した本願に係る貯湯式熱源装置100を用いた場合(即ち、発電停止温度を、夏期の発電停止温度(39℃)に変更設定した場合)とで、発電停止時間を測定する試験を行った。
当該試験によれば、前者と後者とでは、発電停止時間が、一日で、1時間から0.6時間に短縮され、発電時間としては、1週間で約2.8時間延長された。
【0028】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、発電停止温度変更手段30bは、燃料電池20の周囲の環境状態を代表する指標として、燃料電池20の近傍に設置される気温センサT2の測定結果を採用する例を示した。
しかしながら、本願は、当該構成に限定されるものではなく、例えば、給水路L3を流通する給水温度を測定する水温センサ(図示せず)の測定結果を、燃料電池20の周囲の環境状態を代表する指標として採用するように構成しても構わない。
当該構成を採用する場合、上述した第1閾値〜第4閾値は、互いの大小関係は維持した状態で、全体として低温側にシフトする値となる。
【0029】
(2)上記実施形態では、発電停止温度変更手段30bは、発電停止温度として、中間期(春期又は秋期)の発電停止温度と、夏期の発電停止温度と、冬期の発電停止温度とを設定する例を示した。
しかしながら、本願は、当該構成に限定されるものではなく、発電停止温度として、高温期の発電停止温度と、低温期の発電停止温度とに可変設定可能に構成するものであっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の貯湯式熱源装置は、燃料電池の内部での結露を防止して改質触媒等の劣化を防止しながらも、燃料電池の停止時間を短縮して発電時間を延ばすことができる貯湯式熱源装置として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 :貯湯槽
20 :燃料電池
30b :発電停止温度変更手段
30c :発電停止手段
100 :貯湯式熱源装置
T1 :貯湯温度センサ
T2 :気温センサ
V :三方弁
【要約】
【課題】燃料電池の内部での結露を防止して改質触媒等の劣化を防止しながらも、燃料電池の停止時間を短縮して発電時間を延ばすことができる貯湯式熱源装置を提供する。
【解決手段】燃料電池20の周囲の環境状態に基づいて燃料電池20の発電停止温度を可変設定する発電停止温度変更手段30bと、貯湯温度センサT1の測定結果が発電停止温度変更手段30bにて設定された発電停止温度以上となった時に燃料電池20の発電を停止する発電停止手段30cとを備えている。
【選択図】図1
図1
図2
図3